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2ndSEASON
デート!
しおりを挟む(1)
日曜の朝。
プリーツスカートにデニム。
髪を整える。
小顔メイクというものにも挑戦してみた。
りえちゃんに何度も確認する。
「化粧変じゃない?」
「大丈夫よ~」
ショートブーツを履いて家を出る
「行ってきまーす」
昨日の晩。
今日は神奈も交えて3人でお勉強。
タイミング悪いなぁ~。
カンナが悪いわけじゃないけど、どうして今日に限ってバイト休みなんだろう?
いや、これも試練だ。
言わなきゃ。
「冬夜君あのね……」
「トーヤお前修学旅行の準備出来てるのか?」
先に神奈に言われた……。
「いや、てか別に用意する事なんてないだろ?」
「……冬夜。まさかとは思うが、修学旅行学ランで行動するわけじゃないよな?」
「え?違うのか!?」
ですよね、冬夜君ならそう言うと思ってたよ。
しおりもろくにみてなかったもんね。
「おまえ愛莉に恥かかせるつもりか!?一緒に行動するんだろ!」
「いや、何も考えてなかったけど。特に気にすることもないだろ?」
「お前、いつもの恰好でテーマパーク回るつもりだったのか」
わかってないな、そういう人なんだよ冬夜君は。
「う、動きやすい格好の方がいいだろう」
「少しは身だしなみに気を遣え!!……愛莉からも何か言ってやれよ」
神奈が私に話を振ってくれた。
この流れなら言える!
ありがとう神奈。
「冬夜君、明日服買いに行こうか?」
「へ?」
「大丈夫、そんなに高いもの選ばないから!」
「それがいい、冬夜!愛莉に選んでもらえ!てか行ってこい!!」
神奈が後押ししてくれる。
「わ、わかったよ」
わ~い!!
てなことがあったわけで。
久々に冬夜君とデートと相成ったわけであります。
冬夜君の家に着くと呼び鈴を押す。
「は~い、愛莉ちゃんね。ちょっとまってね」
(2)
「おはよう、冬夜君……ってなんで寝てるの!!」
つんざくような愛莉の声で目が覚めた。
そういや、今日愛莉と買い物行くんだっけ?
目を覚ます。
とりあえず、機嫌をなおしてもらおうと思って愛莉に抱き着こうとするが、一瞬躊躇った。
なんだ、この愛莉の気合の入りよう。
いつもよりオシャレなのにまして、化粧もいつもと違う。
なんかいつもより小顔に見える。
このまま無造作に抱き着こうものならきっと怒られるな。
「綺麗だね。化粧も変えてきたんだね」
これで当たってるはず。
正解。
愛莉は喜んでいる。
「ありがとう」
「とりあえず、着替えるから下いってて」
「うん!」
いつもより1.5倍増しで浮かれてる愛莉は軽やかに降りて行った。
……とりあえず今一番いい物着ていこう。
下に降りると、愛莉は立ち上がり僕の姿を上から下までチェックする。
なんか衣服検査されてる気分だ。
ちなみにパーカーにチェックシャツ、カーゴパンツといった感じだ。
「まあ、こんなもんだよね。そんなに悪くない。ていうかいつもこんな感じでいればいいのに。普段と全然違うよ!」
「ありがとう、ちょっと準備してくるから待ってて」
そう言って洗面所に行って髪をささっと整える。
「お待たせ~。行こっか」
僕らは近くのショッピングモールにきた。
とりあえず、ファーストフードで腹ごしらえを……。
ぽかっ!
「目的忘れてない?」
愛莉の久々の凍てつく微笑み。
「僕まだ朝ごはん食べてないんだけど……」
「買い物の後」
愛莉は僕の腕をがっしりと掴むとショッピングタウンに連れていく。
ああ、新作のハンバーガー食べたかったのに……。
「うーん……これは微妙かな」
愛莉は僕を着せ替え人形にでも見立てているのか、次々と服をもってきては僕に合わせてる。
まあ、愛莉が楽しいのならそれでいいけど。
女子ってどうしてこう買い物に時間かけるの好きなんだろ?
直感でこれだって思ったのでいいじゃないか?
あとは、マネキンに飾ってある服をそのまま買うとか。
何も考える必要なくね?
「よし決まった!これに決まり!」
そう言って選んだのは数枚のシャツに上着に……って何枚買うんだこれ!
「そんなに高いのはないから」
「1着にできなかったの?」
ていうか明らかに冬服が入ってるんですけど。
「冬夜君滅多に服とか買わないからまとめて買っておいた方が良いよ」
にこにこして言う愛莉。
まあ、それで愛莉の機嫌がよくなるなら……。
「なあ?」
「な~に?」
小物や雑貨を物色しながら返事をする愛莉。
「僕の服買いに来たんだよね?」
「そうだよ~。あ、この靴いいかも?」
ショッピングタウンを散策している。
「もう用が済んだんじゃない?」
愛莉の行動がぴたりと止まる。
あれ?僕地雷踏み抜いた?
でも愛莉はにこにこしてる。
「鈍いなぁ~。あれは口実だよ」
「口実?」
「最近冬夜君とデートしてなかったでしょ?クリスマスとか以外の普通の休みに」
特別な日だけでいいんじゃないか?
「前に言ったよね。冬夜君にバレンタインのお返しに食事してもらった時『こういう雰囲気も悪くない』って……てかあれからデートのお誘いが無いってどうかと思うよ」
じゃあ、愛莉の目的って『デートする事』だったの?
「こういう空気も悪くないよ。一緒に買い物楽しむって冬夜君と滅多にないから新鮮で」
その口実に僕は服を何着も買わされたのか。
ここは怒るべきなのか?
いや、受け入れるべきなのか?
「愛莉。そういうことならそうとはっきり言ってくれれば」
「連れてきてくれた?面倒だとか言わないと言える?私は怖かった。また喧嘩するんじゃないかって」
……いやと言えないのが困ったところだ。
「……ご飯のお誘いなら喜んで」
「それだけでしょ」
うっ!
「それはそれで受け入れるよ。冬夜君の個性だと思って。だけどたまには私の我儘にも付き合って欲しいな」
「ようはデートしてほしいって事?」
愛莉はにこりと頷いた。
周りを見る。
確かに仲良く小物雑貨を選んでるカップルがいる。
それよりアイスクリームを食べてるカップルとかに目が言ったが……。
ここにきてチャンポン食べたいとか、言ったら怒られるだろうから自重した。
昼ごはんの時間も入れて5時間ほど歩き回った。
流石に疲れた。
休憩にアイスクリーム屋さんによる。
「ほら口にクリームついてるよ」
そういってハンカチで拭いてくれる。
最後に本屋さんを見て回る愛莉。
僕も漫画の新刊に目を通す。
一冊出てたので買った。
一人のバイオリニストの女子中学生がピアニストに恋をする話。
その本を手にしたとき、一抹の不安がよぎった。
愛莉は健康状態はいいのか?
なんか不治の病とか隠してないのか?
「なあ、愛莉。」
「な~に」
「健康だよな?」
「はい?」
「いや、なんか実は不治の病とか……」
「はえ?」
「ちょっと不安になってさ」
「……心配いらないよ。健康そのものです。ていうか縁起でも悪いこと言わないで」
「ごめん」
「うーん、それじゃあ。お詫びに夕食に付き合ってもらおうかな?」
「え、家多分準備してる。」
「大丈夫?麻耶さんに朝言ったから」
最初からそのつもりだったのか。
パスタの店に入った。
困ったときはイタリアンを選んどけ。
その言葉を実践した、
同じ麺類なのになぜうどんやラーメンとこう差がつくんだろう?
満足気にしている愛莉。
……ま、いっか。
その後帰るのかと言ったら、レイトショー観て帰ろうと言いだしたが、特に興味が引く映画が無かったので帰ることにした。
「楽しかったね~」
愛莉はご満足いただけたようだ。
僕は疲れただけだったが。
そんな事言いだしたら、きっと鬼神の如く怒りだすんだろうな。
合わせとこう。
無駄に怒らせる真似をすることは無い。
「そうだな」
「ありがとうね、付き合ってもらえて」
「デートだったんだろ?礼を言うことは無いよ。むしろそんな事に気づかなかった僕こそ済まないと思ってるよ」
「まあ、毎日デートしてるって言ったのは私だしね。難しいよね。でも偶にはこういうのもいいでしょ?」
「……普通に誘ってくれたらな」
そう言うと愛莉は少しむくれた。
「普通に誘ったら付いて来てくれるの?めんどくさいとか家で過ごそうとか言わない?」
うっ!
確かに言いだしそうだ。
しかし毎回こんな誘われ方されても……。
あ、僕から誘えって言ってるのかな。
すぐに誘った方が良いのだろうか?
それとも間を置いた方が良いのだろうか?
僕が考えていると愛莉は勘違いしてしまったようだ。
「やっぱりめんどくさい?」
明らかに声のトーンが落ちてる。
まずい何か言わなきゃ。
思いついた事をそのまま言っていた。
「今度は僕が誘うよ」
一瞬愛莉の顔が明るくなったけどすぐに暗くなる。
「思い付きでそういうこと言うの良くないよ?期待させるだけさせといて……ってパターンじゃん」
「そんなことないよ、ただどういうタイミングで誘えば良いのか分からなくて悩んでたら……」
そう言うと愛莉は笑った。
「そんなのいつだっていいんだよ。誘ってくれるだけで嬉しいんだから。冬夜君のお誘いなら」
そうかいつでもいいのか。
でも毎回同じところで飽きないか?
と、僕は思うんだけど、愛莉は違うようだ。
「それを言ったら勉強してるのだって一緒じゃない。一緒にいることが大事なんだよ。偶に息抜き程度で考えてくれたらいいよ」
僕は考えすぎていたようだ。
目の前の眩しい天使のような娘はただ一緒にいてくれるだけでいいと言ってくれる。
その天使の笑顔曇らせない様に僕にできる事はそのたった一つの願いを叶えてあげるだけでいい。
僕の願いは彼女の笑顔が曇らないようにする事なのだから……。
(3)
「嘘ですよね……」
俺は絶望した。
医師からの診断。
足の故障。
次の試合までには治らない。
肩を落とす。
「誠抜きでの戦術を考える必要があるな」
同伴していた監督からの冷徹な一言。
「次の試合には必ず出ます!」
俺は思わず立ち上がる。
痛みをこらえて。
「無理するな、今も大事かもしれんが、お前の将来を考えると無理をさせるわけにはいかないんだ」
コーチが宥める。
悔しさで涙がこみ上げる。
寮に戻るとベッドに荷物を放り投げる。
「ちくしょう!!」
机を叩きつける。
神奈に伝えるべきか?
神奈に余計な心配をさせるだけだ。
チームメイトには知らせられない。
どうせ伝わるだろうけど。
俺に出番が回ってくるかもしれない。
そう思う奴がいるくらいだろう。
それを考えると試合に出てない事を神奈が気づくのも時間の問題だろう。
同じ心配させるなら……。
少しは愚痴って楽になりたい。
ごめん、神奈。
まるで楽になるために利用するみたいで。
バイトも終わって帰ってる時間も見計らって電話する。
「もしもし、誠か?」
「あ、神奈。実は……」
俺は神奈に今日起こったことを伝えた。
最初は静かに聞いていた神奈だったが、聞いてるうちにだんだん相槌の様子が変わっていく。
そして……
「この馬鹿!!監督さんの言う通りだ!今は怪我を治す事だけ考えろ!」
「でも、全国に行く最後のチャンスなんだ……」
「インターハイが残ってるだろ」
「それはそうだけど……」
「サッカーで進学するならここで一生を棒に振るような真似はよせ!」
多分そう言われるだろうと思ってた。
神奈にも分かってもらえないんじゃないか?
分かってもらえるとは思ってなかった。
「神奈にも分かってもらえないと分かっていたよ」
そう言うと神奈の逆鱗に触れたようだ。
「私が『頑張って無理して』というような冷酷な女だと思っていたのか?残念だったなご期待に添えられなくて」
しまった。
後悔したがもう遅い。
「そういう意味で言ったんじゃ……」
「言ってることは同じだよ。だがな、怪我したって言われて、試合に出れないと言われても何もしてやれない私の気持ちが誠に分かるのか?」
言わないほうがよかったのか?
「どうせ『言わなきゃよかった』とか思ってるんだろうけどな、後になって発覚した時の私の気持ちが分かるのか。そんなに信頼されてないのか?って絶望するときの私の気持ちがわかるのか?」
それは、分かってる。だから言ったんだ。
「言ってくれてありがとうといいたけど、自分の事になると無茶するお前が心配でたまらねーよ。今すぐ寮にいってベッドに縛り付けたいくらいだ」
「ごめん、でも悔しさを分かってほしくて……」
「分かるよ。分かってるから不安なんだ。だから敢えて言ってるんだ。無理するな、まだチャンスはある。悔しさを理解して且つそう言わなければならない私のもどかしさも分かってくれよ」
「……悪かった。ごめん」
「私もうまく言えなくてごめん。でも心配なんだ。誠が自棄にならないか、ほかに将来を棒に振る行為にでないかどうか」
「それはないから、これ以上神奈に心配かけられない」
神奈に迷惑かけられない。
「とりあえず今は休め。辛くなったらまた電話して来い。……私からも電話するよ」
「ありがとう」
「じゃあ、また明日な」
「ああ」
そして電話が終わった。
その後メッセージが届いた。
「さっきは言い過ぎたごめん。人を励ますのが苦手で……」
神奈らしいよ。
逆に安心したよ。
神奈に叱って欲しかったのかもしれない。
「安心したよ、やっぱり俺には神奈が合ってる。ありがとう」
と、メッセージを返した。
あ、もう一つ。
「冬夜と遠坂さんには内緒な!頼む」
「わかった」
すぐ返事が返ってきた。
最後の望みは仲間に託そう。
頼む……、全国には間に合わすから!
その願いはかなうことは無かった……。
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