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interlude
やっておきたい事
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(1)
「冬夜君はこっちの方が合ってるよ!」
「いや、それは流石に派手すぎだろ……就活には使えないぞ」
「うぅ……」
カンナと愛莉が言い争ってる。
僕の入学式のスーツを買いに来てネクタイの柄で言い争ってる。
愛莉が選んだのはピンクの水玉系。カンナが選んだのは無地の黒。
就活にはまた就活用でスーツ買うんだし良いだろ?
成人式にも作らなきゃいけないんだろうなぁ。
「でも神奈のも地味すぎだろ。それじゃ葬式に行くみたいだ」
誠の言う通りだと思う。
誠は青色のストライプの柄を選んだ。
「これでいいんじゃないか?」
「うぅ、悔しいけど似合ってる」
「男性の誠が言うんだからそうなんだろうな」
ネクタイは女性に選ばせるな。なんかで読んだっけ?
「以上の5点で大丈夫ですか?」
店員が尋ねてくる。
「はい」と答えると「ではサイズを測らせてもらうので……」とメジャーで採寸する。
「すぐ出来上がりますので少々お待ちください。お先にご精算の方を……」
「ちょっと待ってください!」
愛莉から待ったが入る。
「冬夜君ついでだから普段着も買っておいた方がいいよ。ここ色々置いてあるし」
「ああ、確かにトーヤなら必要かもな」
僕の意見を聞かずにカジュアルコーナーに向かう。
そして次々と服当ててはあーでもないこーでもないと30分くらい時間を潰す。
「お客様スーツ出来上がりましたが……」
そこに愛莉とカンナがカゴ一杯に詰めた服が加わる。
「以上でよろしいですか?」
「……はい」
愛莉とカンナが後ろでひそひそ話をしている。
「ちょっとやりすぎたんじゃね?あれじゃ安くても結構するぞ」
「うぅ……冬夜君ちょっとまって……?」
僕は財布から黒いカードを取り出す。
「すいませんカードで払います」
「はい、お預かりします」
そう言って店員はカードを受け取って清算をすませる。
「ではこちらにサインを」
出された紙面にサインをすると。カードを返してもらう。
「ありがとうございました」
財布にカードをしまう。
財布は異常に軽かった。
お札が数枚にカードが2枚しか入ってなかったのだから。
「どうかした?」
唖然としてる3人を見て言った。
「いや、バイトもしてないトーヤがカード払いなんてして大丈夫なのか?て思ってさ」
「ああ、それなら夕ご飯食べながら話すよ」
そう言って紳士服店を後にした。
日は暮れかけていた。
帰りにファミレスに寄って、注文を頼む。
ドリンクバーでドリンクを取り席につく。
「良く審査に通ったな」
「まあね、学生用のカードがあるから」
「あ、私も持ってるよ。大事に使いなさいって言われたの」
愛莉は自分のカードを見せる。
「でもカードで払えても口座に金入ってないとダメだろ?小遣いで足りるのか?」
「それをこれから話すよ。本当は愛莉だけに聞かせようと思ってたんだけど。別に二人に聞かれて困ることでもないし」
同じ6年付き合ってきた仲だしな。
「……何かあったの?」
何かを感じ取ったのか隣で不安そうに言う愛莉。
愛莉の頭を撫でてやり「大丈夫だよ」という。
「マテマテマテマテ、お前がそういう話をするときは決まって重い話なんだ。俺たちは退散するよ。な?神奈」
「いや、私は聞いておくよ。愛莉と二人にする方が余程不安だ。また愛莉と喧嘩しそうだし」
最近はそうでもないよ?
ま、カンナにいてもらった方が安心かもしれない。
愛莉の頭から手を離すと話を始めた。
事は僕達が旅行に行く前日まで遡る。
(2)
「じゃ、明日早いから早めに寝るよ。おやすみ」
「待ちなさい冬夜」
父さんから呼ばれた?
何かあったかな?
僕はリビングのソファーに腰掛ける。
父さんはテーブルの上に一枚の書類と印鑑、それに通帳とキャッシュカードをだした。
「これは?」
「クレジットカードの申し込み用紙だ。明日出すから今書いておきなさい」
クレカって僕学生だよ?
「口座名義をよく見なさい」
母さんも炊事を終え父さんの隣に座った。
口座名義は……片桐正人。父さんの名前だ。
「限度額は低めに設定してある。心配しないで使え。無くすなよ」
そう言って父さんは笑う。
取りあえず言われたとおりに書類に書き込んでいく。
でも突然どうして?
それにこの通帳とカードは?
「お前たちが旅行に行くって決めた日にな母さんと話したんだが、これから先、車の維持費に交際費……今回のような旅行の費用だってかかるだろ?その度に母さんに相談するのもお前も大変だし心苦しいだろう」
「それは大学入ってバイト探すよ」
「それは、愛莉ちゃんと決めたことなのか?」
「いや、まだ話してないけど」
でもバイトしないと遊ぶ金くらいせめて自分で。
「……冬夜。お前は十分頑張ったよ。父さんや母さんだけでない。愛莉ちゃんや遠坂家の重圧にも耐えてここまでやってきたんだ。これからは胸を張って生きて良い」
「それとこの通帳とカード何の関係があるの?」
「お前ひとり暮らしを考えたそうだな?」
正確には一人扶養者抱えてだけど。
「愛莉ちゃんに言われたんだろ?『どうせ、親に仕送りしてもらうんだから。それだったら今のままでもいい』って」
「どうしてその事を?」
「愛莉ちゃん心配しててな『また負担をかけるようなこと言ってしまったかもしれない』って母さんに相談してたんだ」
愛莉がそんなことを。
「父さんたちは、仕送りしてやっても構わんと思ってた。お前がバイトして独り立ちしようとする意志は伝わったよ。それだけで十分だ」
「もう、冬夜も大学生になるだろ?私たちにしてやれることはそんなにないよ。愛莉ちゃんがお前を支えてくれてるしね」
まだ、嫁にもらったつもりはないぞ。
「仕送り代わりだと思いなさい。毎月この口座に定期的に小遣いを振り込むから計画的に使いなさい。可能ならクレカ使って遊びなさい。それが俺に出来る最大の応援だ」
「お返しをしようだなんて思わなくていいんだよ。お前と愛莉ちゃんが幸せになってくれることが最大の恩返しだと思いなさい」
母さんと父さんの話は続く。
「遠坂さんとこにも言ってるよ。もうそういう仲になったんだって自覚しなさい」
「大学生活してて別れるってことは考えたことはないのかよ」
「お前と愛莉ちゃんを見てたらそれは思わないな。この先どんな困難があったってお前が先頭に立って切り開いていける。迷ったら愛莉ちゃんが背中を押してくれる」
「可能ならカード使ってエンゲージリング買ってもいいんだよ」
「それはだめだ!」
僕は叫んでた。
「それだけは自分で稼いで愛莉にプレゼントしたい」
「その意気が有れば大丈夫だ。お前ならクレカも有効に使うだろ。明日は父さんのクレジットカード持って行きなさい。ETCにも対応してある」
「今まで冬夜一人で背負い込んできたの。少しは親に頼りなさい」
「……ありがとう」
そう言って有難くカードと通帳を受け取った。
「お前に背負わせるのは遠坂家の未来だけじゃない、この家のローンも背負っていくんだからな。先行投資だ」
そう言って父さんは笑う。
僕は、顔を上げることができなかった。
「冬夜、がんばりなさい」
母さんが優しく言う。
だめだ、もっとしっかりしなくちゃな。
ちなみに旅行終わった後カードを受け取り、ついでに口座を確認した。
結構な額が入ってる。
……ちょっとだけおろした。
(3)
「そんな事があったのか……。羨ましいなお前は」と、カンナは言う。
そうだよな、神奈は自分でお金稼いで小遣い作ってるんだもんな。自分が情けなく思う。
「言っとくけど私、誠とデートしてる時は誠負担だからな。私も誠に頼ってる。私とトーヤを比較するのはやめろよ」
そう言って重苦しい空気を和ませようとする。
「俺だって同じだよ。仕送りもらってバイトしようにもサッカーでバイトどころじゃなくて。お前と変わんねーよ」と、誠が笑う。
一人沈んでる愛莉。
「私余計な事言っちゃったかな……?」
「気にするなよ、もともと一人暮らしさせて仕送りするはずだったらしいから」
愛莉に先手をとられただけ。
そして口実を変えただけ。
「私もね、カードもらうときに言われたの『大事に使いなさい。冬夜君と仲良く協力して、支え合って生きていくのよ。言ったでしょ、ママたちは応援するだけだからって』って……」
しーんと静まり返る。
メニューはとっくにきている。
「しんみりしててもしょうがねーよ!さっさと食おうぜ。せっかくの料理が冷めちまう」とカンナが言う。
「そ、そうだよね」と愛莉。
「でも羨ましいよな。もう二人とも結婚認められたようなもんじゃん!」と、騒ぐ誠。
「もともとそうだったよ。知ってただろ?」とカンナが言う。
「じゃあ、もっとパーッと遊ぼうぜ!」
無理に盛り上げようとしてるだろ誠。
でも大丈夫だよ。話したことでなんか迷いがきれた。
愛莉の肩を抱き寄せ「もう、先に遊んできたよ」という。
驚く愛莉。
「俺とはまだ遊んでないだろ!?また当分4人で会えることなんてないと思うからさ……」
「わかったよ……で、どこ行きたいんだ?」
「うーん、まだ高校生だしなぁ。やっぱあの遊園地かな!」
「どの遊園地だよ?」
「【木星】があるとこ」
「それ却下、愛莉が絶叫系だめだから」
「それ言ったら遊園地いけねーじゃん!」
「わ、私はいいよ。見てるだけにしておくから」
「愛莉が良くても僕がだめ、一緒に騒ぎたい」
「うぅ……じゃあ、私が我慢して乗る?」
我慢することもないだろ。
「行ってみたいところあるんだけど?」
僕が提案する。
「どこだよ」
誠が聞いてくる。
「博多のショッピングモール」
「博多まで行ってショッピング!?」
「今だと色々イベントやってるし、博多の街並みまだ見てないし」
「それなら私も大丈夫」
愛莉が乗り気になった。
「うん、博多で買い物も悪くないな」
「3人がいうならそれで……」
渋々承諾する誠。
「ありがとう」と小声で囁く愛莉。
いいんだよ、行ってみたかったのは事実だし。
「車どうする?別々で行くか?」
愛莉は別々が良いって言ってたな。
その愛莉は困った顔をしている。
「別々でいいんじゃないか?」
「OK、冬夜俺の運転についてこれるか?」
誠はにやりと笑う。
レースでもするつもりか?
そっちスポーツタイプだろ?
「なんかトーヤに運転任せた方が良い気がしてきた……」
カンナがため息を吐いてる。
「なんで?」
「お前最近運転荒過ぎだぞ!」
「神奈だってわざとエンジンふかしてすげーじゃねーか!」
「あれはあのくらい踏まないとギアが繋がらないんだよ。半クラすると痛むし。あとそんなに吹かしてねーよ!マフラー替えてるだけだよ」
それアウトだろカンナ……。
「まあ、誠もカンナ乗せてるし無茶しないよ」
「だといいんだけどな……」
「俺の運転信頼してくれてたろ?」
「なんか別々じゃないといけない理由でもあるのか?」
「そ、そりゃ帰りは別行動になるかもしれねーじゃん」
「どこに行く気だ?」
「そ、そりゃラブホとかラブホとかシティホテルとか……神奈だってたまには思いっきり声出したい……いてぇ!」
「却下だ!トーヤだめか?」
「うぅ……私はいいよ?冬夜君」
愛莉が折れた、女の友情ってやつか?
困った、誠とのつながりもあるし無下に受けるわけにもいかない。
かといって神奈の悩みもある。
うーん……。
誠悪い。
「分かったよ俺が車だすよ」
「流石トーヤ!」
「冬夜、お前ら二人でいちゃつきたいとかないのかよ」
「あるよ」
さらりと答える僕。
「だったら……」
「でもどうせ4人でもいちゃつくのはいちゃつくだろ?」
「ま、まあそうだな」
「でも、カンナ覚悟しとけよ……」
「な、なんだよトーヤ」
「車の中僕と愛莉の世界で満たされてるからな?」
「は?」
「と、冬夜君!?」
愛莉まで驚いてる。
「こう見えて二人で空気作ってるからさ。多分初詣に行った時のカンナと誠の時より凄いと思う」
「寝てたのに感づいてたのかよ」
「愛莉から聞いた」
「……はあ、誠に付き合うか」
神奈が諦めたようだ。
「カンナだって本音は誠の言う通りなんだろ?愛莉は僕の家で大きな声を……」
ぽかっ
バキッ
前者が愛莉で後者がカンナ。
「冬夜君のバカ!」
「余計な事言ってるんじゃねーよ!」
痛い……。
これも誠の為を思って言ったんだぞ。ありがたく思えよ。
(4)
僕達はインターそばのコンビニで待ち合わせをしていた。
案の定誠達は遅刻してくる。
その間に色々買い物。
買い物が終わる頃誠達がやってくる。
「悪い悪い寝過ごした」
「悪い寝てた。あ、私達も買い物してくるわ」
そう言ってコンビニに入る二人。
そして買い物を終えるとコンビニから出てくる。
「じゃ、いこっか」
そうして2台は上り方面から入っていく。
「昨日はありがとね」
愛莉が景色を見ながら話しかけた。
「何が?」
「遊園地を断ってくれたこと。2台で行こうって言ってくれたこと。嬉しかったよ」
「それは良かった」
殴られ損にならなくて済んだよ。
「あ、滝だ~」
「ああ、あるって言ってたな」
「うわあ、昼間でも眺めいいんだね。海まで見える」
運転席側に乗り出してくる愛莉。
危ないぞ。
その時後ろにいる誠がウィンカーを出してる事に気がついた。
追い越し車線に移ると一気に加速して一瞬のうちに追い抜いていく誠。
どうするかな?
抜き返そうと思えばできるけど、ここ速度制限80㎞/hなんだよな。
レーダーに反応はない。
行かないと愛莉に情けないと思われる?
それはないだろうな?
寧ろ無視したほうがいいんだろうな。
「神奈可哀そう、彼女乗せてるのにあんな無謀な運転するなんて」
正解だったようだ。
「その点冬夜君は優しいよね、安全運転で行ってくれて」
咄嗟に左手をハンドルから離した。
愛莉が左手にしがみ付いてきたから。
「運転中はやめようよ。危ないだろ」
「ごめんなさ~い」
反省してるのかしてないのか舌をぺろっとだす愛莉。
「ところで冬夜君」
「なんだ?」
「どうして冬夜君がショッピングモール行きたいって言いだしたのか考えたんだけど……」
ぎくっ!
「だから買い物まだしておくものあるだろ?都市高速っての走ってみたかったし」
嘘はついてない。
「ブー。ちゃんとネットで調べたんだからね!有名なとんこつラーメン屋さん目当てでしょ!」
完全にバレてる。
「い、いやならいいよ」
愛莉は首を振った。
「いいの。私は冬夜君と一緒ならどこへでも行くって決めたから。一緒に行けるだけで幸せだって分かったから。だから……」
だから?
「今度二人で遊園地いこ?」
「え?」
「いきなり誠君たちと一緒だとなんか一人でキャーキャー泣きわめいて恥ずかしいし、冬夜君と予行演習ってことで」
「なるほどね。また行くところ増えたな」
「学生のうちにやっといた方が良い事っていっぱいあると思うんだ」
「そうだな……」
学生のうちにか。
そういや、大学に入る前にやっておきたい事ってあったな。
「愛莉、サークルとかは考えてないのか?」
「全然考えてない」
「それこそ学生のうちにやれる事だと思うけど……」
「冬夜君はどこか目当てのサークルあったの?」
「……焼肉同好会」
「……それサークルでやる意味あるの?」
寧ろ僕が知りたい。
「あ、そこ左に入ったらダメだよ」
「分かってる」
直進した。
愛莉のスマホにメッセージが入った。
「今どこ?」
愛莉はナビを見ながら返事を返す。
「日出JCT通過したところ」
「由布岳PAで待ってる」
「この先のPAで待ってるって」
「分かった」
「おせーよ冬夜!」
「お前らが速すぎるんだよ」
「悪いな、こいつ『アクセルから足が離れない』とか訳の分からないこと言いだしやがってさ」
神奈がため息交じりに言う。
ああ、悪魔の方を読んだのね?
だったら車もっとスポーツカーにすればよかったのに。
例えばカンナの車で来るとか。
「私の車で来ればって思ったろ?絶対こいつには乗せられない!」
「神奈だって時速300㎞を出すとか言ってたじゃないか」
……いいカップルだよなカンナ達。
休憩を済ませた後再び走り出す
「冬夜君はああならないでね」
愛莉のお願いだ。絶対聞かないとな。
「大丈夫だよ、そういう向きの車じゃないし」
「うん!」
鳥栖JCTにさしかかる。
「ここじゃないからね?もう一個先を左だからね」
ナビが案内してくれるから大丈夫だよ。
「大宰府インターから福岡高速に切り替えだよ~」
可愛いナビがそう告げる。
「わかったよ」
その後も愛莉の可愛い音声に従って道を進んでいく。
そして目的地に着いた。
「アニメ展!」
「服!靴!」
「私はどこでもいいよ」
「僕はお腹空いたしラーメンでも」
結果。
二組に分かれて自由行動。
一緒に来る意味あったのか?
「じゃ、冬夜君行こうか」
愛莉が手を取り誘導する。
その先は……ラーメン屋さん!?
女神だ、女神が目の前にいる。
「私もちょっとお腹空いたし、ね?」
ラーメン!替え玉!追加チャーシュー!半熟ゆでたまご!きくらげのり!
こい味!超こってり!にんにくなし!ねぎなし!2倍!超かた!!
「ねえねえ冬夜君」
注文を終えた僕に愛莉が話しかける。
「どうした?」
「ショッピングモール来たかったから黙ってたんだけど……」
「?」
「この店地元にもあるんだよね」
なんだって!
慌ててスマホで検索する。
本当だ……。
「なんでだまってたの?」
「だって言ったら一人で行こうとしたでしょ?」
「ま、まあね」
愛莉ラーメン嫌いみたいだし。
「冬夜君と一緒がいいって言ったでしょ!」
なるほどね……。
ラーメンを食べた後、買い物をして回る。
一通り買い終えたところで誠にメッセージ送る。
するとカンナからメッセージが。
「先に帰ってて、私ら泊って帰るから」
は?
「ちょっと用が出来たんでな。すまん!」
「それなら僕たちも付き合うよ」
「いや、トーヤ達巻き込めないから」
意味が分からない。
愛莉は気づいたようだ。クスクス笑ってる。
誠から着信が来た。
「もしもし?」
「あ、悪い冬夜!神奈が博多の屋台回りたいって言うから、止まって帰るわ」
「屋台!?」
ラーメンが思い浮かんだ。
その手があったか!
ぽかっ
「冬夜君はもうラーメン食べたもんね」
「でも屋台って他にもあるんだろ?」
じゃ、なきゃカンナも回るなんて言い方しないよな?
ぽかっ
「冬夜君にはまだ早いの!」
そう言って笑う。
そうか早いのか……。
「じゃあ、先に帰る?」
「そうだね」
そうして僕たちは先に帰った。
この後、カンナが夜の博多で乱れていたのは言うまでもない。
「冬夜君はこっちの方が合ってるよ!」
「いや、それは流石に派手すぎだろ……就活には使えないぞ」
「うぅ……」
カンナと愛莉が言い争ってる。
僕の入学式のスーツを買いに来てネクタイの柄で言い争ってる。
愛莉が選んだのはピンクの水玉系。カンナが選んだのは無地の黒。
就活にはまた就活用でスーツ買うんだし良いだろ?
成人式にも作らなきゃいけないんだろうなぁ。
「でも神奈のも地味すぎだろ。それじゃ葬式に行くみたいだ」
誠の言う通りだと思う。
誠は青色のストライプの柄を選んだ。
「これでいいんじゃないか?」
「うぅ、悔しいけど似合ってる」
「男性の誠が言うんだからそうなんだろうな」
ネクタイは女性に選ばせるな。なんかで読んだっけ?
「以上の5点で大丈夫ですか?」
店員が尋ねてくる。
「はい」と答えると「ではサイズを測らせてもらうので……」とメジャーで採寸する。
「すぐ出来上がりますので少々お待ちください。お先にご精算の方を……」
「ちょっと待ってください!」
愛莉から待ったが入る。
「冬夜君ついでだから普段着も買っておいた方がいいよ。ここ色々置いてあるし」
「ああ、確かにトーヤなら必要かもな」
僕の意見を聞かずにカジュアルコーナーに向かう。
そして次々と服当ててはあーでもないこーでもないと30分くらい時間を潰す。
「お客様スーツ出来上がりましたが……」
そこに愛莉とカンナがカゴ一杯に詰めた服が加わる。
「以上でよろしいですか?」
「……はい」
愛莉とカンナが後ろでひそひそ話をしている。
「ちょっとやりすぎたんじゃね?あれじゃ安くても結構するぞ」
「うぅ……冬夜君ちょっとまって……?」
僕は財布から黒いカードを取り出す。
「すいませんカードで払います」
「はい、お預かりします」
そう言って店員はカードを受け取って清算をすませる。
「ではこちらにサインを」
出された紙面にサインをすると。カードを返してもらう。
「ありがとうございました」
財布にカードをしまう。
財布は異常に軽かった。
お札が数枚にカードが2枚しか入ってなかったのだから。
「どうかした?」
唖然としてる3人を見て言った。
「いや、バイトもしてないトーヤがカード払いなんてして大丈夫なのか?て思ってさ」
「ああ、それなら夕ご飯食べながら話すよ」
そう言って紳士服店を後にした。
日は暮れかけていた。
帰りにファミレスに寄って、注文を頼む。
ドリンクバーでドリンクを取り席につく。
「良く審査に通ったな」
「まあね、学生用のカードがあるから」
「あ、私も持ってるよ。大事に使いなさいって言われたの」
愛莉は自分のカードを見せる。
「でもカードで払えても口座に金入ってないとダメだろ?小遣いで足りるのか?」
「それをこれから話すよ。本当は愛莉だけに聞かせようと思ってたんだけど。別に二人に聞かれて困ることでもないし」
同じ6年付き合ってきた仲だしな。
「……何かあったの?」
何かを感じ取ったのか隣で不安そうに言う愛莉。
愛莉の頭を撫でてやり「大丈夫だよ」という。
「マテマテマテマテ、お前がそういう話をするときは決まって重い話なんだ。俺たちは退散するよ。な?神奈」
「いや、私は聞いておくよ。愛莉と二人にする方が余程不安だ。また愛莉と喧嘩しそうだし」
最近はそうでもないよ?
ま、カンナにいてもらった方が安心かもしれない。
愛莉の頭から手を離すと話を始めた。
事は僕達が旅行に行く前日まで遡る。
(2)
「じゃ、明日早いから早めに寝るよ。おやすみ」
「待ちなさい冬夜」
父さんから呼ばれた?
何かあったかな?
僕はリビングのソファーに腰掛ける。
父さんはテーブルの上に一枚の書類と印鑑、それに通帳とキャッシュカードをだした。
「これは?」
「クレジットカードの申し込み用紙だ。明日出すから今書いておきなさい」
クレカって僕学生だよ?
「口座名義をよく見なさい」
母さんも炊事を終え父さんの隣に座った。
口座名義は……片桐正人。父さんの名前だ。
「限度額は低めに設定してある。心配しないで使え。無くすなよ」
そう言って父さんは笑う。
取りあえず言われたとおりに書類に書き込んでいく。
でも突然どうして?
それにこの通帳とカードは?
「お前たちが旅行に行くって決めた日にな母さんと話したんだが、これから先、車の維持費に交際費……今回のような旅行の費用だってかかるだろ?その度に母さんに相談するのもお前も大変だし心苦しいだろう」
「それは大学入ってバイト探すよ」
「それは、愛莉ちゃんと決めたことなのか?」
「いや、まだ話してないけど」
でもバイトしないと遊ぶ金くらいせめて自分で。
「……冬夜。お前は十分頑張ったよ。父さんや母さんだけでない。愛莉ちゃんや遠坂家の重圧にも耐えてここまでやってきたんだ。これからは胸を張って生きて良い」
「それとこの通帳とカード何の関係があるの?」
「お前ひとり暮らしを考えたそうだな?」
正確には一人扶養者抱えてだけど。
「愛莉ちゃんに言われたんだろ?『どうせ、親に仕送りしてもらうんだから。それだったら今のままでもいい』って」
「どうしてその事を?」
「愛莉ちゃん心配しててな『また負担をかけるようなこと言ってしまったかもしれない』って母さんに相談してたんだ」
愛莉がそんなことを。
「父さんたちは、仕送りしてやっても構わんと思ってた。お前がバイトして独り立ちしようとする意志は伝わったよ。それだけで十分だ」
「もう、冬夜も大学生になるだろ?私たちにしてやれることはそんなにないよ。愛莉ちゃんがお前を支えてくれてるしね」
まだ、嫁にもらったつもりはないぞ。
「仕送り代わりだと思いなさい。毎月この口座に定期的に小遣いを振り込むから計画的に使いなさい。可能ならクレカ使って遊びなさい。それが俺に出来る最大の応援だ」
「お返しをしようだなんて思わなくていいんだよ。お前と愛莉ちゃんが幸せになってくれることが最大の恩返しだと思いなさい」
母さんと父さんの話は続く。
「遠坂さんとこにも言ってるよ。もうそういう仲になったんだって自覚しなさい」
「大学生活してて別れるってことは考えたことはないのかよ」
「お前と愛莉ちゃんを見てたらそれは思わないな。この先どんな困難があったってお前が先頭に立って切り開いていける。迷ったら愛莉ちゃんが背中を押してくれる」
「可能ならカード使ってエンゲージリング買ってもいいんだよ」
「それはだめだ!」
僕は叫んでた。
「それだけは自分で稼いで愛莉にプレゼントしたい」
「その意気が有れば大丈夫だ。お前ならクレカも有効に使うだろ。明日は父さんのクレジットカード持って行きなさい。ETCにも対応してある」
「今まで冬夜一人で背負い込んできたの。少しは親に頼りなさい」
「……ありがとう」
そう言って有難くカードと通帳を受け取った。
「お前に背負わせるのは遠坂家の未来だけじゃない、この家のローンも背負っていくんだからな。先行投資だ」
そう言って父さんは笑う。
僕は、顔を上げることができなかった。
「冬夜、がんばりなさい」
母さんが優しく言う。
だめだ、もっとしっかりしなくちゃな。
ちなみに旅行終わった後カードを受け取り、ついでに口座を確認した。
結構な額が入ってる。
……ちょっとだけおろした。
(3)
「そんな事があったのか……。羨ましいなお前は」と、カンナは言う。
そうだよな、神奈は自分でお金稼いで小遣い作ってるんだもんな。自分が情けなく思う。
「言っとくけど私、誠とデートしてる時は誠負担だからな。私も誠に頼ってる。私とトーヤを比較するのはやめろよ」
そう言って重苦しい空気を和ませようとする。
「俺だって同じだよ。仕送りもらってバイトしようにもサッカーでバイトどころじゃなくて。お前と変わんねーよ」と、誠が笑う。
一人沈んでる愛莉。
「私余計な事言っちゃったかな……?」
「気にするなよ、もともと一人暮らしさせて仕送りするはずだったらしいから」
愛莉に先手をとられただけ。
そして口実を変えただけ。
「私もね、カードもらうときに言われたの『大事に使いなさい。冬夜君と仲良く協力して、支え合って生きていくのよ。言ったでしょ、ママたちは応援するだけだからって』って……」
しーんと静まり返る。
メニューはとっくにきている。
「しんみりしててもしょうがねーよ!さっさと食おうぜ。せっかくの料理が冷めちまう」とカンナが言う。
「そ、そうだよね」と愛莉。
「でも羨ましいよな。もう二人とも結婚認められたようなもんじゃん!」と、騒ぐ誠。
「もともとそうだったよ。知ってただろ?」とカンナが言う。
「じゃあ、もっとパーッと遊ぼうぜ!」
無理に盛り上げようとしてるだろ誠。
でも大丈夫だよ。話したことでなんか迷いがきれた。
愛莉の肩を抱き寄せ「もう、先に遊んできたよ」という。
驚く愛莉。
「俺とはまだ遊んでないだろ!?また当分4人で会えることなんてないと思うからさ……」
「わかったよ……で、どこ行きたいんだ?」
「うーん、まだ高校生だしなぁ。やっぱあの遊園地かな!」
「どの遊園地だよ?」
「【木星】があるとこ」
「それ却下、愛莉が絶叫系だめだから」
「それ言ったら遊園地いけねーじゃん!」
「わ、私はいいよ。見てるだけにしておくから」
「愛莉が良くても僕がだめ、一緒に騒ぎたい」
「うぅ……じゃあ、私が我慢して乗る?」
我慢することもないだろ。
「行ってみたいところあるんだけど?」
僕が提案する。
「どこだよ」
誠が聞いてくる。
「博多のショッピングモール」
「博多まで行ってショッピング!?」
「今だと色々イベントやってるし、博多の街並みまだ見てないし」
「それなら私も大丈夫」
愛莉が乗り気になった。
「うん、博多で買い物も悪くないな」
「3人がいうならそれで……」
渋々承諾する誠。
「ありがとう」と小声で囁く愛莉。
いいんだよ、行ってみたかったのは事実だし。
「車どうする?別々で行くか?」
愛莉は別々が良いって言ってたな。
その愛莉は困った顔をしている。
「別々でいいんじゃないか?」
「OK、冬夜俺の運転についてこれるか?」
誠はにやりと笑う。
レースでもするつもりか?
そっちスポーツタイプだろ?
「なんかトーヤに運転任せた方が良い気がしてきた……」
カンナがため息を吐いてる。
「なんで?」
「お前最近運転荒過ぎだぞ!」
「神奈だってわざとエンジンふかしてすげーじゃねーか!」
「あれはあのくらい踏まないとギアが繋がらないんだよ。半クラすると痛むし。あとそんなに吹かしてねーよ!マフラー替えてるだけだよ」
それアウトだろカンナ……。
「まあ、誠もカンナ乗せてるし無茶しないよ」
「だといいんだけどな……」
「俺の運転信頼してくれてたろ?」
「なんか別々じゃないといけない理由でもあるのか?」
「そ、そりゃ帰りは別行動になるかもしれねーじゃん」
「どこに行く気だ?」
「そ、そりゃラブホとかラブホとかシティホテルとか……神奈だってたまには思いっきり声出したい……いてぇ!」
「却下だ!トーヤだめか?」
「うぅ……私はいいよ?冬夜君」
愛莉が折れた、女の友情ってやつか?
困った、誠とのつながりもあるし無下に受けるわけにもいかない。
かといって神奈の悩みもある。
うーん……。
誠悪い。
「分かったよ俺が車だすよ」
「流石トーヤ!」
「冬夜、お前ら二人でいちゃつきたいとかないのかよ」
「あるよ」
さらりと答える僕。
「だったら……」
「でもどうせ4人でもいちゃつくのはいちゃつくだろ?」
「ま、まあそうだな」
「でも、カンナ覚悟しとけよ……」
「な、なんだよトーヤ」
「車の中僕と愛莉の世界で満たされてるからな?」
「は?」
「と、冬夜君!?」
愛莉まで驚いてる。
「こう見えて二人で空気作ってるからさ。多分初詣に行った時のカンナと誠の時より凄いと思う」
「寝てたのに感づいてたのかよ」
「愛莉から聞いた」
「……はあ、誠に付き合うか」
神奈が諦めたようだ。
「カンナだって本音は誠の言う通りなんだろ?愛莉は僕の家で大きな声を……」
ぽかっ
バキッ
前者が愛莉で後者がカンナ。
「冬夜君のバカ!」
「余計な事言ってるんじゃねーよ!」
痛い……。
これも誠の為を思って言ったんだぞ。ありがたく思えよ。
(4)
僕達はインターそばのコンビニで待ち合わせをしていた。
案の定誠達は遅刻してくる。
その間に色々買い物。
買い物が終わる頃誠達がやってくる。
「悪い悪い寝過ごした」
「悪い寝てた。あ、私達も買い物してくるわ」
そう言ってコンビニに入る二人。
そして買い物を終えるとコンビニから出てくる。
「じゃ、いこっか」
そうして2台は上り方面から入っていく。
「昨日はありがとね」
愛莉が景色を見ながら話しかけた。
「何が?」
「遊園地を断ってくれたこと。2台で行こうって言ってくれたこと。嬉しかったよ」
「それは良かった」
殴られ損にならなくて済んだよ。
「あ、滝だ~」
「ああ、あるって言ってたな」
「うわあ、昼間でも眺めいいんだね。海まで見える」
運転席側に乗り出してくる愛莉。
危ないぞ。
その時後ろにいる誠がウィンカーを出してる事に気がついた。
追い越し車線に移ると一気に加速して一瞬のうちに追い抜いていく誠。
どうするかな?
抜き返そうと思えばできるけど、ここ速度制限80㎞/hなんだよな。
レーダーに反応はない。
行かないと愛莉に情けないと思われる?
それはないだろうな?
寧ろ無視したほうがいいんだろうな。
「神奈可哀そう、彼女乗せてるのにあんな無謀な運転するなんて」
正解だったようだ。
「その点冬夜君は優しいよね、安全運転で行ってくれて」
咄嗟に左手をハンドルから離した。
愛莉が左手にしがみ付いてきたから。
「運転中はやめようよ。危ないだろ」
「ごめんなさ~い」
反省してるのかしてないのか舌をぺろっとだす愛莉。
「ところで冬夜君」
「なんだ?」
「どうして冬夜君がショッピングモール行きたいって言いだしたのか考えたんだけど……」
ぎくっ!
「だから買い物まだしておくものあるだろ?都市高速っての走ってみたかったし」
嘘はついてない。
「ブー。ちゃんとネットで調べたんだからね!有名なとんこつラーメン屋さん目当てでしょ!」
完全にバレてる。
「い、いやならいいよ」
愛莉は首を振った。
「いいの。私は冬夜君と一緒ならどこへでも行くって決めたから。一緒に行けるだけで幸せだって分かったから。だから……」
だから?
「今度二人で遊園地いこ?」
「え?」
「いきなり誠君たちと一緒だとなんか一人でキャーキャー泣きわめいて恥ずかしいし、冬夜君と予行演習ってことで」
「なるほどね。また行くところ増えたな」
「学生のうちにやっといた方が良い事っていっぱいあると思うんだ」
「そうだな……」
学生のうちにか。
そういや、大学に入る前にやっておきたい事ってあったな。
「愛莉、サークルとかは考えてないのか?」
「全然考えてない」
「それこそ学生のうちにやれる事だと思うけど……」
「冬夜君はどこか目当てのサークルあったの?」
「……焼肉同好会」
「……それサークルでやる意味あるの?」
寧ろ僕が知りたい。
「あ、そこ左に入ったらダメだよ」
「分かってる」
直進した。
愛莉のスマホにメッセージが入った。
「今どこ?」
愛莉はナビを見ながら返事を返す。
「日出JCT通過したところ」
「由布岳PAで待ってる」
「この先のPAで待ってるって」
「分かった」
「おせーよ冬夜!」
「お前らが速すぎるんだよ」
「悪いな、こいつ『アクセルから足が離れない』とか訳の分からないこと言いだしやがってさ」
神奈がため息交じりに言う。
ああ、悪魔の方を読んだのね?
だったら車もっとスポーツカーにすればよかったのに。
例えばカンナの車で来るとか。
「私の車で来ればって思ったろ?絶対こいつには乗せられない!」
「神奈だって時速300㎞を出すとか言ってたじゃないか」
……いいカップルだよなカンナ達。
休憩を済ませた後再び走り出す
「冬夜君はああならないでね」
愛莉のお願いだ。絶対聞かないとな。
「大丈夫だよ、そういう向きの車じゃないし」
「うん!」
鳥栖JCTにさしかかる。
「ここじゃないからね?もう一個先を左だからね」
ナビが案内してくれるから大丈夫だよ。
「大宰府インターから福岡高速に切り替えだよ~」
可愛いナビがそう告げる。
「わかったよ」
その後も愛莉の可愛い音声に従って道を進んでいく。
そして目的地に着いた。
「アニメ展!」
「服!靴!」
「私はどこでもいいよ」
「僕はお腹空いたしラーメンでも」
結果。
二組に分かれて自由行動。
一緒に来る意味あったのか?
「じゃ、冬夜君行こうか」
愛莉が手を取り誘導する。
その先は……ラーメン屋さん!?
女神だ、女神が目の前にいる。
「私もちょっとお腹空いたし、ね?」
ラーメン!替え玉!追加チャーシュー!半熟ゆでたまご!きくらげのり!
こい味!超こってり!にんにくなし!ねぎなし!2倍!超かた!!
「ねえねえ冬夜君」
注文を終えた僕に愛莉が話しかける。
「どうした?」
「ショッピングモール来たかったから黙ってたんだけど……」
「?」
「この店地元にもあるんだよね」
なんだって!
慌ててスマホで検索する。
本当だ……。
「なんでだまってたの?」
「だって言ったら一人で行こうとしたでしょ?」
「ま、まあね」
愛莉ラーメン嫌いみたいだし。
「冬夜君と一緒がいいって言ったでしょ!」
なるほどね……。
ラーメンを食べた後、買い物をして回る。
一通り買い終えたところで誠にメッセージ送る。
するとカンナからメッセージが。
「先に帰ってて、私ら泊って帰るから」
は?
「ちょっと用が出来たんでな。すまん!」
「それなら僕たちも付き合うよ」
「いや、トーヤ達巻き込めないから」
意味が分からない。
愛莉は気づいたようだ。クスクス笑ってる。
誠から着信が来た。
「もしもし?」
「あ、悪い冬夜!神奈が博多の屋台回りたいって言うから、止まって帰るわ」
「屋台!?」
ラーメンが思い浮かんだ。
その手があったか!
ぽかっ
「冬夜君はもうラーメン食べたもんね」
「でも屋台って他にもあるんだろ?」
じゃ、なきゃカンナも回るなんて言い方しないよな?
ぽかっ
「冬夜君にはまだ早いの!」
そう言って笑う。
そうか早いのか……。
「じゃあ、先に帰る?」
「そうだね」
そうして僕たちは先に帰った。
この後、カンナが夜の博多で乱れていたのは言うまでもない。
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