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2ndSEASON
ドライブ!
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(1)
「本当に大丈夫なんだろうな?」
私はシートベルトをきつく締め隣に座っている誠に話しかけた。
「大丈夫だって!新車を傷つけても神奈だけは守るよ」
誠は片手でハンドルを握りギアをドライブにいれる。
赤い国産のハッチバックセダンは動き出した。
最初は怯えていたが、誠の言う通り安定した走りをしている。
数時間前。
「神奈さ、俺免許取ったんだ!」
「おお、おめでとう」
大晦日、お笑い番組を見ながら、そんな話をしていた。
「実はさ、もう車買ってあるんだよね」
大学合格祝いに買ってもらったらしい。
スポーツタイプのセダンらしい。
「もう車でここに来てるんだよね」
「駐車するところよくあったな?」
「路駐だけどそんなに長い時間止めるわけじゃないから大丈夫だろ」
そうか、そんなに長い時間いないのか。
ちょっと寂しいな。
「でさ、これ終わったら。初日の出見に行かね?良いところあるんだ」
「は?」
「高速のサービスエリアなんだけど滅茶苦茶良いらしい」
「高速!?誠の運転でか!?」
「大丈夫、高速教習も楽勝だったし、神奈を乗せるし安全運転で行くから」
てなわけで、初日の出を見に出かけたわけで。
高速に乗る前にコンビニで飲み物と眠気覚ましのガムと食べ物と眠気覚ましのドリンクを買って、インターから高速に入る。
「眠くないか?」
「ナチュラルハイってやつかな?全然眠くない」
それってやばいんじゃないのか?
慌ててケースに入ってるガムを取り出して誠の口に放り込む。
「神奈からそんなことしてもらえるなんて幸せだな」
30分もするとサービスエリアにつく。
混雑していて駐車にだいぶ待たされたが、空きを見つけて素早くバックで駐車する。
バックで駐車している姿にドキッとするというが、まさにそれだった。
車を駐車するとエンジンを止め……ない?
「まだ日の出までには時間あるよ。少し横になってたら」
「それなら誠が横になってろよ、運転で疲れてるだろ?」
「そうか……それなら……」
誠はスマホのアラートをセットして、眠りにつく。
私は緊張して眠れなかった。
車でデート……。
なんか大人の階段を上った気がした。
誠も大人になったんだな。
「夢だったんだ」
「?」
寝ているはずの誠がそう言った。
「免許取って車買ったらまず神奈とどこかに出かけようって決めてたから」
「そうか、ありがとうな」
その返事を聞く前に誠は眠りについていた。
ピピピピ……。
誠のアラームが鳴る。
「そろそろ外に出ようぜ」
サービスエリアの展望台には大勢の客が日の出を見に来ていた。
水平線から徐々に現れる太陽。
それをスマホで写真に納める。
「実は人を乗せて運転するの初めてだったんだ」
「!?」
そんな危険な行為に私は巻き込まれていたのか?
「やっぱさ、最初に隣に座ってくれるのは彼女がいいじゃん。あ、ちゃんと一人で練習はしてたよ!」
慌てて弁解する誠。
「ま、気にしてないよ。でも事故には気をつけろよ。巻き込まれるって事もあるし」
「ああ、ありがとうな、心配してくれて」
「そろそろ帰ろうか?」
「ああ、帰りは速水で降りてそれから10号線に下りて、下道走って行きたいんだけど」
「運転手に任せるよ」
この辺の土地勘は全くないしな。
「じゃ、いこっか」
車は走り出した。
10号線に出てしばらく走っていると誠が走りたいと言った意味が良く分かった。
海岸線が凄くきれいだ。
水族館を過ぎたあたりから特に。
「偶にはこんなデートもいいだろ?」
「寝正月になりそうだけどな」
「う……」
「うちでゆっくり休んでいけよ」
「ありがとう」
そのまま家に向かった。
(2)
三が日だというのに休む暇もない。
3日には模試がある。
テーブルをはさんで「あけましておめでとう」と挨拶を交わし勉強を始めた。
カンナはこなかった。
家で勉強してるかバイトなんだろう。
「神奈大変だね」
愛莉の言う通りだと思った。
その時、スマホのメッセージ着信音が鳴った。
愛莉にも来たようだ。
互いにスマホを確認する。
初日の出の写真だった。
その後僕のスマホに着信がはいる。
カンナからだ。電話に出る。
「愛莉も一緒なんだろ?模試終わったら初詣に行かね?人も混んでないだろうし」
……あそこ屋台が多いな。
愛莉に確認を取る。
「いいけどどうやって?」
「誠が車で連れて行ってくれるってさ」
「誠免許取ったのか!?」
「ああ、二人でドライブ行ったぜ。写真見たろ?」
話の内容はスピーカーにしている為、愛莉にも聞こえている。
「私は平気だけど、二人じゃなくていいの?」
「ああ、私らは今ドライブしてるから平気。今大宰府に向かってる」
「模試前だぞ、大丈夫か?」
「今更だろ?開き直ったよ」
「そういうことなら……」
愛莉は承諾したらしい、僕も断る理由がないので快諾した。
電話を切ると僕はため息を吐く。
「そうか、もう免許取っていいのか……」
そう言うと愛莉は優しく言ってくれた。
「誠君に張り合うこと無いんだよ?とりあえずセンター試験受けてから考えよ?」
「そうだな……、愛莉卒業旅行はどこ行きたい?」
「う~ん……そんな時間あるかな~?」
「卒業式は3月頭だろ?一泊くらいなら余裕あるだろ」
「どこでもいいから、二人っきりがいいな~」
愛莉はそう言ってにこりと笑った。
「冬夜君の行きたいところは?」
「香川!」
「……うどんが食べたいわけだね」
愛莉はため息を吐いた。
「冬夜君の運転で行くんだよね?」
「まあ、そうなるだろうな」
「それならさ、私の我儘を聞いてくれるなら冬夜君の我儘を聞いてあげる」
「?」
愛莉が交換条件を持ち出すとは。
「指宿に行きたいな。ご当地グルメもたくさんあるよ」
愛莉から食べる許可が出るとは……夢じゃないだろうか!?
「そういう事ならいいよ」
そう言ってスマホで検索する。
鹿児島ラーメンも捨てがたいけど多分ラーメンは却下だろうな。
「お昼でいいならラーメンでもいいよ」
女神が降臨した。
でも、愛莉が指宿にこだわる理由ってなんだろ?
「温泉旅館が有名なの、地元でもあるけどたまには県外に出たいなって」
そういうことか、いくらでもいちゃついてあげるからね。食べ物の為ならそのくらいどうってことないさ。
旅館の検索を始める。
結構色々あるな。
「とりあえず大学合格してから考えよ?」
……そうだね。それがあったね。
僕達は再び勉強を始めるのであった。
(3)
模試を終えた翌日。誠の運転で宇佐神宮へ向かうことになった。
誠は運転が上手い。
制限速度を維持しつつ急ブレーキを踏むことなく、ゆったりとした運転をしている。
新車の匂い、FMラジオを聞きながらカーナビの誘導に従って進んでいく。
誠もリラックスして隣のカンナと話をしながら運転している。
僕と愛莉は後ろの席でそんなやりとりを聞いていた。
「遠坂さん、休憩しなくて平気かい?」
パーキングエリアの標識がある度に愛莉に聞く誠。
「大丈夫だよ~」と愛莉が答える。
「もう4日過ぎたから混雑はしてないはずなんだ」とカンナが言う。
高速に上がる前にファストフード店のドライブスルーで食料調達。
なんか新車でハンバーガーを食べるのって気が引けるな。
自分の車じゃない、誠の車だぞ。
「気にせず食べろよ、どうせ掃除するから」
と、誠は言う。
誠もなんか大人になったんだなあと思った。
やっぱり免許欲しいな。
やっぱ、センター試験終わったら学校行こう。
「冬夜。多分冬夜なら3週間もあれば免許取れると思う」
誠が僕の心の中を読んだかのように言う。
「トーヤ運転とか得意そうだもんな。大抵の事はこなすし」
カンナも後押しする。
「と、いうわけだから、焦らず試験終わってからとろうね」と、愛莉。
でもこの時期混んでるんだろ?早めに始めた方が良いんじゃないのか?
「冬夜君、一緒に免許取りに行こうね?」
愛莉が言う。
そうだな、運転するのが僕なら愛莉取る必要ないんじゃないのか?と思ったが。
神社の駐車場に着いた。
あるある、箸巻きにたこ焼きに焼きそばにチョコバナナに……。
ぽかっ
にこりと笑って僕を小突く愛莉。
おみくじを引いた。
大吉だった。
愛莉は変わったおみくじを引いていた。
今年の干支を模った石膏のおみくじを引いていた。
大吉だった。
学業成就のお守りを買う。
誠は一人交通安全と……安産祈願のお守りを買おうとしてカンナにどつかれてた。
お前はどこへ向かうのか……。
(4)
冬夜君は、帰り道乗り心地のよさと満腹感と疲労で眠りについていた。
私の肩を枕にしていたけどやがて私を膝枕にして眠っていた。
誠君達の前でもそんな事するようになったんだね。
「冬夜の奴羨ましいな」
誠君はそう言って神奈の方をちらりとみる。
「前見て運転しろあぶねーぞ……」
取り付く島もない神奈。
少しくらい優しくしてあげたって……。
「帰ったらしてやるから、今は運転に集中してくれ」
いらぬ心配だったようだ。
「しかし冬夜の奴も容赦ねえな。運転で疲れてる俺の前で熟睡しやがって」
「ごめんね、誠君」
「遠坂さんが謝ることないよ」
「愛莉はトーヤのお母さんみたいなもんだもんな……」
神奈がそう揶揄する。
「冬夜と言えば冬夜はどんな車買うつもりなんだ?」
誠君が聞いてきた。
「車種は決めてるみたい。確か国産のSUV車って言ってた。四駆のパワーのあるやつって」
「皆考えることは一緒なんだな」
「でも誠君ワンボックス買うって言ってたよね?」
「それは私が止めたんだよ。理由が理由なだけにな……。する場所まで探してたらしいぜ」
ふ~ん、そういう場所あるんだ。
冬夜君の欲しがってる車は中は広そうだった。
するかどうかはともかく車中泊はできそうな広さ。
「遠坂さんは決めてるのかい?」
「うん、国産の軽四」
運転するのは冬夜君だけどね。
「じゃあ、デートはトーヤの車でか?」
神奈が聞いてきた。
「うん、神奈達と一緒だよ」
「そうか、結構楽しかったぞ。二人でドライブも」
「羨ましいなぁ」
「ただ偶にルームミラーの角度変える時あるからその時はスカート気をつけろ」
ってことは、誠君がやったんだね。
でも冬夜君はそういう事しないタイプだと思う。
むしろしてくれるなら思う存分……は恥ずかしいかな?
こうして考え事をしている間も誠君と神奈は楽しそうに話している。
羨ましいけど、私だって負けてないもん!
そう思い、すやすやと眠る冬夜君を見つめる。
帰りも高速を通り家の近くのインターで降りる。
「せっかくだし飯でも食って帰ろうぜ」と誠君が言うと飯の一言に反応した冬夜君が起き上がる。
車内は笑いの渦に巻き込まれた。
私も笑う。
でも嫌いじゃないよ、冬夜君のそういうところ。
もう十分私を満たしてくれてるから。
冬夜君を満たしてあげないとね。
(5)
地元大学・センター試験会場。
ついに訪れたこの時。
自分で自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
とりあえずは、この関門を突破しないとならない。
試験は2日に渡って行われる。
出題範囲は8教科。
地元大学のボーダーラインは600点くらいと聞いた。
落ち着けば、いつも通りの自分ならいける。
最後の模試も結果は良かった。
ただプレッシャーが襲う。
「冬夜君が落ちたら私も入学しないから」
絶対に負けられない戦い……。
なんかよく聞くフレーズだな。
じゃあ、いつなら負けて良いの?
いつも言ってるじゃん。
そんな事考えながら試合見てたっけ?
サッカーの事を考えてると気分が少しリラックスしてきた
前の席にはカンナが座っている。
カンナもこの日ばかりは緊張しているようだ。
肩を叩いて神奈に「リラックスリラックス」という。
まるで自分に言い聞かせるかのように。
「大丈夫だよ」
そう言いたげににこりと笑うカンナ。
それを見て安心する。
すると後ろから背中をつつく愛莉。
「冬夜君もだよ。いつも通りやれれば大丈夫だから」
そう言って愛莉もにこりと笑う。
愛莉はまったく緊張してないようだ。自信あるんだろうな。
問題用紙と解答用紙が配られる。
解答はマークシート方式。
始まりの合図が告げられる。
皆一斉に始めた。
二日間の試験が終わった。
体の力が抜ける。
「お疲れ様」
愛莉が声をかける。
「トーヤ、どうだった?」
カンナが聞いてくる。
「リスニングがちょっと自信ない……」
「私も数学がちょっとな……」
お互い苦手分野がダメなようだ。
「二人共頑張ったんだから大丈夫だよ」
愛莉はいつも通りだったらしい。
いつもどおりというのが凄いんだが……。
「じゃあ、帰って自己採点と言いたいけど明日どうせやるんだからいいよね?」
今日は帰って休もうか?と笑顔で言う愛莉。
この日もカンナは夜バイトを入れていた。
愛莉と同じ理由だったらしい。
僕も帰って夕食食べてお風呂に入り、のんびりゲームをしようかと思ったがそんな気分になれない。
持ち帰った問題用紙を開こうとするとドアが勢いよく開く。
「ああ!今日はリラックスするっていったよ!」
愛莉が僕から問題用紙を没収する。
「気になって何もできないんだよ」
「そう思って冬夜君を誘いに来ました~」
「愛莉、ごめん。今日ばかりはそんな気分になれない」
「ああ~冬夜君私が軽い女と思ってるでしょ!」
「そんなことないよ」
「じゃあ、付いて来て。ああ、着替えと荷物忘れないでね」
てことはお泊りか。
本当にそれどころじゃないんだが……。
愛莉の部屋に入るといつかの香りが。
テーブルの上に置かれたアロマディフューザーが犯人だったようだ。
「これでリラックスできるんじゃないかな?と思って」
テーブルを少し移動し、テーブルにもたれ、テレビを見ている。
バラエティ番組を見た後ドラマを見ていた。
愛莉は何も言わない。
時折僕の顔を見てる。
そしてやがて……。
僕の頬っぺたをギューッと引っ張る。
「笑って」
痛くてそれどころじゃないんだけど。
「冬夜君は、そんな気分じゃないって言ってたけど、私に出来る事はない?どうすれば冬夜君の気分を晴らすことができる?」
どうすれば、あなたは笑ってくれますか?
そんな感じで問いかけられている気分だった。
愛莉の気分を思う。
とても切ない気分だった。
また愛莉を寂しい思いにさせてる?
僕に出来る事。
愛莉を見つめる。
どこまでも優しい愛莉の眼差し。
「よし、わかった」
愛莉は僕にベッドにうつ伏せになるように指示する。
ここは素直に従おう。
うつ伏せになった僕に愛莉は跨り、マッサージを始める。
「こんなことしかできないけど……」
愛莉の気持ちは十分に理解できたよ。
だからごめんとは言わないよ。
「ありがとう、愛莉。大好きだよ」
愛莉はマッサージを止め、僕に抱き着く。
「……2月になったら免許とりにいこっか?」
そんな先の話をしてるのか?
「入試合格してからって言ってなかったか?」
「センタークリアすればもうほぼ決まったも同然だよ」
そんなものか?愛莉だから言える事じゃないのか?
「バレンタインにはチョコレートケーキ挑戦するね」
「うん」
「卒業したらみんなで打ち上げだね」
「そうだな」
「そしたら、冬夜君と二人っきりで旅行だね」
「ああ」
「なんだかハネムーンみたい」
「ハネムーンは海外がいいんだろ?」
「覚えててくれたんだ!」
はしゃぐ愛莉。
「愛莉ちょっとどいてくれない?」
「え?重い?」
「いや、仰向けになりたい」
そう言うと愛莉は僕から離れた。
僕が反転すると、愛莉はすぐに抱き着く。
「その気になってくれた?」
どう返したらいいものか?
試験の事は気になるけど……今は愛莉の気持ちが優先かな?
「愛してるよ」
一言そう言うと愛莉はキスをしてきた。
「気を紛らわせてもらえたらいいの。その気が無くても。私冬夜君にだけは軽い女でいるから」
そんな愛莉を力いっぱい抱きしめた。
翌日学校で自己採点が始まった。
奇跡とはこの事だろうか!?
不味いと思っていたリスニングも思った以上に高得点だった。
ボーダーをはるかに上回る点数。
カンナも満足いく結果だったようだ。
渡辺班は大体クリアしたらしい。
今日は打ち上げだな。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
私はシートベルトをきつく締め隣に座っている誠に話しかけた。
「大丈夫だって!新車を傷つけても神奈だけは守るよ」
誠は片手でハンドルを握りギアをドライブにいれる。
赤い国産のハッチバックセダンは動き出した。
最初は怯えていたが、誠の言う通り安定した走りをしている。
数時間前。
「神奈さ、俺免許取ったんだ!」
「おお、おめでとう」
大晦日、お笑い番組を見ながら、そんな話をしていた。
「実はさ、もう車買ってあるんだよね」
大学合格祝いに買ってもらったらしい。
スポーツタイプのセダンらしい。
「もう車でここに来てるんだよね」
「駐車するところよくあったな?」
「路駐だけどそんなに長い時間止めるわけじゃないから大丈夫だろ」
そうか、そんなに長い時間いないのか。
ちょっと寂しいな。
「でさ、これ終わったら。初日の出見に行かね?良いところあるんだ」
「は?」
「高速のサービスエリアなんだけど滅茶苦茶良いらしい」
「高速!?誠の運転でか!?」
「大丈夫、高速教習も楽勝だったし、神奈を乗せるし安全運転で行くから」
てなわけで、初日の出を見に出かけたわけで。
高速に乗る前にコンビニで飲み物と眠気覚ましのガムと食べ物と眠気覚ましのドリンクを買って、インターから高速に入る。
「眠くないか?」
「ナチュラルハイってやつかな?全然眠くない」
それってやばいんじゃないのか?
慌ててケースに入ってるガムを取り出して誠の口に放り込む。
「神奈からそんなことしてもらえるなんて幸せだな」
30分もするとサービスエリアにつく。
混雑していて駐車にだいぶ待たされたが、空きを見つけて素早くバックで駐車する。
バックで駐車している姿にドキッとするというが、まさにそれだった。
車を駐車するとエンジンを止め……ない?
「まだ日の出までには時間あるよ。少し横になってたら」
「それなら誠が横になってろよ、運転で疲れてるだろ?」
「そうか……それなら……」
誠はスマホのアラートをセットして、眠りにつく。
私は緊張して眠れなかった。
車でデート……。
なんか大人の階段を上った気がした。
誠も大人になったんだな。
「夢だったんだ」
「?」
寝ているはずの誠がそう言った。
「免許取って車買ったらまず神奈とどこかに出かけようって決めてたから」
「そうか、ありがとうな」
その返事を聞く前に誠は眠りについていた。
ピピピピ……。
誠のアラームが鳴る。
「そろそろ外に出ようぜ」
サービスエリアの展望台には大勢の客が日の出を見に来ていた。
水平線から徐々に現れる太陽。
それをスマホで写真に納める。
「実は人を乗せて運転するの初めてだったんだ」
「!?」
そんな危険な行為に私は巻き込まれていたのか?
「やっぱさ、最初に隣に座ってくれるのは彼女がいいじゃん。あ、ちゃんと一人で練習はしてたよ!」
慌てて弁解する誠。
「ま、気にしてないよ。でも事故には気をつけろよ。巻き込まれるって事もあるし」
「ああ、ありがとうな、心配してくれて」
「そろそろ帰ろうか?」
「ああ、帰りは速水で降りてそれから10号線に下りて、下道走って行きたいんだけど」
「運転手に任せるよ」
この辺の土地勘は全くないしな。
「じゃ、いこっか」
車は走り出した。
10号線に出てしばらく走っていると誠が走りたいと言った意味が良く分かった。
海岸線が凄くきれいだ。
水族館を過ぎたあたりから特に。
「偶にはこんなデートもいいだろ?」
「寝正月になりそうだけどな」
「う……」
「うちでゆっくり休んでいけよ」
「ありがとう」
そのまま家に向かった。
(2)
三が日だというのに休む暇もない。
3日には模試がある。
テーブルをはさんで「あけましておめでとう」と挨拶を交わし勉強を始めた。
カンナはこなかった。
家で勉強してるかバイトなんだろう。
「神奈大変だね」
愛莉の言う通りだと思った。
その時、スマホのメッセージ着信音が鳴った。
愛莉にも来たようだ。
互いにスマホを確認する。
初日の出の写真だった。
その後僕のスマホに着信がはいる。
カンナからだ。電話に出る。
「愛莉も一緒なんだろ?模試終わったら初詣に行かね?人も混んでないだろうし」
……あそこ屋台が多いな。
愛莉に確認を取る。
「いいけどどうやって?」
「誠が車で連れて行ってくれるってさ」
「誠免許取ったのか!?」
「ああ、二人でドライブ行ったぜ。写真見たろ?」
話の内容はスピーカーにしている為、愛莉にも聞こえている。
「私は平気だけど、二人じゃなくていいの?」
「ああ、私らは今ドライブしてるから平気。今大宰府に向かってる」
「模試前だぞ、大丈夫か?」
「今更だろ?開き直ったよ」
「そういうことなら……」
愛莉は承諾したらしい、僕も断る理由がないので快諾した。
電話を切ると僕はため息を吐く。
「そうか、もう免許取っていいのか……」
そう言うと愛莉は優しく言ってくれた。
「誠君に張り合うこと無いんだよ?とりあえずセンター試験受けてから考えよ?」
「そうだな……、愛莉卒業旅行はどこ行きたい?」
「う~ん……そんな時間あるかな~?」
「卒業式は3月頭だろ?一泊くらいなら余裕あるだろ」
「どこでもいいから、二人っきりがいいな~」
愛莉はそう言ってにこりと笑った。
「冬夜君の行きたいところは?」
「香川!」
「……うどんが食べたいわけだね」
愛莉はため息を吐いた。
「冬夜君の運転で行くんだよね?」
「まあ、そうなるだろうな」
「それならさ、私の我儘を聞いてくれるなら冬夜君の我儘を聞いてあげる」
「?」
愛莉が交換条件を持ち出すとは。
「指宿に行きたいな。ご当地グルメもたくさんあるよ」
愛莉から食べる許可が出るとは……夢じゃないだろうか!?
「そういう事ならいいよ」
そう言ってスマホで検索する。
鹿児島ラーメンも捨てがたいけど多分ラーメンは却下だろうな。
「お昼でいいならラーメンでもいいよ」
女神が降臨した。
でも、愛莉が指宿にこだわる理由ってなんだろ?
「温泉旅館が有名なの、地元でもあるけどたまには県外に出たいなって」
そういうことか、いくらでもいちゃついてあげるからね。食べ物の為ならそのくらいどうってことないさ。
旅館の検索を始める。
結構色々あるな。
「とりあえず大学合格してから考えよ?」
……そうだね。それがあったね。
僕達は再び勉強を始めるのであった。
(3)
模試を終えた翌日。誠の運転で宇佐神宮へ向かうことになった。
誠は運転が上手い。
制限速度を維持しつつ急ブレーキを踏むことなく、ゆったりとした運転をしている。
新車の匂い、FMラジオを聞きながらカーナビの誘導に従って進んでいく。
誠もリラックスして隣のカンナと話をしながら運転している。
僕と愛莉は後ろの席でそんなやりとりを聞いていた。
「遠坂さん、休憩しなくて平気かい?」
パーキングエリアの標識がある度に愛莉に聞く誠。
「大丈夫だよ~」と愛莉が答える。
「もう4日過ぎたから混雑はしてないはずなんだ」とカンナが言う。
高速に上がる前にファストフード店のドライブスルーで食料調達。
なんか新車でハンバーガーを食べるのって気が引けるな。
自分の車じゃない、誠の車だぞ。
「気にせず食べろよ、どうせ掃除するから」
と、誠は言う。
誠もなんか大人になったんだなあと思った。
やっぱり免許欲しいな。
やっぱ、センター試験終わったら学校行こう。
「冬夜。多分冬夜なら3週間もあれば免許取れると思う」
誠が僕の心の中を読んだかのように言う。
「トーヤ運転とか得意そうだもんな。大抵の事はこなすし」
カンナも後押しする。
「と、いうわけだから、焦らず試験終わってからとろうね」と、愛莉。
でもこの時期混んでるんだろ?早めに始めた方が良いんじゃないのか?
「冬夜君、一緒に免許取りに行こうね?」
愛莉が言う。
そうだな、運転するのが僕なら愛莉取る必要ないんじゃないのか?と思ったが。
神社の駐車場に着いた。
あるある、箸巻きにたこ焼きに焼きそばにチョコバナナに……。
ぽかっ
にこりと笑って僕を小突く愛莉。
おみくじを引いた。
大吉だった。
愛莉は変わったおみくじを引いていた。
今年の干支を模った石膏のおみくじを引いていた。
大吉だった。
学業成就のお守りを買う。
誠は一人交通安全と……安産祈願のお守りを買おうとしてカンナにどつかれてた。
お前はどこへ向かうのか……。
(4)
冬夜君は、帰り道乗り心地のよさと満腹感と疲労で眠りについていた。
私の肩を枕にしていたけどやがて私を膝枕にして眠っていた。
誠君達の前でもそんな事するようになったんだね。
「冬夜の奴羨ましいな」
誠君はそう言って神奈の方をちらりとみる。
「前見て運転しろあぶねーぞ……」
取り付く島もない神奈。
少しくらい優しくしてあげたって……。
「帰ったらしてやるから、今は運転に集中してくれ」
いらぬ心配だったようだ。
「しかし冬夜の奴も容赦ねえな。運転で疲れてる俺の前で熟睡しやがって」
「ごめんね、誠君」
「遠坂さんが謝ることないよ」
「愛莉はトーヤのお母さんみたいなもんだもんな……」
神奈がそう揶揄する。
「冬夜と言えば冬夜はどんな車買うつもりなんだ?」
誠君が聞いてきた。
「車種は決めてるみたい。確か国産のSUV車って言ってた。四駆のパワーのあるやつって」
「皆考えることは一緒なんだな」
「でも誠君ワンボックス買うって言ってたよね?」
「それは私が止めたんだよ。理由が理由なだけにな……。する場所まで探してたらしいぜ」
ふ~ん、そういう場所あるんだ。
冬夜君の欲しがってる車は中は広そうだった。
するかどうかはともかく車中泊はできそうな広さ。
「遠坂さんは決めてるのかい?」
「うん、国産の軽四」
運転するのは冬夜君だけどね。
「じゃあ、デートはトーヤの車でか?」
神奈が聞いてきた。
「うん、神奈達と一緒だよ」
「そうか、結構楽しかったぞ。二人でドライブも」
「羨ましいなぁ」
「ただ偶にルームミラーの角度変える時あるからその時はスカート気をつけろ」
ってことは、誠君がやったんだね。
でも冬夜君はそういう事しないタイプだと思う。
むしろしてくれるなら思う存分……は恥ずかしいかな?
こうして考え事をしている間も誠君と神奈は楽しそうに話している。
羨ましいけど、私だって負けてないもん!
そう思い、すやすやと眠る冬夜君を見つめる。
帰りも高速を通り家の近くのインターで降りる。
「せっかくだし飯でも食って帰ろうぜ」と誠君が言うと飯の一言に反応した冬夜君が起き上がる。
車内は笑いの渦に巻き込まれた。
私も笑う。
でも嫌いじゃないよ、冬夜君のそういうところ。
もう十分私を満たしてくれてるから。
冬夜君を満たしてあげないとね。
(5)
地元大学・センター試験会場。
ついに訪れたこの時。
自分で自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
とりあえずは、この関門を突破しないとならない。
試験は2日に渡って行われる。
出題範囲は8教科。
地元大学のボーダーラインは600点くらいと聞いた。
落ち着けば、いつも通りの自分ならいける。
最後の模試も結果は良かった。
ただプレッシャーが襲う。
「冬夜君が落ちたら私も入学しないから」
絶対に負けられない戦い……。
なんかよく聞くフレーズだな。
じゃあ、いつなら負けて良いの?
いつも言ってるじゃん。
そんな事考えながら試合見てたっけ?
サッカーの事を考えてると気分が少しリラックスしてきた
前の席にはカンナが座っている。
カンナもこの日ばかりは緊張しているようだ。
肩を叩いて神奈に「リラックスリラックス」という。
まるで自分に言い聞かせるかのように。
「大丈夫だよ」
そう言いたげににこりと笑うカンナ。
それを見て安心する。
すると後ろから背中をつつく愛莉。
「冬夜君もだよ。いつも通りやれれば大丈夫だから」
そう言って愛莉もにこりと笑う。
愛莉はまったく緊張してないようだ。自信あるんだろうな。
問題用紙と解答用紙が配られる。
解答はマークシート方式。
始まりの合図が告げられる。
皆一斉に始めた。
二日間の試験が終わった。
体の力が抜ける。
「お疲れ様」
愛莉が声をかける。
「トーヤ、どうだった?」
カンナが聞いてくる。
「リスニングがちょっと自信ない……」
「私も数学がちょっとな……」
お互い苦手分野がダメなようだ。
「二人共頑張ったんだから大丈夫だよ」
愛莉はいつも通りだったらしい。
いつもどおりというのが凄いんだが……。
「じゃあ、帰って自己採点と言いたいけど明日どうせやるんだからいいよね?」
今日は帰って休もうか?と笑顔で言う愛莉。
この日もカンナは夜バイトを入れていた。
愛莉と同じ理由だったらしい。
僕も帰って夕食食べてお風呂に入り、のんびりゲームをしようかと思ったがそんな気分になれない。
持ち帰った問題用紙を開こうとするとドアが勢いよく開く。
「ああ!今日はリラックスするっていったよ!」
愛莉が僕から問題用紙を没収する。
「気になって何もできないんだよ」
「そう思って冬夜君を誘いに来ました~」
「愛莉、ごめん。今日ばかりはそんな気分になれない」
「ああ~冬夜君私が軽い女と思ってるでしょ!」
「そんなことないよ」
「じゃあ、付いて来て。ああ、着替えと荷物忘れないでね」
てことはお泊りか。
本当にそれどころじゃないんだが……。
愛莉の部屋に入るといつかの香りが。
テーブルの上に置かれたアロマディフューザーが犯人だったようだ。
「これでリラックスできるんじゃないかな?と思って」
テーブルを少し移動し、テーブルにもたれ、テレビを見ている。
バラエティ番組を見た後ドラマを見ていた。
愛莉は何も言わない。
時折僕の顔を見てる。
そしてやがて……。
僕の頬っぺたをギューッと引っ張る。
「笑って」
痛くてそれどころじゃないんだけど。
「冬夜君は、そんな気分じゃないって言ってたけど、私に出来る事はない?どうすれば冬夜君の気分を晴らすことができる?」
どうすれば、あなたは笑ってくれますか?
そんな感じで問いかけられている気分だった。
愛莉の気分を思う。
とても切ない気分だった。
また愛莉を寂しい思いにさせてる?
僕に出来る事。
愛莉を見つめる。
どこまでも優しい愛莉の眼差し。
「よし、わかった」
愛莉は僕にベッドにうつ伏せになるように指示する。
ここは素直に従おう。
うつ伏せになった僕に愛莉は跨り、マッサージを始める。
「こんなことしかできないけど……」
愛莉の気持ちは十分に理解できたよ。
だからごめんとは言わないよ。
「ありがとう、愛莉。大好きだよ」
愛莉はマッサージを止め、僕に抱き着く。
「……2月になったら免許とりにいこっか?」
そんな先の話をしてるのか?
「入試合格してからって言ってなかったか?」
「センタークリアすればもうほぼ決まったも同然だよ」
そんなものか?愛莉だから言える事じゃないのか?
「バレンタインにはチョコレートケーキ挑戦するね」
「うん」
「卒業したらみんなで打ち上げだね」
「そうだな」
「そしたら、冬夜君と二人っきりで旅行だね」
「ああ」
「なんだかハネムーンみたい」
「ハネムーンは海外がいいんだろ?」
「覚えててくれたんだ!」
はしゃぐ愛莉。
「愛莉ちょっとどいてくれない?」
「え?重い?」
「いや、仰向けになりたい」
そう言うと愛莉は僕から離れた。
僕が反転すると、愛莉はすぐに抱き着く。
「その気になってくれた?」
どう返したらいいものか?
試験の事は気になるけど……今は愛莉の気持ちが優先かな?
「愛してるよ」
一言そう言うと愛莉はキスをしてきた。
「気を紛らわせてもらえたらいいの。その気が無くても。私冬夜君にだけは軽い女でいるから」
そんな愛莉を力いっぱい抱きしめた。
翌日学校で自己採点が始まった。
奇跡とはこの事だろうか!?
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ボーダーをはるかに上回る点数。
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渡辺班は大体クリアしたらしい。
今日は打ち上げだな。
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