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WILD HEAVEN
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(1)
「ねえ、天音」
「どうした?」
「本当にこれでいいのかな?」
「本人が欲しがってるからいいんじゃないか?」
本当に不思議な2人だった。
結莉がモデルガンを二つ欲しがるのは何となく想像ついた。
だけど問題は茉莉だ。
プラスチックのバットを欲しがっていた。
さすがに金属バットを持たせるわけにはいかない。
それを振り回して楽しんでいる。
部屋の中をバットを振り回しながら喜んでいる茉莉。
そのうち家を破壊するんじゃないかという恐怖すら覚えた。
どうしてプレゼントしたかというと今日は2人の誕生日。
色々あったけどようやく1歳になる。
この子たちは成長が本当に早い。
通常の3倍くらいで成長している。
性格は2人とも私に似たらしい。
結莉はまだ太ももにホルダーなんて真似できないからバッグを作ってやった。
そこから素早く取り出す練習を一人黙々としている。
茉莉があまりにもバットを好んでいるから試しに公園に連れて行った。
さすがに無理だろうと思っていたけど大地が茉莉にそっとボールを投げると、茉莉は正確にボールを捉えていた。
無茶苦茶だろ!?と思うような飛距離を出していた。
ここが公園でよかった。
どうやら茉莉はパワー重視、結莉は技術、スピード重視らしい。
とはいえ他の子の平均値を軽く上回る技量を2人とも持っているけど。
「茉莉は野球選手になりたいのかな?」
大地が聞いていたけど私は否定した。
「多分振り回せるものなら何でも良かったと思う」
男の子の玩具で例えると玩具の剣みたいなやつ。
そういうスタイルの子なんだろう。
とりあえず今日はお誕生日だからと大地の実家に呼ばれていた。
「2人ともそれは車に置いておけ」
私がそう言うと2人は自分の玩具を車に置いてきた。
2人共私達の言う事はしっかり聞いてくれる。
今のところはだけど……。
「いらっしゃーい」
「えみー、こんばんは」
ちゃんと挨拶できるようになっていた。
結莉がガッデムとか言い出さないか不安だったけど学習したらしい。
私も苦労した。
ガッデムの意味を教えたところで止めないだろ。
「結莉、愛莉と恵美さんの事嫌いか?」
「好きー!」
「ガッデムって言葉は嫌いな奴に伝える挨拶なんだ」
「わかったー」
これで大丈夫だったらしい。
「ちゃんと挨拶出来る子なんて偉いねえ」
恵美さんは2人の頭を撫でていた。
家には大地の父さんもいる。
テーブルには料理が並んでいた。
ちゃんと結莉と茉莉用のごちそうも用意してあった。
そこは大地の母親だからどういうのを与えたらいいか分かってるらしい。
「いただきますって言うまで食べたらだめだからな」
いつもそう言い聞かせてるからそれは心配してなかった。
「2人とも子育てはどうだい?」
大地の父さんが言っていた。
正直分からない。
どんな育児の参考書を読んでも2人には当てはまらない。
美希と相談したりするけど美希も悩んでるみたいだ。
もっとも美希の相談は羨ましいくらいだけど。
「あの子は何を考えているか分からない」
それが普通なんだけど。
「普通はまだ自我がないからそんなもんだろ?」
「私も参考書を読んだらそうだったからいいんだけど……」
しかし異常なまでに手がかからない。
泣きもしないから常に体温とかをチェックしてるらしい。
「どこか痛いところとかないかな?」
結はこくっと頷くだけらしい。
似たようなところで翼の子供がついに異変を起こした。
まだ生まれて間もないのに秋久は普通に立つことが出来るらしい。
私もそれを聞いた時は耳を疑った。
善明が偶然気づいたらしい。
それまでじっと菫や陽葵の成長にあわせていたんだそうだ。
夜決まった時間になると素直に寝る。
睡眠が重要な時期だと理解しているのだろうと善明が言っていた。
ちなみに比呂は正常に成長しているらしい。
「お利口さんだから、お婆ちゃんからプレゼントあげるね」
そう言って恵美さんが取り出したのはベビーリュックだった。
2人とも喜んでいた。
YURIとMARIの刺繍がされている。
「結莉!!」
「茉莉!!」
2人とも自分の分を選んで背負って喜んでいた。
「良い子に育ってるじゃない」
「なんとかお陰様で」
家の中でバット振り回してるなんて絶対言えない。
2人とも食べ終ると静かにしてる。
食事中に暴れ出すとかもない。
食事という事の大切さを教えておいた。
見知らぬ人と会う時は大体食事の席が多い。
だから食事中の作法は相手の第一印象に重要な意味がある。
ましてや石原家のご令嬢だ。
それだけは徹底しておいた。
とはいってもまだ上手な食べ方とかは無理だ。
そんなものを食べられる歳じゃないから。
だから基礎的な事。
口に物をいれたまま喋らない。音をたてずに静かに食べるなど。
2人とも好き嫌いは無かった。
食べられない物を口に入れる事も無い。
私や大地が口に入れて「これは食べ物だよ」と理解するまで食べずにじっと見ていた。
そして今私や大地が食べている物を興味深そうに見ている。
「もう少し大きくなったら食べさせてやるからな」
そう言うと意味を理解しているのだろう。にこりと笑っていた。
「天音ちゃんも母親として立派になったわね」
恵美さんがそう言ってくれた。
「でもこれからまだ大変な時期はくるわ。困ったことがあったら何でも言ってちょうだい」
「はい」
同じ事を大地の爺さん、江口家の元総帥にも言われた。
あとは早く風呂に入れてやらないといけないので早めに帰った。
「たまには顔見せにきてね」
恵美さんがそういうので頷いて帰った。
家に帰ると大地がお風呂に入れるのだが……。
「パパ、早く入ろう!」
結莉が急かしている。
……まさかな。
「結莉。パパはママの物なんだからな」
「結莉も欲しい!」
やっぱりそうだったか。
「結莉も大きくなったらパパみたいな人に出会えるよ。その時まで我慢しとけ」
「うー」
「まあ、娘なんだし大丈夫だよ」
大地がそう言って二人を風呂に入れる。
そして風呂が終ったら寝る時間だと分かってるみたいだ。
すぐに寝た。
その間に私も風呂に入った。
「さっきはどうしたの?突然」
大地が缶ビールを渡しながら尋ねて来た。
「いや、ちょっと気になっただけ」
「だからって娘に嫉妬してもしょうがないよ」
心配しなくても僕も天音だけだよと大地は言った。
「そうじゃないんだ」
「何が問題なの?」
「学の父さんの話聞いた事あるだろ?」
そっとしておけば娘の裸がいつでも見れる。
「ぼ、僕はそんなつもりで言ったんじゃないよ」
「わかってるよ。ただ結莉達がそうならないように気をつけないとと思ってな」
大地が水奈の父さんみたいな奴じゃない事は知ってるから。
だけど、片桐家ではやりたい放題の妹がいる。
だから不安だっただけだ。
「僕と考えてる事違うんだね」
「大地は何を考えていたんだ?」
大地の姉の美希は小学校の段階で父親から離れ出したらしい。
だからいつかは娘の方から離れていくだろうと話していた。
「今からもうそんな事考えていたのか?」
「あっという間らしいから」
「それこそ心配しなくていいだろ」
「どうして?」
私は大地にもたれかける。
「私がこうしていつもそばにいてやるよ」
「それはありがとう」
あの子達も将来恋をするんだろう。
どんな物語を用意しているか知らないけど。
まだまだ遠い話。
(2)
「愛莉さん。ちょっと来てください」
「どうしたの?」
結莉と茉莉は石原家の孫だからあまり来なくなって暇をしていたところだ。
それに冬夜さん達も言っていた。
結が気になると。
「これなんですけど……」
美希がそう言って取り出したのは二つに折れた冬夜さんが愛用していた刀だった。
「どうしたのこれ?」
「結が折ってしまって……」
美希が目を離したす隙に冬夜がへし折ったらしい。
「結の手に届く範囲にこんなものおいていたら危ないでしょ」
「それが最近になって突然ハイハイとかするようになって油断してて……」
それより赤子の力でへし折れるものなのか?
美希は悩んだらしい。
「まあ、普通の赤子なら無理じゃないかな」
「ですよね」
これからは家の中に下手な物を置いとけない。
美希はそう考えているみたいだ。
それにしてもさっきからずっと静かだな。
「泣いたりはしないの?」
「天音の話を疑ってしまうくらい全然泣かなくて」
比呂はそんなことはないらしい。
赤ちゃんが泣く理由に体調不良もある。
しかし結は泣かない。
だから体調だけは常に気を配ってるらしい。
私が言ったように定期的に病院にも連れて行ってるそうだ。
他は特に何も無い。
何も無いから不安らしい。
このままでいいのか。
私の経験で当てはまるのは空だった。
「空がそうだったわ。泣かないの。つねにぼーっとしていました」
今の結の様に。
だからまだ様子を見てみないと分からない。
敢えて言うなら比呂と接している時の様子を見てみたらいいかもしれない。
「わかりました」
「夕飯は私が作るから美希は結から目を離さないで」
「はい」
冬眞や莉子達が帰ってくる。
家の留守番を任せて買い物に行く。
買い物から帰ってくると茜達も帰ってきていた。
夕飯を作り終える頃冬夜さんも帰ってくる。
食事をして順番に風呂に入る。
茜は相変わらずだったけど。
冬夜さんは少し考えたみたいだ。
「茜は父さんと寝たいって言ってたね」
冬夜さんがそう言った時私は冬夜さんを睨みつけていた。
「別にいいよ。小遣いねだってるわけじゃないからいいよね?」
「そうか、でも父さんは茜とは寝たくないな」
「どうして?」
娘と寝るなんて嬉しいんじゃないの?
まあ、誠君ならそうだろうな。
「汗すら流さない、汚れているところを洗わない女性の裸なんて見たくないよ」
それが娘に対する発言なのかはおいておいて茜は悩んでいた。
「うーん、壱郎もそうなのかな?」
「分かってるから壱郎とデートする前日は風呂に入ってるんじゃないのか?」
すると渋々と茜は風呂に入っていた。
さすが冬夜さんと言いたいところだけど……
ぽかっ
「妻の前で堂々と浮気宣言ですか?」
「娘相手にそんな事するわけないだろ?」
ただ、社員がそういう話をしていたから思いついただけ。
ちゃんと大事な所すら洗ってなくて幻滅したらしい。
男性でも女性に欲情しないことがあるんだと冬夜さんは言った。
「でも誠君みたいな例もあるじゃないですか?」
「誠たちは特殊だよ」
確かにそうだな。
もし冬夜さんが誠君みたいだったら、天音達の性格も変わっていただろう。
「心配しなくても今抱きたいのは愛莉だけだよ」
……えへへ~。
「それは良いんですけど、結の事で美希から相談を受けまして……」
「結が?」
結が冬夜さんの刀をへし折ったらしいと伝えた。
「やっぱり実家に戻らせて正解だったね」
これからは冬夜さんも結を観察すると言った。
結莉や茉莉にすらあまり干渉しない冬夜さんだけど、結だけは気になるらしい。
すると茜が風呂から出て来た。
……なにも着ていない。
「パパ、これならパパと寝てもいいよね!」
「良いわけ無いでしょ!さっさと服を着なさい!」
私は立ち上がって茜を叱りつける。
「いつも愛莉じゃ飽きるでしょ?私も色々壱郎と練習したからさ」
茜は分かってない。
ワンパターンなのは冬夜さんの方なんだ。
ってそういう問題じゃない!
冬夜さんは落ち着いていた。
「うーん、やっぱり愛莉が一番かな?」
「どうして?」
「この歳まで愛莉と一緒にいて今さら不倫なんて考えないよ」
茜だってそんなことして壱郎に申し訳ないんじゃないか?
父親の発言としてはどうなんだと思ったけど様子を見ていた。
「まあ、そういわれるとそうだね」
「人間癖が染みついてしまうと中々拭えない。茜だって将来壱郎と一緒に暮らすんだろ?」
「まあ、プロポーズされたら考えるつもりだけど」
「だったらその時壱郎に幻滅されないように準備しておかないと」
「確かにそうだね……」
「冬莉ですら、彼氏に配慮してるんだ。茜に出来ないはずがないよね?」
「は~い」
そう言って茜は部屋に戻っていった。
「あれで直るといいんだけどね」
冬夜さんはそう言って笑っていた。
その後私と冬夜さんも風呂に入ってリビングで寛ぐ。
「じゃあ、僕達も寝ようか?」
「そうですね」
そう言って寝室に行くとベッドに入る。
冬夜さんが抱き着いてきた。
「どうしたのですか?」
「愛莉はちゃんとしてるのかなって気になってさ」
「困った旦那様ですね」
どれほどあなたを愛せるだろう?
何かを犠牲にしながら一秒も違うことなく。
神様がカードをめくるこの世界で何かを得て何かを失う。
誰かが泣いて誰かが笑う。
どこへ行くのか分からないけどあなたを抱いて幻を追い求める。
「ねえ、天音」
「どうした?」
「本当にこれでいいのかな?」
「本人が欲しがってるからいいんじゃないか?」
本当に不思議な2人だった。
結莉がモデルガンを二つ欲しがるのは何となく想像ついた。
だけど問題は茉莉だ。
プラスチックのバットを欲しがっていた。
さすがに金属バットを持たせるわけにはいかない。
それを振り回して楽しんでいる。
部屋の中をバットを振り回しながら喜んでいる茉莉。
そのうち家を破壊するんじゃないかという恐怖すら覚えた。
どうしてプレゼントしたかというと今日は2人の誕生日。
色々あったけどようやく1歳になる。
この子たちは成長が本当に早い。
通常の3倍くらいで成長している。
性格は2人とも私に似たらしい。
結莉はまだ太ももにホルダーなんて真似できないからバッグを作ってやった。
そこから素早く取り出す練習を一人黙々としている。
茉莉があまりにもバットを好んでいるから試しに公園に連れて行った。
さすがに無理だろうと思っていたけど大地が茉莉にそっとボールを投げると、茉莉は正確にボールを捉えていた。
無茶苦茶だろ!?と思うような飛距離を出していた。
ここが公園でよかった。
どうやら茉莉はパワー重視、結莉は技術、スピード重視らしい。
とはいえ他の子の平均値を軽く上回る技量を2人とも持っているけど。
「茉莉は野球選手になりたいのかな?」
大地が聞いていたけど私は否定した。
「多分振り回せるものなら何でも良かったと思う」
男の子の玩具で例えると玩具の剣みたいなやつ。
そういうスタイルの子なんだろう。
とりあえず今日はお誕生日だからと大地の実家に呼ばれていた。
「2人ともそれは車に置いておけ」
私がそう言うと2人は自分の玩具を車に置いてきた。
2人共私達の言う事はしっかり聞いてくれる。
今のところはだけど……。
「いらっしゃーい」
「えみー、こんばんは」
ちゃんと挨拶できるようになっていた。
結莉がガッデムとか言い出さないか不安だったけど学習したらしい。
私も苦労した。
ガッデムの意味を教えたところで止めないだろ。
「結莉、愛莉と恵美さんの事嫌いか?」
「好きー!」
「ガッデムって言葉は嫌いな奴に伝える挨拶なんだ」
「わかったー」
これで大丈夫だったらしい。
「ちゃんと挨拶出来る子なんて偉いねえ」
恵美さんは2人の頭を撫でていた。
家には大地の父さんもいる。
テーブルには料理が並んでいた。
ちゃんと結莉と茉莉用のごちそうも用意してあった。
そこは大地の母親だからどういうのを与えたらいいか分かってるらしい。
「いただきますって言うまで食べたらだめだからな」
いつもそう言い聞かせてるからそれは心配してなかった。
「2人とも子育てはどうだい?」
大地の父さんが言っていた。
正直分からない。
どんな育児の参考書を読んでも2人には当てはまらない。
美希と相談したりするけど美希も悩んでるみたいだ。
もっとも美希の相談は羨ましいくらいだけど。
「あの子は何を考えているか分からない」
それが普通なんだけど。
「普通はまだ自我がないからそんなもんだろ?」
「私も参考書を読んだらそうだったからいいんだけど……」
しかし異常なまでに手がかからない。
泣きもしないから常に体温とかをチェックしてるらしい。
「どこか痛いところとかないかな?」
結はこくっと頷くだけらしい。
似たようなところで翼の子供がついに異変を起こした。
まだ生まれて間もないのに秋久は普通に立つことが出来るらしい。
私もそれを聞いた時は耳を疑った。
善明が偶然気づいたらしい。
それまでじっと菫や陽葵の成長にあわせていたんだそうだ。
夜決まった時間になると素直に寝る。
睡眠が重要な時期だと理解しているのだろうと善明が言っていた。
ちなみに比呂は正常に成長しているらしい。
「お利口さんだから、お婆ちゃんからプレゼントあげるね」
そう言って恵美さんが取り出したのはベビーリュックだった。
2人とも喜んでいた。
YURIとMARIの刺繍がされている。
「結莉!!」
「茉莉!!」
2人とも自分の分を選んで背負って喜んでいた。
「良い子に育ってるじゃない」
「なんとかお陰様で」
家の中でバット振り回してるなんて絶対言えない。
2人とも食べ終ると静かにしてる。
食事中に暴れ出すとかもない。
食事という事の大切さを教えておいた。
見知らぬ人と会う時は大体食事の席が多い。
だから食事中の作法は相手の第一印象に重要な意味がある。
ましてや石原家のご令嬢だ。
それだけは徹底しておいた。
とはいってもまだ上手な食べ方とかは無理だ。
そんなものを食べられる歳じゃないから。
だから基礎的な事。
口に物をいれたまま喋らない。音をたてずに静かに食べるなど。
2人とも好き嫌いは無かった。
食べられない物を口に入れる事も無い。
私や大地が口に入れて「これは食べ物だよ」と理解するまで食べずにじっと見ていた。
そして今私や大地が食べている物を興味深そうに見ている。
「もう少し大きくなったら食べさせてやるからな」
そう言うと意味を理解しているのだろう。にこりと笑っていた。
「天音ちゃんも母親として立派になったわね」
恵美さんがそう言ってくれた。
「でもこれからまだ大変な時期はくるわ。困ったことがあったら何でも言ってちょうだい」
「はい」
同じ事を大地の爺さん、江口家の元総帥にも言われた。
あとは早く風呂に入れてやらないといけないので早めに帰った。
「たまには顔見せにきてね」
恵美さんがそういうので頷いて帰った。
家に帰ると大地がお風呂に入れるのだが……。
「パパ、早く入ろう!」
結莉が急かしている。
……まさかな。
「結莉。パパはママの物なんだからな」
「結莉も欲しい!」
やっぱりそうだったか。
「結莉も大きくなったらパパみたいな人に出会えるよ。その時まで我慢しとけ」
「うー」
「まあ、娘なんだし大丈夫だよ」
大地がそう言って二人を風呂に入れる。
そして風呂が終ったら寝る時間だと分かってるみたいだ。
すぐに寝た。
その間に私も風呂に入った。
「さっきはどうしたの?突然」
大地が缶ビールを渡しながら尋ねて来た。
「いや、ちょっと気になっただけ」
「だからって娘に嫉妬してもしょうがないよ」
心配しなくても僕も天音だけだよと大地は言った。
「そうじゃないんだ」
「何が問題なの?」
「学の父さんの話聞いた事あるだろ?」
そっとしておけば娘の裸がいつでも見れる。
「ぼ、僕はそんなつもりで言ったんじゃないよ」
「わかってるよ。ただ結莉達がそうならないように気をつけないとと思ってな」
大地が水奈の父さんみたいな奴じゃない事は知ってるから。
だけど、片桐家ではやりたい放題の妹がいる。
だから不安だっただけだ。
「僕と考えてる事違うんだね」
「大地は何を考えていたんだ?」
大地の姉の美希は小学校の段階で父親から離れ出したらしい。
だからいつかは娘の方から離れていくだろうと話していた。
「今からもうそんな事考えていたのか?」
「あっという間らしいから」
「それこそ心配しなくていいだろ」
「どうして?」
私は大地にもたれかける。
「私がこうしていつもそばにいてやるよ」
「それはありがとう」
あの子達も将来恋をするんだろう。
どんな物語を用意しているか知らないけど。
まだまだ遠い話。
(2)
「愛莉さん。ちょっと来てください」
「どうしたの?」
結莉と茉莉は石原家の孫だからあまり来なくなって暇をしていたところだ。
それに冬夜さん達も言っていた。
結が気になると。
「これなんですけど……」
美希がそう言って取り出したのは二つに折れた冬夜さんが愛用していた刀だった。
「どうしたのこれ?」
「結が折ってしまって……」
美希が目を離したす隙に冬夜がへし折ったらしい。
「結の手に届く範囲にこんなものおいていたら危ないでしょ」
「それが最近になって突然ハイハイとかするようになって油断してて……」
それより赤子の力でへし折れるものなのか?
美希は悩んだらしい。
「まあ、普通の赤子なら無理じゃないかな」
「ですよね」
これからは家の中に下手な物を置いとけない。
美希はそう考えているみたいだ。
それにしてもさっきからずっと静かだな。
「泣いたりはしないの?」
「天音の話を疑ってしまうくらい全然泣かなくて」
比呂はそんなことはないらしい。
赤ちゃんが泣く理由に体調不良もある。
しかし結は泣かない。
だから体調だけは常に気を配ってるらしい。
私が言ったように定期的に病院にも連れて行ってるそうだ。
他は特に何も無い。
何も無いから不安らしい。
このままでいいのか。
私の経験で当てはまるのは空だった。
「空がそうだったわ。泣かないの。つねにぼーっとしていました」
今の結の様に。
だからまだ様子を見てみないと分からない。
敢えて言うなら比呂と接している時の様子を見てみたらいいかもしれない。
「わかりました」
「夕飯は私が作るから美希は結から目を離さないで」
「はい」
冬眞や莉子達が帰ってくる。
家の留守番を任せて買い物に行く。
買い物から帰ってくると茜達も帰ってきていた。
夕飯を作り終える頃冬夜さんも帰ってくる。
食事をして順番に風呂に入る。
茜は相変わらずだったけど。
冬夜さんは少し考えたみたいだ。
「茜は父さんと寝たいって言ってたね」
冬夜さんがそう言った時私は冬夜さんを睨みつけていた。
「別にいいよ。小遣いねだってるわけじゃないからいいよね?」
「そうか、でも父さんは茜とは寝たくないな」
「どうして?」
娘と寝るなんて嬉しいんじゃないの?
まあ、誠君ならそうだろうな。
「汗すら流さない、汚れているところを洗わない女性の裸なんて見たくないよ」
それが娘に対する発言なのかはおいておいて茜は悩んでいた。
「うーん、壱郎もそうなのかな?」
「分かってるから壱郎とデートする前日は風呂に入ってるんじゃないのか?」
すると渋々と茜は風呂に入っていた。
さすが冬夜さんと言いたいところだけど……
ぽかっ
「妻の前で堂々と浮気宣言ですか?」
「娘相手にそんな事するわけないだろ?」
ただ、社員がそういう話をしていたから思いついただけ。
ちゃんと大事な所すら洗ってなくて幻滅したらしい。
男性でも女性に欲情しないことがあるんだと冬夜さんは言った。
「でも誠君みたいな例もあるじゃないですか?」
「誠たちは特殊だよ」
確かにそうだな。
もし冬夜さんが誠君みたいだったら、天音達の性格も変わっていただろう。
「心配しなくても今抱きたいのは愛莉だけだよ」
……えへへ~。
「それは良いんですけど、結の事で美希から相談を受けまして……」
「結が?」
結が冬夜さんの刀をへし折ったらしいと伝えた。
「やっぱり実家に戻らせて正解だったね」
これからは冬夜さんも結を観察すると言った。
結莉や茉莉にすらあまり干渉しない冬夜さんだけど、結だけは気になるらしい。
すると茜が風呂から出て来た。
……なにも着ていない。
「パパ、これならパパと寝てもいいよね!」
「良いわけ無いでしょ!さっさと服を着なさい!」
私は立ち上がって茜を叱りつける。
「いつも愛莉じゃ飽きるでしょ?私も色々壱郎と練習したからさ」
茜は分かってない。
ワンパターンなのは冬夜さんの方なんだ。
ってそういう問題じゃない!
冬夜さんは落ち着いていた。
「うーん、やっぱり愛莉が一番かな?」
「どうして?」
「この歳まで愛莉と一緒にいて今さら不倫なんて考えないよ」
茜だってそんなことして壱郎に申し訳ないんじゃないか?
父親の発言としてはどうなんだと思ったけど様子を見ていた。
「まあ、そういわれるとそうだね」
「人間癖が染みついてしまうと中々拭えない。茜だって将来壱郎と一緒に暮らすんだろ?」
「まあ、プロポーズされたら考えるつもりだけど」
「だったらその時壱郎に幻滅されないように準備しておかないと」
「確かにそうだね……」
「冬莉ですら、彼氏に配慮してるんだ。茜に出来ないはずがないよね?」
「は~い」
そう言って茜は部屋に戻っていった。
「あれで直るといいんだけどね」
冬夜さんはそう言って笑っていた。
その後私と冬夜さんも風呂に入ってリビングで寛ぐ。
「じゃあ、僕達も寝ようか?」
「そうですね」
そう言って寝室に行くとベッドに入る。
冬夜さんが抱き着いてきた。
「どうしたのですか?」
「愛莉はちゃんとしてるのかなって気になってさ」
「困った旦那様ですね」
どれほどあなたを愛せるだろう?
何かを犠牲にしながら一秒も違うことなく。
神様がカードをめくるこの世界で何かを得て何かを失う。
誰かが泣いて誰かが笑う。
どこへ行くのか分からないけどあなたを抱いて幻を追い求める。
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彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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