姉妹チート

和希

文字の大きさ
286 / 535

Preserved Roses

しおりを挟む
(1)

「結」
 
 結莉は相変わらず結の隣に座って上機嫌だ。
 結はここに食い物がないと分かっているらしくて暇そうにしている。
 茉莉の方も暇そうに座っているのだけど隣にいる朔を意識しているようにも見れる。
 単に邪魔だなこいつと思ってるだけかもしれないけど。
 なずなや花は自分の子供を抱きかかえ大切に見ている。
 水奈の子供は水奈が優奈を抱えて愛菜を翼が抱えている。
 優翔は比呂と遊んでいて、茉奈は……気のせいだろうか?
 結莉と遊んでいる結を意識しているようだった。

「翼、助かるよ」
「気にしないで、4人は大変だろうね」
「学が意外に慣れていてびっくりしたよ」

 自分よりも上手に赤ちゃんを世話するらしい。
 優奈も愛菜もしっかり学になついてるらしい。

「それ、父親が学で羨ましいよ」

 なずなが言う。

「あの馬鹿また遊びに行ってるのか?」
「ある意味そっちの方がいいかもしれない」
「どういう意味?」

 翼が聞いていた。
 翼には分からなかったのだろうか?
 私は何となく気づいていた。

「ある意味望んでいたんだろうね。娘が出来るのを……」

 なずなの家には遊だけじゃない、遊の父親が来るようになった。
 そしてどっちがオムツを替えるか揉めてるらしい。
 やはり予想通りだった。
 そして遊の母親は夜勤もあるから、そんな日はなずなの手に負えない。
 極めつけは寝ている琴音にしょうもない事を吹き込んでいる

「いいか、おっぱいの大きな子に育つんだぞ」
「いい加減にしてください!」

 なずなも我慢の限界が来たらしい。

「その話は私も聞いてる……」

 水奈が言った。
 学が救援に行くらしい。

「それはすごいね……」

 美希が驚いていた。
 2歳組は芝生の上で遊んでいる。

「結。お花だよ」
「食べられる?」
「わかんない」

 秋久なら知ってるんじゃないかと思った。
 しかし秋久と結の注意は違うところに向かっていた。
 不審な男の集団がこっちに向かっている。
 翼も気づいたらしい。
 秋久も菫達の前に立つ。
 朔も茉莉をかばうようにしている。
 頼もしい男の子に育っている様だ。
 ってそんな事言ってる場合じゃない。

「水奈達は動くなよ」

 赤ちゃんを抱えて乱闘は無理だろうから。
 男達がさらに近づくと結の警戒心が最高潮に達していた。
 
「うぅ……」

 唸り声をあげている。
 そんな事意にも介さず私達に近づいてきた。

「なんだお前ら?」

 私が聞くと男たちの一人が懐から何か取り出そうとしていた。
 それが男たちの不用意な動作だった。
 結莉と茉莉が咄嗟に動く。
 2人で男の足の裏を蹴飛ばすと男は膝を崩して倒れる。
 その男に向かって結莉がモデルガンを突きつける。

「ガッデム!」

 しかし子供が拳銃を持ってるわけがない。
 容易く結莉の腕を掴もうとしている。
 やばいと思った時だった。
 男は突然吹き飛ばされる。
 それは他の男たちも同じだった。
 すると結は結莉の前に立って自分のモデルガンを取り出す。

「結!それはダメ!」
 
 美希が叫ぶ。
 しかし結はモデルガンを頭上に向けて発砲する。
 何を発砲しているのか分からない。
 圧縮した空気を放っているんじゃないかとパパは言っていたけど。
 よく分からない一筋の光が空に昇っていく。
 そして立ち上がろうとしていた男たちに向かって言う。

「殺すよ?」

 それが2歳の子供に出来るかどうかはさっきの光の柱を見たら理解したのだろう。
 男たちは立ち去って行った。
 私は慌てて茉莉達の下に駆け寄る。
 2人とも平気そうだった。
 この子達はまだ成長途中。
 だけどなまじっか戦闘能力があるばかりに取り返しのつかない事態になりかねない。
 普通の子よりも危険だ。
 しかしそんな常識を覆すのが結だった。
 そんな結でも結莉が危険だと思ったら自分の能力を躊躇うことなく使う。
 結莉が一番安全なのかもな。

「今のって……FGなの?」

 なずなが聞いていた。

「いや、多分原川組だと思う」

 翼が空から聞いた情報を聞いていた。
 それはなずな達にも教えておかないと子供が狙われる。
 そう判断したからだろう。

「私達これからどうなるの?」

 花は泣きそうだ。

「皆の安全は私達が確保するから心配しないで」

 そう言いながら美希がスマホで連絡してる。
 
「でも外出は出来ないんじゃないの?」

 夕飯の買い出しとかどうしても外出しなきゃいけない事もある。

「SPつけるから大丈夫」
「私先に帰るわ」

 翼が水奈に悠翔を返すと比呂と結を連れて帰る。

「何かあったのか?」
「パパがちょっと事務所に寄って欲しいって言ってるから」

 それがどういう意味かは何となく察した。

「私達も今日は帰ろう。皆夜間の外出は避けた方がいい」

 少なくとも旦那と一緒に行動しろ。
 自分が戦闘できても子供に銃口が向いたら意味が無いのは今経験しただろ?

「そ、そうだね」

 花がそう言って快を抱きかかえて車に向かうと皆車に戻った。
 ふざけた真似しやがって。
 私も大地に連絡する。

「早く帰るよ。空と相談もしたいし」

 大地から返事が来た。
 空がどんな手段を準備していたのか分からないけど、事態はさらに深刻化する。

(2)

「片桐先輩。翼さんきましたよ」

 桃花さんが言うと入口を見る。

「空!!」
「話は聞いた。こっちにおいで」

 翼を連れて社長室に向かう。
 社長も恵美さん達と話をしていたようだ。
 なずな達にはSPをつけるとかそんな話をしていた。

「そんなに早死にしたいなら望み通り殺してやろうじゃない」

 恵美さんはそう言っているようだった。
 恵美さんとの電話を終えると社長はこっちを見た。

「じゃ、空。もう少し待ってくれないか?」
「何かあるの?」
「誠を待つから」

 何には念を入れるらしい。
 この場でどこにいるか突き止めるつもりらしい。

「冬夜。待たせたな」
 
 ノートPCを持った水奈の父さんが来た。
 それを見ると父さんが僕に「じゃ、始めて」と言う。
 僕はスマホを取り出して電話をかける。
 相手はすぐに出た。

「誰だ?」
「お前が原川郁夫か?」
「誰だてめぇ」

 間違いはなさそうだ。

「それはあまりに酷い対応じゃない?散々人をコケにしておいて最初の一声がそれ?」

 名乗らないと分からないような馬鹿なのか?

「SHのガキか?」
「それだけわかってればいいよ。今日は傑作だったね。2歳ちょっとの子供に返り討ちにあったそうじゃないか」
「誰に向かって物を言ってるのか分かってるのか?ガキ」
「それはこっちのセリフ。誰に喧嘩売ってるのか覚悟出来てるんだろうな?」
「ちょっとばかり喧嘩が強いからってガキが調子に乗るなよ」
「馬鹿は死んでも直ならないというけど本当にそうみたいだね」

 ビルを破壊されて、自宅も破壊されて、まだ懲りないとか本物の馬鹿だろ?

「お前らの仕業か?ただで済むと思ってるんじゃないだろうな?」
「2歳の子供に追い返されたお前らに言われても説得力ないぞ」
「親でも殺されないと分からないか?」
「子供に勝てないのに親に勝てると思ってるの?」

 言っとくけど親が出てきたらお前ら本当にゲームオーバーだぞ?

「素人が調子に乗るなよ」
「素人だと侮ってるから失敗繰り返してるんだろ?」
「……お前と話すことはもうない」
「お前さ。ひょっとしてまだ気づいてないのか?」
「何のことだ?」

 ビルを破壊されて、家を破壊されて、しかもスマホの番号までバレてる。
 それがどういう意味がわからないのか?

「調子に乗るなよ。お前の事は大体把握してる。これだけ警告してもまだ分からないなら思い知らせてやる」
「ただのチンピラだと思ってるんだろうが俺達は……」
「誠心会だかなんだか知らないけどただのチンピラには変わらないよ。死にたいなら殺してやるから待ってろ」

 この期に及んであちこちを彷徨って逃げ隠れしてる大将の集団なんざ怖くねーよ。

「お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
「そのセリフそのまんま返してやる。調子に乗ってると本当に殺すよ」
「……後悔するなよ?」

 男がそう言って電話は切れた。

「うん、いいんじゃないかな?」
「ちょっと待ってよパパ!あれじゃ私達が危険にさらされるだけじゃない」

 翼が社長に言う。

「それはどうかな?」

 社長が言う。
 その根拠はあった。
 ここにきて誠心会の名前を出して来た。
 それでこっちをビビらせようとしたのだろう。
 当然そんなの関係ない。
 チンピラがいくら群れてもチンピラだ。
 素人に潰されるという失態を見せたいのなら望み通りにしてやる。

「あと一声欲しい所だな」

 水奈の父さんが言った。

「もう一つ気になる」

 子供を誘拐しようとして失敗した。
 その次の手はなんだ?
 それを奴らは持っているとさっきの電話を聞いていて確信したと社長が言う。

「空も気をつけなさい。どこにウィークポイントがあるのか父さんにも分からない」

 手が読めない相手ほどやりづらい事はない。

「空、光太が今夜集まろうって」
「どこに?」
「子供連れて居酒屋はまずいでしょ?」

 さすがに陽葵と菫だけを家に置いていけない。

「そういう時は焼鳥屋さんとかが便利だよ。小さな子供で座敷で広い場所があるから」

 社長がそう言うのでその事を翼が光太に教える。

「片桐先輩。すいません、定時なので上がります」

 桃花さんが言う。

「わかった。明日チェックしておくから」
「はい。お疲れ様でした」

 そう言って桃花さんが帰る。

「じゃ、僕達も」
「空、相手は空が思っている以上に焦っている。そういう時の苦し紛れの一手が一番怖いんだ」

 気をつけなさいと社長が言うと僕は翼と一緒に焼き鳥屋に向かった。

(3)

「光太!今さらブルって手を引こうとかふざけた事言ったらお前から殺すぞ」

 天音と水奈と紗理奈はいつでも殺しに行くつもりみたいだ。
 天音にいたっては恵美さんと相談したらしい。
 全国に支部があるなら全部焼き払ってやる。
 善明が恐れていたことが現実になろうとしている。

「それはだめだよ」

 僕はそう言った。

「空!お前もビビったのか!?」

 天音が言う。

「自分の子供を狙われたんだ。ただで済ますつもりはないよ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「……天音は自分の手を使わず焼き野原にした程度で気が済むわけ?」
「どういう意味?」

 翼が聞くと僕は答えた。
 最初からそのつもりだった。
 壊滅させるなんて真似はやろうと思えば造作でもないだろう。
 しかしそのつもりなら端から父さん達に任せていた。
 ありとあらゆる面で叩きつぶすだろう。 
 しかしそれじゃ僕は気が済まない。
 この期に及んで姿を見せない原川を引きずり出してボコボコにしないと気が済まない。
 だから狙いを原川に絞っている。
 家まで襲撃した。
 にもかかわらず逃げ惑う原川。
 案外しょぼい存在なんじゃないかと思うくらい情けない。
 どうにかして強引にでも引きずり出したくなった。
 FGを使わなくなったのは多分FGの戦力が足りないからじゃないだろう。
 FGに対する影響力が小さくなったんだろう。
 勝次にしろ喜一にしろまず自分たちが前に出ていた。
 それすらしない男に何を求める?
 あともう一押しだ。
 父さん達は別の目的があるらしいけど、僕達の目的はFGの壊滅。
 メンバーの前でボコボコにされたら離れていくだろう。

「なるほど。こそこそ逃げ回っていざという時に陣頭に立たないリーダーなんて誰もついてこないですよね」

 大地が言う。

「じゃ、その原川ってやつボコらせるの私に任せろ!」
「それはだめ、天音。話を聞いていたの?」

 翼が天音に説明する。
 全員皆殺しにするのも可能だけど大将同士でけりをつけましょう。
 僕が言ってるのはそういう意味だ。

「出て来なかったらどうするんだよ?」

 天音が聞いた。

「皆僕にいつも言ってるじゃないか?」
「……そういう事か」

 学が言った。
 小者相手に空の王の手を煩わせるまでもない。下がってろ。

「何が何でも原川をあぶりだせばいい。そういう事ですね?」

 大地が言うと、僕は頷いた。

「問題はその姑息な鼠をどうやって釣るかだね」

 善明が言うと全員のスマホが鳴った。
 秋斗からだ。

「ごめん、SHの集まりに桃花行ってるか?」

 え?

「桃花さんは定時で上がったよ」
「そうか……何かあったんだろうか。連絡しても出ないんだ」

 常に最悪の事態を想定しろ。
 父さんが言ってたな。
 まさか……。
 その時僕のスマホがなる。

「楠木桃花を預かっている。交渉だ。こっちの用件はただ一つ。片桐空の命」
「桃花がいるっていう証拠は?」
「片桐先輩!私の事はいいから!」

 間違いなく桃花の声だった。

「取引の時刻は明後日の土曜日の夜20時。片桐空一人で来い。約束を破った時点で桃花を殺す」
 
 そう言って電話が切れた。
 電話の内容を説明した。
 みんな動揺している。

「やっぱり私達の手に負える相手じゃなかったんじゃ……」
「空や。どうするんだい?狙撃手くらいなら配置させるけど」
「そんな必要ないよ」
「お前ひとりで行くつもりか?」
「それしかないだろうね」

 僕は光太に言った。

「ふざけんな。お前ひとりでそんな真似させられるか!お前は美希だけじゃない!比呂や結だっているんだぞ!」
「あの公園なら照明が殆どない駐車場がある。そこで待機してたらいいさ」
「確かにあの公園なら可能だね」

 善明が言う。

「旦那様……くれぐれも無理しないでください」

 美希が言う。
 やりすぎるな。と言いたいんだろう。
 いいじゃないか。相手の要求に乗ってやる。
 それがどれだけ愚かな選択か思い知らせてやる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...