優等生と劣等生

和希

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1stSEASON

暮れなずむ空

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(1)

10月5日

「お早うございます」

僕はいつもより1時間早く起きて愛莉の家に来ていた。

「あら、こんな時間に珍しいわね~、まだ寝てると思うけど~、ちょっとまっててね~」

そう言って2階に上がろうとするおばさんを慌てて呼び止める。

「出来れば寝ていた方がありがたいのですが……」
「あら夜這い?……て時間でもないわね~。でもついにその気になったのね~。愛莉ちゃんなら起きてても大丈夫よ~」

どこから突っ込めばいいのかわからないが、手に持ったものを見せる。
お願いだから気づいて。
願いは通じた。

「じゃあ、ごゆっくり~。おばさん、上には行かないからね~」

どこまで通じてるのかわからないけどとりあえず愛莉の部屋に忍び込む。
……やっぱりただの変質者だよな。
女子が男子の部屋に忍び込むのは許されてその逆が許されないなんてあっていいはずがない。
そう思い、この計画を実行に移したが、やはり後ろめたいものがある。
そーっと愛莉の顔を覗き込む。
ヤッパリ寝顔もかわいい。
愛莉……ごめん。
そして手に持っていたクラッカーを鳴らす!!

がばっと上身を起こす愛莉。
何が起こったか分かっていないらしい。
当然だろうな。
そして僕の顔をしばらく見つめてる。
数秒見た後声を上げる。

「冬夜君何してるの……!?」

わあ!声がでかい!
慌てて手で愛莉の口を塞ぐが混乱が収まらない。
こうなったら奥の手。
愛莉の口を僕の口で塞ぐ。

「ん……う……」

念には念を入れて舌と含ませる。
愛莉の強張った身体から力が抜けていくのが分かった。
落ち着いたかな。
そう判断して口を離すと彼女は大人しくなっていた……。

「もう、終わりなの?」

なんか不満の様だ。
どうやら勘違いしてるらしい。
クラッカー鳴らして夜這いする馬鹿がどこにいる?

「……お誕生日おめでとう」

そう言って僕はもう一個の荷物を取り出す。
それは、前に買っておいたオルゴールだった。
メッセージカードも付けてある。

「わーい、ありがとう!開けてもいい?」

喜ぶ愛莉。僕は頷く。

開くと青いガラスケースのオルゴールとメッセージカードが。

「お誕生日おめでとう」

ごめん、ボキャブラリーがないんだ。
一生懸命考えた結果シンプルイズベストと判断し手この一言にした。
愛莉はオルゴールのねじを巻く。
僕たちが生まれる前にヒットしたJPOPの曲。
今でも知ってる人は多いと思う。
愛莉ママも好きだったらしい。

「わーい。ずっと大切にするね」

そう言って喜ぶ愛莉。
しばらくは喜んでいたのだが、急に顔を隠した。

「わ、私寝起きだよ!見ないで!てかなんでりえちゃん部屋に入れたね?」
「ご、ごめん。すぐ出るから!」
「う、うん!下で待ってて」
「わかった」

そうして朝のサプライズは多分成功した……よな?


1階のリビングでお茶をご馳走になってると愛莉が着替えて降りてきた。

「りえちゃん!なんで冬夜君を入れたの?」
「だって~いつも冬夜君の部屋には入ってるんでしょ~?」
「そ、そうだけど~」
「自分は大丈夫で冬夜君がだめってのは不公平じゃない~?」
「う、うう……でも私女の子だよ」
「一緒の部屋に泊まる仲なんでしょ~?」
「そ、そうだけど……」
「じゃ、今更気にする必要ないわね~」

色々突っ込みどころはあると思うのだが、愛莉ママに説得される形になった愛莉。
時計は7時前だった。

「そうそう、それよりも冬夜君お誘いしなくていいの?」
「あ、そうだ!」

愛莉は僕の顔を見て言う。

「今日私の家で私のお誕生日パーティするんだけど、来るよね!」

もう参加が確定してるらしい。
特に予定もないしいっか?

「何時からかな?」
「多分学校終わって準備して……20時くらいからかな?」
「大丈夫だよ」
「わ~い。あ、誠君と神奈も誘っておかないと」

そう言って愛莉はスマホを操作し始める。
誠と神奈……あ!!

「ごめん愛莉。誠と神奈に話してなかった。いったん家に戻るわ」
「え?今冬夜君私の家にいるって送ったよ?」
「ば……そんな事言ったら?」
「言ったら?」

やっぱり愛莉には一生敵いそうにない。

メッセージが僕のスマホに届いた。

「トーヤも随分やることが大胆になってきたな」
「お前……最低限のマナーは守れよ」

登校中この二人に弄られることになったのは言うまでもない。


(2)

下校後僕と誠とカンナは家で時間になるまで勉強していた。
まあ、誠とカンナはおしゃべりに夢中だったわけだが。

「でもよく愛莉のおばさん、冬夜を中にいれたな」

誠が言うことが普通だよな。

「そこが愛莉のおばさんのすげーところなんだよ。愛莉が恥ずかしがってるってのが意外なんだって」

確かにあそこまで恥ずかしがる愛莉は久々に見た。
あれが地なんだろうか?
もともと大人しい性格だからな。
あれの方が似合ってるか。

「でも、そういうのいいよな。普段の遠坂さんとギャップあって」
「愛莉は昔は大人しくて恥ずかしがり屋だったんだよ。カンナもだけど」
「馬鹿!私の話は今はいいだろ!」

慌てる神奈。

「へえ、冬夜は何でも知ってるんだな」
「これから知ればいいさ、カンナの事を。聞けば教えてやるぜ」

ぼふっ!

僕の枕が顔面に命中した。

「トーヤ……ばらしたらお前の過去もバラしてやるからな」

それは困る。

「じょ、冗談だよ!」
「なら良し!誠も余計な事詮索してんじゃねーぞ」
「わかってるよ、昔の神奈より今の神奈の方が大事だよ」
「ならいいんだ」

この二人も前と違って自然体で仲が良くなったんだな。
誠からも相談こないし。
ちゃんと付き合ってんだな。


そうこうしてる間に時計は19時50分を指していた。

「そろそろ行こうか」

そう言って席を立つころ、呼び鈴が鳴る。

「来たみたいだな」
「行くか」

そう言って3人で玄関に出る。
愛莉が待っていた。

「お待たせ~行こっ」


バースデーケーキの蝋燭に火がともされる。
そして照明が消える。
愛莉は蝋燭の日を消す。
電気をつける。

「お誕生日おめでとう!」

皆で乾杯する。

「皆ありがとう!」

それからは、僕と誠はご馳走にありつく。
愛莉はカンナと何か話している。
大体食い尽くしたかという頃。
突然「帰るわ」と言いだすカンナ。
誠もだ。

「あら~もう少しゆっくりしていけばいいのに~」

愛莉ママがそう言うと誠が

「そろそろ神奈送り届けないと。時間が遅いし」

意外と真面目なんだな。誠。

「じゃあ、僕もそろそろ帰るかな」
「冬夜はゆっくりしていけ、明日休みなんだし」
「でも、明日も朝から勉強なんだろ?」
「そうだ~!」

こういう時の「そうだ」はろくでもない事を考えてることに違いない。
今までの経験からしてそうだ。
当って欲しくなかったが。
当るんだよね……。

「明日うちで勉強しよ?そしたら冬夜君帰らなくて済むじゃん」
「冬夜君がその気なら私たちは構わないわよ~。ね?パパさん」
「う、うむ」

僕に拒否権はないのか。

「で、でも着替えとか取ってこなくちゃ」
「取ってくればいいじゃん!」

カンナが逃げ道を塞いだ。
うん、わかっていたんだ。無駄な抵抗だって。

「ついでにアレも取って来いよ」

誠が耳打ちする。
ば……何言ってんだ!!

「じゃあ、その間にお風呂入って待ってるね~」
「じゃあ、私らは退散するか誠」
「そうだな帰ろうか」
「お、俺も一旦家に……」
「冬夜君~ちょっといいかしら~」

愛莉ママに呼び止められた。
なんだろう?

「ひょっとして迷惑に思ってない~?うちの子強引だから~」
「そんなことないですよ」

てか、あんたも共犯者だろ。

「だと、いいんだけど~……」
「……母さん、冬夜君には冬夜君なりの考えがあるんだよ。……そっとしてやりなさい」
「パパさん……は~い」

飲んでるわけでもない。
愛莉パパが話すの久しぶりに聞いたぞ。

「冬夜君……その……なんだ……まだパパになるのは早いからな……。それだけは守ってくれ」
「わ、分かってますよ」
「なら、私は構わない……母さん、ビールを頼む」
「え~、今日は飲まないって言ってたのに~」
「飲みたい気分なんだ」
「は~い」

その間に僕は家に帰った。

(3)

次の日の朝、カーテンの隙間から差し込む光がまぶしくて目が覚める。
隣には寝間着の開けた愛莉が僕の左腕を枕にしてまだ眠っている。
動くと起こしちゃうかな。
スマホの時計を見るとまだ7時半だった。
ちょっと起こすには早いな。
もうひと眠りするかな。

「う、うん……」

愛莉も目が覚めたようだ。

やらないとダメかな……。やってやるか。

「おはよう」

耳元で囁くと。うっすら目を開ける愛莉。
数秒たって飛び起きた。

「冬夜君!?……あ、そうか」

意識が目覚め記憶を取り戻したらしい。



結論から言おう。
何もなかった。
このチキン野郎?何とでも言え。
家に帰ったついでに風呂に入って着替えて愛莉の部屋にもどるとベッドに寝ている愛莉が居た。

「誘っておいてこれかよ」

ため息交じりに呟くと。僕は愛莉の隣に寝る。

「ん……」

起こしたか?と思ったけどそのあとすやすやと寝息を立てて寝ていた。
この日はどうかしてた。
念のため持ってきたアレも今日も出番は無いらしい。
アレって消費期限どれくらいなんだろ?
開封しなきゃ大丈夫なのかな?
今度誠にでも聞いてみるか。
それにしても無防備すぎるだろ?
少しくらい警戒しろよ。
そんなに無防備だと……。
やってしまった。
彼女のパジャマのボタンを外すと白いそれが二つある。
ヤッパリ綺麗だ。
それをとりあえず揉んでみた。

「う、ん……」

彼女から吐息がもれる。

……これ以上やったら起きちゃうかな。

「冬夜君?」

起こしてしまったようだ。
しかし、まだ自分の状態に気づいていないらしい。

「腕枕~」

言われるがままに左腕を出してやった。
そこに頭を乗せしがみつく愛莉。
そしてそのまま寝てしまう。


それで終わり。
ええ、チキンですよ。
でもこれでも苦労したんだ。
若い男なら分かるだろ?
胸を露出した(させた?)若い女子が無防備にしがみついて寝てるのを想像してみ?
普通は……やるよね?
自分を抑えるのに必死だった。
素数を数えたり色々試したところなんとか寝ることが出来た。
そして今に至る。

「あれ?どうして私ボタン外れてるんだろう?」

自分の恰好の異変にやっと気づいたようだ。
元に戻しておくべきだったか。
明らかに動揺している僕。
それに気づいたのか

「はは~ん、犯人は冬夜君か~」

まあ、ばれるよね?

「冬夜君も男の子だね。でも今度はちゃんと起きてる時にしてね」

起きてる時にしたらばれちゃうだろ……。

「今日は……気にならないのか?」
「何が?」
「その……寝顔見られて」
「驚いたよ。でもずっと一緒だと平気なんだよね。おかしいね。今の状態の方が余程恥ずかしいのに」

そう笑いながらボタンを止める愛莉。

「起きてる時ならいいのか?ずっと一緒ならいいのか?」
「へ?う、うん」
「愛莉!!」

僕は愛莉を押し倒してた。
朝ってやけに劣情が増してるよね?
欲望のままに愛莉を押し倒す

「冬夜君!?」
「今なら……いいんだよな?」

愛莉はその意味を理解したのか……「うん」と短く答えた。

「痛くしないでね。優しくしてね……初めてだから」
「僕も初めてだよ……」

そして彼女のパジャマのボタンをはずそうとしたとき。

コンコン。
「愛莉ちゃん~?冬夜君~?朝ごはん出来たわよ~」

愛莉ママだ。
僕はとっさに愛莉から離れる。
愛莉も手櫛でさっと髪を整える。

「は~い、今行きま~す」

愛莉が返事した。
精一杯勇気を出した結果がこれか。
人間感情がキャパシティを超えると笑いしか出なくなるよね?
がっくりと肩を落としベッドに腰掛ける僕に後ろから抱き着く愛莉。

「惜しかったね。次の機会……冬夜君の誕生日かな?楽しみにしてるね」

(4)

「冬夜君たちのクラスは美樹本先生のピアノ演奏なんだって?」

何で知ってるんだ?

「だって、体育館の使用許可届願出てたから」

あ、そうか。生徒会副会長だったな。

「そうなんだよ。ミッキー張り切っちゃってさ」
「お蔭で俺たちは楽できるけどな」

カンナと誠がそう言っている。

「愛莉のクラスはなにするんだ?」

カンナが愛莉に質問する。

「なんかプラネタリウム作るって言ってた」
「そっかプラネタリウムか……誠一緒に見に行くか?」
「いいけど。神奈。天体とかに興味あったの?」
「ねーよ、ただムード的にさ」
「教室ではさすがにいちゃつけないよ」

散々いちゃついてるだろ。

「変な事考えてるんじゃねーよ。誠」

そう言って誠の尻を蹴るカンナ。

「いいなぁ、二人は一緒に行動できて。私はずっと生徒会室だよ」

愛莉がそう言うとカンナと誠は互いの顔を見てにやっと笑う。
何か企んでるな?


文化祭当日。

ミッキーのピアノ演奏。
日頃練習してるのは嘘じゃないらしい。
素人の僕でも上手いのが分かった。
……曲は知らないけど。
しーんとミッキーのピアノ演奏に聞き惚れる生徒たち。
演奏が終わると拍手喝采が響き渡る。
ミッキーに花束を渡すのはカンナの役目だった。
カンナがミッキーに花束を渡した時、ミッキーがカンナを軽く抱きしめる。
ヒューヒューと冷やかされるなかカンナは笑っていた。
背中からは怒りのオーラが放たれていたが。

その後アンコールに応え。無事に終わった。
誠とカンナは、一緒に出し物を見に行ってる。
僕は教室で机に突っ伏して寝てた。



「冬夜君、起きて。帰ろう?」

愛莉の声が聞こえる。
うん?愛莉?

「何で愛莉が!って今何時!?」
「18時過ぎだよ」
「カンナ達は?」
「メッセージ見た?」

スマホを見る。

「先に帰る。今日は勉強会パスな!二人でゆっくりしろ。お前の為じゃない。愛莉の為だからな!」

「どう?」
「着てた」

僕は愛莉にスマホの画面を見せる。
すると愛莉の自分のスマホの画面を見せてくれた。

「多分冬夜爆睡してる。帰りに起こしてやってくれ。あと今日はトーヤの家いかないから。二人でごゆっくり~」

こういう事には知恵が働くんだな、カンナは。

「とりあえず帰ろっか」
「そうだな」


もうすっかり暗くなっていた。
田舎な為あまり外灯が無く車の明かりだけが辺りを照らす。

「喉渇いたしコンビニ寄って行かね?」
「生徒副会長の前で堂々と買い食い宣言するわけ?」
「だめ?」

僕がそう聞くと愛莉はにっこり笑った。

「いいよ、ただしジュースだけだからね」

う、さよなら僕のから揚げ……。

スポーツ飲料を買うと一気に飲み干す。

「すごいねぇ」

驚く愛莉。
スポーツ飲料くらい一気飲みできますよ。
その後家に帰る。

「後で行くね」

愛莉はそう言って自分の家に帰った。
ご飯を食べ、風呂に入ってのんびりしてると愛莉が来る。
二人で向かい合ってお勉強。
懐かしいな、この雰囲気。
中1の時だったか。
何を考えていただろう?
愛莉は何を考えていただろう?

「なあ、愛莉」
「なーに?」
「久しぶりだよな。二人きりの勉強会」
「そうだね、今年は生徒会で忙しかったから……。あ!!」
「どうした?」
「お泊りセット忘れてた!」

いや、そうじゃなくて……

「二人きりの時何考えてた?」
「何も考えてなかったよ。ただ幸せだった」
「そうなのか」
「冬夜君は何考えたの?」
「多分何も考えてなかった。付き合ってるって実感すらなかったから」
「今は?」

愛莉のペンが止まった。
答えを待ってるかのようににっこりと笑ってる。

「分かってるんだろ?」
「うん、聞かせて」
「幸せだよ」
「……ありがとう」
「こちらこそ……」

女心と秋の空は変わりやすいと言われるけど。
少なくとも愛莉の心は変わらないようだ。


愛莉を送って家に戻ると、父さんに呼ばれる。

「勝也君な、登校拒否をやめたらしい」
「そうなんだ」
「お前は大丈夫だろうな?」
「大丈夫だよ」
「勝也君な、お祖母さんに車買ってもらったらしい」

は?
車ってまだ免許取れる歳じゃないだろ!

「お前はああなるなよ」
「なるわけないだろ!」
「そうだな。愛莉さんがいるしな」
「でもあなた。愛莉さんとの事で揶揄われてるって前先生が」
「今でもそうなのか?」

母さんめ、余計な事を。
父さんの表情が険しくなる。

「ちょっとね、でも全然気にしてない」
「ならいい。男なら堂々としてろ!お前たちは何も悪い事してはいないんだ」
「わかってるよ」

登校拒否で車一台か。
ちょっと羨ましいと思いながら自室に戻った。

その事をメッセージで愛莉に伝える。
すぐ返事が返ってきた。

「車一台と私どっちを選ぶ?」

迷わず返事を返す。

「愛莉に決まってるだろ」
「そっか、そうだよね!」

その後着信音がなる。
愛莉からだ

「もしもし?」
「ごめんね、変な事聞いて」
「いいよ、話題振ったの僕だし」
「うん」
「じゃあ、また」
「あ……」
「どうした?」
「うん、今度はちゃんとお泊りセット用意していくから!」

その話になるのか。

「わかったよ」
「冬夜君もちゃんと準備しててね!」

プツッ……プー……プー……。

机にしまってあるソレを取り出す。
……使用期限がないか調べていた。
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