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Shiny
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(1)
「なんだこれは!!」
クリスマスプレゼントを陽葵と菫と秋久に買って帰ると、菫が「プレゼントさっさとだせ!」というのでその場で渡した。
この世界では子供たちにとってクリスマスプレゼントは親から奪い取る物なのだろう。
翼に聞いたら一緒に買いに行って渡したという。
毎年思うんだけど翼はどこにクリスマスプレゼントを買いに行ってるんだい?
何を買ってきたのかはすぐにわかった。
菫が包装を破り捨てると中に入っていたウサギの縫いぐるみだった。
それを見て菫は予想通り怒り出す。
「ふざけてるのか!?お前去年も同じだったじゃないか?」
分かってるよ。
それを大事に抱いて寝ていたからそろそろ新しいのがいいだろうと思って買ってきたんだ。
ちなみに秋久は「ありがとう」と言って部屋に戻って行った。
去年航空ショーを見に行った時に欠伸をしている菫とは反対に戦闘機に見とれている秋久がいたから戦闘機の模型を買ってきた。
多分明日の今頃には組み立て終わっているのだろう。
頼むから「戦闘機のパイロットになりたい」なんて言わないでおくれ。
母さんは間違いなく空軍をもう一つくらい調達しかねないから。
「子供に戦闘機なんて操縦させられないでしょ」
だからと言って子供に空軍渡すのはどうかと思うんだけど。
で、怒り出した菫は隠していた物を取り出した。
……それが美希のプレゼントだったんだね。
ハチェットと呼ばれる種類の手斧を二つ持っていた
そんなものを小学校に持っていくつもりなのかい?
収納しやすいとか携帯しやすいとかいうレベルじゃないよ?
お巡りさんが絶対に取り押さえるよ。
そのお巡りさんが惨殺されそうな気がするけど。
大体翼はこれどこで手に入れたんだい?
「それは通販で探していたら菫が気に入ったみたいだったから」
翼、普通の母親はそこで注意すると思うんだけど。
普通の親なら取り合えあげる斧を構えて僕に言った。
「最初の獲物はお前にしてやってもいいぞ!」
6歳の娘にそんな風に言われるとショックを感じるね。
また空達と飲みに行くかな。
それでも翼や美希はともかく天音や水奈もついてきそうだな。
それなら年越しパーティの時だけでいいか。
今年もあれるだろうな。
天音がまともなプレゼントをするわけがない。
翼ですらこれなんだから。
「ほ、ほら。菫が去年のプレゼントを大事に使っててぼろぼろになってるのをパパに知らせたから」
翼がそう言って菫を説得する。
「……しょうがねえな。来年また同じだったら許さねーぞ!……くまさんが欲しい」
そう言って部屋に持っていく。
「……去年も言ったけど、あの子ちょっと照れ屋さんだから」
翼はそう言って微笑む。
紀子と陽葵は普通にお絵描きセットを渡すと喜んでいた。
健太には変身ベルトを買っておいた。
だからちょっと恥ずかしいからって手斧振り回す女の子ってどうなんだい?
夕食の支度が終わると翼が片付けてる間に秋久と陽葵と菫を風呂に入れる。
まだ「パパと一緒なんていや」とは菫も言わない。
だから違うことを言っていた。
「パパは私の事嫌いか?」
「へ?」
「私が女の子らしくないから嫌いかって聞いてんだよ」
翼の見立ては間違ってないらしい。
その疑問に答えることにした。
「そうやって不安になる事は女の子じゃないのかい?」
「……ごめん。本当は嬉しいんだ」
「それはよかったよ」
たまには温かいクリスマスの話を考えてくれるじゃないか。
この話を書きながら”悪夢”なんて検索していたのが信じられないよ。
しかし酒井家はある意味そういう役回りなんだろう。
お風呂から入って美希が風呂から出て、一家団欒でテレビを見ていた。
……また始まった。
翼は興味なさそうだけど菫は食い入るように見てる。
「アーメンハレルヤピーナッツバターだ」
そんな迷言を無数に出している漫画。
菫や茉莉達の教科書の様になっているアニメ。
とにかく女性キャラが異常に強い。
主人公の男性ももともとはサラリーマンだったのに裏の社会に闇落ちしていく。
神様が年中ベガスで豪遊している漫画。
これをクリスマスにわざわざ放送するテレビ局は何を考えているんだ。
それだけじゃない。
孤児が幼少期からゆがんだ教育を受けて悲惨な結末を迎える話もある。
「可哀そうだね」
翼の感想はそれだけだった。
そんなアニメを嬉々として見ている娘を止めようとは思わないのだろうか?
そんなアニメを見ながら空達と連絡を取っていた。
「ああ、母さんがそういうの苦手だから普通に歌番組見てる」
「結莉と茉莉が嬉しそうに見てる」
空と大地から返事が返って来た。
「善明はあれ見てるの?」
「まあね」
アニメが終わると菫も眠くなったらしくて大人しく部屋に戻る。
僕達も寝室に行って寝ることにした。
「私あのアニメ見て思ったんだけど」
「どうしたんだい?」
あのアニメについて思う所があったのだろうか?
可哀そうな話もあったからね。
「SHでタバコ吸う人いないね」
たったそれだけの感想だった。
(2)
「何を考えているのですか!?」
天音が母さんに叱られていた。
理由は簡単。
結莉や茉莉に与えたクリスマスプレゼント。
ちなみに海翔は比呂と同じ変身ベルトだったそうだ。
今もベルトを装着して変身ポーズを真似て遊んでる。
「こういう場所でしちゃだめだよ」
結莉が比呂達に注意している。
カミラにはお財布をプレゼントしてあげた。
結はお絵描きセットを、カミルにはパズルをプレゼントした。
で、問題は結莉と茉莉だった。
去年は爆撃機などを与えていた。
だから母さんも当然気になっていた。
「ちゃ、ちゃんと普通のおもちゃだよ」
天音はそう言っていた。
大地は顔に出さないように必死だった。
しかし恵美さんは愛莉とは違う手段を使った。
「結莉達は何をもらったのかな?」
天音がやばいと感じて結莉達を見ている。
しかし遅かった。
結莉達は屈託のない笑顔で言った。
「パイナップル」
大地が頭を抱えている。
善明は大地に同情していた。
母さんたちは不思議そうに見ていた。
「パイナップルって果物なの?」
母さんが聞いたら結莉達はそれを取り出して見せた。
場が一気に凍りついた。
さすがに父さん達もこの年越しパーティの場所に持ってきてるとは思わなかった。
「天音は何を考えてるの!」
母さんが怒り出す。
「この先何度もクリスマスあるのにどうするつもり!?」
6歳でパイナップルだからなぁ。
「来年はポテトマッシャーくれるって言ってた」
結莉が答える。
もちろん調理器具じゃない。
兵器マニアなんだろうか?
結莉には必要ない兵器だと思ったけど。
「パパが教えてくれるんだ」
「何を?」
母さんの顔には不安しかなかった。
大地は結莉と茉莉に銃火器の分解組み立てを仕込んでいた。
「愛莉ちゃん、女の子だから防犯グッズは必要だと思うんだけど」
恵美さんが言う。
防犯グッズで手榴弾ってどうなんだろう?
それにむしろ銃火器を持っている方がどう考えても危険じゃないのか?
でも大地も同じだった。
だから買い与えた武器を間違った使用方法で使って暴発でもしたら、ただじゃすまない。
そう思って使い方を教えたらしい。
ジャムを起こした場合の対処法なんかも教えているそうだ。
「み、水奈はどうなんだよ?優奈や愛菜に何あげたんだ?」
天音が話題をそらす。
これ以上結莉達に喋らせるのは危険だと思ったんだろう。
しかし水奈も気まずそうに笑っている。
それを学が睨んでいる。
悠翔は去年と同じライブDVDを欲しがったそうだ。
やっぱり音楽に興味があるらしい。
「まさか、誠がまた馬鹿な真似したのか?」
神奈さんが聞いている。
「そうじゃないんです……」
学が言った。
それを聞いた神奈さんが怒り出す。
「何を考えてるんだお前は!」
「天音達よりましだろ!」
「だからって5歳の子に与える物じゃないだろ」
「5歳で料理をする子だっているんだからいいじゃないか!」
「料理をするのは悠翔と茉奈だろ!優奈たちに持たせたら何に使うかくらい考えろ!」
「神奈、私も紗理奈には与えなかったけど一つだけ絶対に守らせたことがあるんだ」
美嘉さんが言っていた。
それは「包丁は人を傷つける道具じゃない!」という絶対のルールだった。
二人の喧嘩が過激になって使いだした時に言ったそうだ。
その時の剣幕は凄かったと紗理奈が言っている。
自由に遊ばせてやればいい。
子供には子供のルールがある。
ただ、絶対にしてはいけない事だけ徹底すれば間違いは起きない。
そう神奈さんに説明していた。
しかし、そうだとしても結莉達のはどうする?
少なくとも国内で使う物じゃないぞ。
「そうなんだよな。さすがに一個しか買ってないし」
天音が悩んでいる。
「だったら来年また買ってあげればいいじゃない」
恵美さんが言う。
望さんと父さんは笑うしかなかった。
でも一つ気になる事がある。
その母さんが神奈さんに聞いていた。
「神奈は何か買ってあげたの?」
「いや、佳織は普通におもちゃを買ってやったんだけど……」
そう言って誠さんを睨んでいた。
「また誠君が何かしたの?」
「ほら、”大人になったら使えるように”って言うじゃないか!」
「だからって言ってあんなものプレゼントに渡す父親がどこにいるんだ!」
「まさか父さんまたやったのか……?」
水奈は心当たりがあるらしい。
当然だ、水奈が幼稚園の頃にも渡されて困惑して神奈さんに相談したらしい。
それから夫婦げんかが始まった。
「お前は私に対するあてつけか!?」
「神奈みたいに悩まなくていいようになるといいなって父親の願いだよ」
「まさか……誠君もうちの馬鹿と同じことをしたわけ?」
亜依さんが言う。
「結局何を渡したんだ?」
父さんが聞いていた。
「冬夜さんには関係ありません!」
母さんも気づいたみたい。
「空、あっちで子供達と食事していて」
翼がそういう。
あまり僕には聞かれたくない話の様だ。
「結、何か食べたいのあるか?」
「パパ、今日は大晦日で明日はお正月なんだよね?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
「お節やお雑煮が無いのは皆嫌いなの?」
結はまだ子供だ。
こんなホテルのビュッフェでお雑煮やお餅が出ると思っているらしい。
「ちゃんと家には用意してあるよ」
美希と母さんが準備してたろ?
「わかった。じゃあ、ラーメン食べたい」
「ラーメンもないんだ」
「どうしてパスタがあるのにラーメンは無いの?」
「ラーメンは時間を置くとのびてしまうだろ?」
だからよく行くバイキングだと食べる時に食べる分だけ面を自分で茹でるだろ?
その機械がないだけだよ。
「ふーん。高級ホテルっていうのに変な話だね」
「結。あっちにほかほかのお肉食べられるところあったよ」
茉奈が言うと冬夜達は走っていく。
「結も味覚を鍛えないと駄目みたいね」
恵美さんはそう言って笑っていた。
僕は結達の後を追った。
(3)
「お前らは一体何考えてるんだ!」
亜依さんが瑛大さんと誠さんを怒鳴りつけていた。
問題になったのはこの二人が孫に渡したクリスマスプレゼント。
さすがに旦那様が真似しだしたらたまらないし、結や比呂が興味を持つのもまだ早いと思ったので何か適当に料理食べてたらいいと言って席を外してもらった。
で、この二人は何を渡したのか?
少し考えたら簡単だ。
誠さんと水奈達の話を聞いたらなんとなく予想ついた。
パパでも気づいたらしい。
「誠……お前それはいくら何でも無茶だろ」
サイズすらわからないんだぞ。
パパでもそのくらいの判断はできる。
なのにどうしてこの二人は判断できなかったのか。
「遊は琴音に何買ったんだ?」
天音が聞いていた。
「普通にポシェットだよ」
お出かけの時に使っているお気に入りになったそうだ。
「パパがくれた物なら何でも嬉しい」
そう言ってくれるらしい。
「だからママはパパを私にちょうだい」
そんな事を言い出してるそうだ。
しかしそんな琴音に瑛大さんは馬鹿なものを渡そうとしたらしい。
それをみてなずなもさすがに驚いた。
優奈達にも渡そうと誠さんと瑛大さんは相談したそうだ。
サイズと色や柄。
「水奈の子育ても見張ってないとダメなのに余計な問題作るな!」
神奈さんが怒っている。
「私からもお願いします。遊がちゃんとしてくれてるのに……」
なずなも困っているようだ。
「水奈の時はいつもらったんだそれ?」
「小学校に入学する前だよ……」
「それどうしたんだ?」
「一応使えるかと思ったけどダメだったから捨てた」
「む、俺の見立てが甘かったか」
「そうじゃないだろ、この馬鹿!」
ここまで言えば大体わかるだろう。
普通なら絶対にありえない事を起こす奇跡をこの二人は普通の様にやらかす。
そう、2人はまだ小学生でもない孫娘にブラをプレゼントしていた。
「このくらいの大きさになるといいな」
そんな願いを込めたらしい。
さすがに冬夜さんでも庇うことはできない。
散々罵詈雑言を受ける二人。
そんな中遊と粋が天に聞いていた。
「お前は娘の綺羅に何を渡したんだ」
「まだ一歳だからブラはねーよ。ただ女の子なんて初めてだから分からなくて繭に相談した」
天の子供は娘の綺羅と息子の大和。
遊の二人目と三人目は息子の進と娘の朱鳥。
最近子供の名前で遊びだしたらしい。
気づく人は気づくだろうから敢えて説明しない。
ただ四人共同じ能力「シード」を持っている。
で、天にとって女の子の好みとかそう言うのが分からなかったから聞いたらしい。
しかしその相談の質問がやはり天だった。
「どこの世界に1歳の娘に生理用品をプレゼントする親がいるんですか!」
「へえ、天は意外と考えてるんだな!」
「誠は余計な事を言うな!」
「た、多田君やそれは繭が天に助言してるみたいだから大丈夫だよ。そうだろ?繭」
「ええ。今、天に色々教えてるところです」
そう言えば旦那様もそういう事は私に相談していたな。
冬夜さんも愛莉さんに相談していたらしい。
愛莉さんは一言言ったそうだ。
「娘の成長の事は私に任せてもらえませんか?」
そういうのを父親に知られたくないと思うのが娘なんです。
そう冬夜さんに言ったそうだ。
だから冬夜さんはあまりそういう話を触れない。
ただ、祝い事とかは自分で調べたりしてしてくれた。
もちろん女性社員に相談なんて無茶はしなかった。
ただのセクハラだから。
しかしそんな冬夜さんの気づかいを無駄にするのが天音や冬莉、茜だった。
「パパ!私にもおっぱい出来たぞ!」
そう言って服も着ずにリビングに現れるのが三人。
パパもお爺さんと相談していたな。
そしてその遺伝子はしっかり結莉達に受け継がれたようだ。
騒動の中大地が私に言う。
「結莉と茉莉からも言われて困っていたんです」
私達はいつになったらおっぱいができるんだ!
大地はどう答えたらいいかわからず天音に相談した。
「いいか!二人は私の娘だ!過度な期待はするな!」
そう言うと二人は悔しがっていたそうだ。
「やっぱりそうなるよな……」
そばで聞いていた水奈が落ち込んでいる。
「でも、天音はまだ大地……姉の美希の血が入ってるから期待していいんじゃないのか?」
私は翼に聞いてみた。
「やっぱり翼も大きい方がいいの?」
「……私はそうでもなかったよ?」
ただ善明の希望くらいは満たしてやれたらいいと思ってた。
そしたらそんな願いは無駄だった。
だって善明だって私の胸しか知らないんだから。
「水奈!よく覚えておけ!お前は旦那に恵まれすぎてるんだ!片桐家ほどじゃないけど私の馬鹿亭主に比べたら天と地の差だ」
「神奈の言うとおりだよ!遊や学はどうしたらこうなるのか分からないくらい真面目なんだ!」
「亜依、今夜は飲むぞ!どうせまだまだこの馬鹿たちは問題を起こすんだから!」
「分かった神奈!今夜は急遽女子会よ!糞亭主をつかまされた鬱憤を全部吐き出すよ!」
私や水奈にも付き合うことを強要された。
男性陣は誰一人止めようとしなかった。
子供たちの事は夫に任せて私達は徹底的に飲んでいた。
すると演奏が終わってMCが始まる。
カウントダウンが始まると皆で新年を祝っていた。
来年は何もなければいい。
この場にいる皆がそう思っていた。
しかしやはりどこまでも続く希望と絶望の物語。
一度走り出した列車は止まらない。
「なんだこれは!!」
クリスマスプレゼントを陽葵と菫と秋久に買って帰ると、菫が「プレゼントさっさとだせ!」というのでその場で渡した。
この世界では子供たちにとってクリスマスプレゼントは親から奪い取る物なのだろう。
翼に聞いたら一緒に買いに行って渡したという。
毎年思うんだけど翼はどこにクリスマスプレゼントを買いに行ってるんだい?
何を買ってきたのかはすぐにわかった。
菫が包装を破り捨てると中に入っていたウサギの縫いぐるみだった。
それを見て菫は予想通り怒り出す。
「ふざけてるのか!?お前去年も同じだったじゃないか?」
分かってるよ。
それを大事に抱いて寝ていたからそろそろ新しいのがいいだろうと思って買ってきたんだ。
ちなみに秋久は「ありがとう」と言って部屋に戻って行った。
去年航空ショーを見に行った時に欠伸をしている菫とは反対に戦闘機に見とれている秋久がいたから戦闘機の模型を買ってきた。
多分明日の今頃には組み立て終わっているのだろう。
頼むから「戦闘機のパイロットになりたい」なんて言わないでおくれ。
母さんは間違いなく空軍をもう一つくらい調達しかねないから。
「子供に戦闘機なんて操縦させられないでしょ」
だからと言って子供に空軍渡すのはどうかと思うんだけど。
で、怒り出した菫は隠していた物を取り出した。
……それが美希のプレゼントだったんだね。
ハチェットと呼ばれる種類の手斧を二つ持っていた
そんなものを小学校に持っていくつもりなのかい?
収納しやすいとか携帯しやすいとかいうレベルじゃないよ?
お巡りさんが絶対に取り押さえるよ。
そのお巡りさんが惨殺されそうな気がするけど。
大体翼はこれどこで手に入れたんだい?
「それは通販で探していたら菫が気に入ったみたいだったから」
翼、普通の母親はそこで注意すると思うんだけど。
普通の親なら取り合えあげる斧を構えて僕に言った。
「最初の獲物はお前にしてやってもいいぞ!」
6歳の娘にそんな風に言われるとショックを感じるね。
また空達と飲みに行くかな。
それでも翼や美希はともかく天音や水奈もついてきそうだな。
それなら年越しパーティの時だけでいいか。
今年もあれるだろうな。
天音がまともなプレゼントをするわけがない。
翼ですらこれなんだから。
「ほ、ほら。菫が去年のプレゼントを大事に使っててぼろぼろになってるのをパパに知らせたから」
翼がそう言って菫を説得する。
「……しょうがねえな。来年また同じだったら許さねーぞ!……くまさんが欲しい」
そう言って部屋に持っていく。
「……去年も言ったけど、あの子ちょっと照れ屋さんだから」
翼はそう言って微笑む。
紀子と陽葵は普通にお絵描きセットを渡すと喜んでいた。
健太には変身ベルトを買っておいた。
だからちょっと恥ずかしいからって手斧振り回す女の子ってどうなんだい?
夕食の支度が終わると翼が片付けてる間に秋久と陽葵と菫を風呂に入れる。
まだ「パパと一緒なんていや」とは菫も言わない。
だから違うことを言っていた。
「パパは私の事嫌いか?」
「へ?」
「私が女の子らしくないから嫌いかって聞いてんだよ」
翼の見立ては間違ってないらしい。
その疑問に答えることにした。
「そうやって不安になる事は女の子じゃないのかい?」
「……ごめん。本当は嬉しいんだ」
「それはよかったよ」
たまには温かいクリスマスの話を考えてくれるじゃないか。
この話を書きながら”悪夢”なんて検索していたのが信じられないよ。
しかし酒井家はある意味そういう役回りなんだろう。
お風呂から入って美希が風呂から出て、一家団欒でテレビを見ていた。
……また始まった。
翼は興味なさそうだけど菫は食い入るように見てる。
「アーメンハレルヤピーナッツバターだ」
そんな迷言を無数に出している漫画。
菫や茉莉達の教科書の様になっているアニメ。
とにかく女性キャラが異常に強い。
主人公の男性ももともとはサラリーマンだったのに裏の社会に闇落ちしていく。
神様が年中ベガスで豪遊している漫画。
これをクリスマスにわざわざ放送するテレビ局は何を考えているんだ。
それだけじゃない。
孤児が幼少期からゆがんだ教育を受けて悲惨な結末を迎える話もある。
「可哀そうだね」
翼の感想はそれだけだった。
そんなアニメを嬉々として見ている娘を止めようとは思わないのだろうか?
そんなアニメを見ながら空達と連絡を取っていた。
「ああ、母さんがそういうの苦手だから普通に歌番組見てる」
「結莉と茉莉が嬉しそうに見てる」
空と大地から返事が返って来た。
「善明はあれ見てるの?」
「まあね」
アニメが終わると菫も眠くなったらしくて大人しく部屋に戻る。
僕達も寝室に行って寝ることにした。
「私あのアニメ見て思ったんだけど」
「どうしたんだい?」
あのアニメについて思う所があったのだろうか?
可哀そうな話もあったからね。
「SHでタバコ吸う人いないね」
たったそれだけの感想だった。
(2)
「何を考えているのですか!?」
天音が母さんに叱られていた。
理由は簡単。
結莉や茉莉に与えたクリスマスプレゼント。
ちなみに海翔は比呂と同じ変身ベルトだったそうだ。
今もベルトを装着して変身ポーズを真似て遊んでる。
「こういう場所でしちゃだめだよ」
結莉が比呂達に注意している。
カミラにはお財布をプレゼントしてあげた。
結はお絵描きセットを、カミルにはパズルをプレゼントした。
で、問題は結莉と茉莉だった。
去年は爆撃機などを与えていた。
だから母さんも当然気になっていた。
「ちゃ、ちゃんと普通のおもちゃだよ」
天音はそう言っていた。
大地は顔に出さないように必死だった。
しかし恵美さんは愛莉とは違う手段を使った。
「結莉達は何をもらったのかな?」
天音がやばいと感じて結莉達を見ている。
しかし遅かった。
結莉達は屈託のない笑顔で言った。
「パイナップル」
大地が頭を抱えている。
善明は大地に同情していた。
母さんたちは不思議そうに見ていた。
「パイナップルって果物なの?」
母さんが聞いたら結莉達はそれを取り出して見せた。
場が一気に凍りついた。
さすがに父さん達もこの年越しパーティの場所に持ってきてるとは思わなかった。
「天音は何を考えてるの!」
母さんが怒り出す。
「この先何度もクリスマスあるのにどうするつもり!?」
6歳でパイナップルだからなぁ。
「来年はポテトマッシャーくれるって言ってた」
結莉が答える。
もちろん調理器具じゃない。
兵器マニアなんだろうか?
結莉には必要ない兵器だと思ったけど。
「パパが教えてくれるんだ」
「何を?」
母さんの顔には不安しかなかった。
大地は結莉と茉莉に銃火器の分解組み立てを仕込んでいた。
「愛莉ちゃん、女の子だから防犯グッズは必要だと思うんだけど」
恵美さんが言う。
防犯グッズで手榴弾ってどうなんだろう?
それにむしろ銃火器を持っている方がどう考えても危険じゃないのか?
でも大地も同じだった。
だから買い与えた武器を間違った使用方法で使って暴発でもしたら、ただじゃすまない。
そう思って使い方を教えたらしい。
ジャムを起こした場合の対処法なんかも教えているそうだ。
「み、水奈はどうなんだよ?優奈や愛菜に何あげたんだ?」
天音が話題をそらす。
これ以上結莉達に喋らせるのは危険だと思ったんだろう。
しかし水奈も気まずそうに笑っている。
それを学が睨んでいる。
悠翔は去年と同じライブDVDを欲しがったそうだ。
やっぱり音楽に興味があるらしい。
「まさか、誠がまた馬鹿な真似したのか?」
神奈さんが聞いている。
「そうじゃないんです……」
学が言った。
それを聞いた神奈さんが怒り出す。
「何を考えてるんだお前は!」
「天音達よりましだろ!」
「だからって5歳の子に与える物じゃないだろ」
「5歳で料理をする子だっているんだからいいじゃないか!」
「料理をするのは悠翔と茉奈だろ!優奈たちに持たせたら何に使うかくらい考えろ!」
「神奈、私も紗理奈には与えなかったけど一つだけ絶対に守らせたことがあるんだ」
美嘉さんが言っていた。
それは「包丁は人を傷つける道具じゃない!」という絶対のルールだった。
二人の喧嘩が過激になって使いだした時に言ったそうだ。
その時の剣幕は凄かったと紗理奈が言っている。
自由に遊ばせてやればいい。
子供には子供のルールがある。
ただ、絶対にしてはいけない事だけ徹底すれば間違いは起きない。
そう神奈さんに説明していた。
しかし、そうだとしても結莉達のはどうする?
少なくとも国内で使う物じゃないぞ。
「そうなんだよな。さすがに一個しか買ってないし」
天音が悩んでいる。
「だったら来年また買ってあげればいいじゃない」
恵美さんが言う。
望さんと父さんは笑うしかなかった。
でも一つ気になる事がある。
その母さんが神奈さんに聞いていた。
「神奈は何か買ってあげたの?」
「いや、佳織は普通におもちゃを買ってやったんだけど……」
そう言って誠さんを睨んでいた。
「また誠君が何かしたの?」
「ほら、”大人になったら使えるように”って言うじゃないか!」
「だからって言ってあんなものプレゼントに渡す父親がどこにいるんだ!」
「まさか父さんまたやったのか……?」
水奈は心当たりがあるらしい。
当然だ、水奈が幼稚園の頃にも渡されて困惑して神奈さんに相談したらしい。
それから夫婦げんかが始まった。
「お前は私に対するあてつけか!?」
「神奈みたいに悩まなくていいようになるといいなって父親の願いだよ」
「まさか……誠君もうちの馬鹿と同じことをしたわけ?」
亜依さんが言う。
「結局何を渡したんだ?」
父さんが聞いていた。
「冬夜さんには関係ありません!」
母さんも気づいたみたい。
「空、あっちで子供達と食事していて」
翼がそういう。
あまり僕には聞かれたくない話の様だ。
「結、何か食べたいのあるか?」
「パパ、今日は大晦日で明日はお正月なんだよね?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
「お節やお雑煮が無いのは皆嫌いなの?」
結はまだ子供だ。
こんなホテルのビュッフェでお雑煮やお餅が出ると思っているらしい。
「ちゃんと家には用意してあるよ」
美希と母さんが準備してたろ?
「わかった。じゃあ、ラーメン食べたい」
「ラーメンもないんだ」
「どうしてパスタがあるのにラーメンは無いの?」
「ラーメンは時間を置くとのびてしまうだろ?」
だからよく行くバイキングだと食べる時に食べる分だけ面を自分で茹でるだろ?
その機械がないだけだよ。
「ふーん。高級ホテルっていうのに変な話だね」
「結。あっちにほかほかのお肉食べられるところあったよ」
茉奈が言うと冬夜達は走っていく。
「結も味覚を鍛えないと駄目みたいね」
恵美さんはそう言って笑っていた。
僕は結達の後を追った。
(3)
「お前らは一体何考えてるんだ!」
亜依さんが瑛大さんと誠さんを怒鳴りつけていた。
問題になったのはこの二人が孫に渡したクリスマスプレゼント。
さすがに旦那様が真似しだしたらたまらないし、結や比呂が興味を持つのもまだ早いと思ったので何か適当に料理食べてたらいいと言って席を外してもらった。
で、この二人は何を渡したのか?
少し考えたら簡単だ。
誠さんと水奈達の話を聞いたらなんとなく予想ついた。
パパでも気づいたらしい。
「誠……お前それはいくら何でも無茶だろ」
サイズすらわからないんだぞ。
パパでもそのくらいの判断はできる。
なのにどうしてこの二人は判断できなかったのか。
「遊は琴音に何買ったんだ?」
天音が聞いていた。
「普通にポシェットだよ」
お出かけの時に使っているお気に入りになったそうだ。
「パパがくれた物なら何でも嬉しい」
そう言ってくれるらしい。
「だからママはパパを私にちょうだい」
そんな事を言い出してるそうだ。
しかしそんな琴音に瑛大さんは馬鹿なものを渡そうとしたらしい。
それをみてなずなもさすがに驚いた。
優奈達にも渡そうと誠さんと瑛大さんは相談したそうだ。
サイズと色や柄。
「水奈の子育ても見張ってないとダメなのに余計な問題作るな!」
神奈さんが怒っている。
「私からもお願いします。遊がちゃんとしてくれてるのに……」
なずなも困っているようだ。
「水奈の時はいつもらったんだそれ?」
「小学校に入学する前だよ……」
「それどうしたんだ?」
「一応使えるかと思ったけどダメだったから捨てた」
「む、俺の見立てが甘かったか」
「そうじゃないだろ、この馬鹿!」
ここまで言えば大体わかるだろう。
普通なら絶対にありえない事を起こす奇跡をこの二人は普通の様にやらかす。
そう、2人はまだ小学生でもない孫娘にブラをプレゼントしていた。
「このくらいの大きさになるといいな」
そんな願いを込めたらしい。
さすがに冬夜さんでも庇うことはできない。
散々罵詈雑言を受ける二人。
そんな中遊と粋が天に聞いていた。
「お前は娘の綺羅に何を渡したんだ」
「まだ一歳だからブラはねーよ。ただ女の子なんて初めてだから分からなくて繭に相談した」
天の子供は娘の綺羅と息子の大和。
遊の二人目と三人目は息子の進と娘の朱鳥。
最近子供の名前で遊びだしたらしい。
気づく人は気づくだろうから敢えて説明しない。
ただ四人共同じ能力「シード」を持っている。
で、天にとって女の子の好みとかそう言うのが分からなかったから聞いたらしい。
しかしその相談の質問がやはり天だった。
「どこの世界に1歳の娘に生理用品をプレゼントする親がいるんですか!」
「へえ、天は意外と考えてるんだな!」
「誠は余計な事を言うな!」
「た、多田君やそれは繭が天に助言してるみたいだから大丈夫だよ。そうだろ?繭」
「ええ。今、天に色々教えてるところです」
そう言えば旦那様もそういう事は私に相談していたな。
冬夜さんも愛莉さんに相談していたらしい。
愛莉さんは一言言ったそうだ。
「娘の成長の事は私に任せてもらえませんか?」
そういうのを父親に知られたくないと思うのが娘なんです。
そう冬夜さんに言ったそうだ。
だから冬夜さんはあまりそういう話を触れない。
ただ、祝い事とかは自分で調べたりしてしてくれた。
もちろん女性社員に相談なんて無茶はしなかった。
ただのセクハラだから。
しかしそんな冬夜さんの気づかいを無駄にするのが天音や冬莉、茜だった。
「パパ!私にもおっぱい出来たぞ!」
そう言って服も着ずにリビングに現れるのが三人。
パパもお爺さんと相談していたな。
そしてその遺伝子はしっかり結莉達に受け継がれたようだ。
騒動の中大地が私に言う。
「結莉と茉莉からも言われて困っていたんです」
私達はいつになったらおっぱいができるんだ!
大地はどう答えたらいいかわからず天音に相談した。
「いいか!二人は私の娘だ!過度な期待はするな!」
そう言うと二人は悔しがっていたそうだ。
「やっぱりそうなるよな……」
そばで聞いていた水奈が落ち込んでいる。
「でも、天音はまだ大地……姉の美希の血が入ってるから期待していいんじゃないのか?」
私は翼に聞いてみた。
「やっぱり翼も大きい方がいいの?」
「……私はそうでもなかったよ?」
ただ善明の希望くらいは満たしてやれたらいいと思ってた。
そしたらそんな願いは無駄だった。
だって善明だって私の胸しか知らないんだから。
「水奈!よく覚えておけ!お前は旦那に恵まれすぎてるんだ!片桐家ほどじゃないけど私の馬鹿亭主に比べたら天と地の差だ」
「神奈の言うとおりだよ!遊や学はどうしたらこうなるのか分からないくらい真面目なんだ!」
「亜依、今夜は飲むぞ!どうせまだまだこの馬鹿たちは問題を起こすんだから!」
「分かった神奈!今夜は急遽女子会よ!糞亭主をつかまされた鬱憤を全部吐き出すよ!」
私や水奈にも付き合うことを強要された。
男性陣は誰一人止めようとしなかった。
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