姉妹チート

和希

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I'm proud of you

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(1)

「はい、結。あーんして」
「あーん」

 ぱくっ。

「美味しい?」
「ああ、茉奈もして欲しいのか?」
「うん!」

 そうして茉奈の口に苺を入れてやる。
 茉奈は喜んでいた。
 俺たちはいちご狩りに来ていた。
 園内でならいくら食べてもいいらしい。
 いちごでお腹いっぱいにするにはどのくらい食べたらいいのかわからないけど。
 持って帰る分は量で値段が決まるらしい。
 もちろん制限時間はある。
 その時間で全部食らいつくす自信はあった。
 しかし制限時間いっぱいまではいれそうになかった。

「天音!こんなもんじゃ腹膨れない!肉が食いたい!」
「ここに肉はない!後で肉食わせてやるから大人しいちご食ってろ!」
「大体なんでこんなに蜂が多いんだよ。しらみつぶしにぶっ殺してやる」
「それはダメだ。苺ができなくなってしまうんだ!」
「なんでだ!?」
「自分で花粉をおしべから受け取れないから蜜をあげる代わりに運んでもらってるんだ」
「いちごってのは腰抜けだらけなのか!?オスなら自分で押し倒せばいいだろ!」
「ば、バカ。その話を愛莉の前でするんじゃない!」
「……天音は自分の娘に何を吹き込んだの!?」

 愛莉が言うと天音は必死に言い訳を考えていた。
 しかしそんな事お構いなく茉莉は言う。

「子作りの仕方くらい天音から聞いたぞ!」

 茉莉が言うと天音が笑ってごまかそうとしてる。
 様子からして大地も初耳だったみたいだ。

「大地、まだちょっと早いんじゃないの?」

 美希が言ってる。

「ぼ、僕も初めて知ったんだよ」
 
 やっぱりそうだったらしい。

「天音は何を考えているの!?」
「聞かれたから答えただけだ!」
「そんな知識を幼稚園児に教える母親がどこにいるの!?」

 愛莉の言葉からすると俺たちはまだ知ってはいけないらしい。
 母さんにも聞いたことがある。

「どうして結婚したら子供ができるの?」

 母さんは笑顔で答えた。

「神様が母親に授けてくれるの」
「でも菫達の話だと神様はずっと休暇してるらしいよ?」
「神様にも色々いるの」

 人間だって色々いるでしょ?
 神様を信じるものを信者という。
 そんな信者が集まって宗教が成り立つ。
 そして宗教は世界中に色々ある。 
 宗教の数だけ神様がいる。
 良い神様もいれば悪い神様もいる。
 なるほどな~。
 どうして苺は蜂が運ぶのかわからなかったけど、たぶん聞かない方がいいんだろうな。

「結は気にしなくていいから」

 茉奈も言ってるし気にせず苺を食べることにした。
 時間になると近くのショッピングモールで昼食を食べる。
 いちごはあくまでもデザートだから別腹なんだそうだ。
 時間的にも人が多くてどこの店も混んでいた。

「天音、こいつらぶっ飛ばしていいか?」
「やめとけ、警察沙汰になったら下手すれば昼飯抜きだぞ」

 茉莉と天音が話をしていた。 
 僕は茉奈と話をしながら他の人を見ていた。
 親子連れの人やら恋人と2人で来てる人とか友達で集まってきてる人……あれ?
 気のせいだろうか?
 物陰から僕たちをじっと見ている人間がいる。
 気になったので秋久に伝える。

「まだ気づいてない振りをして」

 秋久はそう言って翼に伝えてる。
 翼は父さんに伝えてる。
 父さんは何も言わなかった。
 昼食を済ませると、ゲームセンターに行く。
 お菓子が取り放題のクレーンゲームに夢中になっていた。

「はい、今日はもうお終い」

 母さんがそういうと終わる。
 陽葵も結莉も駄々をこねたりしない。
 茉莉や菫は駄々をこねていた。
 天音も翼も苦労しているみたいだ。
 じいじや愛莉はそれを見て笑っている。
 駐車場まで歩くと天音が突然叫んだ。

「いつまでも隠れてないで出てきてやれ。ゴキブリども!」

 すると何人ものスーツ姿の男の人間が現れた。
 休日出勤なのだろうか?
 茉奈に俺から離れるなと指示した。

「お前らリベリオンだろ?隠したって無駄だぞ」

 じいじが言う。
 俺たちに付きまとうのはFGかリベリオンだから。
 最近の情勢からして多分リベリオンだろうとじいじは判断したらしい。
 陽葵達みたいに皆髪の色が黒くなかった。
 屈強な体をしている。
 彼らは何もしゃべらなかった。

「空はそこにいろ。茉莉達を頼む。大地、いけるな?」
「大丈夫。せっかくの休日にふざけた真似をしたらどうなるか教えてやらないとね」
 
 大地と天音が前に出る。
 だけど僕は彼らが手に隠し持っていたものを見逃さなかった。
 一斉に銃をこっちに向けて発砲する。
 しかし無駄だ。
 俺が作り出すバリアはそんなものでは貫通できない。
 動揺する男たちを一網打尽に殴り飛ばす天音達。
 恵美はスマホで連絡している。
 ほどなくしてトラックがやってきた。
 トラックから出てきた兵隊が男たちを片っ端からトラックに押し込む。
 その際に妙なことを言っていた。

「俺たちに下手な真似したら後悔するぞ」
「その前にお前らを後悔させてやるよ」
 
 父さんがそういうとトラックは走っていった。

「また始まったのか?また片っ端から廃ビルにしてやらないと気が済まないのか?」
「そうじゃないと思う天音。今までとは別格の何かが動いてる」

 天音が言うと翼がそう答えた。

「なんでわかるんだよ?」
「天音、今度の連中は警告なしに発砲してきた。確実に僕たちを殺す気で来てる」

 天音が聞いたら大地が答えた。

「ふざけやがって……じゃあ、私たちもあいつらを殺しても文句言われないよな」
「空。どうする?」
「週末にでも集まろう。僕たちはいいけどほかの皆が心配だ」

 父さんがそう言った。
 話が終ると車に乗って家に帰る。
 茉奈は隣でぐっすり寝てる。
 父さん達の話が気になったので起きていた。

「今回は本気できたって事?」
「そうじゃないと思う」

 父さんが言った。
 本気で殺すなら白昼堂々と狙ってくるなんて馬鹿な真似しない。
 ただそういう馬鹿なことを平気でする連中だって脅しのつもりだろう。
 ただ、本気で殺すなら夜なんかに襲撃したり、遠距離からの狙撃とか手はいくらでもあるだろう。
 彼らはきっとこっちの力量を確かめているんだろう。

「彼らは……ってことは今までのリベリオンではないって事?」
「十郎は”本気でやる”って言ってた。その本気の末端なんだろうね」

 裏社会の本物のプロだろうとパパが言ってた。

「子供たちは大丈夫なの?」
「そのことも含めで相談したくて招集してもらった」

 少なくとも僕たちは問題ないだろう。
 僕が大体始末するから。
 帰りに焼き肉屋によって肉を食べて帰った。
 お風呂に入ってパジャマに着替えると寝る。
 そんなことが当たり前ではない連中が敵だとパパが言ってた。

(2)

 祝日の夜、皆に招集をかけた。
 ただならぬ輩に襲撃を受けたから。
 早速恵美さんに調べてもらう。
 白昼堂々と銃を撃つ連中だ。
 それも殺す気で。
 ただ者じゃないなず。
 空は「お手並み拝見」と表現していたけど多分あっているだろう。
 自分たちに対してどれだけの抵抗ができるのか確かめているのだろう。
 渡辺班の噂を知らない連中が相手。
 だったら海外から何かが入り込んできている。
 そう判断するのが妥当だと思った。
 すると晶さんの網にかかった。
 中華マフィア「黄帝竜」。
 やっぱり本物が相手か。 
 だけど……。

「誠お前の方では何か引っかからなかったか?」
「中身まではまだわからないけどキーワードだけなら捕まえた」
「それだけでいいよ」

 すると誠は言った。

「ホテル・カリフォルニア」と「エリツィンの愛」
 これで3つ揃った。
 次はどれが今回の相手かだ。

「多分エリツィンの愛だと思う」

 誠が言う。

「その根拠は?」
「最近ロシアから重要人物が来日したってニュース拾ってる」

 そいつが今回の標的なら間違いなくエリツィンの愛だ。
 多分誠の判断で合ってるだろう。

「ちょ、ちょっと今度は相手がやばすぎるんじゃないかい?」

 酒井君が慎重になるのも当然だろう。
 背後にいる企業もでかい。
 逆にこっちがつぶされる危険だって当然ある。

「でも、もう手遅れだよ」
「どうして?」
「それは空に聞いて」

 空が説明する。
 娘の陽葵と菫が相手から挑戦状を受けたらしい。
 陽葵達の心配はしていない。
 あの子たちはどんな相手だろうと返り討ちにするだろう。
 問題はほかの子供たちだ。

「当然警護はつける。でも……」

 それだけでは不安だろうな。
 
「なんでそんなことになったんですか?」
「拓海。あなたの悪い癖。そうやってすぐに浮足立つ。相手はそれを狙っているのを忘れちゃいけない」

 真鍋君が言うと妻の聡美さんが言う。

「……少なくともSHはやる気なんだろ?」

 空に確認していた。

「人の縄張りに土足で入り込んできたやつは全員ぶっ殺してやるって天音を筆頭に言ってる」

 まあ、そうなるだろうね。

「子供達でもやる気でいるのに親がそんなんで情けないと思わねーのか!?」

 美嘉さんがそういうのを渡辺君が抑える。

「やられっぱなしで済まさないとは思うけど、今度は俺たちが原因みたいじゃないですか?」

 俺は何もしてないぞと真鍋君は言う。
 リベリオン。
 昔叩き潰した高橋グループの生き残りの子供が作り上げたグループ。
 その背後に彼らがいた。
 多分一番恨まれているのは僕だろう。
 だけどそんなことは関係ない。
 仲間にまで手を出すなら僕も黙っていない。
 そんなに死にたいなら望み通り殺してやる。

「まあ、大半は僕たちが原因だろうからできる限りの協力はするよ」
「そうですね。僕たちが相手するべき相手でしょうね」

 酒井君と石原君が言う。

「問題はどうやって潰すか。だろ?」

 渡辺君が言うと僕が頷いた。
 相手の目的はわかってるけど、手段と標的が分からない。
 孫をも標的に入れるくらいだ。
 かなりの範囲を標的にしているだろう。
 だからそれだけの人間を連れてきた。
 いつものような手段は通じない。
 早いところ相手の本体を捕まえて叩き潰したい。
 しかしそれだけの情報が全く足りない。
 当面は相手に切らせるしかない。
 それはとでも危険だけど。

「片桐君、その前提は間違っている」

 公生が言った。
 相手は子供や孫を狙っている。
 それはそこしか接点がないからなんかじゃない。
 相手の目的なんてはっきりしている。
 僕達に家族の命を奪われる苦しみを受けさせたい。
 ただそれだけだ。
 最初の接触は高校、そして次に陽葵達。
 僕たちにも何かしてきてもおかしくないのにしてこない。
 出来ないからじゃない、敢えてしないんだ。
 そのパターンも考えた。
 しかし何か忘れている気がするんだ。
 自分が相手ならまず叩くのはどこだ?
 やりづらい相手だな。
 何をしてくるかさっぱりわからない。
 多分相手の狙いはそれだろう。
 僕たちの弱点を見極めると共に僕に判断をさせにくくして疲弊させていく。
 隙を見せたら一度に叩きつぶしに出る。
 失敗ができないというだけで結構な重圧なのにやってくれる。
 ……でもそれでいい。
 発想を考えよう。
 公生を見る。
 僕に必要なのは緊張感じゃない。
 何事にもとらわれない自由な発想。
 子供たちが狙い。
 少なくとも僕たちはそう判断した。
 そう思わせる事はできるんじゃないのか?
 そうしたら違うやり口を仕掛けてくるだろう。
 むしろやってみろと思わせるくらいは出来る。
 誰を狙わせる?
 そんなの簡単だ。
 じゃあ、どんな手口を使う?
 ……組みあがった。

「公生の言うとおりだな。空、大役だろうけど任せる」
「わかった」
 
 空はうなずいた。
 多分文字通り僕の意図を読み取ったのだろう。
 
 派手に囮になってくれ。

「で、私たちは何をすればいいわけ?」

 恵美さんが聞いていた。

「まずどのくらいの規模で相手が入ってきているのかが知りたい」

 きっとエリツィンの愛だけじゃないだろうから。
 黄帝竜は晶さんが調べてくれるだろう。

「任せて」

 恵美さんと晶さんが答えた。

「で、僕たちはどうするんだい?」
「何もしない。ただ注意だけはしてて」
「やられっぱなしってわけ?」

 恵美さんが聞いた。

「どこをつぶせばいいのかわからないのに無駄に手札を使いたくない」
「相手のゆるみが出たところを一撃でつぶすってことだね?」

 公生が言うとうなずいた。
 公生には気づかれただろうか?
 くすっと笑っていた。
 話が住むと皆家に帰った。
 亜依さん達に頼んで誠と桐谷君は家にまっすぐ帰ってもらった。
 リスクを増やしたくないから。
 家に帰ると子供たちは部屋に戻っている。
 僕も風呂に入って寝室に行った。

「ねえ冬夜さん?」

 愛莉もベッドに入ってくる。

「どうしたの?」
「とぼけたって駄目です。私は冬夜さんの妻ですよ?」

 まだ何か隠してるでしょ?と愛莉が言う。

「まあ、そんなに大したことじゃない」
「……冬夜さんは標的は子供たちじゃないとお考えなのでしょ?」

 愛莉もまだ衰えてないな。
 僕はにっこり笑って愛莉の頭を撫でてやる。

「最終的な標的は僕だよ」

 渡辺班の主要人物。
 あの事件で一番目障りな行動をしたのは僕。
 だから一番恨みを買ったのは僕。

「だったら一番気を付けないといけないのでは?」
「愛莉は将棋は知ってる?」
「パパさんがちょっとやってたので駒の動きくらいは」
「穴倉って囲いがあるんだ」

 徹底的に防御に徹する囲み。
 堅そうに見えて少しほころびができると王様の逃げ道を失ってしまう危険のある囲い。
 もともと逃げ道のない囲いだから構うことなく外側から一枚ずつ引っぺがしていけばいい。

「つまり下手に守るより、狙い方を絞らせた方がやりやすいということですか?」

 愛莉は頭はいいからすぐに理解する。
 子供たちの頭の良さも愛莉譲りなのだろう。

「そういうこと、相手が狙いを絞ってきた方が守る方は楽だろ?」
「さすがですね。でも冬夜さんの身を案じている妻の気持ちも分かってくださいな」
「わかってるよ。愛莉にさみしい思いをさせるわけにはいかないからね」
「ありがとうございます」

 十郎は本気でつぶすと行ったらしい。
 まずはその本気がどれほどの物か調べる必要があった。

(3)

 十郎がいなかったらこの場でドンパチが始まるところだった。
 糞共が二人いる。
 私たちの後に入国したらしい。
 標的をつぶすのは私達だけでは足りないと判断したらしい。
 十郎が二人に説明をしているのをただ聞いていた。
 十郎が私を見る。

「ヤーナ、紹介するよ彼らは……」
「糞が二人。それで十分だ」

 すると二人が私を睨みつける。

「ヤーナ。協力しろとは言われてないと思うが足の引っ張り合いをしていても仕方ないだろう」

 目的が果たせないと大金が入ってこない。
 それでは意味がない。

「で?名前を聞いてやればいいのか?」
「物分かりがいいね。助かるよ」
 
 十郎がそういうと二人の名前を教えた。
 一人の黒人の大男がアルカトラズ、もう一人の妖艶な女性がリン。
 私も自分の名前を名乗った。

「で、誰がボスなんだ?」

 アルカトラズが言う。

「僕たちの間に上下関係はない。相互関係があるだけだ」
 
 片桐冬夜を殺すための同志言えばわかってもらえるだろうか。
 だって目的は片桐冬夜の首にかけられた懸賞金。
 目的は一緒だけど同時に競争相手だ。と、十郎は言う。
 十郎はその目的を遂行する為の手引きをするだけに過ぎないという。
 話が終ると私たちは根城に戻る。
 チャチな夜景を見ながら部下たちの行動を確認する。
 甘く見ていい相手じゃないことはすぐにわかった。
 同胞に手を出したからには、そんなに長生き出来ると思うなよ?と思いながらぬるいビールを飲んでいた。
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