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予兆
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(1)
クラスメートの白石迅が昼休み遊んでいたらベランダに置いていたらしい鉢が落下して頭に怪我をしていた。
私と誠司郎はお見舞いに病院に来た。
もちろん見舞いだけが目的じゃない。
いくつか疑問があったからそれを調べたかった。
まず本当に鉢が置いてあったのか?
そんな落下する場所に置いているはずがない。
その教室の人間も覚えがないと言う。
その次にどうして迅の頭上に落下したのか?
SHのメンバーは全てエデンの監視下にある。
だけど、エデンの防衛能力が役に立たなかったということになる。
エデンはエイリアスの一つ。
だからステイシス等の能力による制限は出来ないはず。
出来る何か新しいルールが出来たのか?
そんな事を迅に聞いても分からないけど、迅に何者かが攻撃を仕掛けた。
そしてそれはエデンでも防ぐすべがなかった。
それだけ分かればあとはエデンにでも聞けば済むだろう。
あまり長居していても仕方ない。
「誠司郎、そろそろ行こう」
「そうだな」
「随分早いんじゃない?」
多田博美がそう言って呼び止めていた。
こういう時なんて言うんだっけ?
「ベッドがあるからって嵌め外したらだめだよ」
「ば、馬鹿。別に博美とはそういう関係じゃねーよ」
動揺が見え見えだぞ。
誠司郎と笑いながら病室を出る。
「……で、目的はなんだったんだ?」
2人を揶揄うためじゃないことくらいは誠司郎でも分かるらしい。
「誠司郎は妙だと思わない?」
「確かにあんな場所に鉢植え置いてるはずないよな」
「それもそうなんだけど……」
エデンの事を誠司郎に説明するとすぐに理解した。
「ってーとやっぱり犯人は……」
「まあそうなるよね」
リベリオンの能力者。
そこまでは容易に推測できる。
だが目的と犯人の特定が出来ない。
それを調べる必要がある。
だけど誠司郎は違う事を心配していた。
「雪なら大丈夫だとは分かっているんだけど」
相手が分からない。
相手の能力も分からない。
私でも迂闊に手を出していい相手じゃないだろ?
あまり無理をしないでくれ。
大丈夫と分かっていても心配するのが彼氏なんだ。
「大丈夫。結にも言われた。同じミスは繰り返さない」
「気をつけてな」
とりあえず誠司郎の警護の方法も考えながら家に帰ると純也が家に来ていた。
純也は家に帰ってきた私を見ると一言言った。
「相手はリベリオンなのか?」
「多分そうだと思う」
それを聞きにわざわざ?
「俺の方でもちょっと調べてみた。雪の判断で間違いないだろう」
その時間にベランダには誰もいなかった。
そして誰も鉢植えを置いていた覚えはない。
さらに言うなら迅の怪我の具合からして鉢は教室のあった位置の遥か上から落下した威力らしい。
屋上よりもさらに高い高度からの落下。
それで捜査も難航しているとか。
純也もそれでリベリオンだと断定してじいじの判断を仰ぎに来たそうだ。
だけどじいじは一言だけだった。
「僕が分かっていたとしても教えることは無い」
自分たちで何とかしなさい。
そう言って突き放す。
「ですがけが人が出てるのにそんな冷たい事言わなくても」
「そうじゃないよ愛莉。これで仮に死人が出たなら渡辺班が動くよ」
だけどまだけが人だ。
ヒントを与えるとしたら標的はあくまでも私か誠司郎。
自分の能力を試したまでに過ぎない。
手遅れにならないうちにさっさと片付けなさい。
「天音達の手を借りるよ。江口家の情報網と茜のネットワークなら何かつかめるかもしれない」
そう言って純也は帰っていった。
その後じいじがヒントをくれた。
「孫の命にかかわるからね。もう少しだけヒントをあげる」
「何かあるの?」
「能力は多分二つだ。後は自分で考えて」
じいじはやはり何か分かっているみたいだ。
じいじはこれはテストだと言っていた。
だったら……。
試しに張って見るか。
誠司郎に連絡しながらその日は寝る事にした。
(2)
「あなたが犯人ね?」
「な、なぜわかった?」
「2度も同じ手口が通用するあたりが小学生の発想だよ」
犯人の事を知ってるわけじゃなかった。
でも一度味をしめたら何度でも繰り返すだろう。
しかも全く工夫することなく。
だから屋上に張り込んでいた。
もちろん学校にいる間中ずっと。
屋上を選んだ理由は屋上よりも高い場所から落下させるなら屋上しかない。
教室のベランダには誰もいなかったんだから。
何かを落下させる能力がまず一つなのは間違いない。
そしてエイリアスが使えないのなら自分で張り込むしかない。
もちろん授業中だから既存概念を上書きして自分を二人に分けた。
「あなたリベリオンね?」
「分かっていて俺を狙っているのか?」
リベリオンが免罪符とでも思っているのだろうか?
天音なら有無を言わずにとっくに殺してるよ。
「あなたこそ私の事を知ってるの?」
「片桐雪。俺達の最終目標」
そう言って男はにやりと笑った。
何を考えているかは手に取るように笑う。
だから敢えて好きにさせてやることにした。
確認しておきたい事もある。
男は俺の真上に無数の刃物を生成して落下させる。
全て俺の頭上ですべて消滅したけど。
狼狽える男。
「ば、ばかな。エイリアスはあいつが……」
この一言で十分だった。
こいつらは私の能力がエイリアスだと思ている。
そして間違いなくもう一人エイリアスを封じる能力者が存在する。
そいつは姿を現さなかったけど。
まあ、こいつから仕入れられるだけ情報を仕入れるとしよう。
男の目を見て念じる。
概念の上書き。
私に嘘を吐くことはできないと彼の概念を上書きする。
その事を説明したうえで改めて尋ねた。
「エイリアスを封じる能力について知ってる事を話して」
さっきも言った通り嘘は吐けない。
「待ってくれ、他の事なら何でも話す」
「他の事?」
「七の苦悩についてとかどうだ!?」
七の苦悩?
「それ以上喋ったら俺が殺すよ?」
その声に怯えるかのように反応する男。
アベルが立っていた。
アベルはにやりと笑っている。
「ま、待ってくれ。まだ喋ってない!」
「口の軽い男は嫌われるのよ?」
ヒルデも現れた。
「無駄よ」
私がヒルデを睨みつけた。
「そうね、ヒルデに聞いた方が早いかも。話してもらうわよ」
「……浸食」
本人も意識してないうちに話していた。
ヒルデにも概念の上書きを使用したから。
エイリアスの指示系統に侵入して判断を停止させる能力。
エイリアスではないようだ。
私は落下の能力を使っていた男に能力を使用する。
リベリオンの否定。
男はぼーっとしてから屋上を去っていった。
「私達にも同じ真似をするつもり?」
「あなた達は保険」
今ので分かった。
アベルとヒルデは利用価値がある。
ならばこのまま放っておこう。
「気の変わらないうちにさっさと教室にもどったら?」
2人は何も言わずに戻って行った。
多分ラストアタックってやつだろう。
もっというならリベリオンの頭を掴む最後のチャンス。
絶対に逃がさない。
その手段を模索しながら屋上を後にした。
(3)
「悪いな、毎日看病に来てくれて」
毎日見舞いに来てくれる博美に感謝をしていた。
「気にしないで、好きでやっているんだから」
博美はそう言って笑っている。
母さん達は変に気を使ってあまり病室に来ない。
でも博美がいるから退屈しのぎにはなった。
「運動会には間に合うの?」
「怪我は治るけど練習ほとんどしてないからな」
そういや今年はフォークダンスだっけ?
なんで運動会にフォークダンスなのか意味が分からないけど、やれっていうならやるしかない。
やらない連中も過去にいたと聞いたけど。
最後に博美と踊ってお終いのはずだった。
「そっか残念だな」
「男と踊るって恥ずかしくないのか?」
男子からしてみたら恥ずかしい行為だけど。
すると博美は何か考え始めた。
「確かに恥ずかしいね。だから私がお見舞いに来たお礼をお願いしてもいいかな?」
「いいけど?」
この流れで「付き合って」はないなとちょっと残念だけど付き合う事にした。
「屋上にいけたよね?この病院」
動ける?と聞いてくる博美。
病院の外に出なかったらいいと言われていたので大丈夫と言うと、博美と二人で屋上にいく。
「運動会で踊れないからここで一緒に踊ってよ」
振付くらいは覚えていたから大丈夫だと答えると一緒に踊る。
そして一通り踊ると突然博美が抱き着いてきた。
「本当は運動会の本番で言おうと思ったんだけど今言うね。私は迅が好き」
「え?」
突然の告白だった。
人生初の告白に心臓がバクバク言っている。
「なんで俺なんだ?」
「そんなの分からないよ!」
人を好きになるのに理由がいるかい?……ってことか?
「理由も無いのに好きになったりするの?」
「感情は脳で左右されるんじゃない。心で感じるんだよ」
直感って事だろうか。
「迅は人を好きになった事ある?」
「いや、考えた事もなかった」
「人を好きになるとね無性につらいの」
とにかくその人の事を考えている。
昼夜問わずずっとだ。
自分以外の女子と仲良くしている俺を見ていると辛い。
だからいつか言おうと思っていても、もしも……って考えると怖くて足がすくむ。
そんなに俺の事ばかり考えていたのか。
そんな素振り全く見せなかったけど。
「……返事聞かせてくれるよね?」
「あ、ああ……」
困ったな。
好きでもないのに好きって嘘を吐くのも悪いよな。
「俺さ、博美の言うように女子を好きになった事なくてさ」
「それで?」
「それでって……」
「迅も私の事が好きでしたなんて返事は期待してない。私じゃ迅の相手には力不足なのかな?」
今にも泣き出しそうな博美の表情。
困ったな。
こんな状況考えてもなかったぞ。
でも博美に好きって言ってもらえて嬉しかった。
つまりそういう事なのか。
なんとなく答えが分かった。
それを伝える事にした。
「博美の言う通り俺はまだ好きって感情が分からない」
「うん……」
「だから博美が教えてくれないか?」
「私が?」
博美はそう言て俺の胸の上に顔を押し当てて見上げている。
こんな状況になったら小学生でも色々ダメな感情が混みあがっていく。
ぐっとこらえて話を続けた。
「俺はまだ博美が好きじゃない。それを博美が辛いと思わないのなら付き合うよ」
「本当!?」
博美が聞いてくると頷いて答えた。
「ありがとう。よろしくね。でも残念だなぁ」
「何が?」
俺が聞くとさっきとはうってかわって博美はにこりと笑った。
「さすがに好きでもない人とファーストキスなんていやでしょ?」
好きって言った方がよかったのかな?
クラスメートの白石迅が昼休み遊んでいたらベランダに置いていたらしい鉢が落下して頭に怪我をしていた。
私と誠司郎はお見舞いに病院に来た。
もちろん見舞いだけが目的じゃない。
いくつか疑問があったからそれを調べたかった。
まず本当に鉢が置いてあったのか?
そんな落下する場所に置いているはずがない。
その教室の人間も覚えがないと言う。
その次にどうして迅の頭上に落下したのか?
SHのメンバーは全てエデンの監視下にある。
だけど、エデンの防衛能力が役に立たなかったということになる。
エデンはエイリアスの一つ。
だからステイシス等の能力による制限は出来ないはず。
出来る何か新しいルールが出来たのか?
そんな事を迅に聞いても分からないけど、迅に何者かが攻撃を仕掛けた。
そしてそれはエデンでも防ぐすべがなかった。
それだけ分かればあとはエデンにでも聞けば済むだろう。
あまり長居していても仕方ない。
「誠司郎、そろそろ行こう」
「そうだな」
「随分早いんじゃない?」
多田博美がそう言って呼び止めていた。
こういう時なんて言うんだっけ?
「ベッドがあるからって嵌め外したらだめだよ」
「ば、馬鹿。別に博美とはそういう関係じゃねーよ」
動揺が見え見えだぞ。
誠司郎と笑いながら病室を出る。
「……で、目的はなんだったんだ?」
2人を揶揄うためじゃないことくらいは誠司郎でも分かるらしい。
「誠司郎は妙だと思わない?」
「確かにあんな場所に鉢植え置いてるはずないよな」
「それもそうなんだけど……」
エデンの事を誠司郎に説明するとすぐに理解した。
「ってーとやっぱり犯人は……」
「まあそうなるよね」
リベリオンの能力者。
そこまでは容易に推測できる。
だが目的と犯人の特定が出来ない。
それを調べる必要がある。
だけど誠司郎は違う事を心配していた。
「雪なら大丈夫だとは分かっているんだけど」
相手が分からない。
相手の能力も分からない。
私でも迂闊に手を出していい相手じゃないだろ?
あまり無理をしないでくれ。
大丈夫と分かっていても心配するのが彼氏なんだ。
「大丈夫。結にも言われた。同じミスは繰り返さない」
「気をつけてな」
とりあえず誠司郎の警護の方法も考えながら家に帰ると純也が家に来ていた。
純也は家に帰ってきた私を見ると一言言った。
「相手はリベリオンなのか?」
「多分そうだと思う」
それを聞きにわざわざ?
「俺の方でもちょっと調べてみた。雪の判断で間違いないだろう」
その時間にベランダには誰もいなかった。
そして誰も鉢植えを置いていた覚えはない。
さらに言うなら迅の怪我の具合からして鉢は教室のあった位置の遥か上から落下した威力らしい。
屋上よりもさらに高い高度からの落下。
それで捜査も難航しているとか。
純也もそれでリベリオンだと断定してじいじの判断を仰ぎに来たそうだ。
だけどじいじは一言だけだった。
「僕が分かっていたとしても教えることは無い」
自分たちで何とかしなさい。
そう言って突き放す。
「ですがけが人が出てるのにそんな冷たい事言わなくても」
「そうじゃないよ愛莉。これで仮に死人が出たなら渡辺班が動くよ」
だけどまだけが人だ。
ヒントを与えるとしたら標的はあくまでも私か誠司郎。
自分の能力を試したまでに過ぎない。
手遅れにならないうちにさっさと片付けなさい。
「天音達の手を借りるよ。江口家の情報網と茜のネットワークなら何かつかめるかもしれない」
そう言って純也は帰っていった。
その後じいじがヒントをくれた。
「孫の命にかかわるからね。もう少しだけヒントをあげる」
「何かあるの?」
「能力は多分二つだ。後は自分で考えて」
じいじはやはり何か分かっているみたいだ。
じいじはこれはテストだと言っていた。
だったら……。
試しに張って見るか。
誠司郎に連絡しながらその日は寝る事にした。
(2)
「あなたが犯人ね?」
「な、なぜわかった?」
「2度も同じ手口が通用するあたりが小学生の発想だよ」
犯人の事を知ってるわけじゃなかった。
でも一度味をしめたら何度でも繰り返すだろう。
しかも全く工夫することなく。
だから屋上に張り込んでいた。
もちろん学校にいる間中ずっと。
屋上を選んだ理由は屋上よりも高い場所から落下させるなら屋上しかない。
教室のベランダには誰もいなかったんだから。
何かを落下させる能力がまず一つなのは間違いない。
そしてエイリアスが使えないのなら自分で張り込むしかない。
もちろん授業中だから既存概念を上書きして自分を二人に分けた。
「あなたリベリオンね?」
「分かっていて俺を狙っているのか?」
リベリオンが免罪符とでも思っているのだろうか?
天音なら有無を言わずにとっくに殺してるよ。
「あなたこそ私の事を知ってるの?」
「片桐雪。俺達の最終目標」
そう言って男はにやりと笑った。
何を考えているかは手に取るように笑う。
だから敢えて好きにさせてやることにした。
確認しておきたい事もある。
男は俺の真上に無数の刃物を生成して落下させる。
全て俺の頭上ですべて消滅したけど。
狼狽える男。
「ば、ばかな。エイリアスはあいつが……」
この一言で十分だった。
こいつらは私の能力がエイリアスだと思ている。
そして間違いなくもう一人エイリアスを封じる能力者が存在する。
そいつは姿を現さなかったけど。
まあ、こいつから仕入れられるだけ情報を仕入れるとしよう。
男の目を見て念じる。
概念の上書き。
私に嘘を吐くことはできないと彼の概念を上書きする。
その事を説明したうえで改めて尋ねた。
「エイリアスを封じる能力について知ってる事を話して」
さっきも言った通り嘘は吐けない。
「待ってくれ、他の事なら何でも話す」
「他の事?」
「七の苦悩についてとかどうだ!?」
七の苦悩?
「それ以上喋ったら俺が殺すよ?」
その声に怯えるかのように反応する男。
アベルが立っていた。
アベルはにやりと笑っている。
「ま、待ってくれ。まだ喋ってない!」
「口の軽い男は嫌われるのよ?」
ヒルデも現れた。
「無駄よ」
私がヒルデを睨みつけた。
「そうね、ヒルデに聞いた方が早いかも。話してもらうわよ」
「……浸食」
本人も意識してないうちに話していた。
ヒルデにも概念の上書きを使用したから。
エイリアスの指示系統に侵入して判断を停止させる能力。
エイリアスではないようだ。
私は落下の能力を使っていた男に能力を使用する。
リベリオンの否定。
男はぼーっとしてから屋上を去っていった。
「私達にも同じ真似をするつもり?」
「あなた達は保険」
今ので分かった。
アベルとヒルデは利用価値がある。
ならばこのまま放っておこう。
「気の変わらないうちにさっさと教室にもどったら?」
2人は何も言わずに戻って行った。
多分ラストアタックってやつだろう。
もっというならリベリオンの頭を掴む最後のチャンス。
絶対に逃がさない。
その手段を模索しながら屋上を後にした。
(3)
「悪いな、毎日看病に来てくれて」
毎日見舞いに来てくれる博美に感謝をしていた。
「気にしないで、好きでやっているんだから」
博美はそう言って笑っている。
母さん達は変に気を使ってあまり病室に来ない。
でも博美がいるから退屈しのぎにはなった。
「運動会には間に合うの?」
「怪我は治るけど練習ほとんどしてないからな」
そういや今年はフォークダンスだっけ?
なんで運動会にフォークダンスなのか意味が分からないけど、やれっていうならやるしかない。
やらない連中も過去にいたと聞いたけど。
最後に博美と踊ってお終いのはずだった。
「そっか残念だな」
「男と踊るって恥ずかしくないのか?」
男子からしてみたら恥ずかしい行為だけど。
すると博美は何か考え始めた。
「確かに恥ずかしいね。だから私がお見舞いに来たお礼をお願いしてもいいかな?」
「いいけど?」
この流れで「付き合って」はないなとちょっと残念だけど付き合う事にした。
「屋上にいけたよね?この病院」
動ける?と聞いてくる博美。
病院の外に出なかったらいいと言われていたので大丈夫と言うと、博美と二人で屋上にいく。
「運動会で踊れないからここで一緒に踊ってよ」
振付くらいは覚えていたから大丈夫だと答えると一緒に踊る。
そして一通り踊ると突然博美が抱き着いてきた。
「本当は運動会の本番で言おうと思ったんだけど今言うね。私は迅が好き」
「え?」
突然の告白だった。
人生初の告白に心臓がバクバク言っている。
「なんで俺なんだ?」
「そんなの分からないよ!」
人を好きになるのに理由がいるかい?……ってことか?
「理由も無いのに好きになったりするの?」
「感情は脳で左右されるんじゃない。心で感じるんだよ」
直感って事だろうか。
「迅は人を好きになった事ある?」
「いや、考えた事もなかった」
「人を好きになるとね無性につらいの」
とにかくその人の事を考えている。
昼夜問わずずっとだ。
自分以外の女子と仲良くしている俺を見ていると辛い。
だからいつか言おうと思っていても、もしも……って考えると怖くて足がすくむ。
そんなに俺の事ばかり考えていたのか。
そんな素振り全く見せなかったけど。
「……返事聞かせてくれるよね?」
「あ、ああ……」
困ったな。
好きでもないのに好きって嘘を吐くのも悪いよな。
「俺さ、博美の言うように女子を好きになった事なくてさ」
「それで?」
「それでって……」
「迅も私の事が好きでしたなんて返事は期待してない。私じゃ迅の相手には力不足なのかな?」
今にも泣き出しそうな博美の表情。
困ったな。
こんな状況考えてもなかったぞ。
でも博美に好きって言ってもらえて嬉しかった。
つまりそういう事なのか。
なんとなく答えが分かった。
それを伝える事にした。
「博美の言う通り俺はまだ好きって感情が分からない」
「うん……」
「だから博美が教えてくれないか?」
「私が?」
博美はそう言て俺の胸の上に顔を押し当てて見上げている。
こんな状況になったら小学生でも色々ダメな感情が混みあがっていく。
ぐっとこらえて話を続けた。
「俺はまだ博美が好きじゃない。それを博美が辛いと思わないのなら付き合うよ」
「本当!?」
博美が聞いてくると頷いて答えた。
「ありがとう。よろしくね。でも残念だなぁ」
「何が?」
俺が聞くとさっきとはうってかわって博美はにこりと笑った。
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