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3rdSEASON
冬の夜
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(1)
「おはよう冬夜君」
愛莉の優しい声で僕は目を覚ましたはずなのだが、愛莉はまだ静かに眠っている。
ベッドの側にある時計を見れば、もう9時を回っている。
昨日アラームセット忘れてたかな?昨夜は遅かったせいなのか日頃の疲れがたまっていたのか分からないけど愛莉は眠っている。
ならばこのまま寝させておいてやろう。
愛莉は僕にしっかりしがみ付いて眠っている。うかつに動いたら起こしてしまいそうなので姿勢を維持したまま、ただ愛莉を見つめてみる。
昨夜は……その凄かった。
僕の世界は愛莉の暖かな色に染められ、とても心地よい快楽を得ることができた。これ以上にいい気分になんてなれるのかってくらい。
愛莉はやはり意識していたのだろうか?僕が風俗に興味があると言った事を。
隠していた方が良かったのかもしれない。でも愛莉に隠し事はしたくない、嘘はつきたくない。
だから正直に愛莉に話した。案の定愛莉は怒った。でも愛莉は言ってくれた。
「してほしい事があるなら私に言って。私がしてあげるから」
怒っていたのかもしれない、でも愛莉の切望なのかもしれない、正直アブノーマルというものに興味はない。ただ純粋にどんなものなのか興味があっただけ。
行きたいとか思ったこともない。これからも思うことは無いだろう。愛莉がそばにいてくれる限り。
寒さ厳しいけど穏やかな冬の朝。柔らかな寝顔の愛莉が僕の胸の中で眠っている。こんな歳暮もいいのかもしれない。
「ん……」
愛莉が声を出し僕を強く抱きしめる。僕はそっと愛莉を抱き返してやる。
これで両手は塞がった。できることはただ愛莉を眺めている事。いつまでも見ていても飽きないその穏やかな寝顔。
愛莉の夢の中に僕はいるのだろうか?確かめてみたい。愛莉の心の中を覗けるなら覗いてみたい。いや、覗けなくてもいいか。
想いだけでもと念じる。……無理に入り込んでしまったみたいだ。
愛莉は眠そうな瞼を開ければ僕は出来る限り優しい声で「おはよう」と声をかければ、少し恥ずかしそうに「おはよう」と返す愛莉。
今更恥ずかしがることは無いだろうと、キスをしてやると愛莉は僕にしがみ付く。
「起きてるなら起こしてくれたらいいのに」
「いつも早起きで疲れてるだろ?昨夜も遅かったし……」
昨夜、という言葉に愛莉は反応する。顔を紅潮させ僕の胸をぽかぽかと叩く。
「冬夜君の意地悪~」
何が意地悪なのか分からないけどそんな愛莉の頭を撫でてやる。愛莉はうっとりして僕の胸に顔をうずめる。
そして何か気づいたかのように顔を上げると僕から離れる。ベッドを抜け出し服を着る愛莉。
「朝食の準備しなくちゃ」と慌てる愛莉。
慌てる必要はないんだよ、今日はゆっくりさせてやるからな。着替え終えた愛莉に抱き着く。
「今から食べるならお昼ファストフード店で何か買って来よう?今日は愛莉の休業日だ」
「でもお洗濯溜まってるし……」
「じゃあ、それはお昼から」
「私夢見てないよね?あんなに酷かった冬夜君が凄く優しい」
僕は愛莉にもう一度キスをする。
「夢じゃないだろ?」
「うん、でも洗濯だけは午前中に済ませちゃうね!ゆっくりするなら昼からゆっくりしたいし」
「わかったよ」
「冬夜君も洗濯物洗濯機に入れちゃってね」
愛莉はそう言うと部屋を出て行った。
とりあえず、散らばった着替えを集める、……愛莉の下着なんかも散乱してた。下着ってなんかネットに入れるんだっけ?
着替えと一緒に脱衣所にいる愛莉に持って行く。
「これどうする?そのまま入れる?」
愛莉は自分の下着を見ると顔を真っ赤にする。
「それは洗濯ネットに入れるから置いておいて」と僕から取り上げる
洗濯機のセットが終われば、部屋に戻りテレビを見る。
後から愛莉がマグカップを持って部屋に入ってくる。
「コーヒーくらいは飲むでしょ?」
「ありがとう」
二人寄り添って一緒にモーニングコーヒーを飲見ながらテレビを見る。
番組は正直なんでもよかった。
愛しさのあまりそっと抱き寄せる。
愛莉もその行為に甘んじて僕に寄りそう。
愛莉の事だけを考えろ。その言葉通り愛莉の事だけを思う。とても優しい世界。いるととても心地よく眠ってしまいそうなほど。寝たらだめだけど。そんな事を考えていると愛莉とふと目が合う。
愛莉も同じ気持ちだったの?愛莉は僕を見ると微笑む。午前中は優しい時間で溢れていた。
「そ、そろそろ洗濯物取り出さなくちゃ」
愛莉はそう言って僕から離れる。
「続きはまた午後ね」
そう言うと愛莉は、部屋を出ていく。もう少し楽しみたかったな。でも、また午後ねって言ってた。楽しみは後にとっておこう。
(2)
昼まで寝ていた。
起きるとかずさんがいない。
キッチンに向かうとかずさんが忙しなく動いている。
オムライスを作っているようだ。
慣れない手つきで一生懸命卵をひっくり返そうとするかずさん。見るに見かねて私は手伝ってあげた。
皿を片手に持ちもう片方でフライパンを持つと皿にひっくり返す。あら不思議、誰でも作れるとろふわオムライスの出来上がり。
「花菜は料理上手いんですね」
「慣れたら誰でもできますよ」
いつの間にか、花菜さんから花菜に呼び方が変わってる。
それは嫌ではなかった、むしろ喜びを感じていた。
二人分のオムライスを作るとオムライスの上にケチャップをかけて仕上げる。
テーブルに皿を並べると二人して食べた。
とても美味しい。
「かずさんも料理上手いですね」
「ありがとう、でもね花菜……」
どうしたんだろう?
「花菜も僕の事かずって呼び捨てで構いませんよ」
嬉しかったけどその申し出は断った。
「ごめんなさい、まだかずさんの方が呼びやすくて」
「そうですか……」
かずさんは落胆していた。
励ますかのように私は言葉を付け足す。
「でも、気持ちは嬉しいです。本当に嬉しいんです。でも呼び捨てだとなんか照れくさくて」
「呼びやすい方で構いませんよ」
その一言にどれだけ救われる事か。
「ところで花菜、連休なんだけど……」
話は突然変わる。
「年明けにミュージカルがあってですね。チケットを2枚手配したんですけど一緒に見に行きませんか?」
「ミュージカルとか興味あるんですか?」
因みに私は観たことが無い。
「僕も初めてなんですけど、テレビで宣伝していて気になってしまってそれで前売り券買ってみたんですけど」
「かずさんがいいなら、私はどこでもいきますよ」
「ありがとうございます」
「それと私からも二つばかり提案いいですか?」
「はい、なんでしょう?」
かずさんの表情がちょっと不安っぽいかった。
「まず年越しは一緒にすごしたいです。家でも初詣でもいいから。二人っきりで」
「わかりました」
「それともう一つ、私の前では緊張しないで欲しいです。その……敬語無しで話しませんか?私も気をつけるから」
前から気になっていた事、どうも他人行儀に聞こえてしまって。前に言ってたよね?「彼女と一緒だと演じている自分に疲れてしまう」って……。ならば少しずつでもいいから直して欲しい。
かずさんは少し考えるそぶりを見せた。そして「わかった」と言ってくれた。
「僕も要求したからね。そのくらいはするよ」
「ありがとう」
その後オムライスを食べて、片づけをすると、お互い出かける準備をする。
「偶には映画でも見に行かない。ちょうど見たい映画があって」
「かずさんがいいならそれでいいよ」
「じゃあ、駅ビルに行こう。ついでに買い物とか夕食も楽しめるし」
「はい」
そうしてかずさんの車で駅ビルに出かけた。
見たい映画と言うのは特撮映画をアニメ化したもの、かずさんアニメ好きなのかな?
映画が終わるとかずさんに聞いてみた。
「かずさん、アニメとか好きなの?」
「うん、結構好きなんだ。音の形とか、世界の片隅でとかも見たよ。後者はヒロインの声優が気になってね」
かずさんが言うのは多分今ドラマでやっているやつだ。ちなみにドラマは見てないらしい。幻滅するからと苦笑していた。
かずさんの好きなアニメは地元では休日の朝早くからやっているアニメ。あとはネットで見るらしい。
休日のアニメの話題で盛り上がった。盛り上がっているのは私だけだったけど、かずさんはちゃんと話を聞いてくれてた。
「おたがい共通の趣味があるっていいね」
かずさんがそう言ってくれてホッとした。
その後買い物をしたり、夕食を食べたりして時間を潰した。定番のデートだけどそれで十分だった。
「今日は泊まっていくの?」
帰りにかずさんに聞いてみた。
「明日は朝練があるから帰るよ」
そっか、ちょっと残念かな。
「また暇ができたら泊まりに行くよ」
「でも4年生になったら暇無くなるんじゃ……」
「就活は夜はないよ。卒論もきっちりこなせるから」
彼はそう言って笑う。
「無理しないでね」
「ありがとう、心配してくれて」
車は私のアパートの前に着いた。
「それじゃ、また。今日はありがとう」
「恋人なら当たり前だよ。私こそありがとう」
そう言うと彼の車は夜の闇に消えて行った。
一人寒い部屋に戻る。
それから、部屋着に着替えてシャワーを浴びるとメッセージが。
「新年会の段取り付けたいから希望の日を言ってくれ」
渡辺班からのメッセージだった。
「元旦以外ならいつでもいいよ」と返した。
すぐに了解のスタンプが押されてくる。
皆も同じ返事だったらしい。渡辺君的には美嘉さんの休みの日である3が日のうちにしたかったんだろう。
1月3日に決まった。
そのあと別グルからメッセージが。
「1月5日予定空けておいてくれ。第2回女子会やろうぜ!」
女子会という安直なグループ名のグループだった。皆渡辺班の女性メンバーでそれぞれが不満や愚痴。たまにのろけ話をしているグループ。
「了解」とメッセージを送っておいた。
その後またメッセージが。
「初詣どこか希望在りますか?」
かずさんからのメッセージだった。どこでもいいと言ったら彼困るだろうな。
「宇佐神宮なんてどうですか?」
「わかりました。じゃあ、そのつもりで予定空けておきます」
楽しみだな。かずさんと同じ未来とずっと一緒に見ていたい。
かずさんの描く未来にどうか私がいますように。
(3)
~♪
スマホが鳴る。
時計を見ると23時半。
いくら休みとは言えこんな時間に何考えてるんだ。取りあえず電話に出る
「ああ、亜依。僕だけど」
「知ってるよ、どうしたの?こんな時間に……」
桐谷瑛大。電話を掛けた張本人。私の恋人だけど、度々問題を起こしては破局寸前に追い込まれてる。その度に渡辺班の招集がかかり、乗り越えてきたんだけど。今日もまた問題を起こしに来たのか?
「実は今亜依の家の前にいるんだけど……」
瑛大から私の家に来る?
あ、私の名前は指原亜依。
地元大看護学科に通う1年生。瑛大と付き合って3年が過ぎようとしている。
現在はキャンパス近くのアパートを借りて一人暮らしをやっている。親の仕送りとバイトでやりくりしている。
で、今私の彼氏である瑛大がアパートの前に来ているらしい。
良く聞くと彼の車特有のエンジン音が聞こえてくる。
某漫画の影響だろうが黄色い派手な車が窓から見える。
「……今から準備するから。ちょっと待ってろ」
そう言うと着替えて、少しだけ化粧をして準備をする。
そうして部屋を出て瑛大の車に乗り込むと……やかましい。某漫画アニメの影響だろう。大音量のユーロビートが流れている。
「五月蠅い!少し音量下げろ!」
「これ聴いてると運転もテンション上がるし、眠気も飛ぶんだけどなぁ~」
そう言いながらも音量を下げる瑛大。正直瑛大の車でドライブするのは怖くてしょうがない。馬鹿みたいにスピードを出す。サスペンションが硬い為ちょっとした段差でも跳ねる。腰が痛くなる。
あとは……運転は下手ではないけど上手でもない。加えてスピードを出すから乗ってる方は怖くてしょうがない。まだ心中はしたくないぞ。
そんなことお構いなしに彼はマイペースで運転をする。少しは彼女を乗せてるという意識を持って欲しいのだけど。まあ、デートに誘われただけましか。思うと瑛大からデートの誘いが来たことが殆どない。この前の罪滅ぼしのつもりなのだろうか?
この前と言うのは瑛大がキャバクラに行ったという事実が発覚した時。私は別れると言った。渡辺班の説得で今回だけは許したものの。付き合いだから仕方ないとは言うものの、やっぱり許せるほど心のキャパシティが無い。
それから瑛大は日中夜間問わず電話をするようになった。どうでもいい事、私が好きだと連呼する事。私の愚痴を聞いてくれること。少しずつ仲を修復しようとするのは感じた。
でもまさか深夜にデートの誘いがくるとは思わなかった。もっともデートと言ってもただのドライブだけど。ドライブだけなら私の車の方が良い。しかしここは彼の好意に甘えることにした。余計なもめ事は嫌だから……。
相変わらずの口調で言葉を連ねていく瑛大。車は海へ山へと忙しなく走る。ダウンヒルを試みようとすれば、ぱかっと頭を叩いて注意する。
「冬夜だってやってるよ!」
知ってるよ。片桐君の運転技術も愛莉から聞いた。でもお前は違うだろと遠回しに言ってみせた。
途中のカーブに車を止め物凄い勢いで坂を下りていく車を見ている二人。
そんな運転技術に憧れを持つ瑛大は羨望のまなざしで見ているが、私は興味が無く車の中で仮眠をする。
海辺のファミレスに着いたところで瑛大に起こされる。
時計は6時半を回っていた。
「もうじきだよ」
何がだ?そんな疑問も時間が過ぎれば晴れた。朝陽が差しこんでくる。日の出を待っていたんだな。
「綺麗だろ?」
「うん……」
冬の冷たい夜もいつかは夜明けがくる。そう言いたかったの?私たちの夜に夜明けがくるの?
どんな日でも夜は訪れる、けれどいつか夜明けは来る。彼なりの気持ちを受け取る私。
自然と涙がこぼれてくる。
「亜依?」
そんな私を不安気に見る瑛大。
「大丈夫」
私がそう言うと瑛大は「今までごめんね。そしてありがとう……」と言った。
ハンカチで涙を拭い立て直すと「折角だし朝食食べて帰ろうか?」と瑛大に言う。ファミレスでモーニングを食べて家に帰った。
家に帰ると、そのまま帰ろうとする瑛大を止めた。「少し家で休んでいけ」と私が言うと、瑛大は素直に従った。
どんなに暗い冬の夜でもいつかきっと夜明けは来る。これまでもそうだった。これからもきっとそうだろう。
瑛大は、私のベッドで眠っている。私はインスタントコーヒーを入れると一人でテレビを見ていた。
いつの間にか眠っていたようで、起きると私に布団がかけられそして書置きが。
また今度大晦日にくるよ、一緒に初詣しよう。と……。
瑛大の車の様にわずかなでこぼこ道も感じ取り、左へ横へと揺さぶられる道を行く。
それでも私たちはいつか辿り着くだろう終着点へと目指して歩み続けている。
まだ冬に入ったばかりで寒いけどそれでも、日が差し込めば暖かな光が私達を照らしているようだった。
(4)
夕方になると冬夜君と買い物に出かける。今晩は、何にしようかな?
「冬夜君食べたいものない?」
私が冬夜君に聞くと冬夜君はしばし考え込んでいた。そんなに難しい質問したかな?
「何でもいい?」
「いいよ」
それでも冬夜君が躊躇っている。そんなに難しいものを注文するつもりだろうか?冬夜君の好みが知りたいしこの際どんな注文でもうけてあげるつもりだけど。
「じゃあ……豚肉と白菜のミルフィーユ」
ほえ?
「いや、偶には鍋もいいんじゃないかなと思って……」
一つの鍋を二人でつつく。そんなのもいいんじゃないか?と、冬夜君は言う。寒い夜に暖まるしねと一言添えて。
「わかった。じゃあ、それにするね」
献立が決まれば買う材料は決まってる。スマホでレシピを見ながら材料を品定めしていく。偶に冬夜君が余計なお菓子やカップラーメンを忍ばせようとするが、それを元の棚に戻して冬夜君を叱る。ジュースくらいは許してあげよう。
買い物が終われば真っ直ぐに家に帰る。家に帰ると私はキッチンに向かう。冬夜君も手伝うというけど、冬夜君は料理はあまり得意ではないみたいだから「じゃあ、テーブルでも拭いてて」と布巾を渡す。
レシピを見ながら料理をしていく。締めには雑炊が良いらしいのでご飯を炊く。
良い匂いが部屋に立ち込めれば、テレビを見ていた冬夜君も反応する。
カセットコンロをテーブルに置きその上に鍋を置いて、出来上がり。
冬夜君と一緒に鍋をつつく。大量の白菜をポン酢につけて食べる冬夜君。
「お肉もたくさんあるから食べてね」
そういうと、冬夜君はその言葉を待っていたかのように瞬く間に豚肉をたいらげていく。大方食べ終わった頃鍋にご飯を投入して雑炊を作る。溶き卵を入れてはい完成。
何度もおかわりをしながら食べつくす冬夜君。美味しそうに食べてる冬夜君の姿を見れば作った甲斐があるというもので。食べ終わると片づけを始める。
「手伝うよ」と冬夜君は言うけど、その言葉だけでいいの。
「冬夜君は今のうちにお風呂に入っちゃって」
「……一緒に入らなくていいの?」
「うん、また一緒に温泉行こうね」
「分かった」
そう言って冬夜君は自分の部屋に着替えを取りに行ってお風呂に入る。その間に片づけを済ませて冬夜君がお風呂から上がる頃には、片づけが終わると今度は私がお風呂を頂く。お風呂から上がるとリビングに冬夜君の姿はなく部屋にもどると一人黙々と勉強してる冬夜君の姿が。テレビはついてあったけど殆ど見てない。
ぽかっ
「冬休みはのんびりしようって私が言って、冬夜君はいいよって言ったよね」
「だからゲームはしてないだろ。愛莉が戻ってくるまで暇だったんだよ」
「だからって私が戻ってきたのに気づかないってことは、また没頭してたってことだよね?」
「ま、まあそうなるかな?」
「約束破ったから、罰をあたえま~す」
「な、なんだよ……」
そう言いながらも冬夜君の顔には余裕すらうかがえる。もう期待してるんでしょ?予想ついてるんでしょ?そんな表情の冬夜君を見て私は彼の望んでいた言葉を口にした。
「今日は勉強禁止!私にかまって~」
そう言うと冬夜君に甘える。
「しかたないな」
本当は嫌じゃないくせに。知ってるんだよ?最近女性にも興味を持ちだしたこと。でも私以外の女性に甘えたらだめだからね。
買ってきたジュースを飲みながら、二人並んでテレビを見る。テレビの内容なんてどうでもいい。冬夜君とこうしている時間が大切なのだから。
その時メッセージが
「1月3日に渡辺班新年会やるぞ」とのメッセージ。
さらに「1月5日に女子会やろうぜ」と女子会のグループメッセが。
冬夜君に言うと「楽しんで来いよ」と一言。
「いいの?」って冬夜君に尋ねると冬夜君は自分のスマホ画面を私に見せる。
「女子だけで集まるみたいだし男性も集まって騒ごうぜ」と一言が。
「帰りの時間が分かれば迎えに行くよ」と冬夜君。
そういう事なら遠慮なく。
再びテレビを見る私達。
寒い冬の夜を暖かく過ごす私たち。
心も体も温まる、そんな一日だった。
「おはよう冬夜君」
愛莉の優しい声で僕は目を覚ましたはずなのだが、愛莉はまだ静かに眠っている。
ベッドの側にある時計を見れば、もう9時を回っている。
昨日アラームセット忘れてたかな?昨夜は遅かったせいなのか日頃の疲れがたまっていたのか分からないけど愛莉は眠っている。
ならばこのまま寝させておいてやろう。
愛莉は僕にしっかりしがみ付いて眠っている。うかつに動いたら起こしてしまいそうなので姿勢を維持したまま、ただ愛莉を見つめてみる。
昨夜は……その凄かった。
僕の世界は愛莉の暖かな色に染められ、とても心地よい快楽を得ることができた。これ以上にいい気分になんてなれるのかってくらい。
愛莉はやはり意識していたのだろうか?僕が風俗に興味があると言った事を。
隠していた方が良かったのかもしれない。でも愛莉に隠し事はしたくない、嘘はつきたくない。
だから正直に愛莉に話した。案の定愛莉は怒った。でも愛莉は言ってくれた。
「してほしい事があるなら私に言って。私がしてあげるから」
怒っていたのかもしれない、でも愛莉の切望なのかもしれない、正直アブノーマルというものに興味はない。ただ純粋にどんなものなのか興味があっただけ。
行きたいとか思ったこともない。これからも思うことは無いだろう。愛莉がそばにいてくれる限り。
寒さ厳しいけど穏やかな冬の朝。柔らかな寝顔の愛莉が僕の胸の中で眠っている。こんな歳暮もいいのかもしれない。
「ん……」
愛莉が声を出し僕を強く抱きしめる。僕はそっと愛莉を抱き返してやる。
これで両手は塞がった。できることはただ愛莉を眺めている事。いつまでも見ていても飽きないその穏やかな寝顔。
愛莉の夢の中に僕はいるのだろうか?確かめてみたい。愛莉の心の中を覗けるなら覗いてみたい。いや、覗けなくてもいいか。
想いだけでもと念じる。……無理に入り込んでしまったみたいだ。
愛莉は眠そうな瞼を開ければ僕は出来る限り優しい声で「おはよう」と声をかければ、少し恥ずかしそうに「おはよう」と返す愛莉。
今更恥ずかしがることは無いだろうと、キスをしてやると愛莉は僕にしがみ付く。
「起きてるなら起こしてくれたらいいのに」
「いつも早起きで疲れてるだろ?昨夜も遅かったし……」
昨夜、という言葉に愛莉は反応する。顔を紅潮させ僕の胸をぽかぽかと叩く。
「冬夜君の意地悪~」
何が意地悪なのか分からないけどそんな愛莉の頭を撫でてやる。愛莉はうっとりして僕の胸に顔をうずめる。
そして何か気づいたかのように顔を上げると僕から離れる。ベッドを抜け出し服を着る愛莉。
「朝食の準備しなくちゃ」と慌てる愛莉。
慌てる必要はないんだよ、今日はゆっくりさせてやるからな。着替え終えた愛莉に抱き着く。
「今から食べるならお昼ファストフード店で何か買って来よう?今日は愛莉の休業日だ」
「でもお洗濯溜まってるし……」
「じゃあ、それはお昼から」
「私夢見てないよね?あんなに酷かった冬夜君が凄く優しい」
僕は愛莉にもう一度キスをする。
「夢じゃないだろ?」
「うん、でも洗濯だけは午前中に済ませちゃうね!ゆっくりするなら昼からゆっくりしたいし」
「わかったよ」
「冬夜君も洗濯物洗濯機に入れちゃってね」
愛莉はそう言うと部屋を出て行った。
とりあえず、散らばった着替えを集める、……愛莉の下着なんかも散乱してた。下着ってなんかネットに入れるんだっけ?
着替えと一緒に脱衣所にいる愛莉に持って行く。
「これどうする?そのまま入れる?」
愛莉は自分の下着を見ると顔を真っ赤にする。
「それは洗濯ネットに入れるから置いておいて」と僕から取り上げる
洗濯機のセットが終われば、部屋に戻りテレビを見る。
後から愛莉がマグカップを持って部屋に入ってくる。
「コーヒーくらいは飲むでしょ?」
「ありがとう」
二人寄り添って一緒にモーニングコーヒーを飲見ながらテレビを見る。
番組は正直なんでもよかった。
愛しさのあまりそっと抱き寄せる。
愛莉もその行為に甘んじて僕に寄りそう。
愛莉の事だけを考えろ。その言葉通り愛莉の事だけを思う。とても優しい世界。いるととても心地よく眠ってしまいそうなほど。寝たらだめだけど。そんな事を考えていると愛莉とふと目が合う。
愛莉も同じ気持ちだったの?愛莉は僕を見ると微笑む。午前中は優しい時間で溢れていた。
「そ、そろそろ洗濯物取り出さなくちゃ」
愛莉はそう言って僕から離れる。
「続きはまた午後ね」
そう言うと愛莉は、部屋を出ていく。もう少し楽しみたかったな。でも、また午後ねって言ってた。楽しみは後にとっておこう。
(2)
昼まで寝ていた。
起きるとかずさんがいない。
キッチンに向かうとかずさんが忙しなく動いている。
オムライスを作っているようだ。
慣れない手つきで一生懸命卵をひっくり返そうとするかずさん。見るに見かねて私は手伝ってあげた。
皿を片手に持ちもう片方でフライパンを持つと皿にひっくり返す。あら不思議、誰でも作れるとろふわオムライスの出来上がり。
「花菜は料理上手いんですね」
「慣れたら誰でもできますよ」
いつの間にか、花菜さんから花菜に呼び方が変わってる。
それは嫌ではなかった、むしろ喜びを感じていた。
二人分のオムライスを作るとオムライスの上にケチャップをかけて仕上げる。
テーブルに皿を並べると二人して食べた。
とても美味しい。
「かずさんも料理上手いですね」
「ありがとう、でもね花菜……」
どうしたんだろう?
「花菜も僕の事かずって呼び捨てで構いませんよ」
嬉しかったけどその申し出は断った。
「ごめんなさい、まだかずさんの方が呼びやすくて」
「そうですか……」
かずさんは落胆していた。
励ますかのように私は言葉を付け足す。
「でも、気持ちは嬉しいです。本当に嬉しいんです。でも呼び捨てだとなんか照れくさくて」
「呼びやすい方で構いませんよ」
その一言にどれだけ救われる事か。
「ところで花菜、連休なんだけど……」
話は突然変わる。
「年明けにミュージカルがあってですね。チケットを2枚手配したんですけど一緒に見に行きませんか?」
「ミュージカルとか興味あるんですか?」
因みに私は観たことが無い。
「僕も初めてなんですけど、テレビで宣伝していて気になってしまってそれで前売り券買ってみたんですけど」
「かずさんがいいなら、私はどこでもいきますよ」
「ありがとうございます」
「それと私からも二つばかり提案いいですか?」
「はい、なんでしょう?」
かずさんの表情がちょっと不安っぽいかった。
「まず年越しは一緒にすごしたいです。家でも初詣でもいいから。二人っきりで」
「わかりました」
「それともう一つ、私の前では緊張しないで欲しいです。その……敬語無しで話しませんか?私も気をつけるから」
前から気になっていた事、どうも他人行儀に聞こえてしまって。前に言ってたよね?「彼女と一緒だと演じている自分に疲れてしまう」って……。ならば少しずつでもいいから直して欲しい。
かずさんは少し考えるそぶりを見せた。そして「わかった」と言ってくれた。
「僕も要求したからね。そのくらいはするよ」
「ありがとう」
その後オムライスを食べて、片づけをすると、お互い出かける準備をする。
「偶には映画でも見に行かない。ちょうど見たい映画があって」
「かずさんがいいならそれでいいよ」
「じゃあ、駅ビルに行こう。ついでに買い物とか夕食も楽しめるし」
「はい」
そうしてかずさんの車で駅ビルに出かけた。
見たい映画と言うのは特撮映画をアニメ化したもの、かずさんアニメ好きなのかな?
映画が終わるとかずさんに聞いてみた。
「かずさん、アニメとか好きなの?」
「うん、結構好きなんだ。音の形とか、世界の片隅でとかも見たよ。後者はヒロインの声優が気になってね」
かずさんが言うのは多分今ドラマでやっているやつだ。ちなみにドラマは見てないらしい。幻滅するからと苦笑していた。
かずさんの好きなアニメは地元では休日の朝早くからやっているアニメ。あとはネットで見るらしい。
休日のアニメの話題で盛り上がった。盛り上がっているのは私だけだったけど、かずさんはちゃんと話を聞いてくれてた。
「おたがい共通の趣味があるっていいね」
かずさんがそう言ってくれてホッとした。
その後買い物をしたり、夕食を食べたりして時間を潰した。定番のデートだけどそれで十分だった。
「今日は泊まっていくの?」
帰りにかずさんに聞いてみた。
「明日は朝練があるから帰るよ」
そっか、ちょっと残念かな。
「また暇ができたら泊まりに行くよ」
「でも4年生になったら暇無くなるんじゃ……」
「就活は夜はないよ。卒論もきっちりこなせるから」
彼はそう言って笑う。
「無理しないでね」
「ありがとう、心配してくれて」
車は私のアパートの前に着いた。
「それじゃ、また。今日はありがとう」
「恋人なら当たり前だよ。私こそありがとう」
そう言うと彼の車は夜の闇に消えて行った。
一人寒い部屋に戻る。
それから、部屋着に着替えてシャワーを浴びるとメッセージが。
「新年会の段取り付けたいから希望の日を言ってくれ」
渡辺班からのメッセージだった。
「元旦以外ならいつでもいいよ」と返した。
すぐに了解のスタンプが押されてくる。
皆も同じ返事だったらしい。渡辺君的には美嘉さんの休みの日である3が日のうちにしたかったんだろう。
1月3日に決まった。
そのあと別グルからメッセージが。
「1月5日予定空けておいてくれ。第2回女子会やろうぜ!」
女子会という安直なグループ名のグループだった。皆渡辺班の女性メンバーでそれぞれが不満や愚痴。たまにのろけ話をしているグループ。
「了解」とメッセージを送っておいた。
その後またメッセージが。
「初詣どこか希望在りますか?」
かずさんからのメッセージだった。どこでもいいと言ったら彼困るだろうな。
「宇佐神宮なんてどうですか?」
「わかりました。じゃあ、そのつもりで予定空けておきます」
楽しみだな。かずさんと同じ未来とずっと一緒に見ていたい。
かずさんの描く未来にどうか私がいますように。
(3)
~♪
スマホが鳴る。
時計を見ると23時半。
いくら休みとは言えこんな時間に何考えてるんだ。取りあえず電話に出る
「ああ、亜依。僕だけど」
「知ってるよ、どうしたの?こんな時間に……」
桐谷瑛大。電話を掛けた張本人。私の恋人だけど、度々問題を起こしては破局寸前に追い込まれてる。その度に渡辺班の招集がかかり、乗り越えてきたんだけど。今日もまた問題を起こしに来たのか?
「実は今亜依の家の前にいるんだけど……」
瑛大から私の家に来る?
あ、私の名前は指原亜依。
地元大看護学科に通う1年生。瑛大と付き合って3年が過ぎようとしている。
現在はキャンパス近くのアパートを借りて一人暮らしをやっている。親の仕送りとバイトでやりくりしている。
で、今私の彼氏である瑛大がアパートの前に来ているらしい。
良く聞くと彼の車特有のエンジン音が聞こえてくる。
某漫画の影響だろうが黄色い派手な車が窓から見える。
「……今から準備するから。ちょっと待ってろ」
そう言うと着替えて、少しだけ化粧をして準備をする。
そうして部屋を出て瑛大の車に乗り込むと……やかましい。某漫画アニメの影響だろう。大音量のユーロビートが流れている。
「五月蠅い!少し音量下げろ!」
「これ聴いてると運転もテンション上がるし、眠気も飛ぶんだけどなぁ~」
そう言いながらも音量を下げる瑛大。正直瑛大の車でドライブするのは怖くてしょうがない。馬鹿みたいにスピードを出す。サスペンションが硬い為ちょっとした段差でも跳ねる。腰が痛くなる。
あとは……運転は下手ではないけど上手でもない。加えてスピードを出すから乗ってる方は怖くてしょうがない。まだ心中はしたくないぞ。
そんなことお構いなしに彼はマイペースで運転をする。少しは彼女を乗せてるという意識を持って欲しいのだけど。まあ、デートに誘われただけましか。思うと瑛大からデートの誘いが来たことが殆どない。この前の罪滅ぼしのつもりなのだろうか?
この前と言うのは瑛大がキャバクラに行ったという事実が発覚した時。私は別れると言った。渡辺班の説得で今回だけは許したものの。付き合いだから仕方ないとは言うものの、やっぱり許せるほど心のキャパシティが無い。
それから瑛大は日中夜間問わず電話をするようになった。どうでもいい事、私が好きだと連呼する事。私の愚痴を聞いてくれること。少しずつ仲を修復しようとするのは感じた。
でもまさか深夜にデートの誘いがくるとは思わなかった。もっともデートと言ってもただのドライブだけど。ドライブだけなら私の車の方が良い。しかしここは彼の好意に甘えることにした。余計なもめ事は嫌だから……。
相変わらずの口調で言葉を連ねていく瑛大。車は海へ山へと忙しなく走る。ダウンヒルを試みようとすれば、ぱかっと頭を叩いて注意する。
「冬夜だってやってるよ!」
知ってるよ。片桐君の運転技術も愛莉から聞いた。でもお前は違うだろと遠回しに言ってみせた。
途中のカーブに車を止め物凄い勢いで坂を下りていく車を見ている二人。
そんな運転技術に憧れを持つ瑛大は羨望のまなざしで見ているが、私は興味が無く車の中で仮眠をする。
海辺のファミレスに着いたところで瑛大に起こされる。
時計は6時半を回っていた。
「もうじきだよ」
何がだ?そんな疑問も時間が過ぎれば晴れた。朝陽が差しこんでくる。日の出を待っていたんだな。
「綺麗だろ?」
「うん……」
冬の冷たい夜もいつかは夜明けがくる。そう言いたかったの?私たちの夜に夜明けがくるの?
どんな日でも夜は訪れる、けれどいつか夜明けは来る。彼なりの気持ちを受け取る私。
自然と涙がこぼれてくる。
「亜依?」
そんな私を不安気に見る瑛大。
「大丈夫」
私がそう言うと瑛大は「今までごめんね。そしてありがとう……」と言った。
ハンカチで涙を拭い立て直すと「折角だし朝食食べて帰ろうか?」と瑛大に言う。ファミレスでモーニングを食べて家に帰った。
家に帰ると、そのまま帰ろうとする瑛大を止めた。「少し家で休んでいけ」と私が言うと、瑛大は素直に従った。
どんなに暗い冬の夜でもいつかきっと夜明けは来る。これまでもそうだった。これからもきっとそうだろう。
瑛大は、私のベッドで眠っている。私はインスタントコーヒーを入れると一人でテレビを見ていた。
いつの間にか眠っていたようで、起きると私に布団がかけられそして書置きが。
また今度大晦日にくるよ、一緒に初詣しよう。と……。
瑛大の車の様にわずかなでこぼこ道も感じ取り、左へ横へと揺さぶられる道を行く。
それでも私たちはいつか辿り着くだろう終着点へと目指して歩み続けている。
まだ冬に入ったばかりで寒いけどそれでも、日が差し込めば暖かな光が私達を照らしているようだった。
(4)
夕方になると冬夜君と買い物に出かける。今晩は、何にしようかな?
「冬夜君食べたいものない?」
私が冬夜君に聞くと冬夜君はしばし考え込んでいた。そんなに難しい質問したかな?
「何でもいい?」
「いいよ」
それでも冬夜君が躊躇っている。そんなに難しいものを注文するつもりだろうか?冬夜君の好みが知りたいしこの際どんな注文でもうけてあげるつもりだけど。
「じゃあ……豚肉と白菜のミルフィーユ」
ほえ?
「いや、偶には鍋もいいんじゃないかなと思って……」
一つの鍋を二人でつつく。そんなのもいいんじゃないか?と、冬夜君は言う。寒い夜に暖まるしねと一言添えて。
「わかった。じゃあ、それにするね」
献立が決まれば買う材料は決まってる。スマホでレシピを見ながら材料を品定めしていく。偶に冬夜君が余計なお菓子やカップラーメンを忍ばせようとするが、それを元の棚に戻して冬夜君を叱る。ジュースくらいは許してあげよう。
買い物が終われば真っ直ぐに家に帰る。家に帰ると私はキッチンに向かう。冬夜君も手伝うというけど、冬夜君は料理はあまり得意ではないみたいだから「じゃあ、テーブルでも拭いてて」と布巾を渡す。
レシピを見ながら料理をしていく。締めには雑炊が良いらしいのでご飯を炊く。
良い匂いが部屋に立ち込めれば、テレビを見ていた冬夜君も反応する。
カセットコンロをテーブルに置きその上に鍋を置いて、出来上がり。
冬夜君と一緒に鍋をつつく。大量の白菜をポン酢につけて食べる冬夜君。
「お肉もたくさんあるから食べてね」
そういうと、冬夜君はその言葉を待っていたかのように瞬く間に豚肉をたいらげていく。大方食べ終わった頃鍋にご飯を投入して雑炊を作る。溶き卵を入れてはい完成。
何度もおかわりをしながら食べつくす冬夜君。美味しそうに食べてる冬夜君の姿を見れば作った甲斐があるというもので。食べ終わると片づけを始める。
「手伝うよ」と冬夜君は言うけど、その言葉だけでいいの。
「冬夜君は今のうちにお風呂に入っちゃって」
「……一緒に入らなくていいの?」
「うん、また一緒に温泉行こうね」
「分かった」
そう言って冬夜君は自分の部屋に着替えを取りに行ってお風呂に入る。その間に片づけを済ませて冬夜君がお風呂から上がる頃には、片づけが終わると今度は私がお風呂を頂く。お風呂から上がるとリビングに冬夜君の姿はなく部屋にもどると一人黙々と勉強してる冬夜君の姿が。テレビはついてあったけど殆ど見てない。
ぽかっ
「冬休みはのんびりしようって私が言って、冬夜君はいいよって言ったよね」
「だからゲームはしてないだろ。愛莉が戻ってくるまで暇だったんだよ」
「だからって私が戻ってきたのに気づかないってことは、また没頭してたってことだよね?」
「ま、まあそうなるかな?」
「約束破ったから、罰をあたえま~す」
「な、なんだよ……」
そう言いながらも冬夜君の顔には余裕すらうかがえる。もう期待してるんでしょ?予想ついてるんでしょ?そんな表情の冬夜君を見て私は彼の望んでいた言葉を口にした。
「今日は勉強禁止!私にかまって~」
そう言うと冬夜君に甘える。
「しかたないな」
本当は嫌じゃないくせに。知ってるんだよ?最近女性にも興味を持ちだしたこと。でも私以外の女性に甘えたらだめだからね。
買ってきたジュースを飲みながら、二人並んでテレビを見る。テレビの内容なんてどうでもいい。冬夜君とこうしている時間が大切なのだから。
その時メッセージが
「1月3日に渡辺班新年会やるぞ」とのメッセージ。
さらに「1月5日に女子会やろうぜ」と女子会のグループメッセが。
冬夜君に言うと「楽しんで来いよ」と一言。
「いいの?」って冬夜君に尋ねると冬夜君は自分のスマホ画面を私に見せる。
「女子だけで集まるみたいだし男性も集まって騒ごうぜ」と一言が。
「帰りの時間が分かれば迎えに行くよ」と冬夜君。
そういう事なら遠慮なく。
再びテレビを見る私達。
寒い冬の夜を暖かく過ごす私たち。
心も体も温まる、そんな一日だった。
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