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(1)
「ごめん。俺好きな人がいるんだ」
「でも付き合ってないんでしょ?その人にも好きな人がいるかもしれないじゃない」
「それでお前は俺を諦められたのか?」
「……ごめん」
「じゃあ、いくね」
そういって泣いている女子を屋上に置き去りにして雪との待ち合わせ場所に行く。
多分俺が好きな女子が雪だと言う事は分かっているのだろう。
6年生になって連日の様に告白されていた。
同じ言葉を何度も繰り返して同じ場面の繰り返し。
必要以上に優しくしたりしない。
だってそれはただの同情で、それ以上俺に何もできることは無い。
絶対にその女子を好きになる事は無いのだから。
それに雪に辛い思いをさせたくない。
そんな事を考えながら昇降口に向かうと雪が待っていた。
「毎日モテるね」
「雪もそうだろ?」
「まあね、これはしんどい」
雪はそう言って笑って手を振っていた。
雪の右手首にはミサンガが結ばれている。
それがホワイトデーのお返し。
「誠司郎が悩んだものならどんなものでも喜んでくれるから自分で考えなさい」
母さんがそういうから色々考えた末夜の時間をつかって編んだミサンガ。
同じように俺の左手首にも結ばれている。
左手首なのは右手を繋ぐから。
茉菜は喜んでくれた。
「おそろいの物なんて誠司郎が思いつくなんて思わなかった」
「さすがに小学生で指輪は重いだろと思って」
「ありがとう」
それからずっと肌身離さず持っているみたいだ。
「いい加減他の皆も諦めてくれたらいいのにね」
蓮と一緒にいる亜優がそう言っている。
しかし唐突に別の話題を切りこんできた。
「でさ、私達も初めてのデートって何したらいいか分からないのよ。で、協力して欲しいのよ」
「何をすればいいんだ?」
「雪と誠司郎に同行して欲しいの。もちろん他にもいるよ」
気になることがあったので聞いてみた。
「他にって誰だ?」
俺が聞くと亜優はにやりと笑った。
「それが本題なの」
そう言って説明を始めた。
なぜか頭に怪我をした功名で博美と付き合う事になった白石迅。
その双子の妹の彩夏も彼氏が欲しいから紹介しろといってきた。
どうしてそうも焦って彼氏を欲しがるんだ?
「修学旅行忘れてない?」
「知ってるけど関係あるのか?」
「長崎のテーマパーク行くんだよ。恋人と行きたいじゃん」
小学生では絶対無理な事が出来るチャンス。
だからこぞって恋人探しか。
雪はチャンポンと皿うどん食べるくらいしか考えてないだろうけど。
父さんはチャイナドレスを当時の彼女のプレゼントしたんだっけ?
小学生の体形で着てもしょうがないだろうに……
「其処にロマンがあるんだよ」
チャイナドレスにロマンがあるのだろうか?
「で、彩夏の相手見つけてるのか?」
茉菜はそっちに興味が言ったらしい。幸いな事に。
亜優の友達の赤井蒼生がフリーだし、問題ないからあてがうらしい。
そんなの無理矢理くっつけても仕方ないだろ。
「だから、連休に1日空けておいてよ。映画でも段取りしておくから」
「俺は良いけど雪はいいのか?」
「……それってデートでしょ?私は構わないよ」
むしろ嬉しいと、その気になってるらしい雪。
「でもあそこに子供だけで行っていいのか?」
「大丈夫だ、天音達でも行ってたらしいから」
それは大丈夫って言うのか?
「ちなみに彼氏に下着選んでもらったらしいよ。蓮も選んでくれる?」
「僕には無理だよ!」
気づいたらにやにやした雪が俺を見ている。
「選びたいならいくらでも構わないよ?」
「何着てても似合ってるよ」
「またセリフが棒読みなってる!絶対に選ばせるからね!ついでにその日に着て見せてやる」
どうせ連休だしいいだろ。
雪はあれからまた成長している。
最近どうも雪の下着姿を見ていると変な気分になるんだけどな。
言うとまた怒り出すと思ったから黙っていた。
(2)
「ギャハハハ」
「うーん……アハハ」
二通りの感想に分かれたのが今回見に来た映画。
そういえば善明達が言ってたな。
「彼女に観る映画を任せてはいけない」
とんでもない状況に追い込まれるから。
今まさにその状況だった。
子供向けのアニメだった。
なのに内容がややシュール。
水曜日はノー残業デーなのに客先からの連絡待ちで帰れない呪いを子供向けに発信して何が言いたいのか分からない。
亜優と雪は笑っている。
彩夏と蒼生は緊張してそれどころじゃない。
博美は感涙を流している。
俺と迅は呆れていた。
選んだのは亜優。
映画が終わるとファストフード店で雪がハンバーガーを爆買いしていた。
「そんなに食べられるの?」
亜優が呆れていた。
このくらい楽勝でしょ?と雪は返す。
「それにしてもさっきの映画爆笑だよなあ」
「あの結婚できない看護師のババアマジ受けた」
どこがおもしろいのかさっぱり分からない。
「私はあそこが少し泣けました」
博美も感想を言う。
それもさっぱり理解できないけど。
「お前達はどうだった?」
茉菜が彩夏と蒼生に聞いていた。
「い、いや。緊張して中身がさっぱり入ってこなくて」
入れる物でもないと思うけどな。
しかしその感想は亜優と雪には不評だったようだ。
「あんた達付き合うんでしょ。そんながちがちで一生過ごすのか!」
まだ付き合ってるわけじゃないし、一生なんてわからないだろ?
映画でも育児ノイローゼで離婚するエピソードあっただろ。
あれがなんで子供向けの映画に指定されているのか分からない。
「あなたに産みの苦しみがわかる!?」
小学生に何を求めているんだ?
まあ、天音でもきついって聞いたことがある。
「子供産む前に遊んでおけ。まじで自由な時間なくなるぞ」
「天音達は産んだ後も自由に行動していたでしょ!」
愛莉と神奈に怒られていた。
「いや、まだ付き合うって決めたわけじゃ……」
蒼生がそんな事を言うから余計に二人は気に食わなかったらしい。
「彩夏のどこが気に入らないの!?」
じいじ達は縁結びが得意だったみたいだけどこんな感じだったんだろうか?
「いい加減諦めろ。この歳で彼女出来るって幸運だぞ」
「蓮も何言ってるの?いやいや付き合うって言われて嬉しいわけないでしょ!」
蓮も亜優に怒られている。
「誠司郎も何かアドバイスしてあげて」
雪が話を振ってきた。
困ったな。
余計な事を言うと墓穴を掘りそうだし。
あ、誠が良い事言っていたな。
「蒼生。俺のじいじが言ってた。食わず嫌いは良くないって」
ぽかっ
「付き合ってもない二人に何を言ってるの!馬鹿!」
なぜか雪が怒り出す。
だったらさっさと私を食べてよとか意味不明な事を言う。
カニバリズムなんて趣味は無いぞ?
「雪。誠司郎の言ってる事はそういう意味じゃない。それだったらとっくに雪を押し倒しているよ」
何度も押し倒したんだけどな。
で、説明をすることにした。
「蒼生はどうせ好きな人いないんだろ?」
「まあ、考えたことは無い」
「だったら別に彩夏でいいじゃないか」
付き合って好きになる事もあるらしい。
付き合ってもっと好きな所が出来る事もあるらしい。
合わなかったら別れたらいい。
なにも一生付き合うって最初から決めつけなくていいだろ。
気軽に付き合ってみろ。
それを聞いた蒼生も腹をくくったらしい。
「……それでもいいかな?彩夏」
「うん。それでも嬉しい」
色々あったけど付き合う気になったみたいだ。
その後はゲーセンで遊んだあと各自ペアで自由行動にした。
雪はすぐに俺の腕を掴んでどこかへ向かう。
向かった先は案の定下着売り場だった。
「俺がここにいたら変態だろ」
職質される彼氏をみたいのか?
「私が一緒だから問題ない。さあ、どんなのが好みなの?」
「仮に俺が好みなのを選んだとしてそれをどうやって見るんだ?」
「夜になったらいくらでも見せてあげる」
ここで痴話げんかしている方が目立つので大人しく適当に選んだ。
それを見て雪が笑いだす。
やっぱおかしかったのかな?
「パオラや神奈から聞いて覚悟してたんだけど、あまりにも普通だったからつい……」
俺の性癖は正常だったらしい。
選んで待ち合わせ場所に行くと蓮達がいた。
「どこ行ってたんだ?」
「下着売り場」
「雪の選んだの?」
「ああ……」
「僕も亜優のを……」
「蓮!喋ったら許さないから!」
蓮は亜優に逆らえないようだ。
「誠司郎は彼女の前で堂々と他の女子の下着を気にするの?」
「気にしてないって!」
「蓮だって彼女以外のを気にするなんて趣味悪いよ!」
「いや、女子ってこうも積極的なのかなって」
そんなにすごいのか?亜優のって……
ぽかっ
「誠司郎。本気で怒るよ」
「……で、蓮も今夜見せてもらうの?」
「む、無理だよ!」
普通は無理だろうな。
蓮にアドバイスしてやることにした。
「適当な休みの日に亜優の家に遊びに行ってやれよ」
「女の子の部屋にそんなに出入りしていいの?」
「そもそもファーストキスってどこでしたんだよ?」
「あ……」
自己解決したようだ。
「わ、私はそんな軽い女じゃないからね」
「でも見せてくれるんだろ?」
「す、少しだけ心の準備する時間欲しい」
修学旅行までには見せてあげるから。
そんなんでよく選んでもらう気になったな。
そんな感じで昼下がりのコーヒーショップで話をしていたら蒼生たちも戻って来た。
「誠司郎も言う様になったね」
裸見ただけでおたおたしてた時が嘘みたいと雪が笑っている
いきなり脱がれたら驚くぞ。
「うそ!雪ってもうそんな段階だったの!?」
亜優が驚いていた。
普通はそうだよな。
「ふふーん。亜優もがんばるのね」
得意気に語る雪。
そんなことで張り合うのか?
家に帰ると今日はどうだった?と母さん達に聞かれた。
「雪の下着選びに付き合わされた」
俺がそういうと母さんは不安そうだったけど、神奈は違うみたいだ。
「へえ、雪も愛莉に似て強引なんだな。誠司郎は選んでもらったのか?」
そんな事を聞いてきた。
「自分で選ぶよそのくらい」
「雪にだって彼氏の下着を選ぶ権利があるはずじゃないのか?」
そういうものなんだろうか?
すると父さんが聞いてきた。
「で、どんなのを誠司郎は選んだんだ?」
「出来るだけ普通なの」
値段と生地と色だけ選んだ。
普段使えるようなのを選んだつもりだと思った。
普段使えるとどうやって判断した?
休みの日とかに穿いてるのなら問題ないだろ?
あまり恥ずかしいから穿かないとかだともったいないし。
「まあ、そういう下着は雪に任せておいたほうがいいからな」
理由はスカートやパンツを脱がす瞬間まで彼女がどんな下着を穿いてるのか妄想して楽しむらしい。
当然そんな事を言った父さんに母さんと神奈が激怒する。
「お前は自分の息子に妙な事を吹き込むんじゃない!」
「でも俺もパオラの下着を選んだことは無いよ!」
「子供じゃあるまいし自分で買うに決まってるでしょ」
冴とだって喧嘩してただろうが!と神奈が言う。
「誠司郎もそんなの想像するの?」
寝る前に雪と電話すると雪が聞いてきた。
「するも何も見てるからな」
「私に飽きたの?」
マンネリ化しちゃったかな?
女子の機嫌をとるのは難しいと言うのは本当らしい。
「そういうわけじゃないけど慣れたっていうか……」
「だから今日選んでもらおうと思ったのに」
どんなのが好きなのか知りたい。
偶には違うのを穿いて俺に刺激を与えてやりたい。
なのに普段穿いてるのと変わらないのを選ぶんだから意味がないとぼやいていた。
「誠が言ってたんだけど……」
「何を吹き込まれたの!?」
「そうじゃなくてさ、雪のじいじの話」
突然服を脱がれたらまず頭が追い付かない。
下着の事なんてよく覚えてないと言っていたそうだ。
「つまりどんなの穿いても意味がないって事?」
「結局は雪を求めてしまうって事じゃないかな?」
「……誠司郎も男の子なんだね」
でもだめだよ。
女子だって見て欲しくて色々悩むんだから。
この夜、雪の下着姿を妄想してしまったのは言うまでもない。
「ごめん。俺好きな人がいるんだ」
「でも付き合ってないんでしょ?その人にも好きな人がいるかもしれないじゃない」
「それでお前は俺を諦められたのか?」
「……ごめん」
「じゃあ、いくね」
そういって泣いている女子を屋上に置き去りにして雪との待ち合わせ場所に行く。
多分俺が好きな女子が雪だと言う事は分かっているのだろう。
6年生になって連日の様に告白されていた。
同じ言葉を何度も繰り返して同じ場面の繰り返し。
必要以上に優しくしたりしない。
だってそれはただの同情で、それ以上俺に何もできることは無い。
絶対にその女子を好きになる事は無いのだから。
それに雪に辛い思いをさせたくない。
そんな事を考えながら昇降口に向かうと雪が待っていた。
「毎日モテるね」
「雪もそうだろ?」
「まあね、これはしんどい」
雪はそう言って笑って手を振っていた。
雪の右手首にはミサンガが結ばれている。
それがホワイトデーのお返し。
「誠司郎が悩んだものならどんなものでも喜んでくれるから自分で考えなさい」
母さんがそういうから色々考えた末夜の時間をつかって編んだミサンガ。
同じように俺の左手首にも結ばれている。
左手首なのは右手を繋ぐから。
茉菜は喜んでくれた。
「おそろいの物なんて誠司郎が思いつくなんて思わなかった」
「さすがに小学生で指輪は重いだろと思って」
「ありがとう」
それからずっと肌身離さず持っているみたいだ。
「いい加減他の皆も諦めてくれたらいいのにね」
蓮と一緒にいる亜優がそう言っている。
しかし唐突に別の話題を切りこんできた。
「でさ、私達も初めてのデートって何したらいいか分からないのよ。で、協力して欲しいのよ」
「何をすればいいんだ?」
「雪と誠司郎に同行して欲しいの。もちろん他にもいるよ」
気になることがあったので聞いてみた。
「他にって誰だ?」
俺が聞くと亜優はにやりと笑った。
「それが本題なの」
そう言って説明を始めた。
なぜか頭に怪我をした功名で博美と付き合う事になった白石迅。
その双子の妹の彩夏も彼氏が欲しいから紹介しろといってきた。
どうしてそうも焦って彼氏を欲しがるんだ?
「修学旅行忘れてない?」
「知ってるけど関係あるのか?」
「長崎のテーマパーク行くんだよ。恋人と行きたいじゃん」
小学生では絶対無理な事が出来るチャンス。
だからこぞって恋人探しか。
雪はチャンポンと皿うどん食べるくらいしか考えてないだろうけど。
父さんはチャイナドレスを当時の彼女のプレゼントしたんだっけ?
小学生の体形で着てもしょうがないだろうに……
「其処にロマンがあるんだよ」
チャイナドレスにロマンがあるのだろうか?
「で、彩夏の相手見つけてるのか?」
茉菜はそっちに興味が言ったらしい。幸いな事に。
亜優の友達の赤井蒼生がフリーだし、問題ないからあてがうらしい。
そんなの無理矢理くっつけても仕方ないだろ。
「だから、連休に1日空けておいてよ。映画でも段取りしておくから」
「俺は良いけど雪はいいのか?」
「……それってデートでしょ?私は構わないよ」
むしろ嬉しいと、その気になってるらしい雪。
「でもあそこに子供だけで行っていいのか?」
「大丈夫だ、天音達でも行ってたらしいから」
それは大丈夫って言うのか?
「ちなみに彼氏に下着選んでもらったらしいよ。蓮も選んでくれる?」
「僕には無理だよ!」
気づいたらにやにやした雪が俺を見ている。
「選びたいならいくらでも構わないよ?」
「何着てても似合ってるよ」
「またセリフが棒読みなってる!絶対に選ばせるからね!ついでにその日に着て見せてやる」
どうせ連休だしいいだろ。
雪はあれからまた成長している。
最近どうも雪の下着姿を見ていると変な気分になるんだけどな。
言うとまた怒り出すと思ったから黙っていた。
(2)
「ギャハハハ」
「うーん……アハハ」
二通りの感想に分かれたのが今回見に来た映画。
そういえば善明達が言ってたな。
「彼女に観る映画を任せてはいけない」
とんでもない状況に追い込まれるから。
今まさにその状況だった。
子供向けのアニメだった。
なのに内容がややシュール。
水曜日はノー残業デーなのに客先からの連絡待ちで帰れない呪いを子供向けに発信して何が言いたいのか分からない。
亜優と雪は笑っている。
彩夏と蒼生は緊張してそれどころじゃない。
博美は感涙を流している。
俺と迅は呆れていた。
選んだのは亜優。
映画が終わるとファストフード店で雪がハンバーガーを爆買いしていた。
「そんなに食べられるの?」
亜優が呆れていた。
このくらい楽勝でしょ?と雪は返す。
「それにしてもさっきの映画爆笑だよなあ」
「あの結婚できない看護師のババアマジ受けた」
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「私はあそこが少し泣けました」
博美も感想を言う。
それもさっぱり理解できないけど。
「お前達はどうだった?」
茉菜が彩夏と蒼生に聞いていた。
「い、いや。緊張して中身がさっぱり入ってこなくて」
入れる物でもないと思うけどな。
しかしその感想は亜優と雪には不評だったようだ。
「あんた達付き合うんでしょ。そんながちがちで一生過ごすのか!」
まだ付き合ってるわけじゃないし、一生なんてわからないだろ?
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あれがなんで子供向けの映画に指定されているのか分からない。
「あなたに産みの苦しみがわかる!?」
小学生に何を求めているんだ?
まあ、天音でもきついって聞いたことがある。
「子供産む前に遊んでおけ。まじで自由な時間なくなるぞ」
「天音達は産んだ後も自由に行動していたでしょ!」
愛莉と神奈に怒られていた。
「いや、まだ付き合うって決めたわけじゃ……」
蒼生がそんな事を言うから余計に二人は気に食わなかったらしい。
「彩夏のどこが気に入らないの!?」
じいじ達は縁結びが得意だったみたいだけどこんな感じだったんだろうか?
「いい加減諦めろ。この歳で彼女出来るって幸運だぞ」
「蓮も何言ってるの?いやいや付き合うって言われて嬉しいわけないでしょ!」
蓮も亜優に怒られている。
「誠司郎も何かアドバイスしてあげて」
雪が話を振ってきた。
困ったな。
余計な事を言うと墓穴を掘りそうだし。
あ、誠が良い事言っていたな。
「蒼生。俺のじいじが言ってた。食わず嫌いは良くないって」
ぽかっ
「付き合ってもない二人に何を言ってるの!馬鹿!」
なぜか雪が怒り出す。
だったらさっさと私を食べてよとか意味不明な事を言う。
カニバリズムなんて趣味は無いぞ?
「雪。誠司郎の言ってる事はそういう意味じゃない。それだったらとっくに雪を押し倒しているよ」
何度も押し倒したんだけどな。
で、説明をすることにした。
「蒼生はどうせ好きな人いないんだろ?」
「まあ、考えたことは無い」
「だったら別に彩夏でいいじゃないか」
付き合って好きになる事もあるらしい。
付き合ってもっと好きな所が出来る事もあるらしい。
合わなかったら別れたらいい。
なにも一生付き合うって最初から決めつけなくていいだろ。
気軽に付き合ってみろ。
それを聞いた蒼生も腹をくくったらしい。
「……それでもいいかな?彩夏」
「うん。それでも嬉しい」
色々あったけど付き合う気になったみたいだ。
その後はゲーセンで遊んだあと各自ペアで自由行動にした。
雪はすぐに俺の腕を掴んでどこかへ向かう。
向かった先は案の定下着売り場だった。
「俺がここにいたら変態だろ」
職質される彼氏をみたいのか?
「私が一緒だから問題ない。さあ、どんなのが好みなの?」
「仮に俺が好みなのを選んだとしてそれをどうやって見るんだ?」
「夜になったらいくらでも見せてあげる」
ここで痴話げんかしている方が目立つので大人しく適当に選んだ。
それを見て雪が笑いだす。
やっぱおかしかったのかな?
「パオラや神奈から聞いて覚悟してたんだけど、あまりにも普通だったからつい……」
俺の性癖は正常だったらしい。
選んで待ち合わせ場所に行くと蓮達がいた。
「どこ行ってたんだ?」
「下着売り場」
「雪の選んだの?」
「ああ……」
「僕も亜優のを……」
「蓮!喋ったら許さないから!」
蓮は亜優に逆らえないようだ。
「誠司郎は彼女の前で堂々と他の女子の下着を気にするの?」
「気にしてないって!」
「蓮だって彼女以外のを気にするなんて趣味悪いよ!」
「いや、女子ってこうも積極的なのかなって」
そんなにすごいのか?亜優のって……
ぽかっ
「誠司郎。本気で怒るよ」
「……で、蓮も今夜見せてもらうの?」
「む、無理だよ!」
普通は無理だろうな。
蓮にアドバイスしてやることにした。
「適当な休みの日に亜優の家に遊びに行ってやれよ」
「女の子の部屋にそんなに出入りしていいの?」
「そもそもファーストキスってどこでしたんだよ?」
「あ……」
自己解決したようだ。
「わ、私はそんな軽い女じゃないからね」
「でも見せてくれるんだろ?」
「す、少しだけ心の準備する時間欲しい」
修学旅行までには見せてあげるから。
そんなんでよく選んでもらう気になったな。
そんな感じで昼下がりのコーヒーショップで話をしていたら蒼生たちも戻って来た。
「誠司郎も言う様になったね」
裸見ただけでおたおたしてた時が嘘みたいと雪が笑っている
いきなり脱がれたら驚くぞ。
「うそ!雪ってもうそんな段階だったの!?」
亜優が驚いていた。
普通はそうだよな。
「ふふーん。亜優もがんばるのね」
得意気に語る雪。
そんなことで張り合うのか?
家に帰ると今日はどうだった?と母さん達に聞かれた。
「雪の下着選びに付き合わされた」
俺がそういうと母さんは不安そうだったけど、神奈は違うみたいだ。
「へえ、雪も愛莉に似て強引なんだな。誠司郎は選んでもらったのか?」
そんな事を聞いてきた。
「自分で選ぶよそのくらい」
「雪にだって彼氏の下着を選ぶ権利があるはずじゃないのか?」
そういうものなんだろうか?
すると父さんが聞いてきた。
「で、どんなのを誠司郎は選んだんだ?」
「出来るだけ普通なの」
値段と生地と色だけ選んだ。
普段使えるようなのを選んだつもりだと思った。
普段使えるとどうやって判断した?
休みの日とかに穿いてるのなら問題ないだろ?
あまり恥ずかしいから穿かないとかだともったいないし。
「まあ、そういう下着は雪に任せておいたほうがいいからな」
理由はスカートやパンツを脱がす瞬間まで彼女がどんな下着を穿いてるのか妄想して楽しむらしい。
当然そんな事を言った父さんに母さんと神奈が激怒する。
「お前は自分の息子に妙な事を吹き込むんじゃない!」
「でも俺もパオラの下着を選んだことは無いよ!」
「子供じゃあるまいし自分で買うに決まってるでしょ」
冴とだって喧嘩してただろうが!と神奈が言う。
「誠司郎もそんなの想像するの?」
寝る前に雪と電話すると雪が聞いてきた。
「するも何も見てるからな」
「私に飽きたの?」
マンネリ化しちゃったかな?
女子の機嫌をとるのは難しいと言うのは本当らしい。
「そういうわけじゃないけど慣れたっていうか……」
「だから今日選んでもらおうと思ったのに」
どんなのが好きなのか知りたい。
偶には違うのを穿いて俺に刺激を与えてやりたい。
なのに普段穿いてるのと変わらないのを選ぶんだから意味がないとぼやいていた。
「誠が言ってたんだけど……」
「何を吹き込まれたの!?」
「そうじゃなくてさ、雪のじいじの話」
突然服を脱がれたらまず頭が追い付かない。
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「つまりどんなの穿いても意味がないって事?」
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