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3rdSEASON
哀傷
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(1)
「うわぁ!!」
バタン!!
「まだまだ行くぞ竹本君!」
朝から新條さんが竹本君に「教育」している様を眺めていた。
何度も起き上がっては投げられ、投げられては起き上がりの繰り返し。
痛そうに見ている男性陣の中、僕はぼーっと眺めていた。
新條さんの一挙一動を脳裏に焼き付けるかのように見ていた。
因みに女性陣は朝ごはんの仕度に取り掛かっている。
酒井君はあの悪夢を思い出したのか震えながら目をつぶっている。
石原君は慣れているようで平然と見ていた。
竹本君はやがて力尽きて起き上がることすらできなくなっていた。
「情けないぞ竹本君!それでも男か!?女に投げられて悔しくないのか!!悔しいなら立って見せろ!」
竹本君は力を振り絞って立ち上がる。
目は完全に怯えていたけど。
そんな竹本君を見て「君は良し!次は……西松君!どこだ?」と、西松君を探す。
皆が一斉に西松君の方に指を差す。
「俺は遠慮します。女性に怪我をさせるのは趣味じゃない」
「その意気は良し!だが、遠慮はいらんぞ!」
新條さんは西松君を強引に引っ張りだすと、受け身の取り方を教える。
そしてここから公開処刑。
何度も何度も投げられる。
そんな新條さんをずっと見ていた。すごいなあ。なんでもそうだけど達人のプレイって魅せられるものがあるよね。
「何か俺に恨みでもあるんですか!?」
「特にない!ただお嬢様に『たっぷり仕込んでやれ』と言われただけだ!」
「みんな~ご飯できたよ~」
愛莉がご飯が出来たことを知らせにきた。
次は自分かと密かに怯えていた皆は愛莉の一言に感謝しそしてそそくさと道場を出る。
西松君もそそくさと出て行った。
僕と新條さんと愛莉の3人だけ。
僕はずっと正座を続けていた。
「お~い冬夜君」
これ護身術に使えないかな?前みたいなことが無いとも限らないし。覚えておくのに越したことは無い。そんな呑気な事を考えていた。
「冬夜君てば~!ご飯だよ!ご・は・ん!!」
愛莉を守るのに役立つなら覚えておきたい。
「君は自ら教育を受けたいというのか?」
僕は黙ってうなずいてみた。
「冬夜君はダメです!冬夜君の格好悪い所なんて見たくないもん」
僕はすっと立ち上がる。
「道着ってどこにありますか?」
「よく言った!噂に聞いていたが君は本当に騎士だな!更衣室に予備の道着が何着かあるはずだ!着替えてきなさい!」
「冬夜君駄目だってば!怪我しちゃったら私泣いちゃうよ!」
「大丈夫だから、新條さんも達人なんだろ?そんな怪我させるような真似しないよ……それに……」
「?」
「とにかく着替えてくるね」
そう言って更衣室に向かった。
更衣室で道着に着替えて出るとカンナが立っていた。カンナは僕を睨む。背後には愛莉が立っていた。
「どうしてこんなバカなことしてるんだ。今すぐ新條さんに謝って中止しろ!」
「これ、愛莉の為になると思ったんだけど」
「怪我するかもしれないのに愛莉の為ってお前本当に馬鹿か!愛莉心配で私に泣きついてきたんだぞ!愛莉を泣かせるような真似して何が愛莉の為だ!?」
「まあ、いいから」
そう言ってカンナを押しのけ道場に戻る。
中央に正座して待つ新條さん。
そして渡辺班全員が観客だった。
江口さんが僕を見つけるとすっと近づく。
「何を考えてるのか知らないけど新條は有段者よ。大丈夫なの?」
「その方が都合がいい」
「え?」
僕は道場の中央に向かう。
「じゃあ、まず受け身の取り方からだな」
「はい!」
「君筋がいいな、ちゃんと受け身とれてるじゃないか!」
「見てましたから」
「え?」
人差し指を顎に当て首を傾げる新條さん。
なんか可愛いな。そりゃそうだよな。普通に大人の女性なんだし。まだ独身なのかな?
「こらぁ~余計な事考えちゃだめ~!」
愛莉にはバレてた。
「そんな余裕もこれからなくなるさ。な?片桐君」
そう言って右前に構える新條さんに正対し自然体に構える僕。
「合図はなしだ。いつでもかかって来い!」
そう言われると新條さんの呼吸を観察する。
吸って吐いて吸って吐いて……当たり前だけどリズムがある。
そのリズムとタイミングを慎重に計る。
その落ち着き払った僕を見て何かを感じたのか呼吸が乱れている。
いけそうだ!
新條さんが息を吸ったその瞬間僕は一足飛びで新條さんの懐にはいる。僕の襟を掴もうとする新條さんの腕を取り、右足前回りで彼女を背負う形になる、その勢いを利用して新條さんを肩越しに円を描くように投げる。確か腕は最後まで離したらだめだっけ?
バタン!!
投げられたのは新條さんだった。
シーンと静まり返る道場内。
「ま、まだまだ!」
そう言って攻めてくる新條さんを右前に崩し、引きつけながら右足を後方に回して新條さんを後ろ腰に密着させ、右足で体重の乗っている新條さんの右足を払い上げつつ回して前方に投げる。
一方的な公開処刑は新條さんの方だった。
段位持ちという自負もあるのか何度も僕に迫ってくる。
柔道は先に動いた方が不利だと思う。
ちょっと仕掛けてやるだけで姿勢を簡単に崩す。
その後も大外刈り、大内刈り、内股と新條さんが見せてくれた技を仕掛ける。
そして、新條さんは立ち上がると僕に言った。
新條さんの息は上がっている。
「君に教育は無理だな」
「いえ、十分教えてもらいました。ありがとうございます」と一礼する。
皆は呆然と見ていた。
愛莉のそんな顔見るの久しぶりだな。
(2)
「はい、たーんと召し上がれ」
愛莉は僕の茶碗に漫画やアニメに出てきそうな山盛りにご飯を注いでくれた。
新條さんの「教育」の後、愛莉は上機嫌だった。
自分の彼氏を誇らしげに思ったのだろう。そんな気分にさせてやれたことを嬉しく思う。
「しかし冬夜の『ゾーン』は何にでも応用できるんだな」
渡辺君がそう言って褒めてくれた。
「チートも良い所だろ。相手の技見るだけで盗めるなんて」
桐谷君が、そう評してくれた。誇りの略奪って言うらしい、その特殊技能の事を。
「でもそれだけじゃ駄目だろ。相手だって防いでくるのに教科書通りなんてできねーよ」
カンナがそう言うと僕は答えた。
「なんか周りの時間がスローモーションになるんだよね。静かな空間でさ。自分と相手の呼吸音がはっきりと聞こえるんだ。バスケやテニスの時もそう。あ、ここにくるんだなって予測がついちゃう」
「それをゾーンって言うんだろ?」と渡辺君は返してきた。
「冬夜君おかわりいる?」
「あ、じゃあおかわり」
愛莉に茶碗を渡す。
「そうか!そういう事だったのか!」
誠が叫んだ。何事かと皆が注目する。
「どうしたんだ誠君」
渡辺君が誠に尋ねると誠は言った。
「こいつアレするときに動画とかDVDのプレイを忠実に再現するらしいんですよ。それにゾーン、しかもファンタジスタと来た日には……想像を絶する世界が……」
バコッ!
「朝からしょうもない事いってんじゃねーよ、この馬鹿は!」
カンナの怒声が飛ぶ。
「だって何でもあり過ぎだろ冬夜の奴!スポーツは何でもあり。他人の心は読む。挙句ドラテクまでありときたもんだ。絶対あれの時だって何かの能力使ってるって……」
「私も冬夜君は使ってると思う。誠君の言った特殊技能ってやつ……だって、本当に素敵な気分になるんだもん♪」
愛莉は顔を赤く染めながら誠の疑問に答えた。
まあ、使ってるけどね……しょうがないだろ。自動的に発動するんだから。
具体的に説明しろって?なんとなく愛莉の事考えてるだけだよ。前に言ってたろ?愛莉の気持ちになってやればいいって。そしたら自然と浮かんでくるんだ。愛莉が何を求めてるか……。
ぽかっ
「冬夜君今凄くえっちな事考えてたでしょ!?鼻の下伸びてたよ」
しょうがないなあ。愛莉に今考えてたことをそっと耳元で囁いてやる。すると愛莉の顔は紅潮し下を向く。そして……。
ぽかぽかっ
「そういう時は二人きりの時に言って!罰として次のおかわりは無し!」
「隠し事はしないって言っただろ?」
「時と場所を考えってって言ってるの」
「なになに?片桐君愛莉になんて言ったの?やけに恥ずかしがってるけど」
「亜依たちには内緒だもん!」
「隠さないといけないような事言ったわけ?」
女性陣が愛莉に詰め寄ってる中誠が僕の肩を叩く。
「あとで俺たちの部屋に集合な。遠坂さんには内緒だぞ」
「何するの?」
「あとのお楽しみってもんよ」
誠はそう言うとにやりと笑う。
別に予定はないからいいけど、なんか誠の笑みが気になる。
愛莉たちは会話に夢中で気づかなかった。
そしてそんな中ひそひそと話しあう花山さんと西松君に誰も気づかなかった。
(3)
私達は朝ごはんの片づけをした後、お昼ごはんは何にするかで再び迷う。
夜の分は食材が無いので竹本君、真鍋君、新名さん、木下さんの4人で買い出しに行ってもらった。
「多分湯布院の方に抜けたらスーパーがあったと思うから」と恵美が言う。
どうしてその4人にしたかと言うと4人同じ車で来てたから。
男だけに選ばせると肉しか買ってこないから。
「それにしても男共一人として手伝いに来やしない。何考えてるんだか」
「神奈ちゃんそれが男ってものよ。家事は女性がやるものという先入観で生きてる」
「でも恵美。冬夜君は家にいる時無駄に手伝うよって言ってくるよ?……こんな言い方したら悪いかもしれないけどちょっと苦手っぽいから『そこで待ってて』って言うけど……」
出来るだけソフトに言ったつもりだった。
「誠も似たようなものさ、付き合いたての頃は手伝うって張り切ってたけど、途中から悪ふざけしだすからもうテーブルで待ってろ!ってな……それ続けてたら手伝うとすら言わなくなった」
「カンナもなんだ。冬夜君も最近は手伝うって言わなくなった。一人でぼーっとゲームしてたり寝てたり。意地悪してあげるんだけどね」
「折角マナー講座に誘ったのに『パス』の一言だしね」
恵美は不満のようだ。まあ、女性なら誰でも不満に思うよね?
「同棲も色々大変なんですね。私達には分からないな」
一ノ瀬さんと大島さんが言う。
そう言えば志水さんは?
「善君はバイトしたりで忙しいからね。私が善君のいない間にやってるわ」
「晶ちゃんだって勉強で忙しいでしょ?お互い様なんじゃなくて」
「私が半分力づくで同棲にしたって負い目もあるしね」
「結局面倒事は女性陣に押し付けて自分たちはのんびりしてるってあり得なくない?」
亜依は酷く憤慨してる。亜依も桐谷君の家に行って掃除とかしてるんだっけ?
「でも私はこういうのも悪くないと思うぜ。なんか女子だけでわいわいやるって楽しいじゃん」
と美嘉さんは言う。まあ、一人で家事をやってるよりかは楽しいかな?
「女性陣と言えば花山さんみないわね」
恵美が言うと、亜依が首を振って言った。
「『私そう言うの興味ないからパス~』ってどっか行っちゃったわよ。何考えてるんだか」
「それより昼のメニューどうする?またラーメンにする?」
インスタントラーメンはまだ残っている。
「手間かかるかもしれないけどカレーとかでいいんじゃない?2日ラーメン続くと飽きた~とか文句言う男もいるでしょ」
ちなみに冬夜君は放っておくと一週間はラーメンで過ごすタイプだ。
今は私が管理してるからそんなこと許さないけど。
「カレーか……恵美、香辛料とかってあるのか?」
「あるわよ、でもルーから作るわけ?」
「任せておけ、ばっちりだ」
片づけが終わると、早速仕込みにかかる。
6種類の香辛料を使って作る。
カレーベースは美嘉さんに任せてその間にご飯を炊いたり他の具材の準備をしておく。
今回作るのはチキンカレー。
温めてあるカレーベースに鶏もも肉を投入。
弱火にして肉汁を利用して煮込む。焦げつきそうになれば少量の水を加え焦げない様に注意する。
鶏肉を触ってみて弾力があったら火が通っている証拠。トマトを加える。
その後ガラムマサラとパクチーを加えて完成。
ガラムマサラは私たちが調理してる間に美嘉さんが作ってくれた。
良い匂いが立ちこめる。
カレーは少し寝かせておいて。その間に私たちは新條さんに寄るテーブルマナーの講座に赴く。
男性陣は一人も来ない。
「僭越ながら私がエスコート役といきましょう」
そう言って、テーブルマナーを学んでいく。
そうしてる間に真鍋君たちが戻ってくる。
大量の食材を買ってくる真鍋君たち。中にはお菓子とかドリンクも入っていた。
時計を見る、そろそろお昼の頃あいだ。
冬夜君たちは降りてこない。
「愛莉、男共を呼んできて」
「うん」
そう言って、2階の寝室に向かうと途中で、西松君と遭遇した。
待ち構えていたようだ。
「やっぱり、遠坂さんが来ると思っていましたよ」
私は無視して男子の寝室へと向かう。
西松君が私の腕を掴む。
「離して!!」
これだけ大声で叫べば男性陣も気づいてくれるはず。
「残念だけど男性陣は寝室にはいませんよ、視聴覚室にいます。お楽しみの際中のようですね。女性のあなたが行くのは野暮というものだ」
視聴覚室、男性だけ、お楽しみ……なんとなく想像がついた。
冬夜君、またそんなことしているの?
昼間っから性懲りもなく……。
私は視聴覚室へと向かおうとしたが、西松君が手を離さない。
「いい加減にして、人を呼ぶわよ!」
「誰も来やしませんよ。
西松君は私を通路の壁に押し付けると、もう片方と手で壁をどんと叩く。
思わず身が震える。壁ドンって女性がきゅんと来るシチュエーションって聞いたけど恐怖しかわいてこない。
「光栄に思ってください。僕をここまで本気にさせたのはあなたが初めてだ」
そう言って彼の顔が私の顔に急接近する。
唇と唇が接近する。
イヤだ。こんな男とキスするなんて絶対いや。
拒もうと一生懸命彼の顔を必死で遠ざけようとするがその腕を掴まれ抵抗する手段も封じられた。後はもう顔を背けるしかない。
「好きだよ」
それが冬夜君の声だったらどんなにうれしい事か。でも今愛を囁いてるのは西松君。泣きそうになる。足が震える。
そんな時彼の私の腕を掴む手が振りほどかれ、彼が目の前から消えた。
新條さんだ。新條さんは彼の腕を掴むと思いっきり投げ飛ばした。ここは道場の畳の上じゃない。通路の硬いタイルの上だ。
痛みで起き上がれない西松君。
「お嬢様に言われてきてみればこの下劣な男は徹底的に教育が必要なようだ。遠坂さんは男性を呼びに行って下さい」
新條さんがそう言うと私は視聴覚室に向かった。
視聴覚室のドアを開けると、大音量のいやらしい声とえっちな映像がプロジェクターに映し出されている。
「やばい!停止しろ!!」
そんな声が聞こえてくる。
「ど、どうしたんだい遠坂さん。お、お昼ごはんの誘いかな?」
引きつった笑い顔をする誠君。
さっきまでの恐怖と恥ずかしさと怒りが混在してなんて声をあげたらいいか分からない。
すると背後に誰かが立っていた。カンナだ。
カンナは無言で部屋に入ると誠君からリモコンを取りあげ再び再生させる。それを数秒間見るとカンナは停止させる。
「誠……お前ってやつは……」
「しょうがないだろ!プロジェクターあるって聞いたからさ。これは見るしかないだろうって……」
「この馬鹿が!トーヤはどこだ!?愛莉が怖い目にあったっていうのにこんなDVD見てたのか」
「冬夜ならさっき花山さんに連れ出されたよ」
「えっ?」
冬夜君また花山さんと二人っきりなの?
しまった。花山さんが一人で行動してると聞いた時に気づくべきだった。
恐怖、恥ずかしさ、怒り、不安。
4つの感情が混在して何を考えたらいいのか分からない。
冬夜君の事を疑っているわけじゃない。
ただ、無事であることを祈ることにした。
(4)
視聴覚室なんてものもこの別荘にはあるんだな。
プロジェクターがあると聞いて誠は持ってきたDVDを見ようと提案する。
朝に言ってたのはこの事か。
半分呆れながら眺めていた。
シスター物ってやつ?
気持ちが悪い。趣味じゃないな。みんなはほぼ等身大のその映像に目を奪われている。
その時ドアが開いた。
振り返ると花山さんが立っていた。
「ああ、男性だけでこんなの見てる~皆にチクっちゃおうかなぁ~」
恥ずかしがるそぶりも見せずに彼女はそう言う。
「あ、いや。それは勘弁」
誠が言うと、花山さんはにこりと笑う。
「内緒にしていてあげる代わりに一つお願いがあるんですけど~。冬夜君ちょっとだけ借りてもいいですか~?」
「どうぞどうぞ」
誠はそう言って僕を花山さんに差し出す。
「誠お前……」
「ここは友情ってやつで頼むわ」
「冬夜君、いこっ?」
そう言って僕は、昨夜愛莉と話をしていた場所に連れていかれた。
「何の用?」
僕がそう言うと、花山さんは頭を下げる。
「昨日はごめんなさい。一時の感情とはいえとんでもない事してしまいました~」
多分本気で謝ってるわけじゃないんだろうが、相手にするだけ時間の無駄だ。
「別にいいよ、じゃあね」
そう言って視聴覚室にもどろうとする僕の腕を掴む花山さん。
「離せよ」
「冬夜君もああいうDVD興味あるんですか?」
「いや、別に」
「じゃあ、ここでお話ししましょうよ~」
うまい具合に花山さんのペースに乗せられてる気がする……。
「花山さんは他の女子とは行動しないの?」
「あんまり家事とか興味ないし」
「女性同士で親睦を深めることも重要だと思うけど」
「どうせ、皆私の敵だから……疎外感しかないんですよね」
僕も花山さんに好感してるわけじゃないんだけど。
「花山さんは女友達とかいないの?」
「いませんよ。皆私に嫉妬してるから。私が可愛いから。私に男とられるんじゃないかって警戒して誰も近寄らない」
不覚にも花山さんに同情してしまった。愛莉と境遇が似ていたから。その後の行動は愛莉と全然違うけど。
「大変だったんだな」
「……そこは同情してくれるんだ?」
「まあね、想像してしまったから」
興味のない男の事で嫉妬される女性の辛さは愛莉を観てきて分かってる。守ってやりたいとすら思えてくる。
でもそれはカンナも一緒だし恐らく「渡辺班」の半分くらいの女性が体験したことなんじゃないのか?
「花山さんみたいな境遇の人「渡辺班」にはたくさんいると思うよ。彼女たちなら花山さんの気持ち分かってくれると思うけど」
「こんな話したの冬夜君が初めてだから……」
彼女はそう言うとにこりと笑う。
「冬夜君だから話せる事、出来る事ってあるんですよ。こう見えて、素の自分を見せてるつもりなんだけど」
「他の人にも見せたらいいじゃないか?皆相談に乗ってくれるよ」
「女性陣には敵視されてるからむりですよ~」
「志水さんもそうだったよ」
「私はああはなりたくないから。自分に妥協してそこら辺の男で我慢するなんて無理」
「そうかな?」
「……どういう意味ですか?」
花山さんの顔つきが変わる。何かいけないことに触れたのだろうか?
「竹本君と話してる時、凄く楽しそうに思えたけど」
僕がそう言うと花本さんは鼻で笑った。
「それはないですよ、珍しく彼からアプローチがあったから、話してあげただけ」
「本当にそれだけかな?」
「それだけですよ。私理想が高いんです」
「理想の男性って?」
「冬夜君」
「それはゲームで言ってるだけだろ?本当は西松君とかの方が理想なんじゃない?価値観もあってるし」
「冬夜君、まるで私を遠ざけてるみたい。ちゃんと私を見てよ」
「……その気持ちには答えられない。残念だけど」
「すごい、本当にわかるんですね?」
花山さんの気持ちちょっとだけ覗いてみた。花山さんの言ってることに嘘はない。でも残念だけど僕はそれに応えることは出来ない。それに……。
「本当は竹本君の事も気になってるんでない?」
「彼を見ているとイライラするだけです。好きな人が目の前にいるのに何もアクション起こさない彼についイラッとして……」
「それは過去の経験的な何か?」
「……本当に心読んじゃうんですね」
花山さんは驚いているようだ。図星だったのかな?
「あ、冬夜君いたいた!」
愛莉が僕を探していたようだ。
愛莉は僕と花山さんを見るとまっすぐ僕の方へと向かってくる。
そして僕の腕を掴み彼女を睨みつける。
「冬夜君、お昼ごはんで来たよ~」
「そっか、じゃあ花山さんもいこうか?」
「はい!」
そう言って蟻が持つ腕と反対の腕を掴む花山さん。
愛莉は花山さんを睨みつける。
僕は両腕を掴まれ歩きづらかった。
花山さんの事を考えていた。
竹本君を見ているとイライラする。
それはまるで過去の自分を重ねているようにも思えた。
何があったのだろう?
(5)
買い出しの帰り。
昨日のことなど無かったかのように皆ではしゃいでいた。
真鍋君も敢えて昨日の事には触れないようにしているらしい。
このまま触れないようにしていたかったけど新名さん自身が切り出した。
「あのぅ……昨日の夜何か失礼なことしませんでした?」
新名さんが真鍋君に聞くと、真鍋君は「特に何もなかったよ。気にすることない」と言った。
何もなかったことにするのが正しいのかもしれない。
それでリセットできるなら。もう一度一からやり直せるなら。
でも擬えるという言葉がある。運命は何度やり直しても同じことを繰り返すという言葉がある。
ゲームに強くてニューゲームというシステムがある。
ゲームクリア時のデータを引き継いで、一からやり直すというシステム。
この場合記憶を引き継いでやり直さないと運命の歯車は同じレールを進んでしまうんじゃないだろうか?
それでも同じ記憶を持っていればやっぱり擬えてしまうんだろうか?
同じ感情を持って同じ事を繰り返して。
何度も何度も繰り返して生きていく。
それは無限ループのように続いていく。
自分の意思でレールを切り替えるしかないんだ。
人は「あの時ああすれば良かった」「今から戻ってやり直したい」とよく口にする。
でも、そんなの無理。絶対に同じ道を選ぶ。
だってその時はそれが自分にとって最善の選択だったのだから。
「竹山君は何か知らないですか?」
新名さんは僕に話を振った。
「いや、特に何もなかったよ?」
「そうですか……」
それで話は終わるはずだった。
「新名さん好きな男性のタイプとかあるの?」
真鍋君が突然切り出した。
新名さんは俯いて黙ってしまう。
僕は真鍋君の顔を見る。
やってしまった~という顔をしている。
「未来ならどんな人でもきっとうまくいくよ」
海未ちゃんがそう言うと「そうかな~」と嬉しそうな顔をする。そして真鍋君の顔をルームミラー越しに見ているが真鍋君の顔は固いままだ。
「俺もそう思うよ。『渡辺班』は縁結びのグループ。渡辺君や指原さんに相談すると良い」
真鍋君が言うと彼女は再び暗い顔をする。
僕にもわかる。真鍋君が意図的に自分から新名さんを遠ざけようとしている事くらい。
僕にもわかるくらいだから新名さんも気づいてるんだろう。
やがて新名さんは意を決したように言った。
「私のタイプが真鍋君だと言ったらどうしますか?」
僕も海未ちゃんも言葉が出なかった。
真鍋君も無表情で車を運転している。
新名さんは追撃をかける。
「真鍋君は私を選んでくれますか?」
新名さんがそう言うと真鍋君は黙ってしまった。
車内が沈黙に包まれる。真鍋君が何言わないと事態は収拾しないよ。
「なんてね、ただの冗談だから、真に受けちゃだめですよ」
冗談にしてなかったことにしようとする新名さん。
「残念だけど俺好きな人いるんだ」
「その人にはその事伝えたんですか?」
少し間をおいて新名さんが聞いてみたら、真鍋君は首を振った。
「いや、まだ言えてない。言う機会が無くてね」
「その人は誰か付き合ってる人いるんですか?」
「いや、誰もいないと思う」
「ちゃんと聞いたんですか?」
「ああ、聞いてるよ。その人結婚してたんだ。旦那に先立たれてね」
「そうなんだ……」
新名さんがそう言うと、再び静寂の時が流れていく。
「て、ことは真鍋君以外の人を好きになるかもしれないってことだよね」
僕がそう言うと真鍋君はすぐに否定した。
「あの人が誰かを好きになるなんてことは無いよ。多分ね」
「じゃあ、真鍋君も好きになったってしょうがないじゃないんじゃ……」
「好きになるって理屈じゃない事くらい竹本も知ってるだろ」
「そうだね……」
「それなら、私にも言えますよね。私諦めないから!幾らでも待つから」
新名さんがそう言うと真鍋君は考え込んでしまう。
車が別荘に到着した。
荷物を手に車を降りる。
「新名さん、あのさ……」
真鍋君が何かを言おうとするけど、新名さんは「皆待ってますよ。急ぎましょう」とその場から逃げる。
真鍋君から逃げてるように思えた。
海未ちゃんも新名さんの後を追う。
「真鍋君、僕達も行こう?」
「そうだな……」
真鍋君の気持ちは何となくはわかるけど、新名さんの気持ちの方が強く分かってしまうんだ。
新名さんは強いな。
駄目ってわかってても何度も諦めずに挑んでいる。
僕はまだ自分の気持ちに向き合う事すらできないでいるのに。
どうして駄目だと分かってる人を好きになってしまうのだろう?
運命のいたずらという奴なのだろうか?
そんな運命に戦えずにいた。
運命と対峙しないものに女神が微笑むことなど決してないと分かっているのに……。
「うわぁ!!」
バタン!!
「まだまだ行くぞ竹本君!」
朝から新條さんが竹本君に「教育」している様を眺めていた。
何度も起き上がっては投げられ、投げられては起き上がりの繰り返し。
痛そうに見ている男性陣の中、僕はぼーっと眺めていた。
新條さんの一挙一動を脳裏に焼き付けるかのように見ていた。
因みに女性陣は朝ごはんの仕度に取り掛かっている。
酒井君はあの悪夢を思い出したのか震えながら目をつぶっている。
石原君は慣れているようで平然と見ていた。
竹本君はやがて力尽きて起き上がることすらできなくなっていた。
「情けないぞ竹本君!それでも男か!?女に投げられて悔しくないのか!!悔しいなら立って見せろ!」
竹本君は力を振り絞って立ち上がる。
目は完全に怯えていたけど。
そんな竹本君を見て「君は良し!次は……西松君!どこだ?」と、西松君を探す。
皆が一斉に西松君の方に指を差す。
「俺は遠慮します。女性に怪我をさせるのは趣味じゃない」
「その意気は良し!だが、遠慮はいらんぞ!」
新條さんは西松君を強引に引っ張りだすと、受け身の取り方を教える。
そしてここから公開処刑。
何度も何度も投げられる。
そんな新條さんをずっと見ていた。すごいなあ。なんでもそうだけど達人のプレイって魅せられるものがあるよね。
「何か俺に恨みでもあるんですか!?」
「特にない!ただお嬢様に『たっぷり仕込んでやれ』と言われただけだ!」
「みんな~ご飯できたよ~」
愛莉がご飯が出来たことを知らせにきた。
次は自分かと密かに怯えていた皆は愛莉の一言に感謝しそしてそそくさと道場を出る。
西松君もそそくさと出て行った。
僕と新條さんと愛莉の3人だけ。
僕はずっと正座を続けていた。
「お~い冬夜君」
これ護身術に使えないかな?前みたいなことが無いとも限らないし。覚えておくのに越したことは無い。そんな呑気な事を考えていた。
「冬夜君てば~!ご飯だよ!ご・は・ん!!」
愛莉を守るのに役立つなら覚えておきたい。
「君は自ら教育を受けたいというのか?」
僕は黙ってうなずいてみた。
「冬夜君はダメです!冬夜君の格好悪い所なんて見たくないもん」
僕はすっと立ち上がる。
「道着ってどこにありますか?」
「よく言った!噂に聞いていたが君は本当に騎士だな!更衣室に予備の道着が何着かあるはずだ!着替えてきなさい!」
「冬夜君駄目だってば!怪我しちゃったら私泣いちゃうよ!」
「大丈夫だから、新條さんも達人なんだろ?そんな怪我させるような真似しないよ……それに……」
「?」
「とにかく着替えてくるね」
そう言って更衣室に向かった。
更衣室で道着に着替えて出るとカンナが立っていた。カンナは僕を睨む。背後には愛莉が立っていた。
「どうしてこんなバカなことしてるんだ。今すぐ新條さんに謝って中止しろ!」
「これ、愛莉の為になると思ったんだけど」
「怪我するかもしれないのに愛莉の為ってお前本当に馬鹿か!愛莉心配で私に泣きついてきたんだぞ!愛莉を泣かせるような真似して何が愛莉の為だ!?」
「まあ、いいから」
そう言ってカンナを押しのけ道場に戻る。
中央に正座して待つ新條さん。
そして渡辺班全員が観客だった。
江口さんが僕を見つけるとすっと近づく。
「何を考えてるのか知らないけど新條は有段者よ。大丈夫なの?」
「その方が都合がいい」
「え?」
僕は道場の中央に向かう。
「じゃあ、まず受け身の取り方からだな」
「はい!」
「君筋がいいな、ちゃんと受け身とれてるじゃないか!」
「見てましたから」
「え?」
人差し指を顎に当て首を傾げる新條さん。
なんか可愛いな。そりゃそうだよな。普通に大人の女性なんだし。まだ独身なのかな?
「こらぁ~余計な事考えちゃだめ~!」
愛莉にはバレてた。
「そんな余裕もこれからなくなるさ。な?片桐君」
そう言って右前に構える新條さんに正対し自然体に構える僕。
「合図はなしだ。いつでもかかって来い!」
そう言われると新條さんの呼吸を観察する。
吸って吐いて吸って吐いて……当たり前だけどリズムがある。
そのリズムとタイミングを慎重に計る。
その落ち着き払った僕を見て何かを感じたのか呼吸が乱れている。
いけそうだ!
新條さんが息を吸ったその瞬間僕は一足飛びで新條さんの懐にはいる。僕の襟を掴もうとする新條さんの腕を取り、右足前回りで彼女を背負う形になる、その勢いを利用して新條さんを肩越しに円を描くように投げる。確か腕は最後まで離したらだめだっけ?
バタン!!
投げられたのは新條さんだった。
シーンと静まり返る道場内。
「ま、まだまだ!」
そう言って攻めてくる新條さんを右前に崩し、引きつけながら右足を後方に回して新條さんを後ろ腰に密着させ、右足で体重の乗っている新條さんの右足を払い上げつつ回して前方に投げる。
一方的な公開処刑は新條さんの方だった。
段位持ちという自負もあるのか何度も僕に迫ってくる。
柔道は先に動いた方が不利だと思う。
ちょっと仕掛けてやるだけで姿勢を簡単に崩す。
その後も大外刈り、大内刈り、内股と新條さんが見せてくれた技を仕掛ける。
そして、新條さんは立ち上がると僕に言った。
新條さんの息は上がっている。
「君に教育は無理だな」
「いえ、十分教えてもらいました。ありがとうございます」と一礼する。
皆は呆然と見ていた。
愛莉のそんな顔見るの久しぶりだな。
(2)
「はい、たーんと召し上がれ」
愛莉は僕の茶碗に漫画やアニメに出てきそうな山盛りにご飯を注いでくれた。
新條さんの「教育」の後、愛莉は上機嫌だった。
自分の彼氏を誇らしげに思ったのだろう。そんな気分にさせてやれたことを嬉しく思う。
「しかし冬夜の『ゾーン』は何にでも応用できるんだな」
渡辺君がそう言って褒めてくれた。
「チートも良い所だろ。相手の技見るだけで盗めるなんて」
桐谷君が、そう評してくれた。誇りの略奪って言うらしい、その特殊技能の事を。
「でもそれだけじゃ駄目だろ。相手だって防いでくるのに教科書通りなんてできねーよ」
カンナがそう言うと僕は答えた。
「なんか周りの時間がスローモーションになるんだよね。静かな空間でさ。自分と相手の呼吸音がはっきりと聞こえるんだ。バスケやテニスの時もそう。あ、ここにくるんだなって予測がついちゃう」
「それをゾーンって言うんだろ?」と渡辺君は返してきた。
「冬夜君おかわりいる?」
「あ、じゃあおかわり」
愛莉に茶碗を渡す。
「そうか!そういう事だったのか!」
誠が叫んだ。何事かと皆が注目する。
「どうしたんだ誠君」
渡辺君が誠に尋ねると誠は言った。
「こいつアレするときに動画とかDVDのプレイを忠実に再現するらしいんですよ。それにゾーン、しかもファンタジスタと来た日には……想像を絶する世界が……」
バコッ!
「朝からしょうもない事いってんじゃねーよ、この馬鹿は!」
カンナの怒声が飛ぶ。
「だって何でもあり過ぎだろ冬夜の奴!スポーツは何でもあり。他人の心は読む。挙句ドラテクまでありときたもんだ。絶対あれの時だって何かの能力使ってるって……」
「私も冬夜君は使ってると思う。誠君の言った特殊技能ってやつ……だって、本当に素敵な気分になるんだもん♪」
愛莉は顔を赤く染めながら誠の疑問に答えた。
まあ、使ってるけどね……しょうがないだろ。自動的に発動するんだから。
具体的に説明しろって?なんとなく愛莉の事考えてるだけだよ。前に言ってたろ?愛莉の気持ちになってやればいいって。そしたら自然と浮かんでくるんだ。愛莉が何を求めてるか……。
ぽかっ
「冬夜君今凄くえっちな事考えてたでしょ!?鼻の下伸びてたよ」
しょうがないなあ。愛莉に今考えてたことをそっと耳元で囁いてやる。すると愛莉の顔は紅潮し下を向く。そして……。
ぽかぽかっ
「そういう時は二人きりの時に言って!罰として次のおかわりは無し!」
「隠し事はしないって言っただろ?」
「時と場所を考えってって言ってるの」
「なになに?片桐君愛莉になんて言ったの?やけに恥ずかしがってるけど」
「亜依たちには内緒だもん!」
「隠さないといけないような事言ったわけ?」
女性陣が愛莉に詰め寄ってる中誠が僕の肩を叩く。
「あとで俺たちの部屋に集合な。遠坂さんには内緒だぞ」
「何するの?」
「あとのお楽しみってもんよ」
誠はそう言うとにやりと笑う。
別に予定はないからいいけど、なんか誠の笑みが気になる。
愛莉たちは会話に夢中で気づかなかった。
そしてそんな中ひそひそと話しあう花山さんと西松君に誰も気づかなかった。
(3)
私達は朝ごはんの片づけをした後、お昼ごはんは何にするかで再び迷う。
夜の分は食材が無いので竹本君、真鍋君、新名さん、木下さんの4人で買い出しに行ってもらった。
「多分湯布院の方に抜けたらスーパーがあったと思うから」と恵美が言う。
どうしてその4人にしたかと言うと4人同じ車で来てたから。
男だけに選ばせると肉しか買ってこないから。
「それにしても男共一人として手伝いに来やしない。何考えてるんだか」
「神奈ちゃんそれが男ってものよ。家事は女性がやるものという先入観で生きてる」
「でも恵美。冬夜君は家にいる時無駄に手伝うよって言ってくるよ?……こんな言い方したら悪いかもしれないけどちょっと苦手っぽいから『そこで待ってて』って言うけど……」
出来るだけソフトに言ったつもりだった。
「誠も似たようなものさ、付き合いたての頃は手伝うって張り切ってたけど、途中から悪ふざけしだすからもうテーブルで待ってろ!ってな……それ続けてたら手伝うとすら言わなくなった」
「カンナもなんだ。冬夜君も最近は手伝うって言わなくなった。一人でぼーっとゲームしてたり寝てたり。意地悪してあげるんだけどね」
「折角マナー講座に誘ったのに『パス』の一言だしね」
恵美は不満のようだ。まあ、女性なら誰でも不満に思うよね?
「同棲も色々大変なんですね。私達には分からないな」
一ノ瀬さんと大島さんが言う。
そう言えば志水さんは?
「善君はバイトしたりで忙しいからね。私が善君のいない間にやってるわ」
「晶ちゃんだって勉強で忙しいでしょ?お互い様なんじゃなくて」
「私が半分力づくで同棲にしたって負い目もあるしね」
「結局面倒事は女性陣に押し付けて自分たちはのんびりしてるってあり得なくない?」
亜依は酷く憤慨してる。亜依も桐谷君の家に行って掃除とかしてるんだっけ?
「でも私はこういうのも悪くないと思うぜ。なんか女子だけでわいわいやるって楽しいじゃん」
と美嘉さんは言う。まあ、一人で家事をやってるよりかは楽しいかな?
「女性陣と言えば花山さんみないわね」
恵美が言うと、亜依が首を振って言った。
「『私そう言うの興味ないからパス~』ってどっか行っちゃったわよ。何考えてるんだか」
「それより昼のメニューどうする?またラーメンにする?」
インスタントラーメンはまだ残っている。
「手間かかるかもしれないけどカレーとかでいいんじゃない?2日ラーメン続くと飽きた~とか文句言う男もいるでしょ」
ちなみに冬夜君は放っておくと一週間はラーメンで過ごすタイプだ。
今は私が管理してるからそんなこと許さないけど。
「カレーか……恵美、香辛料とかってあるのか?」
「あるわよ、でもルーから作るわけ?」
「任せておけ、ばっちりだ」
片づけが終わると、早速仕込みにかかる。
6種類の香辛料を使って作る。
カレーベースは美嘉さんに任せてその間にご飯を炊いたり他の具材の準備をしておく。
今回作るのはチキンカレー。
温めてあるカレーベースに鶏もも肉を投入。
弱火にして肉汁を利用して煮込む。焦げつきそうになれば少量の水を加え焦げない様に注意する。
鶏肉を触ってみて弾力があったら火が通っている証拠。トマトを加える。
その後ガラムマサラとパクチーを加えて完成。
ガラムマサラは私たちが調理してる間に美嘉さんが作ってくれた。
良い匂いが立ちこめる。
カレーは少し寝かせておいて。その間に私たちは新條さんに寄るテーブルマナーの講座に赴く。
男性陣は一人も来ない。
「僭越ながら私がエスコート役といきましょう」
そう言って、テーブルマナーを学んでいく。
そうしてる間に真鍋君たちが戻ってくる。
大量の食材を買ってくる真鍋君たち。中にはお菓子とかドリンクも入っていた。
時計を見る、そろそろお昼の頃あいだ。
冬夜君たちは降りてこない。
「愛莉、男共を呼んできて」
「うん」
そう言って、2階の寝室に向かうと途中で、西松君と遭遇した。
待ち構えていたようだ。
「やっぱり、遠坂さんが来ると思っていましたよ」
私は無視して男子の寝室へと向かう。
西松君が私の腕を掴む。
「離して!!」
これだけ大声で叫べば男性陣も気づいてくれるはず。
「残念だけど男性陣は寝室にはいませんよ、視聴覚室にいます。お楽しみの際中のようですね。女性のあなたが行くのは野暮というものだ」
視聴覚室、男性だけ、お楽しみ……なんとなく想像がついた。
冬夜君、またそんなことしているの?
昼間っから性懲りもなく……。
私は視聴覚室へと向かおうとしたが、西松君が手を離さない。
「いい加減にして、人を呼ぶわよ!」
「誰も来やしませんよ。
西松君は私を通路の壁に押し付けると、もう片方と手で壁をどんと叩く。
思わず身が震える。壁ドンって女性がきゅんと来るシチュエーションって聞いたけど恐怖しかわいてこない。
「光栄に思ってください。僕をここまで本気にさせたのはあなたが初めてだ」
そう言って彼の顔が私の顔に急接近する。
唇と唇が接近する。
イヤだ。こんな男とキスするなんて絶対いや。
拒もうと一生懸命彼の顔を必死で遠ざけようとするがその腕を掴まれ抵抗する手段も封じられた。後はもう顔を背けるしかない。
「好きだよ」
それが冬夜君の声だったらどんなにうれしい事か。でも今愛を囁いてるのは西松君。泣きそうになる。足が震える。
そんな時彼の私の腕を掴む手が振りほどかれ、彼が目の前から消えた。
新條さんだ。新條さんは彼の腕を掴むと思いっきり投げ飛ばした。ここは道場の畳の上じゃない。通路の硬いタイルの上だ。
痛みで起き上がれない西松君。
「お嬢様に言われてきてみればこの下劣な男は徹底的に教育が必要なようだ。遠坂さんは男性を呼びに行って下さい」
新條さんがそう言うと私は視聴覚室に向かった。
視聴覚室のドアを開けると、大音量のいやらしい声とえっちな映像がプロジェクターに映し出されている。
「やばい!停止しろ!!」
そんな声が聞こえてくる。
「ど、どうしたんだい遠坂さん。お、お昼ごはんの誘いかな?」
引きつった笑い顔をする誠君。
さっきまでの恐怖と恥ずかしさと怒りが混在してなんて声をあげたらいいか分からない。
すると背後に誰かが立っていた。カンナだ。
カンナは無言で部屋に入ると誠君からリモコンを取りあげ再び再生させる。それを数秒間見るとカンナは停止させる。
「誠……お前ってやつは……」
「しょうがないだろ!プロジェクターあるって聞いたからさ。これは見るしかないだろうって……」
「この馬鹿が!トーヤはどこだ!?愛莉が怖い目にあったっていうのにこんなDVD見てたのか」
「冬夜ならさっき花山さんに連れ出されたよ」
「えっ?」
冬夜君また花山さんと二人っきりなの?
しまった。花山さんが一人で行動してると聞いた時に気づくべきだった。
恐怖、恥ずかしさ、怒り、不安。
4つの感情が混在して何を考えたらいいのか分からない。
冬夜君の事を疑っているわけじゃない。
ただ、無事であることを祈ることにした。
(4)
視聴覚室なんてものもこの別荘にはあるんだな。
プロジェクターがあると聞いて誠は持ってきたDVDを見ようと提案する。
朝に言ってたのはこの事か。
半分呆れながら眺めていた。
シスター物ってやつ?
気持ちが悪い。趣味じゃないな。みんなはほぼ等身大のその映像に目を奪われている。
その時ドアが開いた。
振り返ると花山さんが立っていた。
「ああ、男性だけでこんなの見てる~皆にチクっちゃおうかなぁ~」
恥ずかしがるそぶりも見せずに彼女はそう言う。
「あ、いや。それは勘弁」
誠が言うと、花山さんはにこりと笑う。
「内緒にしていてあげる代わりに一つお願いがあるんですけど~。冬夜君ちょっとだけ借りてもいいですか~?」
「どうぞどうぞ」
誠はそう言って僕を花山さんに差し出す。
「誠お前……」
「ここは友情ってやつで頼むわ」
「冬夜君、いこっ?」
そう言って僕は、昨夜愛莉と話をしていた場所に連れていかれた。
「何の用?」
僕がそう言うと、花山さんは頭を下げる。
「昨日はごめんなさい。一時の感情とはいえとんでもない事してしまいました~」
多分本気で謝ってるわけじゃないんだろうが、相手にするだけ時間の無駄だ。
「別にいいよ、じゃあね」
そう言って視聴覚室にもどろうとする僕の腕を掴む花山さん。
「離せよ」
「冬夜君もああいうDVD興味あるんですか?」
「いや、別に」
「じゃあ、ここでお話ししましょうよ~」
うまい具合に花山さんのペースに乗せられてる気がする……。
「花山さんは他の女子とは行動しないの?」
「あんまり家事とか興味ないし」
「女性同士で親睦を深めることも重要だと思うけど」
「どうせ、皆私の敵だから……疎外感しかないんですよね」
僕も花山さんに好感してるわけじゃないんだけど。
「花山さんは女友達とかいないの?」
「いませんよ。皆私に嫉妬してるから。私が可愛いから。私に男とられるんじゃないかって警戒して誰も近寄らない」
不覚にも花山さんに同情してしまった。愛莉と境遇が似ていたから。その後の行動は愛莉と全然違うけど。
「大変だったんだな」
「……そこは同情してくれるんだ?」
「まあね、想像してしまったから」
興味のない男の事で嫉妬される女性の辛さは愛莉を観てきて分かってる。守ってやりたいとすら思えてくる。
でもそれはカンナも一緒だし恐らく「渡辺班」の半分くらいの女性が体験したことなんじゃないのか?
「花山さんみたいな境遇の人「渡辺班」にはたくさんいると思うよ。彼女たちなら花山さんの気持ち分かってくれると思うけど」
「こんな話したの冬夜君が初めてだから……」
彼女はそう言うとにこりと笑う。
「冬夜君だから話せる事、出来る事ってあるんですよ。こう見えて、素の自分を見せてるつもりなんだけど」
「他の人にも見せたらいいじゃないか?皆相談に乗ってくれるよ」
「女性陣には敵視されてるからむりですよ~」
「志水さんもそうだったよ」
「私はああはなりたくないから。自分に妥協してそこら辺の男で我慢するなんて無理」
「そうかな?」
「……どういう意味ですか?」
花山さんの顔つきが変わる。何かいけないことに触れたのだろうか?
「竹本君と話してる時、凄く楽しそうに思えたけど」
僕がそう言うと花本さんは鼻で笑った。
「それはないですよ、珍しく彼からアプローチがあったから、話してあげただけ」
「本当にそれだけかな?」
「それだけですよ。私理想が高いんです」
「理想の男性って?」
「冬夜君」
「それはゲームで言ってるだけだろ?本当は西松君とかの方が理想なんじゃない?価値観もあってるし」
「冬夜君、まるで私を遠ざけてるみたい。ちゃんと私を見てよ」
「……その気持ちには答えられない。残念だけど」
「すごい、本当にわかるんですね?」
花山さんの気持ちちょっとだけ覗いてみた。花山さんの言ってることに嘘はない。でも残念だけど僕はそれに応えることは出来ない。それに……。
「本当は竹本君の事も気になってるんでない?」
「彼を見ているとイライラするだけです。好きな人が目の前にいるのに何もアクション起こさない彼についイラッとして……」
「それは過去の経験的な何か?」
「……本当に心読んじゃうんですね」
花山さんは驚いているようだ。図星だったのかな?
「あ、冬夜君いたいた!」
愛莉が僕を探していたようだ。
愛莉は僕と花山さんを見るとまっすぐ僕の方へと向かってくる。
そして僕の腕を掴み彼女を睨みつける。
「冬夜君、お昼ごはんで来たよ~」
「そっか、じゃあ花山さんもいこうか?」
「はい!」
そう言って蟻が持つ腕と反対の腕を掴む花山さん。
愛莉は花山さんを睨みつける。
僕は両腕を掴まれ歩きづらかった。
花山さんの事を考えていた。
竹本君を見ているとイライラする。
それはまるで過去の自分を重ねているようにも思えた。
何があったのだろう?
(5)
買い出しの帰り。
昨日のことなど無かったかのように皆ではしゃいでいた。
真鍋君も敢えて昨日の事には触れないようにしているらしい。
このまま触れないようにしていたかったけど新名さん自身が切り出した。
「あのぅ……昨日の夜何か失礼なことしませんでした?」
新名さんが真鍋君に聞くと、真鍋君は「特に何もなかったよ。気にすることない」と言った。
何もなかったことにするのが正しいのかもしれない。
それでリセットできるなら。もう一度一からやり直せるなら。
でも擬えるという言葉がある。運命は何度やり直しても同じことを繰り返すという言葉がある。
ゲームに強くてニューゲームというシステムがある。
ゲームクリア時のデータを引き継いで、一からやり直すというシステム。
この場合記憶を引き継いでやり直さないと運命の歯車は同じレールを進んでしまうんじゃないだろうか?
それでも同じ記憶を持っていればやっぱり擬えてしまうんだろうか?
同じ感情を持って同じ事を繰り返して。
何度も何度も繰り返して生きていく。
それは無限ループのように続いていく。
自分の意思でレールを切り替えるしかないんだ。
人は「あの時ああすれば良かった」「今から戻ってやり直したい」とよく口にする。
でも、そんなの無理。絶対に同じ道を選ぶ。
だってその時はそれが自分にとって最善の選択だったのだから。
「竹山君は何か知らないですか?」
新名さんは僕に話を振った。
「いや、特に何もなかったよ?」
「そうですか……」
それで話は終わるはずだった。
「新名さん好きな男性のタイプとかあるの?」
真鍋君が突然切り出した。
新名さんは俯いて黙ってしまう。
僕は真鍋君の顔を見る。
やってしまった~という顔をしている。
「未来ならどんな人でもきっとうまくいくよ」
海未ちゃんがそう言うと「そうかな~」と嬉しそうな顔をする。そして真鍋君の顔をルームミラー越しに見ているが真鍋君の顔は固いままだ。
「俺もそう思うよ。『渡辺班』は縁結びのグループ。渡辺君や指原さんに相談すると良い」
真鍋君が言うと彼女は再び暗い顔をする。
僕にもわかる。真鍋君が意図的に自分から新名さんを遠ざけようとしている事くらい。
僕にもわかるくらいだから新名さんも気づいてるんだろう。
やがて新名さんは意を決したように言った。
「私のタイプが真鍋君だと言ったらどうしますか?」
僕も海未ちゃんも言葉が出なかった。
真鍋君も無表情で車を運転している。
新名さんは追撃をかける。
「真鍋君は私を選んでくれますか?」
新名さんがそう言うと真鍋君は黙ってしまった。
車内が沈黙に包まれる。真鍋君が何言わないと事態は収拾しないよ。
「なんてね、ただの冗談だから、真に受けちゃだめですよ」
冗談にしてなかったことにしようとする新名さん。
「残念だけど俺好きな人いるんだ」
「その人にはその事伝えたんですか?」
少し間をおいて新名さんが聞いてみたら、真鍋君は首を振った。
「いや、まだ言えてない。言う機会が無くてね」
「その人は誰か付き合ってる人いるんですか?」
「いや、誰もいないと思う」
「ちゃんと聞いたんですか?」
「ああ、聞いてるよ。その人結婚してたんだ。旦那に先立たれてね」
「そうなんだ……」
新名さんがそう言うと、再び静寂の時が流れていく。
「て、ことは真鍋君以外の人を好きになるかもしれないってことだよね」
僕がそう言うと真鍋君はすぐに否定した。
「あの人が誰かを好きになるなんてことは無いよ。多分ね」
「じゃあ、真鍋君も好きになったってしょうがないじゃないんじゃ……」
「好きになるって理屈じゃない事くらい竹本も知ってるだろ」
「そうだね……」
「それなら、私にも言えますよね。私諦めないから!幾らでも待つから」
新名さんがそう言うと真鍋君は考え込んでしまう。
車が別荘に到着した。
荷物を手に車を降りる。
「新名さん、あのさ……」
真鍋君が何かを言おうとするけど、新名さんは「皆待ってますよ。急ぎましょう」とその場から逃げる。
真鍋君から逃げてるように思えた。
海未ちゃんも新名さんの後を追う。
「真鍋君、僕達も行こう?」
「そうだな……」
真鍋君の気持ちは何となくはわかるけど、新名さんの気持ちの方が強く分かってしまうんだ。
新名さんは強いな。
駄目ってわかってても何度も諦めずに挑んでいる。
僕はまだ自分の気持ちに向き合う事すらできないでいるのに。
どうして駄目だと分かってる人を好きになってしまうのだろう?
運命のいたずらという奴なのだろうか?
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