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3rdSEASON
アイを貴方に
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(1)
師走。
冬の朝。
「冬夜君、冬夜君」
愛莉が体を揺すっている。今日は休みだゆっくりさせて。
「前に約束したよ!起きて起きて!」
約束?何かしたっけ?してたのなら起きないと愛莉拗ねちゃうな。
重い体を起こし愛莉に「どうしたの?」と聞く?
聞くよりも鼻が反応した。なんか香ばしい香り。
テーブルの上にある二つのマグカップが香りの正体のようだ。片方のマグカップにはコーヒー。もう片方にはカフェオレ。これと約束……繋がらない。
「忘れたの?マグカップ買った時に言ったよ?『二人でモーニングコーヒー飲もうよ』って」
ああ、言ってたねそんな事。
でもなんで態々部屋で?ダイニングでいいじゃないか?と思いながら座ると愛莉がくっつく様に隣に座る。寄り添い合って肩を並べて座る二人。
「こういう気分も悪くないでしょ?」と、愛莉が笑顔で言う。
いつもより香りが強く飲んでみるといつもと味が違う。愛莉の顔を見ると「美味しい?」と首を傾げて言う。
「今日は豆から挽いてみました。初挑戦だったんだけど……」
「美味しいよ、上手にできたんだね」
「わ~い」
そりゃ喫茶店のコーヒーの方が美味しいけど、愛莉の喜ぶ顔がみれるなら、どんなコーヒーよりも美味しいと言えるよ。
「ご飯用意してあるよ」
コーヒーが飲み終わった頃愛莉が言う。
僕達は部屋を出た。
「あら?冬夜。今日は休みなのに……最近起きるの早いわね」
母さんが、不思議そうに聞いてくる。苦情があるなら愛莉に言ってくれ。
「お前もやっぱりあれか、愛莉ちゃんには逆らえないか……」
そう言えば父さん前に言ってたな「俺の周りの男は皆女性に頭が上がらない」って……。
ご飯を食べ終えると愛莉が食器を片付ける。
愛莉の家事が一段落着くと部屋に戻った。
着替えを終え、愛莉の仕度が終わるのを待つと。外に出かける。
家にいると愛莉が、休みなく働き続けるから。あてもなく彷徨う。
北へ東へ南へ西へ。飽きがこない様に毎週コースを変えてる。
偶には買い物にも連れて行ってやったり、映画を楽しんだり、カラオケに行ったり。
とにかく週末は家にいない様に過ごしていた。
今日は……洗車の日らしい。
「車さんを労わってあげないと」という愛莉の愛情あふれる言葉を有難く受け取っていた。
いつものSSに向かうと「いらっしゃい」と迎えてくれた。
いつもと違うのは今日は僕の車じゃなく愛莉の車で来てる事だった。偶には毎日のように酷使してる愛莉の車も労わってあげないといけないと思ったから。
毎月一回は愛莉の車を洗車してる。
「ところで冬夜君スタッドレスタイヤにそろそろ履き替えておいた方がいいんじゃないか?」
店員がそう言った。
「すたっどれすたいや?」
愛莉が首を傾げると、僕が説明する。
「これから雪が降るかもしれないだろ?その時の為に冬用のタイヤに履き替えた方がいいんじゃないか?って事だよ」
「なるほど~」
愛莉は頷いた。
「でも地元ってそんなに積もらないですよね」
「積もってから履き替えてたんじゃ遅いだろ?2月ごろには良く降るから今から履き替えておいても遅くはないよ。慣らし運転も必要だしね」
僕は悩んだ末、まだいいやって結論に至った。雪道を舐めていたのかもしれない。
洗車が終わるショッピングモールでお買い物。
主に僕の冬用の服。
コート一着あればいいと思うんだけどね。愛莉は次々と服を選んでは僕に当てて悩み、そして買っていた。
買い物が終わり帰ろうとすると愛莉が「コーヒーでも飲んで待ってて、私ちょっと見たいものがあるから」と言う。
「僕も行こうか?」
「う~ん、今回は一人で探したいの」
「わかった。そこのコーヒーショップで待ってるから」
「うん」
そして一人でコーヒーを飲みながら愛莉を待っていた。
店内を見渡す。仕事をしている人、読書をしている人、友達とわいわいやってるひと、様々な人がいる。僕はどのように映っているのだろう?
外を見渡せば学生から主婦まで様々な人が買い物に来ている。
その時とある二人組に目に止まった。女子高生らしき制服を着ていた。一人は嬉しそうにラッピングされた小箱を持っている。誰かにプレゼントするのだろうか?
プレゼント?
あ、そうか来週は僕の誕生日か。愛莉はプレゼントを選んでくれているのかな?
その日が来るまでの楽しみにしているとしよう。
特別な日くらい泊ってこいと言われたっけ?
……僕の誕生日だし、自分で泊る場所探すのもおかしな話かな?
まあ、平日だし大丈夫だろ……。
暫くすると愛莉が戻ってきた。何も持っていない。恐らくバッグの中にしまってあるんだろう。何を買ったのかは敢えて聞かない。
「買い物終わった?」
「うん」
「じゃ、何か食べて帰ろうか?」
「うん」
そうしてショッピングモールで食事をして帰った。
(2)
今日も常連客が席を占拠してる。
奥の席では片桐君達と大島さん達が和やかに談笑してる。
カウンターには、中島君と志水さんが座っていた。
中島君は一ノ瀬さんと穏やかなムードを作っている。
志水さんは相変わらず無言で僕を見つめている。
何が狙いなのかさっぱりわからない。目を合わせたら終わる。それだけは確かに言えることだった。
「そろそろ帰るわ」
志水さんはそう言うと席を立つ。
会計を済ませて颯爽と立ち去る。
志水さんが店を出た後中島君が話しかけてきた。
「で、どうなんだ善幸達は、あれから上手く言ってるのか?」
あれからというのは前回夢吊大橋に行った時に付き合うと宣言した時の話。
「何もないけど」
何もないから不気味で不安が増す。何をしでかすつもりなのやら。
「何も無いって……。お前それダメだろ」
「酒井君、こう言っちゃなんですけど女性の気持ち考えなさすぎです」
君が言うとすごく説得力があるよ、一ノ瀬さん。でもね、僕としては君の時の様に勝手に幻滅されて付き合ってるという事実が消滅してしまうのを願っているんだよ。
「まあ、付き合ってから半月ほどしか経ってないし」
「半月”も”ですよ!少しはデートに誘うとかしたほうがいいですよ」
「デートなら毎日してるようなものでしょう?」
「お食事に誘うとかそういう素振り見せても良いと思うんですけど」
多分自分がして欲しかったんであろう願望を要求してくる一ノ瀬さん。
「そういう君達はどうしてるんだい?」
そういう願望を中島君は満たしてくれてるのかい?中島君も部活で忙しくてそれどころじゃないと思うんだけどね。
「中島さんはしてくれてますよ。デートしてくれたり家でまったりすごしたり……」
さすがイケメンはやることが早いね。早くもお泊りですか?
「そうなんだ、良かったね。でもそれは一般論であって僕たちのケースには当てはまらないと思うんだ」
「どういう意味ですか?」
言葉に詰まった。ここで「付き合えと言われて嫌々付き合ってます」と素直に打ち明けられたらどんなに清々しい気持ちになれただろう?
しかしそこまで僕の心臓はタフにできていない。散々罵られた挙句、情報は直ちにグループ内に伝わって針の筵に包まれる未来が見えるのでやりたくない。
「いやあ、彼女の場合彼女から要求してくるでしょう」
そう、あれだけがっついていたんだから、付き合ってるという既成事実が生じたならば、もっと押しがあってもいいはずなのにそれが無い。それが不気味で仕方なかった。
「志水さんも待っているかもしれませんよ、こういう時動くのは男性からでしょう」
一ノ瀬さんの言うことは一般論だろう。間違ってはいないと思う。「僕が志水さんの事を好き」という前提があればだけど。
「どうしたんだ?善幸。ひょっとして女性と付き合ったことないのか?」
「前にも言ったと思うけどあるよ。高校生の時に一年間だけ」
「だったらどうして。今時高校生だってもっとましな交際するぜ?」
ここは適当に濁して、受け流した方が良いのか……。
「まあ、今度機会があったら誘ってみるよ」
「機会があったらじゃない、今だよ!」
一ノ瀬さん押しが強いな。自分たちが上手くいってるから僕達にも上手くいって欲しい。そんな自己欲求の為に僕達を利用しないで欲しいものだけど。
「こういう時こそ『渡辺班』だよね!。中島さん」
ちょ、ちょっと待ってあの人たちに言ったら……!
遅かった。電光石火の如く中島君は渡辺班を通して志水さんに、僕の偽りの意思を伝える。
そして反応も神速で帰ってきて今月24日にデートすることが決まってしまった。
「場所は私が指定させてもらうわ」
後でスマホを確認したら。そんな内容のメッセージが入っていた。
(3)
タワーホテルの21階。
窓際のテーブル席で夜景を楽しみながらフレンチのディナー。
今日は冬夜君の誕生日。私から冬夜君へのプレゼント。
とても素敵な眺め。
来年もまた来ようね。来年はお酒飲めるね。私ここで冬夜君とカクテルを飲むのが夢なの。
デザートが出た後冬夜君にプレゼントを渡す。
有名ブランドの財布を渡した。
大学になって財布を変えたけど、結局冬夜君自分で買ってたしね。
財布をプレゼントする意味って知ってる?
「いつでもあなたと一緒にいたい、いつでも私を側に置いて大事にしてね」って意味なんだよ。
気に入ってもらえると良いな。
ディナーを楽しんだ後は部屋で寛ぐ。シャワーを浴びてからベッドの上でじゃれあう二人。
じゃれ合いはいちゃつきに変わりそして……大切な一夜を過ごす。
何年も同じことを繰り返して来たけど。同じことを繰り返せることに幸せを覚え喜びを感じる。
私達、成長してきたけど気持ちだけは変わらないでいたいね。
これ以上の事は望まないから。今のままの冬夜君でいてくれるだけでも嬉しいから。
真夜中に冬の空を眺める。
星が綺麗。
夜空を眺めながら、冬夜君の腕の中で眠っていた。
翌日の朝。
目覚めると冬夜君の寝息が聞こえてくる。
毎日の事だけど、安心するの。
今日はゆっくり寝させてあげようかな?
でもモーニングが待ってるね。
「冬夜君、朝ごはん終わっちゃうよ」
朝ごはんの言葉に反応して冬夜君は目が覚める。
私達は着替えるとレストランに向かう。
そして朝食を終えると部屋に戻ってチェックアウトの時間まで景色を眺めながら話をする。
チェックアウトを済ませると折角だからと街中を散策する。
お昼も街中で済ませて、お店を見て回って。夕食も外で済ませて帰る。
帰ると言っても冬夜君の家にお泊りだけど。
家に入ると麻耶さんが私を呼んでいた。
どうしたんだろう?
「なんかお友達が家に来ているそうよ。ただ……」
ただ?
「なんか様子がおかしいそうなの。今まであったことのない人なんだってとりあえず戻ってみたら?」
胸騒ぎがする。
冬夜君も訝し気に話を聞いてる。
「僕もついて行こうか?」
冬夜君がそう言った。
「ううん、大丈夫。すぐ戻ってくるから」
そう言って一先ず帰る。
帰るとリビングにどこかで見覚えのある男の人が座ってる。
「愛莉ちゃんおかえりなさい。麻耶さんから聞いたの?お客さんよ~」
りえちゃんの話を聞きながら背筋が凍り付いた。
私の名前に反応したその男はゆっくりと立ち上がるとこっちを振り向いた。
そのにやけた顔覚えてる。たった一度しか、ほんの一瞬しかみてないけど。
「お久しぶり愛莉ちゃん……」
「帰って!!」
私はありったけの力を込めて叫んでいた。
精一杯の怒りを込めて。
こんなに怒鳴ったのは中2の時以来かな。
怒りで涙がこぼれていた。
「どうしたの?愛莉ちゃんそんなに怒って」
家で怒鳴ったのは初めてかな?
りえちゃんは驚いたのか緊張しているのかいつもののんびりとした口調じゃなくなっていた。
「この人前に話した人!冬夜君の従兄の勝也さん」
そう言うとリビングにいたパパさんが勝也さんの首を掴む。
「……ふむ、どうやら招かざる客人のようだったね。……お引き取り願おうか」
パパさんはそう言うと勝也さんを玄関まで引きずり外に引きずり出す。
開いた扉の隙間に足を入れ閉めさせまいと抵抗する勝也さん。
その抵抗が突然止んだ。
「冬夜!!」
その言葉を聞いて慌てて外に飛び出そうとした。しかしパパさんに止められた。
「……愛莉は中で待ってなさい。パパがいくから」
そう言ってパパさんが外に飛び出した。
嫌な予感がする。あまりにも突然の出来事に足が震える。
「愛莉ちゃん、大丈夫よ。パパさんがいるから」
りえちゃんがそう言って私の肩を抱いた。
冬夜君、無茶はしないでね。
(4)
嫌な予感がした。
一度は部屋に帰って財布の中身を愛莉にもらった財布に移す作業をしていたけど……やっぱり気になる。
「母さん、僕も愛莉の家に行ってくる」
そう言って家を飛び出した。
愛莉の家に着くと呼び鈴を鳴らそうとする。
すると勝手にドアが開いて男が放り出された。
反射的にそれを交わす。
転がった男はゆっくりと立ち上がった。その男は……勝也だった。
「勝也!」
「冬夜!」
勝也は僕の名前を叫ぶと、懐から銀色に光るものを取り出し襲い掛かってきた。
前に刺された時からこんなこともあろうかと、起こって欲しくなかったけど、備えはしていた。
半身で勝也の攻撃をかわし伸ばしてきた手を手刀で叩くと武器を落とす。
それを掴もうとする前に武器を蹴飛ばす。
殴りかかろうとする勝也の腕を掴んだのは愛莉パパだった。
「……うむ。心配してきてくれたんだね。ありがとう。……でも、娘の為にも無茶は控えて欲しい」
愛莉パパはそう言う間も、勝也の腕を離さない。
「梨衣!警察を呼びなさい!」
「その必要はありません、すでにうちの家内が通報してます」
そう言ったのは父さんだった。
父さんは転がってる武器を拾うと勝也を殴りつける。
「この馬鹿が!……遠坂さんにまで迷惑をかけて。すいません、うちの身内が馬鹿な真似を……」
「……大丈夫です。冬夜君が無事でよかった」
そのうちパトカーのサイレンが聞こえてきて、愛莉の家の前で止まり。警官が勝也の身を拘束し警察署へと連れて行った。
その晩事情聴取を受けることになった。
事情聴取は深夜まで続きつかれた僕を待っていたのは泣いて目元を腫らした愛莉の抱擁だった。
「冬夜君の馬鹿!また怪我したらどうするつもりだったの!?」
「一応対策はしてあったよ」
僕は上着をめくると腹の部分に漫画雑誌が挟んであった。
「気休めにはなるだろ?」
そう言って笑うも、愛莉を怒らせることになったらしい。
ぽかっ
「そんなの何の気休めにもなんないよ!もしもの事があったら私……」
僕の胸で泣きじゃくる愛莉の頭をそっと撫でてやる。
「ごめんな、危険な目に巻き込んで」
「冬夜君のせいじゃないもん」
「そうだな、愛莉ちゃん、すまなかった。こうなったのももっと早く手を打てなかったおじさん達の責任だ……ごめんね」
「いえ、大丈夫です。パパさんたちも『片桐さん達の責任じゃないから気にしないでくれ』と言ってました」
その後勝也は警察から警告を受けることになり、また誓約書を交わされた。
暴行事件もあったので逮捕されそうになったのだけど、井上家が弁護士を通じて片桐・遠坂両家と示談をし「今後一切関わらない」という誓約書の元今回は釈放となった。
その際の費用は全部祖母がだしたらしい。
この件はこれで終わったかのように思えた。何せ勝也は地元に近寄ることすらできないのだから。
「トーヤも良く事件に巻き込まれるな……巻き込んだ私がいうのもなんだけど」
カンナがそう言った。
愛莉や、神奈のようなきれいな女性と関わっている以上仕方のない事なのかもしれない。が、その事は黙っておいた。言えば彼女たちに負い目を負わせることになるから。
ただでさえ……
「冬夜君私のせいだよね……」と、この始末。
愛莉の頭を撫でてやる。
「大丈夫だよ、もう済んだ事だし」
「でも、またあるかもしれないよ?」
「その時も守ってやるさ、どこへでも駆けつけてやるから」
「ずっと一緒だったら駆け付ける必要ないよ?」
そうだったな。
「でも片桐君すごいですね。そんな目に何度もあって平気でいられるとは」
「イッシー調子に乗せちゃだめよ。また武勇伝くらいにしか思ってないんだから」
江口さんの辛辣な一言が突き刺さる。
「片桐君ももうすこし愛莉ちゃんの気持ちを分かってあげてね。前みたいに自分のせいでもしもの事があったらきっとずっと自分を責め続けると思う」
「分かってるよ」
「そう言えば今日酒井君いませんね?」
石原君が話題を変える。
「そうなんですよ、急にお休みとっちゃって。志水さんも来てないしどうしたんだろう?」
「きっと二人で何かやってるんだよ」
僕がそういうと「そうですよね」と皆が言う。
付き合ってるんだもの、デートの一つくらいするさ。
その時は簡単に考えていた。
短日の夜は早く来る。
そして夜明けが遅い。
彼らの夜明けもまだまだ時間を必要としていた。
師走。
冬の朝。
「冬夜君、冬夜君」
愛莉が体を揺すっている。今日は休みだゆっくりさせて。
「前に約束したよ!起きて起きて!」
約束?何かしたっけ?してたのなら起きないと愛莉拗ねちゃうな。
重い体を起こし愛莉に「どうしたの?」と聞く?
聞くよりも鼻が反応した。なんか香ばしい香り。
テーブルの上にある二つのマグカップが香りの正体のようだ。片方のマグカップにはコーヒー。もう片方にはカフェオレ。これと約束……繋がらない。
「忘れたの?マグカップ買った時に言ったよ?『二人でモーニングコーヒー飲もうよ』って」
ああ、言ってたねそんな事。
でもなんで態々部屋で?ダイニングでいいじゃないか?と思いながら座ると愛莉がくっつく様に隣に座る。寄り添い合って肩を並べて座る二人。
「こういう気分も悪くないでしょ?」と、愛莉が笑顔で言う。
いつもより香りが強く飲んでみるといつもと味が違う。愛莉の顔を見ると「美味しい?」と首を傾げて言う。
「今日は豆から挽いてみました。初挑戦だったんだけど……」
「美味しいよ、上手にできたんだね」
「わ~い」
そりゃ喫茶店のコーヒーの方が美味しいけど、愛莉の喜ぶ顔がみれるなら、どんなコーヒーよりも美味しいと言えるよ。
「ご飯用意してあるよ」
コーヒーが飲み終わった頃愛莉が言う。
僕達は部屋を出た。
「あら?冬夜。今日は休みなのに……最近起きるの早いわね」
母さんが、不思議そうに聞いてくる。苦情があるなら愛莉に言ってくれ。
「お前もやっぱりあれか、愛莉ちゃんには逆らえないか……」
そう言えば父さん前に言ってたな「俺の周りの男は皆女性に頭が上がらない」って……。
ご飯を食べ終えると愛莉が食器を片付ける。
愛莉の家事が一段落着くと部屋に戻った。
着替えを終え、愛莉の仕度が終わるのを待つと。外に出かける。
家にいると愛莉が、休みなく働き続けるから。あてもなく彷徨う。
北へ東へ南へ西へ。飽きがこない様に毎週コースを変えてる。
偶には買い物にも連れて行ってやったり、映画を楽しんだり、カラオケに行ったり。
とにかく週末は家にいない様に過ごしていた。
今日は……洗車の日らしい。
「車さんを労わってあげないと」という愛莉の愛情あふれる言葉を有難く受け取っていた。
いつものSSに向かうと「いらっしゃい」と迎えてくれた。
いつもと違うのは今日は僕の車じゃなく愛莉の車で来てる事だった。偶には毎日のように酷使してる愛莉の車も労わってあげないといけないと思ったから。
毎月一回は愛莉の車を洗車してる。
「ところで冬夜君スタッドレスタイヤにそろそろ履き替えておいた方がいいんじゃないか?」
店員がそう言った。
「すたっどれすたいや?」
愛莉が首を傾げると、僕が説明する。
「これから雪が降るかもしれないだろ?その時の為に冬用のタイヤに履き替えた方がいいんじゃないか?って事だよ」
「なるほど~」
愛莉は頷いた。
「でも地元ってそんなに積もらないですよね」
「積もってから履き替えてたんじゃ遅いだろ?2月ごろには良く降るから今から履き替えておいても遅くはないよ。慣らし運転も必要だしね」
僕は悩んだ末、まだいいやって結論に至った。雪道を舐めていたのかもしれない。
洗車が終わるショッピングモールでお買い物。
主に僕の冬用の服。
コート一着あればいいと思うんだけどね。愛莉は次々と服を選んでは僕に当てて悩み、そして買っていた。
買い物が終わり帰ろうとすると愛莉が「コーヒーでも飲んで待ってて、私ちょっと見たいものがあるから」と言う。
「僕も行こうか?」
「う~ん、今回は一人で探したいの」
「わかった。そこのコーヒーショップで待ってるから」
「うん」
そして一人でコーヒーを飲みながら愛莉を待っていた。
店内を見渡す。仕事をしている人、読書をしている人、友達とわいわいやってるひと、様々な人がいる。僕はどのように映っているのだろう?
外を見渡せば学生から主婦まで様々な人が買い物に来ている。
その時とある二人組に目に止まった。女子高生らしき制服を着ていた。一人は嬉しそうにラッピングされた小箱を持っている。誰かにプレゼントするのだろうか?
プレゼント?
あ、そうか来週は僕の誕生日か。愛莉はプレゼントを選んでくれているのかな?
その日が来るまでの楽しみにしているとしよう。
特別な日くらい泊ってこいと言われたっけ?
……僕の誕生日だし、自分で泊る場所探すのもおかしな話かな?
まあ、平日だし大丈夫だろ……。
暫くすると愛莉が戻ってきた。何も持っていない。恐らくバッグの中にしまってあるんだろう。何を買ったのかは敢えて聞かない。
「買い物終わった?」
「うん」
「じゃ、何か食べて帰ろうか?」
「うん」
そうしてショッピングモールで食事をして帰った。
(2)
今日も常連客が席を占拠してる。
奥の席では片桐君達と大島さん達が和やかに談笑してる。
カウンターには、中島君と志水さんが座っていた。
中島君は一ノ瀬さんと穏やかなムードを作っている。
志水さんは相変わらず無言で僕を見つめている。
何が狙いなのかさっぱりわからない。目を合わせたら終わる。それだけは確かに言えることだった。
「そろそろ帰るわ」
志水さんはそう言うと席を立つ。
会計を済ませて颯爽と立ち去る。
志水さんが店を出た後中島君が話しかけてきた。
「で、どうなんだ善幸達は、あれから上手く言ってるのか?」
あれからというのは前回夢吊大橋に行った時に付き合うと宣言した時の話。
「何もないけど」
何もないから不気味で不安が増す。何をしでかすつもりなのやら。
「何も無いって……。お前それダメだろ」
「酒井君、こう言っちゃなんですけど女性の気持ち考えなさすぎです」
君が言うとすごく説得力があるよ、一ノ瀬さん。でもね、僕としては君の時の様に勝手に幻滅されて付き合ってるという事実が消滅してしまうのを願っているんだよ。
「まあ、付き合ってから半月ほどしか経ってないし」
「半月”も”ですよ!少しはデートに誘うとかしたほうがいいですよ」
「デートなら毎日してるようなものでしょう?」
「お食事に誘うとかそういう素振り見せても良いと思うんですけど」
多分自分がして欲しかったんであろう願望を要求してくる一ノ瀬さん。
「そういう君達はどうしてるんだい?」
そういう願望を中島君は満たしてくれてるのかい?中島君も部活で忙しくてそれどころじゃないと思うんだけどね。
「中島さんはしてくれてますよ。デートしてくれたり家でまったりすごしたり……」
さすがイケメンはやることが早いね。早くもお泊りですか?
「そうなんだ、良かったね。でもそれは一般論であって僕たちのケースには当てはまらないと思うんだ」
「どういう意味ですか?」
言葉に詰まった。ここで「付き合えと言われて嫌々付き合ってます」と素直に打ち明けられたらどんなに清々しい気持ちになれただろう?
しかしそこまで僕の心臓はタフにできていない。散々罵られた挙句、情報は直ちにグループ内に伝わって針の筵に包まれる未来が見えるのでやりたくない。
「いやあ、彼女の場合彼女から要求してくるでしょう」
そう、あれだけがっついていたんだから、付き合ってるという既成事実が生じたならば、もっと押しがあってもいいはずなのにそれが無い。それが不気味で仕方なかった。
「志水さんも待っているかもしれませんよ、こういう時動くのは男性からでしょう」
一ノ瀬さんの言うことは一般論だろう。間違ってはいないと思う。「僕が志水さんの事を好き」という前提があればだけど。
「どうしたんだ?善幸。ひょっとして女性と付き合ったことないのか?」
「前にも言ったと思うけどあるよ。高校生の時に一年間だけ」
「だったらどうして。今時高校生だってもっとましな交際するぜ?」
ここは適当に濁して、受け流した方が良いのか……。
「まあ、今度機会があったら誘ってみるよ」
「機会があったらじゃない、今だよ!」
一ノ瀬さん押しが強いな。自分たちが上手くいってるから僕達にも上手くいって欲しい。そんな自己欲求の為に僕達を利用しないで欲しいものだけど。
「こういう時こそ『渡辺班』だよね!。中島さん」
ちょ、ちょっと待ってあの人たちに言ったら……!
遅かった。電光石火の如く中島君は渡辺班を通して志水さんに、僕の偽りの意思を伝える。
そして反応も神速で帰ってきて今月24日にデートすることが決まってしまった。
「場所は私が指定させてもらうわ」
後でスマホを確認したら。そんな内容のメッセージが入っていた。
(3)
タワーホテルの21階。
窓際のテーブル席で夜景を楽しみながらフレンチのディナー。
今日は冬夜君の誕生日。私から冬夜君へのプレゼント。
とても素敵な眺め。
来年もまた来ようね。来年はお酒飲めるね。私ここで冬夜君とカクテルを飲むのが夢なの。
デザートが出た後冬夜君にプレゼントを渡す。
有名ブランドの財布を渡した。
大学になって財布を変えたけど、結局冬夜君自分で買ってたしね。
財布をプレゼントする意味って知ってる?
「いつでもあなたと一緒にいたい、いつでも私を側に置いて大事にしてね」って意味なんだよ。
気に入ってもらえると良いな。
ディナーを楽しんだ後は部屋で寛ぐ。シャワーを浴びてからベッドの上でじゃれあう二人。
じゃれ合いはいちゃつきに変わりそして……大切な一夜を過ごす。
何年も同じことを繰り返して来たけど。同じことを繰り返せることに幸せを覚え喜びを感じる。
私達、成長してきたけど気持ちだけは変わらないでいたいね。
これ以上の事は望まないから。今のままの冬夜君でいてくれるだけでも嬉しいから。
真夜中に冬の空を眺める。
星が綺麗。
夜空を眺めながら、冬夜君の腕の中で眠っていた。
翌日の朝。
目覚めると冬夜君の寝息が聞こえてくる。
毎日の事だけど、安心するの。
今日はゆっくり寝させてあげようかな?
でもモーニングが待ってるね。
「冬夜君、朝ごはん終わっちゃうよ」
朝ごはんの言葉に反応して冬夜君は目が覚める。
私達は着替えるとレストランに向かう。
そして朝食を終えると部屋に戻ってチェックアウトの時間まで景色を眺めながら話をする。
チェックアウトを済ませると折角だからと街中を散策する。
お昼も街中で済ませて、お店を見て回って。夕食も外で済ませて帰る。
帰ると言っても冬夜君の家にお泊りだけど。
家に入ると麻耶さんが私を呼んでいた。
どうしたんだろう?
「なんかお友達が家に来ているそうよ。ただ……」
ただ?
「なんか様子がおかしいそうなの。今まであったことのない人なんだってとりあえず戻ってみたら?」
胸騒ぎがする。
冬夜君も訝し気に話を聞いてる。
「僕もついて行こうか?」
冬夜君がそう言った。
「ううん、大丈夫。すぐ戻ってくるから」
そう言って一先ず帰る。
帰るとリビングにどこかで見覚えのある男の人が座ってる。
「愛莉ちゃんおかえりなさい。麻耶さんから聞いたの?お客さんよ~」
りえちゃんの話を聞きながら背筋が凍り付いた。
私の名前に反応したその男はゆっくりと立ち上がるとこっちを振り向いた。
そのにやけた顔覚えてる。たった一度しか、ほんの一瞬しかみてないけど。
「お久しぶり愛莉ちゃん……」
「帰って!!」
私はありったけの力を込めて叫んでいた。
精一杯の怒りを込めて。
こんなに怒鳴ったのは中2の時以来かな。
怒りで涙がこぼれていた。
「どうしたの?愛莉ちゃんそんなに怒って」
家で怒鳴ったのは初めてかな?
りえちゃんは驚いたのか緊張しているのかいつもののんびりとした口調じゃなくなっていた。
「この人前に話した人!冬夜君の従兄の勝也さん」
そう言うとリビングにいたパパさんが勝也さんの首を掴む。
「……ふむ、どうやら招かざる客人のようだったね。……お引き取り願おうか」
パパさんはそう言うと勝也さんを玄関まで引きずり外に引きずり出す。
開いた扉の隙間に足を入れ閉めさせまいと抵抗する勝也さん。
その抵抗が突然止んだ。
「冬夜!!」
その言葉を聞いて慌てて外に飛び出そうとした。しかしパパさんに止められた。
「……愛莉は中で待ってなさい。パパがいくから」
そう言ってパパさんが外に飛び出した。
嫌な予感がする。あまりにも突然の出来事に足が震える。
「愛莉ちゃん、大丈夫よ。パパさんがいるから」
りえちゃんがそう言って私の肩を抱いた。
冬夜君、無茶はしないでね。
(4)
嫌な予感がした。
一度は部屋に帰って財布の中身を愛莉にもらった財布に移す作業をしていたけど……やっぱり気になる。
「母さん、僕も愛莉の家に行ってくる」
そう言って家を飛び出した。
愛莉の家に着くと呼び鈴を鳴らそうとする。
すると勝手にドアが開いて男が放り出された。
反射的にそれを交わす。
転がった男はゆっくりと立ち上がった。その男は……勝也だった。
「勝也!」
「冬夜!」
勝也は僕の名前を叫ぶと、懐から銀色に光るものを取り出し襲い掛かってきた。
前に刺された時からこんなこともあろうかと、起こって欲しくなかったけど、備えはしていた。
半身で勝也の攻撃をかわし伸ばしてきた手を手刀で叩くと武器を落とす。
それを掴もうとする前に武器を蹴飛ばす。
殴りかかろうとする勝也の腕を掴んだのは愛莉パパだった。
「……うむ。心配してきてくれたんだね。ありがとう。……でも、娘の為にも無茶は控えて欲しい」
愛莉パパはそう言う間も、勝也の腕を離さない。
「梨衣!警察を呼びなさい!」
「その必要はありません、すでにうちの家内が通報してます」
そう言ったのは父さんだった。
父さんは転がってる武器を拾うと勝也を殴りつける。
「この馬鹿が!……遠坂さんにまで迷惑をかけて。すいません、うちの身内が馬鹿な真似を……」
「……大丈夫です。冬夜君が無事でよかった」
そのうちパトカーのサイレンが聞こえてきて、愛莉の家の前で止まり。警官が勝也の身を拘束し警察署へと連れて行った。
その晩事情聴取を受けることになった。
事情聴取は深夜まで続きつかれた僕を待っていたのは泣いて目元を腫らした愛莉の抱擁だった。
「冬夜君の馬鹿!また怪我したらどうするつもりだったの!?」
「一応対策はしてあったよ」
僕は上着をめくると腹の部分に漫画雑誌が挟んであった。
「気休めにはなるだろ?」
そう言って笑うも、愛莉を怒らせることになったらしい。
ぽかっ
「そんなの何の気休めにもなんないよ!もしもの事があったら私……」
僕の胸で泣きじゃくる愛莉の頭をそっと撫でてやる。
「ごめんな、危険な目に巻き込んで」
「冬夜君のせいじゃないもん」
「そうだな、愛莉ちゃん、すまなかった。こうなったのももっと早く手を打てなかったおじさん達の責任だ……ごめんね」
「いえ、大丈夫です。パパさんたちも『片桐さん達の責任じゃないから気にしないでくれ』と言ってました」
その後勝也は警察から警告を受けることになり、また誓約書を交わされた。
暴行事件もあったので逮捕されそうになったのだけど、井上家が弁護士を通じて片桐・遠坂両家と示談をし「今後一切関わらない」という誓約書の元今回は釈放となった。
その際の費用は全部祖母がだしたらしい。
この件はこれで終わったかのように思えた。何せ勝也は地元に近寄ることすらできないのだから。
「トーヤも良く事件に巻き込まれるな……巻き込んだ私がいうのもなんだけど」
カンナがそう言った。
愛莉や、神奈のようなきれいな女性と関わっている以上仕方のない事なのかもしれない。が、その事は黙っておいた。言えば彼女たちに負い目を負わせることになるから。
ただでさえ……
「冬夜君私のせいだよね……」と、この始末。
愛莉の頭を撫でてやる。
「大丈夫だよ、もう済んだ事だし」
「でも、またあるかもしれないよ?」
「その時も守ってやるさ、どこへでも駆けつけてやるから」
「ずっと一緒だったら駆け付ける必要ないよ?」
そうだったな。
「でも片桐君すごいですね。そんな目に何度もあって平気でいられるとは」
「イッシー調子に乗せちゃだめよ。また武勇伝くらいにしか思ってないんだから」
江口さんの辛辣な一言が突き刺さる。
「片桐君ももうすこし愛莉ちゃんの気持ちを分かってあげてね。前みたいに自分のせいでもしもの事があったらきっとずっと自分を責め続けると思う」
「分かってるよ」
「そう言えば今日酒井君いませんね?」
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「そうなんですよ、急にお休みとっちゃって。志水さんも来てないしどうしたんだろう?」
「きっと二人で何かやってるんだよ」
僕がそういうと「そうですよね」と皆が言う。
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短日の夜は早く来る。
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