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3rdSEASON
甘い19歳の憂鬱
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(1)
神無月。
学生達は衣替えのシーズン。
そして長い夏休みを終え後期の授業が始まる。
昨日眠るのが早かった僕は愛莉より先に目覚めてしまった。
朝陽がカーテンの隙間から差し込んでいる。僕の腕の中で眠っている愛莉が何よりも愛おしくて、優しい姿は触れたら消えちゃうんじゃないかと思うくらいで、ずっと見ていたかった。
だけど、そんな夢は幻となって消える。
定刻になるとアラームが鳴りだし、それを慌てて止めようとすると抱き着いて寝てる愛莉に気づかれてしまい、愛莉は目を覚ます。
愛莉と目が合うと愛莉はにこりと笑う。
「おはよう冬夜君」
「おはよう愛莉」
そう言って愛莉の唇に優しくバードキスをすると愛莉は照れくさそうに笑う。
「冬夜君が朝から優しいなんて、私まだ夢の中にいるのかな?」
「もう一回試してみるかい?」
「……うん」
もう一度すると愛莉は「夢じゃないんだね」ってくすっと笑った。
ずっと笑顔でいさせてやれるならこのままずっといてあげたかったけど、ずっとこのままいたかったけどそれは許されず。
「あ、時間過ぎちゃった。急がないと」
そう言って愛莉は部屋を飛び出す。
僕はゆっくりと着替えて部屋を出た。
ダイニングに行くと愛莉はキッチンで朝ごはんの仕度に取り掛かっている。
「何か手伝おうか?」と、声を掛けたら「先に顔でも洗って待ってて」と愛莉は笑う。
顔を洗い髭を剃ると、再びダイニングに戻れば、朝ごはんが並んでいる。
その後に父さんと母さんが起きてきた。
「愛莉ちゃん、そんな恰好で。ごめんなさいね。片づけはおばさんがしておくから準備してきなさいな」
母さんがそう言うと愛莉は部屋に戻って行った。
冷めないうちに愛莉の作った朝ごはんを食べる。
「もう半年か、愛莉ちゃんもだいぶ慣れて来たみたいだな」
父さんがそう言うと母さんも「そうねえ、これならあなた達二人でもやっていけるんじゃない?」と言う。
それはここ最近毎日言われていることだ。だけど『収入』がない以上独立してもしなくても一緒じゃないんじゃないかというのが愛莉の見解。
愛莉がそう言うと父さんも母さんも何も言わない。
しかし、父さんと母さんには多大な『仕送り』を受けている。
これ以上負担をかけるなら独立した方が良いんじゃないかと言った。
「負担とかそんな悲しい事言うな。前にも言っただろ?お前の将来に対する『先行投資』だ」と、父さんは言う。
甘えていられるのも今のうちだ、ならば今のうちに甘えておこうというのが僕と愛莉の結論だった。
ご飯を食べ終わる頃愛莉がもどってくる。そして大急ぎでご飯を食べる。
「そんなに慌てなくても十分時間があるよ」と、僕が声をかけると「女性の朝は忙しいのよ!」と愛莉が言う。
その言葉通りにご飯を食べ終えると愛莉は食器を洗い始める。
「後はおばさんがやっておくから」と流石に母さんが愛莉を止める。
「え、でも……夏休みに十分やすませてもらえたし」と、愛莉は抵抗する。
「そんなに働かせて倒れられでもしたらおばさん梨衣さんになんてお詫びしたらいいかわからないわ」と、母さんが言うと愛莉は大人しく引き下がった。
「ありがとうございます」と愛莉は礼を言う。
そうして洗面所に行く愛莉。
「冬夜ちょっと……」
母さんが僕を呼ぶ。
そして……。
洗面所から出ると愛莉は再び部屋に戻って行った。
「それ、愛莉に言った方がいいんじゃない?その方が愛莉も安心するんじゃ」
「自分の親にも負担をかけてると余計に不安にさせちゃうかもしれないだろ?どうしてもの時はお前から愛莉ちゃんに伝えなさい」
「……わかった」
そしてとたとたと愛莉が部屋から出てくる。
「準備出来たよ~」
「じゃ、じゃあ行こうか愛莉」
「?」
「愛莉、車の鍵」
「あ、はい」
愛莉から車の鍵を受け取ると家を出た。
(2)
昼休み。
学食で愛莉のお弁当を食べてると大島さんから声をかけられた。
「昼間から仲良くしてて羨ましいですね」
「……い、今渡辺君が探してるらしいから」
「あ、そういう意味で言ったんじゃないんです」
愛莉が言うと大島さんが慌てて弁解する。
「ここ座ってもいいですか?」
「どうぞ」
愛莉が言うと大島さんが愛莉の隣に座り、自分の弁当を広げる。
「花菜のも美味しそうだね」
「ほとんど冷食ですけどね」
そう言うと大島さんは食べ始める。
「あ、女子会楽しかったです。またやりたいです。今度は私も自分の彼の話したいなぁ」
「年末にでもやろうって亜依が言ってたよ」
「そうなんだ、楽しみだな~」
女性同士で盛り上がってる中、僕は弁当を食べ終えると片づけ、そして……。
がしっ。
愛莉に腕を捕まれた。
ちっ、バレたか。
「どこにいくのかな~?」
愛莉がにこりと笑っている。
「ジュ、ジュースを買いにいこうかなって」
「それだけ?飲み物なら用意してあるよ?」
愛莉は水筒をバッグから出す。
「つ、ついでに辛麺でも食べようかな~なんて……アハハ」
ぽかっ
「油断も隙も無いんだから」
「夏休み開けても変わらねーなトーヤは」
カンナがやってきた。
カンナは僕の隣に座るとため息をつく。
「午後からの授業にしておいて正解だったよ。夏休みボケがでてしまってさ、起きたら昼前だった」
カンナは眠たそうだ。よく大学まで来ようと思ったな。でも昼から授業か……そういう手もあったんだな。まあ、愛莉が許してくれるはずがないけど。
カンナは大島さんと愛莉を見ると言った。
「愛莉と花菜さ。女性だけでグループ作ったんだけど入る?」
「いいよ」
二人は快諾する。カンナがスマホを弄ると二人のスマホが鳴る。二人はスマホを操作する。
「女性だけでグループってなんで?」
「トーヤには関係ない」
カンナがきっぱり言う。そうか、関係ないのか。
3人はスマホを弄っては笑いあっている。
なんか一人だけ蚊帳の外に出されてる気分。でもこういう女性だけの集まりに口を挟むのってよくないよね。
3人がスマホに夢中になってる間に……
ぽかっ
ああ、ちゃんと見てるんだね。
腕時計を見ると時間が3限目前だ。
「愛莉そろそろ時間だよ」
「へ?あ!うん、行こうか」
「私は今日午前中だけだから」
「うん、じゃあまた後でね~」
愛莉がそういうと大島さんは手を振って立ち去った。
「じゃ、私もいくわ。またな~」
そう言ってカンナも立ち去る。
僕達も教室に向かった。
(3)
カランカラン。
ドアベルが鳴る。
いつものお客さんの登場だ。
「いつもので」
「はい、偶にはカウンターでもどうだい?」
「いや、テーブルの方が……」
「お皿一杯になるから」
「じゃ、こちらの席へどうぞ」
伝票を厨房に貼ると、マスターが奥から叫んでる。
「お、お得意さんの登場かい?いつもいつもありがとね!腕の振るいがいがあるよ」
「ここのナポリタン本当美味いですから!」
そう言ってくれるとなぜか僕も嬉しいよ片桐君。
注文の品が出来るとそれをテーブルにもっていく。
待っていましたと言わんばかりに片桐君が食べ始める。
「それはそうと、今日はきてないんだね?志水さん」
「そうだね」
まあ授業とか色々あるんだろう。来てもらわなくてもいいんだけどね。店員としてあるまじき言動だから敢えて口にしないけど。
その時遠坂さんがくすくすと笑った。何か知ってそうな顔だ。
「アミューズメント施設に遊びに行った帰りの事は話を聞いたよ。酒井君」
ああ、志水さん喋ったんだね。ちょっとだけ恥ずかしい。
「何かあったの?志水さんと」
「冬夜君はそれ食べてようね」
片桐君は黙って食べ始めた。それでいいのかい?
「ねえ、酒井君。志水さん入学当初よりだいぶ変わってきたよ?きっと酒井君の存在が志水さんを変えたんだと思う」
僕には病的な一面しかみせてくれないですけどね。いきなりキスしてきたり。どう変わったのか教えて欲しいんですけど。
その時カランカランとドアベルが鳴った。
話題の渦中の人の登場だった。
「あら?こんにちは。いつものお願い」
志水さんはカウンターに座るとそう言った。
志水さんは辺りを見回すと僕に尋ねる。
「あら?一ノ瀬さんは?」
「今日はシフトが違っていてね」
別れたんですよ。毎日シフトを合わせるなんて傷口に塩を塗る真似しませんよ。
「そうなんだ……」
「一ノ瀬になにかご用でも?」
「いえ、いつもいるのに珍しいなと思っただけ」
そういうとレモンティーを一口すする。
「今ちょうど志水さんの話してたんだよ~」
遠坂さんが、余計な一言を……。
「私の話?」
「志水さんなんか以前のとげとげしいのが丸くなったっていうか、こう恋する乙女チックになったていうか……」
そんな具体的な話今初めて聞いたんですけど。
「乙女チック……遠坂さんにはそう見えるのね」
まんざらでもない様子の志水さん。
「恋を知って人は変わるか……愛が人を変えるのかしら」
教えてください遠坂さん、今彼女が僕に向けてる視線は乙女チックに映るものなのですか?僕には狩りを楽しむ猛獣のように見えるのですが。
いつでも仕留めるわよ。そう言わんばかりに彼女は僕を見る。僕に出来る精一杯の抵抗は視線を逸らす事。目と目が合えば一瞬で勝負が決まる。
しかし彼女は僕を舐めまわすように見ながらレモンティーを楽しみ、そして飲み終えると席を立つ。
「ごちそうさま。今日はもう帰るわ」
「ええ~。もう少しゆっくり話していこうよ」
遠坂さんが我が子を守るどころか猛獣の住む谷に突き落とすような真似をする。結構サディスティックな人なんだね。
「私は、酒井君を見に来ただけだから。失礼するわ」
そう言って志水さんは店を出た。
それを見ると僕は遠坂さんに聞いてみた。
「どこが変わったのか全く分からないんですけど」
「ええ~毎日足繁く通って好きな人を見るだけで帰るなんて健気じゃない?」
僕には獲物をしとめる瞬間を見計らってる猛獣のようにしか見えないんですけど。
「酒井君は大島さんと正反対なんだね?女性を見るのに特殊なフィルターを通してみてる。素のままの彼女をみてあげなよ。かわいそうだよ志水さん」
「お言葉ですが、その言葉で言うなら遠坂さんは女性目線という特殊なフィルターで彼女を見てるんじゃないですかね?」
「う~ん……冬夜君はどう思う?」
「え?」
突然話を振られて驚く片桐君。少し考えるとまた不思議な事を言い出した。
「よくわからないけど、一口も食べずにチャンポンに塩コショウを振りまくのはどうかって事だよね?」
ぽかっ
「なんでも食べ物に例えない!」
この二人は本当に仲がいいな。
「と、とりあえず。一度だけでもいいから一緒に遊んでみたらいいんじゃないかな?無理にとは言わないけど。ごめんなさい。こういうの苦手で」
「お言葉だけありがたく受け取っておきます」
「うん、じゃあ私達も帰るね。冬夜君もう食べ終わったでしょ」
遠坂さんはそう言うと会計を済ませて店を出る。
「よくわからないけど、恋って調味料みたいなものじゃないのかな?」
片桐君が謎の発言を残して去っていった。
調味料って激辛ソースも調味料だよね?
(4)
「う~ん……」
愛莉は悩んでいた。初めて来る宝石専門店。
デザインに悩んでいるのか、種類に悩んでいるのか、値段に戸惑っているのか?
色々つけては見たもののどうもしっくりこないらしい。
「冬夜君も一緒に選んで」
愛莉が腕を掴んでせがむ。
実は店に入った時から探してたのがあったんだ。
愛莉ももうすぐ大人なんだし、このくらいいいだろ?
付けてる愛莉も想像していた。ぴったり似合う。
僕はピンク色の小さな石が飾られたイヤリングを選んでいた。
愛莉は早速つけてみる。
「似合うかな?」
僕はゆっくりと頷く。
愛莉はそれを店員に差し出す。
綺麗に梱包されて小さな紙袋に入れられ愛莉に渡された。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
愛莉は嬉しそうに持っている。
その足で前もって予約してあったフレンチレストランに向かった。
カジュアルな服装でも入れるレストラン。一応相応な格好はしてるけど。
鴨料理のフルコースを選択しておいた。
個室もあって、値段もリーズナブル。
「素敵なお店だね」
愛莉には好評だったようだ。
料理も美味しかった。
少しだけ大人の雰囲気を楽しむ。
お酒は流石にダメだったけど。
「あと一年待とうね」
「そうか、あと一年で大人か……」
「なんかまだ実感わかないね」
「そうなんだ?」
「うん、やっぱり独立しないと大人の仲間入りとは言えないよね」
愛莉の表情が陰る。
「どうした?」
「なんか私のとってる行動ってわがままなのかな?って思っちゃって。結局やってることは冬夜君の家に下宿してるようなもんだし。しかもタダで」
「愛莉……その話なんだけど後にしないか?」
「ほえ?」
「今は料理を楽しもう?」
「うん」
そして、料理を食べ終わった後僕たちは帰りにいつもの場所に立ち寄った
(5)
このままでいいんだろうか?
時折考えてしまう。
「どうせ独立しても仕送りもらうんだから親に甘えていよう?」
その言葉が冬夜君をさらに苦しめてる。
仕送りをもらいながら実家暮らし。
しかも私は冬夜君の家にお世話になってる。
せめてものをって思って、家事をしようとするけど、それが冬夜君の立場を更に悪くする。
ごめんなさい。
全部私の我儘だよね?
そんな私に彼はプレゼントをくれてディナーまで用意してくれた。
私冬夜君に何をしてあげられる?
もうあげられるものなんて何もないよ。
ただ過ぎていくようでつきまとう憂鬱感。
皆が私はすごい、えらいと言うけれど。
私そんなにすごくないよ?
強そうに見えるかもしれないけど、本当は寂しがり屋で冬夜君にだけ誰も見せたことのない顔見せるの。
そんな憂鬱な気持ちを隠して冬夜君と誕生日デート。
楽しい気持ちは本当だよ?
ただ、ちょっと不安で。
皆に迷惑かけてない?
そんな気持ちを今夜冬夜君にぶつけてみた。
「私のやっている事って迷惑なのかな?」って……。
そうしたら冬夜君が話しだしたの。
「やっぱり愛莉には話しておいた方がいいな」って……。
「実はさ、愛莉の家からいくらかもらってるらしいんだよね。愛莉の養育費って……」
えっ?
「うちの親は愛莉に負担かけるから内緒にしとけって言うけど、やっぱり言っておいた方が良いと思って」
りえちゃんそんなことしてたの?
「愛莉の両親もうちの両親と同じみたい。『もう結婚を前提』で考えてるらしくてさ。自分たちの老後に対する【先行投資】って考えてるみたい。」
「……私達やっぱり独立するべきなのかな?」
「『仕送りしてもらうから一緒』って言ったのは愛莉だよ」
「でも……」
独立して仕送りしてもらってる方が余程ましなんじゃないかな?
「僕がカードを受け取った時話したね『親がしてやれる最後の事』だって……、泣いても笑ってもあと3年すれば独り立ちしなきゃいけないんだ。だったら最大限に甘えておこう?恩はいつか返せるさ」
私は涙が止まらなかった。
そんな私を冬夜君が優しく包んでくれる。
「これでもう、愛莉と破局なんてことはできなくなったな」
冬夜君が笑いながら言う。
「私冬夜君を縛ってる?」
「包まれてる、守られてるって言い方の方が正しいかな」
「……ありがとう」
「礼を言うなら僕もだよ、いつも愛莉に支えられてる、愛莉が後ろで見守っていてくれるから飛び出せる」
私もだよ。冬夜君がいるから今の私でいられる。
昨日は冬夜君が私の、明日は私が冬夜君の傷を癒してる。
「誓ったよね。死が二人を分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守るって……互いが支え合うことも含まれてるんじゃないかな」
「うん……ありがとう」
私は涙を拭い精一杯笑ってみせた。
そんな私に冬夜君はキスをしてくれた。
「……帰ろう」
私はそう言っていた。
「ど、どうしたんだ?」
慌ててる冬夜君、大丈夫だよ、心配しなくていいんだよ。
「今日はそういう気分なの……気づいてよ」
「それなら明日休みだしホテルでも……いてっ」
ぽかっ
「気になるなら私の家でもいいよ♪」
麻耶さんなら気にしないしね。
「……家でいいです」
「素直でよろしい」
気を使わせてごめんね。
でも、今夜は冬夜君にも甘えさせて。
次は冬夜君の誕生日だから。
どんな誕生日にしようかな?
神無月。
学生達は衣替えのシーズン。
そして長い夏休みを終え後期の授業が始まる。
昨日眠るのが早かった僕は愛莉より先に目覚めてしまった。
朝陽がカーテンの隙間から差し込んでいる。僕の腕の中で眠っている愛莉が何よりも愛おしくて、優しい姿は触れたら消えちゃうんじゃないかと思うくらいで、ずっと見ていたかった。
だけど、そんな夢は幻となって消える。
定刻になるとアラームが鳴りだし、それを慌てて止めようとすると抱き着いて寝てる愛莉に気づかれてしまい、愛莉は目を覚ます。
愛莉と目が合うと愛莉はにこりと笑う。
「おはよう冬夜君」
「おはよう愛莉」
そう言って愛莉の唇に優しくバードキスをすると愛莉は照れくさそうに笑う。
「冬夜君が朝から優しいなんて、私まだ夢の中にいるのかな?」
「もう一回試してみるかい?」
「……うん」
もう一度すると愛莉は「夢じゃないんだね」ってくすっと笑った。
ずっと笑顔でいさせてやれるならこのままずっといてあげたかったけど、ずっとこのままいたかったけどそれは許されず。
「あ、時間過ぎちゃった。急がないと」
そう言って愛莉は部屋を飛び出す。
僕はゆっくりと着替えて部屋を出た。
ダイニングに行くと愛莉はキッチンで朝ごはんの仕度に取り掛かっている。
「何か手伝おうか?」と、声を掛けたら「先に顔でも洗って待ってて」と愛莉は笑う。
顔を洗い髭を剃ると、再びダイニングに戻れば、朝ごはんが並んでいる。
その後に父さんと母さんが起きてきた。
「愛莉ちゃん、そんな恰好で。ごめんなさいね。片づけはおばさんがしておくから準備してきなさいな」
母さんがそう言うと愛莉は部屋に戻って行った。
冷めないうちに愛莉の作った朝ごはんを食べる。
「もう半年か、愛莉ちゃんもだいぶ慣れて来たみたいだな」
父さんがそう言うと母さんも「そうねえ、これならあなた達二人でもやっていけるんじゃない?」と言う。
それはここ最近毎日言われていることだ。だけど『収入』がない以上独立してもしなくても一緒じゃないんじゃないかというのが愛莉の見解。
愛莉がそう言うと父さんも母さんも何も言わない。
しかし、父さんと母さんには多大な『仕送り』を受けている。
これ以上負担をかけるなら独立した方が良いんじゃないかと言った。
「負担とかそんな悲しい事言うな。前にも言っただろ?お前の将来に対する『先行投資』だ」と、父さんは言う。
甘えていられるのも今のうちだ、ならば今のうちに甘えておこうというのが僕と愛莉の結論だった。
ご飯を食べ終わる頃愛莉がもどってくる。そして大急ぎでご飯を食べる。
「そんなに慌てなくても十分時間があるよ」と、僕が声をかけると「女性の朝は忙しいのよ!」と愛莉が言う。
その言葉通りにご飯を食べ終えると愛莉は食器を洗い始める。
「後はおばさんがやっておくから」と流石に母さんが愛莉を止める。
「え、でも……夏休みに十分やすませてもらえたし」と、愛莉は抵抗する。
「そんなに働かせて倒れられでもしたらおばさん梨衣さんになんてお詫びしたらいいかわからないわ」と、母さんが言うと愛莉は大人しく引き下がった。
「ありがとうございます」と愛莉は礼を言う。
そうして洗面所に行く愛莉。
「冬夜ちょっと……」
母さんが僕を呼ぶ。
そして……。
洗面所から出ると愛莉は再び部屋に戻って行った。
「それ、愛莉に言った方がいいんじゃない?その方が愛莉も安心するんじゃ」
「自分の親にも負担をかけてると余計に不安にさせちゃうかもしれないだろ?どうしてもの時はお前から愛莉ちゃんに伝えなさい」
「……わかった」
そしてとたとたと愛莉が部屋から出てくる。
「準備出来たよ~」
「じゃ、じゃあ行こうか愛莉」
「?」
「愛莉、車の鍵」
「あ、はい」
愛莉から車の鍵を受け取ると家を出た。
(2)
昼休み。
学食で愛莉のお弁当を食べてると大島さんから声をかけられた。
「昼間から仲良くしてて羨ましいですね」
「……い、今渡辺君が探してるらしいから」
「あ、そういう意味で言ったんじゃないんです」
愛莉が言うと大島さんが慌てて弁解する。
「ここ座ってもいいですか?」
「どうぞ」
愛莉が言うと大島さんが愛莉の隣に座り、自分の弁当を広げる。
「花菜のも美味しそうだね」
「ほとんど冷食ですけどね」
そう言うと大島さんは食べ始める。
「あ、女子会楽しかったです。またやりたいです。今度は私も自分の彼の話したいなぁ」
「年末にでもやろうって亜依が言ってたよ」
「そうなんだ、楽しみだな~」
女性同士で盛り上がってる中、僕は弁当を食べ終えると片づけ、そして……。
がしっ。
愛莉に腕を捕まれた。
ちっ、バレたか。
「どこにいくのかな~?」
愛莉がにこりと笑っている。
「ジュ、ジュースを買いにいこうかなって」
「それだけ?飲み物なら用意してあるよ?」
愛莉は水筒をバッグから出す。
「つ、ついでに辛麺でも食べようかな~なんて……アハハ」
ぽかっ
「油断も隙も無いんだから」
「夏休み開けても変わらねーなトーヤは」
カンナがやってきた。
カンナは僕の隣に座るとため息をつく。
「午後からの授業にしておいて正解だったよ。夏休みボケがでてしまってさ、起きたら昼前だった」
カンナは眠たそうだ。よく大学まで来ようと思ったな。でも昼から授業か……そういう手もあったんだな。まあ、愛莉が許してくれるはずがないけど。
カンナは大島さんと愛莉を見ると言った。
「愛莉と花菜さ。女性だけでグループ作ったんだけど入る?」
「いいよ」
二人は快諾する。カンナがスマホを弄ると二人のスマホが鳴る。二人はスマホを操作する。
「女性だけでグループってなんで?」
「トーヤには関係ない」
カンナがきっぱり言う。そうか、関係ないのか。
3人はスマホを弄っては笑いあっている。
なんか一人だけ蚊帳の外に出されてる気分。でもこういう女性だけの集まりに口を挟むのってよくないよね。
3人がスマホに夢中になってる間に……
ぽかっ
ああ、ちゃんと見てるんだね。
腕時計を見ると時間が3限目前だ。
「愛莉そろそろ時間だよ」
「へ?あ!うん、行こうか」
「私は今日午前中だけだから」
「うん、じゃあまた後でね~」
愛莉がそういうと大島さんは手を振って立ち去った。
「じゃ、私もいくわ。またな~」
そう言ってカンナも立ち去る。
僕達も教室に向かった。
(3)
カランカラン。
ドアベルが鳴る。
いつものお客さんの登場だ。
「いつもので」
「はい、偶にはカウンターでもどうだい?」
「いや、テーブルの方が……」
「お皿一杯になるから」
「じゃ、こちらの席へどうぞ」
伝票を厨房に貼ると、マスターが奥から叫んでる。
「お、お得意さんの登場かい?いつもいつもありがとね!腕の振るいがいがあるよ」
「ここのナポリタン本当美味いですから!」
そう言ってくれるとなぜか僕も嬉しいよ片桐君。
注文の品が出来るとそれをテーブルにもっていく。
待っていましたと言わんばかりに片桐君が食べ始める。
「それはそうと、今日はきてないんだね?志水さん」
「そうだね」
まあ授業とか色々あるんだろう。来てもらわなくてもいいんだけどね。店員としてあるまじき言動だから敢えて口にしないけど。
その時遠坂さんがくすくすと笑った。何か知ってそうな顔だ。
「アミューズメント施設に遊びに行った帰りの事は話を聞いたよ。酒井君」
ああ、志水さん喋ったんだね。ちょっとだけ恥ずかしい。
「何かあったの?志水さんと」
「冬夜君はそれ食べてようね」
片桐君は黙って食べ始めた。それでいいのかい?
「ねえ、酒井君。志水さん入学当初よりだいぶ変わってきたよ?きっと酒井君の存在が志水さんを変えたんだと思う」
僕には病的な一面しかみせてくれないですけどね。いきなりキスしてきたり。どう変わったのか教えて欲しいんですけど。
その時カランカランとドアベルが鳴った。
話題の渦中の人の登場だった。
「あら?こんにちは。いつものお願い」
志水さんはカウンターに座るとそう言った。
志水さんは辺りを見回すと僕に尋ねる。
「あら?一ノ瀬さんは?」
「今日はシフトが違っていてね」
別れたんですよ。毎日シフトを合わせるなんて傷口に塩を塗る真似しませんよ。
「そうなんだ……」
「一ノ瀬になにかご用でも?」
「いえ、いつもいるのに珍しいなと思っただけ」
そういうとレモンティーを一口すする。
「今ちょうど志水さんの話してたんだよ~」
遠坂さんが、余計な一言を……。
「私の話?」
「志水さんなんか以前のとげとげしいのが丸くなったっていうか、こう恋する乙女チックになったていうか……」
そんな具体的な話今初めて聞いたんですけど。
「乙女チック……遠坂さんにはそう見えるのね」
まんざらでもない様子の志水さん。
「恋を知って人は変わるか……愛が人を変えるのかしら」
教えてください遠坂さん、今彼女が僕に向けてる視線は乙女チックに映るものなのですか?僕には狩りを楽しむ猛獣のように見えるのですが。
いつでも仕留めるわよ。そう言わんばかりに彼女は僕を見る。僕に出来る精一杯の抵抗は視線を逸らす事。目と目が合えば一瞬で勝負が決まる。
しかし彼女は僕を舐めまわすように見ながらレモンティーを楽しみ、そして飲み終えると席を立つ。
「ごちそうさま。今日はもう帰るわ」
「ええ~。もう少しゆっくり話していこうよ」
遠坂さんが我が子を守るどころか猛獣の住む谷に突き落とすような真似をする。結構サディスティックな人なんだね。
「私は、酒井君を見に来ただけだから。失礼するわ」
そう言って志水さんは店を出た。
それを見ると僕は遠坂さんに聞いてみた。
「どこが変わったのか全く分からないんですけど」
「ええ~毎日足繁く通って好きな人を見るだけで帰るなんて健気じゃない?」
僕には獲物をしとめる瞬間を見計らってる猛獣のようにしか見えないんですけど。
「酒井君は大島さんと正反対なんだね?女性を見るのに特殊なフィルターを通してみてる。素のままの彼女をみてあげなよ。かわいそうだよ志水さん」
「お言葉ですが、その言葉で言うなら遠坂さんは女性目線という特殊なフィルターで彼女を見てるんじゃないですかね?」
「う~ん……冬夜君はどう思う?」
「え?」
突然話を振られて驚く片桐君。少し考えるとまた不思議な事を言い出した。
「よくわからないけど、一口も食べずにチャンポンに塩コショウを振りまくのはどうかって事だよね?」
ぽかっ
「なんでも食べ物に例えない!」
この二人は本当に仲がいいな。
「と、とりあえず。一度だけでもいいから一緒に遊んでみたらいいんじゃないかな?無理にとは言わないけど。ごめんなさい。こういうの苦手で」
「お言葉だけありがたく受け取っておきます」
「うん、じゃあ私達も帰るね。冬夜君もう食べ終わったでしょ」
遠坂さんはそう言うと会計を済ませて店を出る。
「よくわからないけど、恋って調味料みたいなものじゃないのかな?」
片桐君が謎の発言を残して去っていった。
調味料って激辛ソースも調味料だよね?
(4)
「う~ん……」
愛莉は悩んでいた。初めて来る宝石専門店。
デザインに悩んでいるのか、種類に悩んでいるのか、値段に戸惑っているのか?
色々つけては見たもののどうもしっくりこないらしい。
「冬夜君も一緒に選んで」
愛莉が腕を掴んでせがむ。
実は店に入った時から探してたのがあったんだ。
愛莉ももうすぐ大人なんだし、このくらいいいだろ?
付けてる愛莉も想像していた。ぴったり似合う。
僕はピンク色の小さな石が飾られたイヤリングを選んでいた。
愛莉は早速つけてみる。
「似合うかな?」
僕はゆっくりと頷く。
愛莉はそれを店員に差し出す。
綺麗に梱包されて小さな紙袋に入れられ愛莉に渡された。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
愛莉は嬉しそうに持っている。
その足で前もって予約してあったフレンチレストランに向かった。
カジュアルな服装でも入れるレストラン。一応相応な格好はしてるけど。
鴨料理のフルコースを選択しておいた。
個室もあって、値段もリーズナブル。
「素敵なお店だね」
愛莉には好評だったようだ。
料理も美味しかった。
少しだけ大人の雰囲気を楽しむ。
お酒は流石にダメだったけど。
「あと一年待とうね」
「そうか、あと一年で大人か……」
「なんかまだ実感わかないね」
「そうなんだ?」
「うん、やっぱり独立しないと大人の仲間入りとは言えないよね」
愛莉の表情が陰る。
「どうした?」
「なんか私のとってる行動ってわがままなのかな?って思っちゃって。結局やってることは冬夜君の家に下宿してるようなもんだし。しかもタダで」
「愛莉……その話なんだけど後にしないか?」
「ほえ?」
「今は料理を楽しもう?」
「うん」
そして、料理を食べ終わった後僕たちは帰りにいつもの場所に立ち寄った
(5)
このままでいいんだろうか?
時折考えてしまう。
「どうせ独立しても仕送りもらうんだから親に甘えていよう?」
その言葉が冬夜君をさらに苦しめてる。
仕送りをもらいながら実家暮らし。
しかも私は冬夜君の家にお世話になってる。
せめてものをって思って、家事をしようとするけど、それが冬夜君の立場を更に悪くする。
ごめんなさい。
全部私の我儘だよね?
そんな私に彼はプレゼントをくれてディナーまで用意してくれた。
私冬夜君に何をしてあげられる?
もうあげられるものなんて何もないよ。
ただ過ぎていくようでつきまとう憂鬱感。
皆が私はすごい、えらいと言うけれど。
私そんなにすごくないよ?
強そうに見えるかもしれないけど、本当は寂しがり屋で冬夜君にだけ誰も見せたことのない顔見せるの。
そんな憂鬱な気持ちを隠して冬夜君と誕生日デート。
楽しい気持ちは本当だよ?
ただ、ちょっと不安で。
皆に迷惑かけてない?
そんな気持ちを今夜冬夜君にぶつけてみた。
「私のやっている事って迷惑なのかな?」って……。
そうしたら冬夜君が話しだしたの。
「やっぱり愛莉には話しておいた方がいいな」って……。
「実はさ、愛莉の家からいくらかもらってるらしいんだよね。愛莉の養育費って……」
えっ?
「うちの親は愛莉に負担かけるから内緒にしとけって言うけど、やっぱり言っておいた方が良いと思って」
りえちゃんそんなことしてたの?
「愛莉の両親もうちの両親と同じみたい。『もう結婚を前提』で考えてるらしくてさ。自分たちの老後に対する【先行投資】って考えてるみたい。」
「……私達やっぱり独立するべきなのかな?」
「『仕送りしてもらうから一緒』って言ったのは愛莉だよ」
「でも……」
独立して仕送りしてもらってる方が余程ましなんじゃないかな?
「僕がカードを受け取った時話したね『親がしてやれる最後の事』だって……、泣いても笑ってもあと3年すれば独り立ちしなきゃいけないんだ。だったら最大限に甘えておこう?恩はいつか返せるさ」
私は涙が止まらなかった。
そんな私を冬夜君が優しく包んでくれる。
「これでもう、愛莉と破局なんてことはできなくなったな」
冬夜君が笑いながら言う。
「私冬夜君を縛ってる?」
「包まれてる、守られてるって言い方の方が正しいかな」
「……ありがとう」
「礼を言うなら僕もだよ、いつも愛莉に支えられてる、愛莉が後ろで見守っていてくれるから飛び出せる」
私もだよ。冬夜君がいるから今の私でいられる。
昨日は冬夜君が私の、明日は私が冬夜君の傷を癒してる。
「誓ったよね。死が二人を分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守るって……互いが支え合うことも含まれてるんじゃないかな」
「うん……ありがとう」
私は涙を拭い精一杯笑ってみせた。
そんな私に冬夜君はキスをしてくれた。
「……帰ろう」
私はそう言っていた。
「ど、どうしたんだ?」
慌ててる冬夜君、大丈夫だよ、心配しなくていいんだよ。
「今日はそういう気分なの……気づいてよ」
「それなら明日休みだしホテルでも……いてっ」
ぽかっ
「気になるなら私の家でもいいよ♪」
麻耶さんなら気にしないしね。
「……家でいいです」
「素直でよろしい」
気を使わせてごめんね。
でも、今夜は冬夜君にも甘えさせて。
次は冬夜君の誕生日だから。
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