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2ndSEASON
冷たくしないで
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(1)
「ふぅ……」」
水田先生はため息を吐いていた。
「あの……、難しいですか?うちの子の学力では……」
母さんが心配そうに先生に聞いている。
「いや、それは大丈夫です。模試の結果も良いし。まず問題はないです」
「そうですか」
母さんは胸を撫でおろす。
「ただ、冬夜君の場合もう1ランク上を狙うって手もあるんです。片桐、何か大学でしたい事ってあるのか?」
先生は僕に聞いてきた。
「特にないです。普通に大学行って就職するだけだと思います」
「就職ってやりたい仕事とかあるのか?」
「特に決めてないです、大学行って就ける職にしようと思います」
「そこだよ、お前に足りないのは。もっと未来を見据えた進路を考えられないか?」
「未来よりも今この瞬間をって言ってくれたのは先生ですよ」
「大学生活を満喫するのは構わない。が、進路はきちんと決めておいた方が良い。将来やりたいことにつながるからな。それが経済学部でいいのか?」
「まだピンとこないんですよね。そう言われても」
「安易な道を選ぶなよ。逃げずに向き合った自分だからこそ報われることもあるんだから。後期で記念に別の大学を受けてもいい。大学だけが進路じゃないぞ」
「すいません、愛莉の将来もかかってるんで……」
「どういう意味だ?」
あ、しまった。つい口が滑った。
まあ、この先生なら喋ってもいいか。
僕は愛莉の話を先生に話した。
「……なるほどな、それで安全圏を……。しかし、それこそサッカーに進路を取ったほうが良いんじゃないか?」
「それは最終手段です。愛莉は僕とのキャンパスライフを希望してるから」
「そうか……しかし、最終手段がサッカーとはな。片桐にしか言えない言葉だぞ」
ですよね。
「わかった。じゃあ、私立を受ける気はないんだな?」
「ないです」
一番の安全策は私立にサッカー推薦なんだろうけど。
僕がサッカーをすると愛莉を不安にさせる。
地元大学でお遊び程度にやるのが一番なんだろうな。
「よし、じゃあ決まりだ。もういいぞ」
母さんは礼をすると先に出る。
その後に僕が出ようとすると。
「片桐実は私立大へのスポーツ入試ならお前なら100%受かるんだが……」
「さっきも言ったけどサッカーで進学は考えてないので」
誠とプレーできるのはちょっと楽しそうだけどな。
「わかった。すまんな。教師として言っておかないといけないこともあってな」
「わかってます。ありがとうございます」
そう言って僕は部屋を出た。
(2)
「はぁ……」
私は溜息しか出なかった。
学年では常にトップを維持しているこの子をどうして文Ⅱの私が担当してるのか?
他の先生からの圧力もすごい。
この子なら難関大学も容易にクリアするだろう。
しかし、片桐から聞いた話では解答は想像できた。
「冬夜君と一緒の学校がいいです♪」
「……片桐ならもう1ランク上の大学も狙えると思うんだが、そこはどうなんだ?」
「冬夜君の意思を尊重します。冬夜君が地元大学が良いって言うなら地元大学です」
「片桐の事ばかり話しているが、遠坂自身なりたい事はないのか?」
「ありますよ♪」
お、この子なりに進路を考えているんだな。
「それならその進路に向かって、4年くらい離れていてもお前たちなら……」
期待した私が馬鹿だった。
この子から出た言葉に絶句した。
「冬夜君のお嫁さんだからどこの大学でもいいんです。それなら一緒の大学がいい♪」
「……お母さんはどう思ってるんですか?」
この親にしてこの子ありとはまさにこの事だった。
「娘の思い通りにさせてやろうと思います~。中学の時からの夢だったので~」
「……娘さんは片桐が入試失敗したら自分も浪人すると言ってますがそれはどうお考えですか?」
「そうですね~。多分言い出したら聞かない子ですので。私立高の受験も冬夜君が受けないってわかったら受験受けなかったし~」
「……遠坂。遠坂の一言が片桐にプレッシャーを与えてるとは考えたことは無いのか?」
「う、うぅ……。でも冬夜君受かるんですよね?」
「緊張して本番ミスするってこともある。離れていても一緒だよと安心させることも大切なんじゃないのか?」
「それはいや!」
遠坂は大声を出した。
「ずっと一緒だって約束したもん。4年間も離れてるなんて考えられない!」
「今ならスマホなり連絡手段はあるだろ?」
「でもスマホでは抱けません」
教師の前で言う言葉ではないぞ遠坂。
「この子はできる子です~。だからやりたい事をさせてきました~。皆の期待を一身に背負いながら、学生の本分もちゃんと果たしてきました~。だから娘の細やかな夢をかなえてあげたいんです~」
「それが、片桐君に負担を背負わせてるんじゃないかと。本当にやりたい事をさせてあげられないんじゃないかと……」
「私は、ちゃんと冬夜君の意思を尊重してます。私が冬夜君の後を追いかけるだけです。冬夜君が九大に行きたいっていうならそうします」
「いや、片桐はそうは思って無いらしい。遠坂に浪人はさせられないと考えているようだから……」
「うぅ……」
「二人でちゃんと話しあった方がいいんじゃないのか?遠坂」
「……冬夜君と進路の話するともめるからイヤだけど……分かりました。」
納得してくれたようだ。
「冬夜君に九大に行くように説得すればいいんですね!」
あ、いや。そうじゃなくてだな。
「九大に行けと言ってるわけじゃないんだ。あいつの進路の幅を広げてやれと言ってるんだ」
「……それって、離れ離れになってもってことですか?」
……こんな事教師がいうことじゃないけどな。
「遠坂が大学進学をあきらめて追いかけるという手もあるだろ?」」
「ああ~なるほど。結婚するんですね!」
「……それも手かもな」
「じゃあ、準備しなくちゃ。りえちゃん、ウェディングドレスとか用意しないとね~」
「愛莉ちゃん、冬夜君の準備を待ってからでいいんじゃない?」
この二人と話をしていると頭が痛くなるのはなんでだろう?
「じゃあ、とりあえず地元大学の経済学部で進路は決めておくが、ちゃんと片桐と話しあえよ」
「は~い……でも」
「?」
「私からプロポーズって変ですよね?」
成績はいいが、あほの子の様だ。
(3)
「音無さんは最近成績上がってます。模試も悪くない、地元大学も今の調子を維持すれば大丈夫でしょう」
「そうですか、よかった」
水田先生が言うと母さんが胸を撫でおろす。
「音無も私立を受けないつもりか?」
「はい、そんな余裕ないから。落ちたら就職するつもりです」
「奨学金制度ってのもあるぞ」
「そこまで、大学にこだわってるわけじゃないんで」
ただ、二人が行くから行く。
それだけなのだから。
「音無は、将来の夢とかあるのか?」
言われてみると考えたこと無いな。
「特にないです、月並みですけど。お嫁さんくらい?」
本当に月並みだな。
「音無の彼氏はサッカーで進学するんだったな?」
「そうですけど」
「音無は彼氏と離れ離れになっても平気なのか?」
「……今でも離れてますから。変わらないです」
「その気持ち、遠坂にも教えてやってくれないのか」
なんで愛莉の名前が出てくるんだ。
「先生も音無の意見には賛成だよ、どんなに離れていても心はいっしょだ。変わらない。だけど遠坂は不安に思っているようだ。お前からもアドバイスしてやってくれないか?」
あの二人はダメだろ。
「先生、あの二人は駄目です。これまでずっと一緒だった。急に離れたりしたらどっちかが耐えられなくなる」
「そうは思えないんだ。あの二人……もうそんなレベルじゃないだろ?」
「でも、強そうで酷くもろい。それに愛莉はああ見えて意志が固い。言い出したら聞かないですよ」
「そうか……」
先生は頭を抱えている。
「で、うちの娘は大学には行けるのでしょうか?行くにはどのくらいのお金が……?」
「音無さんのご家庭の事情なら無償でいけるはずです。心配いりませんよ」
「そうですか?」
「学費くらい自分で稼ぐよ」
「それだと学校に行く意味なんてないだろ?」
「……高校卒業したらもっと割のいいバイト探すつもり」
「学費なら母さんがなんとかするから」
母さんそれ以上働いたら死んでしまうぞ。
「勉強と両立するから大丈夫だって。高校だってやれたろ?」
「それはそうだけど」
先生が口を挟んできた。
「音無、今は親に甘えておけ。大学卒業した後に恩返しすればいいんだ」
それは当然だけど……。
「大学はもっと厳しいぞ、バイトもほどほどにしておけ。バイト三昧で単位落としたら洒落にならないからな」
それも分かってる。
「まあ、音無が大学行く気になったってだけでも、良かったよ。今の調子でいけば合格するからしっかりな」
そう言うと先生は「どうもありがとうございました」と言い、私たちは退室した。
(4)
「う~ん」
私は悩んでいた。
冬夜君なら1ランク上の大学を狙える。
それは私にとっても喜ばしい情報だ。
でも、それはリスクも伴う。
私の為にも絶対に現役合格したいだろう冬夜君がそんな危険を冒すはずがない。
一番いいのは私立大に行って、私がそこを受ける事。
でも嫌がってるサッカーを押し付けるなんて事できない。
また喧嘩になっちゃう。
それはいやだ。
「1年くらいなら私待つから」
と、言えばいいのかな?
でも冬夜君には重荷に感じちゃうかな?
私また負担になってる?
そんなつもりはなくても冬夜君はそう思ってしまう。
ペン回しをしながら考えていると声が聞こえてくる。
「桐谷君は私立に行くみたいだな。後は皆地元大学」
「私もよかったよ。やっと水田先生からお墨付きもらえた」
そっか、神奈も地元大学受けるんだ。
桐谷君は私立大か、でもあの二人なら大丈夫だよね?
大学でもみんな一緒に過ごせるのかな?
江口さんは学部違うみたいだけど。
「愛莉?どうした?珍しく考え込んでるみたいだけど?」
神奈に言われてハッとした。
「愛莉。また難関大学受けろって言われたのか?」
言われたけど、無理強いはされなかった。
それよりも……。
また冬夜君と喧嘩になるのかな?
でも今なら分かってくれるよね?
……ちょっと不安だな。
でも、信じてみたい。
あの時と今は違う。
「神奈、ごめん。今日の勉強会ここまでにしてくれないかな?冬夜君とゆっくり話したい事あって……」
「進路のことか?」」
神奈は勘がするどいなあ。
「うん、ちょっとね……」
「なら、私も聞く、お前ら絶対喧嘩するから」
そう言うと思った。
「神奈。今の冬夜君なら分かってくれると思うの。私も冬夜君を信じてみたい。神奈も私たちを信じて」
私がそう言うと神奈は「分かった。じゃあ、二人でゆっくり話しあえ」といって部屋を出た。
神奈が部屋を出ると後を追うように神奈を追う冬夜君。
どうして追いかけるの?
「話長引きそうだしお茶とってくるよ」と言って冬夜君は部屋を出た。
冬夜君は部屋に戻ってくると大量のお菓子とお茶を持ってきた。
テーブルにあった、ノートとかは私が片付けておいた。
「で、話って?」
お菓子を食べながら冬夜君が切り出した。
「水田先生に言われたの。『私が冬夜君の進路を狭めてるんじゃないか?負担になってるんじゃないか?』って」
冬夜君はお菓子を食べるのを止め話に聞き入っている。
「私の言った『冬夜君が落ちたら私も浪人するから』その一言が冬夜君の将来を限定させてるんじゃないか?って」
冬夜君は何も言わずに私の話を聞いてる。
「不安で仕方ないの。私また重荷になっているのかな?そんなつもりないんだよ。冬夜君がサッカーしたいなら私冬夜君のお嫁さんとしてついて行くことも可能だよって」
いけない、また泣きそうだ、
「冬夜君は将来何をしたいの?私それに合わせるから……」
ようやく冬夜君が口を開いた。
「前に言ったよね?愛莉とキャンパスライフを送るって。今はそのことに全力だよ」
「でも、その先の事を考えてる?なりたい職業とかないの?」
「特に何も考えてない。大学に入ってから考えるよ、それより大学に合格する事考えなきゃだろ?」
前に冬夜君が怒った時もこんな感じだったのかな?
私の存在が冬夜君の夢を潰してる。
冬夜君の選択肢を狭めてる。
ましてや私は冬夜君にプレッシャーをかけてしまった。
あの時の私は何も考えてなかった。
でも冬夜君の中では大きな重荷になってる。
じゃあ、私が冬夜君の前から消える?
……そんなのイヤだ!
どうしてだろう?
涙が出てくる。
冬夜君ならこんなときどうするだろう?
冬夜君は何も言わない。
私の事重荷?
でも、どうか嫌わないで。
そうだ冬夜君の世界に入ろう?
冬夜君の気持ちに入り込んでみよう。
煙たがられてるかな?
「愛莉?」
怖いな。
でも、私のエゴばかり押し付け続けるのもイヤ。
冬夜君の本音が知りたい。
サッカーをしたくないのは知ってる。
でもやりたい事ってないの?
私の旦那様?
でもそれだけじゃ食べていけないんだよ?
私も一緒に働く?
……今はそんな事を考えてる場合じゃない。
今の気持ちを知りたいの。
今の本音を知りたいの。
どうすればわかる。
「嫌いにならないで……」
私は無性に冬夜君に抱いて欲しかった。
そして一言欲しかった。
「嫌いなんかなるわけないだろ」
そう、その一言が……って、え?
私は気がつかないうちに冬夜君に抱き着いていた。
抱きついて冬夜君の胸に顔をうずめて泣いていた。
重たい女って思われてる?
目を見たら気持ちがわかるの。
そうだ、冬夜君の顔をみよう。
恐る恐る顔を上げてみる。
冬夜君の顔はどこまでも優しい表情に見えた。
そして優しく私を抱いていてくれた。
「僕の今の気持ち……分かる?」
ごめんなさい、分からない。
知るのが怖いの。
心の目、未だ閉じてる。
言いたい事もわからない。
ただ自分を嫌いにならないで。
私の目はただそう訴えているだけだった。
首を横に振る。
幼子が駄々をこねるように。
嫌だよね、こんな我儘な娘。
でも嫌いにならないで。
「愛莉、大丈夫だよ」
私なにも言ってないのに、私の気持ちが冬夜君に通じてる。
冬夜君は私の心の中に入ってきてるの?
冬夜君は私を受け入れてくれるの?
自分のことちっぽけな器だと言ってたね。
そんなことないよ。
こんな大きな重荷を受け入れてくれてるんだから。
わかった。
私も冬夜君を受け入れる。
覚悟はできた。
どんな気持でも受け入れる。
それが例え残酷なものでも。
私は覚悟して冬夜君の目を見る。
やっぱり優しい顔をしていた。
まるで幼子をあやすかのように。
どうしてそんなに優しいの?
いけない、私自分の世界に入ってる。
何か言わなきゃ。
「お願い、嫌いにならないで」
そう訴えるのが精いっぱい。
でもその訴えに冬夜君は応えてくれた。
私を抱きしめると私の耳元で囁く。
「愛莉と一緒ならどんな未来でも生きていける気がするんだ。愛莉のいない未来なんていらない。だから愛莉の事だけを考えてる」
私も一緒だよ。
冬夜君のいない明日なんていらない。
「大好きだよ、愛莉」
その言葉に救われる。
その言葉に癒される。
その言葉で明日を生きていける。
でも……大丈夫?
冬夜君の夢ってなに?
一緒に生きていけるなら冬夜君、何やってもいいんだよ?
「先生に言われてさ、少し調べてみたんだ。愛莉を食べさせるくらいの収入の職にはつけそうだから」
そんな先の事まで考えてたんだね。
そうならそうと……。
「何になろうかまでは考えてない。ただ今を楽しむ。それだけしか考えてないよ」
そっか、分かった。
って冬夜君……。
「私の心の中に入ってる?」
「うん」
私は恥ずかしくなった。
冬夜君の中では私丸裸なんだね。
体が熱を帯びていく。
「愛莉をみてたらひどく怯えてるように見えたから、ちょっと愛莉の世界に入ってみた。正解だったみたいだね」
一緒にお風呂に入ってる時より恥ずかしいよ。
「冬夜君のえっち」
これからは一言断ってから入ってきてよね。
あ、私もいっしょか。
私は一人でくすくす笑っていた。
「愛莉、大丈夫か?」
冬夜君、私の世界に入ってこれるんだよね。
じゃあ、覗いてよ。
私の今の気持ちを正直に伝えるから。
冬夜君は少し戸惑っていた。
そして首を振る。
え?だめ?
ちょっと、強引に引き込んでみるかな。
冬夜君の首に腕を回すとそっと目を閉じる。
唇に冬夜君の唇が重なる。
「!?」
私の舌を冬夜君の唇がくわえる。
いつの間にそんな技術を覚えたの?
そんな技術DVDにはなかったよね?
またネットで調べた?
こんなに長い時間キスをしたの初めてだった。
うっとりと冬夜君との時間を楽しんでいると。
とんとん。
「そろそろお風呂入っちゃいないさい」
麻耶さんが言う。
麻耶さんタイミング悪すぎるよ。
でも今夜の冬夜君は一味違った。
「……一緒に入る?」
やっと冬夜君の口から言わせたぞ。
この達成感なんだろ?
きゃーって両手で抱きしめたい。
でもここは我慢。
冬夜君の言葉を借りると「人生一度は言ってみたかったセリフ」かな?
「もう……馬鹿!」
冬夜君は驚き戸惑う。
「嫌だったら、別々に入るけど」
そんなわけないでしょ。
気付いてよ。
ちゃんと私の目を見てお話して。
言いたい事わかるでしょ?
ただ、3者面談があった日だけど。
何もない日。
特別な日でもない。
そんな日に冬夜君が優しくしてくれた。
今日を記念日にしようかな?
今日って何日だっけ?
その調子で、1年を記念日で埋め尽くして欲しい。
一年中ドキドキさせてほしい。
……本当はどきどきしてるよ。
日を重ねるごとに優しくなっていく冬夜君に。
私も負けていられないな。
あなたにドキドキをプレゼントしてあげたい。
修学旅行の時に言ってたね。
二人で思い出刻んでいこうね。
「ふぅ……」」
水田先生はため息を吐いていた。
「あの……、難しいですか?うちの子の学力では……」
母さんが心配そうに先生に聞いている。
「いや、それは大丈夫です。模試の結果も良いし。まず問題はないです」
「そうですか」
母さんは胸を撫でおろす。
「ただ、冬夜君の場合もう1ランク上を狙うって手もあるんです。片桐、何か大学でしたい事ってあるのか?」
先生は僕に聞いてきた。
「特にないです。普通に大学行って就職するだけだと思います」
「就職ってやりたい仕事とかあるのか?」
「特に決めてないです、大学行って就ける職にしようと思います」
「そこだよ、お前に足りないのは。もっと未来を見据えた進路を考えられないか?」
「未来よりも今この瞬間をって言ってくれたのは先生ですよ」
「大学生活を満喫するのは構わない。が、進路はきちんと決めておいた方が良い。将来やりたいことにつながるからな。それが経済学部でいいのか?」
「まだピンとこないんですよね。そう言われても」
「安易な道を選ぶなよ。逃げずに向き合った自分だからこそ報われることもあるんだから。後期で記念に別の大学を受けてもいい。大学だけが進路じゃないぞ」
「すいません、愛莉の将来もかかってるんで……」
「どういう意味だ?」
あ、しまった。つい口が滑った。
まあ、この先生なら喋ってもいいか。
僕は愛莉の話を先生に話した。
「……なるほどな、それで安全圏を……。しかし、それこそサッカーに進路を取ったほうが良いんじゃないか?」
「それは最終手段です。愛莉は僕とのキャンパスライフを希望してるから」
「そうか……しかし、最終手段がサッカーとはな。片桐にしか言えない言葉だぞ」
ですよね。
「わかった。じゃあ、私立を受ける気はないんだな?」
「ないです」
一番の安全策は私立にサッカー推薦なんだろうけど。
僕がサッカーをすると愛莉を不安にさせる。
地元大学でお遊び程度にやるのが一番なんだろうな。
「よし、じゃあ決まりだ。もういいぞ」
母さんは礼をすると先に出る。
その後に僕が出ようとすると。
「片桐実は私立大へのスポーツ入試ならお前なら100%受かるんだが……」
「さっきも言ったけどサッカーで進学は考えてないので」
誠とプレーできるのはちょっと楽しそうだけどな。
「わかった。すまんな。教師として言っておかないといけないこともあってな」
「わかってます。ありがとうございます」
そう言って僕は部屋を出た。
(2)
「はぁ……」
私は溜息しか出なかった。
学年では常にトップを維持しているこの子をどうして文Ⅱの私が担当してるのか?
他の先生からの圧力もすごい。
この子なら難関大学も容易にクリアするだろう。
しかし、片桐から聞いた話では解答は想像できた。
「冬夜君と一緒の学校がいいです♪」
「……片桐ならもう1ランク上の大学も狙えると思うんだが、そこはどうなんだ?」
「冬夜君の意思を尊重します。冬夜君が地元大学が良いって言うなら地元大学です」
「片桐の事ばかり話しているが、遠坂自身なりたい事はないのか?」
「ありますよ♪」
お、この子なりに進路を考えているんだな。
「それならその進路に向かって、4年くらい離れていてもお前たちなら……」
期待した私が馬鹿だった。
この子から出た言葉に絶句した。
「冬夜君のお嫁さんだからどこの大学でもいいんです。それなら一緒の大学がいい♪」
「……お母さんはどう思ってるんですか?」
この親にしてこの子ありとはまさにこの事だった。
「娘の思い通りにさせてやろうと思います~。中学の時からの夢だったので~」
「……娘さんは片桐が入試失敗したら自分も浪人すると言ってますがそれはどうお考えですか?」
「そうですね~。多分言い出したら聞かない子ですので。私立高の受験も冬夜君が受けないってわかったら受験受けなかったし~」
「……遠坂。遠坂の一言が片桐にプレッシャーを与えてるとは考えたことは無いのか?」
「う、うぅ……。でも冬夜君受かるんですよね?」
「緊張して本番ミスするってこともある。離れていても一緒だよと安心させることも大切なんじゃないのか?」
「それはいや!」
遠坂は大声を出した。
「ずっと一緒だって約束したもん。4年間も離れてるなんて考えられない!」
「今ならスマホなり連絡手段はあるだろ?」
「でもスマホでは抱けません」
教師の前で言う言葉ではないぞ遠坂。
「この子はできる子です~。だからやりたい事をさせてきました~。皆の期待を一身に背負いながら、学生の本分もちゃんと果たしてきました~。だから娘の細やかな夢をかなえてあげたいんです~」
「それが、片桐君に負担を背負わせてるんじゃないかと。本当にやりたい事をさせてあげられないんじゃないかと……」
「私は、ちゃんと冬夜君の意思を尊重してます。私が冬夜君の後を追いかけるだけです。冬夜君が九大に行きたいっていうならそうします」
「いや、片桐はそうは思って無いらしい。遠坂に浪人はさせられないと考えているようだから……」
「うぅ……」
「二人でちゃんと話しあった方がいいんじゃないのか?遠坂」
「……冬夜君と進路の話するともめるからイヤだけど……分かりました。」
納得してくれたようだ。
「冬夜君に九大に行くように説得すればいいんですね!」
あ、いや。そうじゃなくてだな。
「九大に行けと言ってるわけじゃないんだ。あいつの進路の幅を広げてやれと言ってるんだ」
「……それって、離れ離れになってもってことですか?」
……こんな事教師がいうことじゃないけどな。
「遠坂が大学進学をあきらめて追いかけるという手もあるだろ?」」
「ああ~なるほど。結婚するんですね!」
「……それも手かもな」
「じゃあ、準備しなくちゃ。りえちゃん、ウェディングドレスとか用意しないとね~」
「愛莉ちゃん、冬夜君の準備を待ってからでいいんじゃない?」
この二人と話をしていると頭が痛くなるのはなんでだろう?
「じゃあ、とりあえず地元大学の経済学部で進路は決めておくが、ちゃんと片桐と話しあえよ」
「は~い……でも」
「?」
「私からプロポーズって変ですよね?」
成績はいいが、あほの子の様だ。
(3)
「音無さんは最近成績上がってます。模試も悪くない、地元大学も今の調子を維持すれば大丈夫でしょう」
「そうですか、よかった」
水田先生が言うと母さんが胸を撫でおろす。
「音無も私立を受けないつもりか?」
「はい、そんな余裕ないから。落ちたら就職するつもりです」
「奨学金制度ってのもあるぞ」
「そこまで、大学にこだわってるわけじゃないんで」
ただ、二人が行くから行く。
それだけなのだから。
「音無は、将来の夢とかあるのか?」
言われてみると考えたこと無いな。
「特にないです、月並みですけど。お嫁さんくらい?」
本当に月並みだな。
「音無の彼氏はサッカーで進学するんだったな?」
「そうですけど」
「音無は彼氏と離れ離れになっても平気なのか?」
「……今でも離れてますから。変わらないです」
「その気持ち、遠坂にも教えてやってくれないのか」
なんで愛莉の名前が出てくるんだ。
「先生も音無の意見には賛成だよ、どんなに離れていても心はいっしょだ。変わらない。だけど遠坂は不安に思っているようだ。お前からもアドバイスしてやってくれないか?」
あの二人はダメだろ。
「先生、あの二人は駄目です。これまでずっと一緒だった。急に離れたりしたらどっちかが耐えられなくなる」
「そうは思えないんだ。あの二人……もうそんなレベルじゃないだろ?」
「でも、強そうで酷くもろい。それに愛莉はああ見えて意志が固い。言い出したら聞かないですよ」
「そうか……」
先生は頭を抱えている。
「で、うちの娘は大学には行けるのでしょうか?行くにはどのくらいのお金が……?」
「音無さんのご家庭の事情なら無償でいけるはずです。心配いりませんよ」
「そうですか?」
「学費くらい自分で稼ぐよ」
「それだと学校に行く意味なんてないだろ?」
「……高校卒業したらもっと割のいいバイト探すつもり」
「学費なら母さんがなんとかするから」
母さんそれ以上働いたら死んでしまうぞ。
「勉強と両立するから大丈夫だって。高校だってやれたろ?」
「それはそうだけど」
先生が口を挟んできた。
「音無、今は親に甘えておけ。大学卒業した後に恩返しすればいいんだ」
それは当然だけど……。
「大学はもっと厳しいぞ、バイトもほどほどにしておけ。バイト三昧で単位落としたら洒落にならないからな」
それも分かってる。
「まあ、音無が大学行く気になったってだけでも、良かったよ。今の調子でいけば合格するからしっかりな」
そう言うと先生は「どうもありがとうございました」と言い、私たちは退室した。
(4)
「う~ん」
私は悩んでいた。
冬夜君なら1ランク上の大学を狙える。
それは私にとっても喜ばしい情報だ。
でも、それはリスクも伴う。
私の為にも絶対に現役合格したいだろう冬夜君がそんな危険を冒すはずがない。
一番いいのは私立大に行って、私がそこを受ける事。
でも嫌がってるサッカーを押し付けるなんて事できない。
また喧嘩になっちゃう。
それはいやだ。
「1年くらいなら私待つから」
と、言えばいいのかな?
でも冬夜君には重荷に感じちゃうかな?
私また負担になってる?
そんなつもりはなくても冬夜君はそう思ってしまう。
ペン回しをしながら考えていると声が聞こえてくる。
「桐谷君は私立に行くみたいだな。後は皆地元大学」
「私もよかったよ。やっと水田先生からお墨付きもらえた」
そっか、神奈も地元大学受けるんだ。
桐谷君は私立大か、でもあの二人なら大丈夫だよね?
大学でもみんな一緒に過ごせるのかな?
江口さんは学部違うみたいだけど。
「愛莉?どうした?珍しく考え込んでるみたいだけど?」
神奈に言われてハッとした。
「愛莉。また難関大学受けろって言われたのか?」
言われたけど、無理強いはされなかった。
それよりも……。
また冬夜君と喧嘩になるのかな?
でも今なら分かってくれるよね?
……ちょっと不安だな。
でも、信じてみたい。
あの時と今は違う。
「神奈、ごめん。今日の勉強会ここまでにしてくれないかな?冬夜君とゆっくり話したい事あって……」
「進路のことか?」」
神奈は勘がするどいなあ。
「うん、ちょっとね……」
「なら、私も聞く、お前ら絶対喧嘩するから」
そう言うと思った。
「神奈。今の冬夜君なら分かってくれると思うの。私も冬夜君を信じてみたい。神奈も私たちを信じて」
私がそう言うと神奈は「分かった。じゃあ、二人でゆっくり話しあえ」といって部屋を出た。
神奈が部屋を出ると後を追うように神奈を追う冬夜君。
どうして追いかけるの?
「話長引きそうだしお茶とってくるよ」と言って冬夜君は部屋を出た。
冬夜君は部屋に戻ってくると大量のお菓子とお茶を持ってきた。
テーブルにあった、ノートとかは私が片付けておいた。
「で、話って?」
お菓子を食べながら冬夜君が切り出した。
「水田先生に言われたの。『私が冬夜君の進路を狭めてるんじゃないか?負担になってるんじゃないか?』って」
冬夜君はお菓子を食べるのを止め話に聞き入っている。
「私の言った『冬夜君が落ちたら私も浪人するから』その一言が冬夜君の将来を限定させてるんじゃないか?って」
冬夜君は何も言わずに私の話を聞いてる。
「不安で仕方ないの。私また重荷になっているのかな?そんなつもりないんだよ。冬夜君がサッカーしたいなら私冬夜君のお嫁さんとしてついて行くことも可能だよって」
いけない、また泣きそうだ、
「冬夜君は将来何をしたいの?私それに合わせるから……」
ようやく冬夜君が口を開いた。
「前に言ったよね?愛莉とキャンパスライフを送るって。今はそのことに全力だよ」
「でも、その先の事を考えてる?なりたい職業とかないの?」
「特に何も考えてない。大学に入ってから考えるよ、それより大学に合格する事考えなきゃだろ?」
前に冬夜君が怒った時もこんな感じだったのかな?
私の存在が冬夜君の夢を潰してる。
冬夜君の選択肢を狭めてる。
ましてや私は冬夜君にプレッシャーをかけてしまった。
あの時の私は何も考えてなかった。
でも冬夜君の中では大きな重荷になってる。
じゃあ、私が冬夜君の前から消える?
……そんなのイヤだ!
どうしてだろう?
涙が出てくる。
冬夜君ならこんなときどうするだろう?
冬夜君は何も言わない。
私の事重荷?
でも、どうか嫌わないで。
そうだ冬夜君の世界に入ろう?
冬夜君の気持ちに入り込んでみよう。
煙たがられてるかな?
「愛莉?」
怖いな。
でも、私のエゴばかり押し付け続けるのもイヤ。
冬夜君の本音が知りたい。
サッカーをしたくないのは知ってる。
でもやりたい事ってないの?
私の旦那様?
でもそれだけじゃ食べていけないんだよ?
私も一緒に働く?
……今はそんな事を考えてる場合じゃない。
今の気持ちを知りたいの。
今の本音を知りたいの。
どうすればわかる。
「嫌いにならないで……」
私は無性に冬夜君に抱いて欲しかった。
そして一言欲しかった。
「嫌いなんかなるわけないだろ」
そう、その一言が……って、え?
私は気がつかないうちに冬夜君に抱き着いていた。
抱きついて冬夜君の胸に顔をうずめて泣いていた。
重たい女って思われてる?
目を見たら気持ちがわかるの。
そうだ、冬夜君の顔をみよう。
恐る恐る顔を上げてみる。
冬夜君の顔はどこまでも優しい表情に見えた。
そして優しく私を抱いていてくれた。
「僕の今の気持ち……分かる?」
ごめんなさい、分からない。
知るのが怖いの。
心の目、未だ閉じてる。
言いたい事もわからない。
ただ自分を嫌いにならないで。
私の目はただそう訴えているだけだった。
首を横に振る。
幼子が駄々をこねるように。
嫌だよね、こんな我儘な娘。
でも嫌いにならないで。
「愛莉、大丈夫だよ」
私なにも言ってないのに、私の気持ちが冬夜君に通じてる。
冬夜君は私の心の中に入ってきてるの?
冬夜君は私を受け入れてくれるの?
自分のことちっぽけな器だと言ってたね。
そんなことないよ。
こんな大きな重荷を受け入れてくれてるんだから。
わかった。
私も冬夜君を受け入れる。
覚悟はできた。
どんな気持でも受け入れる。
それが例え残酷なものでも。
私は覚悟して冬夜君の目を見る。
やっぱり優しい顔をしていた。
まるで幼子をあやすかのように。
どうしてそんなに優しいの?
いけない、私自分の世界に入ってる。
何か言わなきゃ。
「お願い、嫌いにならないで」
そう訴えるのが精いっぱい。
でもその訴えに冬夜君は応えてくれた。
私を抱きしめると私の耳元で囁く。
「愛莉と一緒ならどんな未来でも生きていける気がするんだ。愛莉のいない未来なんていらない。だから愛莉の事だけを考えてる」
私も一緒だよ。
冬夜君のいない明日なんていらない。
「大好きだよ、愛莉」
その言葉に救われる。
その言葉に癒される。
その言葉で明日を生きていける。
でも……大丈夫?
冬夜君の夢ってなに?
一緒に生きていけるなら冬夜君、何やってもいいんだよ?
「先生に言われてさ、少し調べてみたんだ。愛莉を食べさせるくらいの収入の職にはつけそうだから」
そんな先の事まで考えてたんだね。
そうならそうと……。
「何になろうかまでは考えてない。ただ今を楽しむ。それだけしか考えてないよ」
そっか、分かった。
って冬夜君……。
「私の心の中に入ってる?」
「うん」
私は恥ずかしくなった。
冬夜君の中では私丸裸なんだね。
体が熱を帯びていく。
「愛莉をみてたらひどく怯えてるように見えたから、ちょっと愛莉の世界に入ってみた。正解だったみたいだね」
一緒にお風呂に入ってる時より恥ずかしいよ。
「冬夜君のえっち」
これからは一言断ってから入ってきてよね。
あ、私もいっしょか。
私は一人でくすくす笑っていた。
「愛莉、大丈夫か?」
冬夜君、私の世界に入ってこれるんだよね。
じゃあ、覗いてよ。
私の今の気持ちを正直に伝えるから。
冬夜君は少し戸惑っていた。
そして首を振る。
え?だめ?
ちょっと、強引に引き込んでみるかな。
冬夜君の首に腕を回すとそっと目を閉じる。
唇に冬夜君の唇が重なる。
「!?」
私の舌を冬夜君の唇がくわえる。
いつの間にそんな技術を覚えたの?
そんな技術DVDにはなかったよね?
またネットで調べた?
こんなに長い時間キスをしたの初めてだった。
うっとりと冬夜君との時間を楽しんでいると。
とんとん。
「そろそろお風呂入っちゃいないさい」
麻耶さんが言う。
麻耶さんタイミング悪すぎるよ。
でも今夜の冬夜君は一味違った。
「……一緒に入る?」
やっと冬夜君の口から言わせたぞ。
この達成感なんだろ?
きゃーって両手で抱きしめたい。
でもここは我慢。
冬夜君の言葉を借りると「人生一度は言ってみたかったセリフ」かな?
「もう……馬鹿!」
冬夜君は驚き戸惑う。
「嫌だったら、別々に入るけど」
そんなわけないでしょ。
気付いてよ。
ちゃんと私の目を見てお話して。
言いたい事わかるでしょ?
ただ、3者面談があった日だけど。
何もない日。
特別な日でもない。
そんな日に冬夜君が優しくしてくれた。
今日を記念日にしようかな?
今日って何日だっけ?
その調子で、1年を記念日で埋め尽くして欲しい。
一年中ドキドキさせてほしい。
……本当はどきどきしてるよ。
日を重ねるごとに優しくなっていく冬夜君に。
私も負けていられないな。
あなたにドキドキをプレゼントしてあげたい。
修学旅行の時に言ってたね。
二人で思い出刻んでいこうね。
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