優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

証明

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(1)

「うぃーす」
「おお、冬夜オッス」

僕と佐(たすく)は同室だった。

「随分ゆっくり寝てたな」
「まあね」
「ジョギングしなくて大丈夫か?」
「今ジョギングに出てもマスコミの餌食だから」
「有名人はつらいな」

佐はそう言って笑っていた。
佐だって他人事じゃない。
ユニティの一員なのだから。

「佐は平気?」
「何が?」
「いや……」
「ユニティの件か?まあ、大変ちゃ大変だけどお前に比べたらどうってことないだろう」
「余計なことに巻き込んだな」
「気にするな。それより桜子の身を案じてやってくれ」
「後で声かけとくよ」
「ああ、そろそろ飯だ行こうぜ!」

佐はそう言うと部屋を出る。
1階のレストランでおかず等を受け取りテーブルに着く。
テーブルには佐倉さんもいた。

「佐倉さん昨夜は眠れた?」
「眠れるわけないじゃないですか!?」

佐倉さんは少々機嫌が悪いみたいだ。

「……なんてね。ちょっと次の対戦相手の事でシミュレートしてたら夜更かししてただけです」
「監督はなんて言ってるの?」
「多分地方大会レベルなら十分通用するでしょうって」
「そうか」
「ただ…問題はやっぱり決勝に出てくるだろう福岡大でしょうね」
「そんなに強いの?」
「センターを止められない感じですね。インサイドではまず勝てない。インサイドはセンター一人で十分て感じですね」
「そうか……」
「ゴール下を支配されている以上、ミドルレンジ以上のシュートは自ずとプレッシャーがかかるでしょう」
「関係なく打ってくる3Pシューターがいるけどな」

佐は僕を見て笑う。

「片桐先輩は台湾戦をイメージしてくれたらいいです。問題は周りは日本代表じゃないって事」
「そうだな……」
「佐、でも日本代表以外で先輩のパスを受け取れるのはうちの大学だけ。自信もって」
「ああ」
「じゃあ、そろそろ行きましょうか?」

そう言って佐たちは席を立つ。
まだデザート食ってないんだけどな。
部屋に戻ると佐と話しながら愛莉にメッセージを送る。

「おはよう」
「おはよう~。あのね~冬夜君」
「知ってるよ、今日取材受けるんだろ?しっかりな」
「うん、冬夜君も試合頑張ってね」
「ああ、ありがとう」
「ご飯食べたの?」
「さっき食べたところ」
「暴飲暴食はだめだよ」
「わかってるよ」
「何食べたの?」
「覚えてない」
「覚えてないほど食べたのね!」
「そうなるかな」
「やっぱり私がいないとダメだね」
「そうだな」

佐が「そろそろ会場行くってよ」と言う。

「じゃあ、会場行くからまた夜に」
「は~い」

会場に入ると先に試合する大学が練習をしていた。
僕達は2階に上がると試合を見る。
福岡大の初登場だ。

「しっかり見ていてくださいね」

佐倉さんが言う。
福岡大の試合は確かに台湾戦と同じようなものだった。
威圧感が全然違うけど。
でもうちのインサイド組では敵わないだろうな。
どうやってあのセンターを抑えるか?
試合は福岡大のセンターのワンマンショーで終わった。
まあスタミナはあるみたいだ。
対戦相手が違うから何とも言えないけど。
あのセンターの体力をどう削るかが試合のカギだろうな。
他の試合も見てた。
試合を見ることではっきりと自信が持てる。
うちの方が強いと。
お昼になると女バスと合流する。

「うちらはベスト8進出決めたよ。次は男バスの番」

夏川さんが言うと真司がうなずく。

「しっかり決めてくるよ」

昼食を食べるとしばらくして、佐倉さんがやってくる。

「そろそろアップ始めてください」

皆立ち上がると、控室を出る。
アップを終え会場に行くと僕達の前の試合をやっていた。
もうすぐ終わる。
終わった。
さて、僕達の出番だ。
監督の周りに皆が集まる。

「試合の緊張感は昨日で取れましたね?」

監督が言うと皆うなずく。

「なので今日の試合は戦術の確認をしましょう。安易に片桐君にパスを回さないで。センターに入れてからのフォーメーションです。分かりましたね藤間君」
「っす」

蒼汰が返事する。

「ここで苦戦するようでは優勝なんて無理ですよ。かといって慢心は禁物です。しっかり自分たちのバスケをしてください」

監督が言うと皆円陣を組む。

「じゃあ、2勝目さくっと決めるぞ!」
「おお!」

真司が言うと皆叫ぶ。

(2)

薄暗い部屋で俺はテレビを見ながらパソコンを操作してた。
テレビではユニティ対エゴイストの抗争激化と報じられている。
これでユニティもイメージダウンしたはずだ。
まさか渡辺班が形を作るとは思わなかった。
そんなことされたらこっちの商売が成り立たない。
悪いのはユニティ。
そう印象付ける必要がある。
その為にスキャンダルを探っていた。
すると二人の男女に注目した。
こんな奴らがいるんだったら楽勝だな。
すぐにネットに情報を流した。
案の定誹謗中傷の的になった。
他の奴らも似たような連中だ。
学生婚を平然とやってのける連中。
そんな連中を見過ごす程世間は甘くない。
案の定マスコミに叩かれてる。
しかし、向こうも対策してるようだ。
うちのメンバーが奴らにゲロったらしい。
大した情報を与えてる連中ではないので大したダメージにはならないが。
其れでも利用する者は利用する。
効果は絶大だったようだ。
焦る連中の姿が目に浮かぶ。

「興毅!この次はどうする?」
「ウィザード!その名前で呼ぶなと言ったはずだぞ」
「すまんエンペラー。奴らのサイトだいぶ固い。俺の手には負えない」
「それを何とかするのがお前の役目だ」
「やつらにアカウントをはく奪され、こっちの素性もバレてる。いい加減手を引いた方が……」
「引きたければ引けばいい、お前も3人のボーンのようになりたいならな」
「……あいつらはあんたがやったのか」
「『執行者』達に執行させただけだ」

エンペラーがそう言うとウィザードと呼ばれた男は黙ってしまった。

「……俺の住所変更を頼む。身元がバレてる。このままだと逮捕されてしまう。あんたにとっても不都合だろ?」
「お安い御用だ。数日中に手配させる。」

資金は「ゴッド」を名乗る人物からの出資を資金にFXで膨らませている。また、ネットビジネスによる裏金がプールされてある。今回のサークルもそんなビジネスの一環にすぎない。

「で、どうだ?奴らのサイトは潰せそうなのか?」
「とにかく防御が固い。うかつにハッキングしようとすると逆にトロイの木馬を送り込んでくる。うかつに手を出すとまた二の舞だ」
「俺は攻略できるのか?と聞いているんだが?ゴッドからも催促されているんだが」
「やるだけはやってみる。ただし時間が必要かもしれない」
「お前の代わりは腐るほどいることを忘れるな」
「わかった……努力しよう。それとこれからは直接電話でエンペラーと話がしたい。このチャットも見られている可能性がある」

ネット上でのやりとりは危険だとウィザードは指摘する。

「やむを得ないな。辿られるような真似は止めろよ」
「わかってる」
「今度ファミレスで落ち合おう。場所は……」
「わかった。日時は?」
「ファミリアをつかって連絡する」
「わかった……」

チャットはそこで終わった。

俺は電話をかけた。連絡先はファミリアと表示されてあった。

「ウィザードに伝えろ。来週の日曜日の12時きっかりに指定した場所に来いと」
「わかった」

電話はそれで終わった。
ボーンを締めあげたところで足取りが俺に届くことはない。
俺の連絡先・住所を知っているのはファミリアとキングとクイーンそしてゴッドだけだ。
ユニティよりもでかい組織だという事をユニティの連中は知らない。
奴らの追跡を止める事。奴らの妨害を潰す事。それが俺に与えられた使命。
使命を果たせられなかった者は3人のボーンのように執行されることになる。
完全なる縦社会の組織。
使えない下部は冷淡に足切りされる。
ミスは許されない。
おっと、今するべきことはまだある。
キングに電話をかける。

「今使ってるサーバーを放棄し新規にサーバーを構築しろ」
「ウィザードにやらさればいいのでは?」
「ウィザードに伝令を」
「……わかりました」

電話が終わる。
あとは、各々が自分の役割を果たせばいい。
それでうまくいく。
俺はそう信じていた。

(3)

「お前今から緊急で取材行ってこい」
「取材ってなんですか?」
「前から打診してたユニティとかいうグループの実態だよ。向こうから回答が来た」

そう言って一枚のFAX用紙を見せるデスク。

今日活動の一部始終を見せるから居酒屋に来てください。

要約するとそんな感じだ。

「今注目の的のグループの実態だ。しっかり取材して来い」

初めての取材だ。しかも全国の的であるグループの実態。
肝心の片桐君は大会で出れないらしいけど恋人の遠坂さんはでるらしい。
そしてもう一つの注目である西松君と竹本さんもでるらしい。
確かに大イベントだ。緊張する。

「今日緊急で生放送するからな!気合入れていけ!」
「はい、わかりました!」



現地に着くとさっそく彼らは宴を催していた。

「初めまして、今日レポーターを務めさせていただく御手洗といいます。よろしくお願いします」

挨拶をすると、「よろしくー!」と返してきた。既にテンションは上がっているようだ。
簡単に打ち合わせをする。生放送なので編集が利かないので迂闊な発言や行動は控えて欲しいとお願いする。
分かってるのか分かってないのか判断しづらいが彼は承諾してくれた。

店の外にでて、カメラがスタンバイする。
そして本番が始まった。

「こんばんはみなさん、今日は今話題の学生グループ・ユニティの活動内容を取材させてもらえるという事でこちらのお店にやって参りました。早速お邪魔したいと思います」

そして戸を開けると彼らさっきと変わらず話しあっている。
店の人には許可をもらって彼らの貸し切りにしてもらった。
ユニティのメンバーがカメラに気づくとピースサインをしたり「いえーい」と叫んだりしてる。とても賑やかなグループのようだ。

「こんばんは、皆さん」
「こんばんはー!うぇーい!!」

初めての取材とは思えないほどテンションが高い。もう少し緊張する者かと思ったが。
中には静かにドリンクを飲んでいる子もいたけど。

「皆さん一人ずつ自己紹介いいですか?」

そう言って一人ずつマイクを向ける。
やはりマイクを向けられると緊張するらしい。表情が強張ってる子もいた。平然としてる子もいたが。

「皆さんは普段どんな活動をしてるのですか?」

グループの代表らしい渡辺君に聞いてみた。

「なにもしてませんよ?」

へ?

「時間があった時にこうして集まって騒いでるだけです」
「普段は、大学近所の喫茶店に集まってる事が多いんですよ」

亜依と名乗った子がそう言った。

「大学って皆さん同じ大学なんですか?」
「違いまーす」

みんな口を揃えて言った。

「私なんて働いてるぜ」

渡辺君の隣にいた美嘉と名乗った子が言った。

「サークルに入ってる奴もいるしバイトしてる奴だっている。そう滅多に皆顔を合わせることはありませんよ」
「と、いうと?」
「今日も地元大のバスケ部に在籍してる奴は大会に行ってるし。冬夜とか」
「冬夜先輩ファイトっす!!」

楠木と名乗った子が言うと「いえーい!」と大はしゃぎ。
でも話の話題が広がった。冬夜と言うのは多分話題の片桐冬夜君の事だろう。

「冬夜君ってのは片桐冬夜選手の事ですか?」
「そうで~す」

遠坂と名乗った子が言った。
遠坂愛莉、確か片桐冬夜の恋人さん。

「あなたが片桐君と交際してる遠坂さん」
「はい」
「噂だとグループ内でみだらな行為を……」

私がそう言いかけた時美嘉さんが言った。

「そんな事グループ内でやったら皆で袋叩きだぜ。なあ!皆」
「そうだそうだ!」
「でも、実際にそういうことをやった子がいるって聞いたけど。あ、西松君に竹本さんでしたっけ?」

少しは動揺するかと思ったら皆何とも思ってないようだ。
ただ、指名した二人のは固くなっているが。
その二人に取材した。

「あなた達が西松君と竹本さん?」
「はい」
「……はい」
「あなた達の噂はインターネットで広まってるけど真相はどうなの?」
「否定はしません、ただこのグループに入る前の話です」
「……同じく。一部誤りがありますが」
「じゃあ、惑わせた人に対して謝罪の気持ちとかはあるんですか?」
「それは……」

西松君が何かを言おうとしたとき。

「まってくださ~い」

確か咲良さんと名乗っていた子が口を挟んだ。

「それって謝る必要あるんですか~?二人の誘惑に負けた方にも否があるんじゃないですか~?」
「それは2人のせいだけじゃないって事ですか?」

私は咲良さんにマイクを向けた。

「恋人を奪われたとか~寝取られたとか~本当にあるのかどうかも分からない事言ってる人もいるけど~それってちょっと他人が誘ったくらいで靡くくらいの薄っぺらな関係だっただけじゃないですか~?」

カメラは咲良さんをアップしてる。

「現に二人で協力しても~ユニティのメンバーの絆は崩せなかったし~。……もともと軽い関係だっただけじゃない」

私はディレクターの顔を見る。「もっと突っ込め」と指示をだしたホワイトボードが。

「それって二人には何の責任もないと」
「2人が軟派だったというならそんな軽い男女に釣られる方が悪いと思うんです~。……キャッチアンドリリースって言葉知ってる?」
「良い例えね咲良。まさにその通りだわ」

恵美と名乗った子が言った。私は恵美さんにマイクを向ける。

「餌を待って口をパクパクさせてるだけの連中がギャーギャー騒いでるだけじゃない」

いいんですか?これ生放送ですよ?私はディレクターの指示を仰ぐ。「良いからもっと突っ込め」と指示が出る。

「雑魚って言い方はあまり褒められた言い方じゃないと思うのですが……」
「雑魚を雑魚と言って何が悪いの?それとも自分で自分に見合った服を決められずにブランド品に踊らされる小者と言った方が分かりやすいかしら」
「夢見させただけまだいいじゃないですか~?餌をあげただけましじゃないですか~?……被害妄想も甚だしいわ」

言いたい放題の恵美さんと咲良さん。

「2人はそう言いますが、もし二人に恋人がいてそれを遊び感覚で横取りされたらどう思いますか?」
「私の旦那に限ってそれはないわね」
「私の彼もそれはないと断言できま~す」

2人とも今恋人いるのね……ってえ!?

「恵美さん今なんて仰いました?」
「旦那って言ったのよ。隣にいるのが私の主人よ」

そういって隣であたふたしてる小柄の子を紹介する。

「け、結婚されてるんですか!?まだ学生なのに」
「普通じゃないの?少なくともユニティの中では普通だと思ったけど」

恵美さんがそう言うと「私もしてるぞー」と大半の女性が言った。
そう言えばさっきから下の名前で名乗ってる子がいた。

「あの、さっきから下の名前で名乗ってるのは……」
「主人と同姓だから分かりづらいでしょ?」

空いた口が塞がらなかった。ディレクターに指示を仰ぐ。「とりあえず何か喋れ」と指示が飛ぶ。

「あ、あの……」
「ちなみにさっき言った西松と咲も結婚してるぞ」

渡辺君がそう言った。

「西松君本当ですか?」
「……来月挙式する予定です」
「竹本さんは……」
「2人でバイトして生計立ててます」

どう収拾すればいい?

「遠坂さんはどうなのかな?」

この子は割とまともそうだ。
そう思ったのが間違いだった。

「まだです……でも」
「でも?」

聞いちゃいけない気がするけど、突っ込めとディレクターの指示が……。

「彼大学卒業したら一年以内にプロポーズしてくれるって。もうプロポーズしてくれる日も入籍する日も決めてるって。それってもうプロポーズですよね」

嬉しそうに、恥ずかしそうに言う遠坂さん。
待って、ってことはひょっとして……。

「まさかここにいる皆さんひょっとして……」
「その通り!現在皆交際・結婚相手がいます!」

渡辺君がそう言い切った。
あまりにも意外な事実に私はマイクを落としそうになった。
そのマイクを拾ったのは渡辺君だった。

「ああ、勝手に喋らせてもらうが。うちのグループは縁結びだが、ちゃんとした子を選んで希望する子を見つけて。結果自然にくっついてるだけの身内のグループだ。世間やネットに流されてるようなグループじゃない」

そう言って渡辺君は私にマイクを返す。

「しかし世間では……」
「縁結びと言われてるのは聞いてるがみんな自分で努力して相手を選んで結ばれてる。何の努力もしないで結ばれた奴などいない」

渡辺君が言いきった。

「そんなグループに対してヤリ目サークルなどと言われるのは心外だ!」
「正志!!生放送でヤリ目はまずいんじゃね?」

美嘉さんが突っ込むと皆が笑う。

「西松君から何か一言……」

もう彼に賭けるしかない。

「若気の至りで遊び放題だったが今は違う。一人の女性を心から愛してる。そういう気持ちに気づかせてくれるのがユニティだ」
「咲さんは……」
「今は亭主の事で頭がいっぱい。他の人にかまけてる余裕なんてない。冴えない旦那だけどこんな気持ちにさせてくれたのは主人だけ」

咲さんが言うとみながヒューヒューと口笛を鳴らす。
ディレクターがそろそろ締めろと言う。

「最後に渡辺君何か一言」
「俺たちになんの恨みがあるのかわからんが、やられたらきっちりやり返すのが俺達の流儀だ。覚悟しておけ!」
「良いぞ正志!よく言った」
「以上……現場からでした!」

これで良かったのだろうか?
私クビにならないよね……?

(4)

「これは傑作だな!」

他人事のように笑っている佐。

「他人事みたいに言うね佐は!私達も含まれてるの忘れたの!?」
「あ、そうだったな」

佐倉さんから言われると僕はベッドから起き上がる。

「でもこれで、ユニティの正当性も認められたんじゃねーか?」

正当性がどこにあるのか分からないけど、イメージを変えることは出来たと思う。

「でもこれ相手を挑発してるとも取れますよね?これから激化するんじゃないですか?」
「それが狙いなんだと思うよ」
「え?」

僕のマッサージをしている佐倉さんに言う。
佐倉さんは僕のマッサージを終え佐のマッサージを始める。

「こういう勝負ってさ、冷静さを失った方が負けなんだよね。だからむしろ今みたいに余裕を見せといた方がいい」
「確かにバスケでも熱くなるとファール重ねるだけだしな?」

佐が言うと「シュートも落ちるしね」と付け足す。

「でも熱くなってチャージングとか受けて怪我する選手もいますよ」
「うん、そこは気をつけないといけないと思う」
「冬夜は食べ物の前以外なら冷静なんだな?」

愛莉の前でもそんなに冷静じゃないよ?

「ネットの意見は賛否両論だな」

佐がマッサージを受けながら、スマホを見ている。

「まあ、そんなの気にするより佐倉さんの事気にした方が良いと思うよ」
「どういう意味だ冬夜?」
「そうだな、例えば優勝したらデートしようとか考えてた方がいいんじゃない?」
「ちょ、ちょっと片桐先輩!?」
「全然二人で遊んだりしてないでしょ?」
「なんでわかるんだ?」

そんなの見てたら分かるだろ?

「さっきテレビを羨ましそうにみてたから。私もああなりたいって気持ちを感じたから」
「お前……本当に視野広いな」
「片桐先輩はそんなとこまで見てなくていいから明日の戦術考えてください」
「なるようになるさ。佐倉さんも試合の事ばかり考えてないで。佐をどう攻略するか考えた方がいいんじゃない?」
「片桐先輩……本気で怒りますよ?」

佐のマッサージを終えると、佐倉さんは部屋を出る。

「二人共馬鹿な話ばっかりしてないで、ちゃんと寝てくださいよ」

バタン!

「ちょっと言い過ぎたかな?」
「ま、お前の言われた通り実践してみるか?」

佐はそう言うとスマホを弄る。

「佐、片桐先輩の言う事を真に受けないでいいから試合に集中してくださいね!」
「気にしないでいいのか?大会終わったら。前に言ってた水族館でも行こうかと思ったんだが」
「……優勝したら考えてあげる」
「優勝しなかったらデートは無しか?」
「……佐を慰めるのに全力を尽くします」

「……だってよ」

そう言って佐は笑う。

「あ、僕も愛莉に電話しないと」
「おーおー行ってこい。あまり長電話するなよ。鬼マネージャーに怒られるぞ」
「分かったよ」

そう言って部屋を出た。

(5)

「お疲れ様でしたー!!」

皆が乾杯する。

「正志最後はびしっと決めたな!」
「ああ、でもまだ油断は禁物だぞ」
「ああ、エゴイストの件なんだが。恵美さんちょっと頼まれてくれないか?」
「何?」

誠君が言うと恵美さんが反応する?

「今日サーバーを移設したらしいんだけど……」
「じゃあ、また振り出しか?」

神奈が言うと誠がにやりと笑う。

「そう思うだろ?相手のメンバー余程油断してるんだろうな?ウィルス対策なんて全然してなくてさ、まあ。市販の対策くらいならちょちょいとすり抜けられるんだけど」
「どういう意味だ?」

渡辺君が聞く。

「相手のサーバーに仕掛けておいたウィルスにサーバーに接続した端末全て感染してるんだよね。それで新しいサーバーも割り出した」
「お前って凄い奴だな!?」

渡辺君が驚く。

「で、もって奴らのチャットのログ辿ってたんだけど来週の日曜日12時にファミレスでなんか相談するらしいんだよね」

誠君が言うと恵美が察したらしい。

「探りを入れたらいいのね?」
「頼まれてくれるかな?」
「OK」
「出来たら写真も撮って欲しい。それから相手の素性割り出すから」
「そこまでは大丈夫、私の方でやるわ」
「しかしすげーな、誠。いつの間にそんなスキル身に着けたんだ」

美嘉さんが言う。

「学科がそう言うコースだからさ」

ハッキングを養成するコースなんてあるの?

「後は個人的な趣味で……」

言葉を濁す誠君。

「それは置いておいて相手の組織が大体分かったから説明する」

誠君の説明のよるとエンペラーの上にさらにゴッドと呼ばれる存在がいるらしい。資金提供もゴッドがしてるんだとか?他にも資金源に闇ビジネスを行ってるらしい。

「まだ全容の解明には時間がかかりそうだな」と渡辺君が言う。
「そんなにかからないと思う。あ、江口さんこれ送っとく」

そう言って誠君はスマホを弄る。
恵美さんはそれを見て言う。

「誰これ?」
「エンペラーこと亀梨興毅の顔写真。それで張り込みやすくなるだろ?」
「お前凄い奴だったんだな!見直したぞ!」

美嘉さんが褒める。

「そんな大げさに褒める事でもねーよ」と神奈は言う。なんか機嫌悪そうだ。どうしたんだろう?

その時私のスマホが鳴った。
あ、もうこんな時間だったんだ。
私は席を立つ。

「どうした愛莉?」と神奈が聞く。

「ちょっと冬夜君と電話~」
「そうか、ごゆっくり~」

恵美さんがそう言うと私は店の外に出て電話をかけなおす。

「あ、愛莉もう寝てた?」
「ううん、皆と話してた。今日はどうだった?」
「明日も帰れなくなったよ」
「よかったね!」

でもそんな意地悪な言い方しないでよ。

「帰って欲しくないみたいだな」

ほら、そう言うと思った。

「うぅ……冬夜君の意地悪」
「ごめんごめん、今日のテレビ観たよ」
「どうだった?」
「愛莉綺麗だったよ。コサージュ似合ってた」

えへへ~。今日の為に買ったんだ。気づいてくれてありがとう~……ってそうじゃなくて!

「内容はどうだったの?」
「ああ、あれくらい挑発していいんじゃないかな?こっちの主張も通ってるし」
「それだけ?」
「……ちゃんとプロポーズしなくちゃいけなくなったな」

えへへ~

「あ、そうだ。あのねえ……」

冬夜君にさっきの話を説明した。

「なるほどね、さらに上の存在か?でもそこまで嗅ぎつけたら後は芋づる式だろ?」
「どうして?」
「手がかりは見つけたんだ。後は誠と恵美さんが調べて行けば全容が解明するさ」
「そうだね。それにしても誠君凄いね。2年間しかPC触ってないのにここまでスキル身につけたんだよ。才能だよ」
「そんなたいしたことじゃないよ。たぶん」

神奈も同じような事言ってたよ。

「神奈と同じ反応だね?」
「そうだろうな」

冬夜君は笑う。

「どうして?」
「愛莉。どうして誠がそういう知識身につけたと思う?」
「ほえ?」
「誠の動機考えてごらん?」

冬夜君の言う事は良く分からない。

「うぅ……わかんない」
「そういう世界をアングラって言うらしいんだけどさ。そういうサイトに誠の好きそうな動画あるんだよね」

あ、そういう事か……。

「……誠君らしいね」
「だろ?」

神奈の機嫌悪い理由分かった気がする。

「それじゃそろそろ寝るから」
「うん、おやすみ。明日も頑張ってね」
「ああ、また明日。おはようのメッセージいる?」
「どうせ私が送るからいいもん!」
「かもな。じゃ」
「うん、またね~」

電話を終えると店に戻る。
それに気づいた神奈が声をかけてきた。

「おかえり、トーヤなんて?」
「誠君がPCに詳しい理由教えてもらっちゃった」
「と、遠坂さん。だから学校の課題で」

ハッキングの授業なんて聞いたことないよ?

「えっちなサイト探すのに知識身につけたんでしょ?」
「流石トーヤわかってるな。聞いてくれよこの馬鹿。さらにもう一台タワー型のPC欲しいって言いだしたんだぜ?」
「だからそれはユニティのサイトを強化するために必要で……」
「じゃあ、なんで高音質のスピーカーやら、高解像度のモニターが必要なんだよ」
「そ、それは男のロマンってやつで」

バコッ

「この馬鹿はやっぱりそれ目的じゃねーか!」

高解像度も高音質も誠君には必要ないじゃない。
神奈がいるんだから。
この二人はこれが日常なんだろうな。
日常というものにちょっと憧れた夜だった。
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