姉妹チート

和希

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invoke

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(1)

「うわあ、海が綺麗」

 隣に座っていた瞳子が景色を見ていた。
 あまり乗らない電車に乗っている。
 僕達は修学旅行で関西に向かっていた。
 まずは特急で小倉まで行く。
 そこから新幹線で京都まで行く。
 それからホテルに荷物を預けて自由行動。
 夕食は自由行動の時間に食べてくるように言われている。

「京都の食事はそんなに美味しいの無かったから女子に合わせるといいよ」
「冬夜さんはどうしてそう食べ物の情報しか与えないんですか!?」
「だって京都の料理を本格的に食べようと思ったら小遣いじゃ足りないよ?」
「そういう問題じゃありません」
「純也達が言ってたけど、どうせ京都での行動は女子が主導権を握るから問題ないよ」
「あ、それで思い出した」

 母さんが僕の顔を見ている。

「冬吾は冬莉と同じ班なのでしょ?」
「うん」
「母さんからお願いがあります」

 冬莉を見張っていて欲しい。
 小学生の修学旅行で無茶をした冬莉だ。
 放っておいたらびわいちくらい平気でやりかねない。

「それなら大丈夫だよ」

 僕が言った。

「どうして?」
「自由行動の計画立てる時に冬莉が言ってたんだ」

 神社参りもいいけど出来れば渡月橋には行っておきたい。
 志希と一緒に見て来る。
 そう言ってたと母さんに言った。
 志希を巻き込んで無茶はしないだろう。

「なら大丈夫ですね」
「志希と冬莉は良いけど冬吾は瞳子と何か話したのかい?」

 父さんが聞いてた。
 僕が食べ物探してるのを見て笑って「諦めた方がいいよ」って笑ってた事を話した。

「やっぱりそうなるよね」
「うぅ……」

 母さんが悩んでいる。

「お土産はタコ焼き味の……」
「冬夜さんはいい加減にしてください!」

 てな事があった。
 精々京都で食べるとしたら京都ラーメンくらいだと言ってた。

「で、男子たちは何か希望あったの?」

 前の席にいる冬莉が後ろを向いて言った。
 京都ラーメンくらいしか浮かばなかったと答えた。

「まあ、そうだよね。天音もかなり頭に来てたみたいだし」
「湯葉で腹は膨れねーぞ!蟹くらい食わせろ!!」

 天音はそう言って暴れていたらしい。
 小倉に着くと新幹線に乗りかえる。
 正直本当にこれ速いの?って思った。
 その証拠に誠司は既に寝ている。
 志希は頑張って起きてるみたいだ。
 冴と識は話をしていた。
 瞳子は僕の肩に頭を乗せて寝ていた。
 僕は何となく景色を見ながら音楽を聴いていた。
 新大阪を抜けた辺りで瞳子を起こす。
 
「油断し過ぎたね。ごめん」

 そう言って瞳子は微笑む。
 京都駅に着くとバスに乗り込む。
 ホテルに荷物を預けると皆で集合する。
 先生達から諸注意があってそれが終ると自由行動。
 女子達は分刻みで予定を立てていたらしい。
 僕は冬莉の監視役を任せられていたので冬莉達と一緒に行動した。
 誠司は頼子や泉と行動するらしい。
 残った識と冴、りさと隼人がパワースポットを回るらしい。
 どうして少人数になったかというとタクシーを自由時間内は使い放題というおまけがあったから。
 僕達は冬莉の希望する嵐山に向かった。
 とても紅葉の綺麗な山がある。
 観光客もたくさんいたのではぐれないように瞳子と手をつないでいた。
 観光を楽しむとその後は当然何を食べるかで相談する。
 京料理は確かに僕達の小遣いじゃ無理がある。
 無難なところでそばかうどんで悩んでいた。
 冬莉と瞳子は同じ意見の様だ。

「地元の女子高生はうどんが大ブーム」

 僕と志希はどっちでもよかったのでうどんにした。
 しかし瞳子は別の心配があったみたいだ。

「冬吾君夜はラーメン食べるんでしょ?」

 麺類が続いていいのか?
 そんな心配をしていたらしい。

「大丈夫だよ瞳子、3食麺類でも全然問題ない」

 冬莉がそう言った。
 瞳子は驚いていた。
 なんでだろう?
 昼食を食べると京都に戻る。
 瞳子の希望で清水寺にもよっておきたかったから。
 とても景色の良い場所だ。
 人気がある理由が分かる。
 冬莉達と交代で写真を撮っていた。
 時間的にもうそろそろかな?
 父さん達にお土産を買う事にした。 
 父さんは何か言っていたけど、母さんが怒って最後まで聞けなかった。
 何にしようか迷っていると瞳子が教えてくれた。

「京都だったら八つ橋がいいと思う」
「八つ橋?」

 和菓子らしい。
 お店に行くと試食させてくれるので食べてみた。
 これなら大丈夫だろうと冬莉と相談するとこれを買っておいた。
 そして夕飯を食べて帰る。

「ねえ、冬吾君」
「どうしたの?」
「京都まできてラーメン食べるの?」
「だってそんなにお金ないよ?」

 どこもかしこも観光地価格なのかべらぼーに高い。
 ならラーメンでいいやと思った。
 ご当地ラーメンだから思いでにはなるだろう。

「むかし博多で京都ラーメン食べた時は酷かったよ」
「本当に困った父親ですね」

 母さんが悩んでた。
 夕食が済むとホテルに戻る。
 誠司達は先に帰っていた。

「どうだった?」

 誠司が聞いてきたので感想を言った。
 誠司はスマホを弄りながら聞いていた。

「よかったじゃん」
「誠司は何してるの?」
「ああ、頼子が彼氏欲しいらしいからさ」

 今心当たりのある男子に相談してるらしい。

「頼子よりも誠司じゃないのか?」
「ああ、俺はまだいいんだ」

 今はサッカーに集中したいらしい。
 何が誠司を変えたのだろう?

「それより明日は冬吾達も協力しろよ」

 明日は大阪のテーマパークで自由行動。
 その時に頼子と会わせるらしい。

「分かった」

 その後僕も瞳子とメッセージをしながら眠っていた。

(2)

「ねえ多田君」
「どうした?」
「多田君は一人でいいの?」

 頼子たちが聞いてきた。
 冬吾達は恋人がいる。
 だったら俺達がいると色々遠慮するからだろうと組分けをした。
 俺は石原頼子と酒井泉と一緒にいる。
 2人とも女子らしくパワースポットを巡っている。
 そんな二人を見ていた。

「多田君はいきたい所とかないの?」

 泉が聞いてきた。

「長崎の時もそうだったけど、また恋人と来るときの楽しみにとっておくよ」
「ふーん。でもそれなら修学旅行前に作っとけばよかったんじゃない?」

 告白は受けてたんでしょ。
 泉がそう言う。

「今はいいんだ」

 まだ吹っ切れてないから。
 こんな気持ちで新しい彼女作ってもきっと楽しくない。
 それはすぐに悟られてしまうだろう。
 だから綺麗な思い出になる日までじっと待つことにしてた。

「多田君なんか変わったね」

 今の俺なら冴とより戻すこともできるんじゃないか?
 頼子はそう聞いてくる。

「それは冴にその気があったらの話だろ?」

 冴は今さとりに夢中だ。
 そんな冴の邪魔をしたくない。
 今は2人の幸せを願うだけだ。

「……きっと冴も同じ事を思ってると思う」
「だといいな」
「ああ、私もいい加減いい男子いないかな?」

 頼子がふと漏らした。

「うん、彼氏欲しいとかそういう相談か?」
「まあね。流石に瞳子や冬莉見てたらそう思うよ」

 あいつら上手くやってるみたいだからな。
 見てるこっちが羨ましくなるほどの熱愛っぷりだ。
 冷やかす気にもなれない

「そういう話なら男子紹介してやろうか?」
「心辺りいるの?」
「まあ、何人かいるよ。どんな人が好みなんだ?」
「うーん、見た目は普通でもいいの」

 たくましくて頼りがいがあって優しい人。
 それが頼子の理想らしい。
 それが一番難しいんだけどな。

「わかった。明日テーマパークで自由行動だろ?その時までに用意しとくよ」
「そんなに簡単に出来るの!?」
「頼子さ、冬莉や瞳子と一緒に行動して気づかなかったんだろうけど案外人気高いんだぜ?」

 見た目は良い方だし、いつも明るく楽しそうにしてるし。

「じゃ、お願いしようかな」
「任せとけ。泉はどうする?」

 寺の柱などを触って構造を見ている泉に声をかけた。

「私はこんなんだからね。別に今すぐ作る必要性も分からないし良いよ」

 明日は独り身の俺に合わせてくれるらしい。
 二人のパワースポット巡りが終ると夕食を食べる。
 冬吾達ならラーメンなんだろうけど、流石に女子連れてラーメン屋は抵抗があった。
 考えた結果ファストフード店で済ませる事にした。
 京都まで来てそれもどうかと思ったけど、京料理はどれも高すぎるから。
 夕食を食べるとホテルに戻って風呂に入る。
 さすがに壁が天井まであって覗く事は無理だったけど、なぜか都市伝説の様に覗くスポットが言い伝えられてある。
 そこに男子が群がっていた。
 俺はそういう気になれなかった。
 そんな時は動画でも見てればいいやって思ったけど回数はかなり減った。
 サッカーでへとへとになっていたというのもあるけど。
 風呂を出るとスマホを弄っていた。
 
「何やってんだ?」

 隼人が聞いてきた。
 新選組の羽織を着ている。
 そんなもん買ってどうするつもりなんだ?

「ああ、男選び」
「誠司そっちに走ったのか?」
「ちげーよ」

 隼人に説明してる間に冬吾が帰って来た。
 冬吾にも説明している。
 明日は2人に協力してやれと言った。
 その間に見つけた。
 こいつなら大丈夫だろう。
 明日一緒に行動するように伝えた。

「ああ、そういう事ならいいよ」

 すぐに返事が返って来た。
 あとは明日の楽しみ……だと思ったけど考えた。
 いきなり会ってもどうすればいいか分からないだろう。
 頼子に許可をもらって颯真に連絡先を教える。
 頼子にも颯真の連絡先を教えた。
 あとは勝手にやってくれるだろう。
 颯真なら俺みたいな馬鹿はしない。
 きっと大丈夫だと思った。

「誠司はいいのか?」
「明日は泉が付き添ってくれるってさ」
「そうじゃなくて……」

 冬吾の言いたい事は分かる。
 だから答えた。

「俺は今充電中。神様の気が向いたら準備してくれるだろ」
「まあ、誠司がそういうならそれでいいけど」
「それより、冬吾はどこ行ってたんだ?」
 
 この時期の京都なんてどこもデートスポットだろ?

「ああ、写真撮って来た」

 そう言って冬吾は写真を見せてくれた。
 冬莉達も写真を撮ったらしい。
 みんな幸せで羨ましいけど、悔しいとは思わなかった。
 それは俺に対する罰だと思っていたから。
 いつか償いが済んだ時再び俺の側にいてくれる人が現れるだろう。
 それがいつかはわからないけど、いつかきっと……。
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