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Unknown World
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(1)
「本日より復職することになった楠木桃花さんです」
社長があいさつすると桃花さんが礼をしてみんなが拍手をしていた。
色々話すことがあるだろうけどまずは仕事だ。
みんなが席に着くと僕と桃花さんも席に着く。
「もうそんなに教えることはないと思うけど、ブランクもあるだろうから」
「はい」
そう言って彼女に仕事を渡すと僕も仕事を始める。
そんなに張り詰めた雰囲気ではなく「休暇中どうだった?」くらいの話はする。
桃花さんも大変だったみたいだ。
赤ちゃんの世話で精一杯だったらしい。
美希でもてこずっていたから桃花さんはもっと大変だったんだろうな。
そんな話をしていると予定にない来客が訪れる。
ぱっと見運送業者のように見えた。
その男は受付に箱を渡す。
「なんですかこれ?」
受付も不思議に思ったらしい。
しかし男は何も言わずに立ち去ろうとした。
「待て!お前何者だ!?」
僕が怒鳴りつけるのも無視して男は立ち去っていく。
宛先が桃花さんになっていたらしいので受付が持ってくる。
復職祝い?
誰からだ?
桃花さんもなんだろうと開けようとした時直観で動いた。
袖机に置いてあった箱を渾身の力を込めて窓にめがけて蹴り飛ばした。
僕の行動速度は光に近くなる。
光に近づくほど内部の時間の動きは0に近づく。
箱は窓が突き破った頃に遅れて爆発する。
近隣の住民も驚いただろう。
突然空中で爆発が起きるのだから。
とりあえずは目の前で何が起きたのか理解できていない桃花さんを落ちつかせる。
「私……ただ箱の中身が気になって」
「わかってる。何も悪いことはしてないから落ち着いて」
そう言てなだめていると社長室から「何事?」と社長が出てきた。
社長に説明すると現状を理解したらしい。
「けが人は?」
「窓際の席の人がガラスで切ったくらいです」
「手当してあげて。それと警察に連絡を」
社長は落ち着いて指示を出しながら、自身もスマホで連絡を取っていた。
「しかし空、ダメだろ」
「え?」
「空は球技苦手なんだろ?結果的には良かったけどもう少し考えなさい」
運よく窓を突き破ったからいいけど壁に当たったりしていたら大惨事だぞ。と注意を受けた。
「早速仕掛けてきたね」
社長が言う。
犯人は捜すまでもない。
リベリオンだろう。
その後警察が来て事情聴取を受けていた。
今日の夕刊のネタが出来たと新聞記者は喜んでいるだろう。
(2)
毎日のように会議がある。
また面倒なことをしてくれる客がいるよ。
もう施工が始まっていた店舗を白紙にしてくれと言い出したらしい。
普通に考えたら第3者の介入があったと考えるべきだろうね。
一件くらいなら問題ない。
しかし市外の店舗が何件からも断られてたら会議にもなる。
母さんの逆鱗に触れる前に片づけたい。
お互いの為にもお断りした方がいい。
「うん、好きにさせよう」
「しかし大丈夫でしょうか?似たような手口が何件もですよ?」
「事情があるのでしょう」
断られたからと言って別に損失が出るわけじゃない。
工事費がいくらか損した程度だ。
「しかしそうなると今後市外への展開が難しくなりますね」
「まあ、そうだろうね」
リゾートホテルなんかもあるから、できれば県外にも展開したいくらいだ。
そんな時にスマホがなった。
会議中だからスマホは切っておくべき。
そんな常識が通用しない我が社。
もし母さんからの呼び出しなどで出なかったら大惨事になる。
スマホを見ると父さんからだった。
こんな時間にかけてくるなんて珍しいな。
「悪いけどちょっと席を外すよ」
そう言って会議室を出て電話に出る。
「ああ、善明。今大丈夫かい?」
「まあ、ちょっと問題があるけど大丈夫」
「迎えに行くから一緒に片桐税理士事務所に行くよ」
空の職場だ。
「何かあったの?」
「まあね、それにちょっと嫌な予感がするから手を貸しておくれ」
父さんの感は鋭い。
そりゃ母さんの夫だからそうもなるか。
僕も美希の機嫌を察するのに常に気を配っているからね。
しかし菫は大丈夫なのだろうか?
水奈の子供も混ざると大変なことになりそうだ。
そんな大変な世代に迷惑な事件を起こしてくれるよ。
本気で日本壊れるかもしれないよ。
そんなことを案じないといけない恋愛小説というのもめちゃくちゃな気がするけど。
「ごめん、急用ができた。お断りは全部丁重に受けてあげて。母さんには内密に」
「承知しました」
そう言って会社を出ると父さんの車がある。
車に乗り込むとゆっくりと動き出した。
空の父さんの会社の事務所に爆弾を送り込んだ命知らずがいるらしい。
いまだに理解してない馬鹿はそんなにいない。
僕でも察しがついた。
問題はここからだ。
父さんが呼び出されたのは爆弾の解析だろう。
しかし僕を連れてくる理由がわからなかった。
父さんは一言だけ答えてくれた。
「父さんももう50だからね。色々としんどいんだ」
意味がよくわからない。
事務所に着くと水奈の父さんたちも来ていた。
父さんは空の父さんから爆弾の残骸を受け取り確認している。
水奈の父さんと恵美さんは爆弾を送り込んだ相手の特定をしていた。
「善明まで来たの?」
空も不思議に思ったらしい。
「父さんに呼び出されてね」
「どうして?」
「わからない」
何か面倒なことを予知しているみたいだけど。
そしてそんな話をしているときにチェーンソーの音と女の叫び声が聞こえてきた。
父さんを見るとうんざりしている。
「この音と声って……まさか」
恵美さんも知っているようだ。
「きーっ!狭い通路ね。これじゃ通れないじゃない!」
その声で父さんは相手が誰かを確信したようだ。
「父さんはこれ調べるからお客さんにお引き取り願っておいで」
そのくらいできるだろ?
そう言って父さんは作業を始めた。
チェーンソーを持った女……。
なんか嫌な予感がするんだけど。
「僕も行くよ」
「止めといた方がいいかもよ」
「どうして?」
空は不思議そうな顔をしていた。
まあ、空なら楽に追い返しそうだ。
ついてきてもらおう。
階段を降りると階段の幅よりも横幅のある女性?がいた。
顔はヘルメットを被っていて見えない。
髪が長いし胸もあるから女性なんだろうけど……
ただの関取という線もないこともない。
こんな関取いたらすぐに横綱だろうね。
顔はどう表現したらいいのだろう。
美人とかぶすとかそんな表現では足りない。
醜いのあと2段くらい上の表現があれば教えてほしい。
彼女?は僕たちを見るとにらみつける。
「お前が世の中の女性の敵、片桐の息子か!?」
そんなに大声出さなくても聞こえるよ。
「ええ、隣の彼が片桐空。僕は酒井善明です」
空を売ったように聞こえるかもしれないけど勘弁しておくれ。
しかし謝る必要がなかったようだ。
「酒井……だと?」
彼女?の標的は僕に決まったようだ。
もちろん彼女をもてあそんだとかそんな思い出はない。
そんなことしたら恵美さんどころか母さんに八つ裂きにされる。
「あの、人違いじゃないですか?」
「……よく見ると似ているな。お前、死神の息子だな?」
うわぁ、やっぱりそっちが本命だったか。
「善明知ってるの?」
「話はよく聞いていたから」
父さんは僕を売ったんだ。
こいつの相手をしたくないから僕に譲ったんだ。
父親のやることじゃないと思うんだけど。
「まずはお前の腸を引きずり出して父親に見せつけてやる」
そういうセリフはどうかと思うんだ
仮にも恋愛小説だよ。
「正義の名においてお前に鉄槌を!!」
そう言ってチェーンソーを振り上げで襲い掛かる。
しかし通路が狭くて通れない。
それどころか振り上げたチェーンソーが天井に突き刺さり動けないでいる。
「姑息な人間はこざかしいところに潜んでいるのね!」
普通のビルだと思うけど。
あなたが規格外だということは考えなかったのかな?
「一応聞いておいていいですか?」
「何?」
「あなた安藤奈津子さん?」
「そうよ、正義のために今一度舞い降りた女神!その名もスティールレディ!」
「どうも」
確認はした。
安心して銃を取り出して顔面に撃つ。
空は驚いていた。
大丈夫、父さんから聞いた話が本当なら多分もっと驚くことが起こるから。
「……いきなり乙女の顔に銃を撃つとはさすが死神の後継者」
そんなものまで継いだ覚えはないんだけど。
「とりあえずあれどかさないとほかの人の迷惑だよね」
空がそう言った。
空は何を見ていたのだろうか?
銃弾食らっても平気でいる生き物をどうやって追い払うんだい?
そんな手段を空は持っていた。
空は手のひらを相手に向ける。
それだけで相手は吹き飛んだ。
「悪いけどこっちも色々取り込み中なんだ。善明だって仕事で来てる。逆ナンとかされても困るだけだから帰ってくれないか?」
僕は休日でもこの生き物に口説かれるのはごめんだね。
相手もしたくないしそんなのに誘われていたら美希達に殺される。
「お前もレディの扱いがなってないようね」
「そのセリフあまり言わない方がいいよ?」
空がそう言って後ろを指差す。
背後には翼と美希が立っていた。
「旦那様、仕事中にどういうことですか?」
「突然押しかけて困ってたんだ」
「人の亭主に勝手に手を出さないで欲しいんだけど」
空も翼が怖いらしい。
しかし危険な状況は変わらない。
「美希や、下がってておくれ」
「ふん、その化粧でごまかした美貌でたぶらかす女狐から始末してやる」
やばい美希に標的が移った。
止めないと殺される……僕が母さんに。
「失礼なこと言わないで。私化粧なんてしてません。まだそんなに年じゃない」
あなたこそ少しは化粧したらどうなの?と美希は言う。
「年上に対する礼儀を教えてやる」
そう言って物体がチェーンソーを振り上げた時だった。
「結!遠慮しなくていい」
翼がそういうと物体が消失した。
まさか本気で殺したのかい?
「結、何をしたんだ?」
空が結に近づこうとすると冬夜が「ダメ」といった。
「母さんが普通のやり方だったら絶対死なないって言ったから試してみた」
「何を?」
美希も分からないらしい。
結はこう言った。
何かのロボットアニメで見たらしい。
「流れ星は宇宙から地球の引力で引き寄せられる小隕石が大気圏で焼失するのが正体だって言ってた」
誰もが結のやったことを理解した。
そしてみんなその場から離れる。
物体は元いたところに寸分違わず落下した。
周りに爆風が広がる。
地面にはでかい穴が開いていた。
さすがに死んだだろう。
父さんたちも慌てて降りてきた。
空が事情を説明する。
結は4歳で殺人犯だ。
あれが人間だという前提での話だけど。
しかしどんな小説よりも事実の方が恐ろしいと聞いたことがある。
落下してきた物体がゆっくりと立ち上がった。
「おまえら……」
さすがに美希も恐れたらしい。
後ずさりする。
父さんが言ってたことを忘れてた。
「相手は榴弾砲をまともに食らっても生きている。人間だと思ったらいけない」
空もためらっていた。
多分空の所有する能力にあれをしとめる手段があるのだろう。
だがそれは確実にあの化け物の命を奪う。
空は良くも悪くも大人だ。
それをすることにためらいがあったんだろう。
しかし結は子供だ。
遠慮なんて言葉はどこかのトイレに流してきたらしい。
「な、何これ?」
物体が徐々に地面に沈んでいく。
もがいても謎の力が物体を地中に沈めていく。
「こ、今度は何をしたの?」
美希が冬夜に聞いていた。
「とりあえず邪魔みたいだから埋めておいた」
天音達が「うっとうしい奴は片っ端から埋めてやれ」というのを実行したらしい。
ただ埋めるだけじゃない。
それだといつかはい出てくる。
それをいちいち処分するのも面倒だから違う方法をした。
空が結に教えたらしい。
「地球は丸いんだよ」
だから日本の反対側にまで貫通させる気でいるらしい。
まあ、文字通り「地球の中心で愛を叫ぶ」んあろうね。
愛って言葉を使えばいいというわけじゃないと思うよ。
(3)
「どうしたの?急に集まってって」
私はリベリオンの高校3年生を集めた高校1年生の沖田浩二に聞いていた。
「ああ、とりあえず仲間の顔を見ておきたかったから」
彼はそういった。
十郎は次々と海外から戦力を集めているらしい。
彼らに理屈は通じない。
なら力づくで地獄に突き落としてやるという思考に切り替えたらしい。
しかし私達には何の指示もない。
一度だけ十郎に相談した。
「1年間の辛抱だ。高校を卒業してから仕事をしてもらう」
そのころには冬吾も冬莉も地元にずっといるわけじゃない。
チャンスが来る。
言っている意味が分かる。
しかしそれは単に冬莉と冬吾には手を出せないと言ってるようなものじゃないか。
地元という舞台ではやはりSHが有利だ。
それに冬吾と冬莉はどんな能力を用いても無効化させてしまう。
それが十郎の誤算だったようだ。
だから卒業していなくなるまで待て。
しかし1年にだって片桐莉子と冬眞がいる。
同じことじゃないか。
十郎の考えていることがさっぱり分からなかった。
この1年で何か状況が変わるのだろうか?
そんなことを考えながら浩二の話を聞いていた。
あまり重要な話ではないらしい。
「そういう話なら私抜きでもいいよね?」
私は妹の世話をしないといけないから。
そう言って一人家に帰る。
「お姉ちゃんおかえり。遅かったね」
「ごめん、急に呼び出されて」
「……リベリオンの事?」
「まあね」
「十郎はなんて言ってるの?」
「この一年は我慢してろって」
「なぜ?」
妹の問いに答えることができなかった。
いくつかパターンを考えていた。
私達には手に負えない存在がSHだと判断したのだろうか?
その考えがあっていたとしたら、行きつく先は……。
「雪菜。今日はオムライスでいいかな?」
「わーい」
あんなに無邪気な雪菜でも持っている片桐家に対する恨み。
しかしあんな無邪気な子供が持っていいい感情なのか?
そんなことを考えていた。
ご飯を食べて雪菜と一緒にふろに入る。
どうせ妹だからと一緒の部屋で過ごしていた。
雪菜はFPSのゲームをやっている。
血を見ることに何の抵抗もない妹。
その先にある結論は……。
忘れよう。
今までずっと抱えてた誓いだ。
それだけを糧に雪菜を世話してきた。
十郎さんにも恩がある。
今更逃げ出せるわけがない。
するとスマホにメッセージが届く。
雲雀からだ。
「大丈夫か?」
「どうしたの?突然」
「成実、今日何か思い詰めていたから」
「気にしないで、大丈夫だから」
「頼りにならないかもしれないけど何かあったら言ってくれ。俺はお前と共に生きる」
「わかってる。ありがとう」
雲雀だけじゃない。
有紀や剣太も巻き込んでいる。
今更「止めよう」なんて言えるはずがない。
行くところまで行くしかない。
復讐。
その先にあるのは何なのだろう。
復讐を果たしたら私は幸せになれるのだろうか?
目標に向かっていたはずの私たちはいつの間にか未知の世界に足を踏み入れていた。
「本日より復職することになった楠木桃花さんです」
社長があいさつすると桃花さんが礼をしてみんなが拍手をしていた。
色々話すことがあるだろうけどまずは仕事だ。
みんなが席に着くと僕と桃花さんも席に着く。
「もうそんなに教えることはないと思うけど、ブランクもあるだろうから」
「はい」
そう言って彼女に仕事を渡すと僕も仕事を始める。
そんなに張り詰めた雰囲気ではなく「休暇中どうだった?」くらいの話はする。
桃花さんも大変だったみたいだ。
赤ちゃんの世話で精一杯だったらしい。
美希でもてこずっていたから桃花さんはもっと大変だったんだろうな。
そんな話をしていると予定にない来客が訪れる。
ぱっと見運送業者のように見えた。
その男は受付に箱を渡す。
「なんですかこれ?」
受付も不思議に思ったらしい。
しかし男は何も言わずに立ち去ろうとした。
「待て!お前何者だ!?」
僕が怒鳴りつけるのも無視して男は立ち去っていく。
宛先が桃花さんになっていたらしいので受付が持ってくる。
復職祝い?
誰からだ?
桃花さんもなんだろうと開けようとした時直観で動いた。
袖机に置いてあった箱を渾身の力を込めて窓にめがけて蹴り飛ばした。
僕の行動速度は光に近くなる。
光に近づくほど内部の時間の動きは0に近づく。
箱は窓が突き破った頃に遅れて爆発する。
近隣の住民も驚いただろう。
突然空中で爆発が起きるのだから。
とりあえずは目の前で何が起きたのか理解できていない桃花さんを落ちつかせる。
「私……ただ箱の中身が気になって」
「わかってる。何も悪いことはしてないから落ち着いて」
そう言てなだめていると社長室から「何事?」と社長が出てきた。
社長に説明すると現状を理解したらしい。
「けが人は?」
「窓際の席の人がガラスで切ったくらいです」
「手当してあげて。それと警察に連絡を」
社長は落ち着いて指示を出しながら、自身もスマホで連絡を取っていた。
「しかし空、ダメだろ」
「え?」
「空は球技苦手なんだろ?結果的には良かったけどもう少し考えなさい」
運よく窓を突き破ったからいいけど壁に当たったりしていたら大惨事だぞ。と注意を受けた。
「早速仕掛けてきたね」
社長が言う。
犯人は捜すまでもない。
リベリオンだろう。
その後警察が来て事情聴取を受けていた。
今日の夕刊のネタが出来たと新聞記者は喜んでいるだろう。
(2)
毎日のように会議がある。
また面倒なことをしてくれる客がいるよ。
もう施工が始まっていた店舗を白紙にしてくれと言い出したらしい。
普通に考えたら第3者の介入があったと考えるべきだろうね。
一件くらいなら問題ない。
しかし市外の店舗が何件からも断られてたら会議にもなる。
母さんの逆鱗に触れる前に片づけたい。
お互いの為にもお断りした方がいい。
「うん、好きにさせよう」
「しかし大丈夫でしょうか?似たような手口が何件もですよ?」
「事情があるのでしょう」
断られたからと言って別に損失が出るわけじゃない。
工事費がいくらか損した程度だ。
「しかしそうなると今後市外への展開が難しくなりますね」
「まあ、そうだろうね」
リゾートホテルなんかもあるから、できれば県外にも展開したいくらいだ。
そんな時にスマホがなった。
会議中だからスマホは切っておくべき。
そんな常識が通用しない我が社。
もし母さんからの呼び出しなどで出なかったら大惨事になる。
スマホを見ると父さんからだった。
こんな時間にかけてくるなんて珍しいな。
「悪いけどちょっと席を外すよ」
そう言って会議室を出て電話に出る。
「ああ、善明。今大丈夫かい?」
「まあ、ちょっと問題があるけど大丈夫」
「迎えに行くから一緒に片桐税理士事務所に行くよ」
空の職場だ。
「何かあったの?」
「まあね、それにちょっと嫌な予感がするから手を貸しておくれ」
父さんの感は鋭い。
そりゃ母さんの夫だからそうもなるか。
僕も美希の機嫌を察するのに常に気を配っているからね。
しかし菫は大丈夫なのだろうか?
水奈の子供も混ざると大変なことになりそうだ。
そんな大変な世代に迷惑な事件を起こしてくれるよ。
本気で日本壊れるかもしれないよ。
そんなことを案じないといけない恋愛小説というのもめちゃくちゃな気がするけど。
「ごめん、急用ができた。お断りは全部丁重に受けてあげて。母さんには内密に」
「承知しました」
そう言って会社を出ると父さんの車がある。
車に乗り込むとゆっくりと動き出した。
空の父さんの会社の事務所に爆弾を送り込んだ命知らずがいるらしい。
いまだに理解してない馬鹿はそんなにいない。
僕でも察しがついた。
問題はここからだ。
父さんが呼び出されたのは爆弾の解析だろう。
しかし僕を連れてくる理由がわからなかった。
父さんは一言だけ答えてくれた。
「父さんももう50だからね。色々としんどいんだ」
意味がよくわからない。
事務所に着くと水奈の父さんたちも来ていた。
父さんは空の父さんから爆弾の残骸を受け取り確認している。
水奈の父さんと恵美さんは爆弾を送り込んだ相手の特定をしていた。
「善明まで来たの?」
空も不思議に思ったらしい。
「父さんに呼び出されてね」
「どうして?」
「わからない」
何か面倒なことを予知しているみたいだけど。
そしてそんな話をしているときにチェーンソーの音と女の叫び声が聞こえてきた。
父さんを見るとうんざりしている。
「この音と声って……まさか」
恵美さんも知っているようだ。
「きーっ!狭い通路ね。これじゃ通れないじゃない!」
その声で父さんは相手が誰かを確信したようだ。
「父さんはこれ調べるからお客さんにお引き取り願っておいで」
そのくらいできるだろ?
そう言って父さんは作業を始めた。
チェーンソーを持った女……。
なんか嫌な予感がするんだけど。
「僕も行くよ」
「止めといた方がいいかもよ」
「どうして?」
空は不思議そうな顔をしていた。
まあ、空なら楽に追い返しそうだ。
ついてきてもらおう。
階段を降りると階段の幅よりも横幅のある女性?がいた。
顔はヘルメットを被っていて見えない。
髪が長いし胸もあるから女性なんだろうけど……
ただの関取という線もないこともない。
こんな関取いたらすぐに横綱だろうね。
顔はどう表現したらいいのだろう。
美人とかぶすとかそんな表現では足りない。
醜いのあと2段くらい上の表現があれば教えてほしい。
彼女?は僕たちを見るとにらみつける。
「お前が世の中の女性の敵、片桐の息子か!?」
そんなに大声出さなくても聞こえるよ。
「ええ、隣の彼が片桐空。僕は酒井善明です」
空を売ったように聞こえるかもしれないけど勘弁しておくれ。
しかし謝る必要がなかったようだ。
「酒井……だと?」
彼女?の標的は僕に決まったようだ。
もちろん彼女をもてあそんだとかそんな思い出はない。
そんなことしたら恵美さんどころか母さんに八つ裂きにされる。
「あの、人違いじゃないですか?」
「……よく見ると似ているな。お前、死神の息子だな?」
うわぁ、やっぱりそっちが本命だったか。
「善明知ってるの?」
「話はよく聞いていたから」
父さんは僕を売ったんだ。
こいつの相手をしたくないから僕に譲ったんだ。
父親のやることじゃないと思うんだけど。
「まずはお前の腸を引きずり出して父親に見せつけてやる」
そういうセリフはどうかと思うんだ
仮にも恋愛小説だよ。
「正義の名においてお前に鉄槌を!!」
そう言ってチェーンソーを振り上げで襲い掛かる。
しかし通路が狭くて通れない。
それどころか振り上げたチェーンソーが天井に突き刺さり動けないでいる。
「姑息な人間はこざかしいところに潜んでいるのね!」
普通のビルだと思うけど。
あなたが規格外だということは考えなかったのかな?
「一応聞いておいていいですか?」
「何?」
「あなた安藤奈津子さん?」
「そうよ、正義のために今一度舞い降りた女神!その名もスティールレディ!」
「どうも」
確認はした。
安心して銃を取り出して顔面に撃つ。
空は驚いていた。
大丈夫、父さんから聞いた話が本当なら多分もっと驚くことが起こるから。
「……いきなり乙女の顔に銃を撃つとはさすが死神の後継者」
そんなものまで継いだ覚えはないんだけど。
「とりあえずあれどかさないとほかの人の迷惑だよね」
空がそう言った。
空は何を見ていたのだろうか?
銃弾食らっても平気でいる生き物をどうやって追い払うんだい?
そんな手段を空は持っていた。
空は手のひらを相手に向ける。
それだけで相手は吹き飛んだ。
「悪いけどこっちも色々取り込み中なんだ。善明だって仕事で来てる。逆ナンとかされても困るだけだから帰ってくれないか?」
僕は休日でもこの生き物に口説かれるのはごめんだね。
相手もしたくないしそんなのに誘われていたら美希達に殺される。
「お前もレディの扱いがなってないようね」
「そのセリフあまり言わない方がいいよ?」
空がそう言って後ろを指差す。
背後には翼と美希が立っていた。
「旦那様、仕事中にどういうことですか?」
「突然押しかけて困ってたんだ」
「人の亭主に勝手に手を出さないで欲しいんだけど」
空も翼が怖いらしい。
しかし危険な状況は変わらない。
「美希や、下がってておくれ」
「ふん、その化粧でごまかした美貌でたぶらかす女狐から始末してやる」
やばい美希に標的が移った。
止めないと殺される……僕が母さんに。
「失礼なこと言わないで。私化粧なんてしてません。まだそんなに年じゃない」
あなたこそ少しは化粧したらどうなの?と美希は言う。
「年上に対する礼儀を教えてやる」
そう言って物体がチェーンソーを振り上げた時だった。
「結!遠慮しなくていい」
翼がそういうと物体が消失した。
まさか本気で殺したのかい?
「結、何をしたんだ?」
空が結に近づこうとすると冬夜が「ダメ」といった。
「母さんが普通のやり方だったら絶対死なないって言ったから試してみた」
「何を?」
美希も分からないらしい。
結はこう言った。
何かのロボットアニメで見たらしい。
「流れ星は宇宙から地球の引力で引き寄せられる小隕石が大気圏で焼失するのが正体だって言ってた」
誰もが結のやったことを理解した。
そしてみんなその場から離れる。
物体は元いたところに寸分違わず落下した。
周りに爆風が広がる。
地面にはでかい穴が開いていた。
さすがに死んだだろう。
父さんたちも慌てて降りてきた。
空が事情を説明する。
結は4歳で殺人犯だ。
あれが人間だという前提での話だけど。
しかしどんな小説よりも事実の方が恐ろしいと聞いたことがある。
落下してきた物体がゆっくりと立ち上がった。
「おまえら……」
さすがに美希も恐れたらしい。
後ずさりする。
父さんが言ってたことを忘れてた。
「相手は榴弾砲をまともに食らっても生きている。人間だと思ったらいけない」
空もためらっていた。
多分空の所有する能力にあれをしとめる手段があるのだろう。
だがそれは確実にあの化け物の命を奪う。
空は良くも悪くも大人だ。
それをすることにためらいがあったんだろう。
しかし結は子供だ。
遠慮なんて言葉はどこかのトイレに流してきたらしい。
「な、何これ?」
物体が徐々に地面に沈んでいく。
もがいても謎の力が物体を地中に沈めていく。
「こ、今度は何をしたの?」
美希が冬夜に聞いていた。
「とりあえず邪魔みたいだから埋めておいた」
天音達が「うっとうしい奴は片っ端から埋めてやれ」というのを実行したらしい。
ただ埋めるだけじゃない。
それだといつかはい出てくる。
それをいちいち処分するのも面倒だから違う方法をした。
空が結に教えたらしい。
「地球は丸いんだよ」
だから日本の反対側にまで貫通させる気でいるらしい。
まあ、文字通り「地球の中心で愛を叫ぶ」んあろうね。
愛って言葉を使えばいいというわけじゃないと思うよ。
(3)
「どうしたの?急に集まってって」
私はリベリオンの高校3年生を集めた高校1年生の沖田浩二に聞いていた。
「ああ、とりあえず仲間の顔を見ておきたかったから」
彼はそういった。
十郎は次々と海外から戦力を集めているらしい。
彼らに理屈は通じない。
なら力づくで地獄に突き落としてやるという思考に切り替えたらしい。
しかし私達には何の指示もない。
一度だけ十郎に相談した。
「1年間の辛抱だ。高校を卒業してから仕事をしてもらう」
そのころには冬吾も冬莉も地元にずっといるわけじゃない。
チャンスが来る。
言っている意味が分かる。
しかしそれは単に冬莉と冬吾には手を出せないと言ってるようなものじゃないか。
地元という舞台ではやはりSHが有利だ。
それに冬吾と冬莉はどんな能力を用いても無効化させてしまう。
それが十郎の誤算だったようだ。
だから卒業していなくなるまで待て。
しかし1年にだって片桐莉子と冬眞がいる。
同じことじゃないか。
十郎の考えていることがさっぱり分からなかった。
この1年で何か状況が変わるのだろうか?
そんなことを考えながら浩二の話を聞いていた。
あまり重要な話ではないらしい。
「そういう話なら私抜きでもいいよね?」
私は妹の世話をしないといけないから。
そう言って一人家に帰る。
「お姉ちゃんおかえり。遅かったね」
「ごめん、急に呼び出されて」
「……リベリオンの事?」
「まあね」
「十郎はなんて言ってるの?」
「この一年は我慢してろって」
「なぜ?」
妹の問いに答えることができなかった。
いくつかパターンを考えていた。
私達には手に負えない存在がSHだと判断したのだろうか?
その考えがあっていたとしたら、行きつく先は……。
「雪菜。今日はオムライスでいいかな?」
「わーい」
あんなに無邪気な雪菜でも持っている片桐家に対する恨み。
しかしあんな無邪気な子供が持っていいい感情なのか?
そんなことを考えていた。
ご飯を食べて雪菜と一緒にふろに入る。
どうせ妹だからと一緒の部屋で過ごしていた。
雪菜はFPSのゲームをやっている。
血を見ることに何の抵抗もない妹。
その先にある結論は……。
忘れよう。
今までずっと抱えてた誓いだ。
それだけを糧に雪菜を世話してきた。
十郎さんにも恩がある。
今更逃げ出せるわけがない。
するとスマホにメッセージが届く。
雲雀からだ。
「大丈夫か?」
「どうしたの?突然」
「成実、今日何か思い詰めていたから」
「気にしないで、大丈夫だから」
「頼りにならないかもしれないけど何かあったら言ってくれ。俺はお前と共に生きる」
「わかってる。ありがとう」
雲雀だけじゃない。
有紀や剣太も巻き込んでいる。
今更「止めよう」なんて言えるはずがない。
行くところまで行くしかない。
復讐。
その先にあるのは何なのだろう。
復讐を果たしたら私は幸せになれるのだろうか?
目標に向かっていたはずの私たちはいつの間にか未知の世界に足を踏み入れていた。
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「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
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