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(1)
僕達は久住の酒井リゾートフォレストに向かっていた。
毎年恒例のキャンプだ。
物騒な事になっているけど楽しむことを忘れてはいけない。
空も光太も言っていた。
ただ、小さな子供がいるから親の「渡辺班」と合同で行う事にした。
僕の大切な妻は助手席でいびきを立てて寝ている。
口からはよだれが垂れているけど敢えて見ないようにしていた。
天音も女性だ。
あまりいびきやよだれを見られたくないという意識が最近あるみたいだ。
後ろの座席には比呂と海翔と茉莉が乗っている。
結莉はやっぱり「結と一緒!」と主張していた。
天音が爆睡してる理由は朝まで飲んでいたとかそんなんじゃない。
まだ油断の出来ない子供がいるのにそんな無茶はしない。
ただ、同じママ友の水奈と朝までゲームで盛り上がっていただけ。
毎年恒例のすごろくゲームを無茶な時間に設定してやっていた。
途中でセーブできるのだけど2人は決着がつくか力尽きるまで続ける。
水奈も寝ているそうだ。
「こいつは子育てをする気があるのか?」
水奈の母さんはそう言って頭を抱えていた。
その分学が補っているらしい。
比呂も茉莉も退屈なのか寝ている。
まだ幼いからこんな豪快ないびきをしていても普通なのだろう。
「あーあー」
そう言って海翔が景色を見て楽しそうにしてるくらいだ。
海翔もこうしている分には普通の子供だった。
しかしやっぱり天音の子。
普通じゃない面もあった。
朝起きたら天気があまりよく無くて「今年は無理かな?」と半分諦めていた時だった。
海翔が空をじっと見ていると途端に雨が止んで晴れて来た。
偶然じゃないのか?
天音はそう言うけどどうしても気になる。
だから試しに海翔に聞いてみた。
「雨はどうするの?」
すると海翔が空を見る。
晴れたと思った空に雨雲が出来上がり雨が降り出す。
「海翔、今日は晴れが良いな」
天音が言うと雨が止む。
間違いなさそうだ。
この子は天候を自在に操るらしい。
「すげえな……」
天音もさすがに驚いていた。
でも多分この子もこれだけじゃないだろう。
まだ何か隠しているらしい。
やはりこの子達の世代には何かあるのだろう。
善明も言っていた。
「あの子は僕の手に負えそうにない」
陽葵や菫の事じゃない。
秋久の事だ。
秋久は能力をすでに持っている。
しかしその能力を自分の意思で使わないようにしているそうだ。
切り札は先に見せたらダメ。
善明がそう言った時からずっと自分の能力を隠して生活している。
もともと陽葵達に会わせて動いていたようだけど、話をしてからますます隠し持つようになった。
多分秋久はその能力を把握して相手の実力を抑え込んで自分が有利な状況にもちこむのだろう。
場合によっては結をも超えるかもしれない。
突然晴れたから車は快適に進んでいる。
遊や天、遊のお父さんが追い越しをかけようとするけど天音の父さんがそれを許さない。
あえて順番をそういう風に決めておいた。
空は最後尾をついてくる。
もうじき着くというところで天音が目を覚ました。
「わりぃ……さすがにもう徹夜は無理かな」
「いいよ、もうちょっとでつくからゆっくりしてて」
菫も茉莉もまだ寝てるし。
「なあ、大地。結莉や茉莉も何か持ってるのかな?」
天音が聞いてきた。
「多分何かあるだろうね」
それも危険な何かを持っている。
多分陽葵や菫もそうだろう。
善明の父さんが言っているらしい。
最悪の世代。
どうしてそんな事になったのかは僕達には分からない。
出来ればその力を使うような状況にならなかったらいい。
だけどFGの勢いは相変わらずだ。
誠心会というやっかいな連中もいる。
ついに父さん達が動いた。
軽く挨拶をしただけだという。
「これから見つけ次第殺すよ」
そんな挨拶。
僕達が空の手を煩わせずに戦うように、父さん達も天音の父さんには手を出させなかったらしい。
そんな話をしているうちに着いた。
駐車場に車を止めると子供たちを起こしてゲートに行く。
皆集まると姉さんがチケットを配っていた。
時間まで自由行動。
僕達と空達と善明達と水奈達で行動していた。
「結、おててつなご?」
結莉がそう言うと冬夜は手をつなぐ。
陽葵と菫も「ぼーっとしてると迷子になるぞ」と秋久の両手を繋いでいる。
結莉はなぜか結の前では大人しくしている。
親の前だと滅茶苦茶な行動をするのに恋人の前では女の子らしくいたいのだろう。
まさか2歳の子供でそんな気分になるとは思わなかった。
水奈達も優奈達がまだアトラクションで遊ぶのは無理なので一緒に散策していた。
ただ、空がじーっと結を見ている茉奈を見かねて結莉に声をかけていた。
「結莉、もう片方の手は茉奈に譲ってあげよ?」
「うぅ……」
そこに結の意思はあるのだろうか?
あったようだ。
「ほら。したいことがあるならちゃんと自分の口で言え」
そう言って茉奈に手を差し出す結。
茉奈は嬉しそうに結と手を繋ぐ。
茉莉は退屈そうにしてた。
今朝あったことを善明に話していた。
「海翔もやっぱりだったか……」
「すごいじゃない!」
姉さんは喜んでるけど善明は苦笑していた。
まだ小さいから手に負える。
だけどこの子達が反抗期に入ったら手に負えない。
気分一つで世界を壊しかねない子供の親ってどんな心構えをしたらいいんだろう?
「さすがにそれは俺にもわからんな……」
「学だってわからないよ」
悠翔が何を始めるかまだ分からない。
油断は出来ないと善明が言う。
しかし母親たちは違うようだ。
「そんなの大丈夫だろ?」
天音は簡単に言った。
「しかし思春期にこんな力使われたら大変だよ?」
善明が言う。
「じゃあ、聞くけど善明に反抗期なんてあった?」
翼が言う。
そう言えば僕もなかったな。
まあ、母さんに逆らえって方が無理だけど。
「大地は私を信頼してくれないのか?」
天音が言う。
片桐家の躾がそこにはあった。
いかなる場合でも父親に逆らったりしたらいけない。
自分たちが生活出来るのは父親が仕事をして養ってくれるから。
母さんに多少逆らうのは許すけど、父親に逆らうのだけは絶対に許さない。
天音でさえ最初逆らったけどすぐに反省したらしい。
そんな天音が子供を教育してるんだ。
反抗期に学校を破壊なんて馬鹿な真似はしない。
そういう風に言い聞かせてるんだ。
だから私を信じて欲しい。
天音はそう言う。
それはきっと陽葵や菫も同じはずだ。
もっとも父親を母親から奪い取ろうとする癖はついてくるけど。と、天音は笑った。
「空も大変だろう」
学が言う。
姉さんはすぐに機嫌を損ねるから難しいと空がぼやいていたな。
「誰かが言ってたらしいんだ。学生時代に遊んでなかった奴は結婚して嫁さんとマンネリ化した後が怖い」
風俗に通い始めたり浮気をしたりするらしい。
もっとも天音の父さんの子だからそれはないだろう。
「どうして美味しい肉が食える金額払ってまで女性に接待して欲しいのか分からない」
空はそんな風に悩んでいたらしいから。
「待て天音。その理屈だとうちはヤバいぞ」
水奈が言う。
悠翔はきっと学と色んな所に遊びに行くだろう。
だけど優奈と愛菜はどうなる?
間違いなく反抗期だぞ!
だけど天音は言う。
「父親が学なら大丈夫だろ?」
「……うちの父さんが良く家に来るんだ」
その度に優奈や愛菜に手を出して水奈が激怒する。
学が大丈夫だけど水奈の父さんが問題だ。
学の父さんは問題ない。
遊の娘の琴音に夢中だから。
むしろ琴音の方が危険だ。
時計を見るとそろそろ昼食時だ。
ちょうど親と遭遇したので一緒に食べる事にした。
その時に天音達と話していたことを親に相談する。
案の定、水奈と学の母さんは怒り出す。
「お前らは子供の育児すら邪魔をしているのか!」
「い、いいじゃないか。孫ってそういうもんだろ?」
「誠の言う通りだ。お年玉あげたりするんだからそのくらい可愛がってもいいじゃないか」
しかし二人の凶行はそんな生易しい物じゃなかった。
風呂に入れてやるとかオムツ替えてやるとか……。
間違いなく水奈の二の舞になる。
そんな予感がした。
「そう言う話なら片桐君にしたらいいんじゃない?」
母さんが言った。
「パパは私達が小さい時どうしてたんだ?」
天音が自分の父親に聞いてた。
すると天音の母さんが言った。
「それを今ここで話してもいいの?」
にやりと笑っている。
「なんかまずい事あるのか?」
「冬夜さん、いいですよ」
「そうだね……」
天音や翼をお風呂に入れたりオムツを替えたりしてたらしい。
結婚した時とかに話そうとしたけど天音の母さんが止めたそうだ。
「娘はそう言うのを彼氏に知られたくない物ですよ」
だからそういう話をするのは翼達のいないところにして下さい。
しかし天音は違うらしい。
「それって普通じゃないのか?父親が娘の裸みたからって変な気起こさないだろ?」
「起こす変態がいるんだよ……」
水奈がそう言って自分の父親を睨みつける。
「と、冬夜の話ではよくて俺達はダメって変じゃないか?」
「冬夜さんは結莉や茉莉のオムツは替えてません!」
そう言うのは実の親だけでいい。
天音の母さんはそう言った。
「だったら俺が水奈のオムツを替えてても変じゃないだろ?」
「何を聞いてたんだ!そういう話を学の前で言うのは止めろ!」
「大体お前は赤ちゃんの頃ってどうなってるんだろうって思いっきり妙な事考えていただろうが!」
水奈の母さんがそう言うとさすがに父さん達は黙ってしまった。
善明の両親は何も言わなかった。
目の前に娘がいるのに話すべきじゃないと善明の両親は判断したんだろうな。
「祈はどう?順調に育ってる?」
姉さんが話題を替えていた。
「見ての通り、陸に似たらしい」
そう言って朔を指差す。
仲良く昼ご飯を食べる茉莉と朔がいた。
退屈にしていたから話し相手が出来たと喜んでいるのだろう。
昼ご飯を食べ終えるとお土産を選びにお店に来た。
茉莉はお菓子しか見てない。
隣にいる朔の事すら忘れているだろう。
まだ玩具が気になる歳じゃないようだ。
まあ、モデルガン持ってる事自体が間違ってる気がするんだけど。
適当に買ってゲートに戻ると皆揃っていた。
キャンプ場に向かう。
天音は何か考えていた。
「どうしたの?」
「結莉は冬夜、茉莉は朔。じゃあ、海翔は誰を選ぶんだろう?」
そういう事か。
「多分まだ何も考えてないよ」
「まあ、普通はそうなんだけどな」
「お前結莉達が結婚する時泣くなよ」
天音はそう言って笑っていた。
(2)
「おかわり」
そう言って紙皿を僕に渡す。
僕も食べたいんだけど結と比呂がそれを許さない。
まだ小さいから2人が満足した後に食べたらいい。
そう思っていたけど甘かった。
結と比呂は底なしに食べる。
「おかわり」
次から次へと食べつくす結と比呂。
肉だろうと野菜だろうと関係なしに食べる。
偶に飲み物を要求する。
菫と陽葵も変わらない。
「ほーら、肉だけじゃなくてハンバーグも食べろよ」
そう言って渡辺美嘉さんが皿に取ってくれる。
「あんまり食べ過ぎるとお腹が気になるかな?」
「大丈夫だよ陽葵。片桐家の人間はどんなに食べても体型は変わらないって天音が言ってた」
菫がそう言うと母さんが天音を睨みつける。
「あなたは子供に何を教えてるんですか!」
「だって実際私そんなに変わらないぞ!」
腹どころか胸すら出てこない。
どういう理屈だと母さんと天音が口論を始める。
「空は大変だね」
善明がやって来た。
「善明は秋久達を見なくていいのか?」
「最近陽葵達にに心境の変化が出たみたいでね」
変化?
「ほら、秋久もたくさん食べないと大きくならないよ」
「そうそう、いつもしょぼい食い物しか食ってないんだからしっかり食え!」
そう言って自分の皿から秋久の皿に乗せる陽葵と菫。
「女性ってそういうものらしいよ」
善明が言う。
同い年の双子なら精神年齢が若干高い陽葵と菫が秋久の世話するというのは普通なんだそうだ。
ある日を境に2人が変わって来たらしい。
「ほら、ボタン掛け違えてるじゃない。私がしてあげる」
そう言って秋久のボタンを直していたのを見たそうだ。
そういや、僕も翼とかに着せ替え人形代わりにさせられていたな。
ある程度食べると結莉がやってくる。
「結、花火しよう?」
「わかった……茉奈はどうするんだ?」
「え?」
突然結に声をかけられて戸惑っているらしい。
「結が誘ってるんだから行っておいで」
僕がそう背中をおしてやると3人で花火を楽しんでいた。
BBQが終って器材を洗っている間に子供達の花火の面倒を見る。
冬眞ですら普通に莉子と花火を楽しんでるのに遊達はロケット花火の撃ち合いを親と始める。
そして怒られる。
「子供達が大人しくしてるのにお前らは何を考えているんだ!?」
当然アルコールも入っている。
あの例の馬鹿な歌を歌いだす。
なずなは花と話をしている。
普段から2人で遊んだりしてる様だ。
祈もまだ子供に花火を持たせられないので朔と茉莉の世話をしていた。
陽葵と菫は翼と一緒に花火をしている。
結は天音に任せておけばよさそうだから。
優奈と愛菜と悠翔の世話は学がしていた。
「空の苦労が今さらながら分かったよ」
学はそう言って笑っていた。
花火が終っても冬夜は寝ない。
夜食のラーメンを待っている。
結莉と2人で仲良く食べていた。
ラーメンを食べ終わると素直に2人でテントに入って眠ったみたいだ。
「あの大食いがなければ完璧なんだけどね……」
恵美さんが言ってる。
「あれはどうしようもない。諦めた方がいい」
水奈の母さんが言ってた。
ちなみに海翔はさっさと寝てしまった。
まだ小さいからしょうがないだろう。
しかし大きくなったらどうなる?
「悠翔も体型だけは学に似ないといいだんけどな」
水奈が言うと、学も笑うしかなかった。
「そういえば正志!あいつ関取にでもするつもりか!?いい加減どうにかしないと夏希が困ってるぞ!」
美嘉さんが言ってる。
「それはいいんです。精々食費がかかるくらいだから」
あの体形でお洒落して欲しいとは思わない。
おしゃれする気があるならとっくに体型をどうにかしてるだろうから。
それにあの体型だから私と出会えたと思えたら悪い事ではない。
夏希さんはそう言っていた。
「って夏希が言ってるんだからいいんじゃないのか?」
渡辺さんが言う。
「渡辺の言う通りだ。大食いさえなければいいのは正俊も一緒だ」
「神奈は何か問題があるのか?」
「大ありだ!娘といい、息子といい、余計な苦労をさせやがってこの馬鹿は」
「……美希。ちょっと散歩しない?」
「そうですね」
「翼や、僕達も行こうか」
「そうだね」
そう言って何人かで周囲を探索する。
しっかり美希の手を握って懐中電灯で前を照らしながら歩いてた。
「しかし、どうして急に散歩なんだい?」
善明が聞いてきた。
「あの調子で行くと例年通りだと思ったから」
きっと母さん達の不満が水奈や学の父さんに集中するだろう。
そんな親の姿を見られたくないだろうと思ったから。
「親になって気づく事もあるって事か」
学が言う。
「しかし翼はまだその怖がり直ってなかったのか?」
天音が翼に聞いていた。
「怖い物はしょうがないでしょ」
ヒールで頬に穴をあける女性の言う言葉じゃないと思うけど。
「そんな翼に面白いホラー映画あるよ」
美希が教えていた。
実はそれ善明から聞いていた。
「絶対やめとけ」
善明が言う事は大概あってる。
ちなみに翼は「ナイスボート」は全話見ていた。
その感想が「酷い主人公だね」の一言だった。
あ、そう言えば……
「善明さ。とある恋愛小説しらないか?」
「そんなのに興味があったのかい?空は」
「いやさ、天音が昔小説らしい物を読んでいたんだよね」
小説といっていいのか分からない下敷きのような本。
何で2冊に分けたのか理由が知りたいくらい。
「ああ、それなら確かドラマでもやってましたね」
大地も知っているらしい。
「どんな話なの?」
「とても感動できる作品ですよ」
「美希はあんなので感動するの!?」
美希が言うと翼が驚いている。
「そうですね。白血病の彼氏の話です」
美希が答えた。
それでなんで翼が怒るのかわからない。
「確か映画もあったからDVDでも借りてみたらどうだい?」
主人公が金髪くらいなのはパッケージを見たから知ってる。
そこが問題なんだろうか?
「空、アレは見るだけ時間の無駄だから止めとけ」
天音もそう言うので止めておいた。
ちなみにDVDを大地が借りてきた時、天音は「お前は私を怒らせるのがそんなに好きなのか!?」と叱ったらしい。
善明は今年は早めにクリスマスに見るDVDを決めておいたらしい。
人形劇、アクション物。
普通恋愛物とか選ぶんじゃないのか?
「あのさ、クリスマスに恋人が死ぬ話なんて見たくないでしょ」
翼の言う通りかもしれない。
しかしその美希が選んだやつって……
善明を見る。
善明はお手上げの様だ。
秋久達だっているのに大丈夫なのか?
テントに戻ると大地と善明と僕の父さんがまだ起きてた。
想像通りの惨劇だったらしい。
「もう遅いから寝なさい。空達はまた明日も大変だろうから」
父さんが言うと美希が笑った。
「精一杯パパを務めてもらわないとね」
それがあったんだな。
テントにに入ると結と比呂はもう寝ていた。
その隣に寝転んで寝る事にする。
すると美希がそっと耳打ちして教えてくれた。
きっと僕が気になっていた小説の内容。
この小説が健全だと思えるくらい酷い内容だった。
美希はこの話のどこに感動したのだろう?
「どう?」
「わかんない」
「じゃあ、今度いっしょに観ませんか?」
「それはいいんだけど……」
「何かあるの?」
不思議そうにしている美希の顔を見て伝えた。
タオルケットは結と比呂が全部取ってる。
夏とは言え夜は冷える。
だったら温めあう必要があるだろ?
後は言わなくてもわかるよね。
「本当に困った旦那様ですね」
そう言って美希は嬉しそうに抱き着く。
明日はちょっと早めに起きないとまずいだろうな。
そんな事を考えながら寝ていた。
僕達は久住の酒井リゾートフォレストに向かっていた。
毎年恒例のキャンプだ。
物騒な事になっているけど楽しむことを忘れてはいけない。
空も光太も言っていた。
ただ、小さな子供がいるから親の「渡辺班」と合同で行う事にした。
僕の大切な妻は助手席でいびきを立てて寝ている。
口からはよだれが垂れているけど敢えて見ないようにしていた。
天音も女性だ。
あまりいびきやよだれを見られたくないという意識が最近あるみたいだ。
後ろの座席には比呂と海翔と茉莉が乗っている。
結莉はやっぱり「結と一緒!」と主張していた。
天音が爆睡してる理由は朝まで飲んでいたとかそんなんじゃない。
まだ油断の出来ない子供がいるのにそんな無茶はしない。
ただ、同じママ友の水奈と朝までゲームで盛り上がっていただけ。
毎年恒例のすごろくゲームを無茶な時間に設定してやっていた。
途中でセーブできるのだけど2人は決着がつくか力尽きるまで続ける。
水奈も寝ているそうだ。
「こいつは子育てをする気があるのか?」
水奈の母さんはそう言って頭を抱えていた。
その分学が補っているらしい。
比呂も茉莉も退屈なのか寝ている。
まだ幼いからこんな豪快ないびきをしていても普通なのだろう。
「あーあー」
そう言って海翔が景色を見て楽しそうにしてるくらいだ。
海翔もこうしている分には普通の子供だった。
しかしやっぱり天音の子。
普通じゃない面もあった。
朝起きたら天気があまりよく無くて「今年は無理かな?」と半分諦めていた時だった。
海翔が空をじっと見ていると途端に雨が止んで晴れて来た。
偶然じゃないのか?
天音はそう言うけどどうしても気になる。
だから試しに海翔に聞いてみた。
「雨はどうするの?」
すると海翔が空を見る。
晴れたと思った空に雨雲が出来上がり雨が降り出す。
「海翔、今日は晴れが良いな」
天音が言うと雨が止む。
間違いなさそうだ。
この子は天候を自在に操るらしい。
「すげえな……」
天音もさすがに驚いていた。
でも多分この子もこれだけじゃないだろう。
まだ何か隠しているらしい。
やはりこの子達の世代には何かあるのだろう。
善明も言っていた。
「あの子は僕の手に負えそうにない」
陽葵や菫の事じゃない。
秋久の事だ。
秋久は能力をすでに持っている。
しかしその能力を自分の意思で使わないようにしているそうだ。
切り札は先に見せたらダメ。
善明がそう言った時からずっと自分の能力を隠して生活している。
もともと陽葵達に会わせて動いていたようだけど、話をしてからますます隠し持つようになった。
多分秋久はその能力を把握して相手の実力を抑え込んで自分が有利な状況にもちこむのだろう。
場合によっては結をも超えるかもしれない。
突然晴れたから車は快適に進んでいる。
遊や天、遊のお父さんが追い越しをかけようとするけど天音の父さんがそれを許さない。
あえて順番をそういう風に決めておいた。
空は最後尾をついてくる。
もうじき着くというところで天音が目を覚ました。
「わりぃ……さすがにもう徹夜は無理かな」
「いいよ、もうちょっとでつくからゆっくりしてて」
菫も茉莉もまだ寝てるし。
「なあ、大地。結莉や茉莉も何か持ってるのかな?」
天音が聞いてきた。
「多分何かあるだろうね」
それも危険な何かを持っている。
多分陽葵や菫もそうだろう。
善明の父さんが言っているらしい。
最悪の世代。
どうしてそんな事になったのかは僕達には分からない。
出来ればその力を使うような状況にならなかったらいい。
だけどFGの勢いは相変わらずだ。
誠心会というやっかいな連中もいる。
ついに父さん達が動いた。
軽く挨拶をしただけだという。
「これから見つけ次第殺すよ」
そんな挨拶。
僕達が空の手を煩わせずに戦うように、父さん達も天音の父さんには手を出させなかったらしい。
そんな話をしているうちに着いた。
駐車場に車を止めると子供たちを起こしてゲートに行く。
皆集まると姉さんがチケットを配っていた。
時間まで自由行動。
僕達と空達と善明達と水奈達で行動していた。
「結、おててつなご?」
結莉がそう言うと冬夜は手をつなぐ。
陽葵と菫も「ぼーっとしてると迷子になるぞ」と秋久の両手を繋いでいる。
結莉はなぜか結の前では大人しくしている。
親の前だと滅茶苦茶な行動をするのに恋人の前では女の子らしくいたいのだろう。
まさか2歳の子供でそんな気分になるとは思わなかった。
水奈達も優奈達がまだアトラクションで遊ぶのは無理なので一緒に散策していた。
ただ、空がじーっと結を見ている茉奈を見かねて結莉に声をかけていた。
「結莉、もう片方の手は茉奈に譲ってあげよ?」
「うぅ……」
そこに結の意思はあるのだろうか?
あったようだ。
「ほら。したいことがあるならちゃんと自分の口で言え」
そう言って茉奈に手を差し出す結。
茉奈は嬉しそうに結と手を繋ぐ。
茉莉は退屈そうにしてた。
今朝あったことを善明に話していた。
「海翔もやっぱりだったか……」
「すごいじゃない!」
姉さんは喜んでるけど善明は苦笑していた。
まだ小さいから手に負える。
だけどこの子達が反抗期に入ったら手に負えない。
気分一つで世界を壊しかねない子供の親ってどんな心構えをしたらいいんだろう?
「さすがにそれは俺にもわからんな……」
「学だってわからないよ」
悠翔が何を始めるかまだ分からない。
油断は出来ないと善明が言う。
しかし母親たちは違うようだ。
「そんなの大丈夫だろ?」
天音は簡単に言った。
「しかし思春期にこんな力使われたら大変だよ?」
善明が言う。
「じゃあ、聞くけど善明に反抗期なんてあった?」
翼が言う。
そう言えば僕もなかったな。
まあ、母さんに逆らえって方が無理だけど。
「大地は私を信頼してくれないのか?」
天音が言う。
片桐家の躾がそこにはあった。
いかなる場合でも父親に逆らったりしたらいけない。
自分たちが生活出来るのは父親が仕事をして養ってくれるから。
母さんに多少逆らうのは許すけど、父親に逆らうのだけは絶対に許さない。
天音でさえ最初逆らったけどすぐに反省したらしい。
そんな天音が子供を教育してるんだ。
反抗期に学校を破壊なんて馬鹿な真似はしない。
そういう風に言い聞かせてるんだ。
だから私を信じて欲しい。
天音はそう言う。
それはきっと陽葵や菫も同じはずだ。
もっとも父親を母親から奪い取ろうとする癖はついてくるけど。と、天音は笑った。
「空も大変だろう」
学が言う。
姉さんはすぐに機嫌を損ねるから難しいと空がぼやいていたな。
「誰かが言ってたらしいんだ。学生時代に遊んでなかった奴は結婚して嫁さんとマンネリ化した後が怖い」
風俗に通い始めたり浮気をしたりするらしい。
もっとも天音の父さんの子だからそれはないだろう。
「どうして美味しい肉が食える金額払ってまで女性に接待して欲しいのか分からない」
空はそんな風に悩んでいたらしいから。
「待て天音。その理屈だとうちはヤバいぞ」
水奈が言う。
悠翔はきっと学と色んな所に遊びに行くだろう。
だけど優奈と愛菜はどうなる?
間違いなく反抗期だぞ!
だけど天音は言う。
「父親が学なら大丈夫だろ?」
「……うちの父さんが良く家に来るんだ」
その度に優奈や愛菜に手を出して水奈が激怒する。
学が大丈夫だけど水奈の父さんが問題だ。
学の父さんは問題ない。
遊の娘の琴音に夢中だから。
むしろ琴音の方が危険だ。
時計を見るとそろそろ昼食時だ。
ちょうど親と遭遇したので一緒に食べる事にした。
その時に天音達と話していたことを親に相談する。
案の定、水奈と学の母さんは怒り出す。
「お前らは子供の育児すら邪魔をしているのか!」
「い、いいじゃないか。孫ってそういうもんだろ?」
「誠の言う通りだ。お年玉あげたりするんだからそのくらい可愛がってもいいじゃないか」
しかし二人の凶行はそんな生易しい物じゃなかった。
風呂に入れてやるとかオムツ替えてやるとか……。
間違いなく水奈の二の舞になる。
そんな予感がした。
「そう言う話なら片桐君にしたらいいんじゃない?」
母さんが言った。
「パパは私達が小さい時どうしてたんだ?」
天音が自分の父親に聞いてた。
すると天音の母さんが言った。
「それを今ここで話してもいいの?」
にやりと笑っている。
「なんかまずい事あるのか?」
「冬夜さん、いいですよ」
「そうだね……」
天音や翼をお風呂に入れたりオムツを替えたりしてたらしい。
結婚した時とかに話そうとしたけど天音の母さんが止めたそうだ。
「娘はそう言うのを彼氏に知られたくない物ですよ」
だからそういう話をするのは翼達のいないところにして下さい。
しかし天音は違うらしい。
「それって普通じゃないのか?父親が娘の裸みたからって変な気起こさないだろ?」
「起こす変態がいるんだよ……」
水奈がそう言って自分の父親を睨みつける。
「と、冬夜の話ではよくて俺達はダメって変じゃないか?」
「冬夜さんは結莉や茉莉のオムツは替えてません!」
そう言うのは実の親だけでいい。
天音の母さんはそう言った。
「だったら俺が水奈のオムツを替えてても変じゃないだろ?」
「何を聞いてたんだ!そういう話を学の前で言うのは止めろ!」
「大体お前は赤ちゃんの頃ってどうなってるんだろうって思いっきり妙な事考えていただろうが!」
水奈の母さんがそう言うとさすがに父さん達は黙ってしまった。
善明の両親は何も言わなかった。
目の前に娘がいるのに話すべきじゃないと善明の両親は判断したんだろうな。
「祈はどう?順調に育ってる?」
姉さんが話題を替えていた。
「見ての通り、陸に似たらしい」
そう言って朔を指差す。
仲良く昼ご飯を食べる茉莉と朔がいた。
退屈にしていたから話し相手が出来たと喜んでいるのだろう。
昼ご飯を食べ終えるとお土産を選びにお店に来た。
茉莉はお菓子しか見てない。
隣にいる朔の事すら忘れているだろう。
まだ玩具が気になる歳じゃないようだ。
まあ、モデルガン持ってる事自体が間違ってる気がするんだけど。
適当に買ってゲートに戻ると皆揃っていた。
キャンプ場に向かう。
天音は何か考えていた。
「どうしたの?」
「結莉は冬夜、茉莉は朔。じゃあ、海翔は誰を選ぶんだろう?」
そういう事か。
「多分まだ何も考えてないよ」
「まあ、普通はそうなんだけどな」
「お前結莉達が結婚する時泣くなよ」
天音はそう言って笑っていた。
(2)
「おかわり」
そう言って紙皿を僕に渡す。
僕も食べたいんだけど結と比呂がそれを許さない。
まだ小さいから2人が満足した後に食べたらいい。
そう思っていたけど甘かった。
結と比呂は底なしに食べる。
「おかわり」
次から次へと食べつくす結と比呂。
肉だろうと野菜だろうと関係なしに食べる。
偶に飲み物を要求する。
菫と陽葵も変わらない。
「ほーら、肉だけじゃなくてハンバーグも食べろよ」
そう言って渡辺美嘉さんが皿に取ってくれる。
「あんまり食べ過ぎるとお腹が気になるかな?」
「大丈夫だよ陽葵。片桐家の人間はどんなに食べても体型は変わらないって天音が言ってた」
菫がそう言うと母さんが天音を睨みつける。
「あなたは子供に何を教えてるんですか!」
「だって実際私そんなに変わらないぞ!」
腹どころか胸すら出てこない。
どういう理屈だと母さんと天音が口論を始める。
「空は大変だね」
善明がやって来た。
「善明は秋久達を見なくていいのか?」
「最近陽葵達にに心境の変化が出たみたいでね」
変化?
「ほら、秋久もたくさん食べないと大きくならないよ」
「そうそう、いつもしょぼい食い物しか食ってないんだからしっかり食え!」
そう言って自分の皿から秋久の皿に乗せる陽葵と菫。
「女性ってそういうものらしいよ」
善明が言う。
同い年の双子なら精神年齢が若干高い陽葵と菫が秋久の世話するというのは普通なんだそうだ。
ある日を境に2人が変わって来たらしい。
「ほら、ボタン掛け違えてるじゃない。私がしてあげる」
そう言って秋久のボタンを直していたのを見たそうだ。
そういや、僕も翼とかに着せ替え人形代わりにさせられていたな。
ある程度食べると結莉がやってくる。
「結、花火しよう?」
「わかった……茉奈はどうするんだ?」
「え?」
突然結に声をかけられて戸惑っているらしい。
「結が誘ってるんだから行っておいで」
僕がそう背中をおしてやると3人で花火を楽しんでいた。
BBQが終って器材を洗っている間に子供達の花火の面倒を見る。
冬眞ですら普通に莉子と花火を楽しんでるのに遊達はロケット花火の撃ち合いを親と始める。
そして怒られる。
「子供達が大人しくしてるのにお前らは何を考えているんだ!?」
当然アルコールも入っている。
あの例の馬鹿な歌を歌いだす。
なずなは花と話をしている。
普段から2人で遊んだりしてる様だ。
祈もまだ子供に花火を持たせられないので朔と茉莉の世話をしていた。
陽葵と菫は翼と一緒に花火をしている。
結は天音に任せておけばよさそうだから。
優奈と愛菜と悠翔の世話は学がしていた。
「空の苦労が今さらながら分かったよ」
学はそう言って笑っていた。
花火が終っても冬夜は寝ない。
夜食のラーメンを待っている。
結莉と2人で仲良く食べていた。
ラーメンを食べ終わると素直に2人でテントに入って眠ったみたいだ。
「あの大食いがなければ完璧なんだけどね……」
恵美さんが言ってる。
「あれはどうしようもない。諦めた方がいい」
水奈の母さんが言ってた。
ちなみに海翔はさっさと寝てしまった。
まだ小さいからしょうがないだろう。
しかし大きくなったらどうなる?
「悠翔も体型だけは学に似ないといいだんけどな」
水奈が言うと、学も笑うしかなかった。
「そういえば正志!あいつ関取にでもするつもりか!?いい加減どうにかしないと夏希が困ってるぞ!」
美嘉さんが言ってる。
「それはいいんです。精々食費がかかるくらいだから」
あの体形でお洒落して欲しいとは思わない。
おしゃれする気があるならとっくに体型をどうにかしてるだろうから。
それにあの体型だから私と出会えたと思えたら悪い事ではない。
夏希さんはそう言っていた。
「って夏希が言ってるんだからいいんじゃないのか?」
渡辺さんが言う。
「渡辺の言う通りだ。大食いさえなければいいのは正俊も一緒だ」
「神奈は何か問題があるのか?」
「大ありだ!娘といい、息子といい、余計な苦労をさせやがってこの馬鹿は」
「……美希。ちょっと散歩しない?」
「そうですね」
「翼や、僕達も行こうか」
「そうだね」
そう言って何人かで周囲を探索する。
しっかり美希の手を握って懐中電灯で前を照らしながら歩いてた。
「しかし、どうして急に散歩なんだい?」
善明が聞いてきた。
「あの調子で行くと例年通りだと思ったから」
きっと母さん達の不満が水奈や学の父さんに集中するだろう。
そんな親の姿を見られたくないだろうと思ったから。
「親になって気づく事もあるって事か」
学が言う。
「しかし翼はまだその怖がり直ってなかったのか?」
天音が翼に聞いていた。
「怖い物はしょうがないでしょ」
ヒールで頬に穴をあける女性の言う言葉じゃないと思うけど。
「そんな翼に面白いホラー映画あるよ」
美希が教えていた。
実はそれ善明から聞いていた。
「絶対やめとけ」
善明が言う事は大概あってる。
ちなみに翼は「ナイスボート」は全話見ていた。
その感想が「酷い主人公だね」の一言だった。
あ、そう言えば……
「善明さ。とある恋愛小説しらないか?」
「そんなのに興味があったのかい?空は」
「いやさ、天音が昔小説らしい物を読んでいたんだよね」
小説といっていいのか分からない下敷きのような本。
何で2冊に分けたのか理由が知りたいくらい。
「ああ、それなら確かドラマでもやってましたね」
大地も知っているらしい。
「どんな話なの?」
「とても感動できる作品ですよ」
「美希はあんなので感動するの!?」
美希が言うと翼が驚いている。
「そうですね。白血病の彼氏の話です」
美希が答えた。
それでなんで翼が怒るのかわからない。
「確か映画もあったからDVDでも借りてみたらどうだい?」
主人公が金髪くらいなのはパッケージを見たから知ってる。
そこが問題なんだろうか?
「空、アレは見るだけ時間の無駄だから止めとけ」
天音もそう言うので止めておいた。
ちなみにDVDを大地が借りてきた時、天音は「お前は私を怒らせるのがそんなに好きなのか!?」と叱ったらしい。
善明は今年は早めにクリスマスに見るDVDを決めておいたらしい。
人形劇、アクション物。
普通恋愛物とか選ぶんじゃないのか?
「あのさ、クリスマスに恋人が死ぬ話なんて見たくないでしょ」
翼の言う通りかもしれない。
しかしその美希が選んだやつって……
善明を見る。
善明はお手上げの様だ。
秋久達だっているのに大丈夫なのか?
テントに戻ると大地と善明と僕の父さんがまだ起きてた。
想像通りの惨劇だったらしい。
「もう遅いから寝なさい。空達はまた明日も大変だろうから」
父さんが言うと美希が笑った。
「精一杯パパを務めてもらわないとね」
それがあったんだな。
テントにに入ると結と比呂はもう寝ていた。
その隣に寝転んで寝る事にする。
すると美希がそっと耳打ちして教えてくれた。
きっと僕が気になっていた小説の内容。
この小説が健全だと思えるくらい酷い内容だった。
美希はこの話のどこに感動したのだろう?
「どう?」
「わかんない」
「じゃあ、今度いっしょに観ませんか?」
「それはいいんだけど……」
「何かあるの?」
不思議そうにしている美希の顔を見て伝えた。
タオルケットは結と比呂が全部取ってる。
夏とは言え夜は冷える。
だったら温めあう必要があるだろ?
後は言わなくてもわかるよね。
「本当に困った旦那様ですね」
そう言って美希は嬉しそうに抱き着く。
明日はちょっと早めに起きないとまずいだろうな。
そんな事を考えながら寝ていた。
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