姉妹チート

和希

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名もなき詩

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(1)

 生活費や学費は奈留さんに出してもらっているけど、遊ぶお金くらい自分で稼ぎたい。
 そう言ってバイトすることを許してもらってバイトをしている。
 その間雪菜に家の事を任せている。
 まだ幼稚園児なのに立派になったな。
 今日も学校が講義が終わって、バイトに向かおうとするとある集団を見つけてしまった。
 一人の女子大生を大勢の男性が囲んでいる。
 有名人とかそういうのではない事はすぐにわかった。
 だって女性の悲鳴が聞こえたから。

「離して!」

 確かにそう聞こえた。
 男性をよく見ると黒いリストバンドをしている。
 そういう事か。
 私は集団に近づいて男達に近づくと肩を叩いた。
 男は私を睨みつける。

「なんだお前?」
「ただの通りすがり。あなた達何やってるの?」
「お前には関係ないから引っ込んでろ!」

 世の中の大半は自分に関係ない事。
 だからと言って放っておいてもいい状況じゃないのは明白だった。
 女性に聞いてみた。

「何があったの?」

 女性は酷く怯えている。

「あ、あの……」
「心配しないで。気になったから聞いてみただけ。何をされたのかだけ話してくれたらいい」
「は、はい……実は」

 女性は歩いていた。
 すると男たちに呼び止められた。
 男たちの事は知らない。
 会った覚えすらない。
 だけど男たちは名乗った。

「俺たちはFGだ」

 お前結構見た目いいな。
 割のいい仕事紹介してやるから付き合えよ。
 彼女でもそれが危険な仕事だというくらいは察したらしい。

「ま、間に合ってます」
「そんなに顔を赤くして恥ずかしがるなよ。いい経験になるぜ」

 いよいよもって中身の怪しい仕事だ。
 逃げようにも囲まれてる上に腕を掴まれて逃げようがない。
 困っているところに私が来た。
 事情は呑み込めた。

「あなた名前は?」
「上原彩です」
「あんまり知らない人に名前を聞かれて素直に答えたら駄目だよ」
「あ。す、すいません……私こういうの慣れてなくて」

 今年大学に入ったばかり。
 サークル勧誘にはかなり苦労したらしい。
 その悪夢がよみがえって泣きそうになっていた。
 事情は大体わかった。

「おい、お前何勝手に話をしているんだ?」

 男が私の肩を掴む。

「あなた達に忠告したいことが二つあるんだけど」
「なに?」
「まずこの地元でFGを名乗るのは危険だからやめた方がいい」

 だってそれを単なる餌だと思ってるグループがいることを忘れてはいけない。

「もう一つはあまり気安く女性の体に触らない方がいい」

 もう手遅れだけど。
 私がそう言ったとほぼ同時に男は雲雀に殴り飛ばされていた。

「俺が見てる前で彼女に勝手に触るとはいい度胸してるじゃねーか」
「成実。こいつら誰?」

 立花颯真が尋ねてくると私は一言答えた。

「名前は知らないけどFGだって」
「あ、そう」

 そう言うと雲雀や剣太達がFGを叩きのめす。
 だから名乗るのは危険だと言ったのに。

「てめーらFGに逆らってただで済むと思うなよ」
「ただで済ませた方が身のためだと思うんだけど?」

 私が返事をする。

「このまま、大人しく引き下がるなら私達もこれ以上は関与しない」

 だけど事態をややこしくする気なら私達も報告しなければならない。

「黒いゴキブリを殺すのは私の特権だ!勝手な真似するんじゃねーぞ!」

 石原天音がそう言っていた。

「あなたはいい加減子供がいる母親だと自覚しなさい!」

 片桐愛莉にそう言って怒られていたけど。

「確かにあなた達FGが私達に手を出すのなら天音を喜ばせるだけかもだよ?」

 石原頼子が言う。
 SHは今は大人しくしているけどそういう挑戦ならいつでも受けてやる。
 
「どうする?」

 私がそういうと男たちは何も言わずに去っていった。

「あ、ありがとうございます」

 上原さんはそう言って礼をする。

「気にしないで、また何かあったら知らせて。スマホある?」
「はい」

 そう言って上原さんと連絡先の交換をする。

「それじゃ、また」
 
 そう言うと上原さんは帰って行くのを見届けていた。

「なあ、俺思いついたことあるんだけど」
「雲雀も?私も実は思いついたんだけど」

 ここにいる皆同じことを企んでいるようだった。

(2)

 久々に飲みに行かないか?
 劉生にSHの飲み会に誘われて電車で向かうとみんな揃っていた。
 見慣れない女性が一人いる。
 新人入れたから今日集まった?
 そんな事を考えながら女性を見ていると、雲雀が気づいたみたいだ。

「ああ、地元大で困ってるところを助けたんだ。彩、こいつが白石識」
「は、初めまして……上原彩です」

 そう言って上原さんは礼をする。
 見た目は綺麗だけど人見知りする性格が災いして交際歴はないそうだ。
 ……なるほどね。
 劉生達の目的がなんとなくわかった。

「んじゃ、早速行こうぜ!」

 石原天音と桐谷水奈が来ていた。
 2人とも子供はいいのだろうか?

「ああ、連れてきた」
 
 無茶だろ!?

「心配し無くても2次会までにしとくよ」

 そのくらい起きていても平気だろ。
 育児放棄してるわけじゃない。
 でも母親だって遊びたい時くらいあるんだ。
 天音がまだ学生の時に深夜にチャンポンの店に海翔より幼い子を連れて話をしている母親たちを見たらしい。
 
「ただし日付をまたぐことは許さない」

 学はそう言って水奈に許可をだしたらしい。
 よく見たら他の社会人も何人かいる。
 リーダーの片桐空達はいなかった。
 そんなメンバーを見て戸惑っている上原さんに声をかけた。
 
「驚いた?」
「ええ……こんなグループだったんですね」
「2次会はもっと凄い事になるよ」
「そうなんだ……」

 もっとも最初っから飛ばしているのが遊と天だけど。
 カラオケがあるわけでもないのにマヌケな歌を歌っていた。
 天の奥さんの繭が叱っている。

「天は少しは立場というのを考えなさい!」

 娘の綺羅だっているのに。

「そう言えば遊もやってるのになずなは平気なのか?」

 天音がなずなに聞いていた。
 なずなはそれを聞いてにやりと笑う。
 遊が歌い終わった頃に娘の琴音が遊を叱っていた。

「パパ、女の人を胸の大きさで判断したら駄目なんだよ?それともパパはママの胸じゃ物足りないの?」

 じゃあ、私が大きくなってあげるから我慢しなさい。
 琴音が言うと遊も困っていた。
 大体最近のパターンらしい。

「粋は男の子だからいいよな」

 遊が粋に聞いている。
 だけど粋は少し困っていた。

「それがさ……」
「まじか!?」

 遊が驚くと天音達も驚いていた。
 真面目に父親をしているからと花からのプレゼントらしい。
 女の子を授かった。
 女の子らしい。
 もう名前を決めているようだった。
 蘭香というそうだ。


「快もいるのに大丈夫なのか?」
「それを言ったら天音だって同じじゃない」
「まあ、そうだけど」

 そんな話を聞きながら飲んでいると上原さんが聞いてた。

「白石さんは誰と付き合ってるんですか?」

 これだけカップルの多いグループだから誰か彼女がいると思ったんだろう。
 俺は笑って答えた。

「振られたよ」

 なんとなく気づいていたけど、冴から言い出すと思って待っていた。
 そして別れを告げられた。

「ご、ごめんなさい……」
「気にしなくていいよ。覚悟はしていたから」
「どうしてそんなことに?」
「多分彼女は不安だったんだろう」

 多少離れていても大丈夫と思う女性もいる。

「彼女に合わせて進路決めるってバカじゃないの?」

 そんな風に思う女性だっている。
 だけど冴は違った。
 同棲しているとはいえ、バイトしていてすれ違いの生活。
 大学も違う。
 寂しかったんだろう。
 そう思わせた俺にも責任がある。
 冴の相手は俺じゃなかった。
 ただそれだけの事だった。
 たった一度の出会いで結婚まで約束された物語。
 だけどそうでない子もいるという事だろう。
 何度も出会いを繰り返して愛を探して彷徨う。

「お前そんなにショック受けてないのか?」

 優斗が聞いてきた。

「さすがに何日も帰ってこなかったり服を着替えていたりしたら気づくだろ?」
「なんでその時に問い詰めなかったんだ?」

 水奈が聞いていた。

「だからさっき言ったろ。冴の相手は俺じゃなかった。ただそれだけだよ」
「お前がそんな受け身だからこういう状況になったんじゃないか?」

 天音が言う。
 だけど上原さんは違う。

「白石さんは強いんですね」

 一言言った。

「どういう意味だ?」

 遊が聞いていた。

「私はそういう経験したことないから分からないけど、普通は他の人が言うように怒ると思うんです。でも白石さんの考えってある意味相手を受け入れているってことでしょ?」

 上原さんが言うと皆納得していた。
 他の人より少し甘えん坊だったんだろう。
 常にそばにいてくれる人じゃないと嫌だ。
 でもきっと冴の心にもしっかり傷が残っているはず。
 それを癒すのが研斗なんだろう。

「そんな器の大きな人を手放すのももったいない気がしますけどね」

 上原さんはそう言って笑っていた。

「だったら彩がもらったらいいじゃない」

 成実がそう言うと、皆が盛り上がる。

「彩といったか!?こいつは悪い奴じゃない。仮に悪い奴だったら私が後で絞殺してやる!」

 どうせ上原さんは彼氏いないんだろ?
 だったら俺と付き合え。
 そんな暴論を天音が言いだした。
 
「彩、どうなの?見た目も結構いい方だし、私の旦那より余程ましだよ!」

 なずながそういう。

「でも、私なんかと付き合ってもつまらないですよ」
「そういうあんたを受け入れる器がさとりにはあるって自分で言ったじゃない!」

 いてもつまらないかどうかなんて付き合ってみないと分からない。
 何もせずに諦めるのが一番悪いやり方だとなずなが言う。

「そうだとしても失恋して弱ってるのを狙うって卑怯じゃないのかなとか」
「恋愛に卑怯も何もねーんだよ!男からとか女からとかどっちでもいいんだよ!いいと思ったら食らいつけ、他の奴に横取りされるやつを間抜けっていうんだ!」

 男は下半身で物事考える奴らがいる。
 だけど女だって同じだ。
 頭で考えるんじゃなくて子宮で感じるんだよ!
 恋愛なんてしょせん早いもん勝ちだ。
 好きだと思ったら意地でも奪い取れ。
 その日のうちに寝とってしまったら勝ちだ!
 うちの結莉を見ろ!
 まだ幼稚園児なのに芳樹って彼氏を勝ち取ったぞ!
 そう天音が上原さんに言った。
 
「でも、白石さんの気持ちも……」
「それが間違いだ!さとりの気持ちなんてどうでもいい!お前がさとりをどう思ってるか伝えてからが始まるんだよ!」

 天音が言うと上原さんはグラスに入っていた飲み物を一気飲みして俺に伝えた。

「あの、こんな状況で告白されても迷惑かもしれないけど……」
「うだうだ言わねーでとっとと言え!」
「わ、私に恋愛というのを教えてもらえませんか?」

 どう考えても断れる状況じゃない。
 上原さんは不安そうに俺の事を見ている。
 今にも泣き出しそうだ。
 どう答えても泣きそうだな……。
 そう思ったらなんか気が楽になった。
 ちょっと意地悪を言ってみよう。

「それじゃ、まるで俺が経験豊富みたいじゃないか?」

 冴との付き合いは初めてだったんだよ。と返事した。

「や、やっぱり私じゃだめですか?」
「そうじゃないよ……俺は上原さんに教えられるほど経験豊富じゃない」

 だから、一緒に探ってみないか?
 これで伝わったようだ。
 彼女は泣き出した。

「お、落ち着け。さとりはダメって言ってるわけじゃないぞ!」

 水奈達が上原さんを落ち着かせる。
 どうしよう?
 
「彩って呼んでもいいかな?」
「え?」

 キョトンとした顔で俺の事を見ている。
 まだ、事態が分かってないらしい。
 少しずつ誘導してやればいいか。

「とりあえず乾杯しない?めでたいことなんだから」
「……本当にいいの?」

 そう聞いてくる彩に笑顔で答えた。

「俺を選んでくれてありがとう」

 すると彼女は泣き出した。
 感涙ってやつだろう。
 それで二人で乾杯した。

「じゃあ、あとはお前ら二人で盛り上がってこい」
「え?」
「せっかくの初恋なんだから二人で楽しんだ方がいいだろう」

 バイトしてるとはいえ学生だ。
 休前日のラブホなんて高すぎるだろ。
 いきなりそれはないだろう。

「遊、よく考えろ。彩は初恋なんだぞ。持ってるわけないだろう!」

 だから常備してあるラブホの方がいい。
 ドラッグストアだって開いてる時間じゃない。
 ホテルくらい私が今すぐ準備してやると天音が言う。
 彩は少し戸惑っているようだ。
 初めてだから仕方ないだろう。

「天音こそよく考えて。瑠衣や頼子たち女子大生が常備しているくらいだよ」

 どうして男が持っていないって思ってるんだ?

「ってことは……」

 遊が聞いてくると俺はにやりと笑った。

「彼女のいない男だからこういう時には持ってるもんだろ?」

 どういういきさつで出会いがあるかわからない。
 もしもの時にくらい準備してるよ。

「彩はどうやってここに来たの?」
「え?電車で」

 地元大学前駅のそばに部屋を借りたらしい。
 実家は野津原なんだそうだ。
 俺も駅のそばに借りてある。
 駅から離れるとコンビニすらないど田舎だから。

「彩は俺の家と彩の家どっちがいい?」

 どっちにしろまだ終電に間に合う。
 彩は少し考えていた。

「私……男の部屋ってみたことなくて……でも……」

 着替えとか用意してない。
 だから悩んでるらしい。

「じゃあ、俺の家には今度来たらいいよ。今日は彩の家に泊まっていいかな」
「は、はい。あの……私、そういうの詳しくなくて」
「初めての女性を誘導するくらいの経験はあるよ」
「お前いきなり妊娠とかさせるなよ!」

 天がそう言って笑っていた。

「じゃあ、俺達先に帰る。ごめん、ありがとう」
「いいよ、絶対に彩の事幸せにしてやれよ」
「天音、私達もそろそろ帰らないとやばい」
「もうそんな時間か。じゃあ、私達も帰る」

 そう言って天音達と店を出た。
 彩が立ち止まって何か悩んでる。
 その悩みに水奈達は気づいているみたいだ。
 俺もなんとなく気づいたから彩に対して手を差し出す。

「手をつないでみる?」
「……ごめん」

 間違えたかな。
 そうじゃなかった。
 酔いも回っていたのだろう。
 俺の腕に抱き着く。
 そこそこの柔らかい物が腕に当たった。

「一回街角リポートかなんかで見ていいなあって思ってたから……」
「感想は」
「あったかい……」

 嬉しそうにしている彩。
 そのまま電車に乗って彩の家に行く。

「え、えーと……」
「……さとりでいいよ」

 ひらがなで書かないと読めない人もいるから。

「さとり先にお風呂入っていいよ」
「分かった」
 
 そうして交互に風呂に入って彩と2人でベッドに入る。

「さ、最初って痛いって聞いたことが……」
「その前の段階があるんじゃないか?」

 彩は初めての彼氏と初めて夜を過ごすのが不安だったりするんじゃないのか?

「ど、どうしたいい?」

 彩がそう言うとそっと抱きしめてあげた。

「俺もあいにくとそこまで軽い男じゃなくてね。初めて会った女性と行為をするほど飢えていないんだ」

 こうしてるだけで彩を安心させてやる。
 彩がその気になったらすればいい。
 大丈夫、一晩限りの恋なんて事は無いよ。
 すると彩も俺の背中に腕を回した。

「あ、あの……さとりの言うようにいきなりは無理だけど、それでもしてみたいことがあるの」
「それはなに?」
「私のファーストキス受け取ってくれないかな?」
「いいよ」

 そうして彩とキスをする。
 驚いた。
 
「彩の中のファーストキスってこんなのだったの?」
「普通は違うの?」

 天音達が入れ知恵したらしい。

「どっちでもいいよ。ただ、初めての割には上手だなって思ったから」
「それ、褒めてくれてるのかな?」
「そう受け取ったのならそれでいいよ」
「ありがとう……これ夢じゃないよね?」
「そう言うと思ったからこうしてるんだ」

 そう言ってお互いのぬくもりを確かめ合いながら初めての夜を過ごした。

(3)

「じゃあ、さとりにも彼女出来たんだ?」
「うん、皆よかったって盛り上がってるよ」

 天音や水奈が色々入れ知恵してたみたいだけど。

「そっか。でも教えてもらったからって、そんなにすぐ実践できるものなの?」

 冬吾君はそれが不思議に思ったらしい。
 私は冬吾君に考えが甘いと言った。

「あのね。初めてのキスを受け取って欲しいと思う人に躊躇うわけないでしょ?」
「……なるほどね」

 でも大丈夫かな?また遠距離なんでしょ?
 冬吾君がそう心配していた。

「それは私と冬吾君が上手くやれてるから大丈夫だよ」
「それもそうだね」
「それはそうと誠司君はどうなの?」
「それがさ、最近どうも様子が変なんだよね?」
「どう変なの?」

 すると冬吾君は説明した。
 夜になると誠司君から連絡してくることはない。
 遊び惚けているから。
 だけど最近夜に「調子はどうだ?」って聞いてくるんだそうだ。

「最近遊び行ってないの?」
「それが聞いてくれよ、最近世話になってる鬼マネージャーが……」
「日本の男は自分の彼女をそういう風に言うわけ!?」

 そんな知らないイタリア語で話している女性がいるそうだ。
 いくらマネージャーでもそんな時間に同じ部屋にいないだろ。
 どうして誠司君はともかく冬吾君がイタリア語が分かるのか?
 それは冬吾君だからで多分説明つく。

「それじゃ、やっぱり誠司君に彼女出来たの?」
「そう聞くんだけどどうも様子がおかしいんだ」

 金髪の彼女が出来たぞ!
 そのくらい自慢してきそうなのに隠しているように見える。
 聞いた感じだと天音達も水奈や神奈さんも聞いてないらしい。
 誠さんがまた余計なことをするのを恐れているのかどうかわからないけど、秘密の様だ。

「イタリア人ってどんな言葉言うんだ?」
「お前は息子に何を聞いてるんだこの馬鹿!」

 神奈さん達はそんなやりとりをしていた。

「それだけかな?」
「え?」

 冬吾君は何か心配していることがあるようだ。
 あいつまだ引きずってるんじゃないか?
 誠司と一緒になる女性なんてみんな不幸になると思い込んでないか?
 そんな不安を抱えているから彼女がいることを隠しているのではなく、恋人だというのを受け止められないんじゃないか。
 冬吾君はそう言っていた。

「それは私達が口を出すことじゃないと思う」
「瞳子もそう思う?」
「うん」

 きっとそれは二人で乗り越えていくこと。
 きっとビルの隙間から彼女が虹を見せてくれるはず。
 二人が確かな関係を築くまでまだ時間を要していた。
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