優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

ミッション

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(1)

ピピピピ……。
アラームが鳴る。
取りあえず止める。
時間を見る。
22時だ。
誰だこんな時間にセットしたのは?
もう一度寝ようとする。

ぽかっ

「時間だよ~起きて~」

愛莉の仕業か。
今夜も相手して欲しいんだね。
いいよ、いくらでも相手してあげる。
愛莉を抱きしめる。

「きゃっ!ちょっと駄目だってば~時間無いよ~」

時間ならたっぷりあるだろ?
愛莉のブラのホックを外し服をめくる。

「あっ……本当にだめだってば!」

ぽかぽかっ

「いい加減に目を覚ましなさい!忘れたの!?これから行くんでしょ!」
「行くってどこに?」
「だから!ニーズヘッグの本部!!」

ああ、そうだった。
今夜0時決行で「司令官の判断が鈍ったら困る」ってちょっと仮眠してたんだっけ。

「思い出した」
「作戦が成功したら続きしようね♪」
「愛莉それ……」
「死亡フラグって言いたいんでしょ?そんなの冬夜君には関係ないも~ん」

愛莉は新調した迷彩柄のカーゴパンツに黒いTシャツに迷彩柄の薄手のパーカーを着ている。
ぼくはいつも通りの恰好。
準備を済ませると、部屋を出てリビングでテレビを見ている両親に「じゃあ、行ってくる」と言った。

「おう、気をつけてな。遠坂さんによろしく」

これからやる作戦の規模にしては恐ろしいくらいいつも通りのリアクションなんだけど、まあ僕も人の事言えない。
愛莉を車に乗せて目的の山に向かう。
ニーズヘッグの本拠地は表向きはリサイクル関係の工場。内部は武装組織の活動拠点。
車は近くの公園に皆止めて集合する。
黒いワゴン車がたくさん止まってる。
そりゃそうだろうね、
4人編成の小隊×8人を乗せてきているんだから。それに準備機材等を乗せた車。
小隊は晴斗と新條さんを連れて。工場の裏側に回る。
僕たちは工場を見下ろせる崖の上に陣取り、暗視スコープで相手の状況を確認する。
誠とアルファ小隊は通信機器をセットする。

「こちらアルファ1各小隊とデータ・リンクを開始する」

誠のノートPCにもアルファ2……空を悠々と飛ぶプレデターから送られる情報やらがリンクされる。そのほかにも各兵隊につけられた生体センサーや熱感知センサーなどの情報が全部網羅されている。
それは各小隊のリーダーが持つタブレットにもリンクしてある。
23:50分。

皆が時計合わせを始める。
時計を合わせると大型ライフルを匍匐して構える石原君。

「望どう?」
「視界良好。遮蔽物クリア」

「こちらブラボーチーム配置完了」
「同じくチャーリーチーム配置完了」
「デルタチーム配置完了」

今回のチームはアルファからホテルまである。
アルファは指揮管制、索敵等。ブラボー、チャーリー、デルタは実行部隊。エコーからホテルまでは護衛任務に就いている。

「時刻23:50分アルファ3行動を開始してくれ」

作戦は始まった。
長い夜が始まる。

(2)

「ですからこんな時間に押しかけられても困るんですけどね」

私は警備員と押し問答をしていた。

「こっちも明日付で捜査令状が出てる。日付が変わり次第踏み込む準備が出来てるのだが……」
「ですから明日の朝にしてください。担当の者もいないのに困ります!」
「うむ、わかった……。ただし人の出入りはチェックさせてもらうぞ」
「こんな夜中に人が出入りするとは思えませんけどね。うちは単なるリサイクル工場ですよ」
「……こっちの好きにさせてもらう」

私はそう言ってその場から離れる。

「警視!いいのですか!?やっとこぎつけた捜査令状ですよ!?」
「構わん、だが、いつでも入れるスタンバイはしておけ。ただし私の指示があるまでは絶対に動くな」
「……何かウラとれてるんですか?」

若い刑事はなおも食い下がる。
私も若いときはこうがむしゃらだったな。
いつの間にかのんびりした性格になってしまった。
そうはいえ、いつもは武闘派の組織や暴力団を相手にしてる。
しかし今回の相手はギャング。部下の命の方が最優先だ。
若い未来のある刑事を殉職させるわけにはいかない。
時計を見る。
そろそろ時間か?

「当初の予定通り持ち場に着け。何があっても予定通り行動しろ」
「何があるっていうんです」
「見ればわかる」

若い刑事は渋々従う。
無理もないな。
これから起こることを説明するわけにもいかない。
部下がいなくなったのを確認するとヘッドセットにそっと言った。

「こちらアルファ3予定取り持ち場に着いた」
「こちらアルファ1了解」
「パパさんお疲れ様~」
「気をつけなさい、そこも安全とは言えない」
「わかった~」

可愛い愛娘がこんな危険な状態にさらされているのに不思議と落ちつく。
片桐冬夜。
昔の相棒の息子。
良い子に育ってくれた。しかも娘のお気に入りと来ている。
こんなにうれしい事は無い。
感慨にふけっていると。爆発音がなった。
現場は騒然とする。

「踏み込みましょう!」
「だめだ、まだ危険だ。収まってから踏み込む。それまでは出入りの監視だけきっちりしろ!」
「これも『予定』のうちなんですね?」

私は無言でうなずく。
持ち場で指揮を執る刑事。
勇ましいな。
勇ましいのは彼らも同じか……。
次々と車両爆発する様を見ていた。

(3)

時計が0:00を指すと同時に爆発音が鳴り響く。
茂みに潜んでいると、敵の兵隊が次々と騒ぎの元へ駆けつける。
爆発はその後も数回続いた。
チャーリーのリーダーが、時計を見る。

「定刻だ。行動を開始する」

そう言うと金網を切り取る兵。
人一人分の穴が開くとそこから侵入をする。

「では各員行動を始めてくれ。0:40分にはもどってくるように」

リーダーがそう言うと各自散開する。

「こっちです」

チャーリー3が誘導する。

「ついてこい晴斗君」

新條さんが次いで行く。
俺は最後をついて行く。
ドアの前に着くとチャーリー3がアルファ1に指示を出す。

「こちらチャーリー3ポイントAに到着」
「了解、3秒待て」

返答が帰ってくると3秒でセキュリティのランプが赤から緑に替わった。

工場の中に潜入する。

新條さんが指示する通りに何かを壁に貼り付けていく。
そして、問題のサーバールームに辿り着いた。

見張りは2名いる。
新條さんとチャーリー3がそれぞれ仕留める。

「サーバールームのセキュリティ解除頼む」
「了解」

さっきと同じように3秒で鍵は解除された。

「先に行きます」

チャーリー3が中に侵入するとパスパスと音が鳴る。

「サーバールームクリア。入っていいですよ」
「サーバールームクリア了解。晴斗例の物を」

俺はPCのUSB差込口に誠先輩に頼まれたものを差し込んだ。

「よくやった。後は任務を遂行して戻って来い」
「了解っす」

20か所ほど粘土のようなものを張り付けると出口に兵が待ち構えていた。
とっさに物陰に隠れる。

「俺が出たら10秒後に出口に向かってください。3,2,1……エンゲージ!」

チャーリー3は飛び出すと容赦なく相手の腕と足を狙う。

兵隊の持っているアラルトライフルは3点バースト。
正確に相手の部位を撃ちぬく。
その後に突進した新條さんが手刀で相手の延髄を打つ。
そうして出口に脱出すると。他のチームと合流する。

「あと10分だ!急いで撤収するぞ」

皆急いでその場を後にする。
まだ解体すんでないっすよ。何しに来たんだろう?

懸命に崖をよじ登る。
陣営に着くと春奈が、お疲れさまとタオルと飲み物を用意してくれた。

「こちらアルファ1。時間だ。取り残された者はいないか?」
「こちらブラボーチーム全員いる」
「こちらチャーリー。全員いる」
「こちらデルタ。同様だ」
「了解。目的通り実行する」

アルファ1は誠先輩を見る。誠先輩は親指を立てる。

「それでは……起爆!」

へ?

スイッチを押すと建物全体が爆発に巻き込まれ吹き飛ぶ。
その爆風は崖上のここまで届いた。

「これが解体っすか?」

俺が言うと晶先輩が言った。

「その通りよ」

晶先輩はにやりと笑っている。
炎上する工場を見て呆けている俺。

「何をぼーっとしている。撤収するぞ!」

新條さんに言われて慌てて逃げ出す俺。
やっぱ先輩たちかっけーっす!

(4)

「こちらアルファ3予定取り持ち場に着いた」

愛莉パパの声がする。

晶さんが僕を見る。
僕は誠を見る。
準備は出来てるとサインを出す。
僕は晶さんに指示を出す。

「予定通り行動開始」

恵美さんが石原君に指示を出す。
石原君が準備する。
0:00分。
ぴったりに石原君の射撃が一台のパッカー者を狙い撃つ。
どこを狙おうが関係ない。
車に当りさせすれば、劣化ウラン弾は変形エネルギーで微粉末化され空中で直ちに酸素と結合して激しく燃焼して周囲に拡散する。
って劣化ウラン弾とか手軽に撃っていいの!?
石原君が表にとめてある車両を何台か爆発させると兵が表に出てくる。
作戦は次の段階に入る。
侵入。
表に気を取られてる隙を突いて、裏口から侵入する。
裏口のセキュリティは誠がハッキングして解除していく。

「ところで晴斗に持たせたあれはなんだ?」

僕は誠に聞いていた。

「相手のシステムの位置はインターネットとは物理的に遮断されてある。ハッキングは容易にできない。ならば人間トロイの木馬作戦パート2だ」
「晴斗に何を渡したの?」

白鳥さんも興味があるようだ。

「Wi-Fiのルーターって言えば分かるかな?PCに取り付けたら自動的にWi-Fiの発信機になるやつ物理的に強制的にネットに接続されるわけ」

誠が説明してる間に晴斗がサーバールームに着いたようだ。
誠がセキュリティを解除する。
内部を鎮圧してすぐに晴斗が任務を遂行する。

「よし!これでつながった!」

誠はすぐに作業にかかる。
時間は残り20分ちょい。
それで十分のようだ。

プラスチック爆弾をセットし終えた班が戻ってくる。
全員の撤収を確認すると誠を見る。

「捕獲完了」

誠が言うと恵美さんにサインを送る。
恵美さんは起爆スイッチを押す。
派手に粉塵を巻き地らし、爆風はここまで届いた。
中にガスボンベとかもあったんだろう。業火が舞い上がる。
それを確認すると合図をおくる。
皆撤収の作業に移る。
僕達も車に急いで乗り込む。

「アルファ1よりアルファ3へ任務は遂行した」
「アルファ3了解。これより任務へ移る」

僕達の作戦は遂行出来た。

(4)

「アルファ1よりアルファ3へ任務は遂行した」

その報告を受けると私は部下に突入の合図を出した。
日付は変わっている、令状の効果は出ている。
それにこの爆発、踏み込むには十分の材料だ。

「防弾チョッキ拳銃ヘルメット着用!防弾盾用意!踏み込むぞ!」

入り口を強引にこじ開けて中に踏み込む捜査員。
もちろん消防隊も準備していた。
タッカー車はもちろんだが、輸送車、爆発の温度で弾け飛ぶ弾丸。
耐熱性、耐爆性のある部屋からは銃火器がみつかる。

「銃砲刀剣類所持等取締法の現行犯で逮捕する」

けが人もいたが、全員逮捕した。

2時間もすれば火災は消し止められ、現場検証が行われようとしたが、案の定上から圧力がかかり操作は中止された。
圧力のかけた人物の特定、そしてその場にいたニーズヘッグの兵隊は現行犯だったのでしょっ引く事が出来た。
後は圧力をかけた人物の素性を洗い出すだけ。

「これを仕掛けた組織は放置しておくのですか?」

若手刑事は食い下がる。

「上からの指示だ。捜査はここまでだ?」
「警視はこうなることを見越してた?」
「タレこみがあった。今日爆発がおこるとな」
「それが犯人なのでは?」
「……明日の朝には公式見解では『処理場にたまっていた。燃焼ガスの誘爆』そうされているだろう。誰かが近くでタバコでも吸ったんだろう」
「しかし、そんな規模の爆発ではなかった!」
「新人、出世したければ大人しくしたがっとけ。俺のようになりたくなければな……」
「……俺は警視の若い頃を知っている。巨悪を暴いて成敗したいです!」
「……今でも変わってないよ。巨悪を暴いてみせる」
「なら!」
「上には上の都合があるのさ。私達のやれる事はその圧力の下でいかに捜査を進めるか、だ」
「……わかりました」

新人刑事は踵を返すと陣頭指揮を執る。
こういう情熱にあふれた新人刑事は珍しい。
ならばこういう刑事こそ俺は守ってやりたい。
卑劣な圧力から守ってやりたい。
だがこういう奴ほど無茶をする。
それを押さえてやらねば。
将来有望な刑事を一人でも守るためにも。

(5)

「作戦成功を祝って乾杯!」

渡辺班は作戦の成功を祝ってファミレスで打ち上げをしていた。

「晴斗お疲れ様」
「あざーっす。まじみんなかっけーっす。あんなシーン映画でしか見たことないっす」

心配しなくていいよ。僕も初めて見たから。
余りにも現実から離れた現実で思考がおいつかなかった。
そうじゃないのも若干名いるけど。

「今回の功労者は晴斗と誠と石原君だな!」

渡辺君がそう言う。

「ところでなんでトーヤは浮かない顔してるんだ?」

カンナが聞いてきた。

「いや、予定通り上手くいきすぎてやっぱりか……って思ってね」
「予定通り行ったならいいじゃねーか!しけた面すんな!」
「そうだぞとーや!今日はパーッと行こうぜ。ユニティの大勝利だ」

証拠隠蔽は警察が入ったことによって確実にされるだろう?
実態を知られて困るのは高橋グループだ。

「冬夜、まだ気になることがあるのか?」

渡辺君が聞いてきた。

「まあね……」
「冬夜の悪い癖だぞ!何でも一人で抱え込むの!この際だからみんなに言っちゃえよ」
「て、事は誠も知ってるのか?まさか前に言ってたことか?」
「まあな……」

カンナの質問に誠は答える。

「ああ、もう焦らすなよ!もったいぶらずに早く言え!」
「あのね、冬夜君は罠に嵌められたと思ってるの」

愛莉が説明する。


「確かにうかつだったな。エゴイストの事をすっかり忘れてた」
「誠、サーバーのデータにありつけたんだろ?どうだった?」
「ああ、今調査中だが冬夜の言うとおりエゴイストとのつながりは無かった。だけど思わぬ収穫にありつけそうだ」
「隠者のデータとかか?」
「ああ、そうだ……って何で知ってるんだよ!?」
「当たってたんだな?」

やはり僕の推理通りか。

「そのデータもあてにならない。僕の推理通りなら」
「どういう事だ?」
「偽物だよ。隠者の本当の正体は……」
「……それってまじか?」
「隠者の意味を考えたらそう考えるのが妥当だろ?」
「お前がそういうならそうなんだろうな?」

渡辺君は驚いている。

「あ、因みにエゴイストの個人情報は全てフェイクだった。だけど問題ない。例のサーバー内部でアクセスした奴は全員捕獲してある。そこから追跡していくよ」
「頼む」
「だけど残念だけどウォーロックのデータは……」
「ポープさえ押さえていればいいよ」
「ポープはばっちりだ。高橋グループのサーバーに情報が入っていた」

そうか……ポープは高橋グループの一人か。きっと重要人物だろうな?
ポープの意味を考えたらエゴイストでの恐らく最高権力者。
それだけが今のところの手がかりか。
しかし隠者の正体。
それがやはり気になっていた。
高橋グループと隠者。切っても切れない関係なんだろう。


「冬夜思いつめてたってしょうがないぜ!今日は皆で盛り上がろう。ニーズヘッグを壊滅させた!それだけで十分じゃないか!」
「……そうだね」
「はい、冬夜君。帰りは私が運転してあげるから」

愛莉はお猪口に冷酒を注ぐ
僕はそれを飲み干す。

「この時間だからつまみは軽いので自重しようね」
「わかった」
「すいません!フライドポテトと軟骨のから揚げと……」

渡辺君がおつまみを注文していく。
とりあえず今日の作戦は成功した。
次の手を考えなくちゃいけない。
でも今だけ勝利の美酒にひたろう。
そう思っていた。

(6)

「巨蛇はしっかり役目を果たしてくれたよ。しっかり時間を稼いでくれた。お蔭で新生も無事終わりそうだ」
「そうね」

しかし、こちらの主力を失った。
今後の活動に影響しないか。

「大丈夫、『うちの兵隊』も訓練されている。八頭竜によってね」
「だといいわね」

私達はレイトショーを見ていた。

「何か気に入らないことがあるのかい?」
「本体の実行部隊を囮に使って末端の実行部隊の強化?」
「言ったろ?汚点は全て切り捨てるって」

それってまさか。

「ニーズヘッグの存在は奴らも遅かれ感づくはず。なら早めに手札を切って捨てた方が良い。案の定奴らはエゴイストとの関係に固執して僕達から欺くことに成功したじゃないか」

それもそうか。

「随分と高い代償ね」
「安い代償さ。このくらい。僕達の真の目的達成の為なら」
「ハーミットが疑ってる」
「隠居させておけばいいさ。表に上がってくることは無い」
「だけど裏で暗躍してるものほど厄介なものはない」
「大丈夫、表向きは本体の付属品なんだから、僕達は」
「それもそうね」

私達は付属品、必要なくなったら容赦なく切り捨てられる。

「大丈夫、君を神のように殉職させたりしないよ」
「その言葉だけは信じてる」

信じざるを得ない。

「ありがとう。じゃ、僕は本来の職務に着くとするよ」
「活動の再開?」
「それと本来やるべきことだったユニティの壊滅に乗り出すよ」
「策はあるの?」

人質という手は通用しないわよ。

「僕達が負けた原因は油断だ、ならば逆も然りだろ?」
「そうね」
「本来ベストな方法は放置なんだけどね。先に手を出した方が負ける」

余程の優位に経たない限り後手が有利。今は彼らに優位性はある。

「僕の策が成功していれば彼らは絶対にエゴイストに届かない」

それなのに敢えて手を出すと?

「危険じゃなくて?」
「やられっぱなしじゃ癪だろ。お遊びのグループにやられっぱなしだなんて」
「手札は揃った?」
「ああ、十分時間を作れたよ。今度はこっちの反撃の番だ」

映画は終わった。
陳腐なサクセスストーリー。
だけどBGMだけは綺麗な映画。

「じゃ、そろそろ行こうか?」

劇場を出る。

「じゃ、また一週間後に連絡する」

彼はそう言って歩いて行った。
私はスマホで電話をかける

「どうしました?」
「すべての新聞社の記事をニーズヘッグの壊滅で固めなさい。精々派手にね」
「わかりました」

私に出来る事、エゴイストの防衛。
その為なら何でも利用するする。
たとえお爺様でも。

(7)

「おはよう、冬夜君。朝だよ~」
「あ、ああ。おはよう愛莉」

朝愛莉の声で目覚める。
昨夜の非日常が愛莉の一声で日常生活に戻る。

「早くジョギング行こう?今日も晴れだよ」
「そうだね、早く行こうか」

愛莉とジョギングに出かけてシャワーを浴びて朝食を取る。
父さんは朝からニュースを見ている。
どこのニュースも地元のリサイクル施設の爆発が取りざたされていた。
無理もないな。
それだけ派手にやったんだから。
だけどどこのニュースも爆発の原因について究明するだけにとどまった。
背後のニーズヘッグ、高橋グループについては語られないと思っていたら。

「冬夜、この記事を見なさい」

父さんが新聞紙を渡す。

地元のギャング壊滅。
見出しに大きく書かれていた。
その記事を読む。
愛莉パパが説明してくれた内容とは大きく異なる内容。
爆発の原因は抗争相手との衝突と書かれてある。
ユニティとの関係は書かれていない。
嘘の情報も混ざってある。
作為的な嘘を交えて錯落なる物語を策者は作り出す。
これは警察の発表ではない。
高橋グループが作り出した幻想だ。
なぜ情報を漏らした?
情報をもみ消すことは出来るはず。
それが想定の範囲だった。
ニーズヘッグに対抗する組織の存在をアピールしている。
ユニティのイメージダウンが目的か?
朝食を食べると、準備をして部屋に戻り一人考える。
もみ消してもカードはこちらが握っている。
ウォーロックの目論見はこちらのカードの無効化?
それどころか自分の手札に変えている。
いつでも警察の目をユニティに向けさせることは出来るぞ?と威嚇してるように見える。
近いうちにまた交渉するつもりか?

「冬夜君どうしたの?」

愛莉が戻ってきた。

「なんでもないよ。愛莉も早く着替えないと」
「え?」

へ?
ぼくなんかまずいこと言った。

「ぶ~。いつもなら抱き着いてくれるのに」
「あ、ごめん」
「また考え事してたでしょ。冬夜君のパパさんに言われた事」

何でもお見通しのようだ。

「うん、気味が悪いくらい呆気ないからついね」
「どうせエゴイストの仕業なんでしょ?私達とニーズヘッグが抗争をしていると見せかけて自分たちは無関係とアピールしたいだけなんじゃないの?」

愛莉のいう事が正論だろう。
誠は昨日言っていた「エゴイストとニーズヘッグを関連付けるものは何一つなかった」と。
しかしニーズヘッグと高橋グループのつながりは確かにあった。
それを公表されたらエゴイストもおのずと出てくるのではないか?
まさかそれすらもつながりを絶った?
エンペラーは高橋グループとはつながりが無い。
関りがあるのは恐らくポープだろう。
どういう関係にあるのか知らないけど。

「冬夜君ちょっとこのニュース見て!」

愛莉が騒いでる。テレビを見る。言葉を失った。

「高橋憲伸氏病で倒れる」

高橋グループが隠したかったのはこの事?
いや違う!?
そう直感していた。
しかしこれは手掛かりになる。
そう予感していた。
心配そうに見る愛莉の頭を撫でてやる。
高橋グループとエゴイストとニーズヘッグを結び付けるもの……それはきっと……。
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