優等生と劣等生

和希

文字の大きさ
93 / 442
2ndSEASON

それでも貴方がいいの

しおりを挟む

(1)

「いや~昨日は参ったな。ハハハ」

声が大きいよ渡辺君。

「しかし、流石片桐君ですね。とっさに『カレー食ってました』って……」

石原君が思い返したように言う。
昨晩水田先生に連れられ探し回っていた教師たちのところに行くと「どこ行ってた!」と怒られた時、なんとなく「カレー食ってました」って答えていた。

「単に頭の中がカレーで一杯だったんだろ?」と、神奈。
「でもそのおかげで私達は無事だったんだし」と、指原さん。
「咄嗟の機転がきくのも冬夜の長所だよ」と、渡辺君。

僕は黙ってTKGを食べていた。

「ご飯は沢山ありますからね~お代わりどうですか?」

と仲居さん。
それじゃあ、早速お代わりを。

ぽかっ!

「ちゃんとよく噛んで食べてる!?」
「食べてるよ……」

そんなやりとりを見て、指原さんが一言。

「神奈の言ってる意味分かるわ、確かにカップルの会話じゃない」
「おかず余ってるのにご飯がないんだよ」

おかずだけ残すなんてできないだろ?

「卵かけてごはん食べちゃうからでしょ!」
「まだ海苔も残ってるし」
「うぅ……後一杯だけだからね」

あと一杯か……。

「すいません特盛でお願いします」

ぽかっ!

「だってあと一杯は良いって言ったろ?量までは制限してないだろ」
「そういう屁理屈を言わないの!」
「あらあら、仲が良いんですね。恋人さんですか?」

仲居さんがご飯を盛りながら聞いてきた。

「はい!」

ご飯を食べてる時の僕は機嫌がいい!
愛莉もまんざらでもないらしい、「そうなんです」と恥ずかし気に言ってた。

「じゃあ、彼女さんに合わせた方がいいですね。その方が上手くいくんですよ」

そんな話聞いてないよ。
ご飯を当初の半分に減らされた。

「一杯だけだからね」

にっこり笑う愛莉。
機嫌は良い、うかつに刺激しないほうが良い。
怒るならまだいい、泣かれると厄介だ。
愛莉に合わせた方がいいんだろうな。
とほほ。
ご飯を食べると部屋にもどる僕たち。
着替えをして、部屋に戻る。
なんとなく気になっていたことを石原君に聞いてみた。

「石原君、江口さんとは連絡とってるの?」
「とってるよ。今日自由行動の時にロビーで待ち合わせしましょって連絡着た」
「おお~順調じゃないか!」

渡辺君の声が大きい。

「ただ『指原さんたちと一緒ね』って……」
「まじかよー!俺たちも二人きりになりたいんだよ!」と叫ぶ桐谷君。
「ごめん、僕が不甲斐ないばかりに」

落ち込む石原君を渡辺君が励ます。

「まあまあ、未だ二日目だ。それにイッシーと江口さんを二人きりで歩かせるわけにはいかないよ」

て、ことは渡辺君と神奈も一緒に行動か。

「大丈夫なの?」
「何が?」

渡辺君が聞き返す。

「二人共彼氏彼女いるのに……いい気分しないと思うけど」
「そこまで度量の狭い女じゃねーよ、音無さんも平気みたいな事言ってたしな」
「……じゃあ、僕たちも一緒に行動するかな?」
「冬夜は、ダメだろ?遠坂さんはアトラクション苦手そうだし、買い物とか観光楽しむタイプじゃないかな」
「でも、また僕たちだけ……」
「お前は遠坂さんの事だけ考えてろ。余計な事は考えるな」

それでいいんだろうか?

(2)

ホテルを出て、バスはテーマパークに向かっていた。
相変わらず、冬夜君は景色に見とれていて、こっちを見てくれない。
でもそれでもいい。
側にいるだけで胸は軽く弾むのだから。
合えないと不安で寂しくて切なくなるの。
どうかずっと笑っていて、横顔をみせていて。
私を傷つけるのも癒すのも冬夜君だけなんだよ?
些細な一言に舞い上がったり沈んだりするの……。

そんな事を考えながら冬夜君を見ていた。

「愛莉!!」

後ろから神奈が呼んでいた。

「な~に?」
「冬夜の馬鹿また自分の世界に入ってないか?」
「みたいだね~」
「ったくしょうがねーな」

そう言って席を立ち冬夜君に近づく神奈を止めた。

「テーマパークについたら一杯構ってもらうから今だけはそっとしておいてあげて」
「愛莉?どうしたんだ。今日は。昨日は泣いていたのに……」
「う~ん……『側にいるだけで幸せに思う』からかな?」
「愛莉ちゃん、妥協したらだめだよ、片桐君を甘やかしたらどこまでも落ちていく」

亜依がそう言った。
昨日の私なら多分怒ってるか泣いてたと思う。
でも、今日はなぜか、横顔をみてるだけで、幸せな気分になれる。
どういう心境の変化はわからない。
でも、冬夜君は常に私の事を考えていてくれてると思う。
……たぶん。
そんなことはどうでもいいの。
こんな優しい気持ちになったのは冬夜君が初めてだから。

「甘やかすのと愛は違うぞ愛莉」

神奈は指摘する。

「断言していい。こいつは今食い物の事しか考えていない。手元のパンフレット見てみ?」

……確かにレストランのページで止まっていた。

「私、今日は冬夜君に付き合うつもりだよ」

私の一言に驚く3人。

「それって、食べ歩きするってこと?せっかく皆がデートさせてあげるって言ってるのに」

信じられないといった顔をする恵美。

「うん。昨日ね、もんじゃ焼きを食べたときに行ったときに気づかされたの。ああ、こんな幸せもあるんだって」
「もんじゃ食って幸せってどんな境地だよ」

神奈が聞いてくると私は昨日の出来事を話した。

「冬夜君がね『一つのものをつつき合うってカップル冥利に尽きるじゃないか!』って言ってくれたの。そんな些細な一言に私は泣きそうになってた。冬夜君も私を恋人としてちゃんと受け入れてくれてるんだって」
「それってもんじゃ焼き食えて舞い上がってただけじゃないのか?」

呆れた顔で言う神奈。

「それでもいい、些細な一言で舞い上がる私がいる。沈んだりするけど……、全てを含めて冬夜君が好きなんだから」
「まあ、いいじゃないか?遠坂さんには俺達にはわからない境地に入ったんだろ?」

渡辺君がそう言ってくれた。

「こう言ったらなんだけど……、ダメ男を好きになる典型的なパターンじゃない?」

恵美がそう言った。

「そうだよ、ビシビシ言わないと堕落する一方だよ。片桐君は」

亜依も恵美の意見に賛同する。

「もちろん、今まで通り制御はするけど。今はいいかなって。私も自分の世界に入っていようって。冬夜君が隣にいるだけで幸せな気持ちになるから」
「うーん……よくわからないけど恋ってそういうものなの?」

恵美が聞いてきた。
神奈が代わって答えてくれた。

「恵美にはまだ分からなくていい世界だよ。この二人は恋を超えてもはや愛の境地にたってるから」
「なるほど……。どうすればそうなれるの?」
「なろうと思ってなれるもんじゃないよ、イッシー次第ってところもあるしな……」
「ふーん……」

恵美はそう言って、石原君を見る。
石原君は、突然呼ばれて慌ててるみたいだけど。

「遠坂さんは乗り物系だめなんだっけ?」

渡辺君が聞いてきた。

「うん、絶叫系は特にダメかな」
「じゃあ、今日も昨日と同じ作戦でいくか?」
「私の方は平気だけど」

恵美はそう言った。
その時、水田先生がマイクを持った。

「もうすぐ、テーマパークに着くが先に言っとく。問題を起こさない程度に自由にやれ。ただし一人で行動はするな。面倒事には巻き込まれるなよ」

そう言って水田先生は席に着いた。
未だに自分の世界に入ってる冬夜君。
それでいいんだよ。
冬夜君がダメと思うところでさえこの心愛しさで満たすには十分だから。
前にも言ったよね?
ダメなところも全部受け入れるって。
ただその冬夜君の世界に私も入りたいなとは思うけど。
ゲレンデであった時みたいに。
駐車場にバスが止まると、みんないそいそと席を立つ。
最後に私は冬夜君を現実の世界に引き戻す。
すると意外な反応が。

「戻ってきてるよ」

え?

「そうならそうと言ってくれればいいのに……」
「愛莉の話聞いてたら恥ずかしくて言いだせなかった」

私は冬夜君を小突く。

「気がつかないで喋ってる私も恥ずかしかったよ!」

冬夜君にくすっと笑う。

「とりあえずバスを降りよう。その後は……」
「『とりあえず腹ごしらえ』でしょ?分かってるよ。ただし、その後はつきあってもらうからね」

(3)

アトラクションに乗るのに1時間~2時間待たされる。
その時間色々喋っていた。
亜依と瑛大。イッシーと恵美もその時間を楽しんでいるようだった。
私は渡辺と時間を潰す。

「これじゃあ、乗れて2つか3つくらいか」
「移動時間もあるしな、今のうちに乗りたいもの絞っておいた方がいいかもしれん」
「それにしても、イッシー達仲良くなったな」
「それは言えてるな、イッシーも大分肩の力抜けてきたみたいだし」

微笑ましい二人の姿を見てそう言う。

「うちの班もこれで全員こぶつきか」

私はため息交じりにそう漏らす。

「今、彼氏さんいたらなぁ~って思っただろ?」
「まあな……、それを言ったら渡辺もだろ?」
「まあな、流石にこの中で二人だけ相方がいないのは悲しい物があるな」

そう言って渡辺は笑う。

「この班も今日で最後か……」

色々あったな。トラブルも楽しい事もひっくるめて、良い想い出になったかもしれない。

「まだ終わってないさ。今度さ、年末か年明けにでもみんなで集まらね?音無さんの彼氏さんも連れてきてさ」
「随分と大所帯になりそうだな」
「それも悪くないだろ」
「他の面子次第だな」
「変な意味ではないが連絡先交換しとかないか?」
「いいよ」

そう言って互いにスマホを操作して連絡先を交換する。

「トーヤ達には私から伝えるよ」
「頼む」
「おーい、順番きたぞー」


私達は乗り物に乗った後、ベンチの前に集まっていた。
乗り物に酔ったイッシーを介抱する恵美。

「ごめんなさい……。僕はゆっくりしてるから先に皆乗り物乗ってて」

イッシーは申し訳なさそうに言う。

「あら?私が彼氏を放っておいて遊び惚けるような薄情な女子にみえてるわけ?」

恵美ってそういうキャラだったのか?

「お前を一人にして遊ぶなんて無理だよ。面倒事に巻き込まれそうなパターンじゃないか」

と、渡辺は言う。

「イッシー乗り物弱いなら弱いっていえばいいのに」

と、瑛大。

「弱くはないんだけど緊張しちゃって……」

まあ、カップル成立2日目じゃ緊張して当たり前か。

「このあとどうする?」

私は渡辺に聴いていた。

「時間も時間だしな、何か腹に入れておくか。イッシー歩けるか?」
「もう大丈夫です」

寧ろ今の状況の方が緊張しますと言いたげなイッシー。
無理もないいきなり彼女の膝枕だからな。

レストランも混んでた。
しばらく待ってようやく席に案内してもらえてそれから注文を取りに来て、注文が来るまでに1時間。
ピザを何種類か選んでそれをシェアしながら食べる。

「私一度やってみたかんだよね。はい、イッシー」

恵美はピザを一切れとるとイッシーの口に運ぶ。
イッシーは意外と物分かりが良いらしい。
口をあけると恵美がイッシーの口に入れる。

「どうだい?初めての感想は?」

渡辺が恵美に聞いている。

「悪くないわね、こういうのも」
「じゃあ、今度は反対にしてもらえよ」
「してもらえるのかしら?」

そう言って恵美はイッシーの顔を見る。
突然言われて戸惑っているイッシー。

「やってやれよ、となりのバカップルみたいにさ」

そう言って亜依と瑛大の二人を指す。
二人は全く気付くことなくいちゃついてる。
意を決したイッシーはピザを一切れ掴む。
あーんと口を開ける恵美。
……手が震えてるぞ。
ソース垂れない様に気をつけてやれよ。
上手くできたみたいだ。
一仕事やり遂げた達成感みたいなものに浸るイッシー。

「あら?イッシーごめんなさい。口元にソースついちゃったみたい」

恵美は紙ナプキンをとるとイッシーの口の周りをふいてやる。
イッシーの顔は赤くなっている。
食事もあらかた終わった頃「じゃあ、あと2つくらいは何か乗って帰ろうか?」と渡辺が席を立つ。

「お土産買う時間も欲しいしあと一つくらいが限界じゃないかしら?」と恵美がいう。
「それもそうだな、どれに乗りたい?」

渡辺は席にもどるとパンフレットを広げる。

「ここといったらアレでしょ!」

と瑛大が一つのアトラクションを示す。

「じゃあ、それにしようか」

私は正直どれでもよかった。
他の皆もそんな感じだ。
そうしてそのアトラクションに向かった。

(4)

愛莉がにこにこしてる。
僕が食べ物お店に入ろうとしてもにこにこしてる。
これは何か悪い事が起こる前触れみたいなものか?
一応愛莉に聞いてみる。

「ここ入ってもいいかな?」
「いいよ~」

やっぱりにこやかに答えた。
それからキャラクターと記念写真撮ったり、ヴィクトリア時代の優美な建物が軒を連ねるストリートを歩いたりしていた。
その間も間食していたけど愛莉はニコニコしている。
昨日は何もやってないはず。
と、なると朝の事かな?
愛莉の話し声が聞こえてくるまで案の定入ってた。
でも、許してくれるようなこと言ってたよな?
……機嫌が悪いってこともないらしい。
現に腕を組んで浮かれて歩いてる。
偶にお土産屋さんをみつけては「行こっ」って言うくらいだ。
何か愛莉を変えた?

「あのさ、愛莉」

埒があかない、考え込んでるとまた愛莉泣かせちゃう。

「な~に?」

うん、機嫌は悪そうにない。
ここで「なんで機嫌が良いの?」とか聞いたら逆効果じゃないか?

「……なんでもない」
「?」

不思議そうに僕を見る愛莉。
何か言わないとまた不機嫌になるぞ。
とりあえずチュリスを食べる。
ってそうじゃないだろ!

「……喉渇いたね」
「そりゃあれだけ食べたらね~」

ジュースを一口飲むと、愛莉が「私にも一口ちょうだい~」とストローに口をやる。
考えすぎか?
普通に楽しんでたらいいのか?
愛莉は乗り物が苦手だ。
だから適当に観光してる。
乗り物に乗るわけじゃないから全部のエリアを見て回れる。
その時々で写真を撮る愛莉。

「愛莉ご機嫌だね。そんなにここ来たかったの?」
「ここにきて嫌がる女の子はそういないと思うよ?」
「それにしても愛莉が上機嫌だから」
「だって、冬夜君と一緒なんだもん」
「……ちょっと話しない?あ、あそこのお店で」
「また食べ物?しょがないなぁ~」

いつもなら小突かれるところだが、今日の愛莉は違った。


僕はパスタセットとグレープドリンクを、愛莉はティラミスと紅茶を注文した。

「それで話って?」

愛莉はまだ笑顔だ。

「僕と一緒だと楽しいの?いつもなら『食べ物ばっかり』って怒るのに」

言って「しまった」と後悔した。
また愛莉を怒らせることを言ったんじゃないか?
でも愛莉は笑顔を絶やさない。

「バスの中での話聞いてたんじゃなかったの?」
「現実世界には戻ってたけどよく聞いてなかった」

最後の方の、「自分の世界が……」ってくだり辺りしか聞こえていない。

「冬夜君がたとえ自分を嫌いだったとしても、私には冬夜君以外の他の誰になんて代えられないから」
「?」
「冬夜君の欠点全てを取り除けるとは思わないけれど、それでも冬夜君がいいの、その痛みさえも背負いたいと思う」

……?
言ってる意味が分からない。

「冬夜君は自覚してるんだよね?自分が食べ物ばっかり見たり、いきなり自分の世界に入ったり」
「う、うん」
「だけど昨夜考えたの?だからって他の人と恋ができる?って……私には無理だったな~」

それはよかった。他の人に乗り換えるのかと思ったよ。

「冬夜君の欠点ですら愛おしく思える。側にいるだけで幸せに思う。そう考えてたら今の境地に至ったわけ」

なるほどね……そんな愛莉の想いに僕はどう応えられるのか?

「今、どう応えたらいい?とか思ってるでしょ?何も考えなくていいよ。冬夜君考えるとロクなことないし」

その言い方は突き刺さるぞ……。

「私は冬夜君がいいの♪だから冬夜君のままでいて。会えないと不安で寂しくて切なくなる。そばにいるだけで胸は軽く弾むから」
「僕がどこに行くような話するなよ」
「そ!それなら全然問題ないじゃん……。そうだなぁ、しいて言うなら一人で行かないで。私も一緒に連れて行って欲しい。冬夜君の世界に」
「……努力するよ」
「努力しなくてもできるよ。スキーの時目と目が合っただけで私冬夜君と世界を共有できたよ」
「あ、そういうことね」

僕がそういうと愛莉は満足そうにうなずいた。
注文したティラミスを頬張るかと思ったら僕のパスタを見ている。
この日は勘が冴えてたみたい。

「食べる?」
「うん♪」

僕はフォークでパスタをくるくると巻き取ると愛莉の口に運ぶ。

「美味しい~」

愛莉は変わったな。
1日でこうも変わるものなのか?

「ひょっとしてもんじゃの時から考えてた?」
「うん……あの時冬夜君がカップル冥利に尽きるって言ってくれたから。あ、私冬夜君の世界にちゃんといるんだなって」
「あれは……」
「その場のノリで、思い付きでいいの!冬夜君は思いついたことをそのまま実践してる方が良い気がする。考えると喧嘩の火種を作るだけだから」

貶されてるのか褒められてるのか。

愛莉がティラミスを食べ終わるのを待って僕たちは席を立つ。

「そろそろお土産買っとくか?」
「え?もう買ったよ?」
「二人の記念に何か買っておこうよ」
「買ってくれるんだね♪」

僕たちはお土産屋でネックレスを買った。

そのあとエントランスで渡辺君たちと合流する。
ふと石原君を見る。
江口さんと自然に手をつないでいた。
渡辺君を見る。
渡辺君は親指を立ててこっちに向けていた。
うまくいったんだな。

最後に出る前に石原君が江口さんにお願いしてた。

「二人で記念撮影してもいいですか?」と
「良いわよ」と江口さん。

マスコットキャラと記念撮影する石原君と江口さん。

「そろそろ時間だし、行こうか?」

渡辺君がそう言うと集合場所に向かった。

「おい、私を忘れるな!!」

カンナが後を追いかけてきた。

「どこ行ってたんだよ?」
「男子の告白に付き合っていたんだよ。愛莉は無事だったか?」
「全然なかったけど?」
「そうかお前らの事は誰もが知ってることだしな」

なんせテレビにも載ったくらいだからな。

(5)

帰りの飛行機に乗る。
そう言えば飛行場で面白い物を見た。
動く歩道。
取りあえず利用してみた。
これは楽しい、さらに歩くと早い早い。

「子供か!お前は!」と、カンナ。

子供ですよ、まだ。

相変わらず飽きもせず外の景色を見ていた。
夜だったから富士山は見えなかったけど。
そのとき右肩になにかずしりと暖かい物が
愛莉か。

「綺麗だね」
「そうだな」

でも珍しいな、愛莉が景色を見るなんて。

「冬夜君の世界に入るって言ったでしょ。私はここにいるよって。……言いたい事わかるでしょ」

なんとなくわかった。

「普通の景色なのに冬夜君とみてると何か違う気がする」

肩にのしかかる胸のふくらみが気になって僕は現実にひきもどされたけどな。

「で、どんな素敵な事考えてたの?」
「……言っても怒らない?」
「怒らないよ?」
「愛莉また大きくなった?」

ぽかっ!

「怒らないって言ったろ!?」
「叩かないとはいってませ~ん」

そう言って笑う愛莉。
愛莉は辿り着くところまで辿り着いたんだろうな。
僕も追いつかないと。

「やっと終わるな。旅行も」
「え?終わってないよまだ」

帰るまでが遠足です的なノリか。

「ちょっと、自分で言ったこと忘れたの?私は覚えてるからね!」

怒らないって言ったそばから怒ってないか?

「なんだ、トーヤまたなんか変な事言ったのか」

愛莉の奥からカンナが起きて話に混ざった。

「変な事じゃないもん。素敵な事だもん」


全然覚えてないんだけど。

「……本当に覚えていないんだね?大丈夫だよ。明日明後日振り替え休日だし」
「何を言ったんだ愛莉?」
「冬夜君ね、スキー場で私を抱きしめてこう言ってくれたの……」

あ、思いだした!!てかそれ今言っちゃまずいだろ!

「愛莉ストップ!!」

だが、そんな僕の訴えもむなしく……。

「帰ったらもっといい事しようなって……、だからそれが終わるまでは修学旅行だよ」
「ほぉ~トーヤも言うことが大胆になってきたな」

ニヤニヤしているカンナ。
僕たちの修学旅行はまだ続くらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...