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Love Somebody
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(1)
「あんまりいい映画やってないね」
翼はその映画を嫌悪していた。
「パパ、いつになったらサンタクロース来るんだ?人を待たせるとはいい度胸じゃねーか」
菫はサンタクロースが来たところを取り押さえて他の子のプレゼントを横取りする気でいるらしい。
陽葵と秋久はさっさと寝てしまった。
「菫や、サンタさんは夜はちゃんと寝てるいい子の所に来るんだよ?」
「早く寝たらいい子って、じゃあ私は悪い子だって言いたいのか?上等じゃねーか!ぶっ殺してやる」
サンタを殺そうとする幼稚園児。
もう僕もどうしたらいいかわからないよ。
スマホは翼に取り上げられたから、大地と相談することもできない。
「翼や、手伝ってくれないかい。そろそろ菫も寝んねの時間だよ」
「クリスマスイブくらい、いいんじゃない?」
翼は考えてないんだろうか?
翼に耳打ちする。
「子供にプレゼントをあげないと……」
すると翼は不思議そうに答えた。
「それならもう渡したよ」
へ?
マヌケ面をしている僕を見て美希は菫の背中を指差す。
……モデルガンだよね?
前にあげなかったっけ?
二つある……
「晶さんが言ってたから」
最近物騒だから子供の護身用装備をプレゼントしてあげなさい。
どこの世界にクリスマスプレゼントに銃を渡す親がいるんだい。
「翼や、それはさすがにまずいんじゃないかと僕は思うんだけど」
「善明、よく考えてよ。おもちゃの銃を相手に向ければ容赦なく発砲してくるよ?」
僕の考えがおかしいのかよくわからない。
「じゃあ、あの子がサンタさんを取り押さえるってのは……」
「きっと善明からももらえると思ってるんだろうね」
そう言って翼はにこりと笑う。
……なんか嫌な予感しかしないけどしょうがない。
「菫、おいで」
「どうしたんだ?」
「パパからクリスマスプレゼントだよ」
そう言ってプレゼント箱を開けた。
「なんだ、用意してるならさっさと出せよ!」
ありがとうすら言わないわが娘……年越しパーティの時は大地と飲もうかな。
勿論惨劇はそれだけじゃなかった。
中身を見た菫が怒りを露わにする。
「ざけんな!こんなもんでおままごとでもしろってのか!?」
アニメキャラクターの大きなぬいぐるみを用意しておいたんだけどね。
お気に召さなかったようだ。
僕はどうしたらいいんだろう?
ちなみに大地が去年結莉達に渡したら一晩で部屋中に綿を散乱させていたらしいよ。
「掃除が大変だった」
母親の感想はそれだけだったそうだ。
「部屋に飾っておけばいいんじゃないかな?」
翼が必死に宥める。
「翼!お前もこのバカにちゃんと指導しとけ!来年ふざけた物持ってきたらぶっ殺すぞ!」
そう言ってぬいぐるみを持って部屋に戻って行ったようだ。
だけど翼は笑っている。
「翼もああだったのかい?」
「いや、ぬいぐるみを貰った時は嬉しかったのだけど、最近の女の子は銃の方が好きなのかな?」
現に陽葵には黒い洋服を買ってあげたらしい。
男の子のプレゼントだと思ったのだけど。
ってまさか……
「秋久にも銃を?」
僕が翼に聞くと翼は首を振った。
「あの子は妙なことを言うんです」
翼が説明した。
サプレッサーのついてない銃なんて日本でまともに使えるわけがない。
敵に感知されない、静かに速やかに抹殺する物を選んだ。
結論から言うと投げナイフを数本渡したらしい。
秋久の考えの方が普通だと思ってるのは僕の基準がおかしくなっているのだろうか?
「善明は何を買ってきたの?」
翼が聞いてくると、僕は箱を見せた。
海翔や冬夜は喜んでいたらしいのでロボットアニメのロボットのプラモを買ってきた。
「秋久なら大丈夫だよ」
翼はそう答えた。
そうだよね。
普通はそうなるよね。
「善明は何を貰ってたの?」
「……海外旅行」
「5歳で?酒井家ってすごいんだね」
そうだよ、すごいんだ。
5歳でアフリカで少年兵として1週間研修を受けてきたんだ。
僕の人生はもう終わったと思ったね。
ぬいぐるみを抱いて死んだ少女のように……。
「あ、晶ちゃん。あの子たちにこれ以上戦闘能力を付けたら善明の手に負えないよ!」
父さんがそう言って秋久の海外派遣は免れた。
どうして秋久だけかって?
陽葵と菫は女の子だからね。
でも祈がそうだったように菫はああなってしまった。
「でも善明が心配するようなことはないから」
翼がそう言う。
「理由を教えてくれないかい?」
僕がそう言うと菫の部屋に案内された。
「音を立てないで」
翼がそう言ってそっとドアを開ける。
女の子だよ?
ドアを閉めていても聞こえてくるいびき。
しかしそのいびきの主は僕が買ったぬいぐるみを抱いて眠っていた。
そっとドアを閉めるとリビングに戻る。
「どうして気づいたんだい?」
「あの子恥ずかしがり屋なんですね」
パパには内緒にしておいてと言われたらしい事。
それを僕が聞いていいのか知らないけど聞かなかったことにしておこう。
今日仕事をしてる昼間にプレゼントを買いに行ったらしい。
どこの店に行ったら拳銃が売ってあるのか小一時間問い詰めたかったけど。
まあ、畑にパイナップルが転がってる県もあるから普通に”武器屋”があるのだろう。
そして陽葵と菫の欲しい物を買ってあげると2人は聞いたらしい。
「パパも何かくれるかな?」
「きっともう用意してるよ」
「でもね、何もなくてもいいんだ」
希美は言ったらしい。
パパが無事に帰ってくれることは奇跡なんだってテレビで見たらしい。
まあ、年末はそういう特番をよくやるからね。
2人はパパがいるってことは当たり前じゃないって理解したようだ。
それに……
「私もパパみたいな強くて優しい人と結婚したい」
そんな事を言っていたそうだ。
あの子がね……
子供が宝物ってことを多分人生で一番染みた瞬間だったよ。
「でも、そんな期間はあまりないから」
恋をすれば優先順位が変わっていく。
それが親離れなんだ。
いつまでも親にくっついているようじゃいけない。
その日を見守っているのが大事なんだと翼が言った。
「それでも、善明の努力は報われるから」
「どういうことだい」
それは翼自身の体験談だそうだ。
今の僕を見て翼の父親に感謝しているそうだ。
恥ずかしくて今は言えないけど、いつかちゃんと「ありがとう」って伝えたいと翼は言う。
なんか今年はとても暖かいクリスマスになったじゃないか。
策者のプレゼントなのだろうか?
そんなに甘くはなかった。
「それにしても今日の映画酷かったね。美希達も観てたのかな」
「そ、それは大丈夫じゃないかな」
「どうして?」
「多分美希は絶対に知ってるから」
そう、天音が”下敷き”と称した恋愛小説。
中学生が”ヒロインがものすごいキチガイなのは理解した”と称した物語。
ナイスボートよりはましか?くらいな話。
あんな真似を僕が翼にしたら僕は間違いなく病死以外の変死体になってるね。
実の母親によって。
天音は原作を10分で読んだと空から聞いた。
しかも上下合わせてだ。
2冊にしたのが不思議なくらいの薄っぺらな小説。
中身がじゃないよ。見た目が薄いんだ。
翼は上巻を読んだだけでオチが分かったらしい。
あれ?
「あれはたしか翼はあの小説知ってるんじゃないのかい?」
「え?うん、知ってるよ。天音たちが読んでるのを読ませてもらったから」
「……大地も読んだことがあると言ってたんだ」
大地も読書家だからね。
そりゃ映画化になるような大ヒット作ならその見た目だけでなくて中身も気になったんだろう。
そしてそれを美希が見つけて読んだらしい。
美希は空に勧めていた。
合宿の時に空が「善明は知ってる?」って聞いてきて翼と大ゲンカしてた。
「美希はあれのどこが気に入ったのだろう?」
「彼氏の優しさとか言ってたよ」
高校生で妊娠させただけで飽き足らず流産したらポイ捨てのどこに優しさがあるのかさっぱり分からなかった。
人は見た目によらないと感想があったらしいけど「見た目より中身がやばすぎるだろ」と天音は言っていた。
あんな真似したら本当に僕生きてないよ。
そしてとってつけたかのように彼氏は実は白血病だったっていうオチ。
白血病だったら何しても許されるのか?
それが逆に翼の逆鱗に触れたのだろう。
しかし気になるな。
「翼や、ちょっとスマホを貸してくれないかい?」
「こんな時間に飲みに行くの?」
「いや、空に聞いてみたくてね」
そう言って翼からスマホを受け取ると空に聞いてみた。
「空が気になっていた映画今日テレビでやってたけど」
「知ってる。美希が見たいっていうから見てたんだけど母さんが怒りだしてさ」
「比呂達に見せていいものではありません!」
今年は空達の方が大変そうだ。
(2)
それは衝撃的だった。
冬吾が手に持った箸を落としそうになるくらいの衝撃があった。
この会場にいる皆が泉の姿を見て声を失っていた。
「まじかよ……」
誠がそう漏らした。
泉の隣には村井君がいた。
ここはセレブのパーティ会場なのかと間違えそうになるような紫の綺麗なドレス。
「へえ、馬子にも衣装ってこの事なんだな」
「あんたは素直に綺麗だって褒める事知らないの?」
誠司が空気をいい意味で壊した。
「誠司がモテていた理由がわかならい。見た目だけじゃん」
「だから今困ってるんだろ?」
「あんた楽しそうだけどね」
「これも育人が作ったの?」
恵美さんが来た。
今日パーティがあると聞いて間に合わせたらしい。
「高校の勉強はどうなの?」
今更今年卒業できませんなんて言ったら承知しないわよ。
恵美さんがそう言うと「それは大丈夫です」と村井君が答えた。
それを見て隣にいた英恵さんに聞いていた。
「らしいけど、どうなの?」
「どうもこうもないわよ、私は年に10着って言ったのよ?」
それがどうかすれば月に2着作ってくるらしい。
勉強が疎かになってないか心配だったけど問題ないみたいだ。
「そんなに無理に作らなくてもよかったのに……」
「それは私からも言ったんです。だけど……」
衣装合わせのために泉と会うことになる。
それが目的だったらしい。
さすがに制作をさぼってデートばかりしていたらまずいと村井君は思ったそうだ。
それで頑張って作ったらしい。
泉の体形はしっかりイメージ出来てるから大丈夫だと村井君は言う。
「つまり育人の中では常に裸の泉が……いてぇ!」
「お前はどういう曲解をするんだ!?」
「誠司も恋人が出来たらわかるよ、俺だって目を閉じれば裸の神奈が……いてぇ!」
「お前が言うとどう考えてもいやらしい話になるんだ!」
冬吾を見るとイメージしようとしていたのだろう。
ぽかっ
「そんなの覚えなくていいから」
瞳子に怒られていた。
僕はもうそんなわざわざ言わなくても愛莉の裸くらいずっと見続けてきたからね。
空も同じなんだろう。
何も言わずに見守っていた。
「大地!お前はどうなんだ!?」
「僕だって同じだよ、天音しか知らないんだ」
「当たり前だ!他の女知ってたら殺すぞ!」
「天音は場所を弁えて話しなさいって何度言えばわかるの!」
すると陽葵達が善明に言い寄っている。
「パパは私の裸知りたくないの?」
「僕は翼がいるからね、ごめんよ」
流石にまだ父親を亡くしたくないだろ?
「つまんな~い」
「陽葵達もいい加減恋人作ったらどうなの?」
翼が聞いていた。
「私達が恋人作ったらパパ泣いちゃうんじゃないの?」
「その時は翼に慰めてもらうから」
「でもさ、やっぱり無理」
「どうして?」
翼が聞くと菫が答えた。
「女子に殴り飛ばされる彼氏ってどうなんだ?」
陽葵も同じ意見らしい。
しかし陽葵達の相手になるような男子探すのは無理があるんじゃないのか?
「陽葵ちゃん、とりあえず気になった子がいたら私に教えてくれないかな?」
晶さんが言っている。
陽葵が納得いくように訓練してやるという。
酒井君は笑っていた。
クリスマスプレゼントの話も聞いた。
それを聞いた愛莉が天音達に聞いていた。
「天音は何を結莉達にプレゼントしたのか言いなさい」
大地は笑っている。
結莉達は料理を食べている。
天音も笑うだけ笑った。
「今年は危険だから護身用のものがいいんじゃないのかなって私はアドバイスしたんだけどね」
恵美さんが言うと愛莉が天音を睨みつける。
「まさかあなた達も拳銃を渡したんじゃないでしょうね?」
「そ、それはないです。去年渡したから」
「馬鹿、なにばらしてんだ大地。ふざけんな!」
「……じゃあ、今年は何を渡したの?」
恵美さんが聞いていた。
「茉莉はゲームのような大剣が欲しいと言い出して特注で作るように天音が注文して……」
「お前はもう黙ってろ大地!」
そんな物どこに持っていくつもりだろう?
幼稚園に持っていく途中に捕まるぞ。
「天音が黙っていなさい。大地、結莉には何を渡したの?」
「……ラジコン……なのかな?」
「え?」
女の子だとしてはどうなんだと思ったけど茉莉よりはましだ。
そう思っていた。
「そう言えば沖縄の米軍基地から連絡来てたけど……まさかあれなの?」
結莉は物を破壊する能力を持っている。
だからそういう道具を持つ必要はなかった。
実際バズーカやらロケットランチャーはいらないと言ったらしい。
ただ……。
「わざわざ遠くまで歩いていくのが面倒なの」
そう言ってUAVをプレゼントしたらしい。
標的が遠くの時はその方が手っ取り早いと思ったそうだ。
「ちょっと待ちなさい。じゃあ私と恵美が用意したプレゼントは?」
愛莉と恵美さんは二人で相談してプレゼントを買って与えたらしい。
絵本と着せ替え人形を二人分用意したそうだ。
絵本はその日のうちに破り捨てられゴミ箱にぽい。
着せ替え人形は翌日首無しというのかさらし首というのか……まあ、そんな状態で保管されているらしい。
愛莉たちが様子を見に来る前に人形だけでも修復してくれと天音が茉莉を説得している最中だったそうだ。
愛莉がかなり怒ってる。
「そう言えば海翔は何あげたの?」
「まさか2歳の子供に刃物なんて渡してないでしょうね?」
「あ、いや。恵美さんも護身用に何か持っていた方がいいって言ってたから……」
天音がゲームをやっているのを見て便利だなと思ったらしい。
手首に仕込んでいざというときに刃物が出てくる道具。
いろんな時代で暗殺をするゲームの主人公の武器だった。
一つ分かったことがある。
水奈がゲーム出来ない時間天音が何をしているのか?
対戦相手がいないなら一人でできるゲームをやろうと思ったのだろう。
そのゲームを海翔が見てるの知らずに。
「水奈だって同じだろ?」
「天音、自分の時は言うなって言っておいてそれはないんじゃないのか!?」
「いつも水奈がばらすからだろ!?」
「どっちでもいい!お前ら子供に何をさせるつもりなんだ!?」
ピアノとかそういうお稽古をでもさせろと言わないけど少しは改善しようって気はないのか!?
カンナも怒り出す。
水奈がこんなんだから学は娘に何をプレゼントしたらいいか悩んだそうだ。
茉奈にはお裁縫セットを渡したらしい。
喜んで色々作っているそうだ。
悠翔はCDが欲しいと言ったそうだ。
洋楽のロック。
どうも悠翔は音楽に興味があるようだと学が言っていた。
まだまともな気がする。
愛菜と優菜はまだ大丈夫な気がする。
物理で殴り合いをする魔法少女の変身グッズを欲しがっていたのでそれを買ったらしい。
そうなると不安になるのは結と比呂だ。
美希が答えた。
結は特撮物の変身ベルトが欲しいと言ったそうだ。
最近のは変身のギミックが多いから結構大変なんだけど。
10月クールから始まるからまだ出始めたばかり。
大変だぞ……と思ったけどまあ、海翔達に比べたらましか。
結は変身ポーズを覚えて空の前でするんだそうだ。
空はそのポーズを写真に撮ってやってる。
「比呂はどうしたの?」
全くつかみどころのない比呂だったけどようやく何が好きか分かったみたいだ。
あの子は冬吾に似ていた。
NBAのチームのユニフォームを欲しがっていたそうだ。
まだボールをドリブルすることも難しいだろうけど、小学校に上がる頃には桜子に相談してみようかな。
「で、いっくんは合格なんですか?」
泉は英恵さんに聞いていた。
英恵さんはにこりと笑う。
「本当は失格にして私の下で修業させたいくらいなんだけどね」
その必要もないだろう。
この分なら専門学校や大学に通う必要もない。
村井君の卒業までに貸店舗を用意してあげるように恵美さんに言っていた。
「そうね、腕もセンスも間違いないみたいだし」
杏采が卒業するまで待とうかと思っていたけど先に作っても問題なさそうだと恵美さんは判断した。
「誠司達の世代は皆巣立っていくんだな」
「そうだね。冬莉ちゃん達も頑張っているみたいだし」
誠と恵美さんはそう言って冬莉達が歌っているステージを見る。
演奏をやめてMCが入る。
カウントダウンが始まって新年を迎える。
「実はね、F・SEASONなんだけど……」
恵美さんが言っていた。
海外からのオファーが来ているらしい。
フレーズの二人はライバルの登場を喜んでいるようだった。
いくつもの朝を迎えて、いつかきっとつかむのだろう。
いくつもの夜を超えて、あの星を掴むのだろう。
また節目を迎えようとしていた。
「あんまりいい映画やってないね」
翼はその映画を嫌悪していた。
「パパ、いつになったらサンタクロース来るんだ?人を待たせるとはいい度胸じゃねーか」
菫はサンタクロースが来たところを取り押さえて他の子のプレゼントを横取りする気でいるらしい。
陽葵と秋久はさっさと寝てしまった。
「菫や、サンタさんは夜はちゃんと寝てるいい子の所に来るんだよ?」
「早く寝たらいい子って、じゃあ私は悪い子だって言いたいのか?上等じゃねーか!ぶっ殺してやる」
サンタを殺そうとする幼稚園児。
もう僕もどうしたらいいかわからないよ。
スマホは翼に取り上げられたから、大地と相談することもできない。
「翼や、手伝ってくれないかい。そろそろ菫も寝んねの時間だよ」
「クリスマスイブくらい、いいんじゃない?」
翼は考えてないんだろうか?
翼に耳打ちする。
「子供にプレゼントをあげないと……」
すると翼は不思議そうに答えた。
「それならもう渡したよ」
へ?
マヌケ面をしている僕を見て美希は菫の背中を指差す。
……モデルガンだよね?
前にあげなかったっけ?
二つある……
「晶さんが言ってたから」
最近物騒だから子供の護身用装備をプレゼントしてあげなさい。
どこの世界にクリスマスプレゼントに銃を渡す親がいるんだい。
「翼や、それはさすがにまずいんじゃないかと僕は思うんだけど」
「善明、よく考えてよ。おもちゃの銃を相手に向ければ容赦なく発砲してくるよ?」
僕の考えがおかしいのかよくわからない。
「じゃあ、あの子がサンタさんを取り押さえるってのは……」
「きっと善明からももらえると思ってるんだろうね」
そう言って翼はにこりと笑う。
……なんか嫌な予感しかしないけどしょうがない。
「菫、おいで」
「どうしたんだ?」
「パパからクリスマスプレゼントだよ」
そう言ってプレゼント箱を開けた。
「なんだ、用意してるならさっさと出せよ!」
ありがとうすら言わないわが娘……年越しパーティの時は大地と飲もうかな。
勿論惨劇はそれだけじゃなかった。
中身を見た菫が怒りを露わにする。
「ざけんな!こんなもんでおままごとでもしろってのか!?」
アニメキャラクターの大きなぬいぐるみを用意しておいたんだけどね。
お気に召さなかったようだ。
僕はどうしたらいいんだろう?
ちなみに大地が去年結莉達に渡したら一晩で部屋中に綿を散乱させていたらしいよ。
「掃除が大変だった」
母親の感想はそれだけだったそうだ。
「部屋に飾っておけばいいんじゃないかな?」
翼が必死に宥める。
「翼!お前もこのバカにちゃんと指導しとけ!来年ふざけた物持ってきたらぶっ殺すぞ!」
そう言ってぬいぐるみを持って部屋に戻って行ったようだ。
だけど翼は笑っている。
「翼もああだったのかい?」
「いや、ぬいぐるみを貰った時は嬉しかったのだけど、最近の女の子は銃の方が好きなのかな?」
現に陽葵には黒い洋服を買ってあげたらしい。
男の子のプレゼントだと思ったのだけど。
ってまさか……
「秋久にも銃を?」
僕が翼に聞くと翼は首を振った。
「あの子は妙なことを言うんです」
翼が説明した。
サプレッサーのついてない銃なんて日本でまともに使えるわけがない。
敵に感知されない、静かに速やかに抹殺する物を選んだ。
結論から言うと投げナイフを数本渡したらしい。
秋久の考えの方が普通だと思ってるのは僕の基準がおかしくなっているのだろうか?
「善明は何を買ってきたの?」
翼が聞いてくると、僕は箱を見せた。
海翔や冬夜は喜んでいたらしいのでロボットアニメのロボットのプラモを買ってきた。
「秋久なら大丈夫だよ」
翼はそう答えた。
そうだよね。
普通はそうなるよね。
「善明は何を貰ってたの?」
「……海外旅行」
「5歳で?酒井家ってすごいんだね」
そうだよ、すごいんだ。
5歳でアフリカで少年兵として1週間研修を受けてきたんだ。
僕の人生はもう終わったと思ったね。
ぬいぐるみを抱いて死んだ少女のように……。
「あ、晶ちゃん。あの子たちにこれ以上戦闘能力を付けたら善明の手に負えないよ!」
父さんがそう言って秋久の海外派遣は免れた。
どうして秋久だけかって?
陽葵と菫は女の子だからね。
でも祈がそうだったように菫はああなってしまった。
「でも善明が心配するようなことはないから」
翼がそう言う。
「理由を教えてくれないかい?」
僕がそう言うと菫の部屋に案内された。
「音を立てないで」
翼がそう言ってそっとドアを開ける。
女の子だよ?
ドアを閉めていても聞こえてくるいびき。
しかしそのいびきの主は僕が買ったぬいぐるみを抱いて眠っていた。
そっとドアを閉めるとリビングに戻る。
「どうして気づいたんだい?」
「あの子恥ずかしがり屋なんですね」
パパには内緒にしておいてと言われたらしい事。
それを僕が聞いていいのか知らないけど聞かなかったことにしておこう。
今日仕事をしてる昼間にプレゼントを買いに行ったらしい。
どこの店に行ったら拳銃が売ってあるのか小一時間問い詰めたかったけど。
まあ、畑にパイナップルが転がってる県もあるから普通に”武器屋”があるのだろう。
そして陽葵と菫の欲しい物を買ってあげると2人は聞いたらしい。
「パパも何かくれるかな?」
「きっともう用意してるよ」
「でもね、何もなくてもいいんだ」
希美は言ったらしい。
パパが無事に帰ってくれることは奇跡なんだってテレビで見たらしい。
まあ、年末はそういう特番をよくやるからね。
2人はパパがいるってことは当たり前じゃないって理解したようだ。
それに……
「私もパパみたいな強くて優しい人と結婚したい」
そんな事を言っていたそうだ。
あの子がね……
子供が宝物ってことを多分人生で一番染みた瞬間だったよ。
「でも、そんな期間はあまりないから」
恋をすれば優先順位が変わっていく。
それが親離れなんだ。
いつまでも親にくっついているようじゃいけない。
その日を見守っているのが大事なんだと翼が言った。
「それでも、善明の努力は報われるから」
「どういうことだい」
それは翼自身の体験談だそうだ。
今の僕を見て翼の父親に感謝しているそうだ。
恥ずかしくて今は言えないけど、いつかちゃんと「ありがとう」って伝えたいと翼は言う。
なんか今年はとても暖かいクリスマスになったじゃないか。
策者のプレゼントなのだろうか?
そんなに甘くはなかった。
「それにしても今日の映画酷かったね。美希達も観てたのかな」
「そ、それは大丈夫じゃないかな」
「どうして?」
「多分美希は絶対に知ってるから」
そう、天音が”下敷き”と称した恋愛小説。
中学生が”ヒロインがものすごいキチガイなのは理解した”と称した物語。
ナイスボートよりはましか?くらいな話。
あんな真似を僕が翼にしたら僕は間違いなく病死以外の変死体になってるね。
実の母親によって。
天音は原作を10分で読んだと空から聞いた。
しかも上下合わせてだ。
2冊にしたのが不思議なくらいの薄っぺらな小説。
中身がじゃないよ。見た目が薄いんだ。
翼は上巻を読んだだけでオチが分かったらしい。
あれ?
「あれはたしか翼はあの小説知ってるんじゃないのかい?」
「え?うん、知ってるよ。天音たちが読んでるのを読ませてもらったから」
「……大地も読んだことがあると言ってたんだ」
大地も読書家だからね。
そりゃ映画化になるような大ヒット作ならその見た目だけでなくて中身も気になったんだろう。
そしてそれを美希が見つけて読んだらしい。
美希は空に勧めていた。
合宿の時に空が「善明は知ってる?」って聞いてきて翼と大ゲンカしてた。
「美希はあれのどこが気に入ったのだろう?」
「彼氏の優しさとか言ってたよ」
高校生で妊娠させただけで飽き足らず流産したらポイ捨てのどこに優しさがあるのかさっぱり分からなかった。
人は見た目によらないと感想があったらしいけど「見た目より中身がやばすぎるだろ」と天音は言っていた。
あんな真似したら本当に僕生きてないよ。
そしてとってつけたかのように彼氏は実は白血病だったっていうオチ。
白血病だったら何しても許されるのか?
それが逆に翼の逆鱗に触れたのだろう。
しかし気になるな。
「翼や、ちょっとスマホを貸してくれないかい?」
「こんな時間に飲みに行くの?」
「いや、空に聞いてみたくてね」
そう言って翼からスマホを受け取ると空に聞いてみた。
「空が気になっていた映画今日テレビでやってたけど」
「知ってる。美希が見たいっていうから見てたんだけど母さんが怒りだしてさ」
「比呂達に見せていいものではありません!」
今年は空達の方が大変そうだ。
(2)
それは衝撃的だった。
冬吾が手に持った箸を落としそうになるくらいの衝撃があった。
この会場にいる皆が泉の姿を見て声を失っていた。
「まじかよ……」
誠がそう漏らした。
泉の隣には村井君がいた。
ここはセレブのパーティ会場なのかと間違えそうになるような紫の綺麗なドレス。
「へえ、馬子にも衣装ってこの事なんだな」
「あんたは素直に綺麗だって褒める事知らないの?」
誠司が空気をいい意味で壊した。
「誠司がモテていた理由がわかならい。見た目だけじゃん」
「だから今困ってるんだろ?」
「あんた楽しそうだけどね」
「これも育人が作ったの?」
恵美さんが来た。
今日パーティがあると聞いて間に合わせたらしい。
「高校の勉強はどうなの?」
今更今年卒業できませんなんて言ったら承知しないわよ。
恵美さんがそう言うと「それは大丈夫です」と村井君が答えた。
それを見て隣にいた英恵さんに聞いていた。
「らしいけど、どうなの?」
「どうもこうもないわよ、私は年に10着って言ったのよ?」
それがどうかすれば月に2着作ってくるらしい。
勉強が疎かになってないか心配だったけど問題ないみたいだ。
「そんなに無理に作らなくてもよかったのに……」
「それは私からも言ったんです。だけど……」
衣装合わせのために泉と会うことになる。
それが目的だったらしい。
さすがに制作をさぼってデートばかりしていたらまずいと村井君は思ったそうだ。
それで頑張って作ったらしい。
泉の体形はしっかりイメージ出来てるから大丈夫だと村井君は言う。
「つまり育人の中では常に裸の泉が……いてぇ!」
「お前はどういう曲解をするんだ!?」
「誠司も恋人が出来たらわかるよ、俺だって目を閉じれば裸の神奈が……いてぇ!」
「お前が言うとどう考えてもいやらしい話になるんだ!」
冬吾を見るとイメージしようとしていたのだろう。
ぽかっ
「そんなの覚えなくていいから」
瞳子に怒られていた。
僕はもうそんなわざわざ言わなくても愛莉の裸くらいずっと見続けてきたからね。
空も同じなんだろう。
何も言わずに見守っていた。
「大地!お前はどうなんだ!?」
「僕だって同じだよ、天音しか知らないんだ」
「当たり前だ!他の女知ってたら殺すぞ!」
「天音は場所を弁えて話しなさいって何度言えばわかるの!」
すると陽葵達が善明に言い寄っている。
「パパは私の裸知りたくないの?」
「僕は翼がいるからね、ごめんよ」
流石にまだ父親を亡くしたくないだろ?
「つまんな~い」
「陽葵達もいい加減恋人作ったらどうなの?」
翼が聞いていた。
「私達が恋人作ったらパパ泣いちゃうんじゃないの?」
「その時は翼に慰めてもらうから」
「でもさ、やっぱり無理」
「どうして?」
翼が聞くと菫が答えた。
「女子に殴り飛ばされる彼氏ってどうなんだ?」
陽葵も同じ意見らしい。
しかし陽葵達の相手になるような男子探すのは無理があるんじゃないのか?
「陽葵ちゃん、とりあえず気になった子がいたら私に教えてくれないかな?」
晶さんが言っている。
陽葵が納得いくように訓練してやるという。
酒井君は笑っていた。
クリスマスプレゼントの話も聞いた。
それを聞いた愛莉が天音達に聞いていた。
「天音は何を結莉達にプレゼントしたのか言いなさい」
大地は笑っている。
結莉達は料理を食べている。
天音も笑うだけ笑った。
「今年は危険だから護身用のものがいいんじゃないのかなって私はアドバイスしたんだけどね」
恵美さんが言うと愛莉が天音を睨みつける。
「まさかあなた達も拳銃を渡したんじゃないでしょうね?」
「そ、それはないです。去年渡したから」
「馬鹿、なにばらしてんだ大地。ふざけんな!」
「……じゃあ、今年は何を渡したの?」
恵美さんが聞いていた。
「茉莉はゲームのような大剣が欲しいと言い出して特注で作るように天音が注文して……」
「お前はもう黙ってろ大地!」
そんな物どこに持っていくつもりだろう?
幼稚園に持っていく途中に捕まるぞ。
「天音が黙っていなさい。大地、結莉には何を渡したの?」
「……ラジコン……なのかな?」
「え?」
女の子だとしてはどうなんだと思ったけど茉莉よりはましだ。
そう思っていた。
「そう言えば沖縄の米軍基地から連絡来てたけど……まさかあれなの?」
結莉は物を破壊する能力を持っている。
だからそういう道具を持つ必要はなかった。
実際バズーカやらロケットランチャーはいらないと言ったらしい。
ただ……。
「わざわざ遠くまで歩いていくのが面倒なの」
そう言ってUAVをプレゼントしたらしい。
標的が遠くの時はその方が手っ取り早いと思ったそうだ。
「ちょっと待ちなさい。じゃあ私と恵美が用意したプレゼントは?」
愛莉と恵美さんは二人で相談してプレゼントを買って与えたらしい。
絵本と着せ替え人形を二人分用意したそうだ。
絵本はその日のうちに破り捨てられゴミ箱にぽい。
着せ替え人形は翌日首無しというのかさらし首というのか……まあ、そんな状態で保管されているらしい。
愛莉たちが様子を見に来る前に人形だけでも修復してくれと天音が茉莉を説得している最中だったそうだ。
愛莉がかなり怒ってる。
「そう言えば海翔は何あげたの?」
「まさか2歳の子供に刃物なんて渡してないでしょうね?」
「あ、いや。恵美さんも護身用に何か持っていた方がいいって言ってたから……」
天音がゲームをやっているのを見て便利だなと思ったらしい。
手首に仕込んでいざというときに刃物が出てくる道具。
いろんな時代で暗殺をするゲームの主人公の武器だった。
一つ分かったことがある。
水奈がゲーム出来ない時間天音が何をしているのか?
対戦相手がいないなら一人でできるゲームをやろうと思ったのだろう。
そのゲームを海翔が見てるの知らずに。
「水奈だって同じだろ?」
「天音、自分の時は言うなって言っておいてそれはないんじゃないのか!?」
「いつも水奈がばらすからだろ!?」
「どっちでもいい!お前ら子供に何をさせるつもりなんだ!?」
ピアノとかそういうお稽古をでもさせろと言わないけど少しは改善しようって気はないのか!?
カンナも怒り出す。
水奈がこんなんだから学は娘に何をプレゼントしたらいいか悩んだそうだ。
茉奈にはお裁縫セットを渡したらしい。
喜んで色々作っているそうだ。
悠翔はCDが欲しいと言ったそうだ。
洋楽のロック。
どうも悠翔は音楽に興味があるようだと学が言っていた。
まだまともな気がする。
愛菜と優菜はまだ大丈夫な気がする。
物理で殴り合いをする魔法少女の変身グッズを欲しがっていたのでそれを買ったらしい。
そうなると不安になるのは結と比呂だ。
美希が答えた。
結は特撮物の変身ベルトが欲しいと言ったそうだ。
最近のは変身のギミックが多いから結構大変なんだけど。
10月クールから始まるからまだ出始めたばかり。
大変だぞ……と思ったけどまあ、海翔達に比べたらましか。
結は変身ポーズを覚えて空の前でするんだそうだ。
空はそのポーズを写真に撮ってやってる。
「比呂はどうしたの?」
全くつかみどころのない比呂だったけどようやく何が好きか分かったみたいだ。
あの子は冬吾に似ていた。
NBAのチームのユニフォームを欲しがっていたそうだ。
まだボールをドリブルすることも難しいだろうけど、小学校に上がる頃には桜子に相談してみようかな。
「で、いっくんは合格なんですか?」
泉は英恵さんに聞いていた。
英恵さんはにこりと笑う。
「本当は失格にして私の下で修業させたいくらいなんだけどね」
その必要もないだろう。
この分なら専門学校や大学に通う必要もない。
村井君の卒業までに貸店舗を用意してあげるように恵美さんに言っていた。
「そうね、腕もセンスも間違いないみたいだし」
杏采が卒業するまで待とうかと思っていたけど先に作っても問題なさそうだと恵美さんは判断した。
「誠司達の世代は皆巣立っていくんだな」
「そうだね。冬莉ちゃん達も頑張っているみたいだし」
誠と恵美さんはそう言って冬莉達が歌っているステージを見る。
演奏をやめてMCが入る。
カウントダウンが始まって新年を迎える。
「実はね、F・SEASONなんだけど……」
恵美さんが言っていた。
海外からのオファーが来ているらしい。
フレーズの二人はライバルの登場を喜んでいるようだった。
いくつもの朝を迎えて、いつかきっとつかむのだろう。
いくつもの夜を超えて、あの星を掴むのだろう。
また節目を迎えようとしていた。
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