275 / 535
parents
しおりを挟む
(1)
今年はSHと渡辺班合同でキャンプに行く事にした。
それだけの広いキャンプ場を確保するのに純也が苦労していたが、「それならうちの施設を使っておくれ」と善明が言うので使わせてもらう事にした。
合同にしたのは理由がある。
別に書くのが面倒だったわけじゃない。
参加できるメンバーも幼い子供の面倒を見なければいけないものが多い。
「なら一緒にしないか?」
父さんがそう提案した。
父さん達も孫のはしゃいでる姿を見たいようだ。
亜依さんと神奈さんも一緒に来た。
水奈の方はちょうど盆休みで学が一日中付きっ切りでいるから。
学は恋の面倒を見たりしてるし身籠ってる亜依さんの代わりに台所に立っていた。
水奈の監督も出来るそうだ。
「もう安定期だし行ってもいいだろ!」
「行って騒いでもしもの事があったらどうするんだ!?」
学が水奈をそう説得したらしい。
そのかわり近所のショッピングモールくらいならと連れて行くそうだ。
で、家も去年は結と比呂がまだ幼かったけど1歳になったし山なら大丈夫だろうと行く事にした。
さすがにこれだけの車が集合する方が手間になる。
現地集合にした。
大地は僕の後ろをついてくる。
大地もやっぱり運転上手いな。
しっかり車間距離保ってる。
ついでにルームミラーを見ると、じっと冬夜を見ている結莉がいる。
結は寝ていた。
結は必要時以外は大体寝てる。
遊ぶのも面倒で例の能力で適当に遊んでる。
どんな子供になるのかも気になったけど……。
「あの子達が成人したら一緒に飲みませんか?」
美希は待ち遠しいらしい。
まだずっと先の話だけど。
酒井リゾートフォレストに着くと結を起こす。
食べ物があるのかと探すが無いと分かるとすぐに寝る。
ぽかっ
「結莉と遊んで!」
「茉莉も!」
片桐家の男子って皆こうなる運命なんだろうか?
冬吾もやられたらしいし。
ゲート付近のチケット売り場で善明が皆の手首にリストバンドをつけている。
これがあると乗り物に乗り放題らしい。
それより園内のレストランでは食べ放題らしい。
それは嬉しい。
結が寝るのは他にも理由がある。
歩くのが面倒らしい。
しかし今日は結莉と茉莉がいる。
結莉が手を出してにこりと笑うと意図を察したのが仕方なさそうに結莉と手を繋いでる。
「結莉だけずるい!茉莉も!」
最近結莉と茉莉で結の奪い合いになる。
すると比呂が茉莉の手を取る。
「うぅ……」
仕方なさそうに比呂の手を握る茉莉。
4人の手首にもリストバンドをつけていたので係員がバーコードリーダーを当てて通していた。
そんな結莉と茉莉を僕達は不思議そうに見ていた。
「あの積極さは間違いなく愛莉さんや翼なんだろうな」
水奈の父さんが言った。
「だとするとあのやる気の無さはトーヤや空か?」
水奈の母さんが言う。
「いくら私でも1歳で彼氏はなかったよ」
母さんが言う。
たまに結莉が結を注意している。
「ちゃんと歩くの!」
結はバレないように自分の体を浮かせて能力で移動していた。
何でもありになってきてるな結の奴。
それに気づいた結莉も凄いけど。
「美希、気をつけなさい。大きくなった時あのままだと間違いなく冬夜さんより酷くなる」
「そうはいってもさ、愛莉。冬夜意外と賢いんだよね」
どういう意味だろう?
結は美希や僕の前では絶対にあれをやらないらしい。
美希がボールを投げて「とってきておいでー」と言うと仕方なさそうに歩いて取りに行くらしい。
対照的に比呂が我先にとよたよた急いで取りにいくんだけど。
結が僕に似たのなら比呂は誰に似たのだろう?
「その話を聞いていると秋久に近い物があるよ」
善明が言う。
年相応にはしゃぐ陽葵や菫に対して全く無駄な動きをしない秋久。
生まれて1年で自分の人生を悲観してるんじゃないかと翼と一緒に心配してるらしい。
「善君!どうにかしなさい!あの性格は間違いなく善君でしょ!」
多分善明も似たようなもんだろうけど。
冬莉達は自由気ままに遊んでる。
中学生なら子供達だけでも大丈夫だろうと大人たちはのんびり散策してる。
「パパあれ一緒に乗ろう!」
陽葵や菫から腕を引っ張られる善明。
「普段相手してないんだから休みの日くらいしてあげて」
翼が言う。
陽葵と菫は喜んでいる。
「陽葵分かってるよね!?」
「……大丈夫」
何か企んでる?
気のせいだろうか?
そうじゃなかった。
「翼が秋久の世話してる今がチャンスだよ!」
は?
「そうだね。ジェットコースターで”キャー”ってパパを誘惑するよ」
そ、そういうことは翼の前で言ったらダメだと思うんだけど。
「2人とも残念でした。ジェットコースターには乗れないよ」
「どうして?」
「まだまだ背丈が足りないから」
まあ、1歳の子供はほとんどの乗り物は無理だよな。
「そんなの詰まんない!」
菫が駄々をこねだす。
おろおろしている善明。
「ほ、ほらあれなら一緒に乗れるから」
そうってティーカップやメリーゴーランドを勧める善明。
「あんな甘っちょろいの乗ってパパ楽しいの?」
「娘と乗るのに楽しくないわけないだろ」
「うーん、じゃあ我慢する」
「と、いうわけで翼、手伝っておくれ」
「じゃあ、空。秋久お願い」
そう言って翼は僕に秋久を任せて2人を連れてメリーゴーランドに乗る。
しかしすぐに戻って来た。
僕は観覧車に乗ることにした。
僕と美希の間に比呂を乗せる。
反対側に茉莉と結と結莉を乗せる。
結はは景色に興味があるのだろうか?
太ももの上をよじのぼって高い位置から見る景色を眺めてる。
なんかあまり見せない方がいいような気がする。
結は自分の体も動かす術がある。
これを利用すれば多分空を飛ぶことが出来んじゃないだろうか?
多分するだろう。
もしもの事があると怖い。
そんな事を考えてると美希が「大丈夫ですよ」って言った。
「どうして?」
「だってもうしてたから」
へ?
美希がキッチンにいてカウンターに隠れてしまったから「ママー?」と探していたらしい。
ちょうど親とかくれんぼするのが楽しい時期だと天音から聞いていたらしい。
もっとも天音の場合、結莉や茉莉は「隠れても無駄だぞー!」とクローゼットとかを蹴飛ばして開けて銃を構えていたらしいけど。
茉莉は異常に力がある。
合板で出来たドアくらい軽く穴をあけてるらしい。
「茉莉達を幼稚園に入れても大丈夫だろうか?」
実家に帰って母さん達に相談したらしい。
幼稚園児にして死人を作りそうな勢いだ。
だけど母さんは「大丈夫です」と笑って答えた。
「なんでそう言い切れるんだ?」
天音は不思議に思ったらしい。
すると母さんが笑顔で答えた。
「天音もやりたい放題してたでしょ」
で、結は歩いて探し回るという行動をとらなかった。
本当に無駄な力を使いたくないらしい。
空中に浮かび上がったらしい。
歩くより大変な気がするんだけど結にとってはそうなんだろう。
そして天井くらいの高度で止まって結を見つけると「ままー」と言ったらしい。
能力を持つと同時にその能力の有効な使い方を身につけてそしてリスクも把握してるらしい。
電線に当たって感電死なんてことは多分ないはず。
美希はそう言っていた。
観覧車を出ると、さすがに腹が減ったのでレストランに行くと母さん達が座って話をしていた。
「父親も大変だろ?」
父さんがそう言って笑う。
「愛莉さん達もそうだったのですか?」
美希が聞いていた。
「天音と翼で空を取り合って大変でしたよ」
やっぱりそうなのか。
今は何も考えずに食べる事に熱中してる結と比呂を見ながらそう思った。
「しかし片桐家は皆とんでもない子供を育ててるな」
水奈の父さんがそう言っていた。
「まあ、冬夜はスポーツには向いてないだろうね」
父さんがそう言う。
スポーツの試合でこの能力は既に反則だ。
茉莉と結莉はどうなんだろう?
「それが……」
母さんが茉莉達を見て悩んでいた。
天音がボールを投げて「どっちがとってくるかな~?」ってやったらしい。
すると「私疲れるの嫌い」と結莉は言って、茉莉は「私だって面倒だからイヤ!」と言い出して喧嘩になったらしい。
天音も流石に大地に相談したらしい。
このままでいいのかと自分の子供には思うらしい。
天音の小学生の頃もそんな感じだっただろうに。
「天音は教育苦労しそうだね」
翼が笑っていた。
「善明はどうなんだ?」
僕が聞くと善明は翼を見た。
翼はくすっと笑っていた。
「陽葵と菫はボールを追いかけようとするんだけど……」
秋久は一歩でも動くのが面倒らしい。
翼がボールを投げるとほぼ同時に飛び上がってキャッチするらしい。
「ずるい!!」
そう言って二人で秋久をポカポカ叩きだすらしい。
抵抗するのも面倒だ、致命傷にならなければいいや。
そんな事を考えているのか知らないけど秋久は無抵抗らしい。
「善明!あなた息子の教育も出来ない親なの!?」
善明の母さんが怒り出した。
「き、きっと女性に暴力を振るったらいけないと学んでるんだよ」
善明の父さんが宥める。
「俺の孫もきっとイケメンの運動好きな男になるだろうな」
水奈の父さんが言うと「お前の変態癖だけはつかないのを祈るよ」と水奈の母さんが言う。
「学がいるから大丈夫だよ」
母さんがそう言う。
「男の子はそれでいいかもしれないけど女の子もいるんだぞ……水奈を見てると不安だぞ」
水奈の母さんがそう言って頭を抱えている。
そのいい例が結莉と茉莉なんだろうな。
「神奈はまだいい!学はともかく遊が父親なんて悪い予感しかしないわよ」
学の母さんが言っている。
まさかとは思うけど……。
翼の顔を見ていた。
翼も気づいたのか僕の顔を見てくすっと笑っている。
「千帆達と同じ仕掛けを企んでるみたい」
それも遊と共謀して。
うわぁ……。
思わず表情に出てしまった。
そんな僕を見て学の母さんは気づいた。
「ま、まさか翼、瑛大の心覗いた?」
「な、なんだと!?」
学の両親が翼を見ている。
翼は何も言わず笑みをこぼす。
「お前らまさか……」
「ゆ、遊が娘の教育法を教えてくれって言うから」
聞く相手間違ってないか遊。
すると水奈の母さんも心配になったんだろう。
「お、お前も同じ事企んでるんじゃないだろうな?」
「ば、馬鹿言うな。学は真面目過ぎるから無理だろ!?」
「学じゃなかったら企んでたのか!?」
「あ……」
「お前たちは孫の世代までそのトラブルメーカー的な遺伝子を持たせるつもりか」
渡辺さんが呆れていた。
渡辺さんも苦労してないわけじゃない。
「まさ君。乗り物に乗らないで食べてばっかり!少しは動こうよ!」
「正俊!せめて彼女の前でくらい少しは自重しろ!」
「父さんが言ってたよ。ありのままの自分を愛してくれる人を大切にしろって」
「正志!お前このままでいいと思ってるのか!?」
美嘉さんが旦那さんを睨みつけてる。
「な、何とかなるだろ……」
笑って誤魔化してた。
「そろそろキャンプ場に行った方がいいんじゃないか?」
父さんが時計を見ながら言うとレストランを出る。
ゲートに皆が揃うとキャンプ場に移動する。
女性陣が夕食の準備をしているうちに僕達はテントやらを準備する。
その時に父さんに聞いてみた。
「父さんは孫の心配とかしてないの?」
「何か不安な事があるの?」
「特にないけど」
「あるんだったら相談に乗るけど、無いのだったら美希と2人で悩みなさい」
父さん達も同じだったらしい。
孫の教育方針は子供達で考えるべきだ。
どうしてもわからない時だけ手を貸す。
父さん達からその内容に口出しするつもりはない。
「それで大丈夫なの?」
「空もそんな心配するんだね」
父さんはそう言って笑った。
「父さん達も同じだったから大丈夫だよ。その結果が空や翼と天音なんだから」
なるほどな。
「片桐家ってサラブレッドみたいな子供を作っていくな」
木元輝夜の父親が言っていた。
「それが不思議なんだよね」
結はきっとあの程度の能力だけじゃないはず。
将来もっととんでもない能力を持つだろう。
大事なのは能力の優劣じゃない。
その能力を何に活かすかの善悪の判断だ。
それだけはしっかり注意しておきなさい。
父さんはそれだけ言っていた。
「まあ、それも多分大丈夫だと思うけどね」
「どうして?」
「空達が証明してるじゃないか」
自分が正しい行動をしていたら絶対に間違いはない。
子供を信じてあげなさい。
「焼く準備できてるか~?」
美嘉さん達が肉とかを持ってやってきた。
「じゃ、今夜は楽しもう」
そう言って父さんは肉を受け取りに行った。
子育ては難しい。
難しいから思い知る。
自分の父親の偉大さを。
今年はSHと渡辺班合同でキャンプに行く事にした。
それだけの広いキャンプ場を確保するのに純也が苦労していたが、「それならうちの施設を使っておくれ」と善明が言うので使わせてもらう事にした。
合同にしたのは理由がある。
別に書くのが面倒だったわけじゃない。
参加できるメンバーも幼い子供の面倒を見なければいけないものが多い。
「なら一緒にしないか?」
父さんがそう提案した。
父さん達も孫のはしゃいでる姿を見たいようだ。
亜依さんと神奈さんも一緒に来た。
水奈の方はちょうど盆休みで学が一日中付きっ切りでいるから。
学は恋の面倒を見たりしてるし身籠ってる亜依さんの代わりに台所に立っていた。
水奈の監督も出来るそうだ。
「もう安定期だし行ってもいいだろ!」
「行って騒いでもしもの事があったらどうするんだ!?」
学が水奈をそう説得したらしい。
そのかわり近所のショッピングモールくらいならと連れて行くそうだ。
で、家も去年は結と比呂がまだ幼かったけど1歳になったし山なら大丈夫だろうと行く事にした。
さすがにこれだけの車が集合する方が手間になる。
現地集合にした。
大地は僕の後ろをついてくる。
大地もやっぱり運転上手いな。
しっかり車間距離保ってる。
ついでにルームミラーを見ると、じっと冬夜を見ている結莉がいる。
結は寝ていた。
結は必要時以外は大体寝てる。
遊ぶのも面倒で例の能力で適当に遊んでる。
どんな子供になるのかも気になったけど……。
「あの子達が成人したら一緒に飲みませんか?」
美希は待ち遠しいらしい。
まだずっと先の話だけど。
酒井リゾートフォレストに着くと結を起こす。
食べ物があるのかと探すが無いと分かるとすぐに寝る。
ぽかっ
「結莉と遊んで!」
「茉莉も!」
片桐家の男子って皆こうなる運命なんだろうか?
冬吾もやられたらしいし。
ゲート付近のチケット売り場で善明が皆の手首にリストバンドをつけている。
これがあると乗り物に乗り放題らしい。
それより園内のレストランでは食べ放題らしい。
それは嬉しい。
結が寝るのは他にも理由がある。
歩くのが面倒らしい。
しかし今日は結莉と茉莉がいる。
結莉が手を出してにこりと笑うと意図を察したのが仕方なさそうに結莉と手を繋いでる。
「結莉だけずるい!茉莉も!」
最近結莉と茉莉で結の奪い合いになる。
すると比呂が茉莉の手を取る。
「うぅ……」
仕方なさそうに比呂の手を握る茉莉。
4人の手首にもリストバンドをつけていたので係員がバーコードリーダーを当てて通していた。
そんな結莉と茉莉を僕達は不思議そうに見ていた。
「あの積極さは間違いなく愛莉さんや翼なんだろうな」
水奈の父さんが言った。
「だとするとあのやる気の無さはトーヤや空か?」
水奈の母さんが言う。
「いくら私でも1歳で彼氏はなかったよ」
母さんが言う。
たまに結莉が結を注意している。
「ちゃんと歩くの!」
結はバレないように自分の体を浮かせて能力で移動していた。
何でもありになってきてるな結の奴。
それに気づいた結莉も凄いけど。
「美希、気をつけなさい。大きくなった時あのままだと間違いなく冬夜さんより酷くなる」
「そうはいってもさ、愛莉。冬夜意外と賢いんだよね」
どういう意味だろう?
結は美希や僕の前では絶対にあれをやらないらしい。
美希がボールを投げて「とってきておいでー」と言うと仕方なさそうに歩いて取りに行くらしい。
対照的に比呂が我先にとよたよた急いで取りにいくんだけど。
結が僕に似たのなら比呂は誰に似たのだろう?
「その話を聞いていると秋久に近い物があるよ」
善明が言う。
年相応にはしゃぐ陽葵や菫に対して全く無駄な動きをしない秋久。
生まれて1年で自分の人生を悲観してるんじゃないかと翼と一緒に心配してるらしい。
「善君!どうにかしなさい!あの性格は間違いなく善君でしょ!」
多分善明も似たようなもんだろうけど。
冬莉達は自由気ままに遊んでる。
中学生なら子供達だけでも大丈夫だろうと大人たちはのんびり散策してる。
「パパあれ一緒に乗ろう!」
陽葵や菫から腕を引っ張られる善明。
「普段相手してないんだから休みの日くらいしてあげて」
翼が言う。
陽葵と菫は喜んでいる。
「陽葵分かってるよね!?」
「……大丈夫」
何か企んでる?
気のせいだろうか?
そうじゃなかった。
「翼が秋久の世話してる今がチャンスだよ!」
は?
「そうだね。ジェットコースターで”キャー”ってパパを誘惑するよ」
そ、そういうことは翼の前で言ったらダメだと思うんだけど。
「2人とも残念でした。ジェットコースターには乗れないよ」
「どうして?」
「まだまだ背丈が足りないから」
まあ、1歳の子供はほとんどの乗り物は無理だよな。
「そんなの詰まんない!」
菫が駄々をこねだす。
おろおろしている善明。
「ほ、ほらあれなら一緒に乗れるから」
そうってティーカップやメリーゴーランドを勧める善明。
「あんな甘っちょろいの乗ってパパ楽しいの?」
「娘と乗るのに楽しくないわけないだろ」
「うーん、じゃあ我慢する」
「と、いうわけで翼、手伝っておくれ」
「じゃあ、空。秋久お願い」
そう言って翼は僕に秋久を任せて2人を連れてメリーゴーランドに乗る。
しかしすぐに戻って来た。
僕は観覧車に乗ることにした。
僕と美希の間に比呂を乗せる。
反対側に茉莉と結と結莉を乗せる。
結はは景色に興味があるのだろうか?
太ももの上をよじのぼって高い位置から見る景色を眺めてる。
なんかあまり見せない方がいいような気がする。
結は自分の体も動かす術がある。
これを利用すれば多分空を飛ぶことが出来んじゃないだろうか?
多分するだろう。
もしもの事があると怖い。
そんな事を考えてると美希が「大丈夫ですよ」って言った。
「どうして?」
「だってもうしてたから」
へ?
美希がキッチンにいてカウンターに隠れてしまったから「ママー?」と探していたらしい。
ちょうど親とかくれんぼするのが楽しい時期だと天音から聞いていたらしい。
もっとも天音の場合、結莉や茉莉は「隠れても無駄だぞー!」とクローゼットとかを蹴飛ばして開けて銃を構えていたらしいけど。
茉莉は異常に力がある。
合板で出来たドアくらい軽く穴をあけてるらしい。
「茉莉達を幼稚園に入れても大丈夫だろうか?」
実家に帰って母さん達に相談したらしい。
幼稚園児にして死人を作りそうな勢いだ。
だけど母さんは「大丈夫です」と笑って答えた。
「なんでそう言い切れるんだ?」
天音は不思議に思ったらしい。
すると母さんが笑顔で答えた。
「天音もやりたい放題してたでしょ」
で、結は歩いて探し回るという行動をとらなかった。
本当に無駄な力を使いたくないらしい。
空中に浮かび上がったらしい。
歩くより大変な気がするんだけど結にとってはそうなんだろう。
そして天井くらいの高度で止まって結を見つけると「ままー」と言ったらしい。
能力を持つと同時にその能力の有効な使い方を身につけてそしてリスクも把握してるらしい。
電線に当たって感電死なんてことは多分ないはず。
美希はそう言っていた。
観覧車を出ると、さすがに腹が減ったのでレストランに行くと母さん達が座って話をしていた。
「父親も大変だろ?」
父さんがそう言って笑う。
「愛莉さん達もそうだったのですか?」
美希が聞いていた。
「天音と翼で空を取り合って大変でしたよ」
やっぱりそうなのか。
今は何も考えずに食べる事に熱中してる結と比呂を見ながらそう思った。
「しかし片桐家は皆とんでもない子供を育ててるな」
水奈の父さんがそう言っていた。
「まあ、冬夜はスポーツには向いてないだろうね」
父さんがそう言う。
スポーツの試合でこの能力は既に反則だ。
茉莉と結莉はどうなんだろう?
「それが……」
母さんが茉莉達を見て悩んでいた。
天音がボールを投げて「どっちがとってくるかな~?」ってやったらしい。
すると「私疲れるの嫌い」と結莉は言って、茉莉は「私だって面倒だからイヤ!」と言い出して喧嘩になったらしい。
天音も流石に大地に相談したらしい。
このままでいいのかと自分の子供には思うらしい。
天音の小学生の頃もそんな感じだっただろうに。
「天音は教育苦労しそうだね」
翼が笑っていた。
「善明はどうなんだ?」
僕が聞くと善明は翼を見た。
翼はくすっと笑っていた。
「陽葵と菫はボールを追いかけようとするんだけど……」
秋久は一歩でも動くのが面倒らしい。
翼がボールを投げるとほぼ同時に飛び上がってキャッチするらしい。
「ずるい!!」
そう言って二人で秋久をポカポカ叩きだすらしい。
抵抗するのも面倒だ、致命傷にならなければいいや。
そんな事を考えているのか知らないけど秋久は無抵抗らしい。
「善明!あなた息子の教育も出来ない親なの!?」
善明の母さんが怒り出した。
「き、きっと女性に暴力を振るったらいけないと学んでるんだよ」
善明の父さんが宥める。
「俺の孫もきっとイケメンの運動好きな男になるだろうな」
水奈の父さんが言うと「お前の変態癖だけはつかないのを祈るよ」と水奈の母さんが言う。
「学がいるから大丈夫だよ」
母さんがそう言う。
「男の子はそれでいいかもしれないけど女の子もいるんだぞ……水奈を見てると不安だぞ」
水奈の母さんがそう言って頭を抱えている。
そのいい例が結莉と茉莉なんだろうな。
「神奈はまだいい!学はともかく遊が父親なんて悪い予感しかしないわよ」
学の母さんが言っている。
まさかとは思うけど……。
翼の顔を見ていた。
翼も気づいたのか僕の顔を見てくすっと笑っている。
「千帆達と同じ仕掛けを企んでるみたい」
それも遊と共謀して。
うわぁ……。
思わず表情に出てしまった。
そんな僕を見て学の母さんは気づいた。
「ま、まさか翼、瑛大の心覗いた?」
「な、なんだと!?」
学の両親が翼を見ている。
翼は何も言わず笑みをこぼす。
「お前らまさか……」
「ゆ、遊が娘の教育法を教えてくれって言うから」
聞く相手間違ってないか遊。
すると水奈の母さんも心配になったんだろう。
「お、お前も同じ事企んでるんじゃないだろうな?」
「ば、馬鹿言うな。学は真面目過ぎるから無理だろ!?」
「学じゃなかったら企んでたのか!?」
「あ……」
「お前たちは孫の世代までそのトラブルメーカー的な遺伝子を持たせるつもりか」
渡辺さんが呆れていた。
渡辺さんも苦労してないわけじゃない。
「まさ君。乗り物に乗らないで食べてばっかり!少しは動こうよ!」
「正俊!せめて彼女の前でくらい少しは自重しろ!」
「父さんが言ってたよ。ありのままの自分を愛してくれる人を大切にしろって」
「正志!お前このままでいいと思ってるのか!?」
美嘉さんが旦那さんを睨みつけてる。
「な、何とかなるだろ……」
笑って誤魔化してた。
「そろそろキャンプ場に行った方がいいんじゃないか?」
父さんが時計を見ながら言うとレストランを出る。
ゲートに皆が揃うとキャンプ場に移動する。
女性陣が夕食の準備をしているうちに僕達はテントやらを準備する。
その時に父さんに聞いてみた。
「父さんは孫の心配とかしてないの?」
「何か不安な事があるの?」
「特にないけど」
「あるんだったら相談に乗るけど、無いのだったら美希と2人で悩みなさい」
父さん達も同じだったらしい。
孫の教育方針は子供達で考えるべきだ。
どうしてもわからない時だけ手を貸す。
父さん達からその内容に口出しするつもりはない。
「それで大丈夫なの?」
「空もそんな心配するんだね」
父さんはそう言って笑った。
「父さん達も同じだったから大丈夫だよ。その結果が空や翼と天音なんだから」
なるほどな。
「片桐家ってサラブレッドみたいな子供を作っていくな」
木元輝夜の父親が言っていた。
「それが不思議なんだよね」
結はきっとあの程度の能力だけじゃないはず。
将来もっととんでもない能力を持つだろう。
大事なのは能力の優劣じゃない。
その能力を何に活かすかの善悪の判断だ。
それだけはしっかり注意しておきなさい。
父さんはそれだけ言っていた。
「まあ、それも多分大丈夫だと思うけどね」
「どうして?」
「空達が証明してるじゃないか」
自分が正しい行動をしていたら絶対に間違いはない。
子供を信じてあげなさい。
「焼く準備できてるか~?」
美嘉さん達が肉とかを持ってやってきた。
「じゃ、今夜は楽しもう」
そう言って父さんは肉を受け取りに行った。
子育ては難しい。
難しいから思い知る。
自分の父親の偉大さを。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる