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3rdSEASON
飛ぶ鳥を越えた空に向かって
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(1)
「うーっす」
朝体育館に行くと皆もうシュート練習を始めていた。
「おっす、冬夜」
聖人がそう挨拶してくると他のメンバーからボールを受け取る。
誰が何を言わなくとも左サイド0度からの3Pの練習を始めていた。
今日は午後から長野のプロバスケチームと試合をして最後になるらしい。
誰もが試合に出たい。
そう思っているだろう。
今日の午前中は皆アピールしてくるはずだ。
僕は必ず出れる。
そんな自信はないけれど、それなりに試合に出たいという気持ちはある。
今日の試合はテレビ中継されるはずだから。
地元の報道陣も来てるくらいだし。
同じ恥をかくなら思いっきりかけ。
その言葉通りにプレイするつもりだ。
監督がくると練習が始まった。
今日は全面を使った試合形式の練習。
ターンオーバーが起きたら。シュートが決まったらとにかく走れ。
聖人の言葉通りに動く。
前に前に。
もっと前に行けるはずだ。そう言わんばかりにパスが徐々に前に飛んでくる。
ディフェンスはマンツーのオールコートプレス。
インサイドのキープレイヤーは雄介が、アウトサイドのキープレイヤーは僕が押さえる。
ポイントガードを抑えるのは聖人。
プレスだというくらいだから隙を見せたらダブルチームでボールを奪いに行く。
もちろんパスコースを塞ぎながら。
10分ずつチームが入れ替わりAチームは出ずっぱり。
3チームと当ったら5分間の休憩。
Aチームはその5分間で互いに指摘し合いながら、監督の指示を受けながら、呼吸を整える。
練習の風景も取材されていた。
聖人曰く「こんなに取材が多いのは珍しい」らしい。
練習試合をテレビでするのも滅多にないんだとか。
まあ、当然だよね。
誰も見ないもんそんなの。
プロバスケットですら夕方のニュースで結果を伝えられる程度なのに。
オリンピックも滅多に中継されないバスケの試合なんか誰が見るだろうか。
「原因はお前だろ?」
義明が言う。
「お前のせいで皆のペースが崩されてる、いい迷惑だぜ」
雄一郎がそう言うが顔は笑っている。
この二日で打ち解けたようだ。
そのプレイで自分の存在意義を示せ 。
その言葉通りにプレイしてきた結果が今出てる。
初めて来た代表というチームの中に自分の居場所を確保することが出来た。
昼食を食べると荷物をまとめて移動する。
練習試合の会場へと向かう。
「冬夜!」
バスの中で監督に呼ばれる。
「来月の遠征までにパスポート用意しておけ」
遠征?
「やっぱり知らなかったようだな。来月末に韓国に遠征に行くんだ。パスポート申請に時間かかるから帰ったらすぐ準備しろ」
「わかりました」
韓国と言えば焼肉!海鮮鍋!
試合の事など忘れて初めての海外旅行に夢をはせていた。
「言っとくが冬夜、遊びに行くわけじゃないんだからな!」
「わかりました」
そんな浮かれ具合も会場に着くと一気に消え失せる。
ファンにもみくちゃにされながら控室に向かうメンバー。
「聖人、いつもこうなの」
「いつもより凄いな。やっぱお前の効果だな」
それはプレッシャーに変わる。
これでベンチにも座れなかったらシャレにならない。
その不安はすぐに消えた。
スタッフの人からユニフォームを受け取ったから。
「じゃあ今日のスタメンを発表するぞ」
監督が一人ずつ呼んでいく。
僕は二番目に呼ばれた。
「スタメンの5人でフルに戦うくらいの気持ちで行け。最初に飛ばし過ぎたりするなよ。ペース配分も練習のうちだ」
30分に一回5分それを4時間続けることに比べたら、試合の時間なんて大した物じゃない。
「少しでも気のゆるみが見えたら容赦なくメンバー変えていくからな」
「はい!」
皆で円陣を組む。
「冬夜、今日は観客多いけどリラックスしていけ」
聖人が言う。
「わかった」と答える。
「練習の結果。いい形で残していこう!行くぞ!!」
「っしゃあ!!」
そう言って会場に向かった。
(2)
時間になったらテレビをつける。
練習試合の相手は長野のプロチーム。
プロ相手に試合になるんだろうか?
冬夜君だったら大丈夫だよね。
麻耶さんとりえちゃんと一緒にリビングで見てた。
相手のチームメンバーの名前から紹介されてコートに入っていく。
その後に代表チームが呼ばれる。
冬夜君は二番目に呼ばれた。
冬夜君の顔が画面いっぱいに映し出される。
字幕で片桐冬夜(20)と書かれてある。
冬夜君スタメンに入れたんだね。
若干表情が硬い。
カメラを前に緊張してるのかな?
冬夜君たちがマークする相手の番号を言って確認する。
紹介が終わると。互いのベンチの前で写真が撮られる。
撮影が終わると皆が配置につく。
ジャンプボールが放られて相手チームのセンターがボールに触れると試合開始。
冬夜君達はマンツーでディフェンスしてるらしい。
身長差があるからか高いボールでパスを回していくが、中には入れさせない。
相手のセンターがゴール下に飛び出す。それに合わせて相手が高いボールを投げ込む。
が、相手センターは味方のセンターがキッチリマークして飛ぶことが出来ない。
密着されるとなかなか飛びづらいよね。
相手センターがボールを取り損ねルーズボールになると冬夜君が飛びつく。
ターンオーバーだ。
冬夜君はそのボールを背後を確認せずにパスを出す。
的確に受け取る味方の4番。
4番は受け取ると前にパスを出す。
カットインしていた味方の10番がボールを受け取りダンク。
歓声が沸く。
相手も素早くボールをコートにいれて攻撃に入るが、ボールを保持してる人のマークは冬夜君。
ドリブルも許さないパスも許さない。
前に進むことすらできない。
プーっと音が鳴る。
8秒ルールのバイオレーション。
味方の4番とハイタッチする冬夜君。ボールが4番に渡るとダブルチームで挑んでくる。
それを2ドリブルで躱しインサイドに切り込んでいく。
他の3人がインを固めると後ろにボールを放る。
そのパスを冬夜君が受け取る。
冬夜君のジャンプシュートがゴールに入る。
冬夜君と7番の人のマークしてる人にボールが渡すとハーフラインを越える事すら許されない。
相手の選択肢はその他の3人に限られる。
とはいえ相手もプロ。
外人選手も入ってる事もあってか、何度かゴールを決められるも。代表チームの速攻が早い。
相手が守備に回っても俊敏にパスを回しノーマークを探し出す。
相手はマンツーのハーフコートプレス。
ボールを持っている相手にダブルチームで食らいつく。
しかし代表チームはめまぐるしく動いてノーマークを作り出す。
そして最後に決めるのは10番の人か冬夜君
第一Qが終わる頃には27-8と早くも差を広げていた。
第二Qが始まると相手のディフェンスが1-3-1ゾーンディフェンスに変わる。
そうなると冬夜君の出番だ。
4番の人は冬夜君に次から次へとパスを渡す。
冬夜君はその期待に応えるように次から次へと3Pを決めていく。
すぐに相手監督から指示がでる。
冬夜君一人にマークマンをつける。
冬夜君を一人で抑えるなんて無理だよ。
冬夜君は下をペロッと出すと低い姿勢で相手の左側をつく。
相手もプロ。簡単には抜かせまいとディフェンスがくらいつく。
すると冬夜君は自分の後ろでボールを右手に持ち替え相手の右わきに切り込んでいく。
インサイドにいた4人でプレスをかけようとするが……。
冬夜君を飛ばせたら何人ディフェンスがいようと関係ない。
ブロックに飛んだ人を躱してダンクを決める。
冬夜君の身長でダンクは凄い。
歓声が一際大きくなる。
冬夜君のディフェンスには癖がある。相手がボールを保持すると腰を落とし床をちょこっと触ってディフェンスする。
相手がシュートをすればブロックに飛び……、冬夜君の跳躍力は相手がジャンプするのを確認してからでもブロックに間に合うというもの。
エアウォークを難なく決める冬夜君ならではのディフェンス。
第3Qにはいると冬夜君のマークする相手が変わる。
相手の得点源だった外人選手だ。
積極的にドリブルで突破を試みるが冬夜君のディフェンス力はそれを許さない。
次々にチャージングを取っていく。
狼狽えるプロチーム。
オフェンスが上手くいかないとディフェンスにもミスが生じる。
ディフェンスが上手くいかないとオフェンスが上手くいかない。
負の連鎖が続いて代表チームの圧勝で決まった。
MVPは当然の様に冬夜君だった。3Pを決めながらインサイドでもシュートを決めまくった冬夜君の得点はチームの半分を占めていた。
冬夜君にインタビューがつく。
「応援に来て下さった方ありがとうございました」と、冬夜君の声が聞こえる。
「今の心境は?」と、聞かれると……。
冬夜君も舞い上がっていたのだろう。大勝で興奮していたのだろう。
「早く蕎麦食べたいです」
笑いの渦が巻き起こった。
「じゃあ、試合後蕎麦をたくさん食べてくださいね」と言うインタビュアー。
「次は韓国戦ですが、やはり楽しみは焼肉ですか?」と意地悪なインタビュアー。
「それも良いんですけど。韓国のり買って帰って彼女におにぎり作ってもらおうかと」
どこまでこの人は……。
りえちゃんと麻耶さんがニヤニヤと私を見てる。
帰ってきたらお説教なんだから。
「しかし冬夜君も時の人になっちゃいましたね~」
「あの子ったら世間に恥をさらすような真似をして……」
麻耶さんとりえちゃんがそんな話をしていた。
(3)
「冬夜!!」
案の定監督に叱られた。
しょうがないだろ、勝って浮かれていたんだから。
「お前にとって遠征は食べ歩きみたいな気分なんだろうな」
聖人がそう言う。
「じゃあ皆3日間お疲れだった。次は来月の韓国遠征だが、今日選ばれなかった選手にもチャンスはある。今のレギュラーもだが慢心することなく日々の練習に励め!」
そう言うと皆控室を出てバスに乗り込む……のだが。
「片桐選手サインください!」とサインぜめ。
サインの書き方なんて知らないぞ。
適当に色紙に名前を書く。
バスケットボールに書いてくれという人もいた。
他の選手もサインぜめを受けている。
彩(ひかる)もイケメンだからすごい人だかりが出来ている。
「皆早くバスに乗れ!」
監督がそう言うと人の群れをかき分けてバスに乗る。
「ふぅ」
座席に着くと一息つく。
「今日活躍したから大変だっただろ」
隣に座った聖人がいう。
「聖人たちは毎回こうなの?」
「これからは楽になるだろうさ。お前に大体目がいってるしな」
そう言って聖人がにやりと笑う。
「浮かれるのも今だけにしとけ?間違っても帰りに蕎麦屋によるなんて馬鹿な真似はよせよ」
雄一郎が言うと皆が笑う。
「お土産に買って帰って家で食べるよ」というと「観光に来たんじゃないんだぞ!」と監督に怒られる。
お土産と言えば愛莉にワイン買って帰らないとな。
そんな事を考えてる間に長野駅に着いた。
新幹線が来るまでに言われたお土産を買う。
あとバスケ部の皆にお菓子も……。
東京までは彩といっしょだった。
「それじゃまたな」
そう言って彩と分かれる。
そこから羽田空港まで行って地元へ飛行機に乗る。
やっと解放された。
そんな気分で満たされ、どっと疲れがでたのか機内では眠っていた。
(4)
空港に着くと愛莉が迎えに来ていた。
「ただいま、これお土産」
愛莉にワインを渡す。
愛莉はワインを受け取るとにこりと笑う。
「帰ったらこれで祝勝会だね。ご馳走用意してるよ」
愛莉はまだある手荷物に注目する。
「ああ、これは蕎麦とあとバスケ部の皆にチーズケーキを……」
ぽかっ
「インタビュー聞いてたよ!何てこと言ってるの!?蕎麦食べたいとか!冬夜君はいつもそうなんだから!」
ああ、見てたのね。
帰りの車は僕が運転するというと愛莉が譲らなかった。
「冬夜君は疲れてるだろうから私が運転する!」
「あ、いや。愛莉の運転を疑ってるわけじゃないんだけど」
「そりゃ冬夜君よりは下手だけどさ……私だってちゃんと運転できるよ?」
「そういう問題じゃないんだ」
「?」
「愛莉が左にいないと落ち着かないっていうかなんていうか」
分からない?なんか彼女に運転させてると悪いなって気にさせるというか……。
「まあそういうならいいけど。気をつけてね」
そう言って愛莉は車のカギを僕に渡す。
「冬夜君長野ではどうだった?」
「どうって?」
蕎麦は美味しかったよ。
「なんかチームの人と揉めてたみたいだから」
「ああ、それなら解決したよ」
「そうなんだ、よかったね」
「そのプレイで自分の存在意義を示せって本当だね」
「なるほど……冬夜君は1プレイで存在意義をアピールできるもんね。誰にも文句を言わせないというか」
「愛莉、お願いがあるんだけど」
「な~に?」
「帰ったらマッサージお願いしていいかな」
愛莉は笑っていた。
「お安い御用ですよ。その代わり条件がありま~す」
「良いよ」
「へ?まだ言ってないよ?」
「大体想像つくから。僕もそんな気分だし」
そう言うと愛莉は顔を赤くしていた。
「うぅ……冬夜君の馬鹿」
愛莉の感触、3日ぶりに味わいたいしな。
「あ、そうだ思い出した」
「どうしたの?」
「長野で彩って人と話したんだった」
「神奈が東京であった人?」
「そうそう」
「何話したの?」
「神奈今何してるっていうから結婚したよって」
「そしたら?」
「おめでとうって伝えてくれって」
愛莉はその事をメッセージで送る。
すぐに返事がきたようだ。
「『トーヤなんか変な事吹き込まれてないだろうな?』だって」
「色々聞いたよって伝えておいて」
「は~い」
愛莉はその場でメッセージを送る。
僕のスマホが鳴る。
愛莉の車にもBluetoothはついてる。
ハンズフリーで電話に出る。
「誠には絶対言うなよ!あのバカ絶対変な事企むから」
「わかってるよ」
「……今日はおめでとう。見てたぞ。かっこよかった」
「ありがとう」
「じゃ、今日は愛莉にたんと甘えろ。あと叱られとけ」
「叱られろ?」
「インタビューの件聞いてたぞ!この馬鹿は……」
「ああ、もう叱られたよ」
「そうか、じゃあまたな」
電話が切れた。
「でも嬉しい事もあるんだよ」
「何?」
「ちゃんと彼女いるってアピールしてくれた事」
「そんなもんか?」
「そうだよ、冬夜君明日からファンレターとかきまくりだよ。全国で中継されてたんだから」
全国だったのか。
全国から蕎麦が送られてくるのかな?
ネットには大手掲示板に【冬夜】アカツキ5スレ【蕎麦好き】なんてスレッドがたてられているらしい。
これからテレビの取材とか来るのかな?
だとしたら面倒だな。
まあ、しょうがないか。
大学でも大騒ぎだろうな。
まあ、なることは予想していたけど。
若干気が重い。
唯一救われたのは春休み中で大学に行くことが練習以外にないという事だった。
(5)
その日の夕飯は愛莉の言う通りご馳走だった。
お酒も買ってきたワイン一本だけじゃ当然のように足りずにビールを飲む。
「しかし冬夜君も有名人ですね~」
「うむ……」
「ただの食いしん坊なんですけどね」
「どんな子供が生まれるのか楽しみですね」
まだ子供を作ることは考えてないぞ、てか止めろ親’s
「娘の名前は決めてあるからな」
性別まで決めてるのかよ。
細やかな宴が終わると一風呂浴びて愛莉が戻ってくるのを待つ。
スマホはメッセージが山のように来ていた。
大体がバスケ関連のメッセージだが。
「浮かれて繁華街に繰り出すなんてことは止めてくださいよ」
佐倉さんからのメッセージ。
「佐倉さんこそ水島君と浮かれてはめ外すなよ」
「な、何で知ってるんですか?」
「てことはやっぱりそうだったんだ?」
「嵌めましたね先輩!」
僕だって最近少しはそういう事に興味が湧いてきた。
PCをつけてネットを見れば「アカツキ5の守護神」と称されていた。
なんでもサムライとかつけたがるよね、日本のメディアって。
愛莉がもどってくるとベッドにうつ伏せになる。
愛莉が腰のあたりに跨って背中とかを揉んでくれる。
愛莉がテレビをつけるとさっそく今日のバスケのニュースをやっている。
特集まで組まれてるありさまだ。
「冬夜君韓国行っちゃうの?」
「うん、そうらしいね」
「そっかぁ」
なんか寂しそうな愛莉。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない」
「一人で韓国行っちゃうのが寂しい?」
「どうしてわかったの?」
ずっと愛莉を見てきたから分かるよ。
僕はスタッフの人に電話する。困ったことがあったらいつでも電話してくれと言っていた。
「あ、もしもし」
「もしもし、片桐君か?どうした?」
「来月の韓国戦チケット一人分融通できませんか?」
「できるよ。アリーナ席でいいかい?」
「はい、お願いします」
「飛行機のチケットとかも手配しておくね。一緒に行くんだろ?」
「大丈夫なんですか?」
「大方今日言ってた彼女の分だろ?かまわないよ。藍井君からも頼まれてるしね」
「すいませんお願いします」
「わかった、郵送するよ」
「ありがとうございます」
「それじゃまたね」
愛莉の顔が喜んでる。
「明日一緒にパスポート申請に行こうか」
「うん」
愛莉が喜ぶならなんでもするさ。
いつも愛莉に喜ばされてるのだから。
「ありがとうね、冬夜君」
「気にしないでいいよ、このくらいの反則技使ってもばちが当たらないだろ?」
愛莉はマッサージを終えるとテレビを消して照明を落とすと僕に抱き着く。
「う~ん」
まだ悩みがあるのかい?
多分予想はつくけど
「ハネムーンは大事にとっとこうな」
「そうだね」
しかし今回の試合は僕の予想以上に反響を呼ぶことになるのだった。
「うーっす」
朝体育館に行くと皆もうシュート練習を始めていた。
「おっす、冬夜」
聖人がそう挨拶してくると他のメンバーからボールを受け取る。
誰が何を言わなくとも左サイド0度からの3Pの練習を始めていた。
今日は午後から長野のプロバスケチームと試合をして最後になるらしい。
誰もが試合に出たい。
そう思っているだろう。
今日の午前中は皆アピールしてくるはずだ。
僕は必ず出れる。
そんな自信はないけれど、それなりに試合に出たいという気持ちはある。
今日の試合はテレビ中継されるはずだから。
地元の報道陣も来てるくらいだし。
同じ恥をかくなら思いっきりかけ。
その言葉通りにプレイするつもりだ。
監督がくると練習が始まった。
今日は全面を使った試合形式の練習。
ターンオーバーが起きたら。シュートが決まったらとにかく走れ。
聖人の言葉通りに動く。
前に前に。
もっと前に行けるはずだ。そう言わんばかりにパスが徐々に前に飛んでくる。
ディフェンスはマンツーのオールコートプレス。
インサイドのキープレイヤーは雄介が、アウトサイドのキープレイヤーは僕が押さえる。
ポイントガードを抑えるのは聖人。
プレスだというくらいだから隙を見せたらダブルチームでボールを奪いに行く。
もちろんパスコースを塞ぎながら。
10分ずつチームが入れ替わりAチームは出ずっぱり。
3チームと当ったら5分間の休憩。
Aチームはその5分間で互いに指摘し合いながら、監督の指示を受けながら、呼吸を整える。
練習の風景も取材されていた。
聖人曰く「こんなに取材が多いのは珍しい」らしい。
練習試合をテレビでするのも滅多にないんだとか。
まあ、当然だよね。
誰も見ないもんそんなの。
プロバスケットですら夕方のニュースで結果を伝えられる程度なのに。
オリンピックも滅多に中継されないバスケの試合なんか誰が見るだろうか。
「原因はお前だろ?」
義明が言う。
「お前のせいで皆のペースが崩されてる、いい迷惑だぜ」
雄一郎がそう言うが顔は笑っている。
この二日で打ち解けたようだ。
そのプレイで自分の存在意義を示せ 。
その言葉通りにプレイしてきた結果が今出てる。
初めて来た代表というチームの中に自分の居場所を確保することが出来た。
昼食を食べると荷物をまとめて移動する。
練習試合の会場へと向かう。
「冬夜!」
バスの中で監督に呼ばれる。
「来月の遠征までにパスポート用意しておけ」
遠征?
「やっぱり知らなかったようだな。来月末に韓国に遠征に行くんだ。パスポート申請に時間かかるから帰ったらすぐ準備しろ」
「わかりました」
韓国と言えば焼肉!海鮮鍋!
試合の事など忘れて初めての海外旅行に夢をはせていた。
「言っとくが冬夜、遊びに行くわけじゃないんだからな!」
「わかりました」
そんな浮かれ具合も会場に着くと一気に消え失せる。
ファンにもみくちゃにされながら控室に向かうメンバー。
「聖人、いつもこうなの」
「いつもより凄いな。やっぱお前の効果だな」
それはプレッシャーに変わる。
これでベンチにも座れなかったらシャレにならない。
その不安はすぐに消えた。
スタッフの人からユニフォームを受け取ったから。
「じゃあ今日のスタメンを発表するぞ」
監督が一人ずつ呼んでいく。
僕は二番目に呼ばれた。
「スタメンの5人でフルに戦うくらいの気持ちで行け。最初に飛ばし過ぎたりするなよ。ペース配分も練習のうちだ」
30分に一回5分それを4時間続けることに比べたら、試合の時間なんて大した物じゃない。
「少しでも気のゆるみが見えたら容赦なくメンバー変えていくからな」
「はい!」
皆で円陣を組む。
「冬夜、今日は観客多いけどリラックスしていけ」
聖人が言う。
「わかった」と答える。
「練習の結果。いい形で残していこう!行くぞ!!」
「っしゃあ!!」
そう言って会場に向かった。
(2)
時間になったらテレビをつける。
練習試合の相手は長野のプロチーム。
プロ相手に試合になるんだろうか?
冬夜君だったら大丈夫だよね。
麻耶さんとりえちゃんと一緒にリビングで見てた。
相手のチームメンバーの名前から紹介されてコートに入っていく。
その後に代表チームが呼ばれる。
冬夜君は二番目に呼ばれた。
冬夜君の顔が画面いっぱいに映し出される。
字幕で片桐冬夜(20)と書かれてある。
冬夜君スタメンに入れたんだね。
若干表情が硬い。
カメラを前に緊張してるのかな?
冬夜君たちがマークする相手の番号を言って確認する。
紹介が終わると。互いのベンチの前で写真が撮られる。
撮影が終わると皆が配置につく。
ジャンプボールが放られて相手チームのセンターがボールに触れると試合開始。
冬夜君達はマンツーでディフェンスしてるらしい。
身長差があるからか高いボールでパスを回していくが、中には入れさせない。
相手のセンターがゴール下に飛び出す。それに合わせて相手が高いボールを投げ込む。
が、相手センターは味方のセンターがキッチリマークして飛ぶことが出来ない。
密着されるとなかなか飛びづらいよね。
相手センターがボールを取り損ねルーズボールになると冬夜君が飛びつく。
ターンオーバーだ。
冬夜君はそのボールを背後を確認せずにパスを出す。
的確に受け取る味方の4番。
4番は受け取ると前にパスを出す。
カットインしていた味方の10番がボールを受け取りダンク。
歓声が沸く。
相手も素早くボールをコートにいれて攻撃に入るが、ボールを保持してる人のマークは冬夜君。
ドリブルも許さないパスも許さない。
前に進むことすらできない。
プーっと音が鳴る。
8秒ルールのバイオレーション。
味方の4番とハイタッチする冬夜君。ボールが4番に渡るとダブルチームで挑んでくる。
それを2ドリブルで躱しインサイドに切り込んでいく。
他の3人がインを固めると後ろにボールを放る。
そのパスを冬夜君が受け取る。
冬夜君のジャンプシュートがゴールに入る。
冬夜君と7番の人のマークしてる人にボールが渡すとハーフラインを越える事すら許されない。
相手の選択肢はその他の3人に限られる。
とはいえ相手もプロ。
外人選手も入ってる事もあってか、何度かゴールを決められるも。代表チームの速攻が早い。
相手が守備に回っても俊敏にパスを回しノーマークを探し出す。
相手はマンツーのハーフコートプレス。
ボールを持っている相手にダブルチームで食らいつく。
しかし代表チームはめまぐるしく動いてノーマークを作り出す。
そして最後に決めるのは10番の人か冬夜君
第一Qが終わる頃には27-8と早くも差を広げていた。
第二Qが始まると相手のディフェンスが1-3-1ゾーンディフェンスに変わる。
そうなると冬夜君の出番だ。
4番の人は冬夜君に次から次へとパスを渡す。
冬夜君はその期待に応えるように次から次へと3Pを決めていく。
すぐに相手監督から指示がでる。
冬夜君一人にマークマンをつける。
冬夜君を一人で抑えるなんて無理だよ。
冬夜君は下をペロッと出すと低い姿勢で相手の左側をつく。
相手もプロ。簡単には抜かせまいとディフェンスがくらいつく。
すると冬夜君は自分の後ろでボールを右手に持ち替え相手の右わきに切り込んでいく。
インサイドにいた4人でプレスをかけようとするが……。
冬夜君を飛ばせたら何人ディフェンスがいようと関係ない。
ブロックに飛んだ人を躱してダンクを決める。
冬夜君の身長でダンクは凄い。
歓声が一際大きくなる。
冬夜君のディフェンスには癖がある。相手がボールを保持すると腰を落とし床をちょこっと触ってディフェンスする。
相手がシュートをすればブロックに飛び……、冬夜君の跳躍力は相手がジャンプするのを確認してからでもブロックに間に合うというもの。
エアウォークを難なく決める冬夜君ならではのディフェンス。
第3Qにはいると冬夜君のマークする相手が変わる。
相手の得点源だった外人選手だ。
積極的にドリブルで突破を試みるが冬夜君のディフェンス力はそれを許さない。
次々にチャージングを取っていく。
狼狽えるプロチーム。
オフェンスが上手くいかないとディフェンスにもミスが生じる。
ディフェンスが上手くいかないとオフェンスが上手くいかない。
負の連鎖が続いて代表チームの圧勝で決まった。
MVPは当然の様に冬夜君だった。3Pを決めながらインサイドでもシュートを決めまくった冬夜君の得点はチームの半分を占めていた。
冬夜君にインタビューがつく。
「応援に来て下さった方ありがとうございました」と、冬夜君の声が聞こえる。
「今の心境は?」と、聞かれると……。
冬夜君も舞い上がっていたのだろう。大勝で興奮していたのだろう。
「早く蕎麦食べたいです」
笑いの渦が巻き起こった。
「じゃあ、試合後蕎麦をたくさん食べてくださいね」と言うインタビュアー。
「次は韓国戦ですが、やはり楽しみは焼肉ですか?」と意地悪なインタビュアー。
「それも良いんですけど。韓国のり買って帰って彼女におにぎり作ってもらおうかと」
どこまでこの人は……。
りえちゃんと麻耶さんがニヤニヤと私を見てる。
帰ってきたらお説教なんだから。
「しかし冬夜君も時の人になっちゃいましたね~」
「あの子ったら世間に恥をさらすような真似をして……」
麻耶さんとりえちゃんがそんな話をしていた。
(3)
「冬夜!!」
案の定監督に叱られた。
しょうがないだろ、勝って浮かれていたんだから。
「お前にとって遠征は食べ歩きみたいな気分なんだろうな」
聖人がそう言う。
「じゃあ皆3日間お疲れだった。次は来月の韓国遠征だが、今日選ばれなかった選手にもチャンスはある。今のレギュラーもだが慢心することなく日々の練習に励め!」
そう言うと皆控室を出てバスに乗り込む……のだが。
「片桐選手サインください!」とサインぜめ。
サインの書き方なんて知らないぞ。
適当に色紙に名前を書く。
バスケットボールに書いてくれという人もいた。
他の選手もサインぜめを受けている。
彩(ひかる)もイケメンだからすごい人だかりが出来ている。
「皆早くバスに乗れ!」
監督がそう言うと人の群れをかき分けてバスに乗る。
「ふぅ」
座席に着くと一息つく。
「今日活躍したから大変だっただろ」
隣に座った聖人がいう。
「聖人たちは毎回こうなの?」
「これからは楽になるだろうさ。お前に大体目がいってるしな」
そう言って聖人がにやりと笑う。
「浮かれるのも今だけにしとけ?間違っても帰りに蕎麦屋によるなんて馬鹿な真似はよせよ」
雄一郎が言うと皆が笑う。
「お土産に買って帰って家で食べるよ」というと「観光に来たんじゃないんだぞ!」と監督に怒られる。
お土産と言えば愛莉にワイン買って帰らないとな。
そんな事を考えてる間に長野駅に着いた。
新幹線が来るまでに言われたお土産を買う。
あとバスケ部の皆にお菓子も……。
東京までは彩といっしょだった。
「それじゃまたな」
そう言って彩と分かれる。
そこから羽田空港まで行って地元へ飛行機に乗る。
やっと解放された。
そんな気分で満たされ、どっと疲れがでたのか機内では眠っていた。
(4)
空港に着くと愛莉が迎えに来ていた。
「ただいま、これお土産」
愛莉にワインを渡す。
愛莉はワインを受け取るとにこりと笑う。
「帰ったらこれで祝勝会だね。ご馳走用意してるよ」
愛莉はまだある手荷物に注目する。
「ああ、これは蕎麦とあとバスケ部の皆にチーズケーキを……」
ぽかっ
「インタビュー聞いてたよ!何てこと言ってるの!?蕎麦食べたいとか!冬夜君はいつもそうなんだから!」
ああ、見てたのね。
帰りの車は僕が運転するというと愛莉が譲らなかった。
「冬夜君は疲れてるだろうから私が運転する!」
「あ、いや。愛莉の運転を疑ってるわけじゃないんだけど」
「そりゃ冬夜君よりは下手だけどさ……私だってちゃんと運転できるよ?」
「そういう問題じゃないんだ」
「?」
「愛莉が左にいないと落ち着かないっていうかなんていうか」
分からない?なんか彼女に運転させてると悪いなって気にさせるというか……。
「まあそういうならいいけど。気をつけてね」
そう言って愛莉は車のカギを僕に渡す。
「冬夜君長野ではどうだった?」
「どうって?」
蕎麦は美味しかったよ。
「なんかチームの人と揉めてたみたいだから」
「ああ、それなら解決したよ」
「そうなんだ、よかったね」
「そのプレイで自分の存在意義を示せって本当だね」
「なるほど……冬夜君は1プレイで存在意義をアピールできるもんね。誰にも文句を言わせないというか」
「愛莉、お願いがあるんだけど」
「な~に?」
「帰ったらマッサージお願いしていいかな」
愛莉は笑っていた。
「お安い御用ですよ。その代わり条件がありま~す」
「良いよ」
「へ?まだ言ってないよ?」
「大体想像つくから。僕もそんな気分だし」
そう言うと愛莉は顔を赤くしていた。
「うぅ……冬夜君の馬鹿」
愛莉の感触、3日ぶりに味わいたいしな。
「あ、そうだ思い出した」
「どうしたの?」
「長野で彩って人と話したんだった」
「神奈が東京であった人?」
「そうそう」
「何話したの?」
「神奈今何してるっていうから結婚したよって」
「そしたら?」
「おめでとうって伝えてくれって」
愛莉はその事をメッセージで送る。
すぐに返事がきたようだ。
「『トーヤなんか変な事吹き込まれてないだろうな?』だって」
「色々聞いたよって伝えておいて」
「は~い」
愛莉はその場でメッセージを送る。
僕のスマホが鳴る。
愛莉の車にもBluetoothはついてる。
ハンズフリーで電話に出る。
「誠には絶対言うなよ!あのバカ絶対変な事企むから」
「わかってるよ」
「……今日はおめでとう。見てたぞ。かっこよかった」
「ありがとう」
「じゃ、今日は愛莉にたんと甘えろ。あと叱られとけ」
「叱られろ?」
「インタビューの件聞いてたぞ!この馬鹿は……」
「ああ、もう叱られたよ」
「そうか、じゃあまたな」
電話が切れた。
「でも嬉しい事もあるんだよ」
「何?」
「ちゃんと彼女いるってアピールしてくれた事」
「そんなもんか?」
「そうだよ、冬夜君明日からファンレターとかきまくりだよ。全国で中継されてたんだから」
全国だったのか。
全国から蕎麦が送られてくるのかな?
ネットには大手掲示板に【冬夜】アカツキ5スレ【蕎麦好き】なんてスレッドがたてられているらしい。
これからテレビの取材とか来るのかな?
だとしたら面倒だな。
まあ、しょうがないか。
大学でも大騒ぎだろうな。
まあ、なることは予想していたけど。
若干気が重い。
唯一救われたのは春休み中で大学に行くことが練習以外にないという事だった。
(5)
その日の夕飯は愛莉の言う通りご馳走だった。
お酒も買ってきたワイン一本だけじゃ当然のように足りずにビールを飲む。
「しかし冬夜君も有名人ですね~」
「うむ……」
「ただの食いしん坊なんですけどね」
「どんな子供が生まれるのか楽しみですね」
まだ子供を作ることは考えてないぞ、てか止めろ親’s
「娘の名前は決めてあるからな」
性別まで決めてるのかよ。
細やかな宴が終わると一風呂浴びて愛莉が戻ってくるのを待つ。
スマホはメッセージが山のように来ていた。
大体がバスケ関連のメッセージだが。
「浮かれて繁華街に繰り出すなんてことは止めてくださいよ」
佐倉さんからのメッセージ。
「佐倉さんこそ水島君と浮かれてはめ外すなよ」
「な、何で知ってるんですか?」
「てことはやっぱりそうだったんだ?」
「嵌めましたね先輩!」
僕だって最近少しはそういう事に興味が湧いてきた。
PCをつけてネットを見れば「アカツキ5の守護神」と称されていた。
なんでもサムライとかつけたがるよね、日本のメディアって。
愛莉がもどってくるとベッドにうつ伏せになる。
愛莉が腰のあたりに跨って背中とかを揉んでくれる。
愛莉がテレビをつけるとさっそく今日のバスケのニュースをやっている。
特集まで組まれてるありさまだ。
「冬夜君韓国行っちゃうの?」
「うん、そうらしいね」
「そっかぁ」
なんか寂しそうな愛莉。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない」
「一人で韓国行っちゃうのが寂しい?」
「どうしてわかったの?」
ずっと愛莉を見てきたから分かるよ。
僕はスタッフの人に電話する。困ったことがあったらいつでも電話してくれと言っていた。
「あ、もしもし」
「もしもし、片桐君か?どうした?」
「来月の韓国戦チケット一人分融通できませんか?」
「できるよ。アリーナ席でいいかい?」
「はい、お願いします」
「飛行機のチケットとかも手配しておくね。一緒に行くんだろ?」
「大丈夫なんですか?」
「大方今日言ってた彼女の分だろ?かまわないよ。藍井君からも頼まれてるしね」
「すいませんお願いします」
「わかった、郵送するよ」
「ありがとうございます」
「それじゃまたね」
愛莉の顔が喜んでる。
「明日一緒にパスポート申請に行こうか」
「うん」
愛莉が喜ぶならなんでもするさ。
いつも愛莉に喜ばされてるのだから。
「ありがとうね、冬夜君」
「気にしないでいいよ、このくらいの反則技使ってもばちが当たらないだろ?」
愛莉はマッサージを終えるとテレビを消して照明を落とすと僕に抱き着く。
「う~ん」
まだ悩みがあるのかい?
多分予想はつくけど
「ハネムーンは大事にとっとこうな」
「そうだね」
しかし今回の試合は僕の予想以上に反響を呼ぶことになるのだった。
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