優等生と劣等生

和希

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interlude

柔らかな季節

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(1)

早朝。
僕達は荷物を車に積み込む。

「気をつけて行ってくるんだぞ」
「事故で愛莉ちゃん傷つけないようにね」

父さんと母さんが言ってる。

「む、娘をよろしく頼む……」
「なんだか新婚旅行みたい~後ろに缶をつっておく~?冬夜君も無理しない様にご安全に~」

愛莉パパはともかく愛莉ママは限りなく愛莉に似てるな……。

「んじゃいってくるね~」

愛莉がそう言うと僕はゆっくりと車を走らせた。
近所のインター側のコンビニによって食料飲み物あといろいろを補給しておく。
そして下り線に乗って車を走らせる。
早朝からでかけたのには理由がある。
目的地が指宿から、九州一周に変わったこと。
折角行楽シーズンでない今旅行が出来るんだからのんびり寄り道していこうってなった事。

「愛莉、眠かったら寝ててもいいぞ」

眠気覚ましのガムを噛んでる愛莉に言うと愛莉は僕の口にガムを入れる。

「初めての二人きりの旅行だもん。眠ってる暇なんてないよ」

愛莉は恥ずかしそうに言った。
何か絶対勘違いしてるな。

「愛莉、言っておくけど」
「ハネムーンじゃないって言いたいんでしょ。分かってるよ。冬夜君約束覚えててくれたし」

あ、そうだったね。しかも国まで指名だったね。よりにもよって高そうなところに。
まあ、僕もグァムやハワイ。ソウルや香港より愛莉の言うヨーロッパの方がどうせなら行きたい。

「でも、なんか二人っきりて言うのが嬉しくて、ちょっと照れくさくて、軽く興奮状態になっていて眠れないよ」
「なるほどね……」

会話が途切れる。
嫌なムードじゃない。
寧ろ居心地のいい感じだ。
愛莉を隣に載せて旅をする。
夢のような話だ。
父さんたちには感謝しないとな。
2泊3日のうち1日は車中泊を予定していたんだけど「そんな危険な真似させられるか」と親が宿を手配してくれた。
指宿と熊本で宿泊する予定だ。

「山ばっかりだね……」

愛莉は景色に退屈してきたんだろうか?

「宮崎にでれば景色も変わるさ」
「うん」
「愛莉は山と海どっちがすきなの?」
「う~ん海は焼けるし山は虫が多いしどっちも苦手かな?」

完全なインドア派だな。

「夏休みにキャンプとか行こうとか思ったんだけどダメだな」
「冬夜君と一緒ならどこでもいくよ♪」
「……せっかくだし誠たちも誘おうよ」

さすがに渡辺班全員は大所帯だ。

「そうだね。でも車は別々だよね?」
「一緒だと嫌なのか?」
「嫌というか、どうせならって感じかな」
「皆でわいわいも楽しいと思うけど」
「それは現地で出来るじゃない」
「なるほどね」

愛莉は二人っきりの密室ってシチュエーションがいいんだな。
トンネルと山、時々平野を抜け高速をひたすら南下する。
その間愛莉はひたすら喋っていた。
僕を眠らせない様にするためか、偶にガムを口にやる。


話しのネタが尽きてきたのか愛莉の口数が減っていく。

「冬夜君ってどんな曲が好きなの?」

さてなんて答えよう?

素直にボカロ曲といえばいいのか?
それともちょっと気取って70年代の洋楽とでも答えた方が良いのか?
因みにどっちも好きだ。

「う~ん賑やかな曲がいいよね?」

どうやらかけるBGMに悩んでるようだ。

「愛莉が好きなのでいいよ」
「そう?じゃあ……」

J-POPの女性歌手のCDをかけた。
会いたくて震える人の曲だ。
愛莉好きだっていってたもんな。
軽快な曲としんみりとしたバラードを聞きながら車は進む。
2時間ちょっとして高速を出ると、ナビを頼りに目的地に向かう。
理想は道を探しながら愛莉が隣で地図を見てくれることなんだろうけど、今のご時世そんな事はしないだろう。
愛莉がコンビニを見つけると「ちょっと休憩しよ?」と言った。
あ!忘れてた!?

「ごめん……つい集中してて」
「いいの、気にしないで」

コンビニに着くと愛莉はお手洗いに行った。
僕は背伸びして愛莉を待つ。

「お待たせ、行こ?」

愛莉がそう言うと再び車を走らせる。

(2)

宮崎県都井岬。
灯台へ向かう道をゆっくりと進みながら馬を観察する。

「すごいね~お馬さんがたくさんいるよ~」

私はひたすら写真をとっていた。
灯台の近くの駐車場に車を止めると車を降り外の空気を吸う。
気持ちいい。
冬夜君も背伸びしてる。
私はそっと冬夜君の背中に忍び寄ると肩をもむ。

「おつかれさまでした~」

そうだよね、4時間近くずっと運転してたもんね。

灯台を見学した後冬夜君は車の中で小休止してる。
私はジュースとホットドッグをもって車に乗る。

「はいこれ」

冬夜君にアメリカンドッグを渡すと冬夜君は「ありがとう」といって食べ始める。
それ一本で我慢するんだよ。
お昼食べられなくなっちゃうぞ。
アメリカンドッグを食べると、冬夜君は車を走らせる。
この辺は来たこと無いらしい。
ナビを頼りに車を桜島へ走らせる。
すると冬夜君が妙に焦りだす。

「どうしたの?」
「いや、この辺にSSないかなって?」

ほえ?

車の表示パネルを見る。
あ、ガソリンがそんなに残ってない。
ナビでも小さなSSは乗ってないらしい。
あっても店が閉まっていたりだ。
私も一緒になって探す。

「あ、あそこいけそうじゃない?」

冬夜君の肩を触って反対の手で看板を指差す。
お店は開いてる。
冬夜君がほっと一息つく。
不謹慎だけど。
なんかこういうのって楽しいね!


給油をすませて先を急ぐ。
ある程度進むと町が見えてきた。

ちょっとお腹空いてきたかな?
私もさっき食べておけばよかったかな?
ふとみるとファミレスがあった。
が、冬夜君は無視して進む。
そうだよね、お昼はラーメンて決めてあるものね。
必死に探す冬夜君の為にラーメン屋さんをスマホで検索する。

くすっ。

「冬夜君、有名なラーメン屋さんは桜島観光の後がいいみたいだよ」

冬夜君が悲鳴を上げる。

「ファミレスにしとく?」
「こ、ここまできてファミレスで済ませてなるものか!」

冬夜君は覚悟を決めたようだ。
旅行中は特別だよ!

「コンビニでおにぎりでも買お?私も小腹空いてきちゃった」

最後は余計だったかな?

「ご、ごめん」

落ち込む冬夜君。
気にしないで、女の子は空腹に強いんだよ!


鹿児島県桜島。

今日は入山規制はないみたい。
桜島へと渡る。
なんか普通の山とは違うね。
パーキングに止めて車を降りる。
ちょっとごつごつして進みづらい山道を登る。
目の前に迫った北岳の荒々しい山肌、眼下に広がる大正溶岩原。
360°どこを見ても絶景。
石垣にハートの石が埋まってるそうだから探してみたけど3個しか見つけられなかった。
3個も見たら十分だよ。
早くしないと冬夜君がエンプティーになっちゃう。


桜島港からフェリーで鹿児島市に渡る。
錦江湾が綺麗。
今日は天気がいいし、風も心地よいし良い気分。
いつもは食べ物の事で頭一杯の冬夜君も今日はちがうみたい。
テンションが上がってる。
疲れてるはずなのに。
宿についたら一生懸命癒してあげるね。

(3)

こんなに爽快な気分になったのは修学旅行で空を見たとき以来だろうか?
こんなに広い空、広い海。
そしてさっきまで行ってた桜島が小さく見える。
同じ九州にいてこんなところがあるなんて知らなかった。
やっぱりコース変更して正解だったな。
愛莉も上機嫌だし、食べ物まで用意してくれた。
さあ、待ってろよ鹿児島市。
もうすぐラーメンが待っている!


鹿児島市内ラーメン屋。
時間的に少し遅かったので比較的空いてた。
ここは餃子もお勧めらしいのでラーメンと餃子を注文した。

深みのあるスープと絡まった麺が上品な味わいを醸し出している。
餃子は黒豚の肉の味が口いっぱいに広がって、とてもジューシー。
替え玉を頼んだ。
替え玉は細麺だ。
硬さを選べるらしい。
かためを選んだ。
替え玉は一回だけにした。
なぜなら……愛莉が残してるから。
女の子にはちょっと量が多いのかな?
じゃあ、僕が食べてあげるよ。

「僕それ食べて良い?」

愛莉に聞くと嬉しそうに、ぼくに器を渡す。
替え玉一回しかしてないから余裕でしたよ。


(3)

冬夜君が悩んでいる。
ナビがあるのにわざわざコンビニで地図を買うほど悩んでいる?

「どうしたの?」
「いや、ナビだと指宿スカイラインってのを使うと良いらしいんだけど、ネットだと一般道の方が早いらしいんだよね」

そう言われて私もスマホで検索してみる。
……確かにそう書かれてある。
でも一般道すごくややこしそうだね。
冬夜君が困っている。
こういう時に背中を押してあげる、支えてあげるのが私の役目だよね?

「一般道行こうよ冬夜君、海岸線沿いに走るのが綺麗だって書いてるし」
「迷っちゃうかもしれないぞ」
「一緒に道探してあげるから。冬夜君との旅の思い出を下さい」
「……わかった」

そういうと車を走らせる。
冬夜君は必死に道路の標識を見ている。
私も見ながら地図を探す。
そのうち、ナビが一般道ルートの案内をするようになった。
でも冬夜君がナビに釘付けになってるわけにはいかない。
私が案内してあげるね。
やがて海岸沿いに出る。
太陽にきらめく錦江湾や、噴煙立ち上る雄大な桜島の姿など、絶景を楽しみながら車は進む。
途中道の駅によってビワソフトを二人で食べた。

「美味しいね」
「うん、こっちルートで正解だったな」

そう言って二人で笑った。

(4)

旅館に着くと手続きを済ませる。
案内された部屋は洋室だった。
いつもなら愛莉がどんと片方のベッドに荷物を置くところだけど、今日はそれがない。

どうする?って顔をしてる。

疲れてる僕を気づかってくれてるんだろうか?
ちょっと悩んだ。

仕方ないよね?

そんな顔をしてベッドのわきに荷物を置く。
ここで愛莉に甘えられるわけないよね。
僕は片方のベッドに荷物を置くともう片方のベッドに寝そべっておいでと促す。
愛莉は喜んで僕に抱き着く。

「でも、大丈夫?」
「愛莉にマッサージしてもらうことにするよ」
「うん!しっかりしてあげるね。でもその前にお風呂~」

そう言うと愛莉は服を脱ぎ、浴衣に着替え部屋を出る。
僕も着替えて、大浴場へと向かった。
鍵は大丈夫かって?
愛莉の事だ、恐らく砂風呂を楽しんでからお風呂だろう。
のんびりしててもおつりがくるくらいだ。
お風呂を楽しんで食事を済ませると部屋でテレビを見ながらマッサージしてもらってた。

「やっぱり凝ってますね~」

うん、極楽極楽。

「明日運転替わろうか?」
「彼女に運転させるわけにはいかないだろ?」
「無理しないできつくなったら休んでね?」
「わかってるよ」
「冬夜君」
「なんだい?」
「今日はありがとうね」

その一言が最大の癒しだよ。
いい気分に浸った僕はそのまま眠りについていた。
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