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1stSEASON
恋バナGside
しおりを挟む(1)
修学旅行二日目の夜。
エレベーターの前で神奈と出会う。
「あ、神奈」
「お、愛莉」
話はお風呂から出た後まで遡る。
「あ、遠坂さんじゃないですか?」
「遠坂さんこんばんは」
浦島君と仲摩君だ。
どっちとも話したくない。
無言で立ち去ろうとすると呼び止められる。
「少しは話しましょうよ」
「君はあっちに行っててくれないか僕は遠坂さんに用があるんだ」
どうせ禄でもない用だ。
私は一緒にいる神奈に助けを……あれ?いない?
「邪魔しないでくださいよ」
「邪魔なのは君だよ」
言い争ってる間に私は退散した。
「どこ行ってたのよ神奈」
「まあ、あれだ。違うクラスの奴に告られた」
え?
「それでどうしたの?」
「残念ながら断ったよ。知らねーやつと付き合うなんて無理」
そりゃそうだ。
「今一瞬残念がったろ?」
「そ、そんなことないよ」
「何度も言うけど、私結構我慢強いから」
「ぜ、絶対渡さないもん!」
「ああ、だといいな」
神奈はニヤニヤ笑っている。
どこまで本気なのかわからない。
その後は同室の女子とトランプやらして遊んでた。
何人かは男子の部屋に行ったみたいだけど……。
その後通路に正座させられてるのを目撃した人がいるらしい。
「どうせなら男子からくればいいのにな!入ってこれるのまゆみちゃんくらいなのに」
そう言って神奈は笑ってた。
まゆみちゃん修学旅行中睡眠不足で倒れなければいいけど……。
消灯の時間が来るとまゆみちゃんが巡回に来た。
「あ、あまり夜更かししちゃだめですよ」
と、いってばたばたと次の部屋に向かった。
「夜更かしするなって言われて寝るわけねーだろ。な?」
そう言って私に同意を求める神奈。
「私は寝るよ」
「ええ、つまんねー。折角だし怖い話とか盛り上がろうぜ」
「絶対いや!!」
「あ!愛莉怖い話だめなのか?あのさ、昔霊山で……」
「やめて!!」
私は枕をかぶり耳を塞ぐ。
「うーん詰まんないなぁ」
同室の女子が突然提案した。
「じゃあさ、恋バナとかどう?」
「あ、それなら愛莉も大丈夫だろう?」
「いいねいいね。私二人に聞きたい事があったんだ」
皆が同調する。
あ、あまり騒ぐとまゆみちゃんくるよ?
「私も私も!!」
「混ぜて混ぜて!!」
私と神奈含めて6人くらいがかたまった。
照明は当然消してある。
「で、聞きたい事って?」
神奈が質問した。
「音無さんと遠坂さんって片桐君の事が好きなんだよね?」
「うん!」
ていうか、付き合ってます!!
「まあな」
神奈も肯定した。
「こう言ったら悪いんだけど……片桐君のどこがいいの?」
「へ?」
「え?」
「なんていうか、二人とも綺麗なのに……片桐君だとつり合いとれてないっていうか」
「どうして好きになったんだろう?って……」
申し訳なさそうに聞いてくる。
「優しい所かな」
「ああ、見えていい奴なんだぜ?私は虐められてたのを助けてくれたし」
「ええ!?」
驚く四人。
そんなに意外なのかな?
ていうか他の女子から見て冬夜君てどうみられてるんだろ?
「皆は冬夜君ってどう見えてるの?」
「うーん、良い人なんだけど……って感じ?」
「良くもなく悪くもなく」
「何をするときもやる気なさそうで……」
「それそれ、少しはしゃきっとしろっていうか」
「とてもじゃなくても音無さんがいうような正義のヒーローって感じには見えない」
「なんかあのやる気の無さが老けてるように見えるんだよね」
「そうそう、それそれ」
四人とも言いたい放題だ。
「そんなことないよ!」
「まあ、やる気はない所は認めるけどな。やる時はやるやつだぜ!」
二人で抗議する。
「じゃあ、遠坂さんが言ってた優しい所ってどんなところ?」
「うーん……私も虐められたのを助けてもらったかな?上履き隠されたとき一緒に探してくれたし。机の落書き私に見られないように朝早くから消してくれてたり」
「ふーん……でもそれって単に遠坂さんの気を引きたかっただけじゃないの?」
「あいつはそんな器用な奴じゃねーよ」
神奈が援護してくれた。
何を言えば良いだろう?……あ!
「そうだ、あれがあった!」
「何々?」
神奈を含め五人が私を見る。
「あれは小六の時だったかな?……」
これから話すのは私が初めて冬夜君を意識した時のお話
(2)
小六の夏。
学校の帰り。公園のベンチにしゃがみ込む冬夜君。
……何をしてるのだろう?
そーっと近づいて、様子を伺ってみる。
「痛ぇっ!噛むところが違うだろ」
子犬にパンを与えてる冬夜君。
そういや、最近ずっと給食残してたな。
なかなか食べてもらえそうにない。
食べてもすぐに吐き出す。
「食わないと餓死しちゃうぞ」
そう言って何度も試す冬夜君。
私は気づかれないように家に帰った。
10分後
まだいた。
「なかなか食べないなぁ」
一人奮闘する冬夜君。
「こっちの方が良いと思うよ」
私が手にしていたのは牛乳。
冬夜君が振り返ると呆然としていた。
「遠坂さん?」
そんな冬夜君の横に座りよういしてきたプラスチックの皿に牛乳を少量入れ、冬夜君からパンを受け取り千切って牛乳に浸し食べさせる。
「あ、食べた!」
冬夜君の喜ぶ顔がとても素敵に思えた。
「ねえ?私も一緒に面倒見て良いかな?」
「い、いいけど」
ちょっと困惑していたけど頷く冬夜君。
それから一週間くらい一緒に子犬の面倒を見てた。
雨の日も。
楽しかった。
しかし楽しいことは長くは続かない。
一週間後一枚の張り紙を見つけた。
「迷い犬さがしてます」
公園の子犬だ。
今日も先に来て世話してる冬夜君にその事を伝える。
「……よかったじゃん。行こうぜ」
うつ向いたまま子犬を抱え飼い主のもとにいく。
「ありがとう!」
飼い主に礼を言われ帰る。
これで終わりだ。
冬夜君は本当に良かったと思ってるのかな?
帽子を深く被って俯いたまま歩く冬夜君。
「ねえ!片桐君!」
私は冬夜君に話しかけていた。
「……なに?」
「……今度から下の名前で呼んでもいい?」
「いいけど」
私の話はこれでお終い。
(3)
「トーヤらしいな」
「へえ、あの片桐君がね~。なんか意外」
「でしょ?」
得意げに言う私。
「で、それから付き合ったの?」
「いや、ずっとアタックしてみたんだけど、ダメだった。っていうか気づいてもくれなかった」
「で、バレンタインの話に続くわけか」
「うん……」
「バレンタインの話ってなになに?」
「ああ、それはな……」
「ま、まだ起きてるんですか!」
まゆみちゃんが来た。
皆一目散に自分の布団に戻る。
時計を見ると、22時半を過ぎていた。
「夜更かしはお肌に悪いですよ。ちゃ、ちゃんと寝てくださいね!」
そう言ってまゆみちゃんが巡回に戻った。
「なあ、愛莉」
「なに?神奈」
「いや……あいつ本当に不器用なんだなあって」
「そうだね」
「しかも鈍いし……」
「そこがいいとこなんだけどね」
「そうだよなぁ」
「そろそろ寝よっか」
「……」
寝てる……。
実は神奈が羨ましかった。
私が虐められてるのを助けてくれた時。
「どうして、助けてくれたの?」
「昔似たやつがいてさ……結局助けられなかったから。放っておけないんだよ」
あれって神奈の事だったんだね?
すごく悔しがっていたから羨ましかったの。
そんなに大事な人がいたんだなって。
すごく大切にしてたんだろうなって。
そんな人が目の前に現れたらきっと敵わないだろうなって。
だから神奈の事だって知ったとき怖かった。
神奈が今でも好きだって聞いた時震えた。
神様、お願いですから私から冬夜君を奪わないでって祈った。
その甲斐あったのか、今でも私を好きでいてくれている。
でも、そんなに大事な人が現れたのに、どうして私なの?
その理由はずっと秘密のままだと思っていた。
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