優等生と劣等生

和希

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1stSEASON

動揺

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(1)

1日目。
盆の入り。
大人たちは盆棚の準備などで忙しい。
ここで問題になったのはお墓参りだった。
お墓は伯父さんの家の福岡にある。
行けるわけがない。
ちゃんと墓の掃除をしているのか、1日目は伯父さんたちは来なかった。
父さん達は機嫌が悪かった。
亜子はというと、家に帰るなり部屋に籠って出てこなかった。
伯父さんが夕方ごろ到着する。

法要は明日だ。
今日はゆっくりと晩御飯を食べる。
ちゃっかりと隣に座る亜子。

「そういえば、うちの亜子が世話になったそうで」
「いえいえ、出来た娘さんで……」
「そうですよ……」
「母さんたちにお土産あるの!」

ぎょっとした。
普段とは打って変わって明るい声。
こんな声出せるんだな……。
部屋に戻る亜子。
母さんたちも唖然としてた。

「どうかしましたか?」

伯父さんが聞いてくると「いえ……」とだけ答えてた。
亜子が戻ってくる。
お土産を伯父さんたちに渡す。
「ありがとう」とお土産を受け取る伯父さん。
それから地元にいる間にあったことを話す亜子。
生き生きとした声で。
僕と愛莉の事も話してた。
自分の事だけは伏せていた。

「片桐さんの息子さんは良い子ですねえ」
「いえいえ、井上さんのところの勝也君に比べればうちの子なんて」

良くある話だ。
相手の子供さんを褒めちぎり自分の子供を比較する。
適当に聞き流してたらいい。
このあとは勝也の自慢話だろ?
そう思ってた。
亜子の言葉を聞くまでは。

「でも冬夜君も凄く優しいですよ。私お嫁さんになりたいくらい」

お茶吹きそうになった。
な、なにを言い出すんだ。

「何言ってるの?亜子ちゃんは可愛いし頭いいしうちの子にはもったいないわ」
「でも愛莉さんもそうじゃない。私なんかよりずっと可愛いし」

そう言って自分のスマホを取り出すと何やら操作を始めた。

「この人なんだけど」

そう言って自分の両親にスマホを見せる亜子。
写真撮ってたのか?

「なかなか可愛いじゃないか」

そのあとに「でも、うちの娘ほどではないな」と付いてくるのが分かってますよ。

「いつの間に写真撮ったんだ?」
「あら?いけなかった?二人共あまりにも仲良さそうだったから、つい。ごめんなさい」
「写真くらいいいじゃないか」

父さんがそう言うのでそれ以上は何も言えなかった。

その後父さんたちはビールを飲み、酔い始めたので早々に退散した。
勝也はまだ部屋に残っている。
勝也の話を肴に盛り上がっているらしい。
笑い声が寝室にまで聞こえてくる。
僕はいつの間にか眠っていた。

(2)
二日目。

法要が始まる。
正座がつらい。
木魚の音がやっぱりなれない。
終わった後立てなかった。

「大丈夫?」

そう言って手を差し出したのは亜子だった。

「大丈夫、自分で立てる」

そう言って一人で立ち上がろうとしたのが間違いだった。
足がしびれて力が入らない。
姿勢を崩して倒れる僕。
当然亜子に支えられるわけがなく。
僕が亜子を押し倒す形になった。
勢いあまって亜子の頬にキスする形になる。

「なにやってんだ冬夜!」

父さんに怒られる。

「いや、足がしびれて立てなくて」
「全くしょうがない奴だな」

呆れた父さんの手を掴み起き上がる。

「ごめん亜子」
「いいよ、気にしないで」


その日は昨日より来客が多かった。
当然夜は大盛り上がりだった。
弁当だけじゃ足りなかった僕は近所のハンバーガーショップに食べにでかけた。
勝也は相変わらず話題の中心の為、家を出ることが出来ない。
叔父さんが「奢ったる」というのでお言葉に甘えることにした。
すると亜子もついてくるという。
別に構わないけど。
叔父さんとは話が良く弾む。
と、叔父さんの子供……従弟の事とか、僕からは愛莉や神奈達の話をしていた。
亜子は後ろで話を聞いていた。
ハンバーガーショップでハンバーガーを食べる。
亜子はオニオンリングとブドウジュースを口にしていた。
それだけでいいのか?
帰り道も同じだった。
叔父さんは気を使ったのか亜子にも話を振った。

「亜子ちゃん冬夜君の地元はどうだった?」
「人が多すぎて大変でした」
「冬夜君の彼女も一緒だったんだって?」
「ええ、凄く仲が良かったですよ」

笑いながら答える亜子。

「私も冬夜君みたいな彼氏欲しいな」

と、余計な一言も忘れずに。

「と、言ってるよ。冬夜君、今の彼女がダメなら亜子さんと付き合ったらどうだい?」
「別れませんから!」

僕はきっぱり言った。
多分別れない、うん、そう思う、……大丈夫だよな?

「そうですよ、凄いラブラブなんですからそんな事言ったらだめですよ。叔父さん」

そう言いながらも腕を組む亜子。
こういう時抵抗しない僕にも問題あるよね。
暗がりで叔父さんからは良く見えなかったんだろう、何も言ってこなかった。
家に帰ると僕は寝ようと思ったが、愛莉に電話するのを忘れてた。
外に出て電話する。

「もしもし~?」
「愛莉、僕だけど」
「わかってるよ~。どうだった?」
「どうだったって?」
「だから~。亜子さんは何もしてこなかった?」
「何もないよ。心配しないで」

俺全然信用されてないのか?

「そう、ならいいけど。明日には帰ってくるんでしょ?」
「うん」
「帰ったらメッセージちょうだいね」
「わかってるよ」

それからしばらく話をして電話を切った。
振り返ると亜子が立っていた。

「な、なにしてるんだ?」

わけもなく焦る僕。

「別に、冬夜君が立っていたから何してるんだろう?って」

また淡々とした口調に戻ってる。

「だからってなにも言わずに背後に立つことないだろ?」
「電話中だったから邪魔したら悪いなと思って」

なるほどね。
ってそんなわけない!!

「盗み聞きみたいだな真似はよせよ」
「聞かれたらまずそうな話じゃなかったみたいだったから」

悪びれもなくそう言う亜子。

「何か用?」
「別に何も」
「そうか、じゃ……」

そう言って、家に戻る僕。
家に戻ると早々と寝た。

明日には帰る。
あ、お土産買っておかないとな。
途中で道の駅にでも寄ってもらうか。
そんな事を考えながら眠りについていた

(3)

明日冬夜君が帰ってくる。
それだけでも明日が待ち遠しい。

「明日は私らいかないから、二人でゆっくりしてろよ。トーヤも疲れてるだろうし」

神奈からもメッセージだ。
そうだろうな、疲れてるだろうな。
……すぐに寝たりしないだろうな?
でも休ませてあげたい。
そんな事を考えていると着信音が。

登録してない電話番号だ。
普段なら相手にしない。
でもなぜか、この時は胸騒ぎがして……出た。
無視すればよかったとすぐに後悔した。

「……亜子です」
「どうしてこの電話番号を?」
「冬夜君に聞いたの」

冬夜君……なんで、人の電話番号を勝手に……教えるような人だっけ?

「嘘、冬夜君の着信履歴から調べたの」

まだロックかけてなかったの?

「ロックはかけてあったわ。指紋認証って案外楽に解除できるのね」

そういうことか……って、え……?

「冬夜君は何してるの?」
「私の隣で寝てるわ」

またあの人は……どこまでガードが緩いんだ。

「て、言いたいけど今日は寝室で寝てるわ、私は自分の部屋」

ほっとした。

「で、何の用ですか?」
「今日彼にキスされちゃった。頬にだけど」
「あ、そう」

平静を装ったものの内心動揺していた。
キスって……。

「まあ、ただの接触事故なんだけどね」
「言いたい事はそれだけ?」

この人は私たちを揶揄って遊んでるだけだ。
まともに相手してたら疲れてしまう。

「あなたの事色々聞かせてもらったわ」
「そう」
「一緒に進学するんですって?」
「そうよ」
「もう一人の友達……神奈さんだっけ?も一緒だとか……」
「それがどうかしたの?」
「随分余裕ね。もうすでに勝ち誇ってるみたい」
「どういう意味?」
「そのままの意味よ。もう自分と冬夜君は大丈夫だと思い込んでる」
「そんなの亜子さんに関係ない」
「せいぜい足元すくわれないようにするのね」
「どういうこと?」
「例えば、今私が寝室に忍び込んで冬夜君を襲うとか」
「そんなの無理だし!」
「例えばの話よ。本当にすぐムキになるのね」

しまった。

「まだ、冬夜君の事信用していないでしょ?」
「してるよ」
「じゃあ、どうしてそんなにすぐ動揺するの?」

う……。

「冬夜君に揺るがないでって言っておいて自分はすぐに揺らぐ。随分都合の良い話ね。そんなだと必ずどっちかが疲れてしまう。自滅する日も近いかもね」
「……」
「その後に冬夜君を慰めでもして頂くとするわ」
「そんなこと絶対にない!」
「だといいわね。じゃあね……」

電話はそこで終わった。
なんなのあの人!?
でも……当たってる。
私揺らいでる?
急に不安になった。
また冬夜君の重荷になるの?
時計を見る。まだ22時だった。
神奈起きてるかなぁ。
神奈くらいしか相談する相手がいない。
神奈に電話していた。

「お、愛莉珍しいな。どうした!?」

騒がしい、誠君とデート中だったかな?

「……取り込み中なら後ででも良いんだけど」
「ああ、今ゲームやっててさ。大丈夫ボリューム落とすよ」

静かになった。

「で、どうした?」
「神奈!!あのね……」

私は神奈にさっきまでの事を洗いざらい話した。
神奈は静かに聞いていた。

「……なるほどね」
「私どうしたらいい?また冬夜君に負担かけてる?」
「……そうだな。かけてるって言ったらどうする?」

え?
やっぱりそうなのかな?

「どうする?別れた方が良いって言ったら別れるか?」
「そんなの嫌!!」

私は叫んでいた。
絶対いやだ。
すると、神奈は笑いながら言った。

「それでいいんだよ。揺さぶられてるだけだよ愛莉は。真に受けてたら駄目だ本当に自滅してしまうぞ。断言する。冬夜は負担になんて思ってないよ。逆だよ。負担にならないように頑張ってる。二人共心配しすぎだよ」
「うん」
「相手にするな、揺さぶって動揺させて愛莉を自滅させようとしてるだけだ。冬夜に甘えてればいいんだよ」
「うん」
「……自信持てよ。羨ましいくらいのカップルだぞ。大丈夫だよ」
「わかった」

こういう時の神奈の言葉は頼もしい。

「じゃあな。明日は二日分甘えてやれ」

そう言うと神奈は電話を切った。
不安が消えていた。
ゆっくり休むとしよう。
明日は冬夜君に甘えるんだ。

(4)

3日目。
伯父さんたちはそそくさと帰って行った。
僕たちも昼過ぎには帰ることにした。

「じゃあ、またね」

亜子がそう言って見送る。

「ああ、またな」

そう言った後、驚きの行動を見せる亜子。
一応言っておこう。
お祖母さんとうちの親と叔父さんがいる。
その目の前で僕にキスしてみせたのだ。

「またね」

そう言って笑う亜子。
その後車の中でさんざん言われる。
叔父さんを駅まで送って家路についた。


家に帰ると疲れた……。眠い。ひと眠りしよう。
あ、その前に愛莉にメッセージ送っておかないと。

「帰ったよ」

そう一言送って眠りにつく。

ピンポーン。

呼び鈴が鳴る。
母さんが出る。

「あら、愛莉ちゃんいらっしゃい」
「冬夜君部屋にいますか?」
「いるわよ、疲れてるみたいだけど……あらあら」

どたどたと階段を上ってくる音がする。
その音は部屋のドアの前で止まって代わりにガチャっと音がする。

ドアを開けた本人は僕をみつけると飛びつく。

「冬夜君おかえり!!」

嬉しそうだ。
喜び抱き着く愛莉。
僕も抱き返す。

「あのね……」

愛莉の話は30分くらい続いた。

亜子が僕のスマホから愛莉の番号を盗んだ事。
亜子と愛莉の会話。
そしてカンナと愛莉の会話。
後は愛莉が思ってる事。
全部聞いた後僕は口づけして答えた。

「大丈夫だよ。愛莉が揺らいでも支えてみせるから」
「うん!」

満足気な愛莉。
気持ちが昂ってるけど……疲れてる。
机の引き出しにしまってるアレを使うのはまだまだ先の話だった。
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