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2ndSEASON
それでも貴方がいいの
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「いや~昨日は参ったな。ハハハ」
声が大きいよ渡辺君。
「しかし、流石片桐君ですね。とっさに『カレー食ってました』って……」
石原君が思い返したように言う。
昨晩水田先生に連れられ探し回っていた教師たちのところに行くと「どこ行ってた!」と怒られた時、なんとなく「カレー食ってました」って答えていた。
「単に頭の中がカレーで一杯だったんだろ?」と、神奈。
「でもそのおかげで私達は無事だったんだし」と、指原さん。
「咄嗟の機転がきくのも冬夜の長所だよ」と、渡辺君。
僕は黙ってTKGを食べていた。
「ご飯は沢山ありますからね~お代わりどうですか?」
と仲居さん。
それじゃあ、早速お代わりを。
ぽかっ!
「ちゃんとよく噛んで食べてる!?」
「食べてるよ……」
そんなやりとりを見て、指原さんが一言。
「神奈の言ってる意味分かるわ、確かにカップルの会話じゃない」
「おかず余ってるのにご飯がないんだよ」
おかずだけ残すなんてできないだろ?
「卵かけてごはん食べちゃうからでしょ!」
「まだ海苔も残ってるし」
「うぅ……後一杯だけだからね」
あと一杯か……。
「すいません特盛でお願いします」
ぽかっ!
「だってあと一杯は良いって言ったろ?量までは制限してないだろ」
「そういう屁理屈を言わないの!」
「あらあら、仲が良いんですね。恋人さんですか?」
仲居さんがご飯を盛りながら聞いてきた。
「はい!」
ご飯を食べてる時の僕は機嫌がいい!
愛莉もまんざらでもないらしい、「そうなんです」と恥ずかし気に言ってた。
「じゃあ、彼女さんに合わせた方がいいですね。その方が上手くいくんですよ」
そんな話聞いてないよ。
ご飯を当初の半分に減らされた。
「一杯だけだからね」
にっこり笑う愛莉。
機嫌は良い、うかつに刺激しないほうが良い。
怒るならまだいい、泣かれると厄介だ。
愛莉に合わせた方がいいんだろうな。
とほほ。
ご飯を食べると部屋にもどる僕たち。
着替えをして、部屋に戻る。
なんとなく気になっていたことを石原君に聞いてみた。
「石原君、江口さんとは連絡とってるの?」
「とってるよ。今日自由行動の時にロビーで待ち合わせしましょって連絡着た」
「おお~順調じゃないか!」
渡辺君の声が大きい。
「ただ『指原さんたちと一緒ね』って……」
「まじかよー!俺たちも二人きりになりたいんだよ!」と叫ぶ桐谷君。
「ごめん、僕が不甲斐ないばかりに」
落ち込む石原君を渡辺君が励ます。
「まあまあ、未だ二日目だ。それにイッシーと江口さんを二人きりで歩かせるわけにはいかないよ」
て、ことは渡辺君と神奈も一緒に行動か。
「大丈夫なの?」
「何が?」
渡辺君が聞き返す。
「二人共彼氏彼女いるのに……いい気分しないと思うけど」
「そこまで度量の狭い女じゃねーよ、音無さんも平気みたいな事言ってたしな」
「……じゃあ、僕たちも一緒に行動するかな?」
「冬夜は、ダメだろ?遠坂さんはアトラクション苦手そうだし、買い物とか観光楽しむタイプじゃないかな」
「でも、また僕たちだけ……」
「お前は遠坂さんの事だけ考えてろ。余計な事は考えるな」
それでいいんだろうか?
(2)
ホテルを出て、バスはテーマパークに向かっていた。
相変わらず、冬夜君は景色に見とれていて、こっちを見てくれない。
でもそれでもいい。
側にいるだけで胸は軽く弾むのだから。
合えないと不安で寂しくて切なくなるの。
どうかずっと笑っていて、横顔をみせていて。
私を傷つけるのも癒すのも冬夜君だけなんだよ?
些細な一言に舞い上がったり沈んだりするの……。
そんな事を考えながら冬夜君を見ていた。
「愛莉!!」
後ろから神奈が呼んでいた。
「な~に?」
「冬夜の馬鹿また自分の世界に入ってないか?」
「みたいだね~」
「ったくしょうがねーな」
そう言って席を立ち冬夜君に近づく神奈を止めた。
「テーマパークについたら一杯構ってもらうから今だけはそっとしておいてあげて」
「愛莉?どうしたんだ。今日は。昨日は泣いていたのに……」
「う~ん……『側にいるだけで幸せに思う』からかな?」
「愛莉ちゃん、妥協したらだめだよ、片桐君を甘やかしたらどこまでも落ちていく」
亜依がそう言った。
昨日の私なら多分怒ってるか泣いてたと思う。
でも、今日はなぜか、横顔をみてるだけで、幸せな気分になれる。
どういう心境の変化はわからない。
でも、冬夜君は常に私の事を考えていてくれてると思う。
……たぶん。
そんなことはどうでもいいの。
こんな優しい気持ちになったのは冬夜君が初めてだから。
「甘やかすのと愛は違うぞ愛莉」
神奈は指摘する。
「断言していい。こいつは今食い物の事しか考えていない。手元のパンフレット見てみ?」
……確かにレストランのページで止まっていた。
「私、今日は冬夜君に付き合うつもりだよ」
私の一言に驚く3人。
「それって、食べ歩きするってこと?せっかく皆がデートさせてあげるって言ってるのに」
信じられないといった顔をする恵美。
「うん。昨日ね、もんじゃ焼きを食べたときに行ったときに気づかされたの。ああ、こんな幸せもあるんだって」
「もんじゃ食って幸せってどんな境地だよ」
神奈が聞いてくると私は昨日の出来事を話した。
「冬夜君がね『一つのものをつつき合うってカップル冥利に尽きるじゃないか!』って言ってくれたの。そんな些細な一言に私は泣きそうになってた。冬夜君も私を恋人としてちゃんと受け入れてくれてるんだって」
「それってもんじゃ焼き食えて舞い上がってただけじゃないのか?」
呆れた顔で言う神奈。
「それでもいい、些細な一言で舞い上がる私がいる。沈んだりするけど……、全てを含めて冬夜君が好きなんだから」
「まあ、いいじゃないか?遠坂さんには俺達にはわからない境地に入ったんだろ?」
渡辺君がそう言ってくれた。
「こう言ったらなんだけど……、ダメ男を好きになる典型的なパターンじゃない?」
恵美がそう言った。
「そうだよ、ビシビシ言わないと堕落する一方だよ。片桐君は」
亜依も恵美の意見に賛同する。
「もちろん、今まで通り制御はするけど。今はいいかなって。私も自分の世界に入っていようって。冬夜君が隣にいるだけで幸せな気持ちになるから」
「うーん……よくわからないけど恋ってそういうものなの?」
恵美が聞いてきた。
神奈が代わって答えてくれた。
「恵美にはまだ分からなくていい世界だよ。この二人は恋を超えてもはや愛の境地にたってるから」
「なるほど……。どうすればそうなれるの?」
「なろうと思ってなれるもんじゃないよ、イッシー次第ってところもあるしな……」
「ふーん……」
恵美はそう言って、石原君を見る。
石原君は、突然呼ばれて慌ててるみたいだけど。
「遠坂さんは乗り物系だめなんだっけ?」
渡辺君が聞いてきた。
「うん、絶叫系は特にダメかな」
「じゃあ、今日も昨日と同じ作戦でいくか?」
「私の方は平気だけど」
恵美はそう言った。
その時、水田先生がマイクを持った。
「もうすぐ、テーマパークに着くが先に言っとく。問題を起こさない程度に自由にやれ。ただし一人で行動はするな。面倒事には巻き込まれるなよ」
そう言って水田先生は席に着いた。
未だに自分の世界に入ってる冬夜君。
それでいいんだよ。
冬夜君がダメと思うところでさえこの心愛しさで満たすには十分だから。
前にも言ったよね?
ダメなところも全部受け入れるって。
ただその冬夜君の世界に私も入りたいなとは思うけど。
ゲレンデであった時みたいに。
駐車場にバスが止まると、みんないそいそと席を立つ。
最後に私は冬夜君を現実の世界に引き戻す。
すると意外な反応が。
「戻ってきてるよ」
え?
「そうならそうと言ってくれればいいのに……」
「愛莉の話聞いてたら恥ずかしくて言いだせなかった」
私は冬夜君を小突く。
「気がつかないで喋ってる私も恥ずかしかったよ!」
冬夜君にくすっと笑う。
「とりあえずバスを降りよう。その後は……」
「『とりあえず腹ごしらえ』でしょ?分かってるよ。ただし、その後はつきあってもらうからね」
(3)
アトラクションに乗るのに1時間~2時間待たされる。
その時間色々喋っていた。
亜依と瑛大。イッシーと恵美もその時間を楽しんでいるようだった。
私は渡辺と時間を潰す。
「これじゃあ、乗れて2つか3つくらいか」
「移動時間もあるしな、今のうちに乗りたいもの絞っておいた方がいいかもしれん」
「それにしても、イッシー達仲良くなったな」
「それは言えてるな、イッシーも大分肩の力抜けてきたみたいだし」
微笑ましい二人の姿を見てそう言う。
「うちの班もこれで全員こぶつきか」
私はため息交じりにそう漏らす。
「今、彼氏さんいたらなぁ~って思っただろ?」
「まあな……、それを言ったら渡辺もだろ?」
「まあな、流石にこの中で二人だけ相方がいないのは悲しい物があるな」
そう言って渡辺は笑う。
「この班も今日で最後か……」
色々あったな。トラブルも楽しい事もひっくるめて、良い想い出になったかもしれない。
「まだ終わってないさ。今度さ、年末か年明けにでもみんなで集まらね?音無さんの彼氏さんも連れてきてさ」
「随分と大所帯になりそうだな」
「それも悪くないだろ」
「他の面子次第だな」
「変な意味ではないが連絡先交換しとかないか?」
「いいよ」
そう言って互いにスマホを操作して連絡先を交換する。
「トーヤ達には私から伝えるよ」
「頼む」
「おーい、順番きたぞー」
私達は乗り物に乗った後、ベンチの前に集まっていた。
乗り物に酔ったイッシーを介抱する恵美。
「ごめんなさい……。僕はゆっくりしてるから先に皆乗り物乗ってて」
イッシーは申し訳なさそうに言う。
「あら?私が彼氏を放っておいて遊び惚けるような薄情な女子にみえてるわけ?」
恵美ってそういうキャラだったのか?
「お前を一人にして遊ぶなんて無理だよ。面倒事に巻き込まれそうなパターンじゃないか」
と、渡辺は言う。
「イッシー乗り物弱いなら弱いっていえばいいのに」
と、瑛大。
「弱くはないんだけど緊張しちゃって……」
まあ、カップル成立2日目じゃ緊張して当たり前か。
「このあとどうする?」
私は渡辺に聴いていた。
「時間も時間だしな、何か腹に入れておくか。イッシー歩けるか?」
「もう大丈夫です」
寧ろ今の状況の方が緊張しますと言いたげなイッシー。
無理もないいきなり彼女の膝枕だからな。
レストランも混んでた。
しばらく待ってようやく席に案内してもらえてそれから注文を取りに来て、注文が来るまでに1時間。
ピザを何種類か選んでそれをシェアしながら食べる。
「私一度やってみたかんだよね。はい、イッシー」
恵美はピザを一切れとるとイッシーの口に運ぶ。
イッシーは意外と物分かりが良いらしい。
口をあけると恵美がイッシーの口に入れる。
「どうだい?初めての感想は?」
渡辺が恵美に聞いている。
「悪くないわね、こういうのも」
「じゃあ、今度は反対にしてもらえよ」
「してもらえるのかしら?」
そう言って恵美はイッシーの顔を見る。
突然言われて戸惑っているイッシー。
「やってやれよ、となりのバカップルみたいにさ」
そう言って亜依と瑛大の二人を指す。
二人は全く気付くことなくいちゃついてる。
意を決したイッシーはピザを一切れ掴む。
あーんと口を開ける恵美。
……手が震えてるぞ。
ソース垂れない様に気をつけてやれよ。
上手くできたみたいだ。
一仕事やり遂げた達成感みたいなものに浸るイッシー。
「あら?イッシーごめんなさい。口元にソースついちゃったみたい」
恵美は紙ナプキンをとるとイッシーの口の周りをふいてやる。
イッシーの顔は赤くなっている。
食事もあらかた終わった頃「じゃあ、あと2つくらいは何か乗って帰ろうか?」と渡辺が席を立つ。
「お土産買う時間も欲しいしあと一つくらいが限界じゃないかしら?」と恵美がいう。
「それもそうだな、どれに乗りたい?」
渡辺は席にもどるとパンフレットを広げる。
「ここといったらアレでしょ!」
と瑛大が一つのアトラクションを示す。
「じゃあ、それにしようか」
私は正直どれでもよかった。
他の皆もそんな感じだ。
そうしてそのアトラクションに向かった。
(4)
愛莉がにこにこしてる。
僕が食べ物お店に入ろうとしてもにこにこしてる。
これは何か悪い事が起こる前触れみたいなものか?
一応愛莉に聞いてみる。
「ここ入ってもいいかな?」
「いいよ~」
やっぱりにこやかに答えた。
それからキャラクターと記念写真撮ったり、ヴィクトリア時代の優美な建物が軒を連ねるストリートを歩いたりしていた。
その間も間食していたけど愛莉はニコニコしている。
昨日は何もやってないはず。
と、なると朝の事かな?
愛莉の話し声が聞こえてくるまで案の定入ってた。
でも、許してくれるようなこと言ってたよな?
……機嫌が悪いってこともないらしい。
現に腕を組んで浮かれて歩いてる。
偶にお土産屋さんをみつけては「行こっ」って言うくらいだ。
何か愛莉を変えた?
「あのさ、愛莉」
埒があかない、考え込んでるとまた愛莉泣かせちゃう。
「な~に?」
うん、機嫌は悪そうにない。
ここで「なんで機嫌が良いの?」とか聞いたら逆効果じゃないか?
「……なんでもない」
「?」
不思議そうに僕を見る愛莉。
何か言わないとまた不機嫌になるぞ。
とりあえずチュリスを食べる。
ってそうじゃないだろ!
「……喉渇いたね」
「そりゃあれだけ食べたらね~」
ジュースを一口飲むと、愛莉が「私にも一口ちょうだい~」とストローに口をやる。
考えすぎか?
普通に楽しんでたらいいのか?
愛莉は乗り物が苦手だ。
だから適当に観光してる。
乗り物に乗るわけじゃないから全部のエリアを見て回れる。
その時々で写真を撮る愛莉。
「愛莉ご機嫌だね。そんなにここ来たかったの?」
「ここにきて嫌がる女の子はそういないと思うよ?」
「それにしても愛莉が上機嫌だから」
「だって、冬夜君と一緒なんだもん」
「……ちょっと話しない?あ、あそこのお店で」
「また食べ物?しょがないなぁ~」
いつもなら小突かれるところだが、今日の愛莉は違った。
僕はパスタセットとグレープドリンクを、愛莉はティラミスと紅茶を注文した。
「それで話って?」
愛莉はまだ笑顔だ。
「僕と一緒だと楽しいの?いつもなら『食べ物ばっかり』って怒るのに」
言って「しまった」と後悔した。
また愛莉を怒らせることを言ったんじゃないか?
でも愛莉は笑顔を絶やさない。
「バスの中での話聞いてたんじゃなかったの?」
「現実世界には戻ってたけどよく聞いてなかった」
最後の方の、「自分の世界が……」ってくだり辺りしか聞こえていない。
「冬夜君がたとえ自分を嫌いだったとしても、私には冬夜君以外の他の誰になんて代えられないから」
「?」
「冬夜君の欠点全てを取り除けるとは思わないけれど、それでも冬夜君がいいの、その痛みさえも背負いたいと思う」
……?
言ってる意味が分からない。
「冬夜君は自覚してるんだよね?自分が食べ物ばっかり見たり、いきなり自分の世界に入ったり」
「う、うん」
「だけど昨夜考えたの?だからって他の人と恋ができる?って……私には無理だったな~」
それはよかった。他の人に乗り換えるのかと思ったよ。
「冬夜君の欠点ですら愛おしく思える。側にいるだけで幸せに思う。そう考えてたら今の境地に至ったわけ」
なるほどね……そんな愛莉の想いに僕はどう応えられるのか?
「今、どう応えたらいい?とか思ってるでしょ?何も考えなくていいよ。冬夜君考えるとロクなことないし」
その言い方は突き刺さるぞ……。
「私は冬夜君がいいの♪だから冬夜君のままでいて。会えないと不安で寂しくて切なくなる。そばにいるだけで胸は軽く弾むから」
「僕がどこに行くような話するなよ」
「そ!それなら全然問題ないじゃん……。そうだなぁ、しいて言うなら一人で行かないで。私も一緒に連れて行って欲しい。冬夜君の世界に」
「……努力するよ」
「努力しなくてもできるよ。スキーの時目と目が合っただけで私冬夜君と世界を共有できたよ」
「あ、そういうことね」
僕がそういうと愛莉は満足そうにうなずいた。
注文したティラミスを頬張るかと思ったら僕のパスタを見ている。
この日は勘が冴えてたみたい。
「食べる?」
「うん♪」
僕はフォークでパスタをくるくると巻き取ると愛莉の口に運ぶ。
「美味しい~」
愛莉は変わったな。
1日でこうも変わるものなのか?
「ひょっとしてもんじゃの時から考えてた?」
「うん……あの時冬夜君がカップル冥利に尽きるって言ってくれたから。あ、私冬夜君の世界にちゃんといるんだなって」
「あれは……」
「その場のノリで、思い付きでいいの!冬夜君は思いついたことをそのまま実践してる方が良い気がする。考えると喧嘩の火種を作るだけだから」
貶されてるのか褒められてるのか。
愛莉がティラミスを食べ終わるのを待って僕たちは席を立つ。
「そろそろお土産買っとくか?」
「え?もう買ったよ?」
「二人の記念に何か買っておこうよ」
「買ってくれるんだね♪」
僕たちはお土産屋でネックレスを買った。
そのあとエントランスで渡辺君たちと合流する。
ふと石原君を見る。
江口さんと自然に手をつないでいた。
渡辺君を見る。
渡辺君は親指を立ててこっちに向けていた。
うまくいったんだな。
最後に出る前に石原君が江口さんにお願いしてた。
「二人で記念撮影してもいいですか?」と
「良いわよ」と江口さん。
マスコットキャラと記念撮影する石原君と江口さん。
「そろそろ時間だし、行こうか?」
渡辺君がそう言うと集合場所に向かった。
「おい、私を忘れるな!!」
カンナが後を追いかけてきた。
「どこ行ってたんだよ?」
「男子の告白に付き合っていたんだよ。愛莉は無事だったか?」
「全然なかったけど?」
「そうかお前らの事は誰もが知ってることだしな」
なんせテレビにも載ったくらいだからな。
(5)
帰りの飛行機に乗る。
そう言えば飛行場で面白い物を見た。
動く歩道。
取りあえず利用してみた。
これは楽しい、さらに歩くと早い早い。
「子供か!お前は!」と、カンナ。
子供ですよ、まだ。
相変わらず飽きもせず外の景色を見ていた。
夜だったから富士山は見えなかったけど。
そのとき右肩になにかずしりと暖かい物が
愛莉か。
「綺麗だね」
「そうだな」
でも珍しいな、愛莉が景色を見るなんて。
「冬夜君の世界に入るって言ったでしょ。私はここにいるよって。……言いたい事わかるでしょ」
なんとなくわかった。
「普通の景色なのに冬夜君とみてると何か違う気がする」
肩にのしかかる胸のふくらみが気になって僕は現実にひきもどされたけどな。
「で、どんな素敵な事考えてたの?」
「……言っても怒らない?」
「怒らないよ?」
「愛莉また大きくなった?」
ぽかっ!
「怒らないって言ったろ!?」
「叩かないとはいってませ~ん」
そう言って笑う愛莉。
愛莉は辿り着くところまで辿り着いたんだろうな。
僕も追いつかないと。
「やっと終わるな。旅行も」
「え?終わってないよまだ」
帰るまでが遠足です的なノリか。
「ちょっと、自分で言ったこと忘れたの?私は覚えてるからね!」
怒らないって言ったそばから怒ってないか?
「なんだ、トーヤまたなんか変な事言ったのか」
愛莉の奥からカンナが起きて話に混ざった。
「変な事じゃないもん。素敵な事だもん」
?
全然覚えてないんだけど。
「……本当に覚えていないんだね?大丈夫だよ。明日明後日振り替え休日だし」
「何を言ったんだ愛莉?」
「冬夜君ね、スキー場で私を抱きしめてこう言ってくれたの……」
あ、思いだした!!てかそれ今言っちゃまずいだろ!
「愛莉ストップ!!」
だが、そんな僕の訴えもむなしく……。
「帰ったらもっといい事しようなって……、だからそれが終わるまでは修学旅行だよ」
「ほぉ~トーヤも言うことが大胆になってきたな」
ニヤニヤしているカンナ。
僕たちの修学旅行はまだ続くらしい。
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