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cold rain
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(1)
「冷えるね~」
「茉奈は寒いの?僕の上着使う?」
「それだと結が寒いでしょ?」
「まあね」
「だからこうするの」
そう言って茉奈は結に抱き着いていた。
「他人が見てるぞ?」
「結は見られたくないの?」
「茉奈がいいならべつにいいけど」
そうやって2人はべったりくっついていた。
やはりあの日から冬夜の心境に変化があったのだろう。
結は茉奈の可愛いわがままを受け入れていた。
やっぱり片桐家の男子なんだな。
「いい加減にしろ茉奈!貴様らが地球の温暖化の原因だろ!」
茉莉が怒り出す。
「茉莉だって朔にしてもらえばいいのに」
結莉は全く気にも止めてない。
茉莉もこれ以上文句を言うと結の機嫌を損ねかねない。
「お前らみたいなのをバカップルって言うんだぞ!」
「茉莉、放っておいた方が良い。結の怒りを買って巻き込まれるのはごめんだ」
菫がため息をつきながら言った。
そんな茉奈を見て水奈が言った。
「翼、茉奈の奴は私に似てると思ったけど違っていたみたいだ」
「水奈もやっぱりそう思った?」
茉奈は誰に似たんだろう。
父さんが言うには小さい頃の神奈さんはあんな感じだったと言っていたけど。
もっと気付かなければいけないのは幼稚園で恋をしていた事。
そしてどこまでも純粋で一途な恋。
それは父さんから聞いた神奈さんの若い時の様だ。
そんな茉奈と結を海翔が見ていた。
すると優奈が言う。
「海翔もしたいの?」
「あったかいのかなって気になってさ」
「だったら私がいるじゃない」
結局優奈も海翔に甘えたいらしい。
翼と天音の僕の奪い合いを思い出していた。
「どいつもこいつもべったりしやがって」
「お前もすりゃいいじゃねーか」
朔もいるぞと菫が言った。
「お前は西原がいないだろ?」
「私に気を使わなくてもいいだろ?」
「じゃあ、言い方を変える。お前私が朔とあんな真似してたらどう思う?」
「爆笑するな」
「……だろ?」
菫と茉莉は違うみたいだ。
「あれなら結と茉奈は心配ないね」
美希が翼に言っていた。
「あんまり離れたら駄目だよ」
翼が菫達に注意する。
僕達は那奈瀬の公園に遊びに来ていた。
まだ寒い時期だけど天気は良かったのでたまには気分転換にと大地や善明達を誘っていた。
西原君や東山君は誘わなかった。
理由はそのうち分るだろう。
父さん達にも翼が声をかけていた。
だけど父さんはいかないと言った。
「もう年だから寒いのがつらいんだ」
「あら?冬夜さんはまだまだですよ」
「でもさ、そろそろ空に仕事を任せてセカンドライフを楽しみたくないか?愛莉」
マレーシアで余生を過ごしたいと父さんは笑って言った。
「それはいいんですけど、あの辺は地震や津波で大きな災害になるんじゃないですか?」
母さんが言うとそれを聞いた天音が言いだした。
「そうだぞパパ!あんなところまで愛莉の骨拾いに行く身にもなってくれ」
「天音は母親に向かって何て言い草ですか!?」
そう言って母さんと天音が喧嘩を始める。
「冬吾が見なかったら僕達が面倒見るから海外で老後ってのは止めて欲しい」
何かあった時が不安だと翼が言っていた。
父さんは笑いながら言った。
「……今日は決行日なんだろ?」
やっぱりバレていたか。
「あんまり派手にやって純也を困らせるなよ」
「分かってる」
そう言って僕達だけで公園にやって来た。
善明も両親を誘ったらしいがそんな場所に晶さん達がいようものなら県全体に被害が生まれる。
「銃はだめ」
そう、言いつけたところでカミラやカミルの荷物を見たらもうやる気になっている。
だからカミルは雪菜と成実を連れて来たけど菫達は彼氏を連れてきてなかった。
彼氏を巻き込みたくない。
いたら自由を奪われる。
あと……。
「やっぱり彼氏の前ではか弱い恋人でありたいから」
すでに手遅れな気がするけど、翼に怒られるからやめとこう。
「成実はどうだい?大学生活」
大地が聞いていた。
「奈留さん達のお陰で来年には卒業できそうです」
「油断したらダメだよ」
大地も恵美さん達から聞いていたらしい。
瑛大さんが最後の後期の履修登録をし終わった後に告げられた死刑宣告。
「あなた第2外国語履修してないから卒業できませんね」
瑛大さんは両親と亜依さんからこっぴどく叱られたらしい。
そのあげくたった1単位取るための前期だけの大学生活。
懸命に働いてる亜依さんの気持ちも考えずに朝から晩まで遊んでいたそうだ。
亜依さんの小言が五月蠅いと亜依さんが家にいる間には家にいなくなった。
そしてハローワークの更新は週1だから文字通り1週間に1回行けばいいだろうとほとんど遊んでる同然の生活だったらしい。
誠さんですら怒っていたそうだ。
大学を卒業した後も散々だったけど無事に学が生まれて、そして学がその分苦労していた。
学がしっかり監視しながら水奈の履修登録の準備をしたらしい。
しかし授業を途中で抜け出したり天音と朝まで遊んでいたからと午前中の講義をさぼったりしていた。
それは学も気づかずに期末テストぎりぎりになって水奈が慌てて学は仕事をしながら水奈のレポートを手伝うという生活。
さすがに神奈さんが叱ったらしい。
そして後期になると水奈と約束した。
「水奈が後期は自分でちゃんと卒業できると約束するならなずな達と子作りの勝負に協力してやる」
そう言うと水奈は必死に勉強したらしい。
そんなに子供が欲しかったんだな。
そしてその努力の結果が今公園で遊んでいる。
茉奈と優奈にいたっては結と海翔と言う恋人も出来た。
だけど学はぼそりと言った。
「俺は自分の娘が恐ろしいよ」
「なんで?」
翼が聞いてた。
「だ、大丈夫だよ。私に似て美人になるよ」
「そうだな。水奈の様にきっとこれから事件を起こすんだ」
「ま、茉奈はしっかりしてるじゃないか!」
水奈の代わりに家事を優翔と分担してやってるそうだ。
「知ってるよ。水奈は優奈達と一緒にゲームしている事も聞いてる」
「学、心配するな。多分海翔がいるから優奈は大丈夫だ!」
「天音……あんたそういうけど茉莉はどうするの?」
翼が言うと天音が言い訳をしだす。
「翼、愛莉も言っていただろ。ちゃんと娘を見ろって」
「どういうことだよ」
「あいつが今ああなのは菫達に気を使ってるだけだ」
菫だって女の子なんだ。
今この場にいない彼氏の事を考えて寂しくなってしまう。
だから菫と遊んでるんだ。
それに愛菜だって悠翔が面倒見てるじゃないか。
問題ない。
「なるほどね……」
翼はまだ何か思う所があるみたいだ。
だから僕が助太刀してやった。
「優奈や愛菜、菫と茉莉……陽葵達だって同じことを考えてるよ」
「どういう意味?」
「娘たちにとって父親はかけがえのない存在らしいよ」
だから父親の前ではいい子でいようとする。
菫ですらそうなんだから間違いない。
そう翼に説明した。
しかし美希は僕を睨みつける。
「そこまで分かってるなら旦那様は少しは娘を注意してください!甘やかしすぎです」
「何かあったのか?美希」
天音が聞くと美希が言った。
美希がいない時を狙って下着姿で現れるカミラ。
狙いは小遣いが欲しい……じゃない。
娘と仲良くしてるところを美希に見せつけて美希を怒らせること。
父さんはそれを笑ってみている。
「……僕達も覚悟した方がいいのかい?」
善明が言うと美希が答えた。
「菫達に限ってそれはありませんから」
菫達は父親を尊敬している。
それは親であって一家の大黒柱だから。
決して異性を見てるわけじゃない。
異性として意識しているのは西原君だけだろう。
もうすでに善明に対して恥ずかしさが芽生えている。
其れがはっきり出た時に寂しがったりしないで欲しい。
「大地!てめぇ娘に手を出したとか言ったら私がぶっ殺すぞ!」
「天音に殺される前に母さんに殺されるよ!」
そんな風に騒いでいると知らない声が聞こえて来た。
「その前にお前たちが俺達がこの場で殺してやるから心配するな」
やっと出て来たか。
(2)
「その前にお前たちが俺達がこの場で殺してやるから心配するな」
そう言って現れたのは黒人の体格のいい男性。
それなりの修羅場を抜けて来た戦士なんだろう。
その隣にはいつぞやの化け物がいる。
善明が善幸さんに確認したら「一応女性」らしい。
両手でチェーンソーを持っている。
全身を甲冑で覆っていた。
その二人を先頭に大勢の軍隊みたいなのが来た。
思ったより多いな。
まだそんなに残っていたのか。
僕達は善明や大地と一緒に作戦を進めていた。
連中は使えそうなリベリオンの子供を一流の戦士に育てる役割があった。
放っておいてそんなのが大勢増えたらSHでも手に負えない。
だから先にそれを潰すことにした。
茜や菫に頼んで一人ずつ誘い出し片っ端から始末していく。
そんな面倒な作業をしていた。
リベリオンには腕利きのハッカーがいるのは知っている。
だからこれまで見たいにまともに正面突破はしなかった。
リベリオンのメンバーのアカウントを乗っ取って成りすまして誘導していく。
彼らがこのまま戦力を削がれて行くのをただ見ているわけがない。
時期が来るまで県外に逃れようとした。
せっかくて手中にある標的を逃すなんて馬鹿な真似はしない。
善明達に頼んで県外に逃亡しようとする連中を始末することに移行する。
それはそんなに難しい手段じゃない。
どうせ馬鹿正直にフェリーや飛行機、電車などの交通機関を使うわけがない。
どこまでもざるな日本の警備を掻い潜って秘密裏に手配した船や飛行機で逃亡を図る。
だったら彼らしかいないから遠慮する必要が無い。
魚雷や対空ミサイルで片っ端から落とす。
その船や飛行機の持ち主が誰か突き止められて困るのはリベリオンだ。
だから僕達が手を出さなくてもリベリオンが勝手に処理する。
そうやって手段がなくなると最後の手段に出る。
彼らの狙いは僕だろう。
と、いうわけで僕は彼らのリーダーであろう黒人に話しかけた。
「よう、遅かったじゃないか」
ぽかっ
美希に小突かれた。
「結達の前でその妙な癖やめて!」
ばれたか。
結はすでに真似を始めたらしい。
母さんも「冬夜さんの癖が孫にまでうつりましたよ。どうするんですか!?」と父さんを叱ったそうだ。
天音は笑ってた。
結はスマホでセリフを検索していると茉奈に小突かれていた。
「スマホで死後の世界でも探してるのか?」
結は何も知らないできた。
だからこいつらに対して何とも思ってなかった。
だけど余計な事を言ってくれたから結の指が止まって男を見ている。
「おっさん誰?」
結莉の目つきも鋭くなってる。
茉莉達も話をやめてこいつらを睨みつけていた。
「まるで俺達が来ることを分かっていたみたいだな?」
黒人の大男がそう言ってにやりと笑う。
僕もそれに答えてふっと笑って彼らに告げる。
「君がゴッティ?リベリオンの教官役だっけ?」
リベリオンと言う言葉で全員が彼を見ていた。
「……よく調べたな。大正解だ」
彼にはまだ余裕があるみたいだ。
理由もなんとなくわかっていたけど。
大地と善明はいつ始まってもいいように身構えている。
もう少しだけ時間を稼ぎたい。
「しかしもう少しましな訓練させたらどうだ?」
警戒心の強い女性とはいえ素人の桃花さんでさえ気づかれる尾行なんてあまりにもずさんだ。
石原家や酒井家の訓練を受けた方がましじゃないのか?
訓練に耐える事が出来ればの話だけど。
これで街の中での暗殺なんてばかばかしい。
例え射撃が出来たとしても絶対に標的を外すに決まってる。
射撃の腕なら茉莉や菫の方が上だろう。
そんな危なっかしい狙撃手を放っておけない。
さっさと片付けた方がいいだろうから始末してやる。
「じゃあ、今まで空が黙っていた事って」
翼が聞くと善明が頷いた。
彼らを泳がせるためにあえて翼達には伝えなかった。
伝えたらきっと何かしら反応するだろうから。
天音にいたっては自分で処刑しかねない。
「って事は今日はぶっ殺していいってことだよな?」
天音が聞くと茉莉と菫も僕を見る。
ただ遊ぶために来たわけじゃないのはカミルとカミラの持ち物を見ればわかるだろ?と伝えた。
そんな様子を見ていたゴッティは笑っていた。
「そこまで分かっていてたったそれだけの人数なのか?案外しょぼいグループだな」
まあ、それがゴッティの余裕の理由。
「何を言ってるのか分からないんだけど」
「目立つここではやらない。そんな油断をした間抜けから戦場では死ぬんだ。……やれ」
ゴッティが指示すると彼らは一斉に発砲してきた。
僕は一歩も動かない。
動いたのは秋久だけ。
秋久が作った防壁がすべての銃弾をはじき返していた。
「油断?何のこと?これは余裕って言うんだ」
ぽかっ
「さっきそれをやめてと言ったでしょ!」
「どうでもいいだろ美希。奴らから仕掛けてきたんだ。私達が遠慮する必要はないよな?」
天音と祈と水奈が前に出る。
「天音、気を付けて。当たったら痛いじゃ済まない」
それにそんな事態になったら大地が恵美さんに殺される。
「大地、お前大事なこと忘れてるぞ?私は結莉や茉莉の母親だぞ」
「天音の言う通りだ。こいつらで終わりなんだろ?空」
水奈がそう言って僕を見た。
そのすきを狙って攻撃するけど秋久がそれを妨げている。
そのお返しに茉莉の希美が撃とうとした時陽葵が「待って」と頼んだ。
「どうしたの?」
翼が陽葵に聞いている。
「空がやったんだから私達だってやってみたい事がある」
陽葵がそう言うと菫と陽葵と結と……健太と海翔が出る。
「お子様が戦うのか?」
一番危険な結を見て笑っている。
結と海翔と健太はベルトをいつの間にかつけていた。
ああ、そのシリーズも買ってあげたなそういえば。
5人はゴッティを指差して告げた。
「さあ、お前達の罪を数えろ」
ぽかっ
やっぱり結もそうなるのか。
茉奈に小突かれていた。
「そういうの止めたほうがいいよ。結」
「でも海翔もしたよ」
「お前らヒーロー物の見過ぎか?」
まだ余裕を見せている。
その余裕もすぐに消える。
「ええ、これはヒーロー物なんかじゃない。現実のお話」
カミラが袋から取り出したものを見て彼らの顔つきが変わる。
「すぐに天使を呼んであげるわね」
そう言ってにこりと笑うとカミラが反撃を始めた。
その一瞬をついて秋久と善明とカミルが敵陣に飛び込む。
「悪魔の様なガキどもはこの正義の味方スティールレディが……」
「ガッデム!誰が悪魔だこのくそババア!」
結莉が叫んで手をかざすとスティールレディという化け物を覆っている装甲を完全に破壊した。
「結は目が腐るから見たらダメ!」
茉奈が結に言うと結は素直に目を閉じた。
「ああ、君たちは何か勘違いしてるみたいだから一応言っておくね」
ここに呼び出したのはSHでも一番危険な連中だ。
相手が米軍だろうとお構いなしに壊滅させかねない能力の所持者。
さらに翼や天音のライド・ギグが発動して多分日本に天音達を止められる軍隊なんてないよ。
いつも純也達が言ってるだろ?
俺達と一戦やりたきゃ米軍でも連れて来い。
「これは推測だけどこの行動は十郎の指示じゃないだろ?」
ただ油断しきって勝手な行動に出た。
そうさせるために今まで仕組んできたんだ。
少しずつ削いでいきながら逃がしはしない。
そうすればきっとお前らは焦る。
そして頭である僕がこんな呑気な事をしていれば手を出したくなる。
十郎が絡んでいたら絶対に気づいたはずだ。
あいつは厄介な事に意外と辛抱強くて慎重なやつ。
だから時期が来るまで手出しをしない。
ただプレッシャーだけを与えていく。
僕達も同じ真似をした。
プレッシャーに負けたお前らが最大の間抜けだ。
「舐めた真似を!お前のその減らず口私が切り取ってやる!」
そう言ってスティールレデイが僕に向かって突進していく。
「空は見たらダメ!私以外の裸の女性なんて絶対に見せないから!」
あれを女性と呼んでいいのか僕には判断が出来ないけど翼が言うから目をそらした。
父さん達から聞いていたのはかなりしぶとい生命力と肉体の持ち主だと聞いた。
善明もあまりやりたくない相手だと言っていた。
だけど女性は容赦がない。
「私の目の前で私の弟に手を出すなんてふざけた真似許さない!」
あんなのに誘惑される男がいるのかどうかは僕にも分からないけど翼はその化け物の突進を片手で止めていた。
すると化け物が翼にチェーンソーを振り下ろそうとする。
それを受け止めたのは両手に拳銃を持った茉莉が受けると同時に希美がチェーンソーを口で受け止めていた。
さすがに化け物も驚いたらしい。
茉莉が発砲してチェーンソーを壊し、希美がチェーンソーをかみ砕く。
そんな様子を見てリベリオンは瓦解する。
蜘蛛の子を散らすように逃げるが間に合ったみたいだ。
潜ませていた純也や遊達が待ち構えている。
「あんまり空の王を舐めるなよ?」
光太がそう言ってにやりと笑った。
「俺達を逮捕しても無駄だぞ?」
「何言ってんだお前?」
ゴッティが言うと純也はそう返した。
「こんだけふざけた真似をSHにしておいて刑務所で安穏と暮らせると思うなよ?」
どうせお前ら素性も分からない裏の人間だろ?
そんなのいちいち調べるなんて面倒な真似するわけないだろ。
どうせお前らは素性の知れない人間なんだ。
だからそうなっても問題ないだろ?
それが菫への合図だった。
菫はゴッティを除く全員を闇に飲み込む。
「まだやるか?僕もなまってるから肩慣らし程度に相手してやっていいぞ?」
「ざけんな空!お前はそこで余裕こいてりゃいいんだよ!」
天音がそう叫ぶ。
水奈も神奈さんや学や亜依さんに怒られてストレス溜まってるからこいつで憂さ晴らしをする。
「水奈は自業自得だろ?」
「それを言ったら天音も同じじゃねーか!?」
誰がゴッティをやるか揉めてる間にゴッティは逃走した。
ギャングのボスだ。
警察官では太刀打ちできないかもしれない。
光太達だって武装していない。
無駄なけが人は出したくなかった。
「それでいいのか?」
天音が聞くと僕は頷いた。
「ギャングのボスだからだよ」
ギャングのボスだけど部下が全滅した。
また一からやり直しだ。
それまでは十分時間を稼げる。
どのみち友恵達に牽制をしたとはいえ何らかの形で武力を持ち込むだろう。
警察の後始末も楽だった。
だって被害者がいないのだから。
適当に爆竹で騒いでる若者がいたという事にするらしい。
「結。もう目を開けていいよ」
茉奈が言うと目を閉じたままの結が目を開く。
これで彼らの主力は殆ど潰した。
どうせ準備をするだろうけど、多分ここは一気に畳みかけるべきだろう。
狙いは十郎。
それを潰せばすべて終わる。
そう確信していた。
「冷えるね~」
「茉奈は寒いの?僕の上着使う?」
「それだと結が寒いでしょ?」
「まあね」
「だからこうするの」
そう言って茉奈は結に抱き着いていた。
「他人が見てるぞ?」
「結は見られたくないの?」
「茉奈がいいならべつにいいけど」
そうやって2人はべったりくっついていた。
やはりあの日から冬夜の心境に変化があったのだろう。
結は茉奈の可愛いわがままを受け入れていた。
やっぱり片桐家の男子なんだな。
「いい加減にしろ茉奈!貴様らが地球の温暖化の原因だろ!」
茉莉が怒り出す。
「茉莉だって朔にしてもらえばいいのに」
結莉は全く気にも止めてない。
茉莉もこれ以上文句を言うと結の機嫌を損ねかねない。
「お前らみたいなのをバカップルって言うんだぞ!」
「茉莉、放っておいた方が良い。結の怒りを買って巻き込まれるのはごめんだ」
菫がため息をつきながら言った。
そんな茉奈を見て水奈が言った。
「翼、茉奈の奴は私に似てると思ったけど違っていたみたいだ」
「水奈もやっぱりそう思った?」
茉奈は誰に似たんだろう。
父さんが言うには小さい頃の神奈さんはあんな感じだったと言っていたけど。
もっと気付かなければいけないのは幼稚園で恋をしていた事。
そしてどこまでも純粋で一途な恋。
それは父さんから聞いた神奈さんの若い時の様だ。
そんな茉奈と結を海翔が見ていた。
すると優奈が言う。
「海翔もしたいの?」
「あったかいのかなって気になってさ」
「だったら私がいるじゃない」
結局優奈も海翔に甘えたいらしい。
翼と天音の僕の奪い合いを思い出していた。
「どいつもこいつもべったりしやがって」
「お前もすりゃいいじゃねーか」
朔もいるぞと菫が言った。
「お前は西原がいないだろ?」
「私に気を使わなくてもいいだろ?」
「じゃあ、言い方を変える。お前私が朔とあんな真似してたらどう思う?」
「爆笑するな」
「……だろ?」
菫と茉莉は違うみたいだ。
「あれなら結と茉奈は心配ないね」
美希が翼に言っていた。
「あんまり離れたら駄目だよ」
翼が菫達に注意する。
僕達は那奈瀬の公園に遊びに来ていた。
まだ寒い時期だけど天気は良かったのでたまには気分転換にと大地や善明達を誘っていた。
西原君や東山君は誘わなかった。
理由はそのうち分るだろう。
父さん達にも翼が声をかけていた。
だけど父さんはいかないと言った。
「もう年だから寒いのがつらいんだ」
「あら?冬夜さんはまだまだですよ」
「でもさ、そろそろ空に仕事を任せてセカンドライフを楽しみたくないか?愛莉」
マレーシアで余生を過ごしたいと父さんは笑って言った。
「それはいいんですけど、あの辺は地震や津波で大きな災害になるんじゃないですか?」
母さんが言うとそれを聞いた天音が言いだした。
「そうだぞパパ!あんなところまで愛莉の骨拾いに行く身にもなってくれ」
「天音は母親に向かって何て言い草ですか!?」
そう言って母さんと天音が喧嘩を始める。
「冬吾が見なかったら僕達が面倒見るから海外で老後ってのは止めて欲しい」
何かあった時が不安だと翼が言っていた。
父さんは笑いながら言った。
「……今日は決行日なんだろ?」
やっぱりバレていたか。
「あんまり派手にやって純也を困らせるなよ」
「分かってる」
そう言って僕達だけで公園にやって来た。
善明も両親を誘ったらしいがそんな場所に晶さん達がいようものなら県全体に被害が生まれる。
「銃はだめ」
そう、言いつけたところでカミラやカミルの荷物を見たらもうやる気になっている。
だからカミルは雪菜と成実を連れて来たけど菫達は彼氏を連れてきてなかった。
彼氏を巻き込みたくない。
いたら自由を奪われる。
あと……。
「やっぱり彼氏の前ではか弱い恋人でありたいから」
すでに手遅れな気がするけど、翼に怒られるからやめとこう。
「成実はどうだい?大学生活」
大地が聞いていた。
「奈留さん達のお陰で来年には卒業できそうです」
「油断したらダメだよ」
大地も恵美さん達から聞いていたらしい。
瑛大さんが最後の後期の履修登録をし終わった後に告げられた死刑宣告。
「あなた第2外国語履修してないから卒業できませんね」
瑛大さんは両親と亜依さんからこっぴどく叱られたらしい。
そのあげくたった1単位取るための前期だけの大学生活。
懸命に働いてる亜依さんの気持ちも考えずに朝から晩まで遊んでいたそうだ。
亜依さんの小言が五月蠅いと亜依さんが家にいる間には家にいなくなった。
そしてハローワークの更新は週1だから文字通り1週間に1回行けばいいだろうとほとんど遊んでる同然の生活だったらしい。
誠さんですら怒っていたそうだ。
大学を卒業した後も散々だったけど無事に学が生まれて、そして学がその分苦労していた。
学がしっかり監視しながら水奈の履修登録の準備をしたらしい。
しかし授業を途中で抜け出したり天音と朝まで遊んでいたからと午前中の講義をさぼったりしていた。
それは学も気づかずに期末テストぎりぎりになって水奈が慌てて学は仕事をしながら水奈のレポートを手伝うという生活。
さすがに神奈さんが叱ったらしい。
そして後期になると水奈と約束した。
「水奈が後期は自分でちゃんと卒業できると約束するならなずな達と子作りの勝負に協力してやる」
そう言うと水奈は必死に勉強したらしい。
そんなに子供が欲しかったんだな。
そしてその努力の結果が今公園で遊んでいる。
茉奈と優奈にいたっては結と海翔と言う恋人も出来た。
だけど学はぼそりと言った。
「俺は自分の娘が恐ろしいよ」
「なんで?」
翼が聞いてた。
「だ、大丈夫だよ。私に似て美人になるよ」
「そうだな。水奈の様にきっとこれから事件を起こすんだ」
「ま、茉奈はしっかりしてるじゃないか!」
水奈の代わりに家事を優翔と分担してやってるそうだ。
「知ってるよ。水奈は優奈達と一緒にゲームしている事も聞いてる」
「学、心配するな。多分海翔がいるから優奈は大丈夫だ!」
「天音……あんたそういうけど茉莉はどうするの?」
翼が言うと天音が言い訳をしだす。
「翼、愛莉も言っていただろ。ちゃんと娘を見ろって」
「どういうことだよ」
「あいつが今ああなのは菫達に気を使ってるだけだ」
菫だって女の子なんだ。
今この場にいない彼氏の事を考えて寂しくなってしまう。
だから菫と遊んでるんだ。
それに愛菜だって悠翔が面倒見てるじゃないか。
問題ない。
「なるほどね……」
翼はまだ何か思う所があるみたいだ。
だから僕が助太刀してやった。
「優奈や愛菜、菫と茉莉……陽葵達だって同じことを考えてるよ」
「どういう意味?」
「娘たちにとって父親はかけがえのない存在らしいよ」
だから父親の前ではいい子でいようとする。
菫ですらそうなんだから間違いない。
そう翼に説明した。
しかし美希は僕を睨みつける。
「そこまで分かってるなら旦那様は少しは娘を注意してください!甘やかしすぎです」
「何かあったのか?美希」
天音が聞くと美希が言った。
美希がいない時を狙って下着姿で現れるカミラ。
狙いは小遣いが欲しい……じゃない。
娘と仲良くしてるところを美希に見せつけて美希を怒らせること。
父さんはそれを笑ってみている。
「……僕達も覚悟した方がいいのかい?」
善明が言うと美希が答えた。
「菫達に限ってそれはありませんから」
菫達は父親を尊敬している。
それは親であって一家の大黒柱だから。
決して異性を見てるわけじゃない。
異性として意識しているのは西原君だけだろう。
もうすでに善明に対して恥ずかしさが芽生えている。
其れがはっきり出た時に寂しがったりしないで欲しい。
「大地!てめぇ娘に手を出したとか言ったら私がぶっ殺すぞ!」
「天音に殺される前に母さんに殺されるよ!」
そんな風に騒いでいると知らない声が聞こえて来た。
「その前にお前たちが俺達がこの場で殺してやるから心配するな」
やっと出て来たか。
(2)
「その前にお前たちが俺達がこの場で殺してやるから心配するな」
そう言って現れたのは黒人の体格のいい男性。
それなりの修羅場を抜けて来た戦士なんだろう。
その隣にはいつぞやの化け物がいる。
善明が善幸さんに確認したら「一応女性」らしい。
両手でチェーンソーを持っている。
全身を甲冑で覆っていた。
その二人を先頭に大勢の軍隊みたいなのが来た。
思ったより多いな。
まだそんなに残っていたのか。
僕達は善明や大地と一緒に作戦を進めていた。
連中は使えそうなリベリオンの子供を一流の戦士に育てる役割があった。
放っておいてそんなのが大勢増えたらSHでも手に負えない。
だから先にそれを潰すことにした。
茜や菫に頼んで一人ずつ誘い出し片っ端から始末していく。
そんな面倒な作業をしていた。
リベリオンには腕利きのハッカーがいるのは知っている。
だからこれまで見たいにまともに正面突破はしなかった。
リベリオンのメンバーのアカウントを乗っ取って成りすまして誘導していく。
彼らがこのまま戦力を削がれて行くのをただ見ているわけがない。
時期が来るまで県外に逃れようとした。
せっかくて手中にある標的を逃すなんて馬鹿な真似はしない。
善明達に頼んで県外に逃亡しようとする連中を始末することに移行する。
それはそんなに難しい手段じゃない。
どうせ馬鹿正直にフェリーや飛行機、電車などの交通機関を使うわけがない。
どこまでもざるな日本の警備を掻い潜って秘密裏に手配した船や飛行機で逃亡を図る。
だったら彼らしかいないから遠慮する必要が無い。
魚雷や対空ミサイルで片っ端から落とす。
その船や飛行機の持ち主が誰か突き止められて困るのはリベリオンだ。
だから僕達が手を出さなくてもリベリオンが勝手に処理する。
そうやって手段がなくなると最後の手段に出る。
彼らの狙いは僕だろう。
と、いうわけで僕は彼らのリーダーであろう黒人に話しかけた。
「よう、遅かったじゃないか」
ぽかっ
美希に小突かれた。
「結達の前でその妙な癖やめて!」
ばれたか。
結はすでに真似を始めたらしい。
母さんも「冬夜さんの癖が孫にまでうつりましたよ。どうするんですか!?」と父さんを叱ったそうだ。
天音は笑ってた。
結はスマホでセリフを検索していると茉奈に小突かれていた。
「スマホで死後の世界でも探してるのか?」
結は何も知らないできた。
だからこいつらに対して何とも思ってなかった。
だけど余計な事を言ってくれたから結の指が止まって男を見ている。
「おっさん誰?」
結莉の目つきも鋭くなってる。
茉莉達も話をやめてこいつらを睨みつけていた。
「まるで俺達が来ることを分かっていたみたいだな?」
黒人の大男がそう言ってにやりと笑う。
僕もそれに答えてふっと笑って彼らに告げる。
「君がゴッティ?リベリオンの教官役だっけ?」
リベリオンと言う言葉で全員が彼を見ていた。
「……よく調べたな。大正解だ」
彼にはまだ余裕があるみたいだ。
理由もなんとなくわかっていたけど。
大地と善明はいつ始まってもいいように身構えている。
もう少しだけ時間を稼ぎたい。
「しかしもう少しましな訓練させたらどうだ?」
警戒心の強い女性とはいえ素人の桃花さんでさえ気づかれる尾行なんてあまりにもずさんだ。
石原家や酒井家の訓練を受けた方がましじゃないのか?
訓練に耐える事が出来ればの話だけど。
これで街の中での暗殺なんてばかばかしい。
例え射撃が出来たとしても絶対に標的を外すに決まってる。
射撃の腕なら茉莉や菫の方が上だろう。
そんな危なっかしい狙撃手を放っておけない。
さっさと片付けた方がいいだろうから始末してやる。
「じゃあ、今まで空が黙っていた事って」
翼が聞くと善明が頷いた。
彼らを泳がせるためにあえて翼達には伝えなかった。
伝えたらきっと何かしら反応するだろうから。
天音にいたっては自分で処刑しかねない。
「って事は今日はぶっ殺していいってことだよな?」
天音が聞くと茉莉と菫も僕を見る。
ただ遊ぶために来たわけじゃないのはカミルとカミラの持ち物を見ればわかるだろ?と伝えた。
そんな様子を見ていたゴッティは笑っていた。
「そこまで分かっていてたったそれだけの人数なのか?案外しょぼいグループだな」
まあ、それがゴッティの余裕の理由。
「何を言ってるのか分からないんだけど」
「目立つここではやらない。そんな油断をした間抜けから戦場では死ぬんだ。……やれ」
ゴッティが指示すると彼らは一斉に発砲してきた。
僕は一歩も動かない。
動いたのは秋久だけ。
秋久が作った防壁がすべての銃弾をはじき返していた。
「油断?何のこと?これは余裕って言うんだ」
ぽかっ
「さっきそれをやめてと言ったでしょ!」
「どうでもいいだろ美希。奴らから仕掛けてきたんだ。私達が遠慮する必要はないよな?」
天音と祈と水奈が前に出る。
「天音、気を付けて。当たったら痛いじゃ済まない」
それにそんな事態になったら大地が恵美さんに殺される。
「大地、お前大事なこと忘れてるぞ?私は結莉や茉莉の母親だぞ」
「天音の言う通りだ。こいつらで終わりなんだろ?空」
水奈がそう言って僕を見た。
そのすきを狙って攻撃するけど秋久がそれを妨げている。
そのお返しに茉莉の希美が撃とうとした時陽葵が「待って」と頼んだ。
「どうしたの?」
翼が陽葵に聞いている。
「空がやったんだから私達だってやってみたい事がある」
陽葵がそう言うと菫と陽葵と結と……健太と海翔が出る。
「お子様が戦うのか?」
一番危険な結を見て笑っている。
結と海翔と健太はベルトをいつの間にかつけていた。
ああ、そのシリーズも買ってあげたなそういえば。
5人はゴッティを指差して告げた。
「さあ、お前達の罪を数えろ」
ぽかっ
やっぱり結もそうなるのか。
茉奈に小突かれていた。
「そういうの止めたほうがいいよ。結」
「でも海翔もしたよ」
「お前らヒーロー物の見過ぎか?」
まだ余裕を見せている。
その余裕もすぐに消える。
「ええ、これはヒーロー物なんかじゃない。現実のお話」
カミラが袋から取り出したものを見て彼らの顔つきが変わる。
「すぐに天使を呼んであげるわね」
そう言ってにこりと笑うとカミラが反撃を始めた。
その一瞬をついて秋久と善明とカミルが敵陣に飛び込む。
「悪魔の様なガキどもはこの正義の味方スティールレディが……」
「ガッデム!誰が悪魔だこのくそババア!」
結莉が叫んで手をかざすとスティールレディという化け物を覆っている装甲を完全に破壊した。
「結は目が腐るから見たらダメ!」
茉奈が結に言うと結は素直に目を閉じた。
「ああ、君たちは何か勘違いしてるみたいだから一応言っておくね」
ここに呼び出したのはSHでも一番危険な連中だ。
相手が米軍だろうとお構いなしに壊滅させかねない能力の所持者。
さらに翼や天音のライド・ギグが発動して多分日本に天音達を止められる軍隊なんてないよ。
いつも純也達が言ってるだろ?
俺達と一戦やりたきゃ米軍でも連れて来い。
「これは推測だけどこの行動は十郎の指示じゃないだろ?」
ただ油断しきって勝手な行動に出た。
そうさせるために今まで仕組んできたんだ。
少しずつ削いでいきながら逃がしはしない。
そうすればきっとお前らは焦る。
そして頭である僕がこんな呑気な事をしていれば手を出したくなる。
十郎が絡んでいたら絶対に気づいたはずだ。
あいつは厄介な事に意外と辛抱強くて慎重なやつ。
だから時期が来るまで手出しをしない。
ただプレッシャーだけを与えていく。
僕達も同じ真似をした。
プレッシャーに負けたお前らが最大の間抜けだ。
「舐めた真似を!お前のその減らず口私が切り取ってやる!」
そう言ってスティールレデイが僕に向かって突進していく。
「空は見たらダメ!私以外の裸の女性なんて絶対に見せないから!」
あれを女性と呼んでいいのか僕には判断が出来ないけど翼が言うから目をそらした。
父さん達から聞いていたのはかなりしぶとい生命力と肉体の持ち主だと聞いた。
善明もあまりやりたくない相手だと言っていた。
だけど女性は容赦がない。
「私の目の前で私の弟に手を出すなんてふざけた真似許さない!」
あんなのに誘惑される男がいるのかどうかは僕にも分からないけど翼はその化け物の突進を片手で止めていた。
すると化け物が翼にチェーンソーを振り下ろそうとする。
それを受け止めたのは両手に拳銃を持った茉莉が受けると同時に希美がチェーンソーを口で受け止めていた。
さすがに化け物も驚いたらしい。
茉莉が発砲してチェーンソーを壊し、希美がチェーンソーをかみ砕く。
そんな様子を見てリベリオンは瓦解する。
蜘蛛の子を散らすように逃げるが間に合ったみたいだ。
潜ませていた純也や遊達が待ち構えている。
「あんまり空の王を舐めるなよ?」
光太がそう言ってにやりと笑った。
「俺達を逮捕しても無駄だぞ?」
「何言ってんだお前?」
ゴッティが言うと純也はそう返した。
「こんだけふざけた真似をSHにしておいて刑務所で安穏と暮らせると思うなよ?」
どうせお前ら素性も分からない裏の人間だろ?
そんなのいちいち調べるなんて面倒な真似するわけないだろ。
どうせお前らは素性の知れない人間なんだ。
だからそうなっても問題ないだろ?
それが菫への合図だった。
菫はゴッティを除く全員を闇に飲み込む。
「まだやるか?僕もなまってるから肩慣らし程度に相手してやっていいぞ?」
「ざけんな空!お前はそこで余裕こいてりゃいいんだよ!」
天音がそう叫ぶ。
水奈も神奈さんや学や亜依さんに怒られてストレス溜まってるからこいつで憂さ晴らしをする。
「水奈は自業自得だろ?」
「それを言ったら天音も同じじゃねーか!?」
誰がゴッティをやるか揉めてる間にゴッティは逃走した。
ギャングのボスだ。
警察官では太刀打ちできないかもしれない。
光太達だって武装していない。
無駄なけが人は出したくなかった。
「それでいいのか?」
天音が聞くと僕は頷いた。
「ギャングのボスだからだよ」
ギャングのボスだけど部下が全滅した。
また一からやり直しだ。
それまでは十分時間を稼げる。
どのみち友恵達に牽制をしたとはいえ何らかの形で武力を持ち込むだろう。
警察の後始末も楽だった。
だって被害者がいないのだから。
適当に爆竹で騒いでる若者がいたという事にするらしい。
「結。もう目を開けていいよ」
茉奈が言うと目を閉じたままの結が目を開く。
これで彼らの主力は殆ど潰した。
どうせ準備をするだろうけど、多分ここは一気に畳みかけるべきだろう。
狙いは十郎。
それを潰せばすべて終わる。
そう確信していた。
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