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3rdSEASON
花火
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(1)
白い砂浜
青い海。
立ち並ぶヤシの木と、高層ビルを眺める僕。
僕は呆然としていた。
「イッシー何してるの?観光行かないの?」
江口さんに言われてはっと振り返る。
白いワンピースに薄手のピンクのカーディガンと手に取り。バッグを肩に掛けサングラスと帽子を身に着けている。
サンダル履いて彼女は「早く行こう」と催促する。
僕もバッグを背負いホテルの部屋を出た。
ハイヤーを手配して、様々な観光地をめぐり、色々な外国人と交流する恵美。
恵美の英語は流暢なものだった。
何度も来たことあるのかな?
ハイヤーが通りを抜ける中、僕はこれまでの経緯を思い返す。
あれは期末試験が終わった頃だった。
「イッシー、写真を取りにいくわよ」と、江口さんに言われフォトスタジオに向かった。
写真を受け取ると次に「ここにあるものを今週中に用意しておいて」と言われる。
その時に一般旅券発給申請書なるものを渡される。
「それも記入しておいてね」と言われた。
1週間後、それらを準備すると市役所の地下に連れて行かされる、書類を渡すと「一週間くらいでできますので」と言われた。
「恵美、何をしているの?僕はいったい……」
「バカンスの準備よ」
一週間後市役所に出向くと紺色の手帳みたいなものが渡された。
それには「JAPAN PASSPORT」と刻まれてある。
パスポート!?
「できたわね、後日迎えに行くから準備しておいてね」
「どこに行くの?」
「海外に決まってるでしょ?」
「だからどこ……」
「ハワイよ」
は、ハワイ?
「そんなお金どこから……」
「それは心配しなくていいわ、私が招待したんだから」
そして4日後夕方にスマホが鳴った。
「迎えに来たわよ」
外に出ると黒い高級車が止まってる。
それから空港に行って手続きをして審査を受けて飛行機の発着時間まで待機する。
中にある喫茶店で時間を潰す。
「あ、あの。いまいち現状が理解できてないんだけど」
ティーカップをテーブルに置くと彼女は説明してくれた。
私達はハワイへ行く。
その為にパスポートの申請をした。
準備が出来たので今空港に来てる。
これからハワイへ向かう。
「以上でいいかしら?」
いや、そもそもなぜにハワイに行くのかを知りたいんだけど?
まさに「ホワイ?」な状況なわけで。
「私とバケーションする為よ」
彼女と付き合っていて学習したことがある。
こういう時は大人しくついて行った方が良い。
と、いうかもう出国手続きすませちゃったし。
そうして飛行機にのって、ハワイのホノルル空港まで旅立つのだった。
「どのくらい、滞在する予定なの?」
「そうね1週間くらいかしら?」
僕はバイトの予約をキャンセルした。
感謝は少なくともしている。
僕のバカンスに色を付けてくれたのだから。
彼女が言いださなかったら、バイト漬けの毎日を送っていただろう。
ESTA申請を済ませていたらしく、僕達はすんなりと入国で来た。
そして今に至る。
ハイヤーはアラモアナセンターに着く。
さっきホテルやレストランの手配をしたところだ。
そこで食事にする。近海で獲れたシーフード、ハワイ島で育った豚肉など、地産地消にこだわった絶品料理がいただけるレストラン。ミルクの味が濃いフローズンヨーグルト美味しかった。
機内食しか食べてなかったので胃袋に沁みる。美味い。
ガッツく僕を恵美は見て笑う。
「食事に来ただけじゃないのよ?観光スポット案内してあげる」
ワイキキビーチ周辺を観光しながらダイヤモンドヘッドを目指す。
ワイキキビーチを一望できる風景。大迫力のクレーター。
その後は夕食を済ませる。ビーチハウスのようなおしゃれな店内で、ハワイローカルの食材をたっぷり使った絶品メニューをたっぷり味わう。
その後ホテルに戻るとシャワーを浴び電池が切れたかのように眠った。
僕らの長期休暇は始まったばかりだった。
(2)
その日バイト終え、帰り支度をしているとスマホが鳴った。
渡辺班の招集だ。
「今度の日曜日渡辺班集合できる人は集合」
行けるのは僕と穂乃果、それに指原さんに桐谷君、あとは大島さんだ。
計7人。後の人はどこか予定があるらしい。
「私合宿があるから」と、志水さん。
「私達ハワイに来てるから」と、江口さん。
「ごめんね、今冬夜君と旅行中なの」と遠坂さん。
「その日は悪い、パス!」と誠君。
みんな夏休みを満喫してるんだね。
穂乃果と相談する。
「欠席者多いし、無理に行くこともないんじゃ……」と、僕は提案したが、穂乃果は断った。
「折角だし、バイトの後だし行こうよ」と穂乃果は言う。
穂乃果が言うんじゃ断る理由もない。
「バイトが終わる時間は?」
「夕方には……」
「じゃあその時間に青い鳥集合な」
日曜日の3時ごろ、渡辺君達は集まった。
飲み物を飲みながら僕たちのバイトの終わりを待っている。
「で、今日はどこに行くつもりなんだい?」
僕は渡辺君に聞いていた。
「花火だよ。皆行ってないって言ってるしな」
こんな月末に花火大会があることに驚いたよ。
「結構苦労して探したんだぞ」と、渡辺君は言う。
美嘉さんと指原さんは浴衣姿で来ていた。
穂乃果は「私も浴衣着ようかな?」と言っている。
動きづらいだけだし良いよと僕は言う。
「そう?興味ない?」と穂乃果が言うと「あるけど今年じゃなくても待つよ」と穂乃果に言った。
やがて交代の店員が来て、バイトを終えると僕達は会場へと足を運んだ。
途中コンビニで食事を買って食べながら見に来た。
20:00になると花火が上がりだす。
花火も綺麗だったけど、彼女も綺麗だった。
でもその事は口にしない。
何も着飾ってないバイト帰りの彼女に言ったところで嫌味にしか聞こえないだろう。
今は花火に集中しよう。
つんつん
穂乃果が僕の背中をつつく。
「どうしたんだい?」
「花火きれいだね」
うん、花火も綺麗だけど君も綺麗だよ。
色とりどりの明かりに照らされた君は綺麗に見える。
パッと花火が光って咲いている。
きっとまだ終わらない夏が曖昧な二人の心を繋ぐ。
この夜がずっと続くことを願っていた。
パッと花火が夜に咲く。
夜に咲いて静かに消える。
はっと息を呑めば消えちゃいそうな光が、未だ胸の中にある。
手を伸ばせば触れたあったかい未来が密かに僕らを見てる。
「あと何度君と同じ花火を見てられるかな」と穂乃果が笑って言う。
「何度でも見れるよ」と、僕が言う。
そうであって欲しい。
そうして花火大会は幕を閉じた。
帰りにファミレスで夕食をとる。
「こいつマジ最悪。せっかく浴衣着て来たのに興味なさそうだし、花火は途中で欠伸をするし。飽きたから帰ろうとか言いだすし」
指原さんが不満を言う。
「興味ないなんて言ってないだろ」
「顔が物語ってたんだよ」
「瑛大も調教してもらうか?江口さんに」
「い、いやあれは勘弁」
渡辺君が笑って言うのを桐谷君が全力で断ってる。
あれは受けたくないよね。受けた僕が言うのもなんだけど。
「ところで瑛大はあれから変わったのか?」
「まあね、学校にもちゃんと行くようになったし。私も偶に瑛大の家に行ってるし……」
「それはよかった」
そう言ってコーラを飲み干すと渡辺君はジュースを取りに行った。
「良いなあ、そう言いあえる仲の友達がいて……」
大島さんがぼそりと呟く。
「友達じゃないよ、一応恋人だよ」と、指原さんが言う。
「一応ってなんだよ!一応って」と桐谷君が突っ込む。
「そう思ってるなら、それ相応の行動をしろ」と指原さんが桐谷君の頭を叩く。
「恋人か、いいなぁ~」
ああ、そんな事彼女たちの前で言ったらいけませんよ。
「何?大島さん彼氏いないの?」
ほら指原さんが食いついた。
「いないですよ、いるわけないじゃないですか~」
大島さんはそう言って笑う。
「そうならそうと言いなさいよ。私達が相談に乗るわよ!」
「なんだ、指原さん一人で盛り上がってるけど」
渡辺君が戻ってきた。よかったね、これで君の学園生活も桃色に塗りつぶされる事になったよ。
「大島さんがね、彼氏が欲しいらしいのよ」
まだ欲しいとは一言も言ってないよ指原さん。
「なるほどな、大島さんは同じ学部だったな、なら事は簡単に進みそうだ。気になる人はいるのかい?」
渡辺君が追及していく。
「そんなの全然いませんよ!それに……」
「それに?」
「私についてくる男の人ってろくな男いないから……」
「どういうこと?」
指原さんが尋ねると大島さんは答えた。
どうやら大島さんは男性恐怖症らしい。
小学中学と男子に虐められて、高校生の時やっと彼氏が出来たと思ったらいきなり肉体関係を迫られたりと、とにかく禄でもない男としか付き合ったことが無いらしい。
「なるほどな、そいつは重症だな」
渡辺君は深く考える。そっとしておいた方が良いんじゃないですかね。こじらせかねないですよ。
「とりあえずの目的はそれを克服することからかな?」
「とりあえずとは言ってもやっぱりいい物件探さないと……大島さん、好みのタイプとかないの?」
指原さんか乗り気だ。それにしても物件って……。
「優しくて面白い人かな?」
凄くありきたりな表現だけど物凄く難しいとも思うんですけどねえ。
「月並みな注文ね、顔とか好みないの?」
「多分絶対無理だからいいですよ」
「凩の松山潤一かな」
凩とはちょっと昔からいる今は飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルユニットである。
それぞれドラマや映画の主演に抜擢されたり、自分たちがレギュラーのバラエティ番組を持つ。
松山潤一ことまつじゅんはその中でもひときわ人気が高い。
「それは難しいわね……」
「でしょ!」
「じゃ、性格重視で探すか」
渡辺君がそう言うと指原さんは頷く。
この二人なら条件に合った物件を探してきそうだ。
「大学違くてもわいいわよね。瑛大!あんたも協力するんだよ!」
「ええ!?」
桐谷君が叫ぶ。
「ええ!?ってあんたもグループの一員でしょうが!」
「わかったよ……優しくて面白い人ね……」
「よし、酒井君は誰か知ってる人いないかい?」
渡辺君が聞いてきた。僕にその手の話は無理ですよ。交友関係といっても中島くらいしか……中島か。
「一人だけ心当たりがいますけど……」
「誰それ!?」
指原さんが食いついてきた。
「それって中島君の事?」
穂乃果が聞いてきた。僕の交友関係の事は大体把握している。
「うん、彼と片桐君以外しか友達いなくてね……」
「じゃあその中島君とやらでいってみようか、何、いきなり付き合えって言ってるんじゃないんだ。取りあえず友達からでもいいんだから」
「決まりだね!後はどういうセッティングをするかだね」
指原さんが言うと皆考える。僕も考えるふりはするけど、良い案など思いつくはずがなく。
「やっぱりシンプルに皆と遊びに行く感じでいいんじゃないかな?」
渡辺君が言うと皆が頷いた。
「じゃあ、当日は大島さんには俺と美嘉と指原さん、瑛大の4人がついていよう。中島君を呼ぶのは……酒井君頼めるか?」」
「善処はしてみます……」
「頼りないな、俺もついて行くことにしよう」
「はい」
「よし、今日はそのくらいしておこう、詳しい日時は俺と酒井君で詰めていくから、随時メッセージグルで知らせていく」
渡辺君がそういうと、いつの間にか始まった作戦会議は終わった。
帰り道
「酒井君大丈夫なの?私から見て中島君ってモテるタイプだと思うんだよね」
「よくわかるね、そうなんだ。彼はモテるんだ。」
「そんな人を大島さんにあてがったら余計に男性不振に陥りそうなんだけど」
「そこは言い含めておくよ。事情を話すしかないね」
イケてるメンズなんだ。その辺は理解できるだろう。
それに傷つけるような真似をしたらそれこそ渡辺班がだまってないだろう。
「着いたよ」
穂乃果は僕の住むアパートの前に車を止めるとそう言う。
「ありがとう、じゃあまた明日」
「ええ。じゃあ、また明日」
そう言うと僕は部屋に戻る。
「私魅力ないのかな?あれから何も誘ってくれやしない……」
そんな彼女の一言も花火のように散って消えた。
(3)
「ナイスショット!」
そう言って取り巻き達が拍手をする。
1年であるにも関わらずゴルフバッグを取り巻きに持たせて歩く姿は他の上級生にどう見えただろう?
ちょっと前の私なら、にこやかに先陣切って歩いていただろう。
しかしなぜか今の私は空しさすら思える。
理由はわかる。彼がいないから。
あの女に対する敵対心が作り出した虚像の恋は、いつしか本物になっていた。
そしてそれは、取り巻が私に抱くものが偶像でしかないと気づかされた瞬間だった。
虚栄心と偶像が織りなす世界は、綺麗に思えたが化けの皮が剥がれるとモノクロの世界でしかなかった。
空しい。
そんな自分をひた隠しにして作り笑いをする私。
そうしてないと作り上げてきた自分が音を立てて崩れてしまいそうで。
こんな私を救えるのは世界でただ一人あなただけ。
冴えない男が、恋というフィルターを通すだけで、万華鏡のようにきれいに映るの。
これが遠坂さんの言っていた事?
本当に必要なものはそこらへんに転がっている石ころの中にある。
あの女が言っていた言葉。
初めての恋をした。あなただけがそこにいた。
勢い任せで放った言葉が私を変えてしまった。
逢いたくて飛んだって落ちていくだけども、何度でもあなたをめがけて想いを全て放り投げる。
泣いたって絶対に挫けない、貴方が笑うまで。
合宿最終日。
打ち上げがおこなわれた。
私の周りには男どもがうようよと寄ってくる。
けれどその中に彼はいない。
作り笑いをして愛想を振りまいて、そこに何が得られるのだろう?
だけれどそれを止めない。止められない。
それはあの女に対する敗北を意味するから。
あの日あの女は自分の欠点を他人に見せることによって自滅した。
「幻滅した」の一言で人はこうも離れていくものなのか?
それはあの女にとって恐怖ではなかったのか?
ひび割れて、砕け散って、それでも手に入れたいものがあったというのか?
そこまで価値があるものなのだろうか?ソレは。
まだ私には理解できないでいた。
部屋に戻り時計を見る。
もうバイトも終わっている頃だろう。
気づいたら電話をしていた。
一人部屋だった。
手出しをして一人部屋にしてもらった。
自分を演じ続けることには限界がある。
一人になって楽になりたいからそうしてもらった。
そこまでして手に入れたい虚栄心に何の価値があるのだろう?
価値感すら覆してしまう何か?
それを確かめたい。
「もしもし?」
酒井君が電話に出た。
「おひさしぶりね」
「……何の用ですか?」
気だるそうな彼の声。私を前にしてそんな声を出すのはあなただけよ。
「あら?好きな人に電話をするのに理由がいるの?」
あなたが好きだからは理由にならないの?
「何度も言いますけど僕にはもう彼女いますから」
「私も何度も言うけど諦めないから」
「僕には揶揄ってるようにしか見えないんですけど」
「それは心外だわ。そんなつもりでかけたつもりじゃないんだけど」
そこまで器用な女じゃないわよ、私は。
「じゃあ、伺いますけど僕の何を気に入ったというんですか?」
「目よ」
「!?」
あなたの私の虚栄心という壁を突き破ってきた目。
気だるそうに私を見て、面倒事にまきこまれたなあと明らかに面倒くさそうな目で私を連れだしたあの日の目。
酔っていたけど忘れてはいないわよ。
「理解に苦しむ回答ですね」
「そうでしょうね」
言葉に出来ない思い。この世界を共有出来たらいいのに。
「僕も正直にいいますね。あなたに興味は全くありません」
彼の放つ痛烈な一言、やはり彼は私の心のバリアを貫いてくる。
「そのうち振り向かせて見せるわ。それに……」
「それに?」
怪訝そうな彼の声。
「着信拒否しないってことは少なからず拒まれてはいないって事でしょ?」
「……電話番号変えてくるくらいの事はするでしょうし……家に直接来られるのもこまりますから」
ここまで私に靡かない男も初めてよ。酒井君。
いつか振り向かせて見せるわ。だから真剣に話を聞いてね。
それは、形のない行方知れずの恋。
「そうね、そのくらいの事はするでしょうね」
「じゃあそういうことで、僕明日もバイトなので」
「わかったは、ではまた明日」
「……おやすみなさい」
電話は終わった。
振り向くまで何度でも何度でもかけてやる。
(4)
僕達は帰国の途に就いた。
帰りの飛行機では寝ないほうがいいらしい。
時差ボケ対策だ。
初めての海外旅行。
しかも初めての彼女と。
楽しかった。
でも残念な部分もあった。
どうせならハネムーンで行きたかったから。
そのことを恵美に言ったら。
「ハネムーンをハワイなんてありきたりな場所で済ませるなんて許さないわよ」と言われた。
まあ、恵美が相手だとは限らないんだけど。
僕達の恋はいつまで続くのだろう?
「思ったよりつまらなかったわね。ハワイ」
「え?」
突然突拍子もない事を言い出す恵美。
「自由の国なら飲酒も自由だと思ったのにまさか日本より厳しいだなんて」
カクテルを呑めなかったのが不満だったらしい。
「また来れると良いね」
「もちろん来るわよ。あなたと」
「そう祈ってるよ」
「祈らなくても大丈夫、私があなたにそばにいて欲しいと願っているのだから」
そっか、でも僕にも祈らせてよ。
「それよりどうして急にハワイだなんて言い出したの?」
「言ったでしょ?あなたとバカンスを楽しみたかったって……一週間でよかったわね。別荘にでも止まってた方がよほど楽しかったわよ」
恵美の価値観が分からない。
「僕は楽しかったです。初めての海外旅行」
「そう、それはよかったわ」
やっと恵美が笑ってくれた。
その微笑みを絶やさぬよう、僕は頑張ろう。
白い砂浜
青い海。
立ち並ぶヤシの木と、高層ビルを眺める僕。
僕は呆然としていた。
「イッシー何してるの?観光行かないの?」
江口さんに言われてはっと振り返る。
白いワンピースに薄手のピンクのカーディガンと手に取り。バッグを肩に掛けサングラスと帽子を身に着けている。
サンダル履いて彼女は「早く行こう」と催促する。
僕もバッグを背負いホテルの部屋を出た。
ハイヤーを手配して、様々な観光地をめぐり、色々な外国人と交流する恵美。
恵美の英語は流暢なものだった。
何度も来たことあるのかな?
ハイヤーが通りを抜ける中、僕はこれまでの経緯を思い返す。
あれは期末試験が終わった頃だった。
「イッシー、写真を取りにいくわよ」と、江口さんに言われフォトスタジオに向かった。
写真を受け取ると次に「ここにあるものを今週中に用意しておいて」と言われる。
その時に一般旅券発給申請書なるものを渡される。
「それも記入しておいてね」と言われた。
1週間後、それらを準備すると市役所の地下に連れて行かされる、書類を渡すと「一週間くらいでできますので」と言われた。
「恵美、何をしているの?僕はいったい……」
「バカンスの準備よ」
一週間後市役所に出向くと紺色の手帳みたいなものが渡された。
それには「JAPAN PASSPORT」と刻まれてある。
パスポート!?
「できたわね、後日迎えに行くから準備しておいてね」
「どこに行くの?」
「海外に決まってるでしょ?」
「だからどこ……」
「ハワイよ」
は、ハワイ?
「そんなお金どこから……」
「それは心配しなくていいわ、私が招待したんだから」
そして4日後夕方にスマホが鳴った。
「迎えに来たわよ」
外に出ると黒い高級車が止まってる。
それから空港に行って手続きをして審査を受けて飛行機の発着時間まで待機する。
中にある喫茶店で時間を潰す。
「あ、あの。いまいち現状が理解できてないんだけど」
ティーカップをテーブルに置くと彼女は説明してくれた。
私達はハワイへ行く。
その為にパスポートの申請をした。
準備が出来たので今空港に来てる。
これからハワイへ向かう。
「以上でいいかしら?」
いや、そもそもなぜにハワイに行くのかを知りたいんだけど?
まさに「ホワイ?」な状況なわけで。
「私とバケーションする為よ」
彼女と付き合っていて学習したことがある。
こういう時は大人しくついて行った方が良い。
と、いうかもう出国手続きすませちゃったし。
そうして飛行機にのって、ハワイのホノルル空港まで旅立つのだった。
「どのくらい、滞在する予定なの?」
「そうね1週間くらいかしら?」
僕はバイトの予約をキャンセルした。
感謝は少なくともしている。
僕のバカンスに色を付けてくれたのだから。
彼女が言いださなかったら、バイト漬けの毎日を送っていただろう。
ESTA申請を済ませていたらしく、僕達はすんなりと入国で来た。
そして今に至る。
ハイヤーはアラモアナセンターに着く。
さっきホテルやレストランの手配をしたところだ。
そこで食事にする。近海で獲れたシーフード、ハワイ島で育った豚肉など、地産地消にこだわった絶品料理がいただけるレストラン。ミルクの味が濃いフローズンヨーグルト美味しかった。
機内食しか食べてなかったので胃袋に沁みる。美味い。
ガッツく僕を恵美は見て笑う。
「食事に来ただけじゃないのよ?観光スポット案内してあげる」
ワイキキビーチ周辺を観光しながらダイヤモンドヘッドを目指す。
ワイキキビーチを一望できる風景。大迫力のクレーター。
その後は夕食を済ませる。ビーチハウスのようなおしゃれな店内で、ハワイローカルの食材をたっぷり使った絶品メニューをたっぷり味わう。
その後ホテルに戻るとシャワーを浴び電池が切れたかのように眠った。
僕らの長期休暇は始まったばかりだった。
(2)
その日バイト終え、帰り支度をしているとスマホが鳴った。
渡辺班の招集だ。
「今度の日曜日渡辺班集合できる人は集合」
行けるのは僕と穂乃果、それに指原さんに桐谷君、あとは大島さんだ。
計7人。後の人はどこか予定があるらしい。
「私合宿があるから」と、志水さん。
「私達ハワイに来てるから」と、江口さん。
「ごめんね、今冬夜君と旅行中なの」と遠坂さん。
「その日は悪い、パス!」と誠君。
みんな夏休みを満喫してるんだね。
穂乃果と相談する。
「欠席者多いし、無理に行くこともないんじゃ……」と、僕は提案したが、穂乃果は断った。
「折角だし、バイトの後だし行こうよ」と穂乃果は言う。
穂乃果が言うんじゃ断る理由もない。
「バイトが終わる時間は?」
「夕方には……」
「じゃあその時間に青い鳥集合な」
日曜日の3時ごろ、渡辺君達は集まった。
飲み物を飲みながら僕たちのバイトの終わりを待っている。
「で、今日はどこに行くつもりなんだい?」
僕は渡辺君に聞いていた。
「花火だよ。皆行ってないって言ってるしな」
こんな月末に花火大会があることに驚いたよ。
「結構苦労して探したんだぞ」と、渡辺君は言う。
美嘉さんと指原さんは浴衣姿で来ていた。
穂乃果は「私も浴衣着ようかな?」と言っている。
動きづらいだけだし良いよと僕は言う。
「そう?興味ない?」と穂乃果が言うと「あるけど今年じゃなくても待つよ」と穂乃果に言った。
やがて交代の店員が来て、バイトを終えると僕達は会場へと足を運んだ。
途中コンビニで食事を買って食べながら見に来た。
20:00になると花火が上がりだす。
花火も綺麗だったけど、彼女も綺麗だった。
でもその事は口にしない。
何も着飾ってないバイト帰りの彼女に言ったところで嫌味にしか聞こえないだろう。
今は花火に集中しよう。
つんつん
穂乃果が僕の背中をつつく。
「どうしたんだい?」
「花火きれいだね」
うん、花火も綺麗だけど君も綺麗だよ。
色とりどりの明かりに照らされた君は綺麗に見える。
パッと花火が光って咲いている。
きっとまだ終わらない夏が曖昧な二人の心を繋ぐ。
この夜がずっと続くことを願っていた。
パッと花火が夜に咲く。
夜に咲いて静かに消える。
はっと息を呑めば消えちゃいそうな光が、未だ胸の中にある。
手を伸ばせば触れたあったかい未来が密かに僕らを見てる。
「あと何度君と同じ花火を見てられるかな」と穂乃果が笑って言う。
「何度でも見れるよ」と、僕が言う。
そうであって欲しい。
そうして花火大会は幕を閉じた。
帰りにファミレスで夕食をとる。
「こいつマジ最悪。せっかく浴衣着て来たのに興味なさそうだし、花火は途中で欠伸をするし。飽きたから帰ろうとか言いだすし」
指原さんが不満を言う。
「興味ないなんて言ってないだろ」
「顔が物語ってたんだよ」
「瑛大も調教してもらうか?江口さんに」
「い、いやあれは勘弁」
渡辺君が笑って言うのを桐谷君が全力で断ってる。
あれは受けたくないよね。受けた僕が言うのもなんだけど。
「ところで瑛大はあれから変わったのか?」
「まあね、学校にもちゃんと行くようになったし。私も偶に瑛大の家に行ってるし……」
「それはよかった」
そう言ってコーラを飲み干すと渡辺君はジュースを取りに行った。
「良いなあ、そう言いあえる仲の友達がいて……」
大島さんがぼそりと呟く。
「友達じゃないよ、一応恋人だよ」と、指原さんが言う。
「一応ってなんだよ!一応って」と桐谷君が突っ込む。
「そう思ってるなら、それ相応の行動をしろ」と指原さんが桐谷君の頭を叩く。
「恋人か、いいなぁ~」
ああ、そんな事彼女たちの前で言ったらいけませんよ。
「何?大島さん彼氏いないの?」
ほら指原さんが食いついた。
「いないですよ、いるわけないじゃないですか~」
大島さんはそう言って笑う。
「そうならそうと言いなさいよ。私達が相談に乗るわよ!」
「なんだ、指原さん一人で盛り上がってるけど」
渡辺君が戻ってきた。よかったね、これで君の学園生活も桃色に塗りつぶされる事になったよ。
「大島さんがね、彼氏が欲しいらしいのよ」
まだ欲しいとは一言も言ってないよ指原さん。
「なるほどな、大島さんは同じ学部だったな、なら事は簡単に進みそうだ。気になる人はいるのかい?」
渡辺君が追及していく。
「そんなの全然いませんよ!それに……」
「それに?」
「私についてくる男の人ってろくな男いないから……」
「どういうこと?」
指原さんが尋ねると大島さんは答えた。
どうやら大島さんは男性恐怖症らしい。
小学中学と男子に虐められて、高校生の時やっと彼氏が出来たと思ったらいきなり肉体関係を迫られたりと、とにかく禄でもない男としか付き合ったことが無いらしい。
「なるほどな、そいつは重症だな」
渡辺君は深く考える。そっとしておいた方が良いんじゃないですかね。こじらせかねないですよ。
「とりあえずの目的はそれを克服することからかな?」
「とりあえずとは言ってもやっぱりいい物件探さないと……大島さん、好みのタイプとかないの?」
指原さんか乗り気だ。それにしても物件って……。
「優しくて面白い人かな?」
凄くありきたりな表現だけど物凄く難しいとも思うんですけどねえ。
「月並みな注文ね、顔とか好みないの?」
「多分絶対無理だからいいですよ」
「凩の松山潤一かな」
凩とはちょっと昔からいる今は飛ぶ鳥を落とす勢いのアイドルユニットである。
それぞれドラマや映画の主演に抜擢されたり、自分たちがレギュラーのバラエティ番組を持つ。
松山潤一ことまつじゅんはその中でもひときわ人気が高い。
「それは難しいわね……」
「でしょ!」
「じゃ、性格重視で探すか」
渡辺君がそう言うと指原さんは頷く。
この二人なら条件に合った物件を探してきそうだ。
「大学違くてもわいいわよね。瑛大!あんたも協力するんだよ!」
「ええ!?」
桐谷君が叫ぶ。
「ええ!?ってあんたもグループの一員でしょうが!」
「わかったよ……優しくて面白い人ね……」
「よし、酒井君は誰か知ってる人いないかい?」
渡辺君が聞いてきた。僕にその手の話は無理ですよ。交友関係といっても中島くらいしか……中島か。
「一人だけ心当たりがいますけど……」
「誰それ!?」
指原さんが食いついてきた。
「それって中島君の事?」
穂乃果が聞いてきた。僕の交友関係の事は大体把握している。
「うん、彼と片桐君以外しか友達いなくてね……」
「じゃあその中島君とやらでいってみようか、何、いきなり付き合えって言ってるんじゃないんだ。取りあえず友達からでもいいんだから」
「決まりだね!後はどういうセッティングをするかだね」
指原さんが言うと皆考える。僕も考えるふりはするけど、良い案など思いつくはずがなく。
「やっぱりシンプルに皆と遊びに行く感じでいいんじゃないかな?」
渡辺君が言うと皆が頷いた。
「じゃあ、当日は大島さんには俺と美嘉と指原さん、瑛大の4人がついていよう。中島君を呼ぶのは……酒井君頼めるか?」」
「善処はしてみます……」
「頼りないな、俺もついて行くことにしよう」
「はい」
「よし、今日はそのくらいしておこう、詳しい日時は俺と酒井君で詰めていくから、随時メッセージグルで知らせていく」
渡辺君がそういうと、いつの間にか始まった作戦会議は終わった。
帰り道
「酒井君大丈夫なの?私から見て中島君ってモテるタイプだと思うんだよね」
「よくわかるね、そうなんだ。彼はモテるんだ。」
「そんな人を大島さんにあてがったら余計に男性不振に陥りそうなんだけど」
「そこは言い含めておくよ。事情を話すしかないね」
イケてるメンズなんだ。その辺は理解できるだろう。
それに傷つけるような真似をしたらそれこそ渡辺班がだまってないだろう。
「着いたよ」
穂乃果は僕の住むアパートの前に車を止めるとそう言う。
「ありがとう、じゃあまた明日」
「ええ。じゃあ、また明日」
そう言うと僕は部屋に戻る。
「私魅力ないのかな?あれから何も誘ってくれやしない……」
そんな彼女の一言も花火のように散って消えた。
(3)
「ナイスショット!」
そう言って取り巻き達が拍手をする。
1年であるにも関わらずゴルフバッグを取り巻きに持たせて歩く姿は他の上級生にどう見えただろう?
ちょっと前の私なら、にこやかに先陣切って歩いていただろう。
しかしなぜか今の私は空しさすら思える。
理由はわかる。彼がいないから。
あの女に対する敵対心が作り出した虚像の恋は、いつしか本物になっていた。
そしてそれは、取り巻が私に抱くものが偶像でしかないと気づかされた瞬間だった。
虚栄心と偶像が織りなす世界は、綺麗に思えたが化けの皮が剥がれるとモノクロの世界でしかなかった。
空しい。
そんな自分をひた隠しにして作り笑いをする私。
そうしてないと作り上げてきた自分が音を立てて崩れてしまいそうで。
こんな私を救えるのは世界でただ一人あなただけ。
冴えない男が、恋というフィルターを通すだけで、万華鏡のようにきれいに映るの。
これが遠坂さんの言っていた事?
本当に必要なものはそこらへんに転がっている石ころの中にある。
あの女が言っていた言葉。
初めての恋をした。あなただけがそこにいた。
勢い任せで放った言葉が私を変えてしまった。
逢いたくて飛んだって落ちていくだけども、何度でもあなたをめがけて想いを全て放り投げる。
泣いたって絶対に挫けない、貴方が笑うまで。
合宿最終日。
打ち上げがおこなわれた。
私の周りには男どもがうようよと寄ってくる。
けれどその中に彼はいない。
作り笑いをして愛想を振りまいて、そこに何が得られるのだろう?
だけれどそれを止めない。止められない。
それはあの女に対する敗北を意味するから。
あの日あの女は自分の欠点を他人に見せることによって自滅した。
「幻滅した」の一言で人はこうも離れていくものなのか?
それはあの女にとって恐怖ではなかったのか?
ひび割れて、砕け散って、それでも手に入れたいものがあったというのか?
そこまで価値があるものなのだろうか?ソレは。
まだ私には理解できないでいた。
部屋に戻り時計を見る。
もうバイトも終わっている頃だろう。
気づいたら電話をしていた。
一人部屋だった。
手出しをして一人部屋にしてもらった。
自分を演じ続けることには限界がある。
一人になって楽になりたいからそうしてもらった。
そこまでして手に入れたい虚栄心に何の価値があるのだろう?
価値感すら覆してしまう何か?
それを確かめたい。
「もしもし?」
酒井君が電話に出た。
「おひさしぶりね」
「……何の用ですか?」
気だるそうな彼の声。私を前にしてそんな声を出すのはあなただけよ。
「あら?好きな人に電話をするのに理由がいるの?」
あなたが好きだからは理由にならないの?
「何度も言いますけど僕にはもう彼女いますから」
「私も何度も言うけど諦めないから」
「僕には揶揄ってるようにしか見えないんですけど」
「それは心外だわ。そんなつもりでかけたつもりじゃないんだけど」
そこまで器用な女じゃないわよ、私は。
「じゃあ、伺いますけど僕の何を気に入ったというんですか?」
「目よ」
「!?」
あなたの私の虚栄心という壁を突き破ってきた目。
気だるそうに私を見て、面倒事にまきこまれたなあと明らかに面倒くさそうな目で私を連れだしたあの日の目。
酔っていたけど忘れてはいないわよ。
「理解に苦しむ回答ですね」
「そうでしょうね」
言葉に出来ない思い。この世界を共有出来たらいいのに。
「僕も正直にいいますね。あなたに興味は全くありません」
彼の放つ痛烈な一言、やはり彼は私の心のバリアを貫いてくる。
「そのうち振り向かせて見せるわ。それに……」
「それに?」
怪訝そうな彼の声。
「着信拒否しないってことは少なからず拒まれてはいないって事でしょ?」
「……電話番号変えてくるくらいの事はするでしょうし……家に直接来られるのもこまりますから」
ここまで私に靡かない男も初めてよ。酒井君。
いつか振り向かせて見せるわ。だから真剣に話を聞いてね。
それは、形のない行方知れずの恋。
「そうね、そのくらいの事はするでしょうね」
「じゃあそういうことで、僕明日もバイトなので」
「わかったは、ではまた明日」
「……おやすみなさい」
電話は終わった。
振り向くまで何度でも何度でもかけてやる。
(4)
僕達は帰国の途に就いた。
帰りの飛行機では寝ないほうがいいらしい。
時差ボケ対策だ。
初めての海外旅行。
しかも初めての彼女と。
楽しかった。
でも残念な部分もあった。
どうせならハネムーンで行きたかったから。
そのことを恵美に言ったら。
「ハネムーンをハワイなんてありきたりな場所で済ませるなんて許さないわよ」と言われた。
まあ、恵美が相手だとは限らないんだけど。
僕達の恋はいつまで続くのだろう?
「思ったよりつまらなかったわね。ハワイ」
「え?」
突然突拍子もない事を言い出す恵美。
「自由の国なら飲酒も自由だと思ったのにまさか日本より厳しいだなんて」
カクテルを呑めなかったのが不満だったらしい。
「また来れると良いね」
「もちろん来るわよ。あなたと」
「そう祈ってるよ」
「祈らなくても大丈夫、私があなたにそばにいて欲しいと願っているのだから」
そっか、でも僕にも祈らせてよ。
「それよりどうして急にハワイだなんて言い出したの?」
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恵美の価値観が分からない。
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その微笑みを絶やさぬよう、僕は頑張ろう。
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