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独りじゃない
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(1)
「あけましておめでとうございます」
「はい、良く言えたね~。お利口さんですね」
そう言って愛莉は頭を撫でてくれた。
すると茉奈達も家に新年の挨拶とやらにやってきた。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
茉奈はそう言って愛莉に礼をする。
「良くできましたね。じゃあ、これはご褒美ですよ」
そう言って愛莉は茉奈達にお年玉を渡す。
俺もじいじや学から受け取っていた。
「わざわざごめんね」
「いいんです。どうせ茉奈も結に会いたいって言ってたから」
「パパ!それは結に言ったらダメっていったよ」
別に今さら隠す事でもないだろうに。
俺にはお年玉の使い方がわからないから母さんが「これは冬夜のお菓子代にするね」って言う。
1年分のお菓子代には足りないけど、まあいいやって思う。
欲しい物なんてないし、お金の使い方が分からない。
片桐家では「これはママが預かっておくからね」なんて曖昧な事は言わない。
ちゃんとどう使うか教えてくれる。
お金がつかえるようになる頃には「自分で管理しなさい」と親は関与しない。
その証拠に陽葵や菫は自分でもらって喜んでいる。
もっとも片桐家の子供は大体食べ物を買って終わるんだそうだ。
それは食べ物くらいしか自分で買うものが無いから。
小学生になればお小遣いはくれるけど「買い食いはまだ早い」とママに叱られる。
家にお菓子を用意してるから我慢しなさいと言われる。
「生きてるか愛莉!お年玉回収しに来たぞ!」
天音たちがやってきた。
結莉と茉莉も一緒だ。
「あなたは4歳児以下の挨拶しかできないのですか!?」
愛莉が怒っている様だ。
当然の様に天音達にはお年玉はない。
結莉と茉莉にはあったけど。
もう一人立ちしてるのだから必要ないと思われるみたいだ。
だから茜はまだ自立してないから普通なんだろう。
「パパ~、私にはお年玉ないのかな?」
じいじにすがっている茜。
愛莉は激怒する。
「あなたは嫁に行くのだからいい加減にしなさい!」
「ちゃんとあるよ。ほら、これ」
「ありがと~パパ大好き」
「冬夜さんは娘に甘すぎると何度言えば分かってもらえるのですか!?」
怒っているのは愛莉だけじゃなかった。
「待てパパ!茜にあって私達に無いのはどういう理屈だ!?」
「子供の前でみっともない真似は止めなさい!」
天音と愛莉が言い争っている。
それをみて比呂が母さんを見ると抱き着く。
「僕も母さんから貰ってないよ?」
「ちゃんと用意してあるから待っててね」
そう言って僕の頭を撫でたあと天音に言う。
「天音。比呂が真似するからやめて!」
「だったら茜に言えよ!」
「私は愛莉達を介護するから貰って当然じゃない」
「まだ茜に介護してもらうほど衰えていません!」
「ああ、でもそれも考えないといけないか。愛莉達ものこり半分くらいだろ?寿命」
「それが親に向かって言う言葉ですか!?」
愛莉達が言い争っている。
でもじいじも考えてる事があるみたいだ。
「僕達はともかく、そろそろ遠坂家の事考えないとまずいんじゃないのか?」
「そうですね……」
「それなんだけどさ」
純也が言った。
「俺に考えがあるから任せてもらえないかな?」
「どうするつもりなの?」
ママが純也に聞いていた。
「この中で愛莉を抜かしたら一番りえちゃん達の世話になったの俺だから……」
「純也がみるのか?」
「来年には結論を出すからちょっと待ってくれないかな」
すると父さんやじいじは感づいたようだ。
「任せるよ」とじいじが言っていた。
夕方になると夕食を食べる。
お雑煮を食べる。
各家庭で味が違うらしい。
母さんは愛莉から教わったらしい。
愛莉はじいじの母親から教わったらしい。
じいじの好みを知りたかったんだそうだ。
大地はシイタケが苦手らしい。
だから天音はお椀に注ぐ時に大地のお椀にはシイタケが入らないようにしているそうだ。
お正月は色々特番をやっている。
毎年恒例の番組もあるらしい。
みかんを食べながら見ていると、お風呂の時間になる。
父さんと一緒に入って着替えるとさっさと寝る。
今夜は良い夢が見れると良いらしい。
どんな夢を見るのだろう?
(2)
「新年早々参ったね」
「でもおめでたいじゃない」
晶ちゃんはそう言って笑っていた。
新年早々挨拶に来た梓が突然告げた事。
「赤ちゃんできました」
繭も今出産に備えてる。
孫が一度に増える事になる。
菫は相変らず茉莉と遊んでいるらしい。
翼にもどうしてああなったのか分からないみたいだ。
多分翼の娘だから。
そう思ったけど敢えて口出ししなかった。
結婚もしているんだし親が色々文句言う事もないだろう。
そう思って今夜は晶ちゃんと2人で飲んでいた。
沢山いた子供達も次々と家を出て行った。
しかしまだ中学生の子供もいる。
まだまだ頑張らないといけない。
善斗達が大学を出たら僕は引退しようと思う。
その頃には善明ももう仕事に慣れているだろう。
善明に代替わりしようと思うと晶ちゃんに伝えた。
「じゃあ、それまでがんばらないとね」
あっさり認めてくれた。
週末だから外で飲んでいた。
ホテルも部屋を取ってある。
何軒かはしごしていい加減寝ようかという頃だった。
「善君。あれ見て」
晶ちゃんが立ち止まって何かを見つけたようなのでそれを見た。
黒い服を着た連中を袋叩きにしている暴漢達。
周りの人は巻き込まれたくないと、我関せずを決めている。
君達運が悪かったね。
きっと今年のおみくじは大凶だったんじゃないのかい?
晶ちゃんは我関せずをするような人間じゃない。
それどころか自ら飛び込みたくなるようだ。
「あなた達何やってるの!?」
晶ちゃんが近づいて言うと暴漢達は手を止めてこっちを見た。
冬吾いなくてよかったね。
片っ端から殴り飛ばされてるよ。
ジェンダーがどうとかいう時代にそう言う意見はどうかと思うけど、彼等は男なのに化粧をしていた。
髪形もリーゼントなんて生易しい物じゃない。
いわゆるV系のような髪形をしていた。
どれだけ整髪剤を使えばそんな髪形になるのか不思議だ。
ましてや深夜にそんな恰好して誰が見るというのだろう。
言っとくけどここはコスプレ会場じゃないよ。
とりあえず僕も忠告だけはしておいた。
「あまりそういう暴力はやめて、大人しく家にお帰り」
いいかい?余計なことは絶対に言わないでおくれ。
僕の心配はそれだけだった。
「なんだおっさんもやられたいのか?」
まだ大丈夫……だと思う。
でも君達の最後は決まったみたいだ。
晶ちゃんがスマホで連絡している。
もちろん警察に通報なんて生易しい物じゃない。
「てめぇ、何警察に垂れ込むなんてふざけた事してんだくそババア!」
終わった……
忠告を聞いてくれたらよかったのに。
警察に通報してもらったほうがまだ幸せだったと思う時が来るよきっと。
その時は多分君のわずかな人生が終わりを告げる時だけど。
「今なんて言った?クソガキが……」
晶ちゃんを”ババア”と呼んでいいのは結莉と茉莉と陽葵と菫だけだよ。多分。
言っとくけど僕に止めろなんて言っても無理だからね。
今度はどんな処刑方法を考えているのか様子を見ていた。
「心配しないでいいわ。警察なんて生温い処分で済むと思わない事ね。クソガキ」
「なんだと、舐めやがって!」
そう言って晶ちゃんに殴りかかろうとするクソガキAと晶ちゃんの間に入る。
そんな大げさに振りかぶると隙だらけだよ。
僕は冷静にクソガキAの脇腹に蹴りを入れる。
手加減は出来ないよ。ごめんね。
そんなことしたら僕が晶ちゃんに怒られる。
本当は眉間に銃弾をプレゼントしたいくらいだけど、一応恋愛小説らしいから。
誰も絶対にそんな風に見ていないだろうけど。
仲間をやられたクソガキ達は怒っているようだ。
まあ、そうだろうね。
一斉に殴りかかって来た。
僕も大分衰えたと思っていたけど、そんな事はなかった。
あっけないくらいに全員叩きのめした。
あれだね。
僕が晶ちゃんの両親に挨拶に行った時を思い出したよ。
この世界では親が一番強いんだ。
あの時の晶ちゃんの父親は銃弾すらはじき返すような筋肉だったね。
石原君は危うく恵美さんの両親に首の骨を折られて死ぬところだったらしい。
「お前ら……SHに喧嘩を売ってただで済むと思うなよ」
「なんですって?」
晶ちゃんもその言葉に反応したようだ。
これが本当にSHの仕業なら空の命がやばい。
もちろん空がそんな愚かな行為を許すはずがない。
まあ、確認の為彼等に訪ねてみた。
「君達SHって言ったね?」
「知ってるのか?」
「君達は片桐空って人間を知ってるかな?」
「誰だそれ?」
「……なるほどね」
晶ちゃんがニヤリと笑う
「よかったわ、これで遠慮なく地獄に突き落とすことが出来る」
本当に大凶だったんじゃないのかい?
晶ちゃんに見つからなければ。
晶ちゃんに”ババア”と言わなければ。
SHの名前を出さなかったら、君達はもう少しだけ幸せな終焉を迎えられたろうに。
話をしている間に晶ちゃんの手配した兵隊がやって来た。
晶ちゃんは兵隊に指示をすると兵隊はクソガキ共を全員連行していった。
「せっかくの夜を台無しにしてくれたわね」
晶ちゃんの夜を台無しにした代償が彼等の人生が台無しになっただけ。
「しかし空達には報告しておいた方がいいかもしれないね」
「そうね。とうとうここまできたのね」
「ところで彼等はどうするつもりなんだ?」
「最近原油が高騰して燃料ももったいないでしょ?」
海外に送るのは面倒になったという。
で、最近天音が言っていた漫画を思い出したらしい。
翌日の朝刊の1面を飾っていたよ。
袋をかぶせられてこめかみに釘を撃ち込まれた死体が河原に転がっていたらしい。
この物語本当に大丈夫なのかい?
(3)
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「うん、子供達は私が見てるから」
美希がそう言うと僕と父さん達はバス停に向かった。
すると善明や大地達と遭遇した。
みんな嫁さんに子供を任せて来たらしい。
話の内容がちょっとやばいから善明のホテルのホールで行われると聞いた。
まあ、居酒屋で殺しの話なんてできないよね。
父さん達と話ながらバスで街に向かってホテルに行く。
他の皆は揃っていた。
恵美さんが説明する。
きっかけは晶さんだった。
晶さんを”ババア”呼ばわりした馬鹿を始末した。
本当に馬鹿な事をするな。
問題はここからだ。
彼等はSHを名乗ったらしい。
それは多分神谷十郎の作った似非SHだろう。
予想より早く進出してきた。
似非SHだと一応確認はしたらしい。
まあ、正規のSHなら晶さんに”ババア”なんて無謀な事絶対に言わないと思うけど。
「片桐空を知ってるか?」
そう聞いたそうだ。
当然彼等は知らない。
思った以上の馬鹿らしい。
その馬鹿は当然の様に処分された。
問題はここからだ。
似非SHとの接触。
それに対してSHはどう動く?
「SHのリーダーは空なんだろ?空が判断しなさい」
自分の息子がどういう対応をするのかお手並み拝見といった感じで父さんが聞いてきた。
翼とも相談した。
父さんも予測していた通りだとすれば、まだ動く時じゃない。
「何もしないよ」
当然の様に僕は答えた。
正解だったみたいだ。
父さんはにこりと笑っている。
「ちょっと待て空!向こうは偽物なんだろ!?勝手に縄張り荒らされてまだ黙っている理由を説明しろ」
光太が言うと遊達も納得いかないみたいだ。
当然水奈の母さん達も憤っていた。
だけど大地と善明は違うみたいだ。
僕に何か根拠があると判断したらしい。
光太達に説明した。
「リベリオンの目的はSHに対するヘイトを稼ぐこと」
だから馬鹿な真似をしてSHの敵を増やしているんだろう。
ここで「自分たちが本物のSHだ」と名乗れば下手すればその似非SH全体を相手にしないといけないことになる。
べつにそれでもいいけど、皆仕事や生活がある。
面倒事は避けたい。
「その理屈だと放っておいてもSHの敵が増えるだけだろ」
「光太、多分そうじゃないよ」
善明が光太に答えた。
気づいたようだ。
「地元の人間でSHに逆らう人間なんていない。それほどまでに広がっている。色んな事件もあったしね」
手を出しても割に合わない相手。
ヘイトを溜めるかもしれないけどそれだけじゃ人は動かない。
FGですら今は何もしてこないんだから。
「しかし……SHの名前を悪用するのは許せないだろ?」
学が言う。
「空はきっとこう考えてるのね。燃料があっても誰かが火をつけないと燃え上がらない」
奈留さんが言うと僕はうなずいた。
きっとその火も神谷十郎は用意しているのだろう。
きっと最初からそのつもりだったのだろうから。
その時に神谷十郎が出てくるはず。
そこを抑える方が楽だ。
「でもそのタイミングがわかるのか?」
「わかるよ」
茜が答えた。
「神谷については手が出せない。だから発想を変えた」
「どういうことだ?」
学が聞く。
茜は説明する。
どんなに強固で手が出せない情報でもネットにある以上誰かがアクセスする。
当たり前だけど誰かが見れるようにネットに置いてるのだから。
「トロイの木馬でも仕込んだのか?」
水奈の父さんが聞くと茜は首を振った。
「相手は凄腕の奴らが沢山いるの。そんな足がつくような真似しない。誠さんの家に裸で入るような物だよ」
「む、それはいつでもいいぞ……いてぇ!」
「誠は話を逸らすな!」
「茜も真面目に話しなさい!」
水奈の母さんと母さんが怒っている。
「で、何をしかけたの?」
奈留さんが言うと茜はにこりと笑った。
「だからその中に入れる人」
僕と父さんは「無理をするな」と茜に言った。
茜は無理に中身を覗く必要は無いと判断した。
要は相手の姿が分かればいい。
だったら中に入れる人の素性が分かればいいと、茜は判断した。
どんなに暗号化されていようが凄腕の防壁を破る事に比べたら遥かに楽だ。
加えて似非SHの情報もある。
あっという間に全容が解明した。
ジハード
3つのコングロマリットが手を組んだ組織。
その言葉を聞いた大地の父親と善明の父親は険しい顔をした。
文字通り世界中を支配する巨大な組織。
ありとあらゆる分野の業種を支配するコングロマリット。
その裏にいるのが神谷。
恐らくジハードのうちの三星グループの裏組織だろう。
神谷の背後にいる相手を茜が暴いた。
しかしその巨大さに皆が不安になる。
「そんなの相手になるの?」
そんな不安が漂う。
「ついに厄介な相手が出てきましたね」
善明が言う。
だけど父さんは冷静だった。
「それで?」
僕達に聞いてきた。
話はそれで終わりじゃないだろ?
全部話しなさい。
父さんが言うと茜が続ける。
「多分ジハードのうちの四菱グループってのがアルテミスの敵対企業」
どっちが上かは言わずとも判断できる。
「で、彼等は何をするつもりなの?」
父さんはまだ冷静でいる様だ。
「パパ達が言ってた通り。この地元までエリアを拡大したあとに文字通り燃料を投下する」
ぶっちゃけて言うとそれが神谷の正体。
あたらしいグループを作って似非SHを餌にして強化する。
文字通りSHに恨みを持った連中。
そのXデーもしっかり茜は掴んでいる。
「なるほどね。で、空はどうするつもり?」
「ちょっと片桐君!さっきから聞いてたら他人事みたいだけど今までの相手とは格が違うわよ?」
恵美さんが言っている。
恵美さん達でさえも相手にしたくない連中らしい。
だから父さんは恵美さん達に言う。
「勘違いしてない?背後にいるのがジハードって連中なんだろ?」
ただそれだけ。
SHの標的はあくまでも神谷。
みんな落ち着け。
相手の巨大さに怯えて目的を見失ってる。
「僕もそう思います。別にジハードを引きずり出すつもりはない」
神谷がそのジハードにどれだけ発言権があるかどうかわからないけどたかが一人の私怨に全力を出すほど暇じゃないだろ。
「まあ、それもそうね……」
「で、空。作戦はあるのか?」
父さんが僕に訪ねると答えた。
「僕もこれ以上敵を作るのは不本意だからね」
父さんに作戦を伝える。
「……うん。それでいいんじゃないのか?」
タイミングも間違いないだろう。
目的を忘れはいけない。
ジハードとやらを引きずりだして叩きつぶすのが目的じゃない。
神谷を引きずり出してカタをつけるのが目的なんだ。
きっと神谷もそこまで力をださないだろう。
というか出せないのだろう。
だからこんな回りくどい事をしているのだろうから。
「茜は場所も抑えてるんだね」
「間違いない、絶対に気づかれるような真似もしていない」
「じゃあ、作戦は決まったね。ジハードとやらが出てくる前にケリをつけるよ」
父さんが言う。
皆が静かに聞いていた。
このタイミングで間違いないんだろうな
僕は皆の前に立つ。
「すまんが、みんなの命をくれ」
ぽかっ
「その癖をいい加減になおしなさい!冬夜にも教えてるそうじゃないですか」
母さんに叩かれた。
「面白いじゃないですか。面白いって事が重要なんですよ」
大地が言う。
そうして僕達は帰る。
「おかえりなさい、どうでした?」
そう言ってくる美希に伝える。
「……空、正直に答えて」
「どうしたの?」
「本当にこれで終わりだと思う?」
翼は鋭いな。
「正直これくらいで挫ける相手じゃないと思う」
「……だよね。でも忘れないで」
空は一人じゃない。
相手が何者だろうが空は王なんだ。
怖気つくような王に従う部下はいない。
しっかりして欲しい。
「分かってるよ。……たださ」
「どうしたの?」
「相手は神らしいよ」
「そりゃまたやっかいですね」
美希はそう言って笑っていた。
美希が笑っている限り僕は戦う。
何が待ち受けてるか分からないけど、僕は冷静に判断をすればいい。
僕は一人じゃない。
頼りになる仲間がいるのだから。
「あけましておめでとうございます」
「はい、良く言えたね~。お利口さんですね」
そう言って愛莉は頭を撫でてくれた。
すると茉奈達も家に新年の挨拶とやらにやってきた。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
茉奈はそう言って愛莉に礼をする。
「良くできましたね。じゃあ、これはご褒美ですよ」
そう言って愛莉は茉奈達にお年玉を渡す。
俺もじいじや学から受け取っていた。
「わざわざごめんね」
「いいんです。どうせ茉奈も結に会いたいって言ってたから」
「パパ!それは結に言ったらダメっていったよ」
別に今さら隠す事でもないだろうに。
俺にはお年玉の使い方がわからないから母さんが「これは冬夜のお菓子代にするね」って言う。
1年分のお菓子代には足りないけど、まあいいやって思う。
欲しい物なんてないし、お金の使い方が分からない。
片桐家では「これはママが預かっておくからね」なんて曖昧な事は言わない。
ちゃんとどう使うか教えてくれる。
お金がつかえるようになる頃には「自分で管理しなさい」と親は関与しない。
その証拠に陽葵や菫は自分でもらって喜んでいる。
もっとも片桐家の子供は大体食べ物を買って終わるんだそうだ。
それは食べ物くらいしか自分で買うものが無いから。
小学生になればお小遣いはくれるけど「買い食いはまだ早い」とママに叱られる。
家にお菓子を用意してるから我慢しなさいと言われる。
「生きてるか愛莉!お年玉回収しに来たぞ!」
天音たちがやってきた。
結莉と茉莉も一緒だ。
「あなたは4歳児以下の挨拶しかできないのですか!?」
愛莉が怒っている様だ。
当然の様に天音達にはお年玉はない。
結莉と茉莉にはあったけど。
もう一人立ちしてるのだから必要ないと思われるみたいだ。
だから茜はまだ自立してないから普通なんだろう。
「パパ~、私にはお年玉ないのかな?」
じいじにすがっている茜。
愛莉は激怒する。
「あなたは嫁に行くのだからいい加減にしなさい!」
「ちゃんとあるよ。ほら、これ」
「ありがと~パパ大好き」
「冬夜さんは娘に甘すぎると何度言えば分かってもらえるのですか!?」
怒っているのは愛莉だけじゃなかった。
「待てパパ!茜にあって私達に無いのはどういう理屈だ!?」
「子供の前でみっともない真似は止めなさい!」
天音と愛莉が言い争っている。
それをみて比呂が母さんを見ると抱き着く。
「僕も母さんから貰ってないよ?」
「ちゃんと用意してあるから待っててね」
そう言って僕の頭を撫でたあと天音に言う。
「天音。比呂が真似するからやめて!」
「だったら茜に言えよ!」
「私は愛莉達を介護するから貰って当然じゃない」
「まだ茜に介護してもらうほど衰えていません!」
「ああ、でもそれも考えないといけないか。愛莉達ものこり半分くらいだろ?寿命」
「それが親に向かって言う言葉ですか!?」
愛莉達が言い争っている。
でもじいじも考えてる事があるみたいだ。
「僕達はともかく、そろそろ遠坂家の事考えないとまずいんじゃないのか?」
「そうですね……」
「それなんだけどさ」
純也が言った。
「俺に考えがあるから任せてもらえないかな?」
「どうするつもりなの?」
ママが純也に聞いていた。
「この中で愛莉を抜かしたら一番りえちゃん達の世話になったの俺だから……」
「純也がみるのか?」
「来年には結論を出すからちょっと待ってくれないかな」
すると父さんやじいじは感づいたようだ。
「任せるよ」とじいじが言っていた。
夕方になると夕食を食べる。
お雑煮を食べる。
各家庭で味が違うらしい。
母さんは愛莉から教わったらしい。
愛莉はじいじの母親から教わったらしい。
じいじの好みを知りたかったんだそうだ。
大地はシイタケが苦手らしい。
だから天音はお椀に注ぐ時に大地のお椀にはシイタケが入らないようにしているそうだ。
お正月は色々特番をやっている。
毎年恒例の番組もあるらしい。
みかんを食べながら見ていると、お風呂の時間になる。
父さんと一緒に入って着替えるとさっさと寝る。
今夜は良い夢が見れると良いらしい。
どんな夢を見るのだろう?
(2)
「新年早々参ったね」
「でもおめでたいじゃない」
晶ちゃんはそう言って笑っていた。
新年早々挨拶に来た梓が突然告げた事。
「赤ちゃんできました」
繭も今出産に備えてる。
孫が一度に増える事になる。
菫は相変らず茉莉と遊んでいるらしい。
翼にもどうしてああなったのか分からないみたいだ。
多分翼の娘だから。
そう思ったけど敢えて口出ししなかった。
結婚もしているんだし親が色々文句言う事もないだろう。
そう思って今夜は晶ちゃんと2人で飲んでいた。
沢山いた子供達も次々と家を出て行った。
しかしまだ中学生の子供もいる。
まだまだ頑張らないといけない。
善斗達が大学を出たら僕は引退しようと思う。
その頃には善明ももう仕事に慣れているだろう。
善明に代替わりしようと思うと晶ちゃんに伝えた。
「じゃあ、それまでがんばらないとね」
あっさり認めてくれた。
週末だから外で飲んでいた。
ホテルも部屋を取ってある。
何軒かはしごしていい加減寝ようかという頃だった。
「善君。あれ見て」
晶ちゃんが立ち止まって何かを見つけたようなのでそれを見た。
黒い服を着た連中を袋叩きにしている暴漢達。
周りの人は巻き込まれたくないと、我関せずを決めている。
君達運が悪かったね。
きっと今年のおみくじは大凶だったんじゃないのかい?
晶ちゃんは我関せずをするような人間じゃない。
それどころか自ら飛び込みたくなるようだ。
「あなた達何やってるの!?」
晶ちゃんが近づいて言うと暴漢達は手を止めてこっちを見た。
冬吾いなくてよかったね。
片っ端から殴り飛ばされてるよ。
ジェンダーがどうとかいう時代にそう言う意見はどうかと思うけど、彼等は男なのに化粧をしていた。
髪形もリーゼントなんて生易しい物じゃない。
いわゆるV系のような髪形をしていた。
どれだけ整髪剤を使えばそんな髪形になるのか不思議だ。
ましてや深夜にそんな恰好して誰が見るというのだろう。
言っとくけどここはコスプレ会場じゃないよ。
とりあえず僕も忠告だけはしておいた。
「あまりそういう暴力はやめて、大人しく家にお帰り」
いいかい?余計なことは絶対に言わないでおくれ。
僕の心配はそれだけだった。
「なんだおっさんもやられたいのか?」
まだ大丈夫……だと思う。
でも君達の最後は決まったみたいだ。
晶ちゃんがスマホで連絡している。
もちろん警察に通報なんて生易しい物じゃない。
「てめぇ、何警察に垂れ込むなんてふざけた事してんだくそババア!」
終わった……
忠告を聞いてくれたらよかったのに。
警察に通報してもらったほうがまだ幸せだったと思う時が来るよきっと。
その時は多分君のわずかな人生が終わりを告げる時だけど。
「今なんて言った?クソガキが……」
晶ちゃんを”ババア”と呼んでいいのは結莉と茉莉と陽葵と菫だけだよ。多分。
言っとくけど僕に止めろなんて言っても無理だからね。
今度はどんな処刑方法を考えているのか様子を見ていた。
「心配しないでいいわ。警察なんて生温い処分で済むと思わない事ね。クソガキ」
「なんだと、舐めやがって!」
そう言って晶ちゃんに殴りかかろうとするクソガキAと晶ちゃんの間に入る。
そんな大げさに振りかぶると隙だらけだよ。
僕は冷静にクソガキAの脇腹に蹴りを入れる。
手加減は出来ないよ。ごめんね。
そんなことしたら僕が晶ちゃんに怒られる。
本当は眉間に銃弾をプレゼントしたいくらいだけど、一応恋愛小説らしいから。
誰も絶対にそんな風に見ていないだろうけど。
仲間をやられたクソガキ達は怒っているようだ。
まあ、そうだろうね。
一斉に殴りかかって来た。
僕も大分衰えたと思っていたけど、そんな事はなかった。
あっけないくらいに全員叩きのめした。
あれだね。
僕が晶ちゃんの両親に挨拶に行った時を思い出したよ。
この世界では親が一番強いんだ。
あの時の晶ちゃんの父親は銃弾すらはじき返すような筋肉だったね。
石原君は危うく恵美さんの両親に首の骨を折られて死ぬところだったらしい。
「お前ら……SHに喧嘩を売ってただで済むと思うなよ」
「なんですって?」
晶ちゃんもその言葉に反応したようだ。
これが本当にSHの仕業なら空の命がやばい。
もちろん空がそんな愚かな行為を許すはずがない。
まあ、確認の為彼等に訪ねてみた。
「君達SHって言ったね?」
「知ってるのか?」
「君達は片桐空って人間を知ってるかな?」
「誰だそれ?」
「……なるほどね」
晶ちゃんがニヤリと笑う
「よかったわ、これで遠慮なく地獄に突き落とすことが出来る」
本当に大凶だったんじゃないのかい?
晶ちゃんに見つからなければ。
晶ちゃんに”ババア”と言わなければ。
SHの名前を出さなかったら、君達はもう少しだけ幸せな終焉を迎えられたろうに。
話をしている間に晶ちゃんの手配した兵隊がやって来た。
晶ちゃんは兵隊に指示をすると兵隊はクソガキ共を全員連行していった。
「せっかくの夜を台無しにしてくれたわね」
晶ちゃんの夜を台無しにした代償が彼等の人生が台無しになっただけ。
「しかし空達には報告しておいた方がいいかもしれないね」
「そうね。とうとうここまできたのね」
「ところで彼等はどうするつもりなんだ?」
「最近原油が高騰して燃料ももったいないでしょ?」
海外に送るのは面倒になったという。
で、最近天音が言っていた漫画を思い出したらしい。
翌日の朝刊の1面を飾っていたよ。
袋をかぶせられてこめかみに釘を撃ち込まれた死体が河原に転がっていたらしい。
この物語本当に大丈夫なのかい?
(3)
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「うん、子供達は私が見てるから」
美希がそう言うと僕と父さん達はバス停に向かった。
すると善明や大地達と遭遇した。
みんな嫁さんに子供を任せて来たらしい。
話の内容がちょっとやばいから善明のホテルのホールで行われると聞いた。
まあ、居酒屋で殺しの話なんてできないよね。
父さん達と話ながらバスで街に向かってホテルに行く。
他の皆は揃っていた。
恵美さんが説明する。
きっかけは晶さんだった。
晶さんを”ババア”呼ばわりした馬鹿を始末した。
本当に馬鹿な事をするな。
問題はここからだ。
彼等はSHを名乗ったらしい。
それは多分神谷十郎の作った似非SHだろう。
予想より早く進出してきた。
似非SHだと一応確認はしたらしい。
まあ、正規のSHなら晶さんに”ババア”なんて無謀な事絶対に言わないと思うけど。
「片桐空を知ってるか?」
そう聞いたそうだ。
当然彼等は知らない。
思った以上の馬鹿らしい。
その馬鹿は当然の様に処分された。
問題はここからだ。
似非SHとの接触。
それに対してSHはどう動く?
「SHのリーダーは空なんだろ?空が判断しなさい」
自分の息子がどういう対応をするのかお手並み拝見といった感じで父さんが聞いてきた。
翼とも相談した。
父さんも予測していた通りだとすれば、まだ動く時じゃない。
「何もしないよ」
当然の様に僕は答えた。
正解だったみたいだ。
父さんはにこりと笑っている。
「ちょっと待て空!向こうは偽物なんだろ!?勝手に縄張り荒らされてまだ黙っている理由を説明しろ」
光太が言うと遊達も納得いかないみたいだ。
当然水奈の母さん達も憤っていた。
だけど大地と善明は違うみたいだ。
僕に何か根拠があると判断したらしい。
光太達に説明した。
「リベリオンの目的はSHに対するヘイトを稼ぐこと」
だから馬鹿な真似をしてSHの敵を増やしているんだろう。
ここで「自分たちが本物のSHだ」と名乗れば下手すればその似非SH全体を相手にしないといけないことになる。
べつにそれでもいいけど、皆仕事や生活がある。
面倒事は避けたい。
「その理屈だと放っておいてもSHの敵が増えるだけだろ」
「光太、多分そうじゃないよ」
善明が光太に答えた。
気づいたようだ。
「地元の人間でSHに逆らう人間なんていない。それほどまでに広がっている。色んな事件もあったしね」
手を出しても割に合わない相手。
ヘイトを溜めるかもしれないけどそれだけじゃ人は動かない。
FGですら今は何もしてこないんだから。
「しかし……SHの名前を悪用するのは許せないだろ?」
学が言う。
「空はきっとこう考えてるのね。燃料があっても誰かが火をつけないと燃え上がらない」
奈留さんが言うと僕はうなずいた。
きっとその火も神谷十郎は用意しているのだろう。
きっと最初からそのつもりだったのだろうから。
その時に神谷十郎が出てくるはず。
そこを抑える方が楽だ。
「でもそのタイミングがわかるのか?」
「わかるよ」
茜が答えた。
「神谷については手が出せない。だから発想を変えた」
「どういうことだ?」
学が聞く。
茜は説明する。
どんなに強固で手が出せない情報でもネットにある以上誰かがアクセスする。
当たり前だけど誰かが見れるようにネットに置いてるのだから。
「トロイの木馬でも仕込んだのか?」
水奈の父さんが聞くと茜は首を振った。
「相手は凄腕の奴らが沢山いるの。そんな足がつくような真似しない。誠さんの家に裸で入るような物だよ」
「む、それはいつでもいいぞ……いてぇ!」
「誠は話を逸らすな!」
「茜も真面目に話しなさい!」
水奈の母さんと母さんが怒っている。
「で、何をしかけたの?」
奈留さんが言うと茜はにこりと笑った。
「だからその中に入れる人」
僕と父さんは「無理をするな」と茜に言った。
茜は無理に中身を覗く必要は無いと判断した。
要は相手の姿が分かればいい。
だったら中に入れる人の素性が分かればいいと、茜は判断した。
どんなに暗号化されていようが凄腕の防壁を破る事に比べたら遥かに楽だ。
加えて似非SHの情報もある。
あっという間に全容が解明した。
ジハード
3つのコングロマリットが手を組んだ組織。
その言葉を聞いた大地の父親と善明の父親は険しい顔をした。
文字通り世界中を支配する巨大な組織。
ありとあらゆる分野の業種を支配するコングロマリット。
その裏にいるのが神谷。
恐らくジハードのうちの三星グループの裏組織だろう。
神谷の背後にいる相手を茜が暴いた。
しかしその巨大さに皆が不安になる。
「そんなの相手になるの?」
そんな不安が漂う。
「ついに厄介な相手が出てきましたね」
善明が言う。
だけど父さんは冷静だった。
「それで?」
僕達に聞いてきた。
話はそれで終わりじゃないだろ?
全部話しなさい。
父さんが言うと茜が続ける。
「多分ジハードのうちの四菱グループってのがアルテミスの敵対企業」
どっちが上かは言わずとも判断できる。
「で、彼等は何をするつもりなの?」
父さんはまだ冷静でいる様だ。
「パパ達が言ってた通り。この地元までエリアを拡大したあとに文字通り燃料を投下する」
ぶっちゃけて言うとそれが神谷の正体。
あたらしいグループを作って似非SHを餌にして強化する。
文字通りSHに恨みを持った連中。
そのXデーもしっかり茜は掴んでいる。
「なるほどね。で、空はどうするつもり?」
「ちょっと片桐君!さっきから聞いてたら他人事みたいだけど今までの相手とは格が違うわよ?」
恵美さんが言っている。
恵美さん達でさえも相手にしたくない連中らしい。
だから父さんは恵美さん達に言う。
「勘違いしてない?背後にいるのがジハードって連中なんだろ?」
ただそれだけ。
SHの標的はあくまでも神谷。
みんな落ち着け。
相手の巨大さに怯えて目的を見失ってる。
「僕もそう思います。別にジハードを引きずり出すつもりはない」
神谷がそのジハードにどれだけ発言権があるかどうかわからないけどたかが一人の私怨に全力を出すほど暇じゃないだろ。
「まあ、それもそうね……」
「で、空。作戦はあるのか?」
父さんが僕に訪ねると答えた。
「僕もこれ以上敵を作るのは不本意だからね」
父さんに作戦を伝える。
「……うん。それでいいんじゃないのか?」
タイミングも間違いないだろう。
目的を忘れはいけない。
ジハードとやらを引きずりだして叩きつぶすのが目的じゃない。
神谷を引きずり出してカタをつけるのが目的なんだ。
きっと神谷もそこまで力をださないだろう。
というか出せないのだろう。
だからこんな回りくどい事をしているのだろうから。
「茜は場所も抑えてるんだね」
「間違いない、絶対に気づかれるような真似もしていない」
「じゃあ、作戦は決まったね。ジハードとやらが出てくる前にケリをつけるよ」
父さんが言う。
皆が静かに聞いていた。
このタイミングで間違いないんだろうな
僕は皆の前に立つ。
「すまんが、みんなの命をくれ」
ぽかっ
「その癖をいい加減になおしなさい!冬夜にも教えてるそうじゃないですか」
母さんに叩かれた。
「面白いじゃないですか。面白いって事が重要なんですよ」
大地が言う。
そうして僕達は帰る。
「おかえりなさい、どうでした?」
そう言ってくる美希に伝える。
「……空、正直に答えて」
「どうしたの?」
「本当にこれで終わりだと思う?」
翼は鋭いな。
「正直これくらいで挫ける相手じゃないと思う」
「……だよね。でも忘れないで」
空は一人じゃない。
相手が何者だろうが空は王なんだ。
怖気つくような王に従う部下はいない。
しっかりして欲しい。
「分かってるよ。……たださ」
「どうしたの?」
「相手は神らしいよ」
「そりゃまたやっかいですね」
美希はそう言って笑っていた。
美希が笑っている限り僕は戦う。
何が待ち受けてるか分からないけど、僕は冷静に判断をすればいい。
僕は一人じゃない。
頼りになる仲間がいるのだから。
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