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ラストハンター
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(1)
「なんだお前ら?」
高校生を囲んで恐喝している馬鹿どもが僕達を見て追い払おうとする。
手首を見たらこいつらで間違いないらしい。
「天音、いいよ」
「わかった」
天音はそう言って馬鹿の一人を思いっきり殴り飛ばした。
「何の真似だ!?俺達は……」
「黒いゴキブリだろ?」
そう言うと水奈や善明と大地も加わった。
その間に絡まれていた高校生に翼が説明している。
「ごめんね。どうしても遠方だと後回しになるんだよね」
「あ、あなた方は?」
「セイクリッドハートって言ったら分かる?」
「え?」
高校生たちが驚いているけどあんまりこんな事に時間を割きたくない。
ラストオーダーの時間に間に合わなかったら最悪だ。
翼は高校生達に礼はいらないからさっさと行くように伝える。
高校生たちが立ち去った。
「天音。もういいよ」
翼が天音達に声をかける。
この後印籠を出してめでたしめでたし……なわけがない。
天音達は印籠の代わりに拳銃を取り出していた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「そう言って待つと思ったか?この間抜け」
天音がそう言うと4人は躊躇うことなく引き金を引く。
それが終わると僕が後始末をする。
菫達も来たいと言っていたけどまだ3学期が終わっていないし受験勉強もある。
「お土産に買ってくるから」
「産地で食べないと意味が無いって言ってたの翼だよ!」
「どうしても食べたかったら卒業旅行にでも行けばいいじゃない」
卒業旅行に仙台ってどうなんだと思いながら聞いていたけど。
そう、僕達は仙台に来ていた。
理由は害虫駆除。
それだけの理由でわざわざ僕達が出向く必要はない。
ただ場所が仙台だったから来る気になっただけ。
「店は予約してるし、この近くです。急ぎましょう」
大地がそう言って案内する。
「やったぜ。牛タン。セリ鍋。喜多方ラーメン♪」
「天音、まさか今夜それ全部食うつもりか?」
水奈が聞いていた。
「当たり前だろ!でなきゃなんでこんな寒い所に来るか!?」
その前に運動もしたから大丈夫だ!
大地も肉ばかりでなくてセリくらい食え!
盛り上がっているのは天音と翼だった。
仙台にSHが出来たと喜一が言っていた。
だから絶対狙ってくることは分かっていた。
恵美さんに頼んで始末するのも考えたけど天音が行くと言い出した。
「恵美さんの手を煩わせるまでもない。私が直々にぶっ殺してやる!」
「天音の狙いはゴキブリじゃなくて牛タンでしょ?」
「それが何か問題あるのか?翼」
「無いよ。だから私達も行く」
いつもなら王の手を下すまでもないと言い出す仲間だったけど今回はそうはいかない。
「だから僕は旅行に行くだけ。手を出すつもりはないから」
見学だけしておくよと言った。
有休もそれなりに残している。
だけどパパに伝えに行った時パパは悩んでいた。
何か問題があるのだろうか?
母さんが腕を振り上げている。
「いやさ、鮮度が関係ない喜多方ラーメンかやっぱり冷凍でも牛タンがいいのかどっちなんだろうと思ってね」
ぽかっ
「冬夜さんの頭の中には食べ物の事しかないんですか!?」
「……ちゃんと愛莉の事も考えてるから大丈夫だよ」
「絶対さっき考えてなかったでしょ!?」
「そ、そんな事無いって」
「愛莉もそうなんだ」
美希が父さん達のやりとりをみて言った。
「空が何かしたの?」
母さんが聞くと美希は僕を見た。
それはクリスマスの夜の事だった。
ちゃんとデザートにケーキを食べたけど何か物足りない。
そう思った結達と僕は夜こっそり買っておいたカップラーメンにお湯を注いでいた。
煮るラーメンだと器を洗っている時に気づかれるから。
だけど美希がふと気づいたらベッドに僕がいない。
どこに行ったのだろうと美希がリビングに来て電気をつけていると暗闇の中こっそりとカップラーメンを食べている僕達だった。
美希に怒られた。
「夜中にコソコソ何をしているんですか!?」
「いや、なんか後ろめたくてさ。美希は食べないだろ?」
と、言う風な感じに。
「ああ、確かにやっぱりケーキじゃ物足りないよね」
父さんも雪が大きくなったら真似しようと思ったらしい。
それを母さんの前で話して大ゲンカになった。
で、結局どっちも買っていけばいいやってなった。
母さんは悩んでいたけど。
瞳子と相談していたらしい。
で、お店に着くと全部のメニューを注文する天音と翼。
もちろん分けて食べるなんて真似はしない。
翼は僕の分も頼んでくれた。
善明や大地は酒を飲んでいる。
「しかしゴキブリでも役に立つことあるんだな」
天音が浮かれていた。
昔、悪を懲らしめるために全国を旅する時代劇があった。
大砲を背中に食らっても包帯巻く程度で済む超人がいる時代劇。
結もRPGくらい食らっても大丈夫なのかと考えた。
「片桐家の人間にそんな危ない真似させられない!」
恵美さんがそう言って止めていた。
「そんなのゴキブリ使って実験すりゃいいじゃねーか。恵美、RPG貸してくれ」
茉莉がそう言いだすと天音と恵美さんが全力で説得していた。
あの2人を困らせるってやっぱり茉莉と菫はある意味強いな。
で、ゴキブリ狩りのついでにご当地グルメを楽しめばいい。
天音はそう考えたそうだ。
水奈も地酒を飲み比べするという楽しみがあったそうだ。
ただ、水奈が家を出ると優奈達が問題になる。
だけど優奈達は学に言った。
「私達だって中学生だよ?自炊くらいするって」
そう言って水奈を送り出したらしい。
実際には茉奈が家事をしていたらしい。
それだけならまだいい。
「学のいない間ならバレないよね!」
「神奈なら許してくれるよ!」
そう言って冷蔵庫に入れてあるビールを飲みだしたらしい。
若いから加減を知らない。
数時間で全部飲んでしまった。
当然酔っている二人を見て学は声を失ったらしい。
しかし神奈さんはともかく亜依さんも「そのくらい許してやりな」と言うし誠さんや瑛大さんで止められるわけがない。
それから冷蔵庫にストックしておくのを止めたそうだ。
「言っとくけど多分今回だけだと思うよ」
「どういうことだよ?翼」
天音が聞くと翼は説明した。
理由はさっきの母さんの件。
僕達が遠征するのはゴキブリは二の次で本命は食べ物に間違いない。
育児を放棄して食べ歩きなんてさせない。
次からは恵美さんに対応してくれるように母さんが頼んだらしい。
「愛莉の野郎……ふざけやがって」
天音が怒っている。
だけど不思議だった。
「天音なら大地と旅行に行けばいいんじゃないのか?」
僕が天音に聞くと天音が答えた。
「私の旦那が空ならそうするよ!」
だけど天音の旦那は大地だ。
だからご当地料理を食べようにもいくつも問題がある。
「僕は魚が嫌いだからいいよ」
「子供の前で好き嫌いするのやめろっていつも言ってるだろ!」
子供が真似したらどうする?
もちろんそんな事は絶対ない。
結莉達は出された料理は何でも食べる。
辛口だろうと甘口だろうと関係ない。
天音が「あいつら味分かってるんだろうか?」と不安になる勢いで食べるらしい。
だけど天音は大地がいる。
子供達と一緒に食べているだけならいいけど大地は食べずに酒だけ飲んでいた。
一応イカと冷奴と枝豆くらいは食べるそうだ。
「枝豆は良くてキャベツがダメってお前の味覚の基準は私にはわからないぞ!」
「そ、それが僕にもわからないんだよね」
で、そんな大地を放って食べる事に没頭できる妻じゃないようだ。
遠慮してしまうらしい。
「天音の夫が大地でよかった」
母さんはそう言っていた。
「片桐家最大のチートだ」
神奈さん達はそう言っている。
「正志は他人事みたいに言ってるんじゃねーぞ!」
美嘉さんはそう言って渡辺さんを叱っていた。
女の子はともかく男の子はみんな渡辺さんの様な体形になるらしい。
「今日やけにお金使ってるみたいだけどどうしたの?」
「ああ、今日新作のハンバーガーがでたみたいだから試してみたくて食べた」
「いい加減にして!夕食どうするの!?」
「ちゃんと食べるから心配しなくていいよ」
「そういう問題じゃなくてさ……」
「パパだけずるい!私達も食べたい!」
「じゃ、日曜にでも皆で食べに行こうか?」
「やったー!」
夏希もどうしたらいいか分からなくて茜達に聞いたらしい。
しかし茜達に分かるはずがない。
いくら食べても体形を維持する片桐家の人間だから。
「まあ、仙台でよかったな」
秋田なんて鍋くらいしか知らねーぞと天音が言っていた。
「秋田にでもご当地ラーメンがあるんだよ」
「冬夜さんはいい加減にしてください!」
そんな事を父さん達が言っていたな。
「ま、残ってる奴らも勝手にいなくなるでしょ」
善明の言う通りだと思う。
あとはDOLLと呼ばれる連中の始末。
能力者の集団らしい。
さすがに僕達だけでは手こずるかなと思っていたら父さんが妙な事を言っていた。
「DOLLって連中は空達が手を出さなくてもいい」
「どうして?」
「もうすでに行動を始めているらしいから」
そんな風に言っていた。
僕も翼もたどり着く解答は一つ。
「まさか結が?」
「……結は大丈夫なのか?」
水奈が聞いていた。
「どういう意味で?」
翼はにやりと笑って水奈に聞き返した。
「そうだな。茉奈はあいつの事が気になってるのは確かなんだ。だから結の身に何かあったら茉奈が悲しむだろ?」
実の娘だしな。と、水奈が言った。
「まだあるのか?」
天音が聞くと水奈が答える。
「あいつ、ちゃんと茉奈の気持ちわかってやれるのだろうか?」
「それなら問題ないってこの前パパが言ってたから」
「そうか、私と水奈も親戚になるかもしれないのか」
「海翔と優奈がそうしてるだろ?」
天音が「それもそうだな」と笑っていた。
そして僕達がそんなのんきに狩猟している間も結達は行動を始めていた。
(2)
「おい、背後ががら空きだぞ?」
どこかの廃墟にDOLLの一人シスを呼び出した。
「お前みたいな小娘一人にやられたというわけか」
そう言って茉奈に銃口を向けるシスに後ろから声をかけた。
いつの間に?とも言いたげな様子で振り替えるシス。
しかし茉奈には「絶対に動くな」と言っている。
茉奈の手に負える相手じゃない。
だから本当は茉奈を連れてきたくない。
だけど「茉奈と一緒に行動する」という条件で茉奈にアドバイスを受けた。
まあ、相手がどんな能力を持っていようと茉奈を守り切る自信はあった。
”ダイブ”は使えないのでスマホを利用してDOLLを呼び出すと言う手段に出た。
シスは俺を見るとにやりと笑った。
「お前が本命か?しかしお前こそ油断しすぎじゃないのか?」
そう言うと同時にシスはその場から消えた。
気づいた時には茉奈のこめかみに銃口をあてるシスと俺を羽交い絞めにする影の人形がいた。
「これで終わりだ。どっちから先に死にたい?」
すでに勝ち誇っている様子のシス。
しかし、悲鳴すら上げない茉奈に違和感を覚えたのだろうか?
平然としている茉奈。
困惑しているシスに俺が聞く。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「お前の能力は影の人形で間違いないか?」
「そうだ。だが、それがどうした?」
ならもう用は無い。
さっさと片付ける事にした。
まずはステイシスで影の人形を消す。
それと同時にシスの位置と俺の位置を交換する。
その後に茉奈は俺の後ろに回る。
「それがお前の力か?」
「答える義理は無いね」
お前の能力は把握した。
だからお前は自分がどういう状況にいるか気づいていない。
お前の能力は影が無いと意味が無い。
だから影の上にいる。
それがお前の敗因だ。
奴は自分の武器としていた影の中に飲み込まれていく。
俺は能力者同士の戦いなら絶対に負けない自信があった。
だって俺の能力は常に進化し続けているから。
その為に相手にわざと先手を取らせていた。
どんな能力を使っていたとしても絶対防ぐ自信があった。
「あと2人だね」
「いや、あと1人だよ」
「え?この前の結の情報だと……」
「最後の一人は王の手に委ねるべきじゃないか?」
「なるほどね」
で、この後どうやって帰るの?
ここから歩いて帰るのか?
「そんなの面倒だろ?」
「結は私と歩いて話しながら帰るのは面倒なのか?」
「……そんなの今じゃなくていいだろ?」
早く帰らないと夕飯に間に合わない。
「私と一緒にいる時間よりも夕食の時間の方が大事なんだ?」
茉奈が拗ねる。
こうなると茉奈に従っておいた方が良い。
母さんに電話して少し遅くなると伝える。
「あまり夜遊びしたらダメですよ」
まだお泊りは早いと注意された。
そんなつもりなかったけど。
「バスがある筈だからバスで帰ろう」
「うん、でもいつか結と夜の町で遊びたいな」
「それって夜である必要あるのか?」
そう言うと茉菜はなぜかため息を吐いていた。
(3)
「お前が最後のDOLLだな?」
俺が聞くと背の高い女性はにやりと笑った。
「あなたの様なお子様に手こずっていたわけね」
そう言ってポケットから煙草とライターを出すとタバコに火をつけている。
「随分余裕だな。そうやって余裕を見せた馬鹿を片っ端から片付けたんだが」
「余裕?どうやら相手の能力を見ないと把握できないみたいね」
そうやって相手に能力を発動させる俺こそ私を侮ってないか?
そう言って最後のDOLLシータは手のひらをこっちに向けた。
炎が現れる。
ただの発火能力者?
……そんなわけがなかった。
炎はいくつも出来上がり人の形をかたどっていく。
それだけではないとすぐに判断した。
茉菜に目掛けて突進してくる炎の人形。
「結!」
「動くなよ!」
と同時に俺も能力を使った。
茉奈の身の安全が第一。
だけど相手の攻撃手段を確認しておきたい。
茉奈を捕まえようとするとその手を俺がつかみ取る。
火傷するなんて事は無い。
捕まえた人形を消滅させる。
するとぎりぎりの距離らしいところまで接近すると爆発した。
爆風は俺の最強の矛盾で防ぎきる。
「それがお前の奥の手か?」
俺はシータに聞くとシータは笑っていた。
「どうかしらね」
シータがそう言ったと同時に無数の人形が俺達を取り囲む。
「これも防ぎきれるかしら?」
防ぐ必要はない。
本当にネタ切れの様だ。
一度に全部の人形を爆発させるつもりだろう。
防げない事は無いけどその必要はない。
相手の能力を確かめたらあとはいつも通りステイシスを展開する。
炎の人形は消滅した。
動揺するシータに向けて炎の人形を作り出す。
「お前の能力にふさわしい殺し方をしてやる」
俺の人形がゆっくりシータに近づいていく。
抵抗したいならすると良い。
炎の人形がシータに抱き着く距離まで近づくとシータは自らを炎の人形に変える。
炎には炎を。
そんな対抗手段だろう。
だけど残念なのは俺がただの炎を作り出したと勘違いしている。
俺の炎はすべてが無になるまで焼き尽くす。
炎とて例外じゃない。
女性のこの世の物とは思えない悲鳴が聞こえてくる。
隣にいた茉奈は耐えきれなくて耳を塞いでいた。
「お前の今の状態がDOLLの存在だ」
どんな能力を持っていようと俺は片っ端から食らいつくし養分にする。
お前らは俺を強くするための餌にしか過ぎない。
もう多分意識すら食われたシータに最後の言葉を告げた。
「さよなら」
そう言った時にはすでに何も残っていなかった。
「次でラストだな」
「そうだな」
大体どういう能力の持ち主かわかっているからさっさと片付けようと茉奈に言った。
「なんで分かるの?」
茉奈が質問すると俺は説明した。
「人形師は7体の人形を作った人間だから」
茉奈は意外と勘が良い。
だからすぐに理解した。
「人形の”マイスター”って事だな?」
「まあ、多分そう思う」
俺の役割はそいつをしとめる事。
後は空が適当に処理してくれるだろう。
長い間続いたFGの最後がようやく訪れようとしてた。
「なんだお前ら?」
高校生を囲んで恐喝している馬鹿どもが僕達を見て追い払おうとする。
手首を見たらこいつらで間違いないらしい。
「天音、いいよ」
「わかった」
天音はそう言って馬鹿の一人を思いっきり殴り飛ばした。
「何の真似だ!?俺達は……」
「黒いゴキブリだろ?」
そう言うと水奈や善明と大地も加わった。
その間に絡まれていた高校生に翼が説明している。
「ごめんね。どうしても遠方だと後回しになるんだよね」
「あ、あなた方は?」
「セイクリッドハートって言ったら分かる?」
「え?」
高校生たちが驚いているけどあんまりこんな事に時間を割きたくない。
ラストオーダーの時間に間に合わなかったら最悪だ。
翼は高校生達に礼はいらないからさっさと行くように伝える。
高校生たちが立ち去った。
「天音。もういいよ」
翼が天音達に声をかける。
この後印籠を出してめでたしめでたし……なわけがない。
天音達は印籠の代わりに拳銃を取り出していた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「そう言って待つと思ったか?この間抜け」
天音がそう言うと4人は躊躇うことなく引き金を引く。
それが終わると僕が後始末をする。
菫達も来たいと言っていたけどまだ3学期が終わっていないし受験勉強もある。
「お土産に買ってくるから」
「産地で食べないと意味が無いって言ってたの翼だよ!」
「どうしても食べたかったら卒業旅行にでも行けばいいじゃない」
卒業旅行に仙台ってどうなんだと思いながら聞いていたけど。
そう、僕達は仙台に来ていた。
理由は害虫駆除。
それだけの理由でわざわざ僕達が出向く必要はない。
ただ場所が仙台だったから来る気になっただけ。
「店は予約してるし、この近くです。急ぎましょう」
大地がそう言って案内する。
「やったぜ。牛タン。セリ鍋。喜多方ラーメン♪」
「天音、まさか今夜それ全部食うつもりか?」
水奈が聞いていた。
「当たり前だろ!でなきゃなんでこんな寒い所に来るか!?」
その前に運動もしたから大丈夫だ!
大地も肉ばかりでなくてセリくらい食え!
盛り上がっているのは天音と翼だった。
仙台にSHが出来たと喜一が言っていた。
だから絶対狙ってくることは分かっていた。
恵美さんに頼んで始末するのも考えたけど天音が行くと言い出した。
「恵美さんの手を煩わせるまでもない。私が直々にぶっ殺してやる!」
「天音の狙いはゴキブリじゃなくて牛タンでしょ?」
「それが何か問題あるのか?翼」
「無いよ。だから私達も行く」
いつもなら王の手を下すまでもないと言い出す仲間だったけど今回はそうはいかない。
「だから僕は旅行に行くだけ。手を出すつもりはないから」
見学だけしておくよと言った。
有休もそれなりに残している。
だけどパパに伝えに行った時パパは悩んでいた。
何か問題があるのだろうか?
母さんが腕を振り上げている。
「いやさ、鮮度が関係ない喜多方ラーメンかやっぱり冷凍でも牛タンがいいのかどっちなんだろうと思ってね」
ぽかっ
「冬夜さんの頭の中には食べ物の事しかないんですか!?」
「……ちゃんと愛莉の事も考えてるから大丈夫だよ」
「絶対さっき考えてなかったでしょ!?」
「そ、そんな事無いって」
「愛莉もそうなんだ」
美希が父さん達のやりとりをみて言った。
「空が何かしたの?」
母さんが聞くと美希は僕を見た。
それはクリスマスの夜の事だった。
ちゃんとデザートにケーキを食べたけど何か物足りない。
そう思った結達と僕は夜こっそり買っておいたカップラーメンにお湯を注いでいた。
煮るラーメンだと器を洗っている時に気づかれるから。
だけど美希がふと気づいたらベッドに僕がいない。
どこに行ったのだろうと美希がリビングに来て電気をつけていると暗闇の中こっそりとカップラーメンを食べている僕達だった。
美希に怒られた。
「夜中にコソコソ何をしているんですか!?」
「いや、なんか後ろめたくてさ。美希は食べないだろ?」
と、言う風な感じに。
「ああ、確かにやっぱりケーキじゃ物足りないよね」
父さんも雪が大きくなったら真似しようと思ったらしい。
それを母さんの前で話して大ゲンカになった。
で、結局どっちも買っていけばいいやってなった。
母さんは悩んでいたけど。
瞳子と相談していたらしい。
で、お店に着くと全部のメニューを注文する天音と翼。
もちろん分けて食べるなんて真似はしない。
翼は僕の分も頼んでくれた。
善明や大地は酒を飲んでいる。
「しかしゴキブリでも役に立つことあるんだな」
天音が浮かれていた。
昔、悪を懲らしめるために全国を旅する時代劇があった。
大砲を背中に食らっても包帯巻く程度で済む超人がいる時代劇。
結もRPGくらい食らっても大丈夫なのかと考えた。
「片桐家の人間にそんな危ない真似させられない!」
恵美さんがそう言って止めていた。
「そんなのゴキブリ使って実験すりゃいいじゃねーか。恵美、RPG貸してくれ」
茉莉がそう言いだすと天音と恵美さんが全力で説得していた。
あの2人を困らせるってやっぱり茉莉と菫はある意味強いな。
で、ゴキブリ狩りのついでにご当地グルメを楽しめばいい。
天音はそう考えたそうだ。
水奈も地酒を飲み比べするという楽しみがあったそうだ。
ただ、水奈が家を出ると優奈達が問題になる。
だけど優奈達は学に言った。
「私達だって中学生だよ?自炊くらいするって」
そう言って水奈を送り出したらしい。
実際には茉奈が家事をしていたらしい。
それだけならまだいい。
「学のいない間ならバレないよね!」
「神奈なら許してくれるよ!」
そう言って冷蔵庫に入れてあるビールを飲みだしたらしい。
若いから加減を知らない。
数時間で全部飲んでしまった。
当然酔っている二人を見て学は声を失ったらしい。
しかし神奈さんはともかく亜依さんも「そのくらい許してやりな」と言うし誠さんや瑛大さんで止められるわけがない。
それから冷蔵庫にストックしておくのを止めたそうだ。
「言っとくけど多分今回だけだと思うよ」
「どういうことだよ?翼」
天音が聞くと翼は説明した。
理由はさっきの母さんの件。
僕達が遠征するのはゴキブリは二の次で本命は食べ物に間違いない。
育児を放棄して食べ歩きなんてさせない。
次からは恵美さんに対応してくれるように母さんが頼んだらしい。
「愛莉の野郎……ふざけやがって」
天音が怒っている。
だけど不思議だった。
「天音なら大地と旅行に行けばいいんじゃないのか?」
僕が天音に聞くと天音が答えた。
「私の旦那が空ならそうするよ!」
だけど天音の旦那は大地だ。
だからご当地料理を食べようにもいくつも問題がある。
「僕は魚が嫌いだからいいよ」
「子供の前で好き嫌いするのやめろっていつも言ってるだろ!」
子供が真似したらどうする?
もちろんそんな事は絶対ない。
結莉達は出された料理は何でも食べる。
辛口だろうと甘口だろうと関係ない。
天音が「あいつら味分かってるんだろうか?」と不安になる勢いで食べるらしい。
だけど天音は大地がいる。
子供達と一緒に食べているだけならいいけど大地は食べずに酒だけ飲んでいた。
一応イカと冷奴と枝豆くらいは食べるそうだ。
「枝豆は良くてキャベツがダメってお前の味覚の基準は私にはわからないぞ!」
「そ、それが僕にもわからないんだよね」
で、そんな大地を放って食べる事に没頭できる妻じゃないようだ。
遠慮してしまうらしい。
「天音の夫が大地でよかった」
母さんはそう言っていた。
「片桐家最大のチートだ」
神奈さん達はそう言っている。
「正志は他人事みたいに言ってるんじゃねーぞ!」
美嘉さんはそう言って渡辺さんを叱っていた。
女の子はともかく男の子はみんな渡辺さんの様な体形になるらしい。
「今日やけにお金使ってるみたいだけどどうしたの?」
「ああ、今日新作のハンバーガーがでたみたいだから試してみたくて食べた」
「いい加減にして!夕食どうするの!?」
「ちゃんと食べるから心配しなくていいよ」
「そういう問題じゃなくてさ……」
「パパだけずるい!私達も食べたい!」
「じゃ、日曜にでも皆で食べに行こうか?」
「やったー!」
夏希もどうしたらいいか分からなくて茜達に聞いたらしい。
しかし茜達に分かるはずがない。
いくら食べても体形を維持する片桐家の人間だから。
「まあ、仙台でよかったな」
秋田なんて鍋くらいしか知らねーぞと天音が言っていた。
「秋田にでもご当地ラーメンがあるんだよ」
「冬夜さんはいい加減にしてください!」
そんな事を父さん達が言っていたな。
「ま、残ってる奴らも勝手にいなくなるでしょ」
善明の言う通りだと思う。
あとはDOLLと呼ばれる連中の始末。
能力者の集団らしい。
さすがに僕達だけでは手こずるかなと思っていたら父さんが妙な事を言っていた。
「DOLLって連中は空達が手を出さなくてもいい」
「どうして?」
「もうすでに行動を始めているらしいから」
そんな風に言っていた。
僕も翼もたどり着く解答は一つ。
「まさか結が?」
「……結は大丈夫なのか?」
水奈が聞いていた。
「どういう意味で?」
翼はにやりと笑って水奈に聞き返した。
「そうだな。茉奈はあいつの事が気になってるのは確かなんだ。だから結の身に何かあったら茉奈が悲しむだろ?」
実の娘だしな。と、水奈が言った。
「まだあるのか?」
天音が聞くと水奈が答える。
「あいつ、ちゃんと茉奈の気持ちわかってやれるのだろうか?」
「それなら問題ないってこの前パパが言ってたから」
「そうか、私と水奈も親戚になるかもしれないのか」
「海翔と優奈がそうしてるだろ?」
天音が「それもそうだな」と笑っていた。
そして僕達がそんなのんきに狩猟している間も結達は行動を始めていた。
(2)
「おい、背後ががら空きだぞ?」
どこかの廃墟にDOLLの一人シスを呼び出した。
「お前みたいな小娘一人にやられたというわけか」
そう言って茉奈に銃口を向けるシスに後ろから声をかけた。
いつの間に?とも言いたげな様子で振り替えるシス。
しかし茉奈には「絶対に動くな」と言っている。
茉奈の手に負える相手じゃない。
だから本当は茉奈を連れてきたくない。
だけど「茉奈と一緒に行動する」という条件で茉奈にアドバイスを受けた。
まあ、相手がどんな能力を持っていようと茉奈を守り切る自信はあった。
”ダイブ”は使えないのでスマホを利用してDOLLを呼び出すと言う手段に出た。
シスは俺を見るとにやりと笑った。
「お前が本命か?しかしお前こそ油断しすぎじゃないのか?」
そう言うと同時にシスはその場から消えた。
気づいた時には茉奈のこめかみに銃口をあてるシスと俺を羽交い絞めにする影の人形がいた。
「これで終わりだ。どっちから先に死にたい?」
すでに勝ち誇っている様子のシス。
しかし、悲鳴すら上げない茉奈に違和感を覚えたのだろうか?
平然としている茉奈。
困惑しているシスに俺が聞く。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「お前の能力は影の人形で間違いないか?」
「そうだ。だが、それがどうした?」
ならもう用は無い。
さっさと片付ける事にした。
まずはステイシスで影の人形を消す。
それと同時にシスの位置と俺の位置を交換する。
その後に茉奈は俺の後ろに回る。
「それがお前の力か?」
「答える義理は無いね」
お前の能力は把握した。
だからお前は自分がどういう状況にいるか気づいていない。
お前の能力は影が無いと意味が無い。
だから影の上にいる。
それがお前の敗因だ。
奴は自分の武器としていた影の中に飲み込まれていく。
俺は能力者同士の戦いなら絶対に負けない自信があった。
だって俺の能力は常に進化し続けているから。
その為に相手にわざと先手を取らせていた。
どんな能力を使っていたとしても絶対防ぐ自信があった。
「あと2人だね」
「いや、あと1人だよ」
「え?この前の結の情報だと……」
「最後の一人は王の手に委ねるべきじゃないか?」
「なるほどね」
で、この後どうやって帰るの?
ここから歩いて帰るのか?
「そんなの面倒だろ?」
「結は私と歩いて話しながら帰るのは面倒なのか?」
「……そんなの今じゃなくていいだろ?」
早く帰らないと夕飯に間に合わない。
「私と一緒にいる時間よりも夕食の時間の方が大事なんだ?」
茉奈が拗ねる。
こうなると茉奈に従っておいた方が良い。
母さんに電話して少し遅くなると伝える。
「あまり夜遊びしたらダメですよ」
まだお泊りは早いと注意された。
そんなつもりなかったけど。
「バスがある筈だからバスで帰ろう」
「うん、でもいつか結と夜の町で遊びたいな」
「それって夜である必要あるのか?」
そう言うと茉菜はなぜかため息を吐いていた。
(3)
「お前が最後のDOLLだな?」
俺が聞くと背の高い女性はにやりと笑った。
「あなたの様なお子様に手こずっていたわけね」
そう言ってポケットから煙草とライターを出すとタバコに火をつけている。
「随分余裕だな。そうやって余裕を見せた馬鹿を片っ端から片付けたんだが」
「余裕?どうやら相手の能力を見ないと把握できないみたいね」
そうやって相手に能力を発動させる俺こそ私を侮ってないか?
そう言って最後のDOLLシータは手のひらをこっちに向けた。
炎が現れる。
ただの発火能力者?
……そんなわけがなかった。
炎はいくつも出来上がり人の形をかたどっていく。
それだけではないとすぐに判断した。
茉菜に目掛けて突進してくる炎の人形。
「結!」
「動くなよ!」
と同時に俺も能力を使った。
茉奈の身の安全が第一。
だけど相手の攻撃手段を確認しておきたい。
茉奈を捕まえようとするとその手を俺がつかみ取る。
火傷するなんて事は無い。
捕まえた人形を消滅させる。
するとぎりぎりの距離らしいところまで接近すると爆発した。
爆風は俺の最強の矛盾で防ぎきる。
「それがお前の奥の手か?」
俺はシータに聞くとシータは笑っていた。
「どうかしらね」
シータがそう言ったと同時に無数の人形が俺達を取り囲む。
「これも防ぎきれるかしら?」
防ぐ必要はない。
本当にネタ切れの様だ。
一度に全部の人形を爆発させるつもりだろう。
防げない事は無いけどその必要はない。
相手の能力を確かめたらあとはいつも通りステイシスを展開する。
炎の人形は消滅した。
動揺するシータに向けて炎の人形を作り出す。
「お前の能力にふさわしい殺し方をしてやる」
俺の人形がゆっくりシータに近づいていく。
抵抗したいならすると良い。
炎の人形がシータに抱き着く距離まで近づくとシータは自らを炎の人形に変える。
炎には炎を。
そんな対抗手段だろう。
だけど残念なのは俺がただの炎を作り出したと勘違いしている。
俺の炎はすべてが無になるまで焼き尽くす。
炎とて例外じゃない。
女性のこの世の物とは思えない悲鳴が聞こえてくる。
隣にいた茉奈は耐えきれなくて耳を塞いでいた。
「お前の今の状態がDOLLの存在だ」
どんな能力を持っていようと俺は片っ端から食らいつくし養分にする。
お前らは俺を強くするための餌にしか過ぎない。
もう多分意識すら食われたシータに最後の言葉を告げた。
「さよなら」
そう言った時にはすでに何も残っていなかった。
「次でラストだな」
「そうだな」
大体どういう能力の持ち主かわかっているからさっさと片付けようと茉奈に言った。
「なんで分かるの?」
茉奈が質問すると俺は説明した。
「人形師は7体の人形を作った人間だから」
茉奈は意外と勘が良い。
だからすぐに理解した。
「人形の”マイスター”って事だな?」
「まあ、多分そう思う」
俺の役割はそいつをしとめる事。
後は空が適当に処理してくれるだろう。
長い間続いたFGの最後がようやく訪れようとしてた。
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