姉妹チート

和希

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CENTURY COLLAR

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(1)

「かったるいよなぁ」
「さすがにここでチャカ撃ったら天音も怒るだろうしな」

 菫と暇を持て余していた。
 結莉と芳樹は相変わらず仲がいい。
 だけど私達はそれはそっとしておいた。
 それが一番平和な状況なんだ。
 それに朔と正行も学校の外では優しくしてくれるようになった。
 やっぱり男の方が成長が遅いんだな。
 そんな事を菫と話している時だった。
 2年生が騒がしい。
 何があった?
 するとが愛奈やって来た。
 様子がおかしい。

「何があったんだ?」

 希美が聞くと愛奈が説明した。
 どうやら1年に菓子をよこせと恐喝したらしい。
 そいつらは黒いリストバンドをしていた。 
 うん、殺すには十分すぎる理由だ。

「俺達も行こうか?」

 結が言うけど茉奈とここに残るように伝えた。
 年下のガキ相手に結が動くなんてみっともない真似させられないし、絶対に結を巻き込むなと天音から言われている。
 海翔も優奈が抑えているらしい。
 
「俺達は行こうか?さすがに彼女だけ行かせたりしたらシャレにならない」
「そうだな」

 朔と正行はついてきた。
 って事は、今は優奈だけで暴れているのか。
 少し不安だったけど、その心配はいらなかったみたいだ。

「あ、茉莉。ごめん、想像以上に雑魚だった」

 そう言って立っていたのは1年生の山本恭一と中島光一。
 二人だけで相手をしていたらしい。
 随分倒れてる人間がいるけど、その程度の馬鹿しかもう残っていないのか?

「お前ら随分やってくれたじゃねーか?」

 なんか大柄の男を先頭に追加オーダーが入ったようだ。
 せっかく来たのに何もしなかったなんてマヌケな報告結に出来ない。

「今年のガキはFGの事すら知らないのか?」

 男はそれを言うためにここまで来たのか?
 FGを見たら殺せ。
 それが絶対のルール。 
 そのくらいは多分恭一達も知ってるだろう。
 だから恭一は挑発した。

「ああ、SHとリベリオンとやらの餌でしかないそうだな」

 まあ、餌にもならないレベルになってるみたいだけど。

「あまり調子に乗ってると殺すぞ?」
「後からきて偉そうに吠えてんじゃねえ!クソガキ!」

 どう見ても菫より年上だけど菫はそう言って男を殴り飛ばした。
 やっぱりただの餌だ。
 そんな事はどうでもいいけど私は菫に文句を言う。

「お前勝手に始めるなんてふざけんな!」
「お前、ここで暴れたら朔に嫌われるぞ?」
「お前だって正行いるだろうが!?」
「正行が他に好きな女子が出来たって言ったらその場で埋めてやるからいい!」

 まあ、私もきっと朔が埋められるだけだろう。
 同じじゃないか。
 そんな事言ってると私はさらに出遅れる。

「菫が始めたからもう何でもありだよね?私も混ざろ」
「うーん、海翔大人しくしててくれるかな?」
「いいよ、遊んでおいで。でも天音が言ってた。女の子は顔に傷を入れたらいけないって」
「少々傷入っても海翔が私の事好きでいてくれるなら大丈夫だよ」
「そうなんだ。気を付けてね」

 殺したらダメだよ?
 それが彼女に言うセリフなんだろうか?
 あまりにも不利な状況にならない限り正行も朔も動くつもりなかったようだ。
 退屈な恋人の憂さ晴らしをさせてるつもりなんだろう。
 当然騒ぎと聞きつけて桜子達が駆けつける。

「茉莉!年下相手に何をやってるの!?」
「ふざけんな桜子!こいつらの方が上級生じゃないか!」
「あなた女子でしょ!?」
「関係ねーだろ!そういう時だけ女子だからとか卑怯だと天音が言ってたぞ!」

 遊郭とか珍しい言葉を漫画で使っただけで炎上する世界だってあるんだぞ。
 桜子と私達がやり合ってる間に瞳子が恭一達と話をしてる。

「桜子先生。どうも彼らが先にお菓子をよこせと言ったのが始まりみたいです」

 瞳子が桜子に説明している。
 それを恭一達が始末して上級生に援軍を求めたらしい。
 本当に雑魚に成り下がったな。
 それでも希美と優奈達と私がやりすぎたみたいだ。
 骨の一本折れたくらいでぎゃあぎゃあいうなら端から喧嘩売ってくるな。
 私達は学校に戻った後帰る事を許されなかった。
 
「お前は娘の事くらい自分で処理しろ!」

 桜子達の電話番号を着信拒否していた天音や水奈が親に怒られたらしい。

「桜子、手短に済ませろ。私は愛莉に怒られて非常に機嫌が悪い」
「天音と同感だ。私も母さんに叱られて非常に機嫌が悪い」
「……天音のせいで私のところにも愛莉から電話来たんだけど?」

 桜子に言われた挙句愛莉からも文句を言われて翼も機嫌が悪いらしい。
 しかも水奈は学にもチクられて今夜は説教確定らしい。
 そのクソガキを殺したくらいじゃ割に合わない。
 しかしこれ以上問題増やすと愛莉の寿命が縮む。
 だから土下座で勘弁してやるからさっさとそのガキ共連れて来い。
 桜子に反論を許さない剣幕だった。

「さすがに天音が動いたら行方不明者が増える。俺の手下にやらせるよ」

 喜一がそう言っていた。
 喜一はあまりにもしょうもない組織に成り下がって嫌気がさしたFGの残党を統率してるらしい。

「結局そういうしょうもないことに巻き込まれる運命なんだろうな」

 喜一はそう言って笑ていた。
 絶対にSHの人間には手を出すな。
 喜一でも庇いきれないと言っているらしい。
 桜子が困っていると瞳子がアドバイスしてた。

「元は私のクラスの児童が引き金だから、私がこの件預かっていいですか?」
「何か手があるの?」
「ええ、初めてだから自信は無いけど」
「瞳子がそう言ってるなら任せてみてもいいんじゃない?」

 瞳美もそう言うから桜子はそうすることにしたらしい。
 今日はひとまず帰っていいと瞳子が言うので私達は帰った。

「しかし茉莉と菫だけでやったのか?」
「優奈と愛菜も一緒だったよ」

 女子4人の犯行とは思えない惨状だったけど。
 数的不利をいとも簡単に覆すのが天音から引き継いだ能力「ライド・ギグ」
 この能力がない限りSHが乱闘で負ける事は絶対にないそうだ。
 腑抜けの集団になったFGが動き出した。
 多分リベリオンも何かを準備しているのだろう。
 SHのグルチャではそんな話があったけど空は全く気にも止めてなかった。

「小学生が騒いだだけだろ?一々介入する必要あるの?」
「でも結達だっているんだよ?」
「結を怒らせたらどうなるかは茉莉達が分かってるよ」

 だから絶対に結が出てこないといけないような状態にしない。
 もう賽は投げられた。
 後は見守るだけ。

(2)

 私は呼び鈴を押す。
 すると女優の山本環奈さんが出て来た。

「家庭訪問は学校での子供の生活を知る機会。ちゃんとスケジュールくらい空けなさい」

 恵美さんがそう言って無理矢理白紙にしたらしい。

「二人の様子はどうかな?」
 
 リビングに案内されるとお茶を頂きながら環奈さんの質問を聞いてた。
 
「二人はとてもいい子だと思います」

 実際私も喜一の子供だから手こずると思ったけどそんな事無かった。
 暴れる子供達を仕切っておとなしくさせている。
 そんな中に現れたFGの子供が遠足でしでかしただけ。
 度量といい身体能力といい、学力もある。
 それは喜一が夜教えているんだそうだ。

「あんまり派手にやって片桐家を敵に回すなとは言ってるんだけどな」

 喜一も今日は家にいたらしい。
 多分この世界で一番危険な存在は片桐家。
 普段は彼女に頭の上がらない男子。
 母親を困らせるくらい暴れる女子。 
 成長すると父親を寝取ろうと努力を初めて母親を悩ませる。
 冬吾さんは家にいる間はのんびり冬夜さんと話をしている。
 冬夜さんがのんびりしている分空さんが苦労してるらしい。

「冬夜さんはあと10年くらいは働けるのでは?」

 美希が文句を言ったらしい。

「そんなギリギリまで仕事しないと空は自分で何もできないのかい?」

 そう言って空を困らせているらしい。

「あまり子供に厳しすぎるのもダメですよ」

 愛莉さんがそう言っていた。

「僕もそろそろ縁側で酒井君達と囲碁でもしようかと思ったんだけど」
「冬夜さんに勝てるわけじゃないじゃないですか」
「愛莉とだったらずっとやれるね」
「……えへへ~」

 本当に仲のいい夫婦だった。
 私もそうなれたらいいな。
 話を戻して遠足の問題について話した。
 今日はそのつもりで来たのだから。

「やっぱり叱った方がいいかな」
「そうは思いません」
「え?」

 環奈さんは驚いたようだ。
 喜一も聞き入っていた。
 恭一君も珠希ちゃんも人望も厚いし統率力もある。
 きっと喜一に似たんだろう。
 そして自分の仲間が困っているから介入した。
 それだけど考えたらSHの対応と変わらない。

「……ってことは別に問題があるってことか?」

 喜一が聞くと私が頷いた。
 あの事件でまたSHとFGの抗争が始まるかもしれない。
 そうしたら恭一君達はいい。
 だけど恭一君の目の届かないところで事件が起きたらどうする?
 きっとSHは復讐をするだろう。
 だけど被害者が出た事には変わりない。

「じゃあ、どうするべきだったの?」
「まずは忠告、警告で済ますべきだたと思うんです」
 
 そんな生温い対応じゃ手遅れになると天音は考えていそうだけど、私は違う考えを持っていた。
 茉莉や希美が介入した時点で抗争は避けられない。
 だから違う手を取ってもよかったんじゃないのか?

「例えば海翔君の力で威嚇したら相手も怯えるでしょう」

 冬夜さんが言っていた。
 傷をつけるなら肉体にではなくて心にしっかり刻み込め。 
 一度恐怖心を植え付けたら簡単には手を出さない。
 やられたらやり返すというのは相手の戦意を挫くけど、同時に相手の戦意を高揚させる可能性もある。
 SHに手を出せば身の安全は保障しない。
 そんな相手にプレッシャーをかけるべきだろう。
 海翔と結という切り札がある。
 それを覆すカードを相手は持っていない。
 だったら最初から見せつけて怖気付かせればいい。
 あという事があるとしたら。

「そんな馬鹿は放っておいても勝手に消える」

 冬夜さんはそう言っていた。

「心理的恐怖か。確かに半端に傷を入れるだけじゃ意味が無いな」
 
 そのリベンジを企む馬鹿が今のFGだから。

「ええ、学校でどんな問題が起きようときっと恵美さん達がすぐにもみ消すから」

 だから徹底的に恐怖を植え付ける。
 やるんだったら最初から一気に畳みかける。
 今のSHの勢力ならそれは可能だろ? 
 冬夜さんはそう言っていた。

「教師のいう事じゃないと思うのですが、言い方を変えるとあまり暴力事件を起こさないで欲しいという事だから」
「さすが冬吾の妻だけあるな」
 
 喜一はそう言って笑った。

「いつ式するの?」

 環奈さんが聞いてきた。

「6月に恵美さんに式場押さえてもらいました」

 そのうち招待状を送るから。
 
「勉強や運動能力はさっきも言ったけど優秀です」

 その優秀な能力を使ってクラスの皆をまとめて欲しい。
 そう言って家を出て次に向かった。
 訪問する家を回ると学校で残務にあたりながら桜子先輩に報告する。

「なるほどね……。しかし希美や茉莉がただ脅迫なんて絶対しないよ」

 面倒だから殺してしまえ。
 それは私も愛莉さんが頭を抱えてるのを知っていた。

「桜子先輩はどうだったんですか?」

 私が聞くと桜子先生は落ち込んでいた。
 天音はゲームの音で気が付かない。
 水奈と優奈達はよりによって子供達と外に逃亡した。
 どちらも愛莉さん達に連絡して大騒ぎになったけど。

「何度も言うが娘の事くらいちゃんと真面目に考えろ」
「大丈夫だって!こいつらも拳銃もてば立派なヒットマンだ!」
「お前は娘に何をさせるつもりなんだ!」

 相変わらず桐谷家では大騒動だったそうだ。
 茉奈と優翔はちゃんと親に伝えたらしいけど……

「ま、待て!私は優翔達から家庭訪問の話なんて聞いてないぞ!」
「母さんにプリント渡したよ?」
「あんな紙屑、シュレッダーに入れるだろ!」

 エコだと騒いでる割には紙屑ばかり持ってきやがって。
 この親にしてこの子あり。
 よく言ったもんだ。

「あと3年ですから」
「その後にまだ片桐家の子供が出てくるでしょ」
「え?」
「気づかないと思った?瞳子妊活してるでしょ」

 愛莉さんから桜子先輩に相談されたらしい。
 私の体の不調があったら気にかけてやって欲しい。
 それは同じ女性の桜子先輩だから出来るはず。

「瞳子の策も聞いた。まあ、冬吾ならそのくらいしないとダメだよね」

 そう言って桜子先輩が笑っていた。

「どうしてそんなに急いで子供作るんですか?」

 渡辺正俊先生が聞いてた。

「やっぱり愛してる人の子供をちゃんと作りたいよ」
「どうしてですか?」
「だってそれが旦那との愛の結晶なんだから」

 渡辺先生にはぴんとこないらしい。
 だけどすでに子供がいる。
 冬夜さんが言うには「最後の世代」
 どんな未来が待っているのだろう。
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