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3rdSEASON
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(1)
大晦日。
一年の節目。大掃除をしたりしてすっきりと一年を迎える日。
「冬夜君おはよ~」
愛莉の元気な声が聞こえると、僕は目を否応なく覚ますことになる。
やっぱり全身が痛い。悲鳴を上げてる。昨日酷使しすぎただろうか?
「約束したよ~今日は手伝ってくれるって~」
間延びした声からして愛莉は平気らしい、普段運動してないのに凄いな。もっとこう「痛い~」ってなると思ったのに。
「うぅ……、そりゃあ!!」
愛莉は布団を全力で引っぺがす。その勢いで僕までベッドから転がり落ちた。立ち上がるのもやっとな僕を見て愛莉は満足気に言う。
「起きたね、朝食出来てるよ~」
そう言って軽やかな足取りで部屋を出る。何か良いことでもあるのか?
やっとの思いでダイニングに降りれば愛莉の作った朝食が待っていた。
それを食べながら愛莉の言葉を聞く。
「換気扇の掃除とお風呂とトイレの掃除あとは出来たらまたお願いするね」
「愛莉の家は掃除しなくていいのか?」
「う~ん、余裕があったらお願いしようかな~?」
朝食を終えると愛莉が食器を片付けてる間に浴室とトイレの掃除を済ませる。それが終わったら換気扇の掃除、油汚れがなかなか取れない。それが終わると窓を拭きあげて回る。その間愛莉は、掃除機をかけて回る。階段とかも綺麗に拭きあげて……終わる頃には昼を過ぎていた。
昼食はファストフードで買ってきてそれを食べる。ごみを捨てて、取りあえずは完了かな?後は愛莉の家を……。
「冬夜君、車さん綺麗にしよう?」
「2台ともか?」
「うん」
愛莉と二人で洗車にでかけると二台とも綺麗に拭きあげて車内を掃除する。
「今年も一年お疲れ様でした」
愛莉が感謝を込めてる間愛莉の車を点検してやる、オイルが減ってる、それに汚い。この際だからオイル交換しておくか。
走行距離は僕の車の方が断然上だが、愛莉の車は点検を怠っていたので色々と不良個所が出てきてる。タイヤは無事だった。無茶してないからな。
オイル交換をしてる間、愛莉と店内でジュースを飲みながら今後について話をする。
「ショッピングモールで買い物あるんだけど……」
「良いけど何買うんだい?」
「御節の食材。あったほうがいいでしょ?あとお餅とかも」
「ああ、なるほどね。分かった」
点検が終わるとショッピングモールに行き愛莉の望んだものを買うとホームセンターで掃除道具を買って帰る。愛莉は料理に入る。
「愛莉、家の鍵貸して」
「ほえ?」
「愛莉の家、主なところだけ掃除しとくよ。
「いいのに、冬夜君筋肉痛で大変なんでしょ。ゆっくりしてて」
「掃除がすんだらのんびりさせてもらうよ」
「じゃあ……変なところ覗いたらダメだからね」
愛莉はそう言って微笑んで鍵を渡す。前科があるだけに「うん」とうなずくしかなかった。
愛莉の家に行くとキッチンと風呂場とトイレ、あとは掃除機をかけて窓ガラスを拭き上げる。
終わる頃には日が暮れかけてた。
自分の家に帰ると美味しい匂いが……、鍋だ。
「おつかれさま~今日は水炊きにしておいたよ」
それを二人でつつきながら食を済ませると愛莉は食器を片付け僕はその間に風呂に入る。僕が風呂に入ると交代で愛莉が風呂に入り、一年の疲れを癒す。
そして部屋でテレビを見ていると23時を過ぎた頃愛莉はキッチンにむかい蕎麦を作る。それを二人で啜って食べたら愛莉は片付けにまわる。
「そろそろ初詣の準備しようよ?」
部屋に戻ってきた愛莉がそういうと着替えをすませて、春肥神社に向かう。
誰が音頭を取ったわけでもないのだが、渡辺班は大体そろっていた。
「やあ、冬夜に遠坂さん久しぶり。元気だった?」
渡辺君がそう声をかけると、皆とあいさつをした。
年はとっくに明けている。
「あけましておめでとうございます」と挨拶をすませると、列の最後尾に並ぶ。
「愛莉、寒くないか?」と声をかけると「大丈夫だよ~」と返事がかかる。
夜店が並んでると食べたくなるのが人の性。
ぽかっ
「あとにしようね♪」
後でなら食べていいんだね?今言質とったからね。
お参りを済ませると僕は愛莉の手を取り夜店に並ぶ。
食べながら次の店をめぐってはまた食べるとしていると。
ぽかっ
お約束だね。
「そろそろ帰ろうか?眠くなってきたし」
「初日の出は見なくていいの?」
「ちょっと疲れちゃった。冬夜君は見たい?」
「いや、愛莉が疲れてるなら帰るよ」
「ごめんね……」
愛莉の肩を揉んでやる。
「昨日はお疲れさん、今日からまたよろしくな」
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
そうして帰って、ゆっくり疲れをいやすのだった。
(2)
春肥神社に着くと、石原君たち、中島君たちと合流する。
6人で並びながら話していると渡辺君たちや多田君たち、桐谷君たちとも合流する。片桐君たちもやってきた。
「皆考えてることは同じだな」と渡辺君は笑っている。
「私たちは明日宇佐神宮にいくから」と大島さん達はグループメッセージで言っていた。
お参りを済ませるとおみくじを引く。大吉だった。それを決められた場所に結ぶ。
「このあとどうするの?」
志水さんの問いに「当然帰るよ」と答えようものなら冷たい視線が突き刺さる。
「は、初日の出までドライブでもしてたらいいんじゃないかな?」
まあ三が日はバイト休みだから夜更かしもいいですけどね。
「でも僕、車持ってないし……ハハハ」
そんな有利な状況を覆すのが志水さんだった。
「風見、今初詣終わったわ……この後のコースは任せるから……そうよ、初日の出の絶景スポットを探してちょうだい」
行動早いですね、志水さん。
そして送迎の車で時間を潰しながら会話をする。僕達。とはいえ、普段から夜更かしをしない健全な生活をしている僕にとっては苦痛というか限界があった。
話をしてないと眠ってしまいそうで、眠ろうものなら何を言われるか分からない。
そんな過酷な試練を乗り越えた先に何が待っているというのか?
「迷惑だった?」
そんな表情で言わないでくださいよ。卑怯ですよ。あなたの親衛隊なら絶対に迷惑だなんて言えませんよ。
「迷惑というか、もうなっちゃったもんは仕方ないかなって感じですね……」
こんな回答が今の志水さんに出来るのは僕くらいのものだろう。
「ごめんなさいね、本当に欲しいものは手を伸ばせば届きそうで届かないとはよく言ったものね。今のアナタがまさにそう」
そこまで分かってるのならどうして?
「でもね、だからといって諦めがつくものでもないの。何が何でも手に入れたい。初めての恋だから……」
「そう言ってくれるのは光栄です。多分僕の一生涯での自慢になるでしょう」
「もっと自慢したくない?」
志水さんの表情は真剣な眼差しだった。訴えかけるような目。捨てられた子犬のような目。そんな彼女を突き放すことなど誰に出来ようか?
「今のままで十分ですね。これ以上はもったいなくて手が出せない……!?」
彼女は僕の腕にしがみ付いていた。微かに腕が震えているのが分かった。志水さんでも緊張するんだな。
「十分なんて言わないで、もっと欲を持っていいのよ。自分で言ったでしょ?自慢になるって。あなたがしたい事なら何でも叶えてあげるから」
その目は猛獣のそれではなかった。こんな表情を見せるのも志水さんの一生涯で初めてなんだろう。
車は前にも来たことのある、海辺のファミレスで止まった。この時間であいてる店と言えばここくらいのものだろう。
僕達は店に入ると注文を頼む。
窓辺の席をとり、海を眺めていればやがて出てくる日の光。
今初めて、彼女を覆うお嬢様という殻を外して見れたのかもしれない。
それは健気で、もろく、心細そうにしている彼女。
「綺麗ですね」
「そうね」
その殻を外してみた自分を振り返り、ああついにやっちゃったんだと自覚した。
志水さんの勝ち。それでもいい。今日帰ったらなにをしてあげられる?
優しさに目を覚ましたちっぽけな心。
初めて触れ合う二つの心。
漸く僕たちは恋というものに辿り着いたのかもしれない。
これからも志水さんに振り回されるんだろう。
それでも僕たちは確実に一歩ずつ踏み出す決意が出来た。
そんな僕達を祝福するかのように朝陽が照らしていた、
(3)
「やっぱり混んでますね……大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
私とかずさんは宇佐神宮に初詣に来ていた。
朝早くから来たんだけどやはり混んでいた。
かずさんは私をまもりながらしっかりと私の手を繋ぎ、私の歩幅に合わせてい歩いてくれる。やっぱり慣れてるんだなあ。
参拝を終えると帰ることにした。
相変わらず混んでいる。
高速を使って早々と帰る。
家に帰ると、お餅を焼くことにした。
その間正月番組をみているかずさん。
焼餅をだすと、ありがとうと言って食べる。
「なんか買ってくるべきだったね。ごめん」
「いいの。お正月気分少しでも満喫しなくちゃ」
御節は用意してないけど……ごめんなさい。
その後二人でテレビを見ていた。夕方になるとやはりお腹が空いてきた。お雑煮の準備をする。
「かずさん、お餅いくつ食べる?」
「じゃあ……3つで」
お雑煮を作るとテーブルに運ぶ。
「頂きます」
そう言って食べると「美味しい、これが花菜のお雑煮の味なんだね?」と喜んでいた。よかった。
食器を片付けながら「かずさん、今日は泊まっていくんでしょ?先にお風呂入って」と言うとかずさんはお風呂に入った。
お風呂に入った後、二人でゆっくりとテレビを見て過ごす。会話が殆どない。気まずい空気と言うわけでもないんだけど、むしろ優しい時間が流れている。
「花菜はバイトいつからなの?」
突然、かずさんが聞いてきた。
「4日からですよ」
「そうか、よかった。僕も4日から部活はじまるんです」
「3日まではゆっくりと過ごせるね」とかずさんは言う。
「どこか行きたいところある?」とかずさんが聞いてきた。とはいえ、3日は新年会。明日のスケジュール考えなくちゃね。
しかし明日も混んでるだろうな。ヤッパリ家で寛いでるのが一番なのかも。
「家でゆっくり寛いでいたいかな?」
「そっか……じゃあ、そうしようか」
そう言うと、かずさんは再びテレビを見る。
「かずさんはどこか行きたいところないの?」
私が聞いてみると、かずさんは少し笑っていった。
「いえ、こうしてのんびりしてるのも悪くないなって、ただ食事くらいは連れて行ってあげたいかな?」
「食事なら私作るよ?」
「それだと花菜がのんびりできないでしょ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
しばらくしてかずさんは言った。
「こうしてのんびりするの本当に悪くないですね。いつもはやっぱり緊張してたから。花菜の前だけだよこんなにくつろげるのは」
モテるって大変なんだな。
「学校生活大変ですか?」
「大変ですね……。やっぱり人前だと気取ってしまう自分がいて……ありのままでいられたらどんなに楽なんだろう?と思っています。だから花菜と過ごす時間大切なんだ」
もちろん、最低限の緊張はたもってますけどね。と笑って答えた。いいんだよ?もっとリラックスして。
気がつくと手を繋いでた。
互いの目と目が合う。
元旦。一年の始まり。何事も初めが肝心。その肝心な時に私たちはのんびりと過ごしていた。
今年はのんびり過ごせそうだ。
(4)
「冬夜君、いい加減起きて」
愛莉に体を揺すられ目を覚ませば時計は10時を回っていた。
「やっと起きた~」
愛莉はもっと前から起きていたらしい。正月くらいのんびりすればいいのに。
朝から雑煮の準備をしていたらしい、雑煮と御節を食べながらテレビを見る。
雑煮を食べ終えると愛莉は片付けにはいる。とりあえず手伝うそぶりを見せると「冬夜君はテレビでも見ていて」といい、自室に押しやられる。
部屋で寛いでいると愛莉が部屋に入ってきて隣にちょこんと座る。
正月の特番を見ていた。お昼になると再び愛莉はキッチンに向かう。
「ご飯できたよ~」
愛莉が言うとダイニングに向かう。そして繰り返す。
テレビを見ながら、愛莉を待つ。
愛莉はジュースを持ってきてテーブルに置く。
夕食も似たような感じだった。
夕食後シャワーを浴びて、愛莉の帰りを待つ。
愛莉は部屋に入ると、髪を乾かす。
明日はどこか出かけようかな?
やっぱり愛莉と家にいると愛莉を働かせてしまう。正月くらいのんびりさせてやりたい。
「愛莉明日行きたいところとかないか?」
「スーパーくらいかな~」
それじゃ意味ないんだよ。
「どこか遊び行かないか?少しは羽のばしたいだろ?」
「3日と5日に羽伸ばすから平気だよ~」
ああ、そうだったな。
「仕方ないな~」
愛莉はそう言うと勉強道具とノートPCをとりだす。
「一か月前だしそろそろまじめにやる?」
「そうだな……」
そうして愛莉と期末試験の準備に入る。またレポート等の準備もしなくちゃいけない。
今年も愛莉と色んな景色を見たい。
春夏秋冬二人の思い出作ろう。
いつも喜怒哀楽と愛をすべて二人で分け合って……いつまでもそばにいたい。
愛莉の事を想う。
今年も幸せでありますように。
大晦日。
一年の節目。大掃除をしたりしてすっきりと一年を迎える日。
「冬夜君おはよ~」
愛莉の元気な声が聞こえると、僕は目を否応なく覚ますことになる。
やっぱり全身が痛い。悲鳴を上げてる。昨日酷使しすぎただろうか?
「約束したよ~今日は手伝ってくれるって~」
間延びした声からして愛莉は平気らしい、普段運動してないのに凄いな。もっとこう「痛い~」ってなると思ったのに。
「うぅ……、そりゃあ!!」
愛莉は布団を全力で引っぺがす。その勢いで僕までベッドから転がり落ちた。立ち上がるのもやっとな僕を見て愛莉は満足気に言う。
「起きたね、朝食出来てるよ~」
そう言って軽やかな足取りで部屋を出る。何か良いことでもあるのか?
やっとの思いでダイニングに降りれば愛莉の作った朝食が待っていた。
それを食べながら愛莉の言葉を聞く。
「換気扇の掃除とお風呂とトイレの掃除あとは出来たらまたお願いするね」
「愛莉の家は掃除しなくていいのか?」
「う~ん、余裕があったらお願いしようかな~?」
朝食を終えると愛莉が食器を片付けてる間に浴室とトイレの掃除を済ませる。それが終わったら換気扇の掃除、油汚れがなかなか取れない。それが終わると窓を拭きあげて回る。その間愛莉は、掃除機をかけて回る。階段とかも綺麗に拭きあげて……終わる頃には昼を過ぎていた。
昼食はファストフードで買ってきてそれを食べる。ごみを捨てて、取りあえずは完了かな?後は愛莉の家を……。
「冬夜君、車さん綺麗にしよう?」
「2台ともか?」
「うん」
愛莉と二人で洗車にでかけると二台とも綺麗に拭きあげて車内を掃除する。
「今年も一年お疲れ様でした」
愛莉が感謝を込めてる間愛莉の車を点検してやる、オイルが減ってる、それに汚い。この際だからオイル交換しておくか。
走行距離は僕の車の方が断然上だが、愛莉の車は点検を怠っていたので色々と不良個所が出てきてる。タイヤは無事だった。無茶してないからな。
オイル交換をしてる間、愛莉と店内でジュースを飲みながら今後について話をする。
「ショッピングモールで買い物あるんだけど……」
「良いけど何買うんだい?」
「御節の食材。あったほうがいいでしょ?あとお餅とかも」
「ああ、なるほどね。分かった」
点検が終わるとショッピングモールに行き愛莉の望んだものを買うとホームセンターで掃除道具を買って帰る。愛莉は料理に入る。
「愛莉、家の鍵貸して」
「ほえ?」
「愛莉の家、主なところだけ掃除しとくよ。
「いいのに、冬夜君筋肉痛で大変なんでしょ。ゆっくりしてて」
「掃除がすんだらのんびりさせてもらうよ」
「じゃあ……変なところ覗いたらダメだからね」
愛莉はそう言って微笑んで鍵を渡す。前科があるだけに「うん」とうなずくしかなかった。
愛莉の家に行くとキッチンと風呂場とトイレ、あとは掃除機をかけて窓ガラスを拭き上げる。
終わる頃には日が暮れかけてた。
自分の家に帰ると美味しい匂いが……、鍋だ。
「おつかれさま~今日は水炊きにしておいたよ」
それを二人でつつきながら食を済ませると愛莉は食器を片付け僕はその間に風呂に入る。僕が風呂に入ると交代で愛莉が風呂に入り、一年の疲れを癒す。
そして部屋でテレビを見ていると23時を過ぎた頃愛莉はキッチンにむかい蕎麦を作る。それを二人で啜って食べたら愛莉は片付けにまわる。
「そろそろ初詣の準備しようよ?」
部屋に戻ってきた愛莉がそういうと着替えをすませて、春肥神社に向かう。
誰が音頭を取ったわけでもないのだが、渡辺班は大体そろっていた。
「やあ、冬夜に遠坂さん久しぶり。元気だった?」
渡辺君がそう声をかけると、皆とあいさつをした。
年はとっくに明けている。
「あけましておめでとうございます」と挨拶をすませると、列の最後尾に並ぶ。
「愛莉、寒くないか?」と声をかけると「大丈夫だよ~」と返事がかかる。
夜店が並んでると食べたくなるのが人の性。
ぽかっ
「あとにしようね♪」
後でなら食べていいんだね?今言質とったからね。
お参りを済ませると僕は愛莉の手を取り夜店に並ぶ。
食べながら次の店をめぐってはまた食べるとしていると。
ぽかっ
お約束だね。
「そろそろ帰ろうか?眠くなってきたし」
「初日の出は見なくていいの?」
「ちょっと疲れちゃった。冬夜君は見たい?」
「いや、愛莉が疲れてるなら帰るよ」
「ごめんね……」
愛莉の肩を揉んでやる。
「昨日はお疲れさん、今日からまたよろしくな」
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
そうして帰って、ゆっくり疲れをいやすのだった。
(2)
春肥神社に着くと、石原君たち、中島君たちと合流する。
6人で並びながら話していると渡辺君たちや多田君たち、桐谷君たちとも合流する。片桐君たちもやってきた。
「皆考えてることは同じだな」と渡辺君は笑っている。
「私たちは明日宇佐神宮にいくから」と大島さん達はグループメッセージで言っていた。
お参りを済ませるとおみくじを引く。大吉だった。それを決められた場所に結ぶ。
「このあとどうするの?」
志水さんの問いに「当然帰るよ」と答えようものなら冷たい視線が突き刺さる。
「は、初日の出までドライブでもしてたらいいんじゃないかな?」
まあ三が日はバイト休みだから夜更かしもいいですけどね。
「でも僕、車持ってないし……ハハハ」
そんな有利な状況を覆すのが志水さんだった。
「風見、今初詣終わったわ……この後のコースは任せるから……そうよ、初日の出の絶景スポットを探してちょうだい」
行動早いですね、志水さん。
そして送迎の車で時間を潰しながら会話をする。僕達。とはいえ、普段から夜更かしをしない健全な生活をしている僕にとっては苦痛というか限界があった。
話をしてないと眠ってしまいそうで、眠ろうものなら何を言われるか分からない。
そんな過酷な試練を乗り越えた先に何が待っているというのか?
「迷惑だった?」
そんな表情で言わないでくださいよ。卑怯ですよ。あなたの親衛隊なら絶対に迷惑だなんて言えませんよ。
「迷惑というか、もうなっちゃったもんは仕方ないかなって感じですね……」
こんな回答が今の志水さんに出来るのは僕くらいのものだろう。
「ごめんなさいね、本当に欲しいものは手を伸ばせば届きそうで届かないとはよく言ったものね。今のアナタがまさにそう」
そこまで分かってるのならどうして?
「でもね、だからといって諦めがつくものでもないの。何が何でも手に入れたい。初めての恋だから……」
「そう言ってくれるのは光栄です。多分僕の一生涯での自慢になるでしょう」
「もっと自慢したくない?」
志水さんの表情は真剣な眼差しだった。訴えかけるような目。捨てられた子犬のような目。そんな彼女を突き放すことなど誰に出来ようか?
「今のままで十分ですね。これ以上はもったいなくて手が出せない……!?」
彼女は僕の腕にしがみ付いていた。微かに腕が震えているのが分かった。志水さんでも緊張するんだな。
「十分なんて言わないで、もっと欲を持っていいのよ。自分で言ったでしょ?自慢になるって。あなたがしたい事なら何でも叶えてあげるから」
その目は猛獣のそれではなかった。こんな表情を見せるのも志水さんの一生涯で初めてなんだろう。
車は前にも来たことのある、海辺のファミレスで止まった。この時間であいてる店と言えばここくらいのものだろう。
僕達は店に入ると注文を頼む。
窓辺の席をとり、海を眺めていればやがて出てくる日の光。
今初めて、彼女を覆うお嬢様という殻を外して見れたのかもしれない。
それは健気で、もろく、心細そうにしている彼女。
「綺麗ですね」
「そうね」
その殻を外してみた自分を振り返り、ああついにやっちゃったんだと自覚した。
志水さんの勝ち。それでもいい。今日帰ったらなにをしてあげられる?
優しさに目を覚ましたちっぽけな心。
初めて触れ合う二つの心。
漸く僕たちは恋というものに辿り着いたのかもしれない。
これからも志水さんに振り回されるんだろう。
それでも僕たちは確実に一歩ずつ踏み出す決意が出来た。
そんな僕達を祝福するかのように朝陽が照らしていた、
(3)
「やっぱり混んでますね……大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
私とかずさんは宇佐神宮に初詣に来ていた。
朝早くから来たんだけどやはり混んでいた。
かずさんは私をまもりながらしっかりと私の手を繋ぎ、私の歩幅に合わせてい歩いてくれる。やっぱり慣れてるんだなあ。
参拝を終えると帰ることにした。
相変わらず混んでいる。
高速を使って早々と帰る。
家に帰ると、お餅を焼くことにした。
その間正月番組をみているかずさん。
焼餅をだすと、ありがとうと言って食べる。
「なんか買ってくるべきだったね。ごめん」
「いいの。お正月気分少しでも満喫しなくちゃ」
御節は用意してないけど……ごめんなさい。
その後二人でテレビを見ていた。夕方になるとやはりお腹が空いてきた。お雑煮の準備をする。
「かずさん、お餅いくつ食べる?」
「じゃあ……3つで」
お雑煮を作るとテーブルに運ぶ。
「頂きます」
そう言って食べると「美味しい、これが花菜のお雑煮の味なんだね?」と喜んでいた。よかった。
食器を片付けながら「かずさん、今日は泊まっていくんでしょ?先にお風呂入って」と言うとかずさんはお風呂に入った。
お風呂に入った後、二人でゆっくりとテレビを見て過ごす。会話が殆どない。気まずい空気と言うわけでもないんだけど、むしろ優しい時間が流れている。
「花菜はバイトいつからなの?」
突然、かずさんが聞いてきた。
「4日からですよ」
「そうか、よかった。僕も4日から部活はじまるんです」
「3日まではゆっくりと過ごせるね」とかずさんは言う。
「どこか行きたいところある?」とかずさんが聞いてきた。とはいえ、3日は新年会。明日のスケジュール考えなくちゃね。
しかし明日も混んでるだろうな。ヤッパリ家で寛いでるのが一番なのかも。
「家でゆっくり寛いでいたいかな?」
「そっか……じゃあ、そうしようか」
そう言うと、かずさんは再びテレビを見る。
「かずさんはどこか行きたいところないの?」
私が聞いてみると、かずさんは少し笑っていった。
「いえ、こうしてのんびりしてるのも悪くないなって、ただ食事くらいは連れて行ってあげたいかな?」
「食事なら私作るよ?」
「それだと花菜がのんびりできないでしょ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
しばらくしてかずさんは言った。
「こうしてのんびりするの本当に悪くないですね。いつもはやっぱり緊張してたから。花菜の前だけだよこんなにくつろげるのは」
モテるって大変なんだな。
「学校生活大変ですか?」
「大変ですね……。やっぱり人前だと気取ってしまう自分がいて……ありのままでいられたらどんなに楽なんだろう?と思っています。だから花菜と過ごす時間大切なんだ」
もちろん、最低限の緊張はたもってますけどね。と笑って答えた。いいんだよ?もっとリラックスして。
気がつくと手を繋いでた。
互いの目と目が合う。
元旦。一年の始まり。何事も初めが肝心。その肝心な時に私たちはのんびりと過ごしていた。
今年はのんびり過ごせそうだ。
(4)
「冬夜君、いい加減起きて」
愛莉に体を揺すられ目を覚ませば時計は10時を回っていた。
「やっと起きた~」
愛莉はもっと前から起きていたらしい。正月くらいのんびりすればいいのに。
朝から雑煮の準備をしていたらしい、雑煮と御節を食べながらテレビを見る。
雑煮を食べ終えると愛莉は片付けにはいる。とりあえず手伝うそぶりを見せると「冬夜君はテレビでも見ていて」といい、自室に押しやられる。
部屋で寛いでいると愛莉が部屋に入ってきて隣にちょこんと座る。
正月の特番を見ていた。お昼になると再び愛莉はキッチンに向かう。
「ご飯できたよ~」
愛莉が言うとダイニングに向かう。そして繰り返す。
テレビを見ながら、愛莉を待つ。
愛莉はジュースを持ってきてテーブルに置く。
夕食も似たような感じだった。
夕食後シャワーを浴びて、愛莉の帰りを待つ。
愛莉は部屋に入ると、髪を乾かす。
明日はどこか出かけようかな?
やっぱり愛莉と家にいると愛莉を働かせてしまう。正月くらいのんびりさせてやりたい。
「愛莉明日行きたいところとかないか?」
「スーパーくらいかな~」
それじゃ意味ないんだよ。
「どこか遊び行かないか?少しは羽のばしたいだろ?」
「3日と5日に羽伸ばすから平気だよ~」
ああ、そうだったな。
「仕方ないな~」
愛莉はそう言うと勉強道具とノートPCをとりだす。
「一か月前だしそろそろまじめにやる?」
「そうだな……」
そうして愛莉と期末試験の準備に入る。またレポート等の準備もしなくちゃいけない。
今年も愛莉と色んな景色を見たい。
春夏秋冬二人の思い出作ろう。
いつも喜怒哀楽と愛をすべて二人で分け合って……いつまでもそばにいたい。
愛莉の事を想う。
今年も幸せでありますように。
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