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4thSEASON
更に闘う者達
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(1)
唇に柔らかくて暖かいなにかが押し当てられている。
それから何かまた別の柔らかい物が出てきて口の中に侵入を試みてきた。
愛莉からしてきたわけだね。
それを受け入れると。愛莉の背中に両手を回す。
しばし快楽の時間を楽しむと目を開けた。
「おはよう愛莉」
「おはよう冬夜君」
愛莉に離れるように言うとやや不満気だったが素直に退いた。
ベッドから起き上がると着替えをする。
生欠伸をすると、愛莉が反応する。
「やっぱり昨夜眠れなかった?」
「愛莉のせいじゃないよ」
そう言いながらも欠伸をする僕。
そんな僕に愛莉はしがみつく。
「だって冬夜君甘えさせてくれるっていったも~ん」
「だから愛莉のせいじゃないって」
「本当に?」
「何なら今から甘えるか?」
「ジョギングのあとね♪」
甘えたい意思は在るらしい。
愛莉が着替えるのを見届けると僕達は家を出てジョギングした。
適時愛莉が差し出すスポーツ飲料を飲みながら水分補給をして走る。
1時間ほど走ると家に帰る。
するとポストに不審な物が入ってある。
愛莉が不用意に触ろうとすると僕がそれを制する。
慎重に触って宛先と差出人を確かめる。
両方ともない。
「愛莉、悪いけど愛莉パパ読んできて」
「わかった~」
直ぐに愛莉パパを連れてきた。
「うむ、危険物には間違いない様だな。預かっても良いかな?」
「はい」
「冬夜君のお父さんには私から伝えておくよ」
「あ、僕から言いますから」
家に帰ると愛莉は朝食の準備。僕はシャワーを浴びる。
朝食の時に朝の小包の事を知らせる。
「脅しだろうな……」
父さんはそういう。
「あなたやっぱり冬夜達には手を引かせた方が」
「いや、冬夜の言う通り冬夜達は入ってはいけない領域に入った。今さら引き返せないよ」
「冬夜達はどうなるんですか?」
母さんが言う。
「冬夜達なら大丈夫だ。そうだろ?」
「うん、たぶん大丈夫」
頭部を撃ちぬかれかけたことは内緒にしておいたけど。
部屋に戻るとデスクトップを開いて誠のメールを受信する。
どうしてノートPCじゃないのかって?
学内の無線LANのある環境でそんなの持ち歩けないだろ?
誠の完全防備のノートPCじゃないんだから。
誠のメールを開く。
さっそく調べたらしい。ニーズヘッグの内容。
恵美さんからの報告を待って情報を照合する。
それは今夜さっそく行えるらしい。
ニーズヘッグの情報管理はずさんらしい。
わざとそうしているのかもしれないが。
そうする理由も分からないけど。
とりあえず今日も夜遅くなる。
愛莉をふと見る。
寂しそうだ。
愛莉は一人服を持ってシャワーを浴びに行く。
僕は着替えずに愛莉を待つ。
愛莉が戻ってくると僕の姿を見て驚く。
「着替えないと遅刻しちゃうよ~」
「今日は時間あるから大丈夫だよ。愛莉も部屋着のままじゃないか?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
僕は黙って愛莉を抱きしめる。
意味察してくれたのか愛莉は僕にデコピンをする。
「本当に甘えん坊さんですね」
愛莉は笑っていた。
愛莉をベッドに招き寄せると愛莉に覆いかぶさる。
愛莉は目を閉じてその時を待っている。
愛莉の服のボタンを外していって一糸纏わぬ姿に変える。
その時僕のスマホが着信した。
「うぅ……」
肩透かしを食らった愛莉が唸っている。
「すぐ済むから」
愛莉の頭を撫でながら電話に出る。
誠からだ。
「おお、冬夜。朝はすっきりしたか!」
「お陰様でしそこねたよ」
愛莉が恥ずかしそうにしてる。
「それは悪いことしたな。でもそういう時はメッセージで言ってくれれば」
どこの世界に今彼女と事の最中ですと他人に伝えるやつがいる。
「でも遠坂さんも朝から冬夜を受け入れるとは……うらやましい……いてぇ!」
「馬鹿な事言ってないで早く要件を言え!」
カンナの声がする。
「ああ、ニーズヘッグの件な。遠坂警視の情報通りだったよ。高橋グループの暗部だ」
「どっからそんな情報握ったんだよ」
「聞いて驚くな、高橋グループのサーバーに侵入した」
「馬鹿!そんなことしたら」
「大丈夫蒼良さんのUSBにアカウントとパスワードが入っていた。
「尚更だろ!?罠だとは思わなかったのか?」
「それくらいおれだって考えてるよ」
「どうやったんだ?」
「サーバーの場所だけ特定した」
「それで?」
「出入りしている人間のアカウント乗っ取って侵入した」
誠……お前ってやつは……。
「当然足取りを残すような真似はしてない」
「それはどうやったんだ?」
「それは実演するよ。今日神奈のファストフード店に来いよ」
「そこで安全なのか?」
「そこだから安全なんだよ」
誠のいう事はいまいち分からない。
「じゃ、また夜にな」
「夜にな……か」
愛莉の顔を見る。少し寂しげだった。
そんな僕の視線に気づいたのか愛莉は言う。
「平気だよ~」
「そうか、それならいいんだけど」
「その後甘えるから~」
僕の寝不足の問題はいいのか?愛莉。
(2)
「朝は悪かったな」
昼休み学食でカンナはそう言った。
「いいよ、気にするな」
「うん、気にしなくていいよ」
僕と愛莉がそう言うとカンナは安心したようだ。
「で、誠が言ってた実演ってのは?」
「ああ、それは誠に直接聞いてもらった方が良い」
カンナはそう言う。
「また危ない事するの?」
「まあ、一歩間違えると危ないわな」
でもCIAやKGBに潜り込む誠だからと付け加える。
誠、お前本当に何がしたいんだ?
「で、冬夜。反撃の糸口はつかめそうか?」
渡辺君がやってくる。
恵美さん達も渡辺班の地元大学組は大方揃った。
「ニーズヘッグの情報、昨日大体そろえたわ」
「一晩でやってくれました」と言わんばかりの恵美さん。
目の下に隈が出来てる。
恵美さんが一つのファイルを出す。
「それに大体の資料はそろってる。それとこれ……。
USBメモリも付け足す。
「ニーズヘッグと高橋グループの関与性を裏付ける帳簿のファイル」
必要なものは全てそろってる、だけど問題は……。
「やっぱり流出先か」
渡辺君が言うと僕が頷く。
「それも確保したわ。地元新聞が駄目なら全国版に載せてやればいい」
恵美さんが言う。
「伝手はあるの?」
僕が確認すると恵美さんは頷く。
「大丈夫、それも全部確認済み。早速打診しておいた。地元の巨悪のスキャンダルって喜んでる」
まずどこから暴露する?って恵美さんが聞いてくる。
「先ずはニーズヘッグの周知からだね」と僕が答える。
後は相手の出方次第。
愛莉が付け足す。
「冬夜君が昨夜言ってたの『ニーズヘッグの行動はウォーロックさんの意図はない』って」
「どうしてそう言い切れるの?」
恵美さんがそう聞いてきた。
僕は説明する。
「まずウォーロックは今までの闇を有耶無耶にしようとしてる。そこに新たに闇を抱えるような真似はしないだろ?」
恵美さんは「なるほど」と納得する。
「出来るならエゴイストとニーズヘッグの関係性を確認しておきたい」
「そうね、任せておいて」
「後私からなんだけど」
晶さんが言った。
「念のため皆の大学、勤め先にSPを配備したわ。また襲撃してこないとも限らないし」
「助かるよ晶さん」
渡辺君が礼を言う。
まだ狙われてないのは丹下夫妻と真鍋夫妻、新名さんに椎名さん。晴斗に白鳥さん、檜山先輩に木元先輩。西松医院も狙われていない。
狙うとしたらどこだ。考えろ僕……。
一番危ないのは芸短大組か。
「片桐君の言うとおりね。椎名さんと海未ちゃんが危険すぎる」
晶さんは重点的に配置したと付け足す。
今日も長い一日になる。そう感じていた。
「みんな無事だといいですね」
酒井君が言う。
「聡美のところは椎名さんいるし大丈夫かな」
「ニーズヘッグの前には多少腕が立つ人がいても一緒よ。彼等も同じ轍は踏まない。きっと武装してくるはずよ」
「そうですね……」
真鍋君がそう言う。
今は耐えるしかない。
愛莉の頭を撫でながら思う。
絶対に逃がさないぞニーズヘッグ。
ニーズへッグの先。高橋グループを押さえればきっとエゴイストの動きも止まる。そう思った。
(3)
「鉗子」
私は手術を行っていた。
癌の摘出手術。
比較的初期のものでそんなに難しい物ではなかった。
癌の部分を取り出し最後縫合して終わり……皆が安堵する瞬間だった。
突然証明が落ちる。機器が全部泊まる。
「非常電源は!?」
私が聞くと、すぐに電気がついて機器も復旧する。
停電?
地震は感じなかった?
何があったの?
それよりも今は目の前のオペを終わらせることだ。
縫合を終え。手術は無事成功する。
手術室を出るとスタッフが慌ただしく動いている。
突然の停電に大騒ぎだ。
スタッフの一人に何が起こったのか聞いてみた。
ケーブルを切断されたらしく、復旧に時間がかかるらしい。
誰がそんな真似を?
心当たりは一つしかない。
ニーズヘッグ。
エゴイスト、いや高橋グループの暗部。
私は休憩室に戻りガムを噛む
私がする事はなんだ?
とりあえず、ユニティに連絡をする。
何かあった際はすぐに報告して欲しいとの事だった。
混乱の中一人怒りに震える私。
ガムを何個噛んでも収まりそうにない。
ガムを包み紙に吐き捨てるとごみ箱に投げつけ、休憩室を出る。
やれる事を一つでもやらなければ。
スタッフに混ざって救護活動に回る。
人の命に係わる病院を狙った行為。絶対に許されるものじゃない。
「西松先生!***号室の患者が心肺停止です!」
「AEDすぐに持ってきて!」
「はい!」
電機は1時間ほどで復旧した。
幸い収容している患者は全員無事だった。
許さない、ニーズヘッグ。
(4)
大学をでて家に帰る途中晴斗に連絡していた。
「今日会える?」
「今日は非常事態っす。みんなファストフード店に集合っす!」」
非常事態?ああ、昨日言ってたニーズヘッグの事か。
クラクションの音が鳴る。
檜山さんの車だ。
「危ないから家まで送っていくよ」
私は後部座席に座る。
助手席はきっと咲良さん専用なんだろうなと思ったから。
「昨日は皆大変だったらしい」
檜山さんが言う。
「知ってる。ユニティのグループ見た」
「白鳥さんも気をつけた方が良い」
「そうね」
不安。
私よりも晴斗が心配。
他人の心配をしている場合じゃないのに。
晴斗が無茶しなければいいんだけど。
マンションの前に車は止まる。
私は車を降りるとマンションの中に入ろうとしたその時だった。
「抵抗するな。したら命の保証はしない」
黒いフードの男が私に拳銃を突きつけている。
私は銃を見る。
M9。
ベレッタ92
世界中で使われている拳銃。
奴らも使っているらしい。
私は左手をゆっくり上げる。
「よし、おとなしく両手をあげろ」
男が言うと私は右手を上げ。彼の拳銃を持つ手を掴んであげる。
油断。
相手の間合いの内での威嚇は無謀に等しい。
男のすねを思いっきりけりつける。
男は足を押さえる。
前かがみになった彼の顔面に膝をぶつける。
彼は拳銃を落し鼻を押さえる。
私は素早く拳銃を拾い彼から離れ彼に銃口を突きつける。
逆転。
男と私の立場は逆転していた。
「あなた達ニーズヘッグ?それともエゴイスト?」
男は答えない。
「両手を上に上げなさい」
「お嬢ちゃんに撃てるのか?」
私は彼の顔の横を狙って打った。
銃弾が彼の頬をかすめる。
「今のは警告。次は外さない」
「銃を捨てろ!さもなくば……」
別の男が現れた。
警告はした。
私は現れた男の太腿を撃ちぬく。
太腿を撃ち抜かれた男はその場に倒れる。
目の前の男が襲い掛かる。
冷静に男の攻撃を躱しグリップの部分で男の頬を殴りつける。
男は吹き飛ぶ、
怒り。
こいつらが、仲間を傷つけた。
「警告はしたわ」
撃鉄を起こし。引き金を引こうとする。
「ま、待て!!」
男は怯えている。
「そう言って助けを求めた人間を何人撃ったの?」
「そこまでです!」
また別の人間がやってきた。
その男を見る。
銃口は男に向けられたまま。
「私は志水家のSPです。あなたの警護に来ました」
志水家?
ああ、晶さんの家がそうだったわね。
SPをつけるとかなんとか言ってた。
私はハンカチで拳銃に着いた私の指紋を拭うとSPの人に渡す。
「銃は暴発した」
「わかりました。後はこちらで処理します。お嬢さんは部屋に戻ってください」
私は言われた通り部屋に戻り、ユニティに連絡する。
「迎えに行くまで絶対に部屋を出ちゃダメっすよ!」
晴斗が言う。
「晴斗も来るとき用心してね」
「分かってるっす」
少し熱くなってたみたい。
私はキャンディを取り出すとかみ砕く。
晴斗が来るまで少し休むとしよう。
テレビをつけて、ユニティのチャットを眺めていた。
(5)
私と海未ちゃんは黒いフードの男に取り囲まれていた。
海未ちゃんは私にしがみ付いてる。
「そこ、通してくれませんか?」
ニーズヘッグの話は聞いてある。
「ついて来てもらおうか?無駄な抵抗しなかったら危害は加えない」
男はガムを噛みながら言う。
「私達先急いでるんで」
「こっちも急ぎの用なんでな。悪いけど」
男が違づいて来て私の肩を掴もうとする。
私は反射的に男の腕を掴むと投げ飛ばしていた。
「てめぇ!!」
「海未ちゃん下がってて」
そう言って海未ちゃんを突き飛ばすと私は攻撃に回った。
相手の攻撃を掻い潜り鳩尾に、鼻っ柱に、急所に、脛に。ありとあらゆる打撃を加える。
捕まえられるとその手を取り投げ飛ばす。
全員を始末すると。海未ちゃんの手を取る。
「海未ちゃん怪我無い?突き飛ばしてごめんね」
「未来ちゃんこそ大丈夫?」
「大丈夫……未来ちゃん後ろ!」
私は後ろを振り返る。
男が拳銃を手に銃口をこちらに向けていた。
男はにやりと笑う。
「海未ちゃん伏せて!」
海未ちゃんをかばうように伏せる私。
だが、聞こえたのは銃声ではなく男の悲鳴。
私は振り返ると銃を持った腕を踏みつける丹下先生がいた。
「先生どうしてここに?」
「ん?心配だったんでな。ちょっと様子見に来た」
「修ちゃ~ん」
丹下先生に駆け寄る海未ちゃん。
男は全員SPの人に取り押さえられていた。
「2人とも怪我無いか?」
丹下先生がそう言うと二人でうなずいた。
「未来は俺が家まで送るよ」
そう言うと丹下先生の車に乗り込んだ。
(6)
パン!
事務所内に一発の銃声が響く。
次に事務員の悲鳴が響く。
「抵抗するな!用が済んだら解放してやる……真鍋聡美はどいつだ!?」
敵は聡美を指名した。
聡美は自ら名乗り上げる。
「付いて来てもらおう。お前ら動くなよ」
聡美は男の言われるがままに男について行く。
だけど俺には余裕があった。
男の背後に立つ一人の人物に気がついてたから。
椎名さんは男から軽々と銃を奪い取ると、腕を極める。
「全く打ち合わせから戻ってきたらなんて様だ」
椎名さんは余裕の笑みをこぼす。
「君がニーズヘッグの人間?」
椎名さんが尋ねるが男は何も言わない。
「忠誠心はあるみたいだね。だけど君は銃を持っていた。僕がこのまま腕をへし折っても正当防衛が成立するよ?」
椎名さんはいつもの口調で男を脅す。
男は口を割らない。
「脅しだと思ってる?残念だけどそんな情けをかける相手じゃないと聞いてるんだ。本気で折るよ?」
椎名さんはそう言うと力を加える。
「そ、そうだ!俺たちはあんたの言う通りだ」
「ニーズヘッグと認めるんだね?」
「ああ、認める」
「ならいいや、取りあえず折っておくね」
「待て、話が違う……」
「言ったら折らないとは言ってないよ」
ぽきっ
「ぎゃああ!」
男の悲痛な悲鳴がこだまする。
「ああ、処置とかはSPの人がしてくれるってさ。今なら西松病院にいけばいいんじゃないかな?」
折られた腕を押さえもんどりうつ男を後目に聡美を支えて俺の元に近づく。
「自分の嫁さんくらい自分で守らないと」
そう言ってにこりと笑って聡美を俺に預ける。
男は晶先輩のSPに取り押さえられている。
「あ、商談決まったよ」
椎名さんはいつもの調子で言った。
「椎名君あんたって人は……」
友坂主任が椎名さんに近づく。
「真鍋君がしっかりしてないからこうなるんですよ」
ケロっと言う椎名さん。
てか俺のせいかよ!
「あ、それと君」
椎名さんは取り押さえられている男に言った。
「屋内で打つならサプレッサーくらいつけとかないと。近所迷惑だよ」
(7)
「みんな揃ったな!」
ファストフード店の2階を占拠したユニティの面々は頷く。
「じゃあ、始めようか!誠、始めてくれ」
渡辺君が言うと誠はノートPCを操作する。
「ところでファストフード店を指定した理由を教えてくれないか?」
「カラオケが危ないって言った理由を覚えてるか?」
僕が聞くと誠は逆に尋ねてきた。
「ああ、無線LAN……Wi-Fiが飛び交ってるからだって言ってたな」
しかもご丁寧に監視カメラ付きだと。
「その逆を突くのさ」
「?」
「無線LANやフリーWi-Fiが飛び交ってるから色んな人が利用しているだろ?ファストフード店でノートPCを開く人なんて沢山いるだろ?」
まあ、仕事でノートPCを開く人はいるよな。
「それを利用するのさ。そういう人を見つけて、踏み台にしてニーズヘッグのサーバーにアクセスする」
「またハッキングかよ!」
「声がでかいぞ冬夜」
誠に注意される。
「誠、いつも思うんだが、うちのサーバーは大丈夫なんだろうな?」
「それは恵美さんに聞いてくれ」
誠がいうと恵美さんが答えた。
「ちゃんと厳重に管理してあるわ。そうね、バンカーバスターでも撃ち込まれない限り壊れないわよ」
そんなもん国内で飛ぶはずがない。
「物理的にはそうでも、サイバーテロとか……」
「前にも説明したろ?管理者以外はアクセスする際あらゆる権限をもぎとられしかもアクセスログもきっちり抜き取りさらに不正アクセスなら自動でトロイの木馬をプレゼントするようになってる」
よくまあ、そんなもん作ったな。
「さて、これがニーズヘッグのサーバーの中味だ」
誠が言うと僕と渡辺君と恵美と亜依さんと愛莉が覗き込む。
「これは……」
渡辺君が言葉を失う。
ニーズヘッグの所持武器、規模、資金源、情報網のつながり全てが網羅されていた。
「滅多にアクセスできないから一先ず保存しておく。もちろんログは残さない」
「晶。これに対抗できそう?」
恵美さんが聞くと晶さんは笑みを浮かべる。
「何ならその本拠地壊滅させてあげてもいいわよ」
晶さんは余裕ありそうだ。
何かその気になったら戦車でも持ち出しそうな。いや、恵美さんもプレデターもってたな、あれで空爆する気かな。バンカーバスターとかも所持してそうな勢いだ。
「それじゃつまらないでしょ?もっと追い込んでやらないと……誠君は考えてるんでしょ?」
恵美さんが言うと誠は頭を抱えた。
「それがさ、高橋グループとの関連は見つかったんだけど肝心のエゴイストとの関係がみつからないんだよな」
「高橋グループを捕まえてもエゴイストは逃げちゃうってこと?」
愛莉が聞くと誠は頷いた。
「まどろっこしいから!高橋グループ叩きのめそうぜ!証拠はそろってんだろ!高橋グループ潰せばエゴイストも虫の息だろ」
美嘉さんが言う。
「優先順位的にはそれが正しいんだけどね。エゴイストも独立した資金源持ってるから同時に抑えたい」
誠が言う。
と、なると……。
「やはり物理的にニーズヘッグを叩いておく必要があるか」
渡辺君が言う。
「拠点は山の中だから少々派手にやっても分かりはしないわ。それに高橋グループも隠蔽にかかるでしょうし」
山の中だからと言って空爆は流石に不味いと思うよ?
「このまま攻撃をされていたらいつか犠牲者でるかもしれませんしね」
石原君も攻撃に賛成派のようだ。
「同時に攻める……か」
僕がそう呟くと皆の注目を浴びた。
「いや、ネットでニーズヘッグの実態をさらすと同時にニーズヘッグの手足をもぎ取るんだ」
「それってやっぱり拠点攻撃って事?」
「できるならそうしたいね」
「それなら簡単。誠君、相手の本拠地の地図とか出せる?」
「それならもう入手済みだよ」
誠がノートPCの画面に地図を表示させる。
「なるほど地下には設備はないようね。これなら爆撃機じゃなくても戦闘ヘリで対処できそう」
そういう基準なの恵美さん?
だいたいどこに戦闘ヘリなんて隠してるの?
「自衛隊にツテがあってね。私用で何機か買い取ってるのよ」
そんな情報流していいの?色々問題あると思うよ。
「爆撃しなくてもこの規模なら一個中隊もあれば抑えきるわよ」
いや、晶さん論点がおかしいです。
「地上か空からか……まあ、空からが安全だが……」
渡辺君も話について行かないで。
「さて、指揮官どうする?」
渡辺君が言うと皆が僕を見る。
いつから僕が指揮官になったんだと抗議したいが、事実上指示を出してるのは僕だな。
冷静になって考える。
戦力差は十分に優位に立ってると言っていいらしい。
何か良い策を……あった。
「愛莉、今夜愛莉の父さんに挨拶に行きたいんだけど?」
「え?今から挨拶するの?」
100%愛莉は誤解してるな。
「愛莉のお父さんにお願いしたい事があるんだ」
「パパさんにお願いって……」
愛莉は恥ずかしがってる。
「ちょっと片桐君今はそれどころじゃないでしょ!?」
「冬夜……時と場合は考えろ」
真顔で言ってる亜依さんと渡辺君。
先に作戦から話すべきだったか。
「わかったよ、先に作戦から説明するよ」
僕は皆に作戦の説明を始める。
同じやるなら徹底的に、そして派手にやれだ!
「その作戦、俺は乗った!」
渡辺君が賛成する。
「私も賛成。ていうか反対の人いる?」
亜依さんが言うと誰も何も言わない。
皆賛成か?
「俺も参加したいっす!解体なら俺の得意分野っす!」
解体ってそういうレベルの話じゃないんだけどね。ハンマーとか持ってきても困るよ。
「晴斗が行くなら私も行くわ」
白鳥さんも参加したいらしい。
「晴斗、行くならお願いしても良いか?」
誠が晴斗に何かを渡す。
「なんすかこれ?」
晴斗が誠に聞く。
「秘密兵器さ。どうせ破壊するなら頂くものは全部頂いておこうと思ってな」
「どうやって使うっすか?」
「晴斗、USBの差込口は分かるか?」
「そのくらい分かるっすよ。自分もPCくらい持ってるっす」
「その差込口に差し込んでくれるだけいい。この場所にサーバールームがあるんだ。そこに行って適当なPCに取り付けろ」
「了解っす」
「待って!いくらなんでもサーバールームは厳重に警備されてるでしょう!」」
亜依さんが言うと晶さんが答えた。
「そういう話なら晴斗もチームに入ってもらう。チャーリーをつけるわ」
「私も晴斗の護衛に新條をつける」
恵美さんが言う。
「恵美さんの護衛はいいの?」
「それは先の戦闘で見た通り。旦那の戦闘力は高いわよ」
あと3回くらい変身残してるのかな?
「それに私の方でも兵隊準備するから」
恵美さんが言う。
「じゃ、私も行ってもいいかな?どうせ冬夜君行くんでしょ?」
「そりゃ指揮官だし行かないといけないだろうな」
愛莉と渡辺君の中では僕が行くことは決定事項らしい。まあ、いいけど。
「私達も行くわよ。片桐君はあくまで司令官。陣頭指揮を執る人は要るでしょ?」
石原夫妻は行くらしい。
「私達も行くわ。私達の部隊が動くんだから」
「僕は家でゆっくりしてます……」
「……あなたにも訓練が必要かもしれないわね」
「……行っても何もできませんよ?」
「だから夏休みにじっくり鍛えてあげるわよ」
「お手柔らかにお願いします」
酒井夫妻も行くらしい。
「俺も行くぜ!タイムラグ縮めたいしな」
「じゃあ、私も行くか。一人でいるより安心だろ?」
多田夫妻も行くらしい。
結局行くのは僕と愛莉、多田夫妻、石原夫妻、酒井夫妻、渡辺君、晴斗、白鳥さん。
決行日は愛莉パパと相談の上連絡することにした。
「残った奴にも連絡は逐次する。皆で勝とう!」
「打ち上げはファミレスでな!」
渡辺夫妻が言う。
派手に花火を打ち上げようじゃないか!
(8)
その夜愛莉と遠坂家に足を運んだ。
愛莉パパに事情を説明する。
愛莉パパの表情は険しい。
そして黙ったままだ。
「パパさん~子供たちがここまで決断したのよ~後はパパさんが背中を押してあげるだけじゃないの~?」
「……実行部隊は別にいるんだね」
愛莉ママが言うと愛莉パパがそう言った。
「はい、俺達がやるわけじゃありません」
「ニーズヘッグ壊滅作戦か……。分かった!私も協力しよう」
「パパさん!」
愛莉が愛莉パパに抱きつく。
「ありがとうパパさん」
「ただしこの件冬夜君のお父さんにもちゃんと話しておきなさい」
「わかりました。協力ありがとうございます。」
「日程については私も段取りがあるから私から冬夜君に連絡しよう。冬夜君……後は任せたぞ」
「はい」
僕達は家に帰ると父さん達に事情を説明する。
父さんも黙って話を聞いていた。
「そこまでたどり着いたんだな」
「……うん」
「わかった。父さんも出来る限り協力しよう」
「協力?」
「お前たちに出来る限りの情報を提供する。しかし遠坂さんと違って俺に出来るのはそこまでだ」
「それだけで十分だよ」
「お前は本当に立派に育ったな。俺の自慢の息子だよ」
父さん達と話を終えると部屋に戻る。
「愛莉、先にお風呂いっといで」
「うん」
愛莉が風呂にいってる間に状況を整理する。
敵の情報は手に入れた。
本拠地までつきとめた。
後は奇襲を仕掛けるタイミング。
こちらの動きを気取られる前に済ませたい。
だけど愛莉パパとの連携も必要になる。
問題はまだある。
ニーズヘッグとエゴイストの関係はまだ突き止めていないこと。
ウォーロックが大人しい事も気になる。
裏で何をしている?
ニーズヘッグが派手に暴れている蔭で何をやっている?
ニーズヘッグに皆の目をそらしている間に何か企んでいる?
……そう考えるのが妥当だろう?
誠にメッセージを打ってみる。
「エゴイストは何してる?」
「それが妙に動きがないんだ。通常の活動をしているだけ。あいつらなりにいうなら『再生中』ってところかな」
「再生?」
「エゴイストの掴みどころだった例のやり目サークル捕まったろ?それを作り直しているらしい。心配するなこっちの動きは掴まれてない。保証する!」
「分かった……ありがとう。おやすみ」
「お前も今日はゆっくり寝ろよ!おやすみ」
スマホをテーブルの上に置く。
ベッドに寝転がる。僕がエゴイストの頭だったらどうする?
今のうちに新しく再構築する。
そして元通りにする。
それだけか?
「冬夜君お風呂から戻ったよ~。冬夜君も入ってきなよ」
「ああ、わかった」
着替えをもって浴室に向かう。
体を洗って、湯舟の中で考える。
それだけでいいのか?
僕達の存在を忘れてないか?
僕達を放っておいたらまた潰しにかかるだけだぞ?
水を堰き止める方法を聞いたことがある。
その場しのぎの一時的な堤防を作って凌いでる間にさらに大きな堤防を用意する。
現に僕達はニーズヘッグに気を取られて高橋グループ・エゴイストに手が回せていない。
エゴイストの目的はそれか!?
「冬夜君~大丈夫~?」
外から愛莉の声がする。
「どうした?」
「やけに長風呂だからのぼせてるんじゃないかと心配になって」
「あ、もうすぐ出るよ」
愛莉にそう言うと僕は風呂を出てタオルで全身を拭いて、服を着る。
部屋に戻ると愛莉が酎ハイを用意してくれた。
「はい、冬夜君のも準備してあるよ~」
「ありがとう」
準備か……?何を考えているエゴイスト。何を企んでいる?」
「どうしたの難しい顔をして?」
「あ、いやちょっとね……エゴイストの動きが気になってね」
「エゴイスト?」
「うん、何も動きが無いから……」
「そりゃあれだけ騒ぎになったんだもん。動けないでしょ」
……愛莉の言う通りだ!
動かないんじゃない。動けなかったんだ。
僕達は大きなミスを犯していた。
以前誠が言っていた。
「サーバーの中に仮想サーバーを作ってそれに嵌められていた」と。
急いで誠に電話する。
「どうした冬夜、こんな時間に。まさかゴムが無いから買ってきてくれとか言うんじゃないだろうな?お前らならもう生でしても……いてぇっ!」
「トーヤとお前を一緒にするな!トーヤどうしたんだ?」
「誠にもう一度エゴイストのサーバーを確認してもらえないか?明日でもいいから」
「わ、わかった。今誠に替わる」
「どうしたんだ急に、あれから変わりないって……」
「……仮想サーバーだよ!」
「どういう意味だ?」
「古いサーバーをそのまま残して個人情報もそのまま放置して新しく別のサーバーを構築する可能性ってないか!?」
「……!!ちょっとまて!」
誠が何か作業している。
「やられた!外部からのアクセスはあるけど内部の人間は全然アクセスしてない!新しいサーバーには検索ロボット回避の仕掛けが施してあるみたいだ。ちょっと探すのに時間かかるけど待てるか!?」
「やっぱりか。大丈夫だ。予想が正しかったら動くのはニーズヘッグが決壊してからだ」
「つまりニーズヘッグ自体が囮だったわけか」
実際誰も今までエゴイストに触れようとしなかった。
エゴイストとニーズヘッグの関わりに固執してエゴイスト自体から目をそらしていた。
見事にやられたってわけだ。
「どうする!?今すぐエゴイスト追いかけるか?」
「どっちにしろもう遅い。まずはニーズヘッグを片付けよう」
「わかった。ニーズヘッグはもう大体捕獲してある。エゴイストの方調べるよ」
「油断するなよ誠!今度はニーズヘッグに同じ手を使われるかもしれない。まずはニーズヘッグ潰すことから考えよう」
「わかった。でも冬夜心配するな。幹部の情報は押さえてある。ネットじゃなくて現実でだ。いくらでも割だせる」
「……エゴイストの事はニーズヘッグ潰して手を考えよう。もう少し気になることがある。僕の考えが正しければ……」
「正しければ……」
「今度説明する!」
「ちょっと待てよ!」
危うくスマホを投げつけるところだった。
完全にウォーロックにやられた。
多分誠が掴んでる情報もデコイだろう?
文字通り「新生」を企んでいたんだ。
「冬夜君……」
「どうした?」
「怖い顔してるよ」
「あ、ごめん」
愛莉が僕を抱きしめる。
「焦げたパンだってお腹を満たせるよ?」
「愛莉?」
「過ぎたことを悔やんだってしょうがないよ。またやり直せばいいじゃない」
「……そうだね」
「わかったらよし!今日はもう寝よう?」
「寝ていいの?」
「ほえ?」
「今夜続きしようって……」
ぽかっ
「そんな事言えるようになったんなら大丈夫だね?怖い冬夜君としたくないもん」
「ごめんね……」
「いいの。熱くなった冬夜君の冷却材が私の役割なんだから」
そう言うと愛莉はベッドに入る。
僕も明りを落してベッドに入る。
「優しくだよ?怒りに身を任せて乱暴にされるのはいやだからね?」
「そんな真似愛莉にしたことないだろ?」
「……うん」
やり直しはきくか。
またやり直しだな。一つずつ積み重ねていこう。
こちらはまだ切り札を見せてないんだ。
優位性はこっちにある。
今は、ニーズヘッグだ。
速攻で叩いて終わらせよう。
いくつも、難題を一度に抱えて犯したミスだけど、まだ希望の花は咲いている。
唇に柔らかくて暖かいなにかが押し当てられている。
それから何かまた別の柔らかい物が出てきて口の中に侵入を試みてきた。
愛莉からしてきたわけだね。
それを受け入れると。愛莉の背中に両手を回す。
しばし快楽の時間を楽しむと目を開けた。
「おはよう愛莉」
「おはよう冬夜君」
愛莉に離れるように言うとやや不満気だったが素直に退いた。
ベッドから起き上がると着替えをする。
生欠伸をすると、愛莉が反応する。
「やっぱり昨夜眠れなかった?」
「愛莉のせいじゃないよ」
そう言いながらも欠伸をする僕。
そんな僕に愛莉はしがみつく。
「だって冬夜君甘えさせてくれるっていったも~ん」
「だから愛莉のせいじゃないって」
「本当に?」
「何なら今から甘えるか?」
「ジョギングのあとね♪」
甘えたい意思は在るらしい。
愛莉が着替えるのを見届けると僕達は家を出てジョギングした。
適時愛莉が差し出すスポーツ飲料を飲みながら水分補給をして走る。
1時間ほど走ると家に帰る。
するとポストに不審な物が入ってある。
愛莉が不用意に触ろうとすると僕がそれを制する。
慎重に触って宛先と差出人を確かめる。
両方ともない。
「愛莉、悪いけど愛莉パパ読んできて」
「わかった~」
直ぐに愛莉パパを連れてきた。
「うむ、危険物には間違いない様だな。預かっても良いかな?」
「はい」
「冬夜君のお父さんには私から伝えておくよ」
「あ、僕から言いますから」
家に帰ると愛莉は朝食の準備。僕はシャワーを浴びる。
朝食の時に朝の小包の事を知らせる。
「脅しだろうな……」
父さんはそういう。
「あなたやっぱり冬夜達には手を引かせた方が」
「いや、冬夜の言う通り冬夜達は入ってはいけない領域に入った。今さら引き返せないよ」
「冬夜達はどうなるんですか?」
母さんが言う。
「冬夜達なら大丈夫だ。そうだろ?」
「うん、たぶん大丈夫」
頭部を撃ちぬかれかけたことは内緒にしておいたけど。
部屋に戻るとデスクトップを開いて誠のメールを受信する。
どうしてノートPCじゃないのかって?
学内の無線LANのある環境でそんなの持ち歩けないだろ?
誠の完全防備のノートPCじゃないんだから。
誠のメールを開く。
さっそく調べたらしい。ニーズヘッグの内容。
恵美さんからの報告を待って情報を照合する。
それは今夜さっそく行えるらしい。
ニーズヘッグの情報管理はずさんらしい。
わざとそうしているのかもしれないが。
そうする理由も分からないけど。
とりあえず今日も夜遅くなる。
愛莉をふと見る。
寂しそうだ。
愛莉は一人服を持ってシャワーを浴びに行く。
僕は着替えずに愛莉を待つ。
愛莉が戻ってくると僕の姿を見て驚く。
「着替えないと遅刻しちゃうよ~」
「今日は時間あるから大丈夫だよ。愛莉も部屋着のままじゃないか?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
僕は黙って愛莉を抱きしめる。
意味察してくれたのか愛莉は僕にデコピンをする。
「本当に甘えん坊さんですね」
愛莉は笑っていた。
愛莉をベッドに招き寄せると愛莉に覆いかぶさる。
愛莉は目を閉じてその時を待っている。
愛莉の服のボタンを外していって一糸纏わぬ姿に変える。
その時僕のスマホが着信した。
「うぅ……」
肩透かしを食らった愛莉が唸っている。
「すぐ済むから」
愛莉の頭を撫でながら電話に出る。
誠からだ。
「おお、冬夜。朝はすっきりしたか!」
「お陰様でしそこねたよ」
愛莉が恥ずかしそうにしてる。
「それは悪いことしたな。でもそういう時はメッセージで言ってくれれば」
どこの世界に今彼女と事の最中ですと他人に伝えるやつがいる。
「でも遠坂さんも朝から冬夜を受け入れるとは……うらやましい……いてぇ!」
「馬鹿な事言ってないで早く要件を言え!」
カンナの声がする。
「ああ、ニーズヘッグの件な。遠坂警視の情報通りだったよ。高橋グループの暗部だ」
「どっからそんな情報握ったんだよ」
「聞いて驚くな、高橋グループのサーバーに侵入した」
「馬鹿!そんなことしたら」
「大丈夫蒼良さんのUSBにアカウントとパスワードが入っていた。
「尚更だろ!?罠だとは思わなかったのか?」
「それくらいおれだって考えてるよ」
「どうやったんだ?」
「サーバーの場所だけ特定した」
「それで?」
「出入りしている人間のアカウント乗っ取って侵入した」
誠……お前ってやつは……。
「当然足取りを残すような真似はしてない」
「それはどうやったんだ?」
「それは実演するよ。今日神奈のファストフード店に来いよ」
「そこで安全なのか?」
「そこだから安全なんだよ」
誠のいう事はいまいち分からない。
「じゃ、また夜にな」
「夜にな……か」
愛莉の顔を見る。少し寂しげだった。
そんな僕の視線に気づいたのか愛莉は言う。
「平気だよ~」
「そうか、それならいいんだけど」
「その後甘えるから~」
僕の寝不足の問題はいいのか?愛莉。
(2)
「朝は悪かったな」
昼休み学食でカンナはそう言った。
「いいよ、気にするな」
「うん、気にしなくていいよ」
僕と愛莉がそう言うとカンナは安心したようだ。
「で、誠が言ってた実演ってのは?」
「ああ、それは誠に直接聞いてもらった方が良い」
カンナはそう言う。
「また危ない事するの?」
「まあ、一歩間違えると危ないわな」
でもCIAやKGBに潜り込む誠だからと付け加える。
誠、お前本当に何がしたいんだ?
「で、冬夜。反撃の糸口はつかめそうか?」
渡辺君がやってくる。
恵美さん達も渡辺班の地元大学組は大方揃った。
「ニーズヘッグの情報、昨日大体そろえたわ」
「一晩でやってくれました」と言わんばかりの恵美さん。
目の下に隈が出来てる。
恵美さんが一つのファイルを出す。
「それに大体の資料はそろってる。それとこれ……。
USBメモリも付け足す。
「ニーズヘッグと高橋グループの関与性を裏付ける帳簿のファイル」
必要なものは全てそろってる、だけど問題は……。
「やっぱり流出先か」
渡辺君が言うと僕が頷く。
「それも確保したわ。地元新聞が駄目なら全国版に載せてやればいい」
恵美さんが言う。
「伝手はあるの?」
僕が確認すると恵美さんは頷く。
「大丈夫、それも全部確認済み。早速打診しておいた。地元の巨悪のスキャンダルって喜んでる」
まずどこから暴露する?って恵美さんが聞いてくる。
「先ずはニーズヘッグの周知からだね」と僕が答える。
後は相手の出方次第。
愛莉が付け足す。
「冬夜君が昨夜言ってたの『ニーズヘッグの行動はウォーロックさんの意図はない』って」
「どうしてそう言い切れるの?」
恵美さんがそう聞いてきた。
僕は説明する。
「まずウォーロックは今までの闇を有耶無耶にしようとしてる。そこに新たに闇を抱えるような真似はしないだろ?」
恵美さんは「なるほど」と納得する。
「出来るならエゴイストとニーズヘッグの関係性を確認しておきたい」
「そうね、任せておいて」
「後私からなんだけど」
晶さんが言った。
「念のため皆の大学、勤め先にSPを配備したわ。また襲撃してこないとも限らないし」
「助かるよ晶さん」
渡辺君が礼を言う。
まだ狙われてないのは丹下夫妻と真鍋夫妻、新名さんに椎名さん。晴斗に白鳥さん、檜山先輩に木元先輩。西松医院も狙われていない。
狙うとしたらどこだ。考えろ僕……。
一番危ないのは芸短大組か。
「片桐君の言うとおりね。椎名さんと海未ちゃんが危険すぎる」
晶さんは重点的に配置したと付け足す。
今日も長い一日になる。そう感じていた。
「みんな無事だといいですね」
酒井君が言う。
「聡美のところは椎名さんいるし大丈夫かな」
「ニーズヘッグの前には多少腕が立つ人がいても一緒よ。彼等も同じ轍は踏まない。きっと武装してくるはずよ」
「そうですね……」
真鍋君がそう言う。
今は耐えるしかない。
愛莉の頭を撫でながら思う。
絶対に逃がさないぞニーズヘッグ。
ニーズへッグの先。高橋グループを押さえればきっとエゴイストの動きも止まる。そう思った。
(3)
「鉗子」
私は手術を行っていた。
癌の摘出手術。
比較的初期のものでそんなに難しい物ではなかった。
癌の部分を取り出し最後縫合して終わり……皆が安堵する瞬間だった。
突然証明が落ちる。機器が全部泊まる。
「非常電源は!?」
私が聞くと、すぐに電気がついて機器も復旧する。
停電?
地震は感じなかった?
何があったの?
それよりも今は目の前のオペを終わらせることだ。
縫合を終え。手術は無事成功する。
手術室を出るとスタッフが慌ただしく動いている。
突然の停電に大騒ぎだ。
スタッフの一人に何が起こったのか聞いてみた。
ケーブルを切断されたらしく、復旧に時間がかかるらしい。
誰がそんな真似を?
心当たりは一つしかない。
ニーズヘッグ。
エゴイスト、いや高橋グループの暗部。
私は休憩室に戻りガムを噛む
私がする事はなんだ?
とりあえず、ユニティに連絡をする。
何かあった際はすぐに報告して欲しいとの事だった。
混乱の中一人怒りに震える私。
ガムを何個噛んでも収まりそうにない。
ガムを包み紙に吐き捨てるとごみ箱に投げつけ、休憩室を出る。
やれる事を一つでもやらなければ。
スタッフに混ざって救護活動に回る。
人の命に係わる病院を狙った行為。絶対に許されるものじゃない。
「西松先生!***号室の患者が心肺停止です!」
「AEDすぐに持ってきて!」
「はい!」
電機は1時間ほどで復旧した。
幸い収容している患者は全員無事だった。
許さない、ニーズヘッグ。
(4)
大学をでて家に帰る途中晴斗に連絡していた。
「今日会える?」
「今日は非常事態っす。みんなファストフード店に集合っす!」」
非常事態?ああ、昨日言ってたニーズヘッグの事か。
クラクションの音が鳴る。
檜山さんの車だ。
「危ないから家まで送っていくよ」
私は後部座席に座る。
助手席はきっと咲良さん専用なんだろうなと思ったから。
「昨日は皆大変だったらしい」
檜山さんが言う。
「知ってる。ユニティのグループ見た」
「白鳥さんも気をつけた方が良い」
「そうね」
不安。
私よりも晴斗が心配。
他人の心配をしている場合じゃないのに。
晴斗が無茶しなければいいんだけど。
マンションの前に車は止まる。
私は車を降りるとマンションの中に入ろうとしたその時だった。
「抵抗するな。したら命の保証はしない」
黒いフードの男が私に拳銃を突きつけている。
私は銃を見る。
M9。
ベレッタ92
世界中で使われている拳銃。
奴らも使っているらしい。
私は左手をゆっくり上げる。
「よし、おとなしく両手をあげろ」
男が言うと私は右手を上げ。彼の拳銃を持つ手を掴んであげる。
油断。
相手の間合いの内での威嚇は無謀に等しい。
男のすねを思いっきりけりつける。
男は足を押さえる。
前かがみになった彼の顔面に膝をぶつける。
彼は拳銃を落し鼻を押さえる。
私は素早く拳銃を拾い彼から離れ彼に銃口を突きつける。
逆転。
男と私の立場は逆転していた。
「あなた達ニーズヘッグ?それともエゴイスト?」
男は答えない。
「両手を上に上げなさい」
「お嬢ちゃんに撃てるのか?」
私は彼の顔の横を狙って打った。
銃弾が彼の頬をかすめる。
「今のは警告。次は外さない」
「銃を捨てろ!さもなくば……」
別の男が現れた。
警告はした。
私は現れた男の太腿を撃ちぬく。
太腿を撃ち抜かれた男はその場に倒れる。
目の前の男が襲い掛かる。
冷静に男の攻撃を躱しグリップの部分で男の頬を殴りつける。
男は吹き飛ぶ、
怒り。
こいつらが、仲間を傷つけた。
「警告はしたわ」
撃鉄を起こし。引き金を引こうとする。
「ま、待て!!」
男は怯えている。
「そう言って助けを求めた人間を何人撃ったの?」
「そこまでです!」
また別の人間がやってきた。
その男を見る。
銃口は男に向けられたまま。
「私は志水家のSPです。あなたの警護に来ました」
志水家?
ああ、晶さんの家がそうだったわね。
SPをつけるとかなんとか言ってた。
私はハンカチで拳銃に着いた私の指紋を拭うとSPの人に渡す。
「銃は暴発した」
「わかりました。後はこちらで処理します。お嬢さんは部屋に戻ってください」
私は言われた通り部屋に戻り、ユニティに連絡する。
「迎えに行くまで絶対に部屋を出ちゃダメっすよ!」
晴斗が言う。
「晴斗も来るとき用心してね」
「分かってるっす」
少し熱くなってたみたい。
私はキャンディを取り出すとかみ砕く。
晴斗が来るまで少し休むとしよう。
テレビをつけて、ユニティのチャットを眺めていた。
(5)
私と海未ちゃんは黒いフードの男に取り囲まれていた。
海未ちゃんは私にしがみ付いてる。
「そこ、通してくれませんか?」
ニーズヘッグの話は聞いてある。
「ついて来てもらおうか?無駄な抵抗しなかったら危害は加えない」
男はガムを噛みながら言う。
「私達先急いでるんで」
「こっちも急ぎの用なんでな。悪いけど」
男が違づいて来て私の肩を掴もうとする。
私は反射的に男の腕を掴むと投げ飛ばしていた。
「てめぇ!!」
「海未ちゃん下がってて」
そう言って海未ちゃんを突き飛ばすと私は攻撃に回った。
相手の攻撃を掻い潜り鳩尾に、鼻っ柱に、急所に、脛に。ありとあらゆる打撃を加える。
捕まえられるとその手を取り投げ飛ばす。
全員を始末すると。海未ちゃんの手を取る。
「海未ちゃん怪我無い?突き飛ばしてごめんね」
「未来ちゃんこそ大丈夫?」
「大丈夫……未来ちゃん後ろ!」
私は後ろを振り返る。
男が拳銃を手に銃口をこちらに向けていた。
男はにやりと笑う。
「海未ちゃん伏せて!」
海未ちゃんをかばうように伏せる私。
だが、聞こえたのは銃声ではなく男の悲鳴。
私は振り返ると銃を持った腕を踏みつける丹下先生がいた。
「先生どうしてここに?」
「ん?心配だったんでな。ちょっと様子見に来た」
「修ちゃ~ん」
丹下先生に駆け寄る海未ちゃん。
男は全員SPの人に取り押さえられていた。
「2人とも怪我無いか?」
丹下先生がそう言うと二人でうなずいた。
「未来は俺が家まで送るよ」
そう言うと丹下先生の車に乗り込んだ。
(6)
パン!
事務所内に一発の銃声が響く。
次に事務員の悲鳴が響く。
「抵抗するな!用が済んだら解放してやる……真鍋聡美はどいつだ!?」
敵は聡美を指名した。
聡美は自ら名乗り上げる。
「付いて来てもらおう。お前ら動くなよ」
聡美は男の言われるがままに男について行く。
だけど俺には余裕があった。
男の背後に立つ一人の人物に気がついてたから。
椎名さんは男から軽々と銃を奪い取ると、腕を極める。
「全く打ち合わせから戻ってきたらなんて様だ」
椎名さんは余裕の笑みをこぼす。
「君がニーズヘッグの人間?」
椎名さんが尋ねるが男は何も言わない。
「忠誠心はあるみたいだね。だけど君は銃を持っていた。僕がこのまま腕をへし折っても正当防衛が成立するよ?」
椎名さんはいつもの口調で男を脅す。
男は口を割らない。
「脅しだと思ってる?残念だけどそんな情けをかける相手じゃないと聞いてるんだ。本気で折るよ?」
椎名さんはそう言うと力を加える。
「そ、そうだ!俺たちはあんたの言う通りだ」
「ニーズヘッグと認めるんだね?」
「ああ、認める」
「ならいいや、取りあえず折っておくね」
「待て、話が違う……」
「言ったら折らないとは言ってないよ」
ぽきっ
「ぎゃああ!」
男の悲痛な悲鳴がこだまする。
「ああ、処置とかはSPの人がしてくれるってさ。今なら西松病院にいけばいいんじゃないかな?」
折られた腕を押さえもんどりうつ男を後目に聡美を支えて俺の元に近づく。
「自分の嫁さんくらい自分で守らないと」
そう言ってにこりと笑って聡美を俺に預ける。
男は晶先輩のSPに取り押さえられている。
「あ、商談決まったよ」
椎名さんはいつもの調子で言った。
「椎名君あんたって人は……」
友坂主任が椎名さんに近づく。
「真鍋君がしっかりしてないからこうなるんですよ」
ケロっと言う椎名さん。
てか俺のせいかよ!
「あ、それと君」
椎名さんは取り押さえられている男に言った。
「屋内で打つならサプレッサーくらいつけとかないと。近所迷惑だよ」
(7)
「みんな揃ったな!」
ファストフード店の2階を占拠したユニティの面々は頷く。
「じゃあ、始めようか!誠、始めてくれ」
渡辺君が言うと誠はノートPCを操作する。
「ところでファストフード店を指定した理由を教えてくれないか?」
「カラオケが危ないって言った理由を覚えてるか?」
僕が聞くと誠は逆に尋ねてきた。
「ああ、無線LAN……Wi-Fiが飛び交ってるからだって言ってたな」
しかもご丁寧に監視カメラ付きだと。
「その逆を突くのさ」
「?」
「無線LANやフリーWi-Fiが飛び交ってるから色んな人が利用しているだろ?ファストフード店でノートPCを開く人なんて沢山いるだろ?」
まあ、仕事でノートPCを開く人はいるよな。
「それを利用するのさ。そういう人を見つけて、踏み台にしてニーズヘッグのサーバーにアクセスする」
「またハッキングかよ!」
「声がでかいぞ冬夜」
誠に注意される。
「誠、いつも思うんだが、うちのサーバーは大丈夫なんだろうな?」
「それは恵美さんに聞いてくれ」
誠がいうと恵美さんが答えた。
「ちゃんと厳重に管理してあるわ。そうね、バンカーバスターでも撃ち込まれない限り壊れないわよ」
そんなもん国内で飛ぶはずがない。
「物理的にはそうでも、サイバーテロとか……」
「前にも説明したろ?管理者以外はアクセスする際あらゆる権限をもぎとられしかもアクセスログもきっちり抜き取りさらに不正アクセスなら自動でトロイの木馬をプレゼントするようになってる」
よくまあ、そんなもん作ったな。
「さて、これがニーズヘッグのサーバーの中味だ」
誠が言うと僕と渡辺君と恵美と亜依さんと愛莉が覗き込む。
「これは……」
渡辺君が言葉を失う。
ニーズヘッグの所持武器、規模、資金源、情報網のつながり全てが網羅されていた。
「滅多にアクセスできないから一先ず保存しておく。もちろんログは残さない」
「晶。これに対抗できそう?」
恵美さんが聞くと晶さんは笑みを浮かべる。
「何ならその本拠地壊滅させてあげてもいいわよ」
晶さんは余裕ありそうだ。
何かその気になったら戦車でも持ち出しそうな。いや、恵美さんもプレデターもってたな、あれで空爆する気かな。バンカーバスターとかも所持してそうな勢いだ。
「それじゃつまらないでしょ?もっと追い込んでやらないと……誠君は考えてるんでしょ?」
恵美さんが言うと誠は頭を抱えた。
「それがさ、高橋グループとの関連は見つかったんだけど肝心のエゴイストとの関係がみつからないんだよな」
「高橋グループを捕まえてもエゴイストは逃げちゃうってこと?」
愛莉が聞くと誠は頷いた。
「まどろっこしいから!高橋グループ叩きのめそうぜ!証拠はそろってんだろ!高橋グループ潰せばエゴイストも虫の息だろ」
美嘉さんが言う。
「優先順位的にはそれが正しいんだけどね。エゴイストも独立した資金源持ってるから同時に抑えたい」
誠が言う。
と、なると……。
「やはり物理的にニーズヘッグを叩いておく必要があるか」
渡辺君が言う。
「拠点は山の中だから少々派手にやっても分かりはしないわ。それに高橋グループも隠蔽にかかるでしょうし」
山の中だからと言って空爆は流石に不味いと思うよ?
「このまま攻撃をされていたらいつか犠牲者でるかもしれませんしね」
石原君も攻撃に賛成派のようだ。
「同時に攻める……か」
僕がそう呟くと皆の注目を浴びた。
「いや、ネットでニーズヘッグの実態をさらすと同時にニーズヘッグの手足をもぎ取るんだ」
「それってやっぱり拠点攻撃って事?」
「できるならそうしたいね」
「それなら簡単。誠君、相手の本拠地の地図とか出せる?」
「それならもう入手済みだよ」
誠がノートPCの画面に地図を表示させる。
「なるほど地下には設備はないようね。これなら爆撃機じゃなくても戦闘ヘリで対処できそう」
そういう基準なの恵美さん?
だいたいどこに戦闘ヘリなんて隠してるの?
「自衛隊にツテがあってね。私用で何機か買い取ってるのよ」
そんな情報流していいの?色々問題あると思うよ。
「爆撃しなくてもこの規模なら一個中隊もあれば抑えきるわよ」
いや、晶さん論点がおかしいです。
「地上か空からか……まあ、空からが安全だが……」
渡辺君も話について行かないで。
「さて、指揮官どうする?」
渡辺君が言うと皆が僕を見る。
いつから僕が指揮官になったんだと抗議したいが、事実上指示を出してるのは僕だな。
冷静になって考える。
戦力差は十分に優位に立ってると言っていいらしい。
何か良い策を……あった。
「愛莉、今夜愛莉の父さんに挨拶に行きたいんだけど?」
「え?今から挨拶するの?」
100%愛莉は誤解してるな。
「愛莉のお父さんにお願いしたい事があるんだ」
「パパさんにお願いって……」
愛莉は恥ずかしがってる。
「ちょっと片桐君今はそれどころじゃないでしょ!?」
「冬夜……時と場合は考えろ」
真顔で言ってる亜依さんと渡辺君。
先に作戦から話すべきだったか。
「わかったよ、先に作戦から説明するよ」
僕は皆に作戦の説明を始める。
同じやるなら徹底的に、そして派手にやれだ!
「その作戦、俺は乗った!」
渡辺君が賛成する。
「私も賛成。ていうか反対の人いる?」
亜依さんが言うと誰も何も言わない。
皆賛成か?
「俺も参加したいっす!解体なら俺の得意分野っす!」
解体ってそういうレベルの話じゃないんだけどね。ハンマーとか持ってきても困るよ。
「晴斗が行くなら私も行くわ」
白鳥さんも参加したいらしい。
「晴斗、行くならお願いしても良いか?」
誠が晴斗に何かを渡す。
「なんすかこれ?」
晴斗が誠に聞く。
「秘密兵器さ。どうせ破壊するなら頂くものは全部頂いておこうと思ってな」
「どうやって使うっすか?」
「晴斗、USBの差込口は分かるか?」
「そのくらい分かるっすよ。自分もPCくらい持ってるっす」
「その差込口に差し込んでくれるだけいい。この場所にサーバールームがあるんだ。そこに行って適当なPCに取り付けろ」
「了解っす」
「待って!いくらなんでもサーバールームは厳重に警備されてるでしょう!」」
亜依さんが言うと晶さんが答えた。
「そういう話なら晴斗もチームに入ってもらう。チャーリーをつけるわ」
「私も晴斗の護衛に新條をつける」
恵美さんが言う。
「恵美さんの護衛はいいの?」
「それは先の戦闘で見た通り。旦那の戦闘力は高いわよ」
あと3回くらい変身残してるのかな?
「それに私の方でも兵隊準備するから」
恵美さんが言う。
「じゃ、私も行ってもいいかな?どうせ冬夜君行くんでしょ?」
「そりゃ指揮官だし行かないといけないだろうな」
愛莉と渡辺君の中では僕が行くことは決定事項らしい。まあ、いいけど。
「私達も行くわよ。片桐君はあくまで司令官。陣頭指揮を執る人は要るでしょ?」
石原夫妻は行くらしい。
「私達も行くわ。私達の部隊が動くんだから」
「僕は家でゆっくりしてます……」
「……あなたにも訓練が必要かもしれないわね」
「……行っても何もできませんよ?」
「だから夏休みにじっくり鍛えてあげるわよ」
「お手柔らかにお願いします」
酒井夫妻も行くらしい。
「俺も行くぜ!タイムラグ縮めたいしな」
「じゃあ、私も行くか。一人でいるより安心だろ?」
多田夫妻も行くらしい。
結局行くのは僕と愛莉、多田夫妻、石原夫妻、酒井夫妻、渡辺君、晴斗、白鳥さん。
決行日は愛莉パパと相談の上連絡することにした。
「残った奴にも連絡は逐次する。皆で勝とう!」
「打ち上げはファミレスでな!」
渡辺夫妻が言う。
派手に花火を打ち上げようじゃないか!
(8)
その夜愛莉と遠坂家に足を運んだ。
愛莉パパに事情を説明する。
愛莉パパの表情は険しい。
そして黙ったままだ。
「パパさん~子供たちがここまで決断したのよ~後はパパさんが背中を押してあげるだけじゃないの~?」
「……実行部隊は別にいるんだね」
愛莉ママが言うと愛莉パパがそう言った。
「はい、俺達がやるわけじゃありません」
「ニーズヘッグ壊滅作戦か……。分かった!私も協力しよう」
「パパさん!」
愛莉が愛莉パパに抱きつく。
「ありがとうパパさん」
「ただしこの件冬夜君のお父さんにもちゃんと話しておきなさい」
「わかりました。協力ありがとうございます。」
「日程については私も段取りがあるから私から冬夜君に連絡しよう。冬夜君……後は任せたぞ」
「はい」
僕達は家に帰ると父さん達に事情を説明する。
父さんも黙って話を聞いていた。
「そこまでたどり着いたんだな」
「……うん」
「わかった。父さんも出来る限り協力しよう」
「協力?」
「お前たちに出来る限りの情報を提供する。しかし遠坂さんと違って俺に出来るのはそこまでだ」
「それだけで十分だよ」
「お前は本当に立派に育ったな。俺の自慢の息子だよ」
父さん達と話を終えると部屋に戻る。
「愛莉、先にお風呂いっといで」
「うん」
愛莉が風呂にいってる間に状況を整理する。
敵の情報は手に入れた。
本拠地までつきとめた。
後は奇襲を仕掛けるタイミング。
こちらの動きを気取られる前に済ませたい。
だけど愛莉パパとの連携も必要になる。
問題はまだある。
ニーズヘッグとエゴイストの関係はまだ突き止めていないこと。
ウォーロックが大人しい事も気になる。
裏で何をしている?
ニーズヘッグが派手に暴れている蔭で何をやっている?
ニーズヘッグに皆の目をそらしている間に何か企んでいる?
……そう考えるのが妥当だろう?
誠にメッセージを打ってみる。
「エゴイストは何してる?」
「それが妙に動きがないんだ。通常の活動をしているだけ。あいつらなりにいうなら『再生中』ってところかな」
「再生?」
「エゴイストの掴みどころだった例のやり目サークル捕まったろ?それを作り直しているらしい。心配するなこっちの動きは掴まれてない。保証する!」
「分かった……ありがとう。おやすみ」
「お前も今日はゆっくり寝ろよ!おやすみ」
スマホをテーブルの上に置く。
ベッドに寝転がる。僕がエゴイストの頭だったらどうする?
今のうちに新しく再構築する。
そして元通りにする。
それだけか?
「冬夜君お風呂から戻ったよ~。冬夜君も入ってきなよ」
「ああ、わかった」
着替えをもって浴室に向かう。
体を洗って、湯舟の中で考える。
それだけでいいのか?
僕達の存在を忘れてないか?
僕達を放っておいたらまた潰しにかかるだけだぞ?
水を堰き止める方法を聞いたことがある。
その場しのぎの一時的な堤防を作って凌いでる間にさらに大きな堤防を用意する。
現に僕達はニーズヘッグに気を取られて高橋グループ・エゴイストに手が回せていない。
エゴイストの目的はそれか!?
「冬夜君~大丈夫~?」
外から愛莉の声がする。
「どうした?」
「やけに長風呂だからのぼせてるんじゃないかと心配になって」
「あ、もうすぐ出るよ」
愛莉にそう言うと僕は風呂を出てタオルで全身を拭いて、服を着る。
部屋に戻ると愛莉が酎ハイを用意してくれた。
「はい、冬夜君のも準備してあるよ~」
「ありがとう」
準備か……?何を考えているエゴイスト。何を企んでいる?」
「どうしたの難しい顔をして?」
「あ、いやちょっとね……エゴイストの動きが気になってね」
「エゴイスト?」
「うん、何も動きが無いから……」
「そりゃあれだけ騒ぎになったんだもん。動けないでしょ」
……愛莉の言う通りだ!
動かないんじゃない。動けなかったんだ。
僕達は大きなミスを犯していた。
以前誠が言っていた。
「サーバーの中に仮想サーバーを作ってそれに嵌められていた」と。
急いで誠に電話する。
「どうした冬夜、こんな時間に。まさかゴムが無いから買ってきてくれとか言うんじゃないだろうな?お前らならもう生でしても……いてぇっ!」
「トーヤとお前を一緒にするな!トーヤどうしたんだ?」
「誠にもう一度エゴイストのサーバーを確認してもらえないか?明日でもいいから」
「わ、わかった。今誠に替わる」
「どうしたんだ急に、あれから変わりないって……」
「……仮想サーバーだよ!」
「どういう意味だ?」
「古いサーバーをそのまま残して個人情報もそのまま放置して新しく別のサーバーを構築する可能性ってないか!?」
「……!!ちょっとまて!」
誠が何か作業している。
「やられた!外部からのアクセスはあるけど内部の人間は全然アクセスしてない!新しいサーバーには検索ロボット回避の仕掛けが施してあるみたいだ。ちょっと探すのに時間かかるけど待てるか!?」
「やっぱりか。大丈夫だ。予想が正しかったら動くのはニーズヘッグが決壊してからだ」
「つまりニーズヘッグ自体が囮だったわけか」
実際誰も今までエゴイストに触れようとしなかった。
エゴイストとニーズヘッグの関わりに固執してエゴイスト自体から目をそらしていた。
見事にやられたってわけだ。
「どうする!?今すぐエゴイスト追いかけるか?」
「どっちにしろもう遅い。まずはニーズヘッグを片付けよう」
「わかった。ニーズヘッグはもう大体捕獲してある。エゴイストの方調べるよ」
「油断するなよ誠!今度はニーズヘッグに同じ手を使われるかもしれない。まずはニーズヘッグ潰すことから考えよう」
「わかった。でも冬夜心配するな。幹部の情報は押さえてある。ネットじゃなくて現実でだ。いくらでも割だせる」
「……エゴイストの事はニーズヘッグ潰して手を考えよう。もう少し気になることがある。僕の考えが正しければ……」
「正しければ……」
「今度説明する!」
「ちょっと待てよ!」
危うくスマホを投げつけるところだった。
完全にウォーロックにやられた。
多分誠が掴んでる情報もデコイだろう?
文字通り「新生」を企んでいたんだ。
「冬夜君……」
「どうした?」
「怖い顔してるよ」
「あ、ごめん」
愛莉が僕を抱きしめる。
「焦げたパンだってお腹を満たせるよ?」
「愛莉?」
「過ぎたことを悔やんだってしょうがないよ。またやり直せばいいじゃない」
「……そうだね」
「わかったらよし!今日はもう寝よう?」
「寝ていいの?」
「ほえ?」
「今夜続きしようって……」
ぽかっ
「そんな事言えるようになったんなら大丈夫だね?怖い冬夜君としたくないもん」
「ごめんね……」
「いいの。熱くなった冬夜君の冷却材が私の役割なんだから」
そう言うと愛莉はベッドに入る。
僕も明りを落してベッドに入る。
「優しくだよ?怒りに身を任せて乱暴にされるのはいやだからね?」
「そんな真似愛莉にしたことないだろ?」
「……うん」
やり直しはきくか。
またやり直しだな。一つずつ積み重ねていこう。
こちらはまだ切り札を見せてないんだ。
優位性はこっちにある。
今は、ニーズヘッグだ。
速攻で叩いて終わらせよう。
いくつも、難題を一度に抱えて犯したミスだけど、まだ希望の花は咲いている。
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