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2ndSEASON
ラーメンはのびないうちに食え
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昼食の時間
やったあああ!
遂に北海道に出会えた!
僕の小さな思いはついに届いた。
目のまえに有る丼。
うにいくらをはじめ数々のお刺身があふれんばかりに詰め込まれたもの。
醤油を小皿に入れネタを醤油につけ、丼に戻しご飯と一緒にパクり。
美味い!!
これぞ北海道!!
おやつはじゃがバターでもいいなぁ。
美味しそうに平らげる僕。
ふぅ、満足満足。
あとは夜にラーメンが待ってる。
その時突き刺すような愛莉の目線に気がついた。
え?お昼ごはん食べただけだよ。
僕何も悪いことしてないよ。
美味しそうに物を食べるのが罪なの?
残す方がよほど罪だと思うけどどうなんですか?
愛莉が何か言おうとしたとき。
「お前本当に美味そうに食うな……ほれ、私のもやるよ。」
カンナ?お前も僕ほどじゃないけど食べれるだろ?全然食べてないじゃないか?
「なんか気持ち悪くてさ、昨日食い過ぎたかな?」
「おいカンナ、大丈夫か?」
「ちょっと気持ち悪いだけだから心配するな。それより食えよ」
んじゃ遠慮なくいただきま……す?
愛莉の顔が寂しそうだ。
愛莉の丼を見ると愛莉も半分くらい残っている。
その丼を両手で持っていた。
……、いけるだろ!
僕はカンナの丼を平らげた後、愛莉のも取りあげ食べた。
「え?え?そんなに食べたらお腹壊すよ!」
「くれるものを断るほど僕は人間できてないよ」
一気に書き込む。
ふぅ……さすがに食い過ぎたか。
だが、愛莉の顔に笑顔がもどってる。
これで多分間違いなかったはずだ。
だけど……
「神奈大丈夫!?」
「トーヤの食いっぷり見てたら余計に気分悪くなってきた」
「部屋で休んでた方が……」
「かもな……」
愛莉が水田先生を呼ぶ。
すぐにかけつける。
「音無、立てるか?」
「はい……」
「お前たちは午後も予定通り行動してろ。行くぞ音無」
「神奈大丈夫かな?」
「まさか……ってないよね?」
亜依と愛莉が話しあってる。
「大丈夫だと思う。ねえ?冬夜君、誠君に連絡したほうがいいかな?」
愛莉が話を振ってきた。
はい?
なにを誠に伝えるの?
「カンナが気分悪くなったって言ったって心配させるだけだろ?原因分かるまで言わないほうが良いよ」
「だからその原因が……問題なんじゃない!」
「それはカンナから聞いた方が……いてぇ!」
だから頬を抓るのはよして。
「冬夜君は鈍いんだね。私の時もきっとそうなんだろうね!」
「だから何の話をしてるんだよさっきから」
「何の話ってちょっと冬夜君!?何も勉強してないの!?」
「だから何をだよ!」
「ハハハ冬夜も子供だなぁ。で、遠坂さん、音無さんの周期は分かってるのかい?」
渡辺君が事態の収拾に努める。
周期?何の話だ。さっぱりわからない。
「うん……このまえお腹が痛い。って言ってたから大丈夫だとは思うけど」
愛莉には通じたらしい。
「そうか、旅行前の時も何も言ってなかったんだろ?じゃあ問題ないよ、多分スキーで揺れたからそれで酔っただけだと思う」
「そっかぁ~、詳しいんだね。渡辺君」
「いや、先輩から聞いてたからさ、スキーしてたら急に気分悪くなった人がいるって話」
「なるほどね、渡辺君頼りになる~。誰かさんとは大違い!」
「愛莉それうちの瑛大にも言えるわ」
渡辺君は女子2人の好感度を上げたようだ。
それに引き換え僕は……。
(2)
「冬夜、練習に付き合えよ」
「う、うん」
渡辺君とリフトに乗る。
渡辺君も一人で大分滑れるようになっていたので、単独行動が許されていた。
滑れない瑛大と亜依と石原君、暇を持て余してる愛莉は飯田さんと滑っていた。
「冬夜、さっきのはお前のミスだぞ」
「え?」
「ぶっちゃけた話お前達えっちしたんだろ?」
「まあね」
「そこまでいってて女性の体について何も知らないのはあまりに無責任だぞ」
「それと、カンナの具合が悪いのと何の関係があるの?」
関係があるとこまでは理解した。
すると渡辺君はにやりと笑う。
「それを説明するためにわざわざお前を呼びだしたんだよ。説明してやるよ」
「……と、いうわけさ」
なるほど、それで誠に……。
でもそれならそうと……。
「だから言ったろ?『そこまでしておいて知りませんでした』は通用しない年頃だってことだよ。相手をどれだけ思いやってるかってることにもつながるしな」
あ、そうか……。
「じゃあ、愛莉にも聞いておいた方がいいのかな?」
「馬鹿、愛莉さんがお前を余程信頼してない限り聞いても『この変態』で終わるぞ」
信頼はされて思うと思うんだけど。
「それにしつこく聞くのも駄目だ。そんなに気にするならもうしない!って怒られるだけだしな」
「結局どうしたらいいんだい?」
「少しは自分で考えろよ……。知られたくない事をさりげなく聞くときお前ならどうする?」
敢えて聞かないってのは違うんだよな。
遠回しに聞く……?
でもどこから回る?
僕が悩んでいると渡辺君が答えてくれた。
「サッカー以外では勘は働かないんだな。『おなかの調子どう?』とかでいいんだよ」
ああ、なるほど……。
「あくまでも自然にだぞ。さて、滑って合流しようぜ。その時に謝りながらさっきの要領で聞いてみろよ」
「お、怒られないかな?」
「お前の言い方ひとつだろうな」
「わかった」
実際はよくわかってないけど。
とりあえず、スキーを楽しもう。
あとで考えたらいいや。
少し滑ってると飯田さんのウェアが見えた。
「お~い」
僕は手を振って飯田さんたちに合図する。
「あ、二人共もう滑ってきたの?呑み込み早いわねぇ~これじゃあ、私仕事ないよ」
そう言って笑う飯田さん。
「ま、まだ僕がいますから」
必死に滑る石原君。
「確かに君は2日間で覚えるのは厳しいかな~」
あれ?なんだろ?
初日の夜とはなんか感じが違う。
いつにもまして一生懸命というか。
必死に飯田さんにアピールしてるというか。
そういや江口さんは?
二人をくっつけるって話どうなったの?
「なあ?江口さんどうしたんだ?」
「江口さんて?」
「あ、いやあの……」
石原君が困ってる。
なんか地雷踏み抜いた?
他の3人が鬼のような形相でみてるんだけど。
え?ゴーグルしてるのによくわかるなって?
そんなの雰囲気ていうかオーラみたいなのがヒシヒシと感じるじゃん。
ぼかっ
渡辺君に後頭部を叩かれた。
「ああ、江口さんてうちのクラスの女子で頭よくて人気なんですよ」
渡辺君が説明する。
このままじゃますます女子の好感度を下げてしまう。
「そういやカンナの調子どうなんだ?」
「単なるスキー酔いみたい。2日間は大人しくしてるって」
愛莉が答えてくれた。
愛莉か……とりあえず謝らなきゃ。
「あ、愛莉。さっきはごめん」
「な~に?意味もなく謝るのは無しっていったよね?」
「いや、その配慮が足りなかったって言うか……」
「ほえ?」
「愛莉は体調大丈夫?」
「え?全然大丈夫だけど、どうしたの?突然……」
渡辺君に裸締めされた。
「あ、さっきこの馬鹿に事情を説明しておいたんだよ。わかってるようでわかってないみたいで。許してやってくれ。悪気があって言ってるわけじゃないんだ」
愛莉は意味を察したのかにこりと笑う。
「ね~え?渡辺君、冬夜君借りてもいいかな?もう練習終わった?」
「借りるも何も遠坂さんに返すよ。ありがとう、ちょっとは上達したつもりだよ」
「ありがとう。冬夜君滑ってこよ?」
「あ、ああ」
愛莉と二人でリフトに乗る。
「渡辺君と何話してたの?」
「あ……そ、それは……」
女性の体の仕組みについて教わっていましたと言えるはずもなく。
そこまで神経図太くない。
愛莉もきっと怒りだす。
「どうせ、女の子について色々レクチャー受けてたんでしょ?」
ばれてるし。
「知ってるなら聞かなくても」
「別に聞かれて困ることじゃないでしょ?」
そうなのか?
愛莉の事だから恥ずかしがりながら「馬鹿ぁ!」だの「この変態」だの罵られると思ったんだけど。
「まあ、知らない人から言われたら変態だって思うけど、冬夜君とはそういう関係じゃないでしょ?だから少しは気を使って欲しいなって思っただけ。覚えてる?私が具合悪くて学校休んだ時、冬夜君最後まで気付いてくれなかった」
「あ!!あれか……」
中3の時の……。
登校拒否起こしたんじゃないか?って僕が勘違いした事件。
「女の子には女の子なりに辛いことがあるんだよ~」
リフトから降りる僕たち。
「だから冬夜君が『体調大丈夫?』って聞く分は全然平気~」
そう言って愛莉は初心者コースへ……あれ?
「そっちでいいの?」
「こっちの方がのんびり話出来るじゃん」
あーね。
僕と愛莉はのんびり傾斜の緩いコースを滑っていく。
時々休憩しながら。
「それとさ、もう一つ言っておくことあった~」
え?俺またミスやった~。
「冬夜君だから気づいてないと思うけど石原君飯田さんの事好きだよきっと~」
「え!?」
いやいや、それは無理ってもんでしょ。年どれだけ離れてるんだよ!遠距離ってレベルじゃないぞ!
「やっぱり気付いてなかったんだね。流石冬夜君」
貶されているのか褒められているのか分からないぞ。
て、事は……
「他の皆は知ってるのか?」
「渡辺君も気づいてたみたいだね」
桐谷君カップルは知ってるのね。
「石原君には言っちゃだめだよ。相談されたときだけ。冬夜君から話したらダメ!」
「わ、わかった」
でも、成立するのかそのカップル。
だめもとで江口さんに声かけた方が確立高いんじゃないのか?
それに高校生にどうにかできる距離じゃないだろ?
告るのか?
玉砕するのか?
万歳アタックか?
そんな度胸あるなら他の子でも……。
「愛莉は応援してるのか?」
「してるよ~」
「他の子にした方が……」
「冬夜君は確率で私を選んだの?」
「それは違うけど」
むしろ愛莉に選ばれる方が奇跡に近いだろ……。
「好きになったんだから仕方ないじゃん~。理屈じゃないんだよ~」
それは分かるけど。
飛び込んで見ないと分からない。
その一歩を踏み出す勇気があるかどうかだ。
99%の失敗でも1%の可能性を信じて。
と、なると背中を押してやることしかできることは無いな。
「お~い、また入ってるぞ」
「あ、ごめん」
「自分で言うのもなんですけどね~。よくまあいつもこんな可愛い子置き去りにして自分の世界に入れるね」
うん、自分でもそう思う。
どうして考え込んでしまうんだろう。
「こうなったら意地でも引きずり出すしかないね」
「……無茶しない程度でお願いします」
「はい!でも……。私の事で入り込むなら許してあげるから」
白い雪の魔法がそう感じさせるのか。
寒さでそうさせたのか照れていてそうなったのか。
頬を赤らめた彼女は、とても綺麗だった。
(3)
夕食。
バイキングだった。
和洋中なんでもありのバイキング。
そして……。
味噌ラーメン!
君に会いたかったよ。
君を思えば思うほど遠く感じて……。
強く思うほどつらくなって……。
ぽかっ
「な、なんで叩かれなくちゃいけないんだよ」
「今すっごくしょうもない事考えてたでしょ。てか、何?そのお皿の数!」
「一々取りに行くの面倒だろ!?」
「どうせまだ食べるんでしょ!」
「愛莉~……」
カンナはもう言うのも面倒になったらしい。
「神奈、これでも私寛容になったつもりだよ。だから冬夜君にも寛容に私を受け入れてもらうの!食べ過ぎの冬夜君を叱る役割だって」
「それ、カップルじゃなくて母子の関係だろ……」
「ちがうも~ん。だめだめな亭主を叱るお嫁さんの関係って訂正させてもらうよ!」
「夫婦と来たか!そりゃいいな!」
笑ってる場合じゃないぞ渡辺君。
「亜依~食事にきたのかケーキ食いに来たのか分かんないよ」
「デザートは別腹って知らなかった?」
あちらのカップルもうまくやっているようだ。
「あ、そうだ。今日も又ロビーに集合な」
「どうせ男の教師が殆どだし女子の部屋でいいんじゃね?」
「その女性教師の中に喧しいババアがいるんだよ……最後の手段だ」
「今日はラーメン屋さんで……ほら、ロビーより目立たないだろ?」
愛莉にも許可もらってるし。
「冬夜君、今食べてるのはな~に?」
「へ?味噌ラーメンだけど」
「それで朝の約束はおーけーだよね?」
「え……」
「お店のラーメンとは言ってないもんね~」
それはエゴだよ愛莉。
「まあ、俺も気になっていたしラーメン屋にしようや。見つかりづらいのは事実だし。
「女子に深夜に炭水化物食べさせるつもりかよ?」
カンナが敵に回った瞬間だった。
「ここのラーメン屋パフェもあるらしいぜ」
「よし、じゃあそういうことで。風呂行こ風呂」
女子が席を立つ。
ただ一人を残して。
「何してるのかな~?冬夜君」
「いや、後一杯だけラーメンを……」
「後で食べるんだからいいでしょ!!」
ラーメンも別腹なんだよ。
北海道のラーメン屋さんのレンゲには穴が開いてるらしい。
コーンを掬えるようにらしい。
だがスープはどうやって飲むんだろう?
実際に目にしてそう思った。
だが、そんなことは良い。
やっとお前に会えたよラーメン。
あとは明日の晩のジンギスカンだな。
何で知ってるか?って、しおりにしっかり書いてあったからだよ。
女性陣はパフェを食べていた。
指原さんはフルーツパフェ
愛莉はストロベリーパフェ
カンナはチョコレートパフェ。
チョコレートパフェ美味そうだな。
「すいません、チョコレートパフェ一つ……」
ぽかっ!
「ストロベリーも美味しいよ!」
なるほど、ストロベリーならいいんだな!
「すいません注文変えます、ストロベリーパフェを……」
ぽかっ!
「ストロベリーならここにあるよ」
ああ、食べきれないからくれるって言うんだね。
じゃあ器とスプーンを……。
愛莉はストロベリーのソースのかかったソフトクリームの部分を掬って僕の口に運ぶ。
それ、さっさと口を開けなさいと言わんばかりの笑顔だ。
観念して口を開ける。
ぱくっ!
これで愛莉の機嫌が取れるならお安い御用さ。
「面白そうだな、ひな鳥の餌やりみたいで、私チョコレートだから私の食うか」
カンナが自分のソフトクリームを一すくいして……。
「あーん……」
ぽかっ!
「『あーん』じゃないでしょ冬夜君!神奈もだよ!誠君にいいつけるから!」
「誠はこのくらいじゃ怒らねーよ。相手がトーヤだしな」
「うぅ……冬夜君には私のパフェ残り全部あげるから」
「残り全部って愛莉半分も食ってないじゃん」
「こんなに大きいとは思ってなかったもん!」
「あのさ……二人共……」
カンナと愛莉がこっちを見る。
目がマジなんだけど……。
「カンナは誠の好みがあるかもしれないけど愛莉ももう少しふくらみがあったほうが多分男としては……」
ぽかぽかっ!
「人が気にしてる事平然と言うんじゃねーよ!」
「冬夜君てデリカシーに欠けるよね!」
「分かった僕が悪かった。二人の分残り全部食べるよ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「誰かさんと一緒で食ってもつかないんだからしょうがないだろ!」
指原さんと桐谷君は好きにいちゃついてる。
「あのう悪いんだが……食べながらでいいから聞いて欲しい」
渡辺君が話をきりだした。
「昨日言った件だがちょっと予定変更だ。イッシーに好きな人が出来たらしい」
ああ、その話か?
「で、俺たちに出来ることは無いか?と思ってな」
渡辺君、君半分楽しんでるだろ?
「渡辺君、イッシーの好きな人って誰?」
バシッ!
指原さんが桐谷君の背中をバシッと叩く。
「瑛大!昼間言ったでしょ!ごめんねイッシー瑛大もデリカシーが無いみたい」
指原さんがそうやって謝る。
桐谷君は気づいてなかったのか。
「皆の気持ちは嬉しいんだけど……やっぱり無理だよ」
石原君の一言で皆が沈む。
何か励ましてやれないものか……。
「石原君。ラーメンは早く食べないとのびちゃうよ」
石原君の残ってるラーメンを見て言った。
「冬夜君は何の話をしてるの……?」
渡辺君が愛莉の言動を遮った。
「続けろよ冬夜」
「うん、ラーメンは伸びたら美味しくないだろ?パフェだってそうさ待ってたって溶けてなくなってしまう」
「ごめん、今食欲ないんだ」
「うん、だからってせっかくのチャンスをただ見過ごしたらもう取り戻しのつかないものになってしまう。ラーメンもパフェも食べてみないと美味しいかどうかわからないだろ?でもラーメンもパフェも溶けてしまったらそれまでだ。恋だって同じだよ。で、きっと今がタイミングなんだと思う。失敗したってまた新しい人を探せばいい。でも食欲がないからとか僕には無理だからとかそんな理由で諦めたらだめだ」
「片桐君」
「結果ばかりに目を向けるより歩んだ道のりが大事だよ。自分の人生だもん。諦めず生きた日々に悔いが残らないように過ごさなくちゃ」
僕がそう言うと石原君は伸びて冷めたラーメンを食べていた。
「やってみるよ。ありがとう」
「その意気だイッシー!大丈夫砕けても骨は拾ってやる」
いや、砕けさせるつもりで言われても困るんだけどね。
「でもどうやって……二人きりだなんて無理だよ……」
「そうか、それがあったか!」
渡辺君が考え込む。
そんなの簡単じゃない?
「カンナ?明日は一日部屋にいるんだよな?」
「ああ、飯の時以外は部屋でぼーっとしてるよ」
「渡辺君がついていれば石原君は大丈夫でしょ?」
「あっ!そういうことだね」
「うん、僕たちは適当に口実つけていちゃついてるからその間に告っちゃいなよ」
「冬夜お前実は冴えてるんだな!」
「冬夜君の意見に賛成!」
「珍しくトーヤにしては良いこと言うな」
「私達も反対する理由はないよね?瑛大」
「もちろん」
「じゃあ、そう言うことで明日午前中に決着つけるぞ」
「じゃあ、石原君の成功を祈ってもう一杯……いてっ!」
「調子に乗らない」
だってここ替え玉無いから物足りないんだ。
(4)
「そそ、トーヤにしては良いこと言うだろ?」
そう言って誠君に電話で今日の出来事を報告してる神奈。
「ねえねえ愛莉」
亜依ちゃんが話しかけてきた。
「な~に?」
「一年の時に聞いたじゃん。どうして片桐君と付き合ってるの?って」
「うん」
「今なんとなく理由が分かった気がする。片桐君って何に対しても嗅覚が鋭いんだと思う。そして思い切りが良い」
「そうでもないよ」
「今日のスキーの時もそうだったじゃん、愛莉からは分からなかったと思うけど、片桐君ボーダーに絡まれてる愛莉見たと同時に滑りだしていたんだよ。飯田さんより早く」
「そうなんだ」
そういうこともあったんだな。
今日は色々あってすっかり忘れてた。
「サッカーの時もそう。ここぞというときに飛び出してシュート決めてる」
あれは天性の感覚だろうなあ。
「前に愛莉と片桐君の話聞いたけどあれも、多分今なんだ!って覚悟決めて勇気だしたんだと思う。多分そういうセンスの持ち主なんだよ」
そう言われると……。
昔から瀬戸際まで追い込んでやっと行動する人だと思ってたけど、その行動は全て成功してる。
「愛莉はいつも『冬夜君は鈍い』って言うけど実はすごい鋭い嗅覚もってるんじゃないかなあ」
そういう気がしないでもなくなってきた。
それより自分の彼氏を褒められるのはなんか新鮮な気分だ。
いつも私と比べてこけ降ろされていたから。
何より私自身がちゃんと冬夜君の良いところを見てなかった。
他人にされて気がつくなんて、なんて情けない。
「ありがとう。でもそれを言ったら桐谷君だって……優しいし、いつもラブラブしてもらえてるし」
「そうかなあ。ラブラブって言ったら冬夜君ともずっとそうじゃん」
そうみえるでしょ?ところがどっこい
「肝心なところでミスして私怒らせるのが上手いんだよね」
「お互いに苦労が絶えないってことだね」
「そうだね~」
「なになに、恋バナか!」
電話を終えたカンナが話に混ざってきた。
「神奈の彼氏ってどんな人?」
亜依ちゃんが興味深そうに聞いてきた
「なんだよ、いきなり私に話振るのかよ」
「だって二人の話は終わったもん~」
「そうだなぁ~誠を一言で言うならすっげぇ馬鹿で変態」
誠君の事をそう言えるのは地球でただ一人だけだよ神奈。
「うーん、本人に聞いてもそうなるか、その辺どうなのさ愛莉」
「誠君は優しくて大人びててサッカー上手くて格好良くて」
「何それ良いところだらけじゃん」
「サッカーは上手いのは認めるけどトーヤほどじゃねーぞ。本人も言ってたし。あと優しいとか大人びてるとか全然ないから」
「謙遜しなくてもいいのに」
「愛莉だってさっきトーヤのこといつもダメだししてるじゃねーか」
「それは……」
「それは?」
亜依ちゃんがまじまじと見つめる。
「ダメなところもすべて好きだから……」
「恋は盲目ってやつだね」
それ使い方多分間違ってる亜依ちゃん。
コンコン。
誰かがノックする。
「は~い」
「消灯時間は過ぎてるぞー明日もスキーやるんだからほどほどにしとけ」
そう言って水田先生は去って行った。
ほどほどにしとけとは言うけどやるなとは言わない。
「そういや、『夜の巡回なんてかったるいことやらせるなよ。各人の責任で動け』とか言ってたっけ」
「よく教師なんてかったるい職に就く気になったな」
「でも、ここのホテルって内側からロックきくんだね」
「しかも巡回が水田先生……」
「神奈これは……」
「やるしかねーな、亜依」
亜依ちゃんと神奈は二人で顔を見合わせにやりと笑い、私の顔を見る。
え?なになに?
「愛莉もいいよね?」
「トーヤに会えるんだしな」
何の話をしてるの?
神奈が私に耳打ちする。
え、ええ!!
それは流石にまずいでしょ?
神奈がすかさず冬夜君にメッセージを送る。
が、返事がない。
「もう寝やがったか」
「神奈、未だ明日が残ってるよ」
「明日のお楽しみにしますか?」
「ちょっとやばいって~先生に見つかったら……」
私が止めに入る。
「さっきの話聞いてたでしょ。大丈夫だって!」
亜依ちゃんは乗り気だ。
「食い物屋で喋るよりは愛莉もイライラしなくて済むんじゃね?」
うっ!
確かに不安になったりイライラするよりはましかなぁ。
ってそんな問題!?
0
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