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3rdSEASON
うたかたの想い
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(1)
「愛莉起きて?」
うう~ん……。
まだ部屋の中は暗かった。
時計を見る。2時を回ったばかり。
「まだ夜中だよ?」
私がそういうと冬夜君は笑って答えた。
「こっそりするのは無しって言ったのは愛莉だよ」
こんな時間からゲームするの?
それとも出かけるの。
そんな私の疑問に冬夜君はキスで応えた。
冬夜君は私の背中に腕を回すとブラのホックを外す。
そしてパジャマのボタンをはずしていく。
え?こんな時間から?
驚きと戸惑いと突然の出来事に緊張していた私は冬夜君の顔を見つめる。
「構って欲しいって言ったのは愛莉だよ」
それもそうだね。……ってそう言う話じゃないよ。
冬夜君に成すがままに衣服を脱がされ全裸にされると冬夜君は自分も脱ぎだす。
その日は熱い夜を過ごした。
「愛莉。朝だよ」
冬夜君に、起こされる
時計は10時を回っていた。
パジャマちゃんと着てる。でも何かをされた感触は残っている。
「冬夜君昨夜私に何かした?」
冬夜君は「へ?」と答えた。どうやら夢を見ていたらしい。
人の夢と書いて儚いか……。急に寂しくなった。
「どうしたの?」
冬夜君は私を抱きしめてから言う。冬夜君に夢の内容を語る。ちょっと恥ずかしかったけどひょっとしたら夢じゃないかもしれない。そんな気持ちで話した。
やっぱり夢でしかなかった。
落ち込む私に「して欲しかった?」と聞いてくる。
冬夜君は偶に意地悪になる。
ぽかぽかっ
冬夜君の胸を叩く。
冬夜君は私の耳の側で小さな声で囁く。
「ホテルに寄って行く?」
「うぅ……今日は我慢する」
「そっか」
夜にしない?と聞いてこないのは今夜はフェリーの中だから。
今日から旅行の日だった。
冬夜君はベッドから出て荷物の確認をしている。
私もベッドから出るとバッグの中身を確認する。
その後着替えると用意されてあった朝食を食べて支度をする。
17時ごろにでれば、きちんと間に合う予定だった。
「どうする?」
冬夜君が聞いてくる。
冬夜君の中では解答は予測してるのだろう?
今日は夕方から出かけるから外出は無い。
家の中でする事、昼間っからしかももう出かける準備をした後でそれはない。
だとしたら残る選択肢は……。
私はテレビのリモコンをとりテレビをつけてそれを眺めていた。
冬夜君の反応を見る。
冬夜君は私の世にぴたりと密着して座り、同じようにテレビを見ている。
意外な反応に私の方が驚いてた。
冬夜君のしたい事は多分ゲームだと思っていたのに。
「ゲームしなくていいの?」
ちょっと意地悪だったかな?
「愛莉としないと一人でやる意味無いから」
冬夜君のキャラクターだけレベル上がっちゃったら意味が無いからと彼は言う。
麻耶さんの階段を上がってくる音が聞こえてきた。
ノックしてから麻耶さんは聞いてくる。
「朝食遅かったみたいだけど昼食どうする?」
「食べるよ」
冬夜君が言った。
「じゃあ、準備するから降りてらっしゃい」
そう言って麻耶さんは降りていく。
私達も部屋を出た。
昼食の後片づけを手伝い、麦茶をもって冬夜君の部屋に向かう。
冬夜君はテレビを見ていた。
ノートPCが開いている。
テーブルに麦茶を置くと冬夜君のノートPCを覗く。
やっぱりゲームしていた。
正確に言うと見ていただけなのかもしれないけど、素人の私にしてみればしていたも同然の行為だ。
「また、黙ってしてる!」
私が言うと、「見てただけだよ」と言い訳する。
「別にしてるのを咎めているわけじゃないんだよ?」
「分かってるって。だから愛莉とテレビをみるついでにちょっと様子見てただけだよ」
「私のいない間に?」
「愛莉と一緒の時はしないよ」
「分かってない!隠れてこそこそするの止めてっていってるのにどうして分かってくれないの!」
私は膝を抱えて座り泣く振りをする。
「だから堂々とノートPC開いていただろ?」
「ゲームがしたいならすればいいじゃない!私の事なんて気にしないで」
「愛莉がいないと意味がないって前にも言ったろ」
「嘘つき!私がいない時を見てやっていながら言い訳にもなってない!」
冬夜君はやれやれとノートPCを操作する。
露店をたたみ、サイトを見ながら露店を物色する。
そしてある物を買うと私にログインするように求める。
「私今そんな気分じゃないことくらい分かってよ!」
「愛莉に説明してあげるからいいから繋いでよ」
冬夜君が無理強いすることは珍しい。
仕方なく私は自分のノートPCを開くとゲームにログインする。
冬夜君のキャラから取引要請がきた。
OKをクリックする。
アイテムと数千万のゲーム内通貨を渡された。
「これで私のご機嫌取りのつもり?」
そんな手に乗らないんだから!
だけど冬夜君は首を振る。
「それは愛莉と二人で手に入れたものだよ」
「?」
「愛莉とゲームしてる時に手に入れたレアアイテムを売ってるだけ。そうしないとこのゲーム何も買えなくなるから」
「でも冬夜君の取り分は?」
「儲けをお嫁さんが預かっていることに何か問題あるの?」
冬夜君はこういう時の口は上手い。
私は何も言い返せなかった。
「愛莉のキャラも懐温まったしちょっとおいで」
冬夜君のキャラについて行く。それは首都と呼ばれる街の教会。
冬夜君があるキャラクターに話しかけると私もと冬夜君に説明を受ける。
冬夜君のキャラからまたアイテムを受け取る。
ウェディングドレスというものがあった。
あ、そういうこと?
冬夜君の言われたとおりにすると私のキャラクターは花嫁姿に冬夜君のキャラクターはタキシード姿に変身した。
アイテム欄に結婚指輪なるものが表示された。
「現実じゃ遠いからせめてゲームの中くらいはね」
「ありがとう」
二人で砂漠の街のいつもの場所に戻る。
そのまま放置するように言われる。どうしてだろう?
「1時間はその姿のままだから……。その間遊べないから時間を潰す……」
私はログアウトした。
「愛莉。ログアウトしたら時間は経たないんだよ?」
「いいの。このままの姿でいたいから」
そう言うと冬夜君もキャラクターを変え再び露店を開いた。
「暫くゲームはお預けだね」
「どのみち旅行中はしないつもりだったけどね」
してたら怒るぞ!
その後は二人でテレビを見ながら、冬夜君はたまにノートPCを見ながら時間を潰してた。
そして出発の時間が近づくと冬夜君もログアウトしてPCをシャットダウンし。荷物を車に運ぶ。
若干早めに出たのはフェリーの中で夕食を食べると高いからフェリー乗り場近くのお店で夕飯を食べて、冬夜君のお腹を考慮してコンビニで食べ物と飲み物を調達した。
乗船手続きを澄ませるとフェリーに乗り込む時間を待つ。
そして車をフェリーに乗せると客室に移動する。
2回目なので冬夜君とスマホのゲームをする。
充電器は用意していた。
船が動き出すのを感じた。
出発したんだな。
夏の思い出の旅が始まった。
(2)
「神奈誕生日おめでとう」
誠がそう言うとワイングラスをカチンとならす。
二人でワインを飲む。
今日は私の誕生日。
誠がレストランを予約しておいてくれた。
やっと大人の仲間入りが出来た。そんな気がする。
その後料理を楽しみながら会話を楽しむ。
誠からピアスをプレゼントされた。
海外ブランドのダイヤのピアス。
「こんなに高そうなものいいのか?」
「大丈夫親のすね齧って買ったもんじゃないから」
「?」
「部活終わった後深夜のバイトしてたんだ」
「!?」
「深夜の方が割のいいバイトがあるんだな」
「何でそんな無茶するんだ!」
勉強して部活してバイトまでしてたら休む時間なんてないだろ?
「それで誠の身に何かあった時の私の気持ち考えたことあるのか?全然嬉しくないぞ」
「神奈の二十歳っていう重要なイベントだろ?特別なプレゼントをしたかったんだよ」
さすがに婚約指輪までは無理だったけどなと誠は笑う。
「……ありがとう。ごめんな、口うるさい彼女で」
「俺の事心配してくれてるんだろ?感謝してるよ」
レストランをでると時計を見る。まだ20時だ。
「この後のプランあるのか?」
「適当なバーにでも入ろうかと思ってたけど?」
「じゃあ、任せる」
私はビター・オレンジを、誠はイタリアン・スクリュー・ドライバーを注文した。
私はビール系が好きだから誠は「なんか名前がかっこよさそうじゃん」という理由。
二人でカクテルを飲み会話する。
「今夜はどうするんだ?」
「今日は日曜で安いだろ?いつものところに行こうかと思ってる」
「……またあれさせるのか?」
「きょ、今日は神奈に任せるよ。神奈の為の日だもんな」
こいつのいう事はどうも怪しい。
「私の為と言ったな?じゃあ私の要求を言って良いんだな?」
「あ、ああ。もちろんさ。神奈好みのプレイってあるのか?」
こういう場所でこういうトークを平気でするのが誠の特徴だ。
「ああ、あるとも」
「どういうのだい?」
「何もしない?」
「へ?」
「何もしないでただ抱き合って寝る」
「久々に会ってそれはないだろ……」
久々だから純粋にお前との夜を楽しみたいんだよ。そういうの抜きにして。
「男に二言はないよな?」
誠に念を押すと渋々承諾した。
ホテルに泊まると缶ビールを二人で飲んだ。
飲み終えるとお風呂に入るわけだが……しょうがないなあ。
「一緒に入るか?」
「いいのか?」
誠の表情が一変して明るくなる。
「言ったろ『一緒によると楽しみたい』と」
先に誠に入ってもらってそれから私が服を脱ぎ浴室にはいる。
さすが体育会系、肉付きが全然違う。
「背中洗ってやるよ」と私が言うと「お、サンキュー」と誠が言う。
……今日はサービスだ。
私はボディソープを手に取るとそれを泡立たせて体に塗りそして誠に抱き着く。
驚いて振り向く誠。
誠には今の私はどう映っているのだろう?
「神奈それは反則だ!それで今夜何もしないなんて拷問だぞ!」
「……酔いもあるからかな?忘れてしまった」
誠の背中を洗い、シャワーをかけると誠はバスタブに入り私を見つめている。
あまり体を洗っているところを見られたくないんだが。
体を洗うと誠と一緒にバスタブにはいる。
誠がある物を見ている。
マットと……。
ごつん。
それは流石に無理だ。
「お前私を風俗嬢か何かと勘違いしてないだろうな?」
「してねーし!神奈がそんなんだったら、いくらバイトしても足りねーよ」
風呂をでるともう一本飲む。風呂上りは美味い!
誠はAV鑑賞に夢中のようだ。
誠に抱き着いて甘えた声で言う。
「私とAV女優どっちが大事だ?」
「神奈に決まってるだろ。てか比べたことねーよ。前から言ってるけどAVと彼女は別物なんだって!」
熱弁する誠。誠の価値観なんてどうでもいい。
「約束守ってくれるよな?」
「あ、ああ」
ベッドに二人で入ると私は誠に抱き着く。
誠も優しく私を抱く。
キスから始まってそして……。
「いいのか?」
「今は酔いもあるからな、何でも許せる気分だ」
本当はよかった。
ここまでしてくれた誠に何かお礼をしたかった。
どうすれば誠にお礼ができるだろう?
これがお礼になるのだろうか?
私まで快楽に溺れていく感覚をお礼というのだろうか?
「ありがとうな、誠」
「え?」
「これからもよろしくな」
「ああ……こちらこそよろしく」
誠に甘えながら今宵は眠りについた。
(3)
啓介との婚約が決まると新居探しを始めていた。
そして街中のマンションの一室に決める。
オール電化のマンションだ。
それから必要なものを買って引っ越しの日が来た。
業者に頼んで運んでもらい。そして荷解きをしている。
2人で話しながら荷解きを進めているとあるアルバムを見つけた。
生まれたての啓介の写真。
それから順に啓介の成長が綴られていた。
それを見ているうちに啓介との思い出を思い出す。
生まれたてから小学生までは普通に「お姉ちゃん」と呼ばれていた。
中学生になってから、私との関係を知ったのだろうか、急に「深雪」と呼び捨てになる。
それでもまだ、照れくさそうに読んでいた。思い出し笑いをする。
高校生になった頃には少し前の啓介になっていた。
手当たり次第に女を口説いては飽きては捨てての繰り返し。
そのころの私は啓介をどう見ていたのだろう?
もう覚えていない。思い出したくもない。思い出したくないからこそ記憶を封印した。感情を止めた。
渡辺班には感謝している。小学生の時に諦めた感情を呼び覚ましてくれたのだから。
「深雪」
啓介が呼んでいる。
「もう日も暮れたし今日はこの辺にしとかないか?」
窓を見ると確かに夜になっていた。
「そうね……」
私はアルバムを閉じ本棚に仕舞うと、立ち上がる。
夕飯どうしよう?食材はもちろんない。あったところで調理器具や食器類をだしていない。
「お弁当でも買って来ようか?」
「さっき店を予約した。二人で過ごす最初の夜だ。美味しいもの食べよう」
「分かったわ」
そう言ってマンションを出て、店まで歩いて行った。
料亭だった。
「『金持ちにしてはありきたりなレストランを選ぶのね、期待外れだわ』と言われてね、深雪にも同じ事言われたくないから探してた」
私ならファミレスでもいいのに。今の啓介なら。
啓介は私のお猪口に冷酒を注いでくれる。
私はそれを悔いっと飲み干すと次を注いでくれる。
「私を酔い潰すつもり?」
「あまりペース上げるなよ。後でくるから」
そうして料理とお酒を堪能しながら時間は過ぎる。
コースが一通り終える頃には私の顔は赤くなっていた。
「そろそろ行こうか?」
啓介が立ち上がると、私も立ち上がろうとする。
足腰に力が入らない。立ち上がれない私の腕を肩に回す啓介。
「だから言っただろ?」
「ごめんなさい」
帰りは何とかよろよろ歩きつつマンションの自室に戻る。
啓介は私をベッドに寝かせるとシャワーを浴びに行った。
こうやって落とすのが啓介の手口だったんだろうか?
今夜の標的は私?
啓介は風呂から出てくると私の隣に座る。
彼はロングの銀色の缶を手にテレビを見始める。
私の事は標的外?
ちょっと悲しい。
こういう時はどう甘えたらいいのだろう?
とりあえず上半身に力を籠め啓介の腰に手を回す。
啓介は私を見ると頭を撫でて優しい声で言う。
「今夜はゆっくり休め。休み中に部屋を片付けたい」
「啓介にとって私は対象外なの?」
酔いの勢いもあるのかそんな事を口走っていた。
啓介は優しい表情を崩さず、優しい声で言う。
「こう見えても深雪の事大事にしてるつもりなんだけどな」
これは大事にされている証拠なのね?
それを聞いて安心したのか眠りについていた。
(4)
「うわ、結構重いな。竹本そっち大丈夫か?」
「大丈夫です……!」
僕と真鍋君はバイトをしていた。
丹下先生のバイト。
準備室の備品の整理。
いらないものを外に運び出して車で処理場に持って行く。
運転をしながら真鍋君は話しかけてきた。
「最近海未ちゃんとはどうなんだ?」
「普通に友達ですよ」
でもキャンプに行って以来会ってないな。
「じゃあ、花山さんとはどうなんだ?」
「……うまくやれているとは思います」
「気持ちの整理はついたのか?」
「ええ、ちゃんと出来ていたみたいです」
「みたいです?」
真鍋君が聞き返してきた。
「告白して断られた時からとっくに終わってたんです。その後は花山さんの事を考えてました」
「案外切り替え速いんだな」
「きっちり区切りつけると、簡単に出来るみたいですよ」
「そうか……、そうじゃない人もいるみたいだけどな」
きっと新名さんの事だろう。
でもそれは……。
「気のせいかもしれないですけど、それって新名さんだけの問題なんでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「真鍋君にも問題あるのでは?」
真鍋君は何も言わない。僕はさらに続ける。
「新名さんにも中途半端に優しい、でも本命は別にいるから新名さんとは付き合えない。それって残酷じゃないですか?」
「……」
「はたから見ると真鍋君が二股かけてるように見えますよ」
「……似たようなことをバイト先の人にも言われたよ」
真鍋君は苦笑する。
「俺はどうしたらいいと思う?」
「……分かりません。真鍋君はどう思ってるんですか?」
「新名さんを突き放すのも優しさなのかな?とは思ってる」
「……そうですね」
その後処理場につくと荷台から運んできた物を下ろすと大学に戻る。
その時僕のスマホが鳴った。
咲からだ。
「もしもし?」
「もしもし?じゃないわよ。休みなのになにしてるのよ!」
「メッセージ送ったけど?」
「さっき見たわよ!あんたね、バイトに精出すのもいいけど。ちょっとは構ってくれてもいいんじゃない!?」
「じゃあ、バイト終わったら遊びに行くよ」
「……バイト終わったら連絡頂戴」
「わかった」
電話が切れる。
「竹本も彼女持ちか。渡辺班は不思議だな」
「真鍋君も渡辺君に頼んでみたらどうです?」
「さすがに渡辺先輩の力でもどうにもならないだろ?」
まさか本当に渡辺先輩に相談するときが来るとは思わなかった。
(5)
また早朝に目が覚めた。
前と同じ上が僕で下が愛莉。
着替えると、梯子を下りて愛莉を見る。
カーテンを開けると愛莉がすやすやと寝てる。
まだ少し眠い。
少し外の空気を吸って来ようかと思うけど、黙って行ったら愛莉また怒るな。
ちょっとかわいそうだけど愛莉を起こそう。
愛莉の耳元で囁く
「愛莉」
「ん?冬夜君?おはよう~……」
愛莉はまだ眠そうだ。
「ちょっとデッキに行って外の空気でも吸ってくるけど愛莉眠いなら寝ててもいいよ」
「外に~……いくっ!」
愛莉はガバっと起きて僕の腕を掴む。
「ちょっと待っててね」
愛莉はそう言うと着替えて洗面台を見て髪にブラシをさっと通し整える。
「じゃ、いこ?」
「愛莉眠そうじゃないか。大丈夫なのか?」
「うん、冬夜君を一人になんてさせられません!」
「なんで?」
「冬夜君が他の女性にとられちゃったらいやだもん」
そんなことあるわけないの知ってるくせに。
「そんな事言って車の中で寝ちゃった~とか言っても知らないからな」
「う、うぅ……。冬夜君が意地悪言ぅ」
そう言って悩む愛莉の手を取って部屋を出る。
デッキに出ると潮の香りが気持ちいい。
「あ、冬夜君陸が見えるよ」
愛莉が船の進行方向を指差すと確かに陸が見える。
愛莉は手すりをもって身を乗り出して進行方向を見てるかと思えば舷側に移動し下を覗き込む。
「うわあ速いね~」
そんな愛莉の後ろにそっと忍び寄り愛莉の背後から愛莉の腰を掴む。
「きゃっ!」
「はしゃいでると落ちちゃうぞ」
「じゃあ落ちないように捕まえていてね」
「え?」
愛莉は手すりから手を離し目を閉じて両手を横に広げる。
それをするなら前方でだろ?
昔の映画の1シーンを思い出いながら愛莉をしっかりと捕まえていた。
その時愛莉の下腹部からぐるぐるって振動が伝わってきた。
愛莉は顔を赤くして俯いている。
知ってるよ、内臓が動く音なんだろ?
しかし愛莉の顔はそうではないと言っていた。
「昨夜あんまり食べなかったし、夕食早かったからお腹空いちゃったみたい……えへへ」
「愛理でもお腹空く事あるんだな」
「うぅ……」
「……部屋に戻ろう、まだサンドイッチ残ってたはずだし……、神戸についたらファストフード店でも探そうか」
「うん」
愛莉と部屋に戻りコンビニで買ってあったサンドイッチとかを食べる。
その後荷物をまとめ、車に移動する。
誘導員に従い、車を移動させる。
フェリーを出ると光が差し込む。
光の射す方へ向かって走り出す。
「愛莉起きて?」
うう~ん……。
まだ部屋の中は暗かった。
時計を見る。2時を回ったばかり。
「まだ夜中だよ?」
私がそういうと冬夜君は笑って答えた。
「こっそりするのは無しって言ったのは愛莉だよ」
こんな時間からゲームするの?
それとも出かけるの。
そんな私の疑問に冬夜君はキスで応えた。
冬夜君は私の背中に腕を回すとブラのホックを外す。
そしてパジャマのボタンをはずしていく。
え?こんな時間から?
驚きと戸惑いと突然の出来事に緊張していた私は冬夜君の顔を見つめる。
「構って欲しいって言ったのは愛莉だよ」
それもそうだね。……ってそう言う話じゃないよ。
冬夜君に成すがままに衣服を脱がされ全裸にされると冬夜君は自分も脱ぎだす。
その日は熱い夜を過ごした。
「愛莉。朝だよ」
冬夜君に、起こされる
時計は10時を回っていた。
パジャマちゃんと着てる。でも何かをされた感触は残っている。
「冬夜君昨夜私に何かした?」
冬夜君は「へ?」と答えた。どうやら夢を見ていたらしい。
人の夢と書いて儚いか……。急に寂しくなった。
「どうしたの?」
冬夜君は私を抱きしめてから言う。冬夜君に夢の内容を語る。ちょっと恥ずかしかったけどひょっとしたら夢じゃないかもしれない。そんな気持ちで話した。
やっぱり夢でしかなかった。
落ち込む私に「して欲しかった?」と聞いてくる。
冬夜君は偶に意地悪になる。
ぽかぽかっ
冬夜君の胸を叩く。
冬夜君は私の耳の側で小さな声で囁く。
「ホテルに寄って行く?」
「うぅ……今日は我慢する」
「そっか」
夜にしない?と聞いてこないのは今夜はフェリーの中だから。
今日から旅行の日だった。
冬夜君はベッドから出て荷物の確認をしている。
私もベッドから出るとバッグの中身を確認する。
その後着替えると用意されてあった朝食を食べて支度をする。
17時ごろにでれば、きちんと間に合う予定だった。
「どうする?」
冬夜君が聞いてくる。
冬夜君の中では解答は予測してるのだろう?
今日は夕方から出かけるから外出は無い。
家の中でする事、昼間っからしかももう出かける準備をした後でそれはない。
だとしたら残る選択肢は……。
私はテレビのリモコンをとりテレビをつけてそれを眺めていた。
冬夜君の反応を見る。
冬夜君は私の世にぴたりと密着して座り、同じようにテレビを見ている。
意外な反応に私の方が驚いてた。
冬夜君のしたい事は多分ゲームだと思っていたのに。
「ゲームしなくていいの?」
ちょっと意地悪だったかな?
「愛莉としないと一人でやる意味無いから」
冬夜君のキャラクターだけレベル上がっちゃったら意味が無いからと彼は言う。
麻耶さんの階段を上がってくる音が聞こえてきた。
ノックしてから麻耶さんは聞いてくる。
「朝食遅かったみたいだけど昼食どうする?」
「食べるよ」
冬夜君が言った。
「じゃあ、準備するから降りてらっしゃい」
そう言って麻耶さんは降りていく。
私達も部屋を出た。
昼食の後片づけを手伝い、麦茶をもって冬夜君の部屋に向かう。
冬夜君はテレビを見ていた。
ノートPCが開いている。
テーブルに麦茶を置くと冬夜君のノートPCを覗く。
やっぱりゲームしていた。
正確に言うと見ていただけなのかもしれないけど、素人の私にしてみればしていたも同然の行為だ。
「また、黙ってしてる!」
私が言うと、「見てただけだよ」と言い訳する。
「別にしてるのを咎めているわけじゃないんだよ?」
「分かってるって。だから愛莉とテレビをみるついでにちょっと様子見てただけだよ」
「私のいない間に?」
「愛莉と一緒の時はしないよ」
「分かってない!隠れてこそこそするの止めてっていってるのにどうして分かってくれないの!」
私は膝を抱えて座り泣く振りをする。
「だから堂々とノートPC開いていただろ?」
「ゲームがしたいならすればいいじゃない!私の事なんて気にしないで」
「愛莉がいないと意味がないって前にも言ったろ」
「嘘つき!私がいない時を見てやっていながら言い訳にもなってない!」
冬夜君はやれやれとノートPCを操作する。
露店をたたみ、サイトを見ながら露店を物色する。
そしてある物を買うと私にログインするように求める。
「私今そんな気分じゃないことくらい分かってよ!」
「愛莉に説明してあげるからいいから繋いでよ」
冬夜君が無理強いすることは珍しい。
仕方なく私は自分のノートPCを開くとゲームにログインする。
冬夜君のキャラから取引要請がきた。
OKをクリックする。
アイテムと数千万のゲーム内通貨を渡された。
「これで私のご機嫌取りのつもり?」
そんな手に乗らないんだから!
だけど冬夜君は首を振る。
「それは愛莉と二人で手に入れたものだよ」
「?」
「愛莉とゲームしてる時に手に入れたレアアイテムを売ってるだけ。そうしないとこのゲーム何も買えなくなるから」
「でも冬夜君の取り分は?」
「儲けをお嫁さんが預かっていることに何か問題あるの?」
冬夜君はこういう時の口は上手い。
私は何も言い返せなかった。
「愛莉のキャラも懐温まったしちょっとおいで」
冬夜君のキャラについて行く。それは首都と呼ばれる街の教会。
冬夜君があるキャラクターに話しかけると私もと冬夜君に説明を受ける。
冬夜君のキャラからまたアイテムを受け取る。
ウェディングドレスというものがあった。
あ、そういうこと?
冬夜君の言われたとおりにすると私のキャラクターは花嫁姿に冬夜君のキャラクターはタキシード姿に変身した。
アイテム欄に結婚指輪なるものが表示された。
「現実じゃ遠いからせめてゲームの中くらいはね」
「ありがとう」
二人で砂漠の街のいつもの場所に戻る。
そのまま放置するように言われる。どうしてだろう?
「1時間はその姿のままだから……。その間遊べないから時間を潰す……」
私はログアウトした。
「愛莉。ログアウトしたら時間は経たないんだよ?」
「いいの。このままの姿でいたいから」
そう言うと冬夜君もキャラクターを変え再び露店を開いた。
「暫くゲームはお預けだね」
「どのみち旅行中はしないつもりだったけどね」
してたら怒るぞ!
その後は二人でテレビを見ながら、冬夜君はたまにノートPCを見ながら時間を潰してた。
そして出発の時間が近づくと冬夜君もログアウトしてPCをシャットダウンし。荷物を車に運ぶ。
若干早めに出たのはフェリーの中で夕食を食べると高いからフェリー乗り場近くのお店で夕飯を食べて、冬夜君のお腹を考慮してコンビニで食べ物と飲み物を調達した。
乗船手続きを澄ませるとフェリーに乗り込む時間を待つ。
そして車をフェリーに乗せると客室に移動する。
2回目なので冬夜君とスマホのゲームをする。
充電器は用意していた。
船が動き出すのを感じた。
出発したんだな。
夏の思い出の旅が始まった。
(2)
「神奈誕生日おめでとう」
誠がそう言うとワイングラスをカチンとならす。
二人でワインを飲む。
今日は私の誕生日。
誠がレストランを予約しておいてくれた。
やっと大人の仲間入りが出来た。そんな気がする。
その後料理を楽しみながら会話を楽しむ。
誠からピアスをプレゼントされた。
海外ブランドのダイヤのピアス。
「こんなに高そうなものいいのか?」
「大丈夫親のすね齧って買ったもんじゃないから」
「?」
「部活終わった後深夜のバイトしてたんだ」
「!?」
「深夜の方が割のいいバイトがあるんだな」
「何でそんな無茶するんだ!」
勉強して部活してバイトまでしてたら休む時間なんてないだろ?
「それで誠の身に何かあった時の私の気持ち考えたことあるのか?全然嬉しくないぞ」
「神奈の二十歳っていう重要なイベントだろ?特別なプレゼントをしたかったんだよ」
さすがに婚約指輪までは無理だったけどなと誠は笑う。
「……ありがとう。ごめんな、口うるさい彼女で」
「俺の事心配してくれてるんだろ?感謝してるよ」
レストランをでると時計を見る。まだ20時だ。
「この後のプランあるのか?」
「適当なバーにでも入ろうかと思ってたけど?」
「じゃあ、任せる」
私はビター・オレンジを、誠はイタリアン・スクリュー・ドライバーを注文した。
私はビール系が好きだから誠は「なんか名前がかっこよさそうじゃん」という理由。
二人でカクテルを飲み会話する。
「今夜はどうするんだ?」
「今日は日曜で安いだろ?いつものところに行こうかと思ってる」
「……またあれさせるのか?」
「きょ、今日は神奈に任せるよ。神奈の為の日だもんな」
こいつのいう事はどうも怪しい。
「私の為と言ったな?じゃあ私の要求を言って良いんだな?」
「あ、ああ。もちろんさ。神奈好みのプレイってあるのか?」
こういう場所でこういうトークを平気でするのが誠の特徴だ。
「ああ、あるとも」
「どういうのだい?」
「何もしない?」
「へ?」
「何もしないでただ抱き合って寝る」
「久々に会ってそれはないだろ……」
久々だから純粋にお前との夜を楽しみたいんだよ。そういうの抜きにして。
「男に二言はないよな?」
誠に念を押すと渋々承諾した。
ホテルに泊まると缶ビールを二人で飲んだ。
飲み終えるとお風呂に入るわけだが……しょうがないなあ。
「一緒に入るか?」
「いいのか?」
誠の表情が一変して明るくなる。
「言ったろ『一緒によると楽しみたい』と」
先に誠に入ってもらってそれから私が服を脱ぎ浴室にはいる。
さすが体育会系、肉付きが全然違う。
「背中洗ってやるよ」と私が言うと「お、サンキュー」と誠が言う。
……今日はサービスだ。
私はボディソープを手に取るとそれを泡立たせて体に塗りそして誠に抱き着く。
驚いて振り向く誠。
誠には今の私はどう映っているのだろう?
「神奈それは反則だ!それで今夜何もしないなんて拷問だぞ!」
「……酔いもあるからかな?忘れてしまった」
誠の背中を洗い、シャワーをかけると誠はバスタブに入り私を見つめている。
あまり体を洗っているところを見られたくないんだが。
体を洗うと誠と一緒にバスタブにはいる。
誠がある物を見ている。
マットと……。
ごつん。
それは流石に無理だ。
「お前私を風俗嬢か何かと勘違いしてないだろうな?」
「してねーし!神奈がそんなんだったら、いくらバイトしても足りねーよ」
風呂をでるともう一本飲む。風呂上りは美味い!
誠はAV鑑賞に夢中のようだ。
誠に抱き着いて甘えた声で言う。
「私とAV女優どっちが大事だ?」
「神奈に決まってるだろ。てか比べたことねーよ。前から言ってるけどAVと彼女は別物なんだって!」
熱弁する誠。誠の価値観なんてどうでもいい。
「約束守ってくれるよな?」
「あ、ああ」
ベッドに二人で入ると私は誠に抱き着く。
誠も優しく私を抱く。
キスから始まってそして……。
「いいのか?」
「今は酔いもあるからな、何でも許せる気分だ」
本当はよかった。
ここまでしてくれた誠に何かお礼をしたかった。
どうすれば誠にお礼ができるだろう?
これがお礼になるのだろうか?
私まで快楽に溺れていく感覚をお礼というのだろうか?
「ありがとうな、誠」
「え?」
「これからもよろしくな」
「ああ……こちらこそよろしく」
誠に甘えながら今宵は眠りについた。
(3)
啓介との婚約が決まると新居探しを始めていた。
そして街中のマンションの一室に決める。
オール電化のマンションだ。
それから必要なものを買って引っ越しの日が来た。
業者に頼んで運んでもらい。そして荷解きをしている。
2人で話しながら荷解きを進めているとあるアルバムを見つけた。
生まれたての啓介の写真。
それから順に啓介の成長が綴られていた。
それを見ているうちに啓介との思い出を思い出す。
生まれたてから小学生までは普通に「お姉ちゃん」と呼ばれていた。
中学生になってから、私との関係を知ったのだろうか、急に「深雪」と呼び捨てになる。
それでもまだ、照れくさそうに読んでいた。思い出し笑いをする。
高校生になった頃には少し前の啓介になっていた。
手当たり次第に女を口説いては飽きては捨てての繰り返し。
そのころの私は啓介をどう見ていたのだろう?
もう覚えていない。思い出したくもない。思い出したくないからこそ記憶を封印した。感情を止めた。
渡辺班には感謝している。小学生の時に諦めた感情を呼び覚ましてくれたのだから。
「深雪」
啓介が呼んでいる。
「もう日も暮れたし今日はこの辺にしとかないか?」
窓を見ると確かに夜になっていた。
「そうね……」
私はアルバムを閉じ本棚に仕舞うと、立ち上がる。
夕飯どうしよう?食材はもちろんない。あったところで調理器具や食器類をだしていない。
「お弁当でも買って来ようか?」
「さっき店を予約した。二人で過ごす最初の夜だ。美味しいもの食べよう」
「分かったわ」
そう言ってマンションを出て、店まで歩いて行った。
料亭だった。
「『金持ちにしてはありきたりなレストランを選ぶのね、期待外れだわ』と言われてね、深雪にも同じ事言われたくないから探してた」
私ならファミレスでもいいのに。今の啓介なら。
啓介は私のお猪口に冷酒を注いでくれる。
私はそれを悔いっと飲み干すと次を注いでくれる。
「私を酔い潰すつもり?」
「あまりペース上げるなよ。後でくるから」
そうして料理とお酒を堪能しながら時間は過ぎる。
コースが一通り終える頃には私の顔は赤くなっていた。
「そろそろ行こうか?」
啓介が立ち上がると、私も立ち上がろうとする。
足腰に力が入らない。立ち上がれない私の腕を肩に回す啓介。
「だから言っただろ?」
「ごめんなさい」
帰りは何とかよろよろ歩きつつマンションの自室に戻る。
啓介は私をベッドに寝かせるとシャワーを浴びに行った。
こうやって落とすのが啓介の手口だったんだろうか?
今夜の標的は私?
啓介は風呂から出てくると私の隣に座る。
彼はロングの銀色の缶を手にテレビを見始める。
私の事は標的外?
ちょっと悲しい。
こういう時はどう甘えたらいいのだろう?
とりあえず上半身に力を籠め啓介の腰に手を回す。
啓介は私を見ると頭を撫でて優しい声で言う。
「今夜はゆっくり休め。休み中に部屋を片付けたい」
「啓介にとって私は対象外なの?」
酔いの勢いもあるのかそんな事を口走っていた。
啓介は優しい表情を崩さず、優しい声で言う。
「こう見えても深雪の事大事にしてるつもりなんだけどな」
これは大事にされている証拠なのね?
それを聞いて安心したのか眠りについていた。
(4)
「うわ、結構重いな。竹本そっち大丈夫か?」
「大丈夫です……!」
僕と真鍋君はバイトをしていた。
丹下先生のバイト。
準備室の備品の整理。
いらないものを外に運び出して車で処理場に持って行く。
運転をしながら真鍋君は話しかけてきた。
「最近海未ちゃんとはどうなんだ?」
「普通に友達ですよ」
でもキャンプに行って以来会ってないな。
「じゃあ、花山さんとはどうなんだ?」
「……うまくやれているとは思います」
「気持ちの整理はついたのか?」
「ええ、ちゃんと出来ていたみたいです」
「みたいです?」
真鍋君が聞き返してきた。
「告白して断られた時からとっくに終わってたんです。その後は花山さんの事を考えてました」
「案外切り替え速いんだな」
「きっちり区切りつけると、簡単に出来るみたいですよ」
「そうか……、そうじゃない人もいるみたいだけどな」
きっと新名さんの事だろう。
でもそれは……。
「気のせいかもしれないですけど、それって新名さんだけの問題なんでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「真鍋君にも問題あるのでは?」
真鍋君は何も言わない。僕はさらに続ける。
「新名さんにも中途半端に優しい、でも本命は別にいるから新名さんとは付き合えない。それって残酷じゃないですか?」
「……」
「はたから見ると真鍋君が二股かけてるように見えますよ」
「……似たようなことをバイト先の人にも言われたよ」
真鍋君は苦笑する。
「俺はどうしたらいいと思う?」
「……分かりません。真鍋君はどう思ってるんですか?」
「新名さんを突き放すのも優しさなのかな?とは思ってる」
「……そうですね」
その後処理場につくと荷台から運んできた物を下ろすと大学に戻る。
その時僕のスマホが鳴った。
咲からだ。
「もしもし?」
「もしもし?じゃないわよ。休みなのになにしてるのよ!」
「メッセージ送ったけど?」
「さっき見たわよ!あんたね、バイトに精出すのもいいけど。ちょっとは構ってくれてもいいんじゃない!?」
「じゃあ、バイト終わったら遊びに行くよ」
「……バイト終わったら連絡頂戴」
「わかった」
電話が切れる。
「竹本も彼女持ちか。渡辺班は不思議だな」
「真鍋君も渡辺君に頼んでみたらどうです?」
「さすがに渡辺先輩の力でもどうにもならないだろ?」
まさか本当に渡辺先輩に相談するときが来るとは思わなかった。
(5)
また早朝に目が覚めた。
前と同じ上が僕で下が愛莉。
着替えると、梯子を下りて愛莉を見る。
カーテンを開けると愛莉がすやすやと寝てる。
まだ少し眠い。
少し外の空気を吸って来ようかと思うけど、黙って行ったら愛莉また怒るな。
ちょっとかわいそうだけど愛莉を起こそう。
愛莉の耳元で囁く
「愛莉」
「ん?冬夜君?おはよう~……」
愛莉はまだ眠そうだ。
「ちょっとデッキに行って外の空気でも吸ってくるけど愛莉眠いなら寝ててもいいよ」
「外に~……いくっ!」
愛莉はガバっと起きて僕の腕を掴む。
「ちょっと待っててね」
愛莉はそう言うと着替えて洗面台を見て髪にブラシをさっと通し整える。
「じゃ、いこ?」
「愛莉眠そうじゃないか。大丈夫なのか?」
「うん、冬夜君を一人になんてさせられません!」
「なんで?」
「冬夜君が他の女性にとられちゃったらいやだもん」
そんなことあるわけないの知ってるくせに。
「そんな事言って車の中で寝ちゃった~とか言っても知らないからな」
「う、うぅ……。冬夜君が意地悪言ぅ」
そう言って悩む愛莉の手を取って部屋を出る。
デッキに出ると潮の香りが気持ちいい。
「あ、冬夜君陸が見えるよ」
愛莉が船の進行方向を指差すと確かに陸が見える。
愛莉は手すりをもって身を乗り出して進行方向を見てるかと思えば舷側に移動し下を覗き込む。
「うわあ速いね~」
そんな愛莉の後ろにそっと忍び寄り愛莉の背後から愛莉の腰を掴む。
「きゃっ!」
「はしゃいでると落ちちゃうぞ」
「じゃあ落ちないように捕まえていてね」
「え?」
愛莉は手すりから手を離し目を閉じて両手を横に広げる。
それをするなら前方でだろ?
昔の映画の1シーンを思い出いながら愛莉をしっかりと捕まえていた。
その時愛莉の下腹部からぐるぐるって振動が伝わってきた。
愛莉は顔を赤くして俯いている。
知ってるよ、内臓が動く音なんだろ?
しかし愛莉の顔はそうではないと言っていた。
「昨夜あんまり食べなかったし、夕食早かったからお腹空いちゃったみたい……えへへ」
「愛理でもお腹空く事あるんだな」
「うぅ……」
「……部屋に戻ろう、まだサンドイッチ残ってたはずだし……、神戸についたらファストフード店でも探そうか」
「うん」
愛莉と部屋に戻りコンビニで買ってあったサンドイッチとかを食べる。
その後荷物をまとめ、車に移動する。
誘導員に従い、車を移動させる。
フェリーを出ると光が差し込む。
光の射す方へ向かって走り出す。
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