優等生と劣等生

和希

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2ndSEASON

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(1)

「冬夜君おはよう~♪」

ああ、今日から2学期だっけ?
誠たちは凄かったなぁ。
天山高校の彼がパラグアイに留学していなかったとはいえ、ベスト4まで勝ち上がったのはすごい。
それだけ勝ち上がっておけば私立大も大丈夫だね。
僕たちより一足早く、進路確定か?
え?羨ましいなら、お前も受けとけばって?
実績もないのに無理でしょ。
まあ、相変わらず五輪代表にスカウトされたりしてるけど。
意外としつこいんだね。
何でもケガ人が出たとか。
行かないから関係ないけど。


「おはよう~ってば~♪」

僕たちは2学期終わってすぐまた模試だ。
夏休みはみっちり勉強していたし、多分大丈夫だろう。
もう慣れたよ。
最近は勉強にも没頭できるようになったし。
寝起きから没頭できるようになったし。
今もこうして朝から没頭して考え事しているんだけどね。
大丈夫、愛莉の存在には気づいてるよ。
朝からご機嫌だし。

「うぅ……また朝から入ってるんだね」

そうだよ、入ってるよ。
だから愛莉も入っておいで。
暖かく包んでやるから。
愛莉と合宿してこれでも成長したつもりだよ?
僕の言いたい事もわかるでしょ?
確かカンナは誠と登校するって言ってたから早く出てるよね?
今日はいないよね?
愛莉も僕の世界が分かるんでしょ。
今愛莉の事で満たされてるよ。
世界を共有できるっていいね。
男の子の性欲を馬鹿にしちゃいけないってことを教えてあげるから。

ばしっ!

叩かれた。

「冬夜君の考えてる事わかるよ。でも朝からはダメ!遅刻しちゃう!」
「だからって叩く事ないだろ」

思いっきり痛かったぞ。

「そりゃっ!」

タオルケットを剥がされた。

「誤魔化されないんだから!冬夜君はいちゃつきたいってより、起きたくないだけでしょ!」

愛莉をそっと抱きしめる。

「ちょ、ちょっと冬夜君!?」
「まだちゃんと心読めてないみたいだね」

愛莉の頭を僕の胸に当てる。

「ほれ、ちゃんと読んでみ?」

愛莉は目を閉じて僕の心を読み取ろうとする。
ちょっと恥ずかしそうな顔をした。

そして……

ぽかっ!

痛い。

「冬夜君のえっち!……夜まで待ってね。それ、着替えた着替えた」

夜ならいいのか?

「また、泊ってくつもりか?」
「それは、今夜の冬夜君の行動次第かな。勉強中は勉強に集中しないとだめだよ?」
「分かってるよ」

いちゃつくときは思いっきりいちゃつくんだろ?

(2)

いつもより1時間早く起きる。
それから、準備して家を出る……と、誠が立っていた。

「何してるんだ?」
「神奈を待ってたに決まってるだろ?」
「家の前でぼーっと立ってたらただの不審者だぞ」

あの一件以降警察が偶に巡回してる。
下手すると捕まるぞ。

「呼び鈴鳴らしてくれたら家にいれたのに」
「寝起きのカンナを見るのも悪くないけど、朝からそんなの見たらムラムラってくるだろ?だから自重した」
「朝からアホな事言ってるな」
「男の性欲を侮ったらいけませんよ」
「朝から抱きついても、食べ物の事を考える馬鹿もいるけど」
「冬夜は別格だろ」

そんな二人も3者面談の後変わったけどな。
一緒に勉強していて良く分かる。
偶に二人の時間を作り出している。
そんな時はそっと帰るが。
あれは流石に真似できないだろうな。
それでも付き合ってもう3年だぞ。
そろそろ、私の気持ちを思ってくれてもいいんじゃないか?

「じゃ、俺こっちだから」
「ああ、またな」
「帰り迎えに行くから。バイト先でいいよな?」
「そんな時間あるのか?」
「基礎トレだけ参加するから大丈夫!
「分かった」
「じゃあ!」

意外とマメなところあるんだな。
学校に早く着いた。
何しようかな~?と教室に行くとイッシーがいた。

「あれ?音無さん今日は早いですね」
「イッシーこそ毎日こんな早いのか?」

自分の席に荷物を置くとイッシーの席の前に座った。

「僕は朝早めに出る癖がついてるから?」

それは感心だ、誰かさんに見習わせたいくらいだ。

「そういやゴールデンウィーク以降どうなんだ?進展したのか……」

私がそう言うとイッシーは赤面して俯いた。

「進展……しました」
「そりゃよかったじゃないか!夏は一緒に過ごしたのか!?」
「彼女の家の別荘で……」
「すごいな!」
「イッシージュース買って来たわよ……って神奈ちゃん!?おはよう」

恵美がやってきた。
なるほど、毎朝こうやって二人の時間を作っていたのか。

「神奈ちゃんどうしたの?こんな朝早くから」
「誠……彼氏が自宅から通学になってな。それで時間あわせて登校してたらこんな時間になった」
「大変ね」
「恵美も大変そうじゃないか。鷲見から登校してんだろ?」
「イッシーも本町からよ、そんなに変わらないわ」

暫く3人で雑談してると、他の生徒も教室に入ってきた。
トーヤと愛莉も入ってきた。

「おはよう神奈」

いわゆる渡辺班で最後に入ってきたのは亜依と瑛大だった。

「瑛大!あんたのせいで、ギリギリになったじゃない!」
「仕方ないだろ!バスが遅れたんだから」

この二人は相変わらずだな。
そろそろ自分の席に戻る。
後ろの席のトーヤは机に突っ伏して寝てた。

「そろそろ先生来るぞ」

トーヤに耳打ちするとトーヤが起きる。
水田先生が入ってくる。
HRを終え、体育館に移動する。
2学期が始まる。

(3)

日曜日、18時。
神奈の家に着き、呼び鈴をならす。
神奈が出てくる。
白のTシャツにデニム、そして上にジレを羽織っている。
これから駅前にバスで向かう。
駅前の商店街を抜けたところにある、小さなイタリアンのレストラン。
各席ごとに仕切りカーテンがつけてある。
ここなら、周りを気にすることなく、二人っきりの空間を作ることができる。
2時間食べ放題飲み放題。
神奈はアルコールを所望していたが、俺が3か月もすれば、私立大の面接試験があることを知っているので我慢してくれた。

「いいよな、面接だけの試験とか」
「学校で面接の受け方を猛特訓だよ」

その前に志望理由を書かないといけないんだけどな。
志望理由なんてどうせテンプレだろ?
書かせる意味なんてないと思うんだけどな。
どうせ、面接でも聞くんだろ?
で、「そう言えと学校で言われたんですか?」とか意地悪な質問投げかけてくるんだろ?
先輩から聞いてるから大体わかる。

「トーヤは結局地元大学行くのか?」
「そのつもりらしいな、3者面談で説得を受けたらしいが『もう1ランク上狙っても良いんだぞ』って」
「神奈に合わせたのか?」
「いや、あいつら『冬夜君が落ちたら私も浪人する』とか愛莉が言い出したらしいから安全に行きたいんだろ?」
「遠坂さん、そんな事言ったのか」

俺は、飲んでいたジュースを吹き出しかけた。

「今になって後悔してるみたいだけどな」

カンナはサラダを取りながら話している。
そりゃ、冬夜もプレッシャーだろ?
落ちたらあの遠坂さんを1浪させるんだから。

「その時は、おとなしくサッカーのテスト受けるって言ってたよ」

滑り止めでサッカーかよ。
羨ましい選択だな。

「それなら私立大受けとけばいいんじゃないか?アイツならスポーツ推薦余裕だろ」
「実績がないからなぁ。まあ、なんか五輪代表候補に挙げられたとか言われたらしいが……」
「まじかよ、それ受けとけば問題ないだろ」
「あいつはあいつなりに考えてるらしいよ。今サッカーをしたところで愛莉を不安にさせるだけなんじゃないかとか、このまえ進路の事で揉めたみたいだしな」
「そういう考えが遠坂さんを逆に苦しめてるんじゃないか?」
「3者面談の後に話しあったみたいなんだがな。トーヤちゃんと愛莉の気持ち受け止めたらしい。『冬夜君優しくなった~』って愛莉大喜びしてたしな」
「冬夜はなんて言ってるんだ」

カンナはパスタを取り合分けながら答えた。

「愛莉でも揺れる事あるんだな。それをしっかり支えてやる事が僕のやれる事かなって」
「冬夜も随分大人になったもんだな」
「なんかあの二人を見てると愛って人を変えるんだなって実感するよ」
「なんか取り残された感半端ないな」
「誠には誠のペースがあるだろ?のんびり待つよ。とりあえずはその変態癖をどうにかしないとな」
「男には男のロマンってもんがあるんだよ」
「……誠も愛が人を変えたんだな」
「そうか?」

カンナに肉料理を切り分けてもらいながら聞いていた。

「お前確実に他の人と接してる時と私と接してる時ギャップがあるぞ」

店員が料理のラストオーダーを聞いてきた。
デザートだけ頼むと店員は去って行った。

「そうかな、まあ神奈にだけ打ち明けてることもあるかもな」
「……そういうもんじゃねーよ。普通彼女には隠すもんだろ変態癖」
「等身大の俺を愛してほしいからさ」
「そんな恰好つけて言うもんじゃないぞお前のは……」
「ま、まあ。神奈に泣かれて考えてるよ。心も体も抱いてやろうって」
「お前が言うとどうしても変態チックに聞こえるんだよな……」

それは偏見だよ神奈。
ドリンクのラストオーダーが来たのでアイスコーヒーを二つ頼んだ。
デザートを食べると、俺は神奈にプレゼントを渡す。

「今日神奈の誕生日だろ?これ」
「ありがとう。開けてもいいか?」
「ああ……」

神奈が箱を開けるとお揃いのマグカップが二つ。

「まあ、半分俺の希望も入ってるんだけどな。朝お揃いのマグカップでコーヒーを飲みたいなって……、出来ればそのときに裸にYシャツで……いてぇ!」
「最後が余計だ。馬鹿!!……いつでもいいぞ。泊まりに来たときにでも」
「今『いつでも良い』って言ったよな!」
「あ、ああ。言ったけど、どうかしたか?」

きょとんとする、神奈。
普段の凛々しい神奈からは想像もつかない表情。
そのギャップがたまらねーんだよ。くぅ!
って感動してる場合じゃない。
本題を切り出す俺。

「今日何でこんなに荷物持ってきてると思う?」
「何でって……まさかお前……」

神奈は察したようだ。

「おうよ、早速使ってもらおうと思って明日の荷物持って来たぜ!」

呆気にとられる神奈。

「お前本当にそういう下準備に余念が無いな……」
「言ったろ?インターハイ終わったら思いっきりいちゃつこうって」

神奈は何か考えてる。
でも表情から察するにダメとは言わないはず。
俺は冬夜と違って神奈の中には入って行けない。
違う意味で入ってるけど。
でもそのくらいは察することができる。

「わかったよ……」

よっしゃあ。
見事にゴールを決めることができたようだ。
どう喜びを表現していいか。
騒ぎたいところだが、ここはピッチの上じゃない。レストランの中だ。
これで写真撮らせてくれたらいう事無いんだが……。さすがにそれはないだろうな。
いや、試してみる価値はあるかも。
怒られる結末しか見れないけど恥じらう神奈を見ることが出来るかもしれない。
それだけでも儲けものだ。
会計を済ませて、俺たちは店を出た。

(4)

次の日の朝。
私は誠より先に起きて朝ごはんの支度にかかる。
……誠の要望通りの姿で。
どっちの誕生日を祝ってるのかわかったもんじゃない。
コーヒーを入れると誠を起こしに……。
部屋に戻るとスマホを構える誠が……。
撮ったのか?撮ったのか!?

「誠……」
「ばっちりキレイに撮れたぜ!その恥ずかしがる表情までばっちりと……うわぁ、暴力反対……ってあれ?」

誠が驚いたのは私が誠の想像通りの行動をしなかったからだろう。
恥ずかしさと恐怖で体が竦む。
相手は誠だ、怖がることは無い。
分かってるんだが体は正直だ。
その場にぺたんと座り込む私。
涙が滲んでいた。
私の異変を感じた誠が私の側に寄る。

「ごめん、悪ふざけが過ぎた。今すぐ消すから!」

そう言って私の前で写真を消す誠。

「だったら最初からするな」
「そうだな、ごめん」

ひたすら謝り続ける誠。
必死に立て直す私。
……よしっ。大丈夫だ。
私は立ち上がりスカートを履く。
そのとき背後から誠が抱き着いてきた。

「誠、いい加減にしないとマジ切れするぞ」
「こうしてるだけならいいだろ?」
「……時間がないんだ。コーヒーも冷めちまう」

そう言って振りほどくとダイニングに向かった。
誠も服を着て席に着く。
二人で朝食をとると二人準備をして家を出る。

「まだ、怒ってる?」

無言に耐えかねたのか誠が聞いてきた。

「いや、怒ってないよ」
「そうか、ならいいんだけど」

これ以上言ったらまた怒らせるとでも思ったんだろう。
それ以上は言ってこなかった。

「なあ、怒るかもしれないけどやっぱり不安か?父親の事」

そういうことは察しが良いんだな。

「まあな、写真を撮られたときフラッシュバックした。恐怖で身が縮んだ。おかしいと思うだろ?誠に抱かれてる時はなんともないのに」

寧ろ昨夜は心なしかいつも以上に誠の愛を感じた。
だからあんな真似にでたのだが。

「これから気をつけるよ。あまり変なことも要求しない。だから……」
「だからなんだ!?別れないでくれとか言ったら本気で怒るぞ!」
「神奈?」
「お前だけなんだ、お前だけが頼りなんだ。昨日の夜もいつもより優しくしてくれた。お前と別れるなんて絶対に無理だ」
「……分かったよ」
「そろそろだろ?私こっちだから」
「ああ、また帰りバイト先に寄るよ」
「分かった」

そう言って私は誠が去っていくのを見送っていた。
あと何回泣けばいい?
何回傷つけばいい?
ひび割れながらどこへ進む?
前向きな事を描いては、愛莉たちは毎日をそつなく、川のように逆らうことなく足元を見つめ歩ている。
それは様々な争いを超えて勝ち得たもの。
私達にも同じような日々が訪れるのだろうか?
日曜が終わり、街並みがよみがえる。
誠だけが頼り。
嘘偽りはない。
誠はどうなんだろう?
私の事を愛してると言ってくれている。
その言葉を信じて良いのだろうか?
いいや、どうでもいい。
嘘でも何でもいいから抱きしめて。
離さないで。
夜明けが訪れる時まで。
暗闇が終わってく新しい日々と共に。
もしもすべてが今日消えてさっても、光さえ失ったとしても誠がいてくれたらいい。
あなたの良いところ、ダメなところ全てを等身大に愛せるように私はなりたい。
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