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1stSEASON
歪な感情
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次の日、早朝からサファリパークに向かう。
きゃっきゃとはしゃぐ愛莉。
相変わらずとらえどころのない亜子。
僕は……愛莉に合わせてた。
亜子の真意も気になるけど。
ライオンの赤ちゃんと記念撮影の時にやっぱりもめた。
「冬夜君と記念撮影したい」
「私がするの!!」
「愛莉はまた今度でいいだろ?」と言おうものなら烈火のごとく怒る愛莉が目に浮かぶ。
結論、2回撮ればいい。
……疲れた。
キャットサロンで猫と戯れる愛莉。
それをぼーっと見ている僕。
そんな僕の隣にすっと座る亜子。
「あんな彼女を持つと冬夜君も大変ね」
と、相変わらず事務的な口調で言う亜子。
「……ああいうところを含めて好きだから」
「そうなんだ。羨ましいわ、愛莉さんが」
「亜子の前にも現れるさ、そう言う人が」
「冬夜君じゃダメなの?」
どこまで本気なんだ?
上目遣いで言ってくる亜子。
普通の男ならこれだけでドキッとするだろう。
「僕には愛莉がいるから」
愛莉を見ながら話す。
「付け入る隙はあると思ったんだけど」
「傍から見るとそうかもしれないな」
「私まだ諦めてないから」
淡々と話す亜子。
「亜子は本気じゃないだろ?」
「そう言える根拠は?」
「愛莉を揶揄っているようにしか思えない」
「自分の事にはてんで疎いのね」
「どういう意味だよ?」
亜子はじっと僕を見る。
「……まだわかんない?」
「全然わからない」
「……重症ね」
「何二人でやってるの?」
愛莉がやってきた。
「……彼女さんの方が敏感のようね」
「何話してたの?」
愛莉が尋ねてくると亜子はとんでもないことを言い出した。
「冬夜君が私の気持ちに全然気づいてくれなくて」
淡々と言われても全然実感わかないぞ。
と、思ったけど……。
「え?」
愛莉の表情が険しくなる。
愛莉、本気にしてるのか?
「……て、言ったらどうする?」
そう言ってにこりと笑う亜子。
目は笑ってない。
「ど、どうもしないよ。冬夜君信じてるから」
動揺してるぞ愛莉。
「そう、それならいいわ……そうこないと張り合いがない」
亜子はそう言うとその場から離れて猫と戯れだす。
全く意味が分からない。
どうしたいんだ亜子は?
「おーいそろそろ行くぞー!」
父さんが呼んでいる。
「亜子そろそろ行こう」
亜子を呼び自分も出ようとしたとき袖を引っ張る愛莉が居た。
表情が陰ってる。
ひょっとして不安なの?
そう思うより先に僕は行動に出ていた。
愛莉の肩を抱きぽんぽんと叩く。
寄り添う愛莉。
「大丈夫だよ」
「うん」
こういう場所だとちょっとくらいいちゃついても気にならないよね?
(2)
とある観光地。
駐車するのに一苦労した末、お昼ごはんを食べたのは2時過ぎだった。
やっぱり地元に来たのならとり天を……いや、団子汁も捨てがたいよね。
と、亜子に勧める。
亜子は団子汁を選んだ。
僕は……。
「冬夜君食べ過ぎ!!」
いつも通りのパターンだ。
ええ、両方食べました。
「あまり口うるさい女は嫌われるわよ」
亜子の一言に何も言い返せない愛莉。
「でも、冬夜には少しきつめの子の方がいいかもね~」
母さんがフォローする。
「そうだな、ぼ~っとしてるところあるし」
父さんも加勢する。
ホッとする愛莉。
そんなに気にしなくていいのに。
「犬」
「猫!」
亜子と愛莉の意見が真っ向から対立する中ぼくはしれっとソフトクリームを食べていた。
これ食べ終わったら、コロッケ食べるんだ。
「冬夜君はどっち?」
「うーん……お土産なら良い和菓子屋が……」
「……話聞いてた?」
あ、しまった。
愛莉の視線が痛いよ。
きっと怒ってる。
……あれ?怒ってない?
何かを訴えるようなこっちを見てる。
「……猫だよね?」
そんな目で見られたら断れないじゃないか。
実際、和菓子屋さんとか某アニメの店とかの方が興味あるんだけど。
……あとオルゴールとか。
「じゃあ、亜子ちゃんは私たちと犬を見に行きましょうか?」
「両方でいいです。時間はあるんでしょ?」
「そうねえ、まあゆっくりしていきましょうか?折角だし」
母さんがそう言うと決まった。
ちゃっかりコロッケは食べた。
その後ジェラートも食べた。
「……冬夜君は食べてれば幸せなのね」
「まあね」
色々食べて気分がいい僕は亜子の問いに軽く答えた。
「好きな食べものあるの?」
亜子は質問してくる。
「肉!」
「随分大雑把ね」
「鳥豚牛!!何でも来いだよ!」
「冬夜君、これみて。可愛いよ!」
愛莉が懸命に会話に割って入る。
「……猫は食えないわね」
「……まあね」
「あ、これ可愛い。神奈にお土産に買って行こう」
そう言ってレジに持って行く。
「どうしてああいう人を好きになったの?」
「分からない。気づいたら好きになってた」
そう言いながらレジで会計を済ませる愛莉を眺める。
「逆に聞くけどさ」
「なに?」
「なんで俺なんだ?亜子にはもっといい人が」
「それって他人が決める事?」
「それはそうだけど」
「私が誰を好きになるかは私の自由でしょ?」
確かに。
「冬夜君、買ってきたよ」
駆け寄る愛莉。
「じゃ、犬観に行こ?観たいんでしょ?亜子さん」
だが、亜子は突然言い出した。
「冬夜君、私オルゴールの店に行きたい」
「え?」
へ?
面食らったのは僕だけじゃないらしい。
「ま、まあ亜子がそう言うなら良いけど」
そう言って母さんたちを探して移動することを伝える。
オルゴールの店ってさ、自分の好きな曲見つけると嬉しいよね。
つい買いたくなったり。
この曲神奈にいいだろうな?
亜子を見ると亜子もお気に入りのがあったらしい。
レジに持って行ってた。
「亜子さんってよくわからない……」
いつの間にか隣にいた愛莉がそう呟いた。
「確かにな」
「何を考えてるんだろう?」
それは僕も思った。
亜子の事は本当にわからない。
その後も和菓子屋さんやら、お土産屋さんをまわって、お祖母さんや誠へのお土産を買う。
そして、帰路についた。
(3)
冬夜君は疲れていたのか、それとも腹が満たされて眠いのかわからないけど車の中で寝ていた。
「ねえ?」
亜子さんが、私に話しかけてきた。
今度はなんだ?
私は身構える。
「冬夜君のどこが好きになったの?」
ごく普通の質問だった。
「それ、冬夜君に聞いてないの?」
「聞いてるわ、優しいところだって」
「それなら聞く事ないんじゃない?」
「でもただの優柔不断、八方美人てだけじゃない?」
「……亜子さんはどこが好きになったの?」
「別に好きじゃないわよ?」
え?
「でも、好きだって……」
「あなた達の関係をぶち壊したかっただけよ」
え?
「そんなの無理、だって冬夜君は……」
ずっと私と一緒だって。
「彼、平凡でしょ?何のとりえもない。私の兄と一緒。それなのに長男だってことで期待されてる。私の事は見てくれない」
「……」
「冬夜君も同じだと思ってた。でも、あなたが現れた。それであなたの話で親族皆大盛り上がり」
「それが私と冬夜君の関係を壊す理由」
「あなたが居なければ冬夜君は何の期待もされないただの親戚だもの」
「それは間違ってるよ。冬夜君にもいいところあるよ?」
「優しいだけの男に何の価値があるの?」
「優しいだけで十分じゃない?」
「あなたではつり合いが取れてない」
「決めつけないで!」
私はまた大声をだしていた。
「ど、どうしたんだ?」
冬夜君のパパさんが聞いてきた。
「ごめんなさい、なんでもありません」
そう言って頭を下げる。
「そうして、動揺してるあなた観るの嫌いじゃないわよ」
「!?」
「今日まで何もなかったけど。初盆は私たち二人よ」
「……冬夜君なら大丈夫。私信じてるから」
「そう……、だといいわね」
そうして彼女も眠りについた。
その晩は彼女も疲れていたのか、家に帰るとすぐに眠りについた。
私も疲れていたのか、すぐに寝た。
そして次の日の朝。
「じゃあ、私たち行ってくるから」
麻耶さんがそういう。
「気をつけて」
精一杯元気に言ったつもりだった。
幾らなんでも初盆に何かあるわけがない。
やるわけがない。
そう思ってた。
「3日間楽しかったわ。また会えるといいわね」
そう言って亜子さんは車に乗る。
「愛莉……、大丈夫だよ。何も心配いらないから」
冬夜君は何かを察してくれたのかそう私の耳元で囁いた。
「うん」
最後に麻耶さんが、言ってくれた。
「冬夜たちは私たちがちゃんと見てるから心配いらないわよ」
そうして冬夜君たちを乗せた車は実家へ向かって走るのだった。
(4)
「……行かせて本当に大丈夫なのか?」
家に心配して様子を見に来た神奈たちが心配そうに言う。
「……大丈夫だよ。行かせないわけにもいかないでしょ?」
私はそう断言した。
「何でそう言えるんだ、今までの冬夜見てたら分かるだろ?あいつすぐに流されやすいから」
「俺もそう思う。ちょっと同情を惹こうものならすぐに……」
「それはないよ」
私は二人の意見を否定した。
「なんでそこまで冬夜を信じられるんだ?」
誠君が聞いてきた。
「だって、冬夜君変わったよ?」
「え?」
誠君と神奈が口をそろえて言う。
「冬夜君一度決めたことは守るから。それだけは確かだから。優柔不断だけど、頑ななところもあるから」
「……信じてるんだな。トーヤの事」
「うん、」
冬夜君が大丈夫って言った、
今までならそれだけでは不安だったけど、あの晩の事もある。
「私も揺るがないって決めたんだ。冬夜君、ああ見えてしっかりしてきたから」
「羨ましいな、冬夜が」
誠君はそう言うとそれ以上何も言わなかった。
神奈も何も言わない。
「あ、二人にお土産あるんだよ!」
「お、いつも悪いな」
「いいのいいの!」
私は話題を変えた。
この話をいつまでも引きずっても仕方ない。
後は待つのみなんだから、
そして、短いようで長い三日間が始まるのだった。
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