229 / 442
3rdSEASON
コートの上でダンスを
しおりを挟む
(1)
冬休み。
僕達は別府の体育館に向かっていた。
後ろの席に佐倉さんを乗せて。
なんで、後ろの席なのかって?
それは助手席に佐倉さんが乗るのを愛莉が拒んだから。
「冬夜君の隣は私だけなんだからね!」
ごめん逆らえない。
別府に向かう理由は一つ。
今年最後の合同合宿をする事。
どことって?
別府の大学。
合宿だから部外者の愛莉は連れて行けない。
「大丈夫だとは思うけど……」
「心配しないでも大丈夫だよ」
「うぅ……でも冬夜君お酒飲むと何するか分からないから……別府だからって変なお店行ったらだめだからね!」
愛莉に釘刺された。
「楽しみですね。相手はインカレバスケでも強豪らしいですから」
「そうなんだ」
「きっと良い経験になると思います」
「だといいね」
そんな会話をしながら体育館についた。
案内された更衣室で着替えると、コートに向かえばすでに相手チームが練習を始めていた。
パッと見た感じそんな強いと思わない。
これで九州選抜3位?
練習だから適当にやってるのかな?
それとも、強かったメンバーが引退しちゃったとか?
佐倉さんと顔を見合わせる。
佐倉さんにもわからないらしい。
うちのコーチが相手チームのコーチに挨拶をしていた。
うちのコーチはどうも腰が低い。
「そちらのチームさんもストレッチ済んだら適当に参加して。メニューはうちにあわせてもらうよ」
いつも佐倉さんのメニューでやっていたからたまには良いだろう。
ストレッチを念入りにしていると突然喧しいヒップホップの音楽が流れてきた。
「おお~みんなやってるね。感心感心」
ロン毛の男がそう言ってやってきた。
2名ほど体育系の感じの人がいるけど、あとはチャラそう。
現にピアスとかしてる。
「直人!お前はまた遅刻しおって!!」
相手チームのコーチが怒る。
しかし直人と呼ばれたロン毛の人は臆にも介さない、
「そう怒んなって。今回の合宿とか遊びみたいなもんだろ?」
そう言われて少なからずうちのチームはカチンときたようだ。
木元先輩は苦笑していた。
「君がこのチームのキャプテン?僕は地元大のチームのキャプテンの……」
帆秋さんはうちのチームのキャプテンを無視して僕に近づいてきた。
「あんたがテレビでやってた人、確か片桐冬夜って……」
「そうだけど?」
「へえ、そのたっぱで本当にダンクするんだ。あんだけ活躍してるのに地元大なんてもったいないってえらいさんが言ってたな」
その言葉に反応したのか佐倉さんが挨拶した。
「失礼します。はじめまして、私がこのバスケ部でマネージャーをやってる……」
帆秋さんは佐倉さんをみると佐倉さんの両手をガシッと掴んだ。
「綺麗なマネージャーだね。俺、帆秋直人。君に一目ぼれしたよ。君と一夜を過ごせるなんて夢みたいだ」
すっごい語弊のある言い方だな。
「直人、早くもナンパか~」
茶髪のパーマ書けた人が直人って人を茶化す。
「直人さっさとアップせんか!!」
監督さんが怒ると「分かってるよ」と言って服を脱ぎだす。
佐倉さんは思わず目を背けるが、直人さん達は至福の下にジャージを着こんでいた。
「ちょっとダサいけど防寒にはいいんだよね。一年ボール貸して」
ああ、さっきの人達は一年だったのか。
直人って人はさっきのパーマかけてる人にボールを渡す。
「じゃあ、ちゃちゃっと自己紹介がてらアップしますか?」
そう言うとパーマをかけてる人はドリブルを始める。
「俺の名前は山田拓海、ポイントガードをやってる」
そう言ってダブルクラッチを決める。
ゴール下に構えていた人は「努!」とボールを金髪の人にボールを渡す。
「俺の名前は門田努、シューティングガード。スリーポイントが得意!」
そう言って。ハーフライン近くから3Pを決める。
ゴール下に構えてた人は、「直人」と言ってロン毛の人にパスを回す。
「俺の名前は帆秋直人。スモールフォワード。俺の特技もダンクなんだぜ!」
そう言ってワンハンドでダンクを決める。
最後に「元ちゃん」と正面に突っ込んでくる大柄の男の人にパスを出す。
身長2メートルは越えていた。
男の人はパスを受け取るとそのままダンクを決める。
うちのチームのメンバーはそのプレイに飲まれる。
誰一人喋らない。
「どうだった。佐倉ちゃん。てか下の名前教えて!」
「……ただ派手なだけですね」
「佐倉さんの言う通りだ、ちゃんとアップしろ!!」
監督さんが怒鳴っている。
「うーん、佐倉ちゃんに分かってもらうにはこれしかないか?」
そう言うとボールを僕に渡す。
「1ON1やろうぜ。あんたと一回やってみたかったんだよね」
「別にいいけど」
センターラインに僕が立つと直人さんは構える、スリーポイントライン付近で。
「……もう始めていいの?」
「ああ、いつでも来い」
そして大勢の人が見守る中1ON1が始まった。
(2)
オフェンスの派手さは分かった。
しかしディフェンスの方はどうなのだろう?
片桐先輩と1ON1を始めた。センターラインに立つ片桐先輩に対してスリーポイントラインに立つ帆秋さん。
そんなに間合いを開けていたら……。
片桐先輩はお構いなしに3Pを打ってくる。
慌ててブロックに飛ぶが、片桐先輩の高く弧を描く3Pにはなすすべもない。
唖然とする別府の大学のメンバー。
「1ON1でいきなり3Pは反則だろ!」
そう言って再度ボールを片桐先輩に渡す帆秋さん。
「ああ、ごめん」
そう言ってドリブルを始める片桐先輩。
帆秋さんは本気モードに入ったようだ。
だけど片桐先輩を止めるのは無理に等しい。
3Pを警戒して手をあげれば、先輩は低い姿勢で容赦なく相手のわきを突いてドライブしてくる。
そのドライブにくらいつく帆秋さん。
それをビハインドザバックで抜き去る片桐先輩。
そのままレイアップシュートを決める。
「まだまだ!!」
帆秋さんは諦めない。
何度も片桐先輩に挑むが何度も抜かれていく。
何度かプレイをすると。帆秋さんはコートに座りついた。
「もう、スタミナ切れですか?ディフェンスも甘いみたいだし。いくらダンクが出来てもディフェンスが出来ないんじゃ使えないんじゃないですか?」
ちょっと意地悪だったかな?
片桐先輩を止めれる人は地元大にもいない。
でも、彼の自尊心を傷つけるには十分だったみたいだった。
「お前ガードなんだろ?お前がディフェンスしろよ!」
そう言って片桐先輩にディフェンスさせる帆秋さん。
でも片桐先輩にディフェンスさせたらダメですよ。
ほらそんな腰高なディフェンスだと……。
右手でドリブルしながら様子を伺う帆秋さん。
片桐先輩は左手で帆秋先輩の右手を警戒しながら、姿勢を低くして構える。
レッグスルーで左手に持ち替え片桐先輩の右を突破しようと試みるも。
左手にボールを持つ前に片桐先輩の右手がボールを弾いていた。
その後も先輩は帆秋さんにシュートを許すどころかドリブルで突破も許さない堅固なディフェンスを続けた。
多分片桐先輩に1ON1で勝てる相手は日本にはいないだろう。
日本一のPGですらシャットアウトしてみせたのだから。
エースキラーであると同時にポイントゲッターでもある片桐先輩。
それでも帆秋さんは片桐先輩に挑んでいく。
「直人~、もう無理だって。やめとけよ~」
仲間からそんな言葉が飛ぶ。
「うるせぇ!こいつを止めないと地元大には勝てないんだぞ!」
やれやれと他のメンバーも動き出す。
自分の相手を選んで1ON1を挑む別府の大学の人達。
この日はマンツーの練習が主になった。
(3)
夕食を食べ終えるとお風呂に入って、休んだかと思われた。
が、皆の意思は統一されたのように体育館に向かう。
マネージャーの私が向かわないわけにはいかない。
体育館に行くと皆コートの外で何かを見ていた。
「何してるんですか?」
私に気がついた片桐先輩が答えてくれた。
「いや、別府の大学の人がね……」
私はコートの様子を見る。
別府の大学の人がディフェンスフットワークの練習をしていた。
私はコートの半面を借りると3ON3で練習を指示した。
チームの戦術の確認とディフェンスの練習を兼ねてだ。
それが済むと各自シュートの練習を始める。
「ただ打つだけじゃ駄目ですよ、ディフェンスがついてる事をイメージして。自分のシュートが試合を決定づけるものだと意識して打ってください」
そうやって、指示を出していると相手のマネージャーらしい女性が話しかけてきた。
「すごいですね、まるでコーチみたい」
「自分が出来ることをやってるだけです」
「それが凄いんですよ。私なんて皆の世話をするくらいしかできないし」
「それだけでもすごいと思います」
「ありがとう、ところで……誰と付き合ってるの?やっぱり片桐さん?」
「えっ?」
突然の質問に驚いた。片桐先輩も聞いていたのかシュートを外す、
「まだそういうのはないですね。真島さんはいるんですか?付き合ってる人」
真島さん……マネージャーの女の人はゴール下でのシュートを練習してる短い髪の毛をセンター分けした男の人を指す。
「彼、藤島君と付き合ってるの」
「そうなんですね」
「えーと、佐倉さん……」
「桜子でいいです」
「桜子さんは気になる人はいないの?」
バスケに全く関係のない話題だったので答える義務はなかったけど、マネージャー同志仲良くするのも悪くないのかもしれないと思って素直に話した。
「なるほどね、大変だったんだ」
「まあ、そうですね」
2時間したほどでそろそろ頃合いと判断して、練習を中断させた。
「そろそろ上がりましょう。夜更かししたら行けませんよ。間違っても飲んだりしないで下さい」
そういうと皆「うぃー」と言ってコートを出ていった。
「こっちも上がりましょう、汗の処理ちゃんとしてくださいね。寒いから風邪ひかない様にしてください」
真島さんも別府の大学の人に声をかけている。
「じゃあ、また明日」
「はい、また明日」
そう言って私達も体育館を後にする。
(4)
「うん、何もないよ」
「わかった~」
「ちゃんと飯食ってるか?」
「食べてたよ~」
「じゃあ、疲れたし眠いから切るね」
「うん……うぅ……」
「どうした?」
僕は何か悩んでに愛莉に優しく声をかけてやる。
「浮気くらい大目に見てやれってりえちゃんには言われたけど……やっぱり嫌だなって……」
「心配しなくてもしないよ。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
そう言って電話を切ると部屋に戻る。
部屋に戻ると皆寝ている中、木元先輩が起きていた。
「飲みなよ」
木元先輩が銀色の缶を放るとそれを受け取る。
「いいんですか?佐倉さん怒りますよ」
「ばれやしないさ」
木元先輩はそう言ってカシュッと缶を開けるとグイっと飲む。
バレたら同じか。
そう思って僕も缶を開けると中身を飲む。
「先輩一つ聞いて良いですか?」
「花菜とのことかな?」
「どうしてプロポーズしようって決めたんですか?」
「焦っていたのかもな。大学を卒業したら会う時間も減るだろ?だから今のうちにって勢いでね」
「なるほど」
「片桐君たちはうらやましいね。卒業しても一緒だ」
「でも僕も制限あるから」
「制限?」
木元先輩が聞いていた。
「大学卒業して一年以内に結婚しなかったら強制的に結婚させらえるって約束したんです」
「どのみち結婚決まってるじゃないか。羨ましいな」
「でも親に言われたから結婚ってなんかみっともないじゃないですか?」
「確かにね」
そう言って二人で笑ってるとノックする音が。
この時間に佐倉さん?
缶をごみ箱に捨ててドアを開けると別府の大学の5人が立っていた。
「まだ寝る時間じゃないだろ?付き合えよ」
外に出ると近くのコンビニで飲み物を買ってたむろする。
「いや、まじすげーわお前。全然抜ける気がしなかった」
帆秋さんにそう褒められる。
「明日の練習試合マジ楽しみになってきた。合宿来てよかったわ」
「こっちこそ楽しみにしてるよ」
木元先輩がそう返す。
「明日はマジで行かせてもらうんで。手加減無しだからな」
「直人は今日も本気だったろ?」
藤島さんがそう言うと、帆秋さんが真面目な顔になる。
「明日の試合勝ったら俺本気で佐倉ちゃんにアタックかけるから」
こういう時どう返せばいいんだろう?
普通に返すか?
「大事なマネージャーだから取られない様に頑張るよ」
「覚悟しとけよ」
そう言って帆秋さんは立ち上がる。
「俺達のバスケとくと見せてやるからな」
僕と木元先輩も立ち上がると木元先輩が言った。
「OK。お互い手加減無しのガチンコ勝負だ」
ホテルに戻ると部屋の外で佐倉さんが待っていた。
佐倉さんが僕達に気づくと近づいて来て、そして異変に気がついた。
「あれほど飲まないでくださいって言ったのに!それにこんな夜遅くまで」
あんまり叫ぶと他のお客さんに迷惑だよ。
「二人共ちょっと来てください」
そう言って僕たちはロビーに行った。
「今日の練習見てて気づいたんですけど明日はちょっと作戦を変えましょう」
「と、言うと?」
木元先輩が聞いていた。
「片桐先輩のマークマンをPGからSGに変えるんです。多分速攻同士の殴り合いみたいな試合展開になると予想しているでしょう。相手のディフェンスならまず片桐先輩なら負けません。3Pの成功率が点差につながると思うんです」
「なるほど、相手の得点源を潰すわけだね。」
「インサイドで負けてもある程度は仕方ありません。だけどこっちの攻撃力だって負けてない。となると差につながるのは……」
「スリーポイントの量か」
僕が言うと佐倉さんが頷く。
「今年最後の試合だし、観客もたくさん来るみたいだし。負けたくないですよね」
「負けられない理由もできたしね」
お酒のせいか、木元先輩口が軽い。
「負けられない理由?なんですかそれ?」
佐倉さんが怪訝そうに僕達を見る。
僕と木元先輩が顔を見合わせると木元先輩がさっきしてきた約束を白状した。
「……絶対負けないでくださいね」
「任せとけ!」
先輩は親指を立てて佐倉さんに向ける。
「じゃあ、今日はもう寝てください。片桐先輩。罰として明日はフルタイム出場めざしてもらいますからね」
「わかったよ」
そう言うと部屋に戻った。
(5)
試合は総合体育館で行われる。
ただの練習試合とは思えない客の入り用。
1/3はマスコミ関係者だったけど。
あとは、日本代表の関係者とか。
愛莉たちも来てるみたいだ。
僕達は控室に入る前に、別府の大学の人達と会っていた。
そこで帆秋君が佐倉さんに接近する。
「約束の話は聞きました」
帆秋さんは佐倉さんに耳打ちする。
「今夜レストラン予約してあるから」
「私達負ける気ありませんから」
白いユニフォームに着替えるとコートに移動する。
館内にアナウンスが流れる。
別府の大学のメンバーの名前が呼ばれてセンターラインに並ぶ。
続いて、僕達の番だ。
こんな本格的な試合になるなんて地元大の人は誰も予想していなかった。
緊張する。
2番目に僕の名前が呼ばれる。
メンバーとハイタッチしてコートに入る。
皆のざわめきが聞こえる中。愛莉たちの声がはっきり聞こえる。
ああ、入ってるみたいだな。
今日は大丈夫っぽい。
全員が入ると握手してポジションにつく。
ジャンプボールで飛ぶ人が中央に立つ。
そして審判からボールが放られる。
ジャンプボールは圧倒的に背の高い相手のセンターが弾く。
その先には山田さん待っていた。
「直人!」
ボールはゴールに向かって放られる。もちろんシュートじゃない。
それを空中で受け取りアリウープを決める帆秋君。
早い!
歓声が沸く。
「慌てないでまず一本決めましょう!」
佐倉さんの声がしっかりと聞こえる。
別府の大学のディフェンスはオールコートのマンツーらしい。僕には門田君がついてる。
木元先輩がボールを空中に放る。
僕が思いっきりジャンプしボールを空中で受け取る。
待ち構える門田君のディフェンス。距離は開いてる。
素早く3Pを打つ。
ゴールに吸い込まれるように入る。
佐倉さんの予想通りの試合展開となった。
お互いノーガードの打ち合い。
そして僕が門田君を完全にシャットアウトすると。自然と点差が開く。
第2Qが終わる頃には60-45まで開いていた。
ハーフタイムで皆のコンディションを確認する佐倉さん。
「大丈夫だよ。片桐君のお蔭で楽させてもらえている」
木元先輩がそう言うと皆が頷く。
「片桐先輩大丈夫ですか?まだいけそうですか?」
「接触もそんなにしてないし。何より相手のマンツーと被ってるから。楽させてもらってるよ」
実際そんなに全力疾走した回数は殆どない。
「皆さん目をつぶって……勝った瞬間をイメージして……」
佐倉さんに言われる通り目を閉じてそれをイメージする。
「相手のシュート、成功率が徐々に下がっています。一気に決めましょう!」
佐倉さんがいうと皆拳を振り上げている。
ここまで監督は何もしてない。
それでいいのか監督。
第3Qからの展開も佐倉さんの予想通りだった。
派手なプレイが多い反面イージーなショットのミスが増えてきている。
そしてセンターがリバウンドに飛べなくなってきた。
足にきてる?
相手のディフェンスに変化が見えた。
僕のディフェンスに3人つきはじめた。
インサイドはセンターだけ。
ドリブルをしながら周りを見る。
ふと入る右端のディフェンスの足の開き具合。
考える前に動け。
ドリブルを相手の股に目掛けてする。身を反転させて背後に回り右手でボールを保持するとフェイダウェイでシュート。
第4Qに入る頃には相手は完全にばてていた、前半程の動きの切れは無くなり。センターは交代。他のメンバーもほとんど動けない。
一方地元大のみんなは僕が得点を引き受けていたのでまだ余力がある。
第4Qはフォーメーションの確認をしながら、相手の攻撃をシャットアウトする。
第4Qだけで言えば40-0の完封。
結果120-70の大勝を収めた。
試合後コートに座り込む帆秋さんに握手を求める。
「本当にお前凄いんだな。お前ひとりに翻弄されたようなもんだぜ」
帆秋さんはそう言うと握手して立ち上がった。
「またやろうな、今度はこうはいかねーぞ」
「こっちももっと強くなってるから」
「ああ」
相手チームのメンバーに挨拶に行く。
相手チームの監督に言われた事。
「お前はインカレなんかでくすぶってる器じゃない。もっと大きな舞台を目指せ」
プロにでもなれというのだろうか?
愛莉と相談だなそれは。
(6)
突然だった。
「桜子ちゃん、俺本気だ。付き合ってくれ」
帆秋先輩に言われた一言。
「私今恋愛どころじゃないから」
「何か打ち込んでる事あるの?」
「片桐先輩です。片桐先輩を本来いるべきところに立たせるのは私の役目だと思っています」
「それって恋じゃないのか?片桐が本命なのか」
「邪推するの止めてください!」
私は叫んでいた。
「恋じゃないなら別にいいじゃないか?付き合ってくれよ」
「だから今はそんな場合じゃないって……」
「何話してるの?」
片桐先輩たちが戻ってきた。
帆秋先輩は片桐先輩に言う。
「桜子ちゃんお前の事好きなのか?」
それって今言う事?
「……その話ならもう済んだ事だから」
余計な事を言わないで
「だったら桜子ちゃん俺と付き合ってくれたっていいじゃないか」
どういう短絡的思考してるのこの人は。
私は道具をまとめてコートから出ようとする。
片桐先輩も手伝ってくれた。
「俺諦めないから!また会おう」
そんな言葉を背中で受け止めながら、無言でコートを後にした。
誰かを好きになったことはある。
片桐先輩ただ一人。
誰かと付き合ったことはない。
ひたすら部活に打ち込んでいた。
誰かに振られたことはある。
片桐先輩に……、でも恋人という位置に立っていなくても片桐先輩の力になりたい。
そんな思いで先輩をバスケ部に引きずり込んだ
それから一生懸命バスケの研究をした。
片桐先輩だけ強くても他のメンバーが弱かったら話にならない。
他のメンバーの強化にも尽力した。
その結果今がある。
「佐倉さんのお蔭だよ!」
そんな称賛の言葉を初めてもらった。
「今の地元大学の強さは桜子ちゃんの努力のたまものだよ」
帆秋先輩にも言われた言葉。
そして生まれ初めて告白された。
帆秋先輩に。
「よかったの?」
片桐先輩が聞いてくる。
「何がですか?」
予想はついてたけどとぼけてみせた。
「いや、帆秋さんのこと」
「今はそれより先輩をベストコンディションで代表に行かせることが大事です」
「それなら愛莉がいるからさ……そんなに気にしなくても大丈夫だよ」
「メンタルはそうかもしれないけど、それ以外では私が必要なはずです」
それも本当はもう必要ないのかもしれない。
「冬夜君もっとドリブルのテクニック覚えよう?冬夜君がドリブルマスターしたら完璧だと思うんだ」
「ドリブル疲れるんだよ」
「ドリブルからレイアップやパスにつながるんじゃない?今の冬夜君研究されたらシュートとパスだけ警戒されちゃうよ?それでも冬夜君なら振り切っちゃうだろうけど。冬夜君高校の時言ってたじゃない『攻めの選択肢が多ければ多いほど守る方はやりづらくなる』って」
そんなやりとりをしてた。
遠坂先輩もバスケの勉強はじめてるんだな。
もう私の役割は終わったんだろうか?
「佐倉さんが必要ないって言ってるわけじゃないんだ。皆の支えになってるし。ただ自分の事も考えていいんじゃないかなって」
「今日はその話やめてください。せっかく皆で勝ったんです。思いっきり騒ぎたい」
すると片桐先輩はにやりと笑った。
「佐倉さんが騒ぎたいって言ってるし、焼肉でも食べて祝勝会しない?」
皆は片桐先輩に乗ってきた。
「いいねえ~、どうせ今夜忘年会&打ち上げやる予定だったんだろ?焼肉にしよう!」
そうしてみんなは着替えた後。別府の焼き肉屋さんに行った。
「じゃあみんなお疲れ様でした!!」
キャプテンの吉良先輩がそう言うと皆焼肉にありつく。
「佐倉さんこっちこっち!」
私は色んなテーブルに行っては話をしてアドバイスをして写真を撮ってる。
片桐先輩は木元先輩と青山先輩、水島先輩と食べている。
「先輩食べてますか~?」
一通り回った私は片桐先輩のテーブルに座った。
「片桐、今日凄かった。お前のお蔭で勝てたようなもんだ」と青山先輩はいう。
戦術からして片桐先輩ありきの作戦だったからそれはそうだろう。
「片桐お前ひとりで勝ったと思っていたらそれは大間違いだぞ」
敵意むき出しにしてるのが水島先輩。
水島先輩は突然入ってきた片桐先輩にレギュラーを奪われてるからしょうがない。
「流石に1対5で勝てるとは思ってないよ」
「……」
水島先輩は何も言わずに飲む。
焼肉を食べ終えると風俗街に行こうとする皆を必死に止める。
「こんなところで不祥事起こしたら片桐先輩の将来を台無しにします!」
そう言って必死に説得した。
「別に誰も気づきはしないよ。それに代表入りが無しになったって将来を棒にふるってことはないでしょ」
あまり代表入りに執着しない片桐先輩を止める手段は唯一つ。
「遠坂先輩に言いつけますよ」
「あ、それは待って!」
私は容赦なく遠坂先輩にメッセージを送る。
それから片桐先輩のスマホが鳴り片桐先輩はみっちりお叱りを受ける。
そんな二人のやりとりを羨ましく思う。
私にもそんな相手が出来るのだろうか?
真っ先に思い浮かんだのはなぜか帆秋先輩。
……それはない。
そのうちきっと現れるだろう。
そう願った。
(7)
「冬夜君、どういう事かな?」
佐倉さんからメッセージを受けた私はすぐに冬夜君に電話した。
「皆で盛り上がってるんだし、皆が行くのは構わないんじゃない?で言っただけだよ」
「で、ついて行こうと思ってたわけだね?」
「そんな事無いって」
「私言ったよね、そういう変なお店に行っちゃだめだよ!って……」
「だから行くつもりは無かったってば。僕は一人でホテルに帰るつもりだったんだよ。信じてくれよ」
うぅ……あまり言うとまたウザがられるかな?
そんな事は一度も無いって言ってたけど。
話題を変えるか。
「……今日凄かったね。やっぱり冬夜君バスケ始めて正解だったね」
「ありがとう。愛莉見に来てくれたんだね」
そりゃ見に行くよ。言ったでしょ?冬夜君の活き活きしてる姿が見たいって。
「明日何時頃帰ってくるの?」
「昼過ぎには帰ると思う」
「お昼ご飯食べ過ぎたら駄目だからね」
「分かってる」
「あと今夜は早くホテルに戻って寝ないとだよ。本当に怒るからね」
「分かってるって」
「うん、じゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
電話を切る。
「愛莉、トーヤなんて言ってた?」
神奈が聞いてきた。
「行かないって」
「それ本当に信じていいの?」
亜依が言う。
そう言われても信じるしかないよ。
「冬夜だって馬鹿じゃないさ。分かってるって」
誠君が弁護すると「お前が言っても全然説得力ないけどな」と神奈が言う。
「お、俺だって行ってねーし!神奈の存在を忘れたことねーよ」
「……お前私を風俗嬢と一緒にしてるのか?」
「ち、違うって」
「まあ、変な病気もらってこなかったらいいよ」
神奈は強いなあ。
それに引き換え私は……。
私達は冬夜君の応援に行ったメンバーで細やかな宴会を開いていた。
「あれなら冬夜がいれば、来年のユニバーシアード大会いけるんじゃね?」と誠君が言う。
来年は福岡だったかな?応援に行けるかな?
「応援に行かないとね」と恵美が言う。
いよいよ、冬夜君が世界の舞台に立つのか……。
冬夜君ならレギュラー確定だよね?
「そろそろ帰ろうか?」
渡辺君が言う。
みんな解散した。
「愛莉、誠が送るってさ」
「ありがとう」
「なんてことないよ」
誠君の車に乗って家に向かう。
「トーヤもなんか遠い世界の人間になっちまったなあ」
神奈が呟く。
「才能あるやつはいつかは立つべき舞台に立つんだろうな」
誠君が言う。
近頃の冬夜君は昔のような劣等感に苛まされた惨めな影はどこにもなく、その輝かしい才能を存分に発揮している。
私も変わらなきゃ。
サッカーの時のように心が折れそうになっていたら支えてあげなきゃ。
本当はそんな日が来なきゃいいんだけど。今はそう願うしかなかった。
冬休み。
僕達は別府の体育館に向かっていた。
後ろの席に佐倉さんを乗せて。
なんで、後ろの席なのかって?
それは助手席に佐倉さんが乗るのを愛莉が拒んだから。
「冬夜君の隣は私だけなんだからね!」
ごめん逆らえない。
別府に向かう理由は一つ。
今年最後の合同合宿をする事。
どことって?
別府の大学。
合宿だから部外者の愛莉は連れて行けない。
「大丈夫だとは思うけど……」
「心配しないでも大丈夫だよ」
「うぅ……でも冬夜君お酒飲むと何するか分からないから……別府だからって変なお店行ったらだめだからね!」
愛莉に釘刺された。
「楽しみですね。相手はインカレバスケでも強豪らしいですから」
「そうなんだ」
「きっと良い経験になると思います」
「だといいね」
そんな会話をしながら体育館についた。
案内された更衣室で着替えると、コートに向かえばすでに相手チームが練習を始めていた。
パッと見た感じそんな強いと思わない。
これで九州選抜3位?
練習だから適当にやってるのかな?
それとも、強かったメンバーが引退しちゃったとか?
佐倉さんと顔を見合わせる。
佐倉さんにもわからないらしい。
うちのコーチが相手チームのコーチに挨拶をしていた。
うちのコーチはどうも腰が低い。
「そちらのチームさんもストレッチ済んだら適当に参加して。メニューはうちにあわせてもらうよ」
いつも佐倉さんのメニューでやっていたからたまには良いだろう。
ストレッチを念入りにしていると突然喧しいヒップホップの音楽が流れてきた。
「おお~みんなやってるね。感心感心」
ロン毛の男がそう言ってやってきた。
2名ほど体育系の感じの人がいるけど、あとはチャラそう。
現にピアスとかしてる。
「直人!お前はまた遅刻しおって!!」
相手チームのコーチが怒る。
しかし直人と呼ばれたロン毛の人は臆にも介さない、
「そう怒んなって。今回の合宿とか遊びみたいなもんだろ?」
そう言われて少なからずうちのチームはカチンときたようだ。
木元先輩は苦笑していた。
「君がこのチームのキャプテン?僕は地元大のチームのキャプテンの……」
帆秋さんはうちのチームのキャプテンを無視して僕に近づいてきた。
「あんたがテレビでやってた人、確か片桐冬夜って……」
「そうだけど?」
「へえ、そのたっぱで本当にダンクするんだ。あんだけ活躍してるのに地元大なんてもったいないってえらいさんが言ってたな」
その言葉に反応したのか佐倉さんが挨拶した。
「失礼します。はじめまして、私がこのバスケ部でマネージャーをやってる……」
帆秋さんは佐倉さんをみると佐倉さんの両手をガシッと掴んだ。
「綺麗なマネージャーだね。俺、帆秋直人。君に一目ぼれしたよ。君と一夜を過ごせるなんて夢みたいだ」
すっごい語弊のある言い方だな。
「直人、早くもナンパか~」
茶髪のパーマ書けた人が直人って人を茶化す。
「直人さっさとアップせんか!!」
監督さんが怒ると「分かってるよ」と言って服を脱ぎだす。
佐倉さんは思わず目を背けるが、直人さん達は至福の下にジャージを着こんでいた。
「ちょっとダサいけど防寒にはいいんだよね。一年ボール貸して」
ああ、さっきの人達は一年だったのか。
直人って人はさっきのパーマかけてる人にボールを渡す。
「じゃあ、ちゃちゃっと自己紹介がてらアップしますか?」
そう言うとパーマをかけてる人はドリブルを始める。
「俺の名前は山田拓海、ポイントガードをやってる」
そう言ってダブルクラッチを決める。
ゴール下に構えていた人は「努!」とボールを金髪の人にボールを渡す。
「俺の名前は門田努、シューティングガード。スリーポイントが得意!」
そう言って。ハーフライン近くから3Pを決める。
ゴール下に構えてた人は、「直人」と言ってロン毛の人にパスを回す。
「俺の名前は帆秋直人。スモールフォワード。俺の特技もダンクなんだぜ!」
そう言ってワンハンドでダンクを決める。
最後に「元ちゃん」と正面に突っ込んでくる大柄の男の人にパスを出す。
身長2メートルは越えていた。
男の人はパスを受け取るとそのままダンクを決める。
うちのチームのメンバーはそのプレイに飲まれる。
誰一人喋らない。
「どうだった。佐倉ちゃん。てか下の名前教えて!」
「……ただ派手なだけですね」
「佐倉さんの言う通りだ、ちゃんとアップしろ!!」
監督さんが怒鳴っている。
「うーん、佐倉ちゃんに分かってもらうにはこれしかないか?」
そう言うとボールを僕に渡す。
「1ON1やろうぜ。あんたと一回やってみたかったんだよね」
「別にいいけど」
センターラインに僕が立つと直人さんは構える、スリーポイントライン付近で。
「……もう始めていいの?」
「ああ、いつでも来い」
そして大勢の人が見守る中1ON1が始まった。
(2)
オフェンスの派手さは分かった。
しかしディフェンスの方はどうなのだろう?
片桐先輩と1ON1を始めた。センターラインに立つ片桐先輩に対してスリーポイントラインに立つ帆秋さん。
そんなに間合いを開けていたら……。
片桐先輩はお構いなしに3Pを打ってくる。
慌ててブロックに飛ぶが、片桐先輩の高く弧を描く3Pにはなすすべもない。
唖然とする別府の大学のメンバー。
「1ON1でいきなり3Pは反則だろ!」
そう言って再度ボールを片桐先輩に渡す帆秋さん。
「ああ、ごめん」
そう言ってドリブルを始める片桐先輩。
帆秋さんは本気モードに入ったようだ。
だけど片桐先輩を止めるのは無理に等しい。
3Pを警戒して手をあげれば、先輩は低い姿勢で容赦なく相手のわきを突いてドライブしてくる。
そのドライブにくらいつく帆秋さん。
それをビハインドザバックで抜き去る片桐先輩。
そのままレイアップシュートを決める。
「まだまだ!!」
帆秋さんは諦めない。
何度も片桐先輩に挑むが何度も抜かれていく。
何度かプレイをすると。帆秋さんはコートに座りついた。
「もう、スタミナ切れですか?ディフェンスも甘いみたいだし。いくらダンクが出来てもディフェンスが出来ないんじゃ使えないんじゃないですか?」
ちょっと意地悪だったかな?
片桐先輩を止めれる人は地元大にもいない。
でも、彼の自尊心を傷つけるには十分だったみたいだった。
「お前ガードなんだろ?お前がディフェンスしろよ!」
そう言って片桐先輩にディフェンスさせる帆秋さん。
でも片桐先輩にディフェンスさせたらダメですよ。
ほらそんな腰高なディフェンスだと……。
右手でドリブルしながら様子を伺う帆秋さん。
片桐先輩は左手で帆秋先輩の右手を警戒しながら、姿勢を低くして構える。
レッグスルーで左手に持ち替え片桐先輩の右を突破しようと試みるも。
左手にボールを持つ前に片桐先輩の右手がボールを弾いていた。
その後も先輩は帆秋さんにシュートを許すどころかドリブルで突破も許さない堅固なディフェンスを続けた。
多分片桐先輩に1ON1で勝てる相手は日本にはいないだろう。
日本一のPGですらシャットアウトしてみせたのだから。
エースキラーであると同時にポイントゲッターでもある片桐先輩。
それでも帆秋さんは片桐先輩に挑んでいく。
「直人~、もう無理だって。やめとけよ~」
仲間からそんな言葉が飛ぶ。
「うるせぇ!こいつを止めないと地元大には勝てないんだぞ!」
やれやれと他のメンバーも動き出す。
自分の相手を選んで1ON1を挑む別府の大学の人達。
この日はマンツーの練習が主になった。
(3)
夕食を食べ終えるとお風呂に入って、休んだかと思われた。
が、皆の意思は統一されたのように体育館に向かう。
マネージャーの私が向かわないわけにはいかない。
体育館に行くと皆コートの外で何かを見ていた。
「何してるんですか?」
私に気がついた片桐先輩が答えてくれた。
「いや、別府の大学の人がね……」
私はコートの様子を見る。
別府の大学の人がディフェンスフットワークの練習をしていた。
私はコートの半面を借りると3ON3で練習を指示した。
チームの戦術の確認とディフェンスの練習を兼ねてだ。
それが済むと各自シュートの練習を始める。
「ただ打つだけじゃ駄目ですよ、ディフェンスがついてる事をイメージして。自分のシュートが試合を決定づけるものだと意識して打ってください」
そうやって、指示を出していると相手のマネージャーらしい女性が話しかけてきた。
「すごいですね、まるでコーチみたい」
「自分が出来ることをやってるだけです」
「それが凄いんですよ。私なんて皆の世話をするくらいしかできないし」
「それだけでもすごいと思います」
「ありがとう、ところで……誰と付き合ってるの?やっぱり片桐さん?」
「えっ?」
突然の質問に驚いた。片桐先輩も聞いていたのかシュートを外す、
「まだそういうのはないですね。真島さんはいるんですか?付き合ってる人」
真島さん……マネージャーの女の人はゴール下でのシュートを練習してる短い髪の毛をセンター分けした男の人を指す。
「彼、藤島君と付き合ってるの」
「そうなんですね」
「えーと、佐倉さん……」
「桜子でいいです」
「桜子さんは気になる人はいないの?」
バスケに全く関係のない話題だったので答える義務はなかったけど、マネージャー同志仲良くするのも悪くないのかもしれないと思って素直に話した。
「なるほどね、大変だったんだ」
「まあ、そうですね」
2時間したほどでそろそろ頃合いと判断して、練習を中断させた。
「そろそろ上がりましょう。夜更かししたら行けませんよ。間違っても飲んだりしないで下さい」
そういうと皆「うぃー」と言ってコートを出ていった。
「こっちも上がりましょう、汗の処理ちゃんとしてくださいね。寒いから風邪ひかない様にしてください」
真島さんも別府の大学の人に声をかけている。
「じゃあ、また明日」
「はい、また明日」
そう言って私達も体育館を後にする。
(4)
「うん、何もないよ」
「わかった~」
「ちゃんと飯食ってるか?」
「食べてたよ~」
「じゃあ、疲れたし眠いから切るね」
「うん……うぅ……」
「どうした?」
僕は何か悩んでに愛莉に優しく声をかけてやる。
「浮気くらい大目に見てやれってりえちゃんには言われたけど……やっぱり嫌だなって……」
「心配しなくてもしないよ。じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
そう言って電話を切ると部屋に戻る。
部屋に戻ると皆寝ている中、木元先輩が起きていた。
「飲みなよ」
木元先輩が銀色の缶を放るとそれを受け取る。
「いいんですか?佐倉さん怒りますよ」
「ばれやしないさ」
木元先輩はそう言ってカシュッと缶を開けるとグイっと飲む。
バレたら同じか。
そう思って僕も缶を開けると中身を飲む。
「先輩一つ聞いて良いですか?」
「花菜とのことかな?」
「どうしてプロポーズしようって決めたんですか?」
「焦っていたのかもな。大学を卒業したら会う時間も減るだろ?だから今のうちにって勢いでね」
「なるほど」
「片桐君たちはうらやましいね。卒業しても一緒だ」
「でも僕も制限あるから」
「制限?」
木元先輩が聞いていた。
「大学卒業して一年以内に結婚しなかったら強制的に結婚させらえるって約束したんです」
「どのみち結婚決まってるじゃないか。羨ましいな」
「でも親に言われたから結婚ってなんかみっともないじゃないですか?」
「確かにね」
そう言って二人で笑ってるとノックする音が。
この時間に佐倉さん?
缶をごみ箱に捨ててドアを開けると別府の大学の5人が立っていた。
「まだ寝る時間じゃないだろ?付き合えよ」
外に出ると近くのコンビニで飲み物を買ってたむろする。
「いや、まじすげーわお前。全然抜ける気がしなかった」
帆秋さんにそう褒められる。
「明日の練習試合マジ楽しみになってきた。合宿来てよかったわ」
「こっちこそ楽しみにしてるよ」
木元先輩がそう返す。
「明日はマジで行かせてもらうんで。手加減無しだからな」
「直人は今日も本気だったろ?」
藤島さんがそう言うと、帆秋さんが真面目な顔になる。
「明日の試合勝ったら俺本気で佐倉ちゃんにアタックかけるから」
こういう時どう返せばいいんだろう?
普通に返すか?
「大事なマネージャーだから取られない様に頑張るよ」
「覚悟しとけよ」
そう言って帆秋さんは立ち上がる。
「俺達のバスケとくと見せてやるからな」
僕と木元先輩も立ち上がると木元先輩が言った。
「OK。お互い手加減無しのガチンコ勝負だ」
ホテルに戻ると部屋の外で佐倉さんが待っていた。
佐倉さんが僕達に気づくと近づいて来て、そして異変に気がついた。
「あれほど飲まないでくださいって言ったのに!それにこんな夜遅くまで」
あんまり叫ぶと他のお客さんに迷惑だよ。
「二人共ちょっと来てください」
そう言って僕たちはロビーに行った。
「今日の練習見てて気づいたんですけど明日はちょっと作戦を変えましょう」
「と、言うと?」
木元先輩が聞いていた。
「片桐先輩のマークマンをPGからSGに変えるんです。多分速攻同士の殴り合いみたいな試合展開になると予想しているでしょう。相手のディフェンスならまず片桐先輩なら負けません。3Pの成功率が点差につながると思うんです」
「なるほど、相手の得点源を潰すわけだね。」
「インサイドで負けてもある程度は仕方ありません。だけどこっちの攻撃力だって負けてない。となると差につながるのは……」
「スリーポイントの量か」
僕が言うと佐倉さんが頷く。
「今年最後の試合だし、観客もたくさん来るみたいだし。負けたくないですよね」
「負けられない理由もできたしね」
お酒のせいか、木元先輩口が軽い。
「負けられない理由?なんですかそれ?」
佐倉さんが怪訝そうに僕達を見る。
僕と木元先輩が顔を見合わせると木元先輩がさっきしてきた約束を白状した。
「……絶対負けないでくださいね」
「任せとけ!」
先輩は親指を立てて佐倉さんに向ける。
「じゃあ、今日はもう寝てください。片桐先輩。罰として明日はフルタイム出場めざしてもらいますからね」
「わかったよ」
そう言うと部屋に戻った。
(5)
試合は総合体育館で行われる。
ただの練習試合とは思えない客の入り用。
1/3はマスコミ関係者だったけど。
あとは、日本代表の関係者とか。
愛莉たちも来てるみたいだ。
僕達は控室に入る前に、別府の大学の人達と会っていた。
そこで帆秋君が佐倉さんに接近する。
「約束の話は聞きました」
帆秋さんは佐倉さんに耳打ちする。
「今夜レストラン予約してあるから」
「私達負ける気ありませんから」
白いユニフォームに着替えるとコートに移動する。
館内にアナウンスが流れる。
別府の大学のメンバーの名前が呼ばれてセンターラインに並ぶ。
続いて、僕達の番だ。
こんな本格的な試合になるなんて地元大の人は誰も予想していなかった。
緊張する。
2番目に僕の名前が呼ばれる。
メンバーとハイタッチしてコートに入る。
皆のざわめきが聞こえる中。愛莉たちの声がはっきり聞こえる。
ああ、入ってるみたいだな。
今日は大丈夫っぽい。
全員が入ると握手してポジションにつく。
ジャンプボールで飛ぶ人が中央に立つ。
そして審判からボールが放られる。
ジャンプボールは圧倒的に背の高い相手のセンターが弾く。
その先には山田さん待っていた。
「直人!」
ボールはゴールに向かって放られる。もちろんシュートじゃない。
それを空中で受け取りアリウープを決める帆秋君。
早い!
歓声が沸く。
「慌てないでまず一本決めましょう!」
佐倉さんの声がしっかりと聞こえる。
別府の大学のディフェンスはオールコートのマンツーらしい。僕には門田君がついてる。
木元先輩がボールを空中に放る。
僕が思いっきりジャンプしボールを空中で受け取る。
待ち構える門田君のディフェンス。距離は開いてる。
素早く3Pを打つ。
ゴールに吸い込まれるように入る。
佐倉さんの予想通りの試合展開となった。
お互いノーガードの打ち合い。
そして僕が門田君を完全にシャットアウトすると。自然と点差が開く。
第2Qが終わる頃には60-45まで開いていた。
ハーフタイムで皆のコンディションを確認する佐倉さん。
「大丈夫だよ。片桐君のお蔭で楽させてもらえている」
木元先輩がそう言うと皆が頷く。
「片桐先輩大丈夫ですか?まだいけそうですか?」
「接触もそんなにしてないし。何より相手のマンツーと被ってるから。楽させてもらってるよ」
実際そんなに全力疾走した回数は殆どない。
「皆さん目をつぶって……勝った瞬間をイメージして……」
佐倉さんに言われる通り目を閉じてそれをイメージする。
「相手のシュート、成功率が徐々に下がっています。一気に決めましょう!」
佐倉さんがいうと皆拳を振り上げている。
ここまで監督は何もしてない。
それでいいのか監督。
第3Qからの展開も佐倉さんの予想通りだった。
派手なプレイが多い反面イージーなショットのミスが増えてきている。
そしてセンターがリバウンドに飛べなくなってきた。
足にきてる?
相手のディフェンスに変化が見えた。
僕のディフェンスに3人つきはじめた。
インサイドはセンターだけ。
ドリブルをしながら周りを見る。
ふと入る右端のディフェンスの足の開き具合。
考える前に動け。
ドリブルを相手の股に目掛けてする。身を反転させて背後に回り右手でボールを保持するとフェイダウェイでシュート。
第4Qに入る頃には相手は完全にばてていた、前半程の動きの切れは無くなり。センターは交代。他のメンバーもほとんど動けない。
一方地元大のみんなは僕が得点を引き受けていたのでまだ余力がある。
第4Qはフォーメーションの確認をしながら、相手の攻撃をシャットアウトする。
第4Qだけで言えば40-0の完封。
結果120-70の大勝を収めた。
試合後コートに座り込む帆秋さんに握手を求める。
「本当にお前凄いんだな。お前ひとりに翻弄されたようなもんだぜ」
帆秋さんはそう言うと握手して立ち上がった。
「またやろうな、今度はこうはいかねーぞ」
「こっちももっと強くなってるから」
「ああ」
相手チームのメンバーに挨拶に行く。
相手チームの監督に言われた事。
「お前はインカレなんかでくすぶってる器じゃない。もっと大きな舞台を目指せ」
プロにでもなれというのだろうか?
愛莉と相談だなそれは。
(6)
突然だった。
「桜子ちゃん、俺本気だ。付き合ってくれ」
帆秋先輩に言われた一言。
「私今恋愛どころじゃないから」
「何か打ち込んでる事あるの?」
「片桐先輩です。片桐先輩を本来いるべきところに立たせるのは私の役目だと思っています」
「それって恋じゃないのか?片桐が本命なのか」
「邪推するの止めてください!」
私は叫んでいた。
「恋じゃないなら別にいいじゃないか?付き合ってくれよ」
「だから今はそんな場合じゃないって……」
「何話してるの?」
片桐先輩たちが戻ってきた。
帆秋先輩は片桐先輩に言う。
「桜子ちゃんお前の事好きなのか?」
それって今言う事?
「……その話ならもう済んだ事だから」
余計な事を言わないで
「だったら桜子ちゃん俺と付き合ってくれたっていいじゃないか」
どういう短絡的思考してるのこの人は。
私は道具をまとめてコートから出ようとする。
片桐先輩も手伝ってくれた。
「俺諦めないから!また会おう」
そんな言葉を背中で受け止めながら、無言でコートを後にした。
誰かを好きになったことはある。
片桐先輩ただ一人。
誰かと付き合ったことはない。
ひたすら部活に打ち込んでいた。
誰かに振られたことはある。
片桐先輩に……、でも恋人という位置に立っていなくても片桐先輩の力になりたい。
そんな思いで先輩をバスケ部に引きずり込んだ
それから一生懸命バスケの研究をした。
片桐先輩だけ強くても他のメンバーが弱かったら話にならない。
他のメンバーの強化にも尽力した。
その結果今がある。
「佐倉さんのお蔭だよ!」
そんな称賛の言葉を初めてもらった。
「今の地元大学の強さは桜子ちゃんの努力のたまものだよ」
帆秋先輩にも言われた言葉。
そして生まれ初めて告白された。
帆秋先輩に。
「よかったの?」
片桐先輩が聞いてくる。
「何がですか?」
予想はついてたけどとぼけてみせた。
「いや、帆秋さんのこと」
「今はそれより先輩をベストコンディションで代表に行かせることが大事です」
「それなら愛莉がいるからさ……そんなに気にしなくても大丈夫だよ」
「メンタルはそうかもしれないけど、それ以外では私が必要なはずです」
それも本当はもう必要ないのかもしれない。
「冬夜君もっとドリブルのテクニック覚えよう?冬夜君がドリブルマスターしたら完璧だと思うんだ」
「ドリブル疲れるんだよ」
「ドリブルからレイアップやパスにつながるんじゃない?今の冬夜君研究されたらシュートとパスだけ警戒されちゃうよ?それでも冬夜君なら振り切っちゃうだろうけど。冬夜君高校の時言ってたじゃない『攻めの選択肢が多ければ多いほど守る方はやりづらくなる』って」
そんなやりとりをしてた。
遠坂先輩もバスケの勉強はじめてるんだな。
もう私の役割は終わったんだろうか?
「佐倉さんが必要ないって言ってるわけじゃないんだ。皆の支えになってるし。ただ自分の事も考えていいんじゃないかなって」
「今日はその話やめてください。せっかく皆で勝ったんです。思いっきり騒ぎたい」
すると片桐先輩はにやりと笑った。
「佐倉さんが騒ぎたいって言ってるし、焼肉でも食べて祝勝会しない?」
皆は片桐先輩に乗ってきた。
「いいねえ~、どうせ今夜忘年会&打ち上げやる予定だったんだろ?焼肉にしよう!」
そうしてみんなは着替えた後。別府の焼き肉屋さんに行った。
「じゃあみんなお疲れ様でした!!」
キャプテンの吉良先輩がそう言うと皆焼肉にありつく。
「佐倉さんこっちこっち!」
私は色んなテーブルに行っては話をしてアドバイスをして写真を撮ってる。
片桐先輩は木元先輩と青山先輩、水島先輩と食べている。
「先輩食べてますか~?」
一通り回った私は片桐先輩のテーブルに座った。
「片桐、今日凄かった。お前のお蔭で勝てたようなもんだ」と青山先輩はいう。
戦術からして片桐先輩ありきの作戦だったからそれはそうだろう。
「片桐お前ひとりで勝ったと思っていたらそれは大間違いだぞ」
敵意むき出しにしてるのが水島先輩。
水島先輩は突然入ってきた片桐先輩にレギュラーを奪われてるからしょうがない。
「流石に1対5で勝てるとは思ってないよ」
「……」
水島先輩は何も言わずに飲む。
焼肉を食べ終えると風俗街に行こうとする皆を必死に止める。
「こんなところで不祥事起こしたら片桐先輩の将来を台無しにします!」
そう言って必死に説得した。
「別に誰も気づきはしないよ。それに代表入りが無しになったって将来を棒にふるってことはないでしょ」
あまり代表入りに執着しない片桐先輩を止める手段は唯一つ。
「遠坂先輩に言いつけますよ」
「あ、それは待って!」
私は容赦なく遠坂先輩にメッセージを送る。
それから片桐先輩のスマホが鳴り片桐先輩はみっちりお叱りを受ける。
そんな二人のやりとりを羨ましく思う。
私にもそんな相手が出来るのだろうか?
真っ先に思い浮かんだのはなぜか帆秋先輩。
……それはない。
そのうちきっと現れるだろう。
そう願った。
(7)
「冬夜君、どういう事かな?」
佐倉さんからメッセージを受けた私はすぐに冬夜君に電話した。
「皆で盛り上がってるんだし、皆が行くのは構わないんじゃない?で言っただけだよ」
「で、ついて行こうと思ってたわけだね?」
「そんな事無いって」
「私言ったよね、そういう変なお店に行っちゃだめだよ!って……」
「だから行くつもりは無かったってば。僕は一人でホテルに帰るつもりだったんだよ。信じてくれよ」
うぅ……あまり言うとまたウザがられるかな?
そんな事は一度も無いって言ってたけど。
話題を変えるか。
「……今日凄かったね。やっぱり冬夜君バスケ始めて正解だったね」
「ありがとう。愛莉見に来てくれたんだね」
そりゃ見に行くよ。言ったでしょ?冬夜君の活き活きしてる姿が見たいって。
「明日何時頃帰ってくるの?」
「昼過ぎには帰ると思う」
「お昼ご飯食べ過ぎたら駄目だからね」
「分かってる」
「あと今夜は早くホテルに戻って寝ないとだよ。本当に怒るからね」
「分かってるって」
「うん、じゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
電話を切る。
「愛莉、トーヤなんて言ってた?」
神奈が聞いてきた。
「行かないって」
「それ本当に信じていいの?」
亜依が言う。
そう言われても信じるしかないよ。
「冬夜だって馬鹿じゃないさ。分かってるって」
誠君が弁護すると「お前が言っても全然説得力ないけどな」と神奈が言う。
「お、俺だって行ってねーし!神奈の存在を忘れたことねーよ」
「……お前私を風俗嬢と一緒にしてるのか?」
「ち、違うって」
「まあ、変な病気もらってこなかったらいいよ」
神奈は強いなあ。
それに引き換え私は……。
私達は冬夜君の応援に行ったメンバーで細やかな宴会を開いていた。
「あれなら冬夜がいれば、来年のユニバーシアード大会いけるんじゃね?」と誠君が言う。
来年は福岡だったかな?応援に行けるかな?
「応援に行かないとね」と恵美が言う。
いよいよ、冬夜君が世界の舞台に立つのか……。
冬夜君ならレギュラー確定だよね?
「そろそろ帰ろうか?」
渡辺君が言う。
みんな解散した。
「愛莉、誠が送るってさ」
「ありがとう」
「なんてことないよ」
誠君の車に乗って家に向かう。
「トーヤもなんか遠い世界の人間になっちまったなあ」
神奈が呟く。
「才能あるやつはいつかは立つべき舞台に立つんだろうな」
誠君が言う。
近頃の冬夜君は昔のような劣等感に苛まされた惨めな影はどこにもなく、その輝かしい才能を存分に発揮している。
私も変わらなきゃ。
サッカーの時のように心が折れそうになっていたら支えてあげなきゃ。
本当はそんな日が来なきゃいいんだけど。今はそう願うしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる