優等生と劣等生

和希

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2ndSEASON

形のない物

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(1)

「うおっ!飛んだぞ~」
「いぇ~い!」

湧き上がる拍手。
半ば貸し切り状態の飛行機内で僕たちは歓声と拍手があがる。


修学旅行初日で、皆テンションが高い。
僕も初めて乗る飛行機で若干テンションが上がっていた。
桐谷君に「冬夜!飛行機では靴脱いで入るんだぞ」と言われ本当に靴を脱ごうとして愛莉に止められた。
へえ、飛行機無いって機内放送があるんだと席に着くなり早速使ってみた。
色々チャンネルがあるんだな。
カチャカチャと弄って遊んでると愛莉が肩を叩く。
イヤフォンを取ると「せっかくだからもう少し構って欲しいな」と愛莉。
とはいえ、離陸までまだかかりそうじゃん。
と思ったら飛行機が動き出す。
意外とゆっくり何だなと思ったら急に加速をはじめる。
そして空へと飛び立ち歓声が上がる。
その後雲の上に出る飛行機。
皆が雲を移そうとパシャパシャと写真を撮る。
僕もスマホを窓の外へ向けて……。

「トーヤ、雲はスマホじゃとれないぞ」

と、カンナが笑いながら言う。
そのくらい知ってるよ。僕がとりたいのは……。
あの実は薄っぺらで今にも剥がれそうな主翼。
そのうちべりってはがれんじゃね?

ぽかっ!

愛莉は僕の心が読めるのか。

「今縁起でもないこと考えてたでしょ!」
「べつに、ただ翼って案外もろいんだなって」
「それはね、飛行機が乱気流の中に入っちゃった時とかに翼がもげてしまわないようにわざとしなるように設計されてるんだよ」
「へえ~、あ。下に陸地が見える。」
「う~ん、まだ中国地方か日本海側のほうじゃないかな~」
「愛莉は何でも知ってるんだな?」
「本で読んだ知識だよ」

愛莉は読書家だからなぁ。

「でも、本でも得られない知識ってあるよ」
「例えば?」
「……とか?」
「良く聞こえない」

ぽかっ!

なんかよくわからないけど叩かれた。
その後愛莉が耳打ちする。

「冬夜君の気持ちとか……の仕方とか」

それはDVD見れば大丈夫だったよ。

「だから神奈に馬鹿にされるんだよ。冬夜君はワンパターンだって」
「愛莉が言わなきゃわからなかったろ」
「う、うぅ……でも事実だし」
「やっぱり気にしてたの?」

急に不安になった。

「なんか作業的で感情がこもってないって言うか……下手とか上手とかじゃなくて気持ちが籠ってないっていうか」
「何々、何の話してんだ」

神奈が横から割って入ってきた。

「冬夜君が作業的で愛情を感じないって話してたの」

ちょ……今言うか……。
神奈はそれを聞いて笑い出した。

「まだあれを参考にしてるのかよ!いい加減自分で考えろ!愛莉が何をしてほしいのか何を求めてるのか……そういう風に考えるのはお前得意だろ!」
「愛莉がねえ……」

想像してみる……ぽかっ!

「今考えなくていいから!今は修学旅行楽しむことだけ考えて!」

顔を真っ赤にしてる愛莉。
ただ空を飛んでるのだけで暇だなぁ。
今のうちに今回の班編成でも言っとくか。

僕、愛莉、神奈、石原君、桐谷君、指原さん、渡辺君の7人。

1年の時から一緒だった人なので特に問題はない。
班行動するのは旅行全般。
自由行動の時はまた適当に集合時間決めて自由行動しようって事前に決めておいた。
次に今回の旅行予定。
札幌をバスで観光した後小樽で自由散策、スキー場で2日間スキーした後東京で自由散策、最後にテーマパークで自由行動して地元に帰る。
4泊5日という日程だ。
他所の高校では海外に行くところもあるらしい。
また、東北の被災地に研修に行くというところもあるらしい。
海外は英語ヒアリング苦手だし、東北の被災地でもやっぱり英語でのチェックインチェックアウト等の練習させられるらしいのでまあ、一番楽しめるんじゃないだろうか?

「観光地だと日本語通じるところもあるんだよ~」と愛莉は笑っていたけど。

でもやっぱり某番組でお笑い芸人が体を張ったボディランゲージの印象が強くて遠慮したくなる。
飛行機で新千歳空港まで2時間半ほどだ。
神奈は眠っている。
愛莉は……イヤフォンで何かを聞きながら小説を読んでいた。
僕は空を見ていた。
前も言ったが僕は景色フェチだ。
空には雲、
下には大地が。
酷くゆっくり進んでいるように見えるけどでも凄い速さで飛んでるんだろうなぁ。
ジェットエンジンの音がすごい。
窓際の席で本当についてた。

とんとん。

愛莉が背中をつついた。

「何?」
「また眠れないの?飛行機五月蠅いよね~イヤフォンつけてゆっくり目の音楽聴いてたら眠れるよ」
「寝るなんてもったいないよ、こんなにいい景色があるのに。景色観るの好きだって言ったろ」
「ふ~ん。今日は晴れてるもんね、私には空と雲しか映らないけど。冬夜君には何が見えてるのかな?」
「同じだと思うよ」
「……わかんない。冬夜君たまにそういう意外な趣味出るよね」
「そうかな?」
「うん、その半分くらいでいいから私にも夢中になって欲しいな」

周りを見ると大体寝てる。
確認してから愛莉に耳打ちした。

「今でも十分夢中だよ」と。
「嘘だよ、冬夜君今目が輝いてたもん。私を見る時の目じゃなかったよ」
「そりゃ、見慣れてるから……あっ!」

そこまで言って「しまった」と思った。
また愛莉怒らせたかも……。
だけど、愛莉はにこにこしていた。
あれ?

「怒るとおもったでしょ~。付き合い初めだったら怒ってたでしょうね。でも、もう5年目だよ?いい加減慣れたよ」

それだけ僕の大食いにも大目にみてほしい。

「もうあれだね、恋人というより夫婦の心境に近いよね~。冬夜君の慣れって意味はそういう風にとれた」

ちょっと早くないか?でも言わんとすることはわかる。何時でも大事にしてる、大事にされてる。

「ただ、偶にはドキドキさせてほしいな。ときめきが欲しいな~……あ!」
「どうした?」
「冬夜君はドキドキとかサプライズはダメ!心臓に悪いから」

まるでお化け屋敷のようなドッキリを演出してるじゃないか。
それより性質が悪いかもしれないけど。

「私も毎年挑戦はしてるけど冬夜君そういう時だけは鋭いんだよね。鈍いか気づいてくれないか極端すぎるんだよ」
「愛莉には毎回ドキドキさせられてるよ?」
「え?」

僕は愛莉にひそひそと耳打ちする。
愛莉の顔は赤くなる。

「うぅ……私の事安い女だとみてるでしょ?」
「そんなことないよ、僕だけ特別なんだろ?」
「うん、ていうかさぁ~偶には冬夜君から迫ってきてもいいんだよ」

攻め切る前にカウンターするのが愛莉だろ。

「今度は頑張るよ」

今度って言うとクリスマスイブか。
ってあれ?

「僕からも結構いってないか?」
「そういえばそうだね」

そう言って笑う愛莉。

ぽーん

安全ベルト着用のランプがついた。
まあ、ずっとつけっぱなしだったんだけど。
間もなく着陸の様だ。

離陸の時より着陸の時の方がなんか面白かった。

(2)

新千歳空港に着くと、すぐにバスに乗って出発した。
最初は札幌市街の観光だ。
幾つかの観光名所をバスの中から観光する。
バスガイドが説明してるみたいだが、まるで聞いてない。
車窓の風景に見とれていた。
その一つ一つを記憶にとどめる。

「綺麗だね~」

隣に座っていた愛莉が、話しかけてきた。

「ああ」
「また来たいね」
「うん、その時は……」

愛莉と二人で……。

「……先に言っとくけど私ハネムーンは断然海外派だから!」

いや、そんな先の事考えてないし!

「ほう、もうそんな事考えてたのか遠坂さんは」

後ろに座ってた渡辺君が話に混ざってきた。

「海外はどこがいいんだい?」
「うーん、グァムとかハワイはベタっぽいな~イタリアとかフランスとかあとスイスとかもいいなぁ~」
「だとさ、頑張れ冬夜」

渡辺君は笑っていた。
上手くハードルを上げてくれたね、渡辺君。


午後の食事休憩。

……違う!何か違う。
これは北海道のご飯じゃない!!
ごく普通の昼食を出されてご立腹の僕。
あるだろ!こうなにかあるだろ!
ラーメン!海鮮丼!ジンギスカン!
何だよこの普通の食堂のごく普通な食事は!
某漫画の父親なら女将をよべー!と怒鳴ってるところだぞ。
こうなったら……小樽で……。

「ラーメン!海鮮丼!」
「オルゴール!!」

まあ、いつもの事だよね。
こうなるよね。
いつもと違うのは仲裁役に渡辺君がいたって事。

「まあ、女子と男子で別れて行動するって手もあるんじゃないか?俺も腹減ってるし」

しかし。

「それはダメだろ!」

と、カンナ。

「その場を取り繕ってもこの二人の問題は解決しねーよ」

この場を取り繕えばいくらでも宥めようはあるんだが……。

「この際だからこの二人だけ残してうちらも適当に散策しようぜ。亜依と瑛大も二人がいいんだろ?私ら3人でどっか行こう」

カンナの案に反論するものはいなかった。
3手に別れて行動する。
その時に

「逃げんなよ。お前らが付き合う上でこれからも絶対出てくる問題なんだから」

逃げるってどういう意味なのかな?
どういう状況を逃げるって言うのかな?
多分「じゃあ僕たちも二手にわかれよっか?」っていうのは絶対ダメだろうな。
うーん……。

「冬夜君に合わせるよ。どっちから食べるの?」

愛莉が沈んだ声で言った。
やった~と呑気に喜んでる場合じゃなさそうだ。
その時ふと目に着いた一組にカップル。
オルゴール専門店の袋を片手に歩くどこかの高校生のカップル。
愛莉も同じようにみてたようだ。
……ごめん!ラーメンと海鮮丼!

「愛莉!行くぞ!!」
「え?」

愛莉の手を取り地図を片手に店を探す。
……あった!

お店に入ると多種多様のオルゴールがあった。
地元観光地のそれとは規模も違う。

「……こんな事されても嬉しくないよ。まるで私がわがまま言ったみたいじゃん」
「今、この瞬間は戻らないって誰か言ってた」

きょとんとしてる愛莉。

「逃がすな今を、感じろ今を、今日でなくちゃダメな事はなんだ!?それは食べる事じゃない、愛莉と一緒にオルゴール探していちゃつく時間だって思った。だから連れてきた」

愛莉は戸惑ってる。

「いつもなら僕の我儘に付き合ってくれるだろ?だけど良い子な愛莉は今はお休み。散々我慢してきたんだ。もういいよ」
「そんな言い方しないでよ。これで最後みたいじゃん」
「最後じゃないよ、これからは愛莉の我儘もぶつけていいんだよ。……極力善処する」
「私の方こそ、いつも我儘ばかりだから食べ物くらいいいじゃないって思ってたのに」
「愛莉の我儘は僕にもメリットあったじゃないか。僕のとは本質的に違うよ」
「……ありがとう」

そういうと僕の腕に組みつく愛莉。

「で、どういうのが欲しいの?」
「んとね~それを探すの~」

はい?

「冬夜君と一緒に選んで買いたかったの~」

なるほどね、薄々気づいてはいたよ。
あのカップル見たときの羨ましそうな目はちゃんと覚えていますよ。
愛莉のオルゴール選びに付き合う。
愛莉が時間を気にしてる。

「ゆっくりしても大丈夫だよ。時間はまだあるし」
「でも、冬夜君のお食事の時間が……」
「それはもうなし。もっと他に見たいところが出来た」
「へ?」
「ほら、これにするか?」

それは愛莉の部屋に飾ってあったのと同じ形のぬいぐるみ式のオルゴールだった。

「冬夜君が良いって言うならそれにする~。どの曲があるかな~」

愛莉が曲を選んでる間に僕は地図を見て確認していた。

「買ってきたよ~」
「じゃ、いこっか!」

愛莉の手を取……ろうとしたら逆に組み付いてきた。
機嫌は直ってくれたみたいだ。
次の店でもっと上機嫌になってくれるといいんだけど


「ここって……」

僕の選択する店じゃないと思ったんだろ。
驚いた顔で僕を見る。
僕はにこりと笑うと中に誘導する。
そこにはガラス細工のお店だった。
キャンドルグラスなんてものも置いてある。
愛莉ははしゃいで小物を手に取ってみて回る。
僕は液だれしない醤油さしを家のお土産に買って行った。
これでTKG食べるんだ。
愛莉は箸置きを二つ買ってた。
ん?二つ?

「冬夜君が泊まりに来たときにお揃いで使うの~♪」

機嫌は良いようだ。

「じゃ、急いでラーメン食べに行こうか?」

慌てることないよ、愛莉。
今日の僕はちょっと違うんだよ?

「愛莉はラーメンや海鮮丼食べたい?」
「……もうお腹いっぱいだよ」
「じゃあよかった。この上にお店があるんだ」


屋上にあるランプの灯りが幻想的な喫茶ホール。
そこでジュースとソフトクリームとレモンティを注文してた。

「綺麗だね~」
「だろ?さっきガイドブックで見つけたんだ」
「でも、本当によかったの?」
「愛莉……ラーメンや海鮮丼を食べたいのはその場の味を想い出に残したいんだ」
「?」
「だけどそこに愛莉はいないだろ?だったら愛莉と一緒にきたって言う想い出を胸にしまって帰りたい」
「……」

まずい、またなんかの台詞のパクリと思われたかな?

「私のせいかな?」

はい?

「私のせいで冬夜君、いつも冬夜君じゃない。変になっちゃった~」

失敬な!僕だって優先順位があるぞ。
一番優先してるのは愛莉だ……2番目は食べ物だけど……1.5くらいかな?

「北海道に来て早々風邪引いたとか言わないでよね!」
「なんならオデコ触ってみるか?」

愛莉はなにか考えてる。
と、いうか企んでる。
そういう顔だ。
そしてそれをすぐに実行する。
おでこにチュッって……。

「それじゃ熱分かんないだろ?」
「風邪ひいてないくらいわかってるよ。今日のお礼。私も冬夜君に色々な思い出プレゼントしてもらえたから」
「そうか、それはよかった。そろそろ戻ろうか?」
「うん!……ってあれ!冬夜君時間ヤバい!」
「え?」

本当だ。
走って間に合うか!?

「急ぐぞ愛莉!」

会計を済ませると、愛莉の手を取り走る。

「はい……」

ちなみに、遅刻の心配はなかった。
カンナ達が一番遅れてきたから。

「いやあ、ラーメン屋意外と並んでてさ」

先にラーメンって選択肢は外して正解だったようだ。
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