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3rdSEASON
知らせは夏風に乗って
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(1)
7月
夏の到来。
夏衣に着替えたところで暑さは変わらずエアコンをガンガンに効かせて過ごしている。
夏は嫌いだ。暑いから。
しかしエアコンを聞かせながら毛布に包まって寝るという行為はなかなか魅力的で、この幸せがずっと続くと良いのにと思うのだが……。
「冬夜君朝だよ~」
夏になるとテンションが上がる人もいる。ちなみに愛莉はそんな事はない。年中こんな調子だ。季節というものを知らない。
「暑いのに毛布に包まってるって熱中症になっちゃうよ!私は冬夜君の体調を管理する義務があるんだから」
愛莉が毛布をはぎ取るとTシャツにパンツ一枚の僕の姿が露になる。
「きゃっ!」
と口では言うものの愛莉の視線は僕に釘付けになっている。
「エアコン効かせっぱなしで寒いから風邪引いちゃうよと思ったら毛布着てて暑いよと思ったらそんな恰好で。冬夜君のやってる事意味不明だよ」
「愛莉には分からないよ、この気持ちよさが……」
「わかりたくありません。ちゃんとパジャマ着て寝なさい!」
「毛布に抱き着いてるのが気持ちいいんだよ」
「う~ん……」
愛莉が考えている。こういう時愛莉が考えてる事はだいたいしょうもない事だ。今回も類に漏れなかった。
愛莉は僕を突然抱きしめる。
「毛布と私どっちが気持ちいい?」
ここで毛布と答えられる猛者がいたら名乗り出て欲しい。
愛莉のほんの少し高い体温と柔らかい体が密着して、違う意味でも気持ちがいい。
「愛莉に決まってるだろ」
「じゃあ、決まりだね。私今日家からタオルケット取ってくる。冬夜君の部屋何でないんだろうと思ったらそういうことだったのね」
タオルケットと言えば……。誠が言ってたな。カンナは裸でタオルケットに包まって寝てるって……。それがたまらないって……。カンナ風邪ひかないのかな?
僕は愛莉を見る。
「な、な~に」
愛莉の姿に置き換えて想像してみた。白い肌にバランスの取れたスタイル。そんな愛莉がタオルケット一枚で僕の隣で寝ている……。うん、いいかも。
「うぅ……冬夜君の目つきがなんかやらしい。またろくでもない事考えてるでしょう?」
「愛莉は熱いならタオルケットでって言ったよね?」
「ほえ?」
「じゃあ愛莉もパジャマを脱いで寝てもいいんじゃないか?って思っただけだよ」
ぽかぽかっ
「また誠君に吹き込まれたんだね!」
「言ったろ?愛莉以外の女には興味が無いって」
「そりゃ……冬夜君と夜したあとなら……それも考えるけど」
「えっ?」
「冬夜君がそう言う気持ちになってくれるなら喜んでするけど、冬夜君最近全然誘ってくれないじゃん」
「ああ、暑いから愛莉もばててるかなと思って」
「うぅ……冬夜君の意地悪がまたでた……」
愛莉は僕に抱きついたままだった。
好い加減着替えないとまずいんじゃないのか?
「前にも言ったよ。冬夜君がその気になったらいつでもいいんだよ。って……てか女性にこんな事言わせるのってどうかとおもうよ」
ぽかっ
愛莉はそう言うと僕から離れ着替えだす。
僕もベッドから出て着替えを始めた。
仕度を終えると部屋で愛莉を待つ。
そして愛莉はいつものように僕の隣に座ると僕に密着する。
心なしかいつもより密着してるように感じる。
愛莉の顔を見える、少し恥ずかし気に、そして何か言いたげな顔つき。
さっきの事気にしてるのかな?
「女性だって寂しい夜があるんだよ?」
愛莉は一言そう呟いた。
やっぱり気にしてるんだな。
愛莉の顔に手を当てるとそっとキスしてやる。
今夜いいかい?
そんなサインだった。
愛莉はキスのお返しをしてくれる。
いいよ。
そういうサインだった。
「今夜はとっておきの下着用意しておくね」
愛莉は耳元でそう囁く。
普段通りでいいのに。
どれにしようかなと悩む愛莉を愛おしく思えた。
(2)
「海未ちゃんこれで全部かい?」
俺は、海未ちゃんに頼まれた絵を丁寧に梱包して車に積み込む。
海未ちゃんはこくりとうなずく。
海未ちゃんと新名さんを乗せて。車を走らせる。
海未ちゃんは学校の課題とかを芸短大でやらずに地元大の丹下先生の準備室でやっている。
学校の課題だけじゃない。色々な公募展に出展している。そこで賞を総なめにしていた。
すでに色々な評論家が見に着たりしている。
もう、個展でも開けるんじゃないだろうか?
まわりが天才ともてはやす小さな芸術家はつかれたように後部座席で寝ていた。
「ここ最近忙しかったからね……。海未ちゃん」
助手席に座っている新名さんがそう言う。
それは、後ろに積んである数々の傑作を見ていれば分かる。
それに、竹本との件もある。竹本はあれから先生の準備室には現れなくなった。
海未ちゃんもあまり青い鳥に来なくなった。
絵を描いているという事情もあるのだろうが。
大学までは新名さんと一緒に来ている。
新名さんが行けない時は先生が迎えに行っている。
そこまでして先生の側にいないといけない理由。それは心の安定だろう。
素人目に見ても分る。
大学で描いてる時と芸短大で描いてる時の絵の違い。
色彩に迷いがでてる。
画家の心情でこうまで作品に影響がでるものなのか?
芸短大に着くとキャンバスを一つ一つ丁寧に指定された場所に運び込む。
十数枚はあった。
彼女は息を吸うように画題を見つめ、息を一気に吐き出すようにキャンバスに塗り込める。
呼吸をするように彼女は絵を描いていく。
彼女にとって絵を描くことは呼吸する事なんだ。
彼女の気持ちが揺れると呼吸が乱れるかのように作品に影響する。
だからこそ丹下先生は他の男性との接触を断とうとするのだろう。
しかし、それは過保護過ぎないか?
いずれは自立しなくてはならない彼女の事を考えているのだろうか?
自分で面倒を一生見ていくつもりなんだろうか?
彼女は恋を覚えず一生をすごしていくつもりなんだろうか?
有名な女性画家は波乱万丈の人生を送るらしい。
彼女もまた恋を知らずに生きていくというのか?
いや、それはないな
俺は一人苦笑した。
彼女は既に恋をしている。
小さな恋を胸に抱いて生きている。
そのことを丹下先生は知っているのだろうか?
聞いたこともない。
聞いても多分教えてくれないだろう。
「ありがとう、真鍋君。男手があって助かったわ。お礼に夕飯でも……」
新名さんがそう言うと同時に、スマホが鳴った。
原田さんからだ。
俺は電話に出る、何か話があるらしい。
「ごめん、バイト先から電話があった。用事で行かなきゃいけない。二人で家に帰れる?」
「帰るのは帰れるけど、これからバイト?」
「何か話があるらしい。急用みたいだから行ってくるわ」
「そう……分かった」
俺は会社に向かった。
会社に着くと、友坂主任と近藤さん、それに知らない人がいた。イケメンだ。
「紹介するわ椎名倭君。新しく入ったやり手のベテランよ」
原田さんがそう言うと椎名さんはぺこりと頭を下げた。
「君が噂のやり手のバイト君?よろしく」
そう言って椎名さんは握手を求めてきた。
「真鍋ですよろしくお願いします」
そう言って椎名さんと握手する。そして原田さんに聞いていた。
「急用ってこの事ですか?」
「そうよ……。ごめんなさい、取り込み中だったかしら?」
「いえ、何の問題もありません」
だけどなぜこんな時間に、バイトの日に教えてくれればいいのに?
「彼、いくらベテランでも入社してすぐでしょ?勝手がわからないだろうから貴方にサポートをお願いしたくて」
原田さんが言うと、友坂主任が言った。
「社長と話したんだけどね。これからはこの4人でチームを組むことにしたの。その方が捗ることも多いし。もちろん真鍋君には社長のお世話もやってもらうけど」
「……わかりました」
「それじゃ、明日からお願いね。今日は私は帰るわ。4人で今後の事打ち合わせお願い」
「あ、それなら……」
「今日はタクシーで帰るわ。打ち合わせも大事な仕事よ。よろしくね」
そう言って原田さんは一人で帰って行った。
また新しい壁を築かれた。
「それじゃ、近所のお好み焼き屋で」
友坂さんがそう言うと4人でお好み焼き屋に向かい。今後の打ち合わせをした。
(3)
地元大学。
未来とはぐれた。
修ちゃんの教室の棟までの道もわからない。
ここどこだろう?
きょろきょろしてると一組のカップルが私に近づいてきた。
「あれ?木下さん?めずらしいね。一人なの?」
思い出した。片桐先輩と遠坂先輩だ。
「こ、こんにちは……」
あまり話したことが無いから何を話せばいいか分からない。
困っていると片桐先輩が話しかけてきた。
「ひょっとして迷子?棟がわからない?」
「理工学部だっけ?あそこ棟が多いからなぁ」
そう言いながら片桐先輩がスマホを操作する?
「学食で待ち合わせしようって真鍋君が。新名さんもくるって」
「じゃ、学食行こうか?」
遠坂先輩が言うと私はうなずいた。
学食に着くと片桐先輩がジュースを奢ってくれた。
「で、竹本君とはそのごどうなの?」
遠坂先輩が聞いてきた。
「……あれから会ってもないです」
彼はあの後準備室に現れることは無かった。
ごめんなさいって謝った後も。
竹本君は修ちゃんの言ったことを守ってる。
竹本君の事を考えると胸が苦しくなる。
それは罪悪感?それとも……?
それはない、私の胸の中にいるのは……。
「竹本君の事なら心配ないよ。もう吹っ切れてるみたいだし」
ズキン。
ホッとしたけどなんか寂しい気分。
「あ、いたいた海未ちゃーん」
未来の声だ。
「ごめんなさいね、ちょっと目を離していたら急に居なくなっちゃってびっくりしたんだよ」
「ごめんね、未来ちゃん」
「先輩すいません、ありがとうございます」
真鍋君が片桐先輩に礼を言うと、私たちも頭を下げる。
「じゃ、あとは任せて大丈夫だね」
そう言うと片桐先輩たちは学食から去って行った。
とても仲が良さそうな二人。
なんでも将来を約束した仲らしい。
羨ましいと思った。いつかああなりたい……修ちゃんと。
「じゃ、先生待ってるし行こうか?」
真鍋君がそう言うと私達は移動した。
修ちゃんの部屋に着くと私は髪を縛り絵を描き始める。
修ちゃんと描いている時が一番調子がいい。
修ちゃんといる時が一番安心できる。
私は修ちゃんが好き。
「そう言えば竹本はどうしてる?」
修ちゃんが竹本君の名前を口にしたとき、私の筆がぴたりと止まった。
「元気にしてますよ……表面は」
「そうか……」
修ちゃんがちらりと私を見る。
私は作業にもどる。
「あいつ……新たに彼女作ったみたいですよ」
遠坂先輩が言ってた。
「思ったより切り替え速い奴だな」
「え~っ!それって渡辺班の中で!?」
未来ちゃんは知らないらしい。
「そうだよ。花山さんが竹本の事を好きになったらしい」
あの二人合宿の時に仲良くしてたもんね……。
「で、竹本はどうなんだ?」
修ちゃんが真鍋君に聞いていた。
「あいつは、まだ……海未ちゃんの事気にしてるみたいで、次の恋に移れないみたいなんですよね」
私の事まだ気にしてるんだ……。
「でも、花山さんの押し強いみたいなんで。そのうち忘れさせてくれる」
ザクッ!
私はペインティングナイフをキャンバスに突き刺し切り裂いていた。
「海未!?どうした?」
修ちゃんが言うより早く部屋を飛び出していた。
どこをどう行ったのか分からないくらい駆け抜ける。
息が切れ立ち止まった時にはどこか分からなくなっていた。
スマホで修ちゃんに電話する。
「今どこだ!?」
修ちゃんが聞く。
何か目印になりそうなものを探す。
「……教室の前!」
「……そこを動くなよ!」
そう言うと電話が切れた。
「海未ちゃん?」
振り返ると竹本君が立っていた。
(4)
「海未ちゃん?」
突然現れた薄紅色の君は、油絵の具で汚れていて泣いていた。
「何があったの?」
「ここで修ちゃんが待ってろって」
「そう、じゃあ大丈夫だね」
余計な接触を禁じられていた僕はその場を立ち去ろうとすると、彼女は腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「ごめんなさい!私竹本君の事苦しめてる?」
真鍋君に何か聞いたのかな?
「真鍋君に聞いたの?」
彼女は黙ってうなずいていた。じゃあ、何もかも知ってるよな。
「真鍋君の言ったことで多分あってる」
ほっとしたような、どこか寂し気な表情。先生が来るまでもう少し時間があるかな。
「ありがとう。君にちゃんと言えてよかった。ちゃんと返事がもらえてよかった。これでも清々しい気分なんだ。まだひきずってるけどね」
「新しい恋人ができたっていうのは?」
「まだ正式に付き合ってるわけじゃないよ。友達として交際してるだけ」
「そうなんだ……」
「海未ちゃんにちゃんとお礼言えなくて困ってたんだ。やっと気持ちに整理がついた。次のドアを叩ける」
「それって花山さんと付き合うの?」
「わからない、未だ自分が花山さんの事どう思ってるのかわからないし、……中途半端な気持ちで付き合うのは花山さんに失礼だから」
「そうだね」
「海未!!」
丹下先生がやってきた。
「じゃあ、行くね」
「竹本君待って!!」
「海未?」
僕は足を止めた。振り返ったらだめだ。
だけど海未ちゃんは僕の足にしがみつく。
「もう避けなくていいんだよ!お友達として一緒にいてください!」
……どうすればいいんだろう?
友達としてでちゃんと線引きできるんだろうか?
自信が無かった。
彼女の声で動揺してる自分がいたから。
でも以前のような胸の痛みはない。
ああ、自分の中では理解できてるんだな。ちゃんと終止符打ててるんだな。
「……わかったよ」
「じゃあこっちむいて」
僕が振り返ると海未ちゃんは笑って手を差し出した。
「じゃあ、これからよろしくお願いします」
僕は海未ちゃんと握手する。
よろしくおねがいします。
一陣の風が吹く。
これが、僕の海未ちゃんとの恋の真の終わり。
その事を風が告げていた。
(5)
僕達が家に帰ると両親がリビングに居て呼び止められた。
僕と愛莉がソファに並んで座るとテーブルに差し出された、一通の手紙。
宛先は片桐冬夜・愛莉様と書かれてある。
何かの嫌味だろうか?
手に取って送り主を見る。
橘秋斗・亜子……?
誰だろう?
手紙の裏を見る?
ウェディングドレス姿の亜子と知らない新郎が写真に映っていた。
「どういうこと?」
僕が両親に聞くと二人共分からないという。
「あなた達何か聞いてないの?」
「何も聞いてないけど?」
「そう……ならいいわ」
母さんがそう言うと僕たちは部屋に戻った
愛莉がお風呂に入ってる間、僕は葉書を見ていた。
何でこんな手紙を?てか結婚?大学は……?
考えても埒が開かない。
愛莉が部屋に戻ってくるのを待っていた。
愛莉が部屋に戻ってくると「まだ、気にしてたんだ~」と愛莉が髪を乾かしながら言う。
「愛莉が来るの待ってた」
「ほえ?」
「愛莉が来たら電話してみようと思って」
「亜子さんに……?」
愛莉が怪訝な顔をする。
「なんかすっきりしなくてさ」
愛莉は髪を乾かし終えると僕の隣に座る。
「当然私にも聞かせてくれるんでしょ?」
「ああ、いいよ」
そう言って葉書に書かれてある電話番号を打つと通話をおす。
スピーカーにしてあった。
「はい、橘です」
亜子の声だ。
「もしもし、片桐ですけど」
「ああ、冬夜君。どうしたの?こんな夜遅くに」
主人は寝ているわよと笑っていた。
「どういうこと?」
「ああ、私妊娠してるの。今20週目くらいだって」
「妊娠!?」
愛莉が大声で叫ぶ。
「愛莉さんも聞いてるのね?愛莉さんこれで安心出来たでしょ?もう私に怯えることはないものね」
「べ、べつにそういうわけじゃ……。おめでとうございます」
「ありがとう。兄がまた迷惑かけたみたいね。もう、大丈夫だから……。彼それどころじゃないから」
「!?」
「別の彼女と運転中に海に突っ込んでね。助手席にいた彼女に傷を負わせたらしいのよ」
二人共声を失った……。
「これからどうなるか分からない。ひょっとしたら裁判になるかも。彼女の両親は酷く怒ってるみたいだし」
「他人事みたいだな」
「もう他人事だもの。私は井上家を出た身だから」
「そんなに割り切れるものなんですか?」
愛莉が、尋ねると亜子は笑っていた。
「愛莉さんには分からないわよね。嫌気がさしていた家から出られるこの解放感は」
確かに愛莉にはわからないだろうな。
「話はわかりました。お幸せに」
「ありがとう、祝福してくれてると受け取っておくわ」
「じゃあ、遅いしもう切るね。でわまた」といって電話は終わった。
愛莉は僕の腕を掴んでいる。
愛莉の頭を撫でてやる。
「亜子も言ってたろ?もう大丈夫だよ」
「ううん、そうじゃないの。なんか悔しいなと思って……。亜子さんに先越されたことが」
「ごめん……」
「私のやってる事って只のおままごとなのかなってそんな気分に落ちてるだけ」
「愛莉は自分の道を進めばいいよ。亜子の事なんか気にすることない?」
「冬夜君は自分は平気だって言える?」
僕はうなずいた。
「愛莉はれっきとした僕のお嫁さんだよ。事実婚って知ってる?僕達はそれにあたるよ。慌てる必要が無いよ」
「冬夜君は私の事お嫁さんとして認めてくれてるの?」
愛莉を抱きしめる。
「確かめるかい?そんなに心配ならもっと手っ取り早い方法があるんだけど」
「?」
愛莉に耳打ちする。
顔を真っ赤にしてる愛莉。
ぽかっ
「そんなことしなくても冬夜君が早く求婚してくれたら済む話なんです!」
「まあ、焦らずゆっくり行こう?」
僕達の愛は変わらないんだから……。
「うん」
愛莉は笑顔で返す。
初夏の出来事だった。
夏は始まったばかりだ。
7月
夏の到来。
夏衣に着替えたところで暑さは変わらずエアコンをガンガンに効かせて過ごしている。
夏は嫌いだ。暑いから。
しかしエアコンを聞かせながら毛布に包まって寝るという行為はなかなか魅力的で、この幸せがずっと続くと良いのにと思うのだが……。
「冬夜君朝だよ~」
夏になるとテンションが上がる人もいる。ちなみに愛莉はそんな事はない。年中こんな調子だ。季節というものを知らない。
「暑いのに毛布に包まってるって熱中症になっちゃうよ!私は冬夜君の体調を管理する義務があるんだから」
愛莉が毛布をはぎ取るとTシャツにパンツ一枚の僕の姿が露になる。
「きゃっ!」
と口では言うものの愛莉の視線は僕に釘付けになっている。
「エアコン効かせっぱなしで寒いから風邪引いちゃうよと思ったら毛布着てて暑いよと思ったらそんな恰好で。冬夜君のやってる事意味不明だよ」
「愛莉には分からないよ、この気持ちよさが……」
「わかりたくありません。ちゃんとパジャマ着て寝なさい!」
「毛布に抱き着いてるのが気持ちいいんだよ」
「う~ん……」
愛莉が考えている。こういう時愛莉が考えてる事はだいたいしょうもない事だ。今回も類に漏れなかった。
愛莉は僕を突然抱きしめる。
「毛布と私どっちが気持ちいい?」
ここで毛布と答えられる猛者がいたら名乗り出て欲しい。
愛莉のほんの少し高い体温と柔らかい体が密着して、違う意味でも気持ちがいい。
「愛莉に決まってるだろ」
「じゃあ、決まりだね。私今日家からタオルケット取ってくる。冬夜君の部屋何でないんだろうと思ったらそういうことだったのね」
タオルケットと言えば……。誠が言ってたな。カンナは裸でタオルケットに包まって寝てるって……。それがたまらないって……。カンナ風邪ひかないのかな?
僕は愛莉を見る。
「な、な~に」
愛莉の姿に置き換えて想像してみた。白い肌にバランスの取れたスタイル。そんな愛莉がタオルケット一枚で僕の隣で寝ている……。うん、いいかも。
「うぅ……冬夜君の目つきがなんかやらしい。またろくでもない事考えてるでしょう?」
「愛莉は熱いならタオルケットでって言ったよね?」
「ほえ?」
「じゃあ愛莉もパジャマを脱いで寝てもいいんじゃないか?って思っただけだよ」
ぽかぽかっ
「また誠君に吹き込まれたんだね!」
「言ったろ?愛莉以外の女には興味が無いって」
「そりゃ……冬夜君と夜したあとなら……それも考えるけど」
「えっ?」
「冬夜君がそう言う気持ちになってくれるなら喜んでするけど、冬夜君最近全然誘ってくれないじゃん」
「ああ、暑いから愛莉もばててるかなと思って」
「うぅ……冬夜君の意地悪がまたでた……」
愛莉は僕に抱きついたままだった。
好い加減着替えないとまずいんじゃないのか?
「前にも言ったよ。冬夜君がその気になったらいつでもいいんだよ。って……てか女性にこんな事言わせるのってどうかとおもうよ」
ぽかっ
愛莉はそう言うと僕から離れ着替えだす。
僕もベッドから出て着替えを始めた。
仕度を終えると部屋で愛莉を待つ。
そして愛莉はいつものように僕の隣に座ると僕に密着する。
心なしかいつもより密着してるように感じる。
愛莉の顔を見える、少し恥ずかし気に、そして何か言いたげな顔つき。
さっきの事気にしてるのかな?
「女性だって寂しい夜があるんだよ?」
愛莉は一言そう呟いた。
やっぱり気にしてるんだな。
愛莉の顔に手を当てるとそっとキスしてやる。
今夜いいかい?
そんなサインだった。
愛莉はキスのお返しをしてくれる。
いいよ。
そういうサインだった。
「今夜はとっておきの下着用意しておくね」
愛莉は耳元でそう囁く。
普段通りでいいのに。
どれにしようかなと悩む愛莉を愛おしく思えた。
(2)
「海未ちゃんこれで全部かい?」
俺は、海未ちゃんに頼まれた絵を丁寧に梱包して車に積み込む。
海未ちゃんはこくりとうなずく。
海未ちゃんと新名さんを乗せて。車を走らせる。
海未ちゃんは学校の課題とかを芸短大でやらずに地元大の丹下先生の準備室でやっている。
学校の課題だけじゃない。色々な公募展に出展している。そこで賞を総なめにしていた。
すでに色々な評論家が見に着たりしている。
もう、個展でも開けるんじゃないだろうか?
まわりが天才ともてはやす小さな芸術家はつかれたように後部座席で寝ていた。
「ここ最近忙しかったからね……。海未ちゃん」
助手席に座っている新名さんがそう言う。
それは、後ろに積んである数々の傑作を見ていれば分かる。
それに、竹本との件もある。竹本はあれから先生の準備室には現れなくなった。
海未ちゃんもあまり青い鳥に来なくなった。
絵を描いているという事情もあるのだろうが。
大学までは新名さんと一緒に来ている。
新名さんが行けない時は先生が迎えに行っている。
そこまでして先生の側にいないといけない理由。それは心の安定だろう。
素人目に見ても分る。
大学で描いてる時と芸短大で描いてる時の絵の違い。
色彩に迷いがでてる。
画家の心情でこうまで作品に影響がでるものなのか?
芸短大に着くとキャンバスを一つ一つ丁寧に指定された場所に運び込む。
十数枚はあった。
彼女は息を吸うように画題を見つめ、息を一気に吐き出すようにキャンバスに塗り込める。
呼吸をするように彼女は絵を描いていく。
彼女にとって絵を描くことは呼吸する事なんだ。
彼女の気持ちが揺れると呼吸が乱れるかのように作品に影響する。
だからこそ丹下先生は他の男性との接触を断とうとするのだろう。
しかし、それは過保護過ぎないか?
いずれは自立しなくてはならない彼女の事を考えているのだろうか?
自分で面倒を一生見ていくつもりなんだろうか?
彼女は恋を覚えず一生をすごしていくつもりなんだろうか?
有名な女性画家は波乱万丈の人生を送るらしい。
彼女もまた恋を知らずに生きていくというのか?
いや、それはないな
俺は一人苦笑した。
彼女は既に恋をしている。
小さな恋を胸に抱いて生きている。
そのことを丹下先生は知っているのだろうか?
聞いたこともない。
聞いても多分教えてくれないだろう。
「ありがとう、真鍋君。男手があって助かったわ。お礼に夕飯でも……」
新名さんがそう言うと同時に、スマホが鳴った。
原田さんからだ。
俺は電話に出る、何か話があるらしい。
「ごめん、バイト先から電話があった。用事で行かなきゃいけない。二人で家に帰れる?」
「帰るのは帰れるけど、これからバイト?」
「何か話があるらしい。急用みたいだから行ってくるわ」
「そう……分かった」
俺は会社に向かった。
会社に着くと、友坂主任と近藤さん、それに知らない人がいた。イケメンだ。
「紹介するわ椎名倭君。新しく入ったやり手のベテランよ」
原田さんがそう言うと椎名さんはぺこりと頭を下げた。
「君が噂のやり手のバイト君?よろしく」
そう言って椎名さんは握手を求めてきた。
「真鍋ですよろしくお願いします」
そう言って椎名さんと握手する。そして原田さんに聞いていた。
「急用ってこの事ですか?」
「そうよ……。ごめんなさい、取り込み中だったかしら?」
「いえ、何の問題もありません」
だけどなぜこんな時間に、バイトの日に教えてくれればいいのに?
「彼、いくらベテランでも入社してすぐでしょ?勝手がわからないだろうから貴方にサポートをお願いしたくて」
原田さんが言うと、友坂主任が言った。
「社長と話したんだけどね。これからはこの4人でチームを組むことにしたの。その方が捗ることも多いし。もちろん真鍋君には社長のお世話もやってもらうけど」
「……わかりました」
「それじゃ、明日からお願いね。今日は私は帰るわ。4人で今後の事打ち合わせお願い」
「あ、それなら……」
「今日はタクシーで帰るわ。打ち合わせも大事な仕事よ。よろしくね」
そう言って原田さんは一人で帰って行った。
また新しい壁を築かれた。
「それじゃ、近所のお好み焼き屋で」
友坂さんがそう言うと4人でお好み焼き屋に向かい。今後の打ち合わせをした。
(3)
地元大学。
未来とはぐれた。
修ちゃんの教室の棟までの道もわからない。
ここどこだろう?
きょろきょろしてると一組のカップルが私に近づいてきた。
「あれ?木下さん?めずらしいね。一人なの?」
思い出した。片桐先輩と遠坂先輩だ。
「こ、こんにちは……」
あまり話したことが無いから何を話せばいいか分からない。
困っていると片桐先輩が話しかけてきた。
「ひょっとして迷子?棟がわからない?」
「理工学部だっけ?あそこ棟が多いからなぁ」
そう言いながら片桐先輩がスマホを操作する?
「学食で待ち合わせしようって真鍋君が。新名さんもくるって」
「じゃ、学食行こうか?」
遠坂先輩が言うと私はうなずいた。
学食に着くと片桐先輩がジュースを奢ってくれた。
「で、竹本君とはそのごどうなの?」
遠坂先輩が聞いてきた。
「……あれから会ってもないです」
彼はあの後準備室に現れることは無かった。
ごめんなさいって謝った後も。
竹本君は修ちゃんの言ったことを守ってる。
竹本君の事を考えると胸が苦しくなる。
それは罪悪感?それとも……?
それはない、私の胸の中にいるのは……。
「竹本君の事なら心配ないよ。もう吹っ切れてるみたいだし」
ズキン。
ホッとしたけどなんか寂しい気分。
「あ、いたいた海未ちゃーん」
未来の声だ。
「ごめんなさいね、ちょっと目を離していたら急に居なくなっちゃってびっくりしたんだよ」
「ごめんね、未来ちゃん」
「先輩すいません、ありがとうございます」
真鍋君が片桐先輩に礼を言うと、私たちも頭を下げる。
「じゃ、あとは任せて大丈夫だね」
そう言うと片桐先輩たちは学食から去って行った。
とても仲が良さそうな二人。
なんでも将来を約束した仲らしい。
羨ましいと思った。いつかああなりたい……修ちゃんと。
「じゃ、先生待ってるし行こうか?」
真鍋君がそう言うと私達は移動した。
修ちゃんの部屋に着くと私は髪を縛り絵を描き始める。
修ちゃんと描いている時が一番調子がいい。
修ちゃんといる時が一番安心できる。
私は修ちゃんが好き。
「そう言えば竹本はどうしてる?」
修ちゃんが竹本君の名前を口にしたとき、私の筆がぴたりと止まった。
「元気にしてますよ……表面は」
「そうか……」
修ちゃんがちらりと私を見る。
私は作業にもどる。
「あいつ……新たに彼女作ったみたいですよ」
遠坂先輩が言ってた。
「思ったより切り替え速い奴だな」
「え~っ!それって渡辺班の中で!?」
未来ちゃんは知らないらしい。
「そうだよ。花山さんが竹本の事を好きになったらしい」
あの二人合宿の時に仲良くしてたもんね……。
「で、竹本はどうなんだ?」
修ちゃんが真鍋君に聞いていた。
「あいつは、まだ……海未ちゃんの事気にしてるみたいで、次の恋に移れないみたいなんですよね」
私の事まだ気にしてるんだ……。
「でも、花山さんの押し強いみたいなんで。そのうち忘れさせてくれる」
ザクッ!
私はペインティングナイフをキャンバスに突き刺し切り裂いていた。
「海未!?どうした?」
修ちゃんが言うより早く部屋を飛び出していた。
どこをどう行ったのか分からないくらい駆け抜ける。
息が切れ立ち止まった時にはどこか分からなくなっていた。
スマホで修ちゃんに電話する。
「今どこだ!?」
修ちゃんが聞く。
何か目印になりそうなものを探す。
「……教室の前!」
「……そこを動くなよ!」
そう言うと電話が切れた。
「海未ちゃん?」
振り返ると竹本君が立っていた。
(4)
「海未ちゃん?」
突然現れた薄紅色の君は、油絵の具で汚れていて泣いていた。
「何があったの?」
「ここで修ちゃんが待ってろって」
「そう、じゃあ大丈夫だね」
余計な接触を禁じられていた僕はその場を立ち去ろうとすると、彼女は腕を掴んだ。
「どうしたの?」
「ごめんなさい!私竹本君の事苦しめてる?」
真鍋君に何か聞いたのかな?
「真鍋君に聞いたの?」
彼女は黙ってうなずいていた。じゃあ、何もかも知ってるよな。
「真鍋君の言ったことで多分あってる」
ほっとしたような、どこか寂し気な表情。先生が来るまでもう少し時間があるかな。
「ありがとう。君にちゃんと言えてよかった。ちゃんと返事がもらえてよかった。これでも清々しい気分なんだ。まだひきずってるけどね」
「新しい恋人ができたっていうのは?」
「まだ正式に付き合ってるわけじゃないよ。友達として交際してるだけ」
「そうなんだ……」
「海未ちゃんにちゃんとお礼言えなくて困ってたんだ。やっと気持ちに整理がついた。次のドアを叩ける」
「それって花山さんと付き合うの?」
「わからない、未だ自分が花山さんの事どう思ってるのかわからないし、……中途半端な気持ちで付き合うのは花山さんに失礼だから」
「そうだね」
「海未!!」
丹下先生がやってきた。
「じゃあ、行くね」
「竹本君待って!!」
「海未?」
僕は足を止めた。振り返ったらだめだ。
だけど海未ちゃんは僕の足にしがみつく。
「もう避けなくていいんだよ!お友達として一緒にいてください!」
……どうすればいいんだろう?
友達としてでちゃんと線引きできるんだろうか?
自信が無かった。
彼女の声で動揺してる自分がいたから。
でも以前のような胸の痛みはない。
ああ、自分の中では理解できてるんだな。ちゃんと終止符打ててるんだな。
「……わかったよ」
「じゃあこっちむいて」
僕が振り返ると海未ちゃんは笑って手を差し出した。
「じゃあ、これからよろしくお願いします」
僕は海未ちゃんと握手する。
よろしくおねがいします。
一陣の風が吹く。
これが、僕の海未ちゃんとの恋の真の終わり。
その事を風が告げていた。
(5)
僕達が家に帰ると両親がリビングに居て呼び止められた。
僕と愛莉がソファに並んで座るとテーブルに差し出された、一通の手紙。
宛先は片桐冬夜・愛莉様と書かれてある。
何かの嫌味だろうか?
手に取って送り主を見る。
橘秋斗・亜子……?
誰だろう?
手紙の裏を見る?
ウェディングドレス姿の亜子と知らない新郎が写真に映っていた。
「どういうこと?」
僕が両親に聞くと二人共分からないという。
「あなた達何か聞いてないの?」
「何も聞いてないけど?」
「そう……ならいいわ」
母さんがそう言うと僕たちは部屋に戻った
愛莉がお風呂に入ってる間、僕は葉書を見ていた。
何でこんな手紙を?てか結婚?大学は……?
考えても埒が開かない。
愛莉が部屋に戻ってくるのを待っていた。
愛莉が部屋に戻ってくると「まだ、気にしてたんだ~」と愛莉が髪を乾かしながら言う。
「愛莉が来るの待ってた」
「ほえ?」
「愛莉が来たら電話してみようと思って」
「亜子さんに……?」
愛莉が怪訝な顔をする。
「なんかすっきりしなくてさ」
愛莉は髪を乾かし終えると僕の隣に座る。
「当然私にも聞かせてくれるんでしょ?」
「ああ、いいよ」
そう言って葉書に書かれてある電話番号を打つと通話をおす。
スピーカーにしてあった。
「はい、橘です」
亜子の声だ。
「もしもし、片桐ですけど」
「ああ、冬夜君。どうしたの?こんな夜遅くに」
主人は寝ているわよと笑っていた。
「どういうこと?」
「ああ、私妊娠してるの。今20週目くらいだって」
「妊娠!?」
愛莉が大声で叫ぶ。
「愛莉さんも聞いてるのね?愛莉さんこれで安心出来たでしょ?もう私に怯えることはないものね」
「べ、べつにそういうわけじゃ……。おめでとうございます」
「ありがとう。兄がまた迷惑かけたみたいね。もう、大丈夫だから……。彼それどころじゃないから」
「!?」
「別の彼女と運転中に海に突っ込んでね。助手席にいた彼女に傷を負わせたらしいのよ」
二人共声を失った……。
「これからどうなるか分からない。ひょっとしたら裁判になるかも。彼女の両親は酷く怒ってるみたいだし」
「他人事みたいだな」
「もう他人事だもの。私は井上家を出た身だから」
「そんなに割り切れるものなんですか?」
愛莉が、尋ねると亜子は笑っていた。
「愛莉さんには分からないわよね。嫌気がさしていた家から出られるこの解放感は」
確かに愛莉にはわからないだろうな。
「話はわかりました。お幸せに」
「ありがとう、祝福してくれてると受け取っておくわ」
「じゃあ、遅いしもう切るね。でわまた」といって電話は終わった。
愛莉は僕の腕を掴んでいる。
愛莉の頭を撫でてやる。
「亜子も言ってたろ?もう大丈夫だよ」
「ううん、そうじゃないの。なんか悔しいなと思って……。亜子さんに先越されたことが」
「ごめん……」
「私のやってる事って只のおままごとなのかなってそんな気分に落ちてるだけ」
「愛莉は自分の道を進めばいいよ。亜子の事なんか気にすることない?」
「冬夜君は自分は平気だって言える?」
僕はうなずいた。
「愛莉はれっきとした僕のお嫁さんだよ。事実婚って知ってる?僕達はそれにあたるよ。慌てる必要が無いよ」
「冬夜君は私の事お嫁さんとして認めてくれてるの?」
愛莉を抱きしめる。
「確かめるかい?そんなに心配ならもっと手っ取り早い方法があるんだけど」
「?」
愛莉に耳打ちする。
顔を真っ赤にしてる愛莉。
ぽかっ
「そんなことしなくても冬夜君が早く求婚してくれたら済む話なんです!」
「まあ、焦らずゆっくり行こう?」
僕達の愛は変わらないんだから……。
「うん」
愛莉は笑顔で返す。
初夏の出来事だった。
夏は始まったばかりだ。
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