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3rdSEASON
真諦
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(1)
「冬夜それはまずいだろ」
誠に言われた。
まずい事くらい分かってる。
一人ほくそ笑む西松君が憎い。
「冬夜、早めに謝ったほうがいいぜ。ていうかもう遅いかも」
桐谷君が言う。桐谷君なら僕の気持ちがよくわかっているだろう。
何度も浮気を疑われたのだから。
「もう、諦めてしまった方が気が楽なんじゃないですか?」
西松君が言うと、皆が西松君を睨みつける。
そんな視線など意にも介さない西松君。
「愛の絆なんてものは幻想でしかないんですよ。現にたかだかキスの一つで心が揺らいでる」
「西松の言う通りかもしれないな」
渡辺君がそう言って笑った。
それ見ろと西松君が笑っている。
「冬夜の考えすぎだ、お前たちの愛はキスの一つや二つで崩れる程脆いものじゃないだろ?信じてやったらどうだ?」
酒井君と石原君は二人で何か相談している。
竹本君も真鍋君と何か話してるようだ。
木元先輩も渡辺君と同意見らしい。
「君と遠坂さんは僕達のそれとはまったく別次元だよ。多少怒られはするだろうけど最悪の事態は考えなくていいと思う。ただ早めに謝ったほうが良いと思うけどね」
どうせ今頃花山さんが得意気に話してるんだろうしね、と付け足して。
「まあ、冬夜と遠坂さんは問題ないだろうとして……、真鍋君、いったい何があったんだ」
そんな大きな声出したら隣のお風呂に入ってるだろう女性陣に聞こえますよ。渡辺君。
「い、いやたいしたことないんです」
真鍋君の態度が気になる。
「そういう相談に乗るのがうちのグループなんだからぶっちゃけた方が良い」と誠が言うと。神妙な顔つきで、話だした。
新名さんが、真鍋君に告った。真鍋君は「今好きな人がいるから」と断った。
「誰なの?」と新名さんに聞かれたら事情を説明した。
好きな人はバイト先の会社の経営者、まだ26歳にして未亡人だという。
そりゃ無理に決まってるでしょって言いたくもなるよね。
で、興奮状態にあった新名さんが泣きわめいていたというわけ。
「真鍋君は新名さんの事どう思ってるの?」
僕は真鍋君に聞いてみた。
「まあ、良い人だとは思いますけど……本命がいるのに付き合うのってなんか色々嫌な気分になりませんか?」
「まあ、付き合われてる方としてはいい気分はしないだろうね」と、誠が言う。
「俺もそんな不誠実な事したくないし」
「本命の彼女には告白したのかい?」
渡辺君が聞いていた。
「いえ、まだです」と、真鍋君は答える。
「なら、さっさと告ってしまえばいい」と渡辺君は気軽に言う。
「そんな気軽に言わないで下さいよ。なんかうまくタイミングを外されているというか……そういう雰囲気にさせてくれないんですよ」
「強引に行くって手もあるだろ?」
「慎重派なんですよ俺は」
「真鍋君……このグループに慎重なんて言葉は通用しないぞ」
「勘弁してくださいよ。彼女まだ死んだ旦那の事思ってるんですよ」
「忘れさせてやるって事もありだろ?」
「凄く脆い人で触れたら壊れてしまいそうな人で……残念だけどそっと扱わないと無理です」
「難しいな、そいつは……」
「俺の事は俺でなんとかします、それより片桐先輩の方が心配です」
話は僕に戻ってきた。
「冬夜の事なら心配ないさ。な?冬夜」
「お風呂から上がったら話があるから二人きりでって言っておいた」
「なんでその場で謝らなかったんだ。絶対風呂で花山さん喋ってるぞ」
誠が立ち上がり叱りつける。
「言いたかったんだけど……ごめんとしか言えなかった」
「なるほどな……」
誠は再び風呂に浸かる。
誠の言う通りだと思う。その場で謝るべきだったんだ。
でも愛莉の顔を正視することすらできなかった。あの笑顔を崩す事なんてできるはずがない。
でもちゃんと言わないと取り返しのつかないことになってからじゃ遅い。
なんて言ったらいいのだろう?
ストレートに言うか。軽口で言っちゃうべきか……それはないな。
「気持ちきちんと伝えたらいいと思いますよ」
酒井君がそう言って励ます。
「事故みたいなものでしょ、かなり悪質な。そんなもので動じる遠坂さんじゃないですよ」
石原君もそう言ってくれる。
そうであって欲しい、言った後二人で笑っていたい。
そう思えば思うほど僕の顔から笑顔が消えていた。
代わりに西松君が笑っているけど。
計画通り!とでも思っているのだろう。
腹立たしいことこの上ない。
今は愛莉の笑顔が絶えぬことを祈るばかりだった。
(2)
風呂から出ると愛莉が入っている女子風呂の前で待っていた。
カラカラと戸が開くとぞろぞろと出てくる。
出てきた女性はじろりと僕を見る。
やっぱり話したのかな?花山さん。
中にはクスクス笑う人も。
カンナは僕を見るとこつんとこづいた。
「この幸せ者が」
どういう意味だ?花山さんから話を聞いてないのか?
その花山さんが出てくると僕に言った。
「私負けませんから」
そう言うと皆について行く。
愛莉は一番最後に出てきた。
僕を見るとにこりと笑う。
「おまたせ」
その声はとても明るい。
でも作ってるのかもしれない。そう思うと笑顔も作ってるのかと疑いだした。
現実を受け入れられずにいるのかもしれない。
「愛莉話なんだけど……」
「ここじゃ二人っきりになれないよ?」
愛莉に言われて周りを見る、何人か残って僕達を見ている。
「恵美に良いところあるって聞いたんだ。そこに行こう?」
愛莉がそう言うと僕の手を取ってゆっくり歩きだした。
僕は愛莉について行った。
宿泊棟の2Fにあるベランダ。夜空がとてもきれいだ。
「本当に綺麗だね~。クリスマスイブに来た時みたい~」
この時期はまだ暑くもなく寒くもなく涼しい風が時折吹く。
春風の心地よさが最後の思い出なのかな?
「愛莉……」
「な~に?」
どこまでも明るい愛莉。何が愛莉をそうさせているのか僕には分からなかった。
僕は言葉に詰まった。終焉の言葉を告げなきゃいけない。
僕がは怖かった。愛莉に嫌われるのが……。
でも言わないと、愛莉に隠し事はしない。そう決めたのは自分自身なのだから。
「愛莉あのさ……」
「あ、ちょっとまって」
愛莉はそう言うと何かお祈りしているようなしぐさを見せた。
「……うん、いいよ。どうぞ」
愛莉がそう言うと僕は愛莉に頭を下げた。
「愛莉ごめん。花山さんとキスしてしまった!でも事故なんだ。急に抱きついてきて……」
「……嘘つき」
「え?」
「”した”んじゃなくて”された”んでしょ?花山さんから聞いたよ」
「でも其れってただの屁理屈じゃないか?」
愛莉は僕に近づく。そして……
ぽかっ
「私がどうして怒ってるか分かってる?」
「それは僕が浮気したから」
「だからそれ浮気なの?無理やりされたんでしょ?冬夜君にその気はないのに」
「それはそうだけど」
「私がムッとしてるように見えているのが証拠だよ。冬夜君私の中に入って来てくれてない。冬夜君の悪い癖だよ。私を怖がって私の世界を拒絶する。ちゃんと見てくれない。いつもそう。肝心な時はちゃんと見てくれないの」
「ご、ごめん。だから……」
「ブーッ。許せませんね。罰ゲームを与えます」
まさかここで別れるとか言わないよな?
「目を閉じて」
愛莉の言われるままに目を閉じる。
すると愛莉は僕の背中に腕を回し僕の唇に愛莉の唇を重ねる。
それだけじゃない、愛莉の舌が僕の口の中に入りたいと主張する。その好意を甘んじて受け入れる。
愛莉は「ん……」と甘い吐息を漏らす。そして僕の口から離れた。
「これで帳消しだね、冬夜君が誰にキスされても私の色に上書きしてあげるから」
愛莉の顔は紅潮していた。
「ほら、私の心の声聞いてよ……」
愛莉は僕の背中に腕を回したまま自分の胸を僕の体に押し付ける。
それはとてもやさしい世界。星空の下で抱き合う幸せな世界。
「隠し事しなかったことは認めます。事故だってことも認めます。冬夜君がどんなに不安だったのかもわかる。でも少しは私を信用してほしいな。キスの一つで揺らぐほど私弱くないよ」
愛莉は僕の胸に顔を押し当てそういう。
僕の考えすぎだった?
「でも嬉しい、そんなに私の事心配してくれてるんだ。私を失うことを恐れてるんだね?心配しないで。冬夜君の気持ちが変わらない限り私は冬夜君のものだから」
愛莉の心少しだけ解るよ、まるで聖母のような慈しむ心に溢れている。その心が傷つかない様に守ってやりたい。
気づいたら愛莉の体を抱きしめていた。
「なんか僕一人心配してただけみたいだな」
「そうだよ、あ……でも」
「風俗とかそういうお店行ったら流石に許さないからね。浮気だーって麻耶さんに言いつけてやるんだから」
「それはないよ!」
「うん、信じてる!」
夜が更けるにつけて風も少し冷たくなってきた。愛莉に「戻ろう?」と言うと、愛莉は頷いて言った「……はい」と
「あ!」
「ほえ?」
まだ聞いてないことがあった。
「愛莉の方は無事だったのか?」
「口説かれたよ。肩を触ろうとされたからはねのけてやった」
「それでどうなったんだ?」
「どうもなってないよ?あ、冬夜君まだ私の事信用してない。合宿終わったらみっちり教育だね」
「きょ、教育?」
「私がどれだけあなたを愛しているか一杯甘えて教えてあげるの♪」
それって教育になるのか?
「じゃ、皆のところ行こう?」
「そうだな……あ!」
「まだ何かあるの?」
「その……女子風呂で何を話していたんだ?」
「乙女の話に首を突っ込むのは良くないと思うよ」
「あ、そうかごめん。」
「なんてね……誰にも言っちゃだめだよ」
てこと話してくれるんだな。
「そうだね、最初は新名さんの心配をしてたの」
時間は。お風呂の時間まで遡る。
(3)
私達は体を洗って湯舟に半身浴して会話をしてた。
お互いに初めての人もいるから挨拶しながら、キャッキャしてた。
でも一人落ち込んでる人がいた。
新名さん。
さっきの騒ぎの元になった人。
一人湯舟に浸かり切って思い込んでる。
亜依が「どうしたの?」って尋ねると新名さんは話し始めた。
我を失っていたとはいえあんなことしてしまった。真鍋君にこれからどうやって話せばいいか分からないと。
「別に普通で良いんじゃない?」
亜依がそう言う。
「私も亜依と同感だな。まだ諦めきれないんだろ……。ただ、あまりがっついてると嫌われるけどな」
神奈が花山さんの事をちらりと見てから言う。
「まだ嫌われてると決まったわけじゃないんだろ?だったらガンガン押すしかないだろ!」
美嘉さんがそう励ます。
「未来、元気出して」と、新名さんの隣にいた木下さんが応援する。
「お前みたいな健気な子、嫌いじゃないよ。まだ彼女が出来たわけじゃないんだし頑張ろう」と亜依が言うと花山さんが突然笑い出した。
「そんな臆病な子は応援して、私の事は誰も応援してくれないんですか?」
花山さんがそう言うと「あんたとはゲームの際中だからね。ましてや自分の彼氏が狙われてるのに応援する馬鹿いるわけないでしょ」と亜依が応酬する。
「まあ、別にいいんですけどね~。冬夜君は時間の問題だし……」
「それさっきから気になっていたんだけど片桐君になにしたの?なんか片桐君は落ち込んでるみたいだったけど」
「大したことじゃないですよ。あとで片桐君に聞いたらどうですか~?」
「てことは何かあったんだね?」
「さあ~どうでしょう~」
「確かにさっきの片桐君様子がおかしかった。酷く落ち込んでるというか……」
恵美の言う通りだった私に話しがあるって言った時も酷く沈んでた。
「落ち込むことないのに…t…。大学生なのに普通のスキンシップだと思うけど」
スキンシップ?
「言いなさい!冬夜君に何したの!?」
私がそう言うとやれやれと言わんばかりに話しだした。
「ただキスしただけですよ~。彼純情なんですね~。酷く取り乱してた」
キス……。最初は動揺した。浮気ですか?私に話しがあるってそういう事ですか?
冬夜君の事を想う。酷く落ち込んでた。それは私に別れを言うためなんかじゃない。きっと冬夜君は後悔してるんだ。されたとはいえ、私以外の誰かとキスしてしまったという自責の念に苦しんでる。
ならば私はどうしたらいい?大丈夫だよ?と支えてあげたらいい?気持ちの入ってないキスなんてきっとそんなに気持ちのいいものではないと思う。婚約者以外の人とキスしてしまった。それで冬夜君はすごく苦しんでくれてる。それだけで嬉しい。
「アハハ」
私は笑い声をあげていた。
「何がおかしいんですか?」
花山さんが怪訝そうに聞いてくる。
「だって、冬夜君そんな事で落ち込んでたんだなって」
「愛莉ちゃん大丈夫、怒りで頭おかしくなった?」
恵美が心配そうに聞いてる。
「大丈夫だよ恵美。花山さんの言う通りかもしれない。キスなんて大学生なら誰でも起きうる事故だよ」
「事故?」
「うん、それに感情の入ってない口づけなんてただ唇が触れただけじゃない」
「そう言われると確かにそうだね。でも事故とは言え愛莉許せるの?冬夜君を」
「私は許すよ、冬夜君このあと二人きりで話があるって酷く落ち込んで言ってたの。きっとその事だと思う」
「別れ話を切り出すかもしれませんよ~」
「花山さん、それは無いと思う。冬夜君はきっと謝るつもりなんだと思う。凄く反省してた。そういう事なのねと思うと笑うしかないじゃない」
「感情の無いキスはただ唇が触れただけの事故……か」
志水さんが落ち込んでいる。どうしたの?
「前に勢いで彼にキスしたの。彼の中ではどうも思ってないのかな?って……」
「それは無いと思うよ、志水さん。だって志水さんは思いを込めたんでしょ?」
「そうだけど……彼あれから何もしてくれなくて」
「志水さん、元カノの私から言わせてもらうけど、彼は志水さんからアクション起こさないと何もしてくれないと思う」
穂乃果がそう言った、
「随分都合の良い解釈なんですね?私には感情が籠ってないというんですか?」
花山さんがそう言うと恵美が返した。
「あなた、片桐君に本気になったわけ?」
「そんなわけないじゃないですか。……悪くはないと思ってるけど」
「そう、あなた揺れてるのね」
そう言って恵美から笑みがこぼれる。
「そうでないと面白くないわ。これから本格的に挫折を味わうことになるんだから」
「私しくじる気無いですから」
「最初はそう思うのよ。でも愛莉ちゃんたちは決して揺るがない。さっきの話を聞いてもまだ分からない?」
「最後の手段は寝とるまでですよ」
「そこまで身を墜として、しくじった時の花山さんが見ものだわ」
それは流石に私も阻止するよ。
でも冬夜君に限ってそれは無いと思う。
「トーヤは幸せ者だな。こんなに愛莉に想ってもらえて」
神奈がそう漏らす。
「そうだ、幸せ者だとーやは」
美嘉さんが続けて言う。
「皆だって同じ気持ちだと思うけど、亜依なんて特に……私の気持ち分かってもらえると思ったけど?」
「まあね……瑛大はもっとひどいからね」
亜依がそう言うとみんな笑っていた。
「羨ましいです、遠坂さんが」と花菜が言うと「そうですね、羨ましいですね」と木下さんが言う。
皆一緒だよ。その気持ちは変わらない。これまでもやってこれたんだからこれからもきっと。
「木下さんも想いが届くと良いね」
私が木下さんに言ったが反応がない。
「ちょっと海未大丈夫?」
新名さんが慌てて木下さんを湯船から出す。
「ふにゃ~」
ちょっと長風呂し過ぎたようだ。
「そろそろ出ようか?」
私がそう言うと皆が出て行った。
「実際のところどうなんだ?許す気あるのか?」
神奈が聞いてくる。私は頷いた。
「許せないとしたら、そんな事で私を信じてくれない冬夜君に対してかな?」
「やっぱお前たち、中学の頃から変わってないよ。常にお互いを思い続けてる」
「神奈だって誠君の事受け入れてるじゃない?」
「誠も花山に言い寄られたらしいんだ」
神奈は耳打ちした。
「それでどうしたの?」
「わざわざ言ってきたってことはそういう事だろ?」
当然のことのように言う。確かに浮気するのにわざわざ「言い寄られました」と報告する人はいないと思う。
「お互い大事にされてるんだね」
「そうだな」
不変の恋の歌を綴る春の宵だった。
(4)
「……てなわけだから。冬夜君は気にしなくて良いんだよ」
「なるほどな……」
少し照れくさそうにする冬夜君。
二人は来た道を戻りながら話をしている。
「新名さん……大丈夫なのか?」
「明日になったらケロッとしてるよ」
「そうか……ならいいんだけど」
「竹本君の方はどうなの?」
私が聞くと冬夜君はあっ!と思いだしたかのように言った。
「すっかり忘れてた。皆真鍋君の話に夢中で」
「真鍋君も大変だね。新名さんを応援するって言っちゃたけど」
「大変だろうね。そういう経験したことないから分からないけど」
この人は今自分が置かれいる状況が分かってないようだ。
それでいいんだ、この人は……。
私の事だけ考えていてくれたらいい。
食べ物の事ばかり考えているけど。
たまにエッチな事考えてるけど。
それは私がいるから大丈夫だよね?
冬夜君が私を好きで私は冬夜君を好き。
それは絶対不変の真諦。
「愛莉……ありがとうな」
「ほえ?」
「こんな僕だけど……たまに油断してミスするけど……」
ぽかっ
「もう過ぎたことは気にしない。さっき言ったよ。ただの事故なんだから気にする事ないって」
「そうだったな」
冬夜君は苦笑する。
うぅ……、これほどもどかしいと思った夜はない。
ここが冬夜君の家なら、二人きりの夜だったら。冬夜君と一つになるのに。
帰ったら一杯甘えよう。いっぱい愛を語ろう。愛してもらおう。
「あ、いたいた。愛莉!皆待ってるよ!早く来なよ!」
亜依が私達を探していたようだ。
大方皆で騒いでいるんだろう?
「行くか?」
冬夜君は少し残念そうだ。
私と同じ気持ちだったんだろうか?
「行くしかないよね?」
「そうだな……」
ため息を吐いている。
「大丈夫、私は帰ってから冬夜君に甘えるから」
そう言って冬夜君に抱き着く。
「一杯甘えさせてやるからな」
言ったね?約束だよ?
私達は部屋に向かった。
真諦を胸に抱いて。
春の夜はまだ眠らない。
「冬夜それはまずいだろ」
誠に言われた。
まずい事くらい分かってる。
一人ほくそ笑む西松君が憎い。
「冬夜、早めに謝ったほうがいいぜ。ていうかもう遅いかも」
桐谷君が言う。桐谷君なら僕の気持ちがよくわかっているだろう。
何度も浮気を疑われたのだから。
「もう、諦めてしまった方が気が楽なんじゃないですか?」
西松君が言うと、皆が西松君を睨みつける。
そんな視線など意にも介さない西松君。
「愛の絆なんてものは幻想でしかないんですよ。現にたかだかキスの一つで心が揺らいでる」
「西松の言う通りかもしれないな」
渡辺君がそう言って笑った。
それ見ろと西松君が笑っている。
「冬夜の考えすぎだ、お前たちの愛はキスの一つや二つで崩れる程脆いものじゃないだろ?信じてやったらどうだ?」
酒井君と石原君は二人で何か相談している。
竹本君も真鍋君と何か話してるようだ。
木元先輩も渡辺君と同意見らしい。
「君と遠坂さんは僕達のそれとはまったく別次元だよ。多少怒られはするだろうけど最悪の事態は考えなくていいと思う。ただ早めに謝ったほうが良いと思うけどね」
どうせ今頃花山さんが得意気に話してるんだろうしね、と付け足して。
「まあ、冬夜と遠坂さんは問題ないだろうとして……、真鍋君、いったい何があったんだ」
そんな大きな声出したら隣のお風呂に入ってるだろう女性陣に聞こえますよ。渡辺君。
「い、いやたいしたことないんです」
真鍋君の態度が気になる。
「そういう相談に乗るのがうちのグループなんだからぶっちゃけた方が良い」と誠が言うと。神妙な顔つきで、話だした。
新名さんが、真鍋君に告った。真鍋君は「今好きな人がいるから」と断った。
「誰なの?」と新名さんに聞かれたら事情を説明した。
好きな人はバイト先の会社の経営者、まだ26歳にして未亡人だという。
そりゃ無理に決まってるでしょって言いたくもなるよね。
で、興奮状態にあった新名さんが泣きわめいていたというわけ。
「真鍋君は新名さんの事どう思ってるの?」
僕は真鍋君に聞いてみた。
「まあ、良い人だとは思いますけど……本命がいるのに付き合うのってなんか色々嫌な気分になりませんか?」
「まあ、付き合われてる方としてはいい気分はしないだろうね」と、誠が言う。
「俺もそんな不誠実な事したくないし」
「本命の彼女には告白したのかい?」
渡辺君が聞いていた。
「いえ、まだです」と、真鍋君は答える。
「なら、さっさと告ってしまえばいい」と渡辺君は気軽に言う。
「そんな気軽に言わないで下さいよ。なんかうまくタイミングを外されているというか……そういう雰囲気にさせてくれないんですよ」
「強引に行くって手もあるだろ?」
「慎重派なんですよ俺は」
「真鍋君……このグループに慎重なんて言葉は通用しないぞ」
「勘弁してくださいよ。彼女まだ死んだ旦那の事思ってるんですよ」
「忘れさせてやるって事もありだろ?」
「凄く脆い人で触れたら壊れてしまいそうな人で……残念だけどそっと扱わないと無理です」
「難しいな、そいつは……」
「俺の事は俺でなんとかします、それより片桐先輩の方が心配です」
話は僕に戻ってきた。
「冬夜の事なら心配ないさ。な?冬夜」
「お風呂から上がったら話があるから二人きりでって言っておいた」
「なんでその場で謝らなかったんだ。絶対風呂で花山さん喋ってるぞ」
誠が立ち上がり叱りつける。
「言いたかったんだけど……ごめんとしか言えなかった」
「なるほどな……」
誠は再び風呂に浸かる。
誠の言う通りだと思う。その場で謝るべきだったんだ。
でも愛莉の顔を正視することすらできなかった。あの笑顔を崩す事なんてできるはずがない。
でもちゃんと言わないと取り返しのつかないことになってからじゃ遅い。
なんて言ったらいいのだろう?
ストレートに言うか。軽口で言っちゃうべきか……それはないな。
「気持ちきちんと伝えたらいいと思いますよ」
酒井君がそう言って励ます。
「事故みたいなものでしょ、かなり悪質な。そんなもので動じる遠坂さんじゃないですよ」
石原君もそう言ってくれる。
そうであって欲しい、言った後二人で笑っていたい。
そう思えば思うほど僕の顔から笑顔が消えていた。
代わりに西松君が笑っているけど。
計画通り!とでも思っているのだろう。
腹立たしいことこの上ない。
今は愛莉の笑顔が絶えぬことを祈るばかりだった。
(2)
風呂から出ると愛莉が入っている女子風呂の前で待っていた。
カラカラと戸が開くとぞろぞろと出てくる。
出てきた女性はじろりと僕を見る。
やっぱり話したのかな?花山さん。
中にはクスクス笑う人も。
カンナは僕を見るとこつんとこづいた。
「この幸せ者が」
どういう意味だ?花山さんから話を聞いてないのか?
その花山さんが出てくると僕に言った。
「私負けませんから」
そう言うと皆について行く。
愛莉は一番最後に出てきた。
僕を見るとにこりと笑う。
「おまたせ」
その声はとても明るい。
でも作ってるのかもしれない。そう思うと笑顔も作ってるのかと疑いだした。
現実を受け入れられずにいるのかもしれない。
「愛莉話なんだけど……」
「ここじゃ二人っきりになれないよ?」
愛莉に言われて周りを見る、何人か残って僕達を見ている。
「恵美に良いところあるって聞いたんだ。そこに行こう?」
愛莉がそう言うと僕の手を取ってゆっくり歩きだした。
僕は愛莉について行った。
宿泊棟の2Fにあるベランダ。夜空がとてもきれいだ。
「本当に綺麗だね~。クリスマスイブに来た時みたい~」
この時期はまだ暑くもなく寒くもなく涼しい風が時折吹く。
春風の心地よさが最後の思い出なのかな?
「愛莉……」
「な~に?」
どこまでも明るい愛莉。何が愛莉をそうさせているのか僕には分からなかった。
僕は言葉に詰まった。終焉の言葉を告げなきゃいけない。
僕がは怖かった。愛莉に嫌われるのが……。
でも言わないと、愛莉に隠し事はしない。そう決めたのは自分自身なのだから。
「愛莉あのさ……」
「あ、ちょっとまって」
愛莉はそう言うと何かお祈りしているようなしぐさを見せた。
「……うん、いいよ。どうぞ」
愛莉がそう言うと僕は愛莉に頭を下げた。
「愛莉ごめん。花山さんとキスしてしまった!でも事故なんだ。急に抱きついてきて……」
「……嘘つき」
「え?」
「”した”んじゃなくて”された”んでしょ?花山さんから聞いたよ」
「でも其れってただの屁理屈じゃないか?」
愛莉は僕に近づく。そして……
ぽかっ
「私がどうして怒ってるか分かってる?」
「それは僕が浮気したから」
「だからそれ浮気なの?無理やりされたんでしょ?冬夜君にその気はないのに」
「それはそうだけど」
「私がムッとしてるように見えているのが証拠だよ。冬夜君私の中に入って来てくれてない。冬夜君の悪い癖だよ。私を怖がって私の世界を拒絶する。ちゃんと見てくれない。いつもそう。肝心な時はちゃんと見てくれないの」
「ご、ごめん。だから……」
「ブーッ。許せませんね。罰ゲームを与えます」
まさかここで別れるとか言わないよな?
「目を閉じて」
愛莉の言われるままに目を閉じる。
すると愛莉は僕の背中に腕を回し僕の唇に愛莉の唇を重ねる。
それだけじゃない、愛莉の舌が僕の口の中に入りたいと主張する。その好意を甘んじて受け入れる。
愛莉は「ん……」と甘い吐息を漏らす。そして僕の口から離れた。
「これで帳消しだね、冬夜君が誰にキスされても私の色に上書きしてあげるから」
愛莉の顔は紅潮していた。
「ほら、私の心の声聞いてよ……」
愛莉は僕の背中に腕を回したまま自分の胸を僕の体に押し付ける。
それはとてもやさしい世界。星空の下で抱き合う幸せな世界。
「隠し事しなかったことは認めます。事故だってことも認めます。冬夜君がどんなに不安だったのかもわかる。でも少しは私を信用してほしいな。キスの一つで揺らぐほど私弱くないよ」
愛莉は僕の胸に顔を押し当てそういう。
僕の考えすぎだった?
「でも嬉しい、そんなに私の事心配してくれてるんだ。私を失うことを恐れてるんだね?心配しないで。冬夜君の気持ちが変わらない限り私は冬夜君のものだから」
愛莉の心少しだけ解るよ、まるで聖母のような慈しむ心に溢れている。その心が傷つかない様に守ってやりたい。
気づいたら愛莉の体を抱きしめていた。
「なんか僕一人心配してただけみたいだな」
「そうだよ、あ……でも」
「風俗とかそういうお店行ったら流石に許さないからね。浮気だーって麻耶さんに言いつけてやるんだから」
「それはないよ!」
「うん、信じてる!」
夜が更けるにつけて風も少し冷たくなってきた。愛莉に「戻ろう?」と言うと、愛莉は頷いて言った「……はい」と
「あ!」
「ほえ?」
まだ聞いてないことがあった。
「愛莉の方は無事だったのか?」
「口説かれたよ。肩を触ろうとされたからはねのけてやった」
「それでどうなったんだ?」
「どうもなってないよ?あ、冬夜君まだ私の事信用してない。合宿終わったらみっちり教育だね」
「きょ、教育?」
「私がどれだけあなたを愛しているか一杯甘えて教えてあげるの♪」
それって教育になるのか?
「じゃ、皆のところ行こう?」
「そうだな……あ!」
「まだ何かあるの?」
「その……女子風呂で何を話していたんだ?」
「乙女の話に首を突っ込むのは良くないと思うよ」
「あ、そうかごめん。」
「なんてね……誰にも言っちゃだめだよ」
てこと話してくれるんだな。
「そうだね、最初は新名さんの心配をしてたの」
時間は。お風呂の時間まで遡る。
(3)
私達は体を洗って湯舟に半身浴して会話をしてた。
お互いに初めての人もいるから挨拶しながら、キャッキャしてた。
でも一人落ち込んでる人がいた。
新名さん。
さっきの騒ぎの元になった人。
一人湯舟に浸かり切って思い込んでる。
亜依が「どうしたの?」って尋ねると新名さんは話し始めた。
我を失っていたとはいえあんなことしてしまった。真鍋君にこれからどうやって話せばいいか分からないと。
「別に普通で良いんじゃない?」
亜依がそう言う。
「私も亜依と同感だな。まだ諦めきれないんだろ……。ただ、あまりがっついてると嫌われるけどな」
神奈が花山さんの事をちらりと見てから言う。
「まだ嫌われてると決まったわけじゃないんだろ?だったらガンガン押すしかないだろ!」
美嘉さんがそう励ます。
「未来、元気出して」と、新名さんの隣にいた木下さんが応援する。
「お前みたいな健気な子、嫌いじゃないよ。まだ彼女が出来たわけじゃないんだし頑張ろう」と亜依が言うと花山さんが突然笑い出した。
「そんな臆病な子は応援して、私の事は誰も応援してくれないんですか?」
花山さんがそう言うと「あんたとはゲームの際中だからね。ましてや自分の彼氏が狙われてるのに応援する馬鹿いるわけないでしょ」と亜依が応酬する。
「まあ、別にいいんですけどね~。冬夜君は時間の問題だし……」
「それさっきから気になっていたんだけど片桐君になにしたの?なんか片桐君は落ち込んでるみたいだったけど」
「大したことじゃないですよ。あとで片桐君に聞いたらどうですか~?」
「てことは何かあったんだね?」
「さあ~どうでしょう~」
「確かにさっきの片桐君様子がおかしかった。酷く落ち込んでるというか……」
恵美の言う通りだった私に話しがあるって言った時も酷く沈んでた。
「落ち込むことないのに…t…。大学生なのに普通のスキンシップだと思うけど」
スキンシップ?
「言いなさい!冬夜君に何したの!?」
私がそう言うとやれやれと言わんばかりに話しだした。
「ただキスしただけですよ~。彼純情なんですね~。酷く取り乱してた」
キス……。最初は動揺した。浮気ですか?私に話しがあるってそういう事ですか?
冬夜君の事を想う。酷く落ち込んでた。それは私に別れを言うためなんかじゃない。きっと冬夜君は後悔してるんだ。されたとはいえ、私以外の誰かとキスしてしまったという自責の念に苦しんでる。
ならば私はどうしたらいい?大丈夫だよ?と支えてあげたらいい?気持ちの入ってないキスなんてきっとそんなに気持ちのいいものではないと思う。婚約者以外の人とキスしてしまった。それで冬夜君はすごく苦しんでくれてる。それだけで嬉しい。
「アハハ」
私は笑い声をあげていた。
「何がおかしいんですか?」
花山さんが怪訝そうに聞いてくる。
「だって、冬夜君そんな事で落ち込んでたんだなって」
「愛莉ちゃん大丈夫、怒りで頭おかしくなった?」
恵美が心配そうに聞いてる。
「大丈夫だよ恵美。花山さんの言う通りかもしれない。キスなんて大学生なら誰でも起きうる事故だよ」
「事故?」
「うん、それに感情の入ってない口づけなんてただ唇が触れただけじゃない」
「そう言われると確かにそうだね。でも事故とは言え愛莉許せるの?冬夜君を」
「私は許すよ、冬夜君このあと二人きりで話があるって酷く落ち込んで言ってたの。きっとその事だと思う」
「別れ話を切り出すかもしれませんよ~」
「花山さん、それは無いと思う。冬夜君はきっと謝るつもりなんだと思う。凄く反省してた。そういう事なのねと思うと笑うしかないじゃない」
「感情の無いキスはただ唇が触れただけの事故……か」
志水さんが落ち込んでいる。どうしたの?
「前に勢いで彼にキスしたの。彼の中ではどうも思ってないのかな?って……」
「それは無いと思うよ、志水さん。だって志水さんは思いを込めたんでしょ?」
「そうだけど……彼あれから何もしてくれなくて」
「志水さん、元カノの私から言わせてもらうけど、彼は志水さんからアクション起こさないと何もしてくれないと思う」
穂乃果がそう言った、
「随分都合の良い解釈なんですね?私には感情が籠ってないというんですか?」
花山さんがそう言うと恵美が返した。
「あなた、片桐君に本気になったわけ?」
「そんなわけないじゃないですか。……悪くはないと思ってるけど」
「そう、あなた揺れてるのね」
そう言って恵美から笑みがこぼれる。
「そうでないと面白くないわ。これから本格的に挫折を味わうことになるんだから」
「私しくじる気無いですから」
「最初はそう思うのよ。でも愛莉ちゃんたちは決して揺るがない。さっきの話を聞いてもまだ分からない?」
「最後の手段は寝とるまでですよ」
「そこまで身を墜として、しくじった時の花山さんが見ものだわ」
それは流石に私も阻止するよ。
でも冬夜君に限ってそれは無いと思う。
「トーヤは幸せ者だな。こんなに愛莉に想ってもらえて」
神奈がそう漏らす。
「そうだ、幸せ者だとーやは」
美嘉さんが続けて言う。
「皆だって同じ気持ちだと思うけど、亜依なんて特に……私の気持ち分かってもらえると思ったけど?」
「まあね……瑛大はもっとひどいからね」
亜依がそう言うとみんな笑っていた。
「羨ましいです、遠坂さんが」と花菜が言うと「そうですね、羨ましいですね」と木下さんが言う。
皆一緒だよ。その気持ちは変わらない。これまでもやってこれたんだからこれからもきっと。
「木下さんも想いが届くと良いね」
私が木下さんに言ったが反応がない。
「ちょっと海未大丈夫?」
新名さんが慌てて木下さんを湯船から出す。
「ふにゃ~」
ちょっと長風呂し過ぎたようだ。
「そろそろ出ようか?」
私がそう言うと皆が出て行った。
「実際のところどうなんだ?許す気あるのか?」
神奈が聞いてくる。私は頷いた。
「許せないとしたら、そんな事で私を信じてくれない冬夜君に対してかな?」
「やっぱお前たち、中学の頃から変わってないよ。常にお互いを思い続けてる」
「神奈だって誠君の事受け入れてるじゃない?」
「誠も花山に言い寄られたらしいんだ」
神奈は耳打ちした。
「それでどうしたの?」
「わざわざ言ってきたってことはそういう事だろ?」
当然のことのように言う。確かに浮気するのにわざわざ「言い寄られました」と報告する人はいないと思う。
「お互い大事にされてるんだね」
「そうだな」
不変の恋の歌を綴る春の宵だった。
(4)
「……てなわけだから。冬夜君は気にしなくて良いんだよ」
「なるほどな……」
少し照れくさそうにする冬夜君。
二人は来た道を戻りながら話をしている。
「新名さん……大丈夫なのか?」
「明日になったらケロッとしてるよ」
「そうか……ならいいんだけど」
「竹本君の方はどうなの?」
私が聞くと冬夜君はあっ!と思いだしたかのように言った。
「すっかり忘れてた。皆真鍋君の話に夢中で」
「真鍋君も大変だね。新名さんを応援するって言っちゃたけど」
「大変だろうね。そういう経験したことないから分からないけど」
この人は今自分が置かれいる状況が分かってないようだ。
それでいいんだ、この人は……。
私の事だけ考えていてくれたらいい。
食べ物の事ばかり考えているけど。
たまにエッチな事考えてるけど。
それは私がいるから大丈夫だよね?
冬夜君が私を好きで私は冬夜君を好き。
それは絶対不変の真諦。
「愛莉……ありがとうな」
「ほえ?」
「こんな僕だけど……たまに油断してミスするけど……」
ぽかっ
「もう過ぎたことは気にしない。さっき言ったよ。ただの事故なんだから気にする事ないって」
「そうだったな」
冬夜君は苦笑する。
うぅ……、これほどもどかしいと思った夜はない。
ここが冬夜君の家なら、二人きりの夜だったら。冬夜君と一つになるのに。
帰ったら一杯甘えよう。いっぱい愛を語ろう。愛してもらおう。
「あ、いたいた。愛莉!皆待ってるよ!早く来なよ!」
亜依が私達を探していたようだ。
大方皆で騒いでいるんだろう?
「行くか?」
冬夜君は少し残念そうだ。
私と同じ気持ちだったんだろうか?
「行くしかないよね?」
「そうだな……」
ため息を吐いている。
「大丈夫、私は帰ってから冬夜君に甘えるから」
そう言って冬夜君に抱き着く。
「一杯甘えさせてやるからな」
言ったね?約束だよ?
私達は部屋に向かった。
真諦を胸に抱いて。
春の夜はまだ眠らない。
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