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4thSEASON
太陽の海岸
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(1)
「冬夜君おはよう~」
「おはよう愛莉」
愛莉は僕に抱き着く。
「離して愛莉。今日は晴れなんだろ?ジョギング行かなくちゃ」
「うぅ……」
愛莉の言いたい事は何となくわかる。
「帰って食事済んだらいちゃつこうな」
「……うん♪」
ジョギングを済ませると、朝食をすませて支度をする。
愛莉が仕度をしてコーヒーを入れてる間に今日のBBQの機材を車に積み込む。
それは終わると部屋に戻る。
僕が愛莉の側に座れば愛莉は遠慮なく密着してくる。
「さっきいちゃつこうって言ったよ?」
「わかってるよ」
そう言って愛莉の頭を撫でてやる。
愛莉は嬉しそうに僕の膝の上に頭を乗せる。
「ずっとこうだといいのにな~」
「そうだな」
だが、人間時間と約束というものに縛られて生きている。
時間が来たら行動しないといけない。
コーヒーを飲み干すと化粧している愛莉に替わってキッチンにマグカップを持って行く。
綺麗に洗うと拭きとって水屋に直す。
そうすると愛莉がバッグを持って降りてきた。
「久々の休みなんだ。ゆっくりしてこい」
「わかってるよ」
「けど気をつけろよ、やつらはまだ……」
「うん、それもわかってる」
ニーズヘッグの壊滅から一週間。
エゴイストは相変わらず音沙汰がない。
誠はすぐにエゴイストの新しいサイトを見つけた。
「一般的な検索エンジンじゃ埒空かないから自分で検索システム作った」
簡単に言ってくれる誠。
お前サッカー選手駄目でも食っていけるんじゃないか?
誠の検索エンジンは立派な真っ黒なやつで、誠がばらまいたウィルスに感染したPCやスマホの検索履歴等からサイトを割り出していくというもの。
前にも言ったけどPCを変えたところでルーターがが一緒なら意味がない。
誠のウィルスはルーターのセキュリティも破って感染している。
まあ、色々言ったけど簡単に言うと誠はまたもハッキングした相手を踏み台にして新しいエゴイストのサイトを見つけ出し、あまつさえそのサーバーを乗っ取った。
サーバーのアドレスが分かればそこから先は恵美さんの出番。
個人情報の特定に当る。
あたらしくウィザードを雇ったらしい。
ただ、そのウィザードに問題があるらしく。いろんなところにハッキングしては預金残高を改ざんしたり極秘情報を盗み出したりやりたい放題やってるらしい。
その件については好きにさせておくことにした。必ず使いどころがあるだろうから。
誠のスキルはとどまることを知らない。
エシュロンに侵入しあまつさえ疑似的なエシュロンをネット限定で作り出している。
分かりやすく言うとネット上に飛び交っている情報はすべて誠の掌で踊っている事言う事。
そこまでいくと恵美さんの家のサーバーも増設せざるを得なくなった。
それでも引っかからないエゴイストの情報。
新しいウィザードのスキルは誠と同等らしくエシュロンからエゴイストの情報を削除して言ってるらしい。
そこまでして隠したい情報とは一体何なのか?
僕も興味があったけど何より誠は「隠せば隠すほど除きたくなるのが人間の性でな」とやっきになって追跡している。
本来の目的をわすれないでほしいけど。
集合場所のコンビニに着くと皆着ていた。
「じゃあ、海岸に行く前にスーパーで食料と飲み物調達するぞ!みんなテントとかはもってきたな」
別府組はスーパーで合流する予定だ。
別府に向かって車は進む。
スーパーに着くと晴斗と白鳥さん、檜山先輩に咲良さんが待っていた。
檜山先輩と咲良さんは分かるけど晴斗と白鳥さん?
「やっと彼女の部屋に泊めてもらえたっす。マジ感激っす!」
白鳥さんは恥ずかしそうに俯いていた。
食材と飲み物を買うと目的地の海岸までノンストップで行く。
海開きはすでに行われていた。
海岸に着くとまずみんな水着に着替える。
愛莉やカンナは上にパーカーを羽織っていたが。やはり目が行ってしまう。
晴斗はサーフボードを持ってきていた。
アウトドア系と言っていたなそう言えば。
晴斗達が遊んでいる間に火を起こしてテントの設営をする。
晴斗達も一通り遊ぶと昼ごはんにする。
昼ごはんを食べると夕方までそれぞれ自由行動。
誠もこの日ばかりはと遊びつくす。
僕は木陰で寝ていようと思うも愛莉がそれを許さずビーチバレーをして遊んでいた。
「冬夜君ゴムボートに乗りたい」といえばゴムボートに乗り遊ぶ。
そうして日中の時間を潰していた。
そして夕方ごろになるとBBQの準備を始める。
女性陣は飯盒でご飯を炊いておにぎりを作る。
肉とおにぎりはあっという間に食べつくしてしまった。
そして夜は花火と酒で楽しむ。
誠や晴斗、瑛大は打ち上げ花火の打ち合いをして遊ぶもそれぞれのパートナーに怒られる。
それぞれのパートナーと花火を楽しむ。
そして花火が終るとみんなで話をする。
この日だけはエゴイストの事は忘れよう。
皆でそう決めていた。
話は自然と晴斗達になる
「お前らも付き合い始めてもう3か月になるんだいい加減進展あったろ?」
「ま、まあ色々あったっす」
カンナが聞くと言葉を濁す晴斗。
「なにがあったんだよ。話せよ!隠すような事でもないだろ」
執拗な美嘉さんの追撃。
意外にも白鳥さんの口からその回答は出た。
「恋の終着点というものを……見てきました」
そう言って俯く白鳥さん。
「そう言う話を待っていたんだよ!いつ見たんだ?」
カンナが聞くと白鳥さんが淡々と説明する。
それは昨夜の話だった
(2)
明日の夜は杵築の海岸でやるらしい。
新人が遅刻するわけには行かない。そう言ったのは晴斗だ。
待ち合せは別府で待ち合わせ。
なら私の家に泊ればいい。
それを提案したのは私だった。
「い、いいんすか!?」
彼は最初戸惑っていた。
不思議に思った。
彼の家には何度も泊まっていたのに私の家には泊まりたがらない。
変な話だ。
「別に拉致するつもりも何も無いわよ」
「そ、それもそうっすね。わかったっす、春奈の家に泊めてもらうっす」
そう言って私の家にやってきた。
私は彼の為にカレーライスの練習をしていた。
そしてそれを振舞う時がきた。
不安。
彼は私の料理を美味しいと言ってくれるだろうか?
私の愛情というスパイスは彼に届くだろうか?
杞憂。
そんなの最初から分かり切ってた。
私の想いは確かに料理に込められていた。
彼に美味しいと言って欲しい。そんな願いを込めて作ったカレーライスに彼は応えてくれた。
「まじうめえ。おかわりしてもいいっすか?」
沢山作っておいたよ。どんどん食べて。
彼は全部ぺろりと平らげてしまった。
「もうお腹いっぱいっす、食えないっす」
彼はそう言ってキッチンに食器を運び洗おうとした。
私がやると言ったけど彼は「何でも彼女任せじゃわるいっす」と片付けてくれた。
片づけをしている間にシャワーを浴びてくると良いっすという。
そこで私は悩んだ。
誘惑。
今夜なら彼をその気にさせられるんじゃないか?
そんな予感がした。
彼にいつでもいいんだよ。そう思わせたい。
気温も暑いしちょうどいいかもしれない。
私はシャワーを浴びるとバスタオル一枚でリビングに出た。
彼は飲んでいたドリンクを吹きかけた。
「ちょ、どうしたんっすか?」
「似合わない?」
自信が特別あったわけじゃないけど、体形は悪い方じゃないと自負していた。
「いや、似合う似合わないじゃなくて……」
「早く晴斗もシャワー浴びてきて」
「了解っす」
彼のシャワーを待ってる間にテレビを見ながら女子会のグルを見ていた。
彼と二人きりになった時の行動を聞いていた。
「その気になったんだね?」
亜依さんが聞いてきた。
「はい」とだけ答えた。
「春奈さ、見た目もスタイルもいいんだから、直球で迫ってみなよ。晴斗だって男だから分かてくれるよ」
亜依さんが言う。
躊躇い。
彼の中にある物。
いつまでも私を子供扱いしている。
私だってもう大人だよ。
そう訴えたらいい。
亜依さんに色々聞いていた。
とりあえずシャワーを浴びてバスタオル一枚で待っている。
待つ場所が問題だと亜依さんは言った。
「どこで待てばいいの?」
「思い切ってベッドの中で待ってみなよ。彼の姿もちゃんとチェックしなよ」
「晴斗はお風呂上りいつもボクサーパンツ一枚でいるわ」
多分今夜もそう。
彼がシャワーを済ませてきた。
「そろそろ晴斗もどってくるから」
「はい、今夜はゆっくり楽しんでね」
スマホをしまうと彼をベッドの中で待っていた。
「あれ?春奈どこ行ったすか?」
晴斗はリビングを探し回っている。
「こっちの部屋だよ。入ってきて」
彼は私の部屋に入ってきた。
そして私を見て息をのむ。
私は彼の目に目で訴える。
晴斗は気づいてくれるだろうか?
気づいてくれた。
黙って私のベッドに入り込む晴斗。
私も黙って晴斗に抱き着く。
「……はじめてだから」
「わかってるっす」
彼は優しく私を包んでくれて。
そして……。
その晩の事は一生の思い出になるだろう。
一生の宝物にしよう。
彼の分厚い胸板の上に頭を乗せて眠りについた。
朝目を覚ますと晴斗がいない。
昨日の事は夢だった?
全て幻だった。
「晴斗!?」
私は晴斗を探していた。
晴斗はベランダに立っていた。
私の家は山の上にある。
だけどベランダからは海岸が良く見渡せる。
「服を着て出てくるといいっす」
私は服を着て晴斗の隣に立っていた。
「朝陽がまぶしいっすよ」
彼の言う通り東から照らす陽の光が眩しかった。
夜明けの光。
初めての夜を迎えた私達を祝福してるかのようだった。
「俺……昨夜は夢中になってて……春奈に変なことしなかったっすか?乱暴にしたりとか」
彼でも戸惑うことがあるんだね?
知ってたけど。
私は彼の腕に抱きついて彼の目を見て言う。
「夢のような夜だった。朝晴斗の姿が無いとき幻だったのかと思った。今でも夢のように思える。……現実だと実感させて」
ここまで言えば分かるでしょ。
晴斗は分かってくれた。
私を見ると、私の腰に腕を回し私を抱き寄せる。
そして……朝から熱い口づけを交わした。
「一生の思い出をありがとう、晴斗。あなたに会えてよかった」
「俺も春奈に出会えて嬉しいっす」
夜が明ける。そしてまた一日が始まる。
また夜が来る。でも彼が私を照らしてくれる。
怖くはない。
またいつか夜明けはくるのだから。
そうやって繰り返して人は生きていくのだろう。
未来。
夢。
希望……。
どこからきて、どこへ行く?
その答えが晴斗の中にあった。
(3)
「なるほどね、昨日ちゃんとしてくれたんだ」
亜依さんが言うと私は頷いた。
晴斗は戸惑っている。
「よかったね、白鳥さん」
遠坂さんがそう言ってくれる。
「まあ、二人も最後までやったことだし、これでこの問題は解決だな」
美嘉さんが言う。
問題だったのだろうか?
「いや、まあ終わりじゃねーだろ!」
神奈さんが言う。
恋の終着点はここじゃないの?
「春奈!大きな間違いをしてるぞ。恋愛に終わりなんてない。あるとしたら破局したときだ」
さすがにそれは見たくない。
「どこまでも続くんだよ。一生続いていく。二人で歩き続ける限りどこまでも。ゴールなんてものは無い」
遠坂さんが言う。
「愛莉の言う通りだね。結婚してもまだ問題だらけの日々は続くんだから」
亜依さんが言う。
結婚の先もあるのね。
羨望。
その先を見て見たい。
晴斗に視線を送る。
晴斗は私の視線に気がついたのか「任せておくっす!その先もきっちり春奈を守るっす」と言ってのける。
皆の冷やかしの声が聞こえる。
少し恥ずかしい。
え、他の男性陣はどうしてるかって?
何か話しこんでいるようだった。
その後は女性陣だけで盛り上がっていた。
私の話題で。
その話は男性陣には難しい話だったのだろうか?
誰も混ざってこなかった。
どんな話をしていたのかって?
皆の初めての経験談とかどんなシチュエーションが一番いい?とか。して欲しいときのタイミングとか。
男性陣にはそういうのがないんだろうか?
突然始まった女子会は深夜まで続いた。
終わる頃には男性は皆寝ていた。
「私達もそろそろ寝よっか?」
遠坂さんがそう言うと皆自分のテントに入る。
私もテントに入ると晴斗は起きていた。
「ごめんなさい。起こした?」
「いや、起きてたっすよ」
晴斗はそう返した。
「なにしてたの?」
「メッセージ見てたっす?」
「どんな?」
「男だけの秘密っす」
「そう」
あまりいろいろ詮索しても悪いよね。
「じゃあ、そろそろ寝ましょうか?」
「そうっすね」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
寝袋に包まれて眠りにはいる。
初めての経験。
密室の中にいるのに何もできないもどかしさ。
でもそれは未来への希望。
また彼と泊まる時にお願いしてみよう。
決して忘れることのできない心地よさを思い出しながら私は眠りについた。
(4)
「あっけない最期だったね」
映画を見た後彼と昼食を食べていた。
笑い事ではない、ニーズヘッグを潰した後次の標的は我々だ。
次の手札はあるのか?持ち札はあるのか?有効打を打てるのか?
私は考えていた。ニーズヘッグを潰すほどの戦力。
正攻法でやっていたのでは通用しない。
とはいえ彼等の弱点もみつからない。
彼等はまだ奥の手を隠し持ってる。
その事は確認済み。
「発想を変えなよ麗しき君」
彼は突然言った。
「その名で呼ぶなと言ったはずだが?」
お前が言っても揶揄ってるようにしか聞こえない。
「君の事は最重要人物だと思っている。御前よりもね」
「どういう意味?」
「僕の考えはこうだ。頭を潰されても奥の手を残した方が勝ちだと思っている」
「言ってる意味がわからない」
彼は私に顔を寄せて言った。
「……」
「そんな事を考えていたのか!?」
彼はにこりと笑う。
「だって彼等には切札がある。切札を押さえられている以上足かせにしかならない」
「何を企んでいる?我々の目的は」
「御前の後継」
「分かっているなら……」
「だけどそれが使い物にならないなら継承してもしょうがないだろ?」
「お前の目的はなんだ?」
「力の継承」
それでか。
「バレたら粛正されるのは私達だぞ?」
「だからユニティに活躍してもらうのさ」
「漁夫の利を得ようというのね?」
彼はにこりと笑って頷いた。
「大丈夫、表向きは本体の末端に過ぎない事はアピールするさ。目立たない程度にね」
彼の考えていることは分からない。だが彼の言っていることは現状を冷静に把握している。それが可能なのかはわからないけど、彼の中では筋書きはできているのだろう。
「大丈夫僕にとって最優先は御前じゃない。麗しき君だよ」
「誰が聞いているか分からない、思っていても二度と言うな」
「そうだね、僕達の情報はユニティにも漏れてる。どこで何をしゃべっても筒抜けと思ってもおかしくないだろう」
ユニティにわざと情報を与えてる?
「そう思わせた方が彼らも迂闊に手を出せないよ」
「……早速ユニティは私達のサーバーを突き止めた」
「そうだね、このまま黙っていても彼らのやりたいようにやらせるだけだね」
どうやって止める?
「もうしばらく待とう。勢いはユニティにある。彼等の持ち札全部使い切らせないと」
「こちらの手札を見られていたらどうしようもない」
「さすが、わかっているじゃないか!」
彼は笑う。
その余裕どこからくる?
根拠は何?
「……一つヒントをあげよう」
「なに?」
「隠者が倒れた」
「それは知っている」
「その事の大々的に流すことで本体は難を逃れた」
それは結果論に過ぎない。
「御前もその事を知っている。問題は隠者の入院先だ」
「……まさか?」
「運命の悪戯って怖いよね」
「放っておくつもりか?」
「こちらから手札を開く真似はしたくない」
「隠者も切って捨てるという意味か?」
「そんな物騒な真似はしないよ。言ったろ?流れは今ユニティにあると。だから流れが変わるまでひたすら待つ。それだけさ」
「こっちがなにもしてこなかったらユニティは手が出せない」
そう言いたいのか?
「分かってるじゃないか。現に彼らは僕達に直接攻撃をしかけてこない」
確かにそうだ。調べはするけど手は出してこない。手が出せない?
「ようやく理解できた?」
私はだまってうなずいた。
いくら、webサイトで暴露されようと真相は勝手に本体が闇に葬ってくれる。
新聞社や出版社にリークしたところでもみ消されるのが関の山だ。
「ユニティは君が思ってるよりでかいよ。でも限度がある。その限度を確かめるまでは何もしない」
「分かった」
「大丈夫、麗しき君を傷つけるような真似はぜったいさせない」
「ああ、今日はこのくらいで良いか?」
「そうだね、デートをダラダラ続けていても仕方ない。去り際をわきまえないとね」
「毎週デートというのも少々退屈だな」
「場所を変えるかい?」
「良い場所があるのか?」
「そうだね、遊園地でもいいし。君のうちでホームシアターも悪くない」
冗談で言ってるのか本気で言ってるのか本当にわからない。
「また前日に連絡する」
「わかった、こっちも進捗があったら連絡するよ」
そう言って私達は別れた。
私は電話をする。
「この後の予定を変更する。行き先は……」
運命の悪戯というのは本当にあるんだな。
(5)
「具合はどうだ?」
目の前に現れたその「お方」は儂に向かってそう言った。
「良いとはいえませんな」
脳腫瘍。開頭術を必要とする。執刀する医師は不明。受け入れ先の病院はここしかない。死刑宣告に近い内容だった。
「そうか……儂は死んだことになるわけだな」
「私の希望を聞いてもらえませんか?」
「聞くだけなら聞いてやろう」
「最後は自分として死にたい」
「……だめだ」
やはりな。
「お前は儂として死んでいけ」
惨めな死に方だ。
自分として死ぬことすら許されない。
それが隠者の務め。
私は未来に絶望した。
コンコン。
誰かがノックする。
「誰だ?」
儂が尋ねると聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。
「奈留です。入ってもよろしいでしょうか?」
「入りなさい」
ドアが開くとまだ中学生くらいの可愛らしい女の子が入ってきた。
黒髪を肩まで伸ばし目は凛としていて鼻筋が通っていて色白の好き通った肌をしている。
水色のワンピースを着て少女は花束を持ってやってきた。
「お加減は如何ですか?」
透き通るような少女の声は老いぼれた儂を癒してくれる。
「お前のお蔭で少し楽になったよ。可愛い孫娘よ」
「そう言って頂けると来た甲斐があります」
「奈留ちゃん久しぶりだね」
あのお方が奈留に挨拶すると奈留はあのお方にむかって一礼した。
「じゃ、私はここら辺で失礼するかね?二人でゆっくりしているといい」
そう言ってあのお方は退室した。
奈留は儂のベッドのそばにある椅子に座る。
「お父様は元気ですか?」
「ああ、あいつも元気にやっとるよ。忙しいようだがの」
「……ニュースは存じてます」
「……お前は手を出すなよ」
「わかりました」
さっきまでの和やかなムードは一変し張り詰めた空気になる。
「ウォーロックとさっきまで会っていました。やはり静観する意志のようです」
「正しい判断だな。下手に藪をつつくこともあるまい」
「私もそう判断しました。が、このまま看過していて本当によろしいのでしょうか?」
「流れは向こうにある。下手に逆らうより柳に風と受け流した方が良い」
「本当に彼と同じ判断をするんですね」
「お前とウォーロックの関係はどうなんだ?」
「単なるパートナーに過ぎません」
「御前はそうは考えておらんぞ?」
「ご意向に従います」
「神はまだ相手の手札にある。慎重に行け」
「わかりました」
「もういきなさい、尾行はついているのじゃろう?」
「はい」
奈留は一礼すると退室した。
高橋グループの存亡、儂の後継、そしてエゴイストの未来。
全てをあの子は背負っている。
当然息子は面白くないだろう。
何か企んでいるに違いない。
それまでこの身が持つかどうか?
あの子を残して逝くのは自然の理。
だが、もう幾許か時間が欲しい。
そう願っていた。
(6)
翌日目を覚ますとご飯の準備を女性陣がする。
準備が出来るとそれぞれのパートナーを起こす。
ご飯を食べ終えると女性陣は片付け、男性陣はテントの片づけを始める。
片づけを終え車に荷物を積むと、渡辺君が言う。
「お疲れ様でした。皆気をつけて帰ってくれ」
私と冬夜君は別府の銭湯にむかった。
皆同じ考えだったらしくて、皆で銭湯を楽しんだ。
銭湯を出ると男性陣は先に出ていた。
「じゃ、みんなまたね~」
そう言うと各々車に乗って帰りだした。
当然の様に冬夜君が一番最後になった。
でも冬夜君のそのマイペース私は好きだよ。
別府湾を眺めながらゆっくりと進む。
途中ビーチがあるんだけど冬夜君は信号待ちの間じっとビーチの方を見ている。
「どうかしたの?」
「いや、地元のビーチって県外のビーチと違って水着のお姉さんていないよね?」
ぽかっ
「私じゃ駄目なの?」
「いや、なんとなく思いついてさ」
思いつかなくていいから!
「ねえ、冬夜君?」
「どうした?」
「もうキャンプ終わりだよね?」
「家に帰りつくまでが遠足ってノリは要らないだろ?」
「じゃあ、聞くね。どう思う?高橋憲伸の突然の病」
「……ただの偶然だろ?」
私の前ではそう言ってるだけじゃないの?
「まあ、タイミング良すぎたね。こっちの反撃の機を逸してしまった」
「やっぱりそう考えてるんだ?」
「でも良かったのかもしれない」
へ?
「まだ高橋グループには隠されてる秘密がたくさんある気がするんだ。それを解明してからでも遅くは無いよ。焦るとエゴイストの二の舞になる」
「そうだね……」
なにか話題変えた方がいいかな?
「いよいよだね」
「何が?」
「ユニバーシアード」
「ああ、そうだね」
そうだねって他人事みたいに言わないでよ。
「冬夜君の未来を決める戦いだよ」
「その前に期末試験って難関があるよ。ニーズヘッグの件で全然勉強してないだろ?」
「冬夜君の勉強のスケジュールは私がちゃんと管理してるから大丈夫だもん」
「ありがとう」
「がんばってね、バスケ」
「愛莉がそう言ってくれたら負ける気がしないな」
えへへ~。
「あ、思い出した。帰ったら渡すものがある」
「な~に?」
「帰ってからのお楽しみ」
なんだろう?
家に帰るとキャンプ道具は倉庫に片づけて荷物を持って家に帰る。
「おかえり。何もなかった」
「うん、なかったけど」
「そうかいよかった……」
「何かあったの?」
冬夜君が麻耶さんに聞くと一枚の封書を渡された。あて名はない。
冬夜君は中身を見る。
ようやく尻尾を掴んだ。
冬夜君はそれを見ると、分かったと言って麻耶さんに返す。
冬夜君は部屋に帰るとメッセージを打っている。
それが手紙の内容だと私のスマホを見て分かった。
恵美から返事が来る。
「ごめんなさい、私の部下がミスったわ!今テレビ観れる?」
冬夜君はテレビをつける。
「こちらの河原で複数人に殴られ倒れているという情報が警察に通報されかけつけたところ……」
私は声を失った。
「なお倒れている男の身元は不明で……」
冬夜君はテレビを消す。
「高橋グループ探ってた?」
「ええ……」
「わかった、恵美さんの失態じゃない。気にしなくていいよ」
「そうだ、恵美汚名返上とか言って無茶はやめろよ」
「大丈夫、これからどう動けばいい?」
恵美が聞いている。
「晶さんはこっちの手札の警備。恵美さんはエゴイストの身元を洗って。多分高橋グループにつながってるはずだから」
「わかったわ。警備は任せて」
「わかった。サーバーの警備も強化するわ」
「サーバーは誠に任せておけばいいよ」
「おう!任せておけ」
「皆無理しちゃいけないよ。大丈夫切札はとってあるんだ。無理に高橋グループに手を出さなくていい。誠流に言うと捕獲済みなんだから」
「安心しちゃいけないよ?」
知らない人が入ってきた。
「誰だお前!?」
誠君が言っている。誠君の知らない人なんだ。
「名前くらい見てよ。分かるでしょ?」
名前はwarlockと書かれてあった。……ウォーロック!?
「どうやって入ってきたんだ!?」
「君が多田誠君?凄腕のハッカーだって聞いたけど、僕だってハッカーの端くれだよ。このくらい造作もないさ」
「馬鹿な!?ちゃんとグループ自体に壁は作ってあったはずだ!?」
「バックドアくらい作っとくよ。どうやって作ったのかは言わなくてもわかるよね?」
「……穂乃果さんのアカウントから侵入した?」
「君が片桐冬夜君?君の活躍は聞いてるよ。うちのグループが翻弄されっぱなしだとか」
「用件は何?」
「直接会って交渉したい」
冬夜君は考えている……。
「取引の材料は?」
「高橋グループの秘密なんてどうかな?知りたいことあるんでしょ?」
「君の要求は?」
「特にないよ?」
「それ交渉する必要あるの?」
「君たちに有利な条件だ試す価値はあると思うけど」
「僕達が欲しいのはエゴイストの情報だ。ごめんね」
冬夜君は交渉に応じないつもりらしい。
「君やっぱり優秀だね。うちに欲しいくらいだよ」
「犯罪に加担する気はないね」
「誠君のやってる事は犯罪じゃないのかい?」
「脅し?」
「どうとってもらっても構わない」
冬夜君は再び考えている。
「……わかった。交渉する場所は?」
「この前の青い鳥って店で。明日空いてる?」
「昼からでいいなら」
「よかった、僕も学校行ってる身だからね。君たちならとっくに分かってるんだろうけど」
「じゃ、そういうことで。言っとくけどこのアカウント追跡しても無駄だよ。捨て垢だから。バックホールくらいは直しておきなよ」
warlockは退室しました。と表示された。
冬夜君大丈夫なの?
同じことを皆考えてたみたいで。
「冬夜、勝算はあるのか。そもそもこの交渉に意味があるのか?」
「誠を警察に引き渡すわけにもいかないだろ?」
「それはそうだが……」
渡辺君は悩んでいるようだ。
「いつの間にこんなところにバックドアを!?俺としたことが……!」
「誠この際だからサーバー一度見直した方が良い」
「分かってる!今やってる!!」
「ところで冬夜」
渡辺君が聞いていた。
「お前、向こうの取引材料心当たりあるんじゃないのか?」
え?
「まあね……見当はついてる。多分『隠者』の正体だ」
「そんな交渉乗る価値あるのか?」
「もやもやが取れてすっきりするだけかな?」
「冬夜、面目ない。俺を交渉材料にされるとは……」
「人間ミスはあるさ。気にするな」
冬夜君は誠君を責めない。
私は冬夜君の顔を見る。
あれ?
全然ショックを受けた様子が無い。寧ろ余裕すら感じる。どうしてだろう?
私の視線に気づいた冬夜君は私を抱きしめる。
「昼間っからはダメ?」
ほえ?
「さすがに親が部屋に入ってきちゃうかな」
私の思考がフリーズした。再起動に時間がかかる。そして意味を理解する
ぽかっ
「それどころじゃないでしょ?」
「愛莉が寂しそうだったから」
「うぅ……」
「どうする?」
「……前に約束したもんね」
「え?」
「好きな時にしてもいいんだよって」
「ああ……」
「でもお家だと昼間からだと気使っちゃうしホテル行こ?」
丁度出かけた格好のままだし。
「そうだね」
そうして私達はまた出かける。
冬夜君は大丈夫だって言ってた。
心配する事なんかない。
だけど、何か引っかかることがあった。
隠者の正体って冬夜君知ってるんじゃないの?なのに今さら聞くの?
その答えを聞いてみたけど冬夜君は「さあね?」と笑っていた。
「冬夜君おはよう~」
「おはよう愛莉」
愛莉は僕に抱き着く。
「離して愛莉。今日は晴れなんだろ?ジョギング行かなくちゃ」
「うぅ……」
愛莉の言いたい事は何となくわかる。
「帰って食事済んだらいちゃつこうな」
「……うん♪」
ジョギングを済ませると、朝食をすませて支度をする。
愛莉が仕度をしてコーヒーを入れてる間に今日のBBQの機材を車に積み込む。
それは終わると部屋に戻る。
僕が愛莉の側に座れば愛莉は遠慮なく密着してくる。
「さっきいちゃつこうって言ったよ?」
「わかってるよ」
そう言って愛莉の頭を撫でてやる。
愛莉は嬉しそうに僕の膝の上に頭を乗せる。
「ずっとこうだといいのにな~」
「そうだな」
だが、人間時間と約束というものに縛られて生きている。
時間が来たら行動しないといけない。
コーヒーを飲み干すと化粧している愛莉に替わってキッチンにマグカップを持って行く。
綺麗に洗うと拭きとって水屋に直す。
そうすると愛莉がバッグを持って降りてきた。
「久々の休みなんだ。ゆっくりしてこい」
「わかってるよ」
「けど気をつけろよ、やつらはまだ……」
「うん、それもわかってる」
ニーズヘッグの壊滅から一週間。
エゴイストは相変わらず音沙汰がない。
誠はすぐにエゴイストの新しいサイトを見つけた。
「一般的な検索エンジンじゃ埒空かないから自分で検索システム作った」
簡単に言ってくれる誠。
お前サッカー選手駄目でも食っていけるんじゃないか?
誠の検索エンジンは立派な真っ黒なやつで、誠がばらまいたウィルスに感染したPCやスマホの検索履歴等からサイトを割り出していくというもの。
前にも言ったけどPCを変えたところでルーターがが一緒なら意味がない。
誠のウィルスはルーターのセキュリティも破って感染している。
まあ、色々言ったけど簡単に言うと誠はまたもハッキングした相手を踏み台にして新しいエゴイストのサイトを見つけ出し、あまつさえそのサーバーを乗っ取った。
サーバーのアドレスが分かればそこから先は恵美さんの出番。
個人情報の特定に当る。
あたらしくウィザードを雇ったらしい。
ただ、そのウィザードに問題があるらしく。いろんなところにハッキングしては預金残高を改ざんしたり極秘情報を盗み出したりやりたい放題やってるらしい。
その件については好きにさせておくことにした。必ず使いどころがあるだろうから。
誠のスキルはとどまることを知らない。
エシュロンに侵入しあまつさえ疑似的なエシュロンをネット限定で作り出している。
分かりやすく言うとネット上に飛び交っている情報はすべて誠の掌で踊っている事言う事。
そこまでいくと恵美さんの家のサーバーも増設せざるを得なくなった。
それでも引っかからないエゴイストの情報。
新しいウィザードのスキルは誠と同等らしくエシュロンからエゴイストの情報を削除して言ってるらしい。
そこまでして隠したい情報とは一体何なのか?
僕も興味があったけど何より誠は「隠せば隠すほど除きたくなるのが人間の性でな」とやっきになって追跡している。
本来の目的をわすれないでほしいけど。
集合場所のコンビニに着くと皆着ていた。
「じゃあ、海岸に行く前にスーパーで食料と飲み物調達するぞ!みんなテントとかはもってきたな」
別府組はスーパーで合流する予定だ。
別府に向かって車は進む。
スーパーに着くと晴斗と白鳥さん、檜山先輩に咲良さんが待っていた。
檜山先輩と咲良さんは分かるけど晴斗と白鳥さん?
「やっと彼女の部屋に泊めてもらえたっす。マジ感激っす!」
白鳥さんは恥ずかしそうに俯いていた。
食材と飲み物を買うと目的地の海岸までノンストップで行く。
海開きはすでに行われていた。
海岸に着くとまずみんな水着に着替える。
愛莉やカンナは上にパーカーを羽織っていたが。やはり目が行ってしまう。
晴斗はサーフボードを持ってきていた。
アウトドア系と言っていたなそう言えば。
晴斗達が遊んでいる間に火を起こしてテントの設営をする。
晴斗達も一通り遊ぶと昼ごはんにする。
昼ごはんを食べると夕方までそれぞれ自由行動。
誠もこの日ばかりはと遊びつくす。
僕は木陰で寝ていようと思うも愛莉がそれを許さずビーチバレーをして遊んでいた。
「冬夜君ゴムボートに乗りたい」といえばゴムボートに乗り遊ぶ。
そうして日中の時間を潰していた。
そして夕方ごろになるとBBQの準備を始める。
女性陣は飯盒でご飯を炊いておにぎりを作る。
肉とおにぎりはあっという間に食べつくしてしまった。
そして夜は花火と酒で楽しむ。
誠や晴斗、瑛大は打ち上げ花火の打ち合いをして遊ぶもそれぞれのパートナーに怒られる。
それぞれのパートナーと花火を楽しむ。
そして花火が終るとみんなで話をする。
この日だけはエゴイストの事は忘れよう。
皆でそう決めていた。
話は自然と晴斗達になる
「お前らも付き合い始めてもう3か月になるんだいい加減進展あったろ?」
「ま、まあ色々あったっす」
カンナが聞くと言葉を濁す晴斗。
「なにがあったんだよ。話せよ!隠すような事でもないだろ」
執拗な美嘉さんの追撃。
意外にも白鳥さんの口からその回答は出た。
「恋の終着点というものを……見てきました」
そう言って俯く白鳥さん。
「そう言う話を待っていたんだよ!いつ見たんだ?」
カンナが聞くと白鳥さんが淡々と説明する。
それは昨夜の話だった
(2)
明日の夜は杵築の海岸でやるらしい。
新人が遅刻するわけには行かない。そう言ったのは晴斗だ。
待ち合せは別府で待ち合わせ。
なら私の家に泊ればいい。
それを提案したのは私だった。
「い、いいんすか!?」
彼は最初戸惑っていた。
不思議に思った。
彼の家には何度も泊まっていたのに私の家には泊まりたがらない。
変な話だ。
「別に拉致するつもりも何も無いわよ」
「そ、それもそうっすね。わかったっす、春奈の家に泊めてもらうっす」
そう言って私の家にやってきた。
私は彼の為にカレーライスの練習をしていた。
そしてそれを振舞う時がきた。
不安。
彼は私の料理を美味しいと言ってくれるだろうか?
私の愛情というスパイスは彼に届くだろうか?
杞憂。
そんなの最初から分かり切ってた。
私の想いは確かに料理に込められていた。
彼に美味しいと言って欲しい。そんな願いを込めて作ったカレーライスに彼は応えてくれた。
「まじうめえ。おかわりしてもいいっすか?」
沢山作っておいたよ。どんどん食べて。
彼は全部ぺろりと平らげてしまった。
「もうお腹いっぱいっす、食えないっす」
彼はそう言ってキッチンに食器を運び洗おうとした。
私がやると言ったけど彼は「何でも彼女任せじゃわるいっす」と片付けてくれた。
片づけをしている間にシャワーを浴びてくると良いっすという。
そこで私は悩んだ。
誘惑。
今夜なら彼をその気にさせられるんじゃないか?
そんな予感がした。
彼にいつでもいいんだよ。そう思わせたい。
気温も暑いしちょうどいいかもしれない。
私はシャワーを浴びるとバスタオル一枚でリビングに出た。
彼は飲んでいたドリンクを吹きかけた。
「ちょ、どうしたんっすか?」
「似合わない?」
自信が特別あったわけじゃないけど、体形は悪い方じゃないと自負していた。
「いや、似合う似合わないじゃなくて……」
「早く晴斗もシャワー浴びてきて」
「了解っす」
彼のシャワーを待ってる間にテレビを見ながら女子会のグルを見ていた。
彼と二人きりになった時の行動を聞いていた。
「その気になったんだね?」
亜依さんが聞いてきた。
「はい」とだけ答えた。
「春奈さ、見た目もスタイルもいいんだから、直球で迫ってみなよ。晴斗だって男だから分かてくれるよ」
亜依さんが言う。
躊躇い。
彼の中にある物。
いつまでも私を子供扱いしている。
私だってもう大人だよ。
そう訴えたらいい。
亜依さんに色々聞いていた。
とりあえずシャワーを浴びてバスタオル一枚で待っている。
待つ場所が問題だと亜依さんは言った。
「どこで待てばいいの?」
「思い切ってベッドの中で待ってみなよ。彼の姿もちゃんとチェックしなよ」
「晴斗はお風呂上りいつもボクサーパンツ一枚でいるわ」
多分今夜もそう。
彼がシャワーを済ませてきた。
「そろそろ晴斗もどってくるから」
「はい、今夜はゆっくり楽しんでね」
スマホをしまうと彼をベッドの中で待っていた。
「あれ?春奈どこ行ったすか?」
晴斗はリビングを探し回っている。
「こっちの部屋だよ。入ってきて」
彼は私の部屋に入ってきた。
そして私を見て息をのむ。
私は彼の目に目で訴える。
晴斗は気づいてくれるだろうか?
気づいてくれた。
黙って私のベッドに入り込む晴斗。
私も黙って晴斗に抱き着く。
「……はじめてだから」
「わかってるっす」
彼は優しく私を包んでくれて。
そして……。
その晩の事は一生の思い出になるだろう。
一生の宝物にしよう。
彼の分厚い胸板の上に頭を乗せて眠りについた。
朝目を覚ますと晴斗がいない。
昨日の事は夢だった?
全て幻だった。
「晴斗!?」
私は晴斗を探していた。
晴斗はベランダに立っていた。
私の家は山の上にある。
だけどベランダからは海岸が良く見渡せる。
「服を着て出てくるといいっす」
私は服を着て晴斗の隣に立っていた。
「朝陽がまぶしいっすよ」
彼の言う通り東から照らす陽の光が眩しかった。
夜明けの光。
初めての夜を迎えた私達を祝福してるかのようだった。
「俺……昨夜は夢中になってて……春奈に変なことしなかったっすか?乱暴にしたりとか」
彼でも戸惑うことがあるんだね?
知ってたけど。
私は彼の腕に抱きついて彼の目を見て言う。
「夢のような夜だった。朝晴斗の姿が無いとき幻だったのかと思った。今でも夢のように思える。……現実だと実感させて」
ここまで言えば分かるでしょ。
晴斗は分かってくれた。
私を見ると、私の腰に腕を回し私を抱き寄せる。
そして……朝から熱い口づけを交わした。
「一生の思い出をありがとう、晴斗。あなたに会えてよかった」
「俺も春奈に出会えて嬉しいっす」
夜が明ける。そしてまた一日が始まる。
また夜が来る。でも彼が私を照らしてくれる。
怖くはない。
またいつか夜明けはくるのだから。
そうやって繰り返して人は生きていくのだろう。
未来。
夢。
希望……。
どこからきて、どこへ行く?
その答えが晴斗の中にあった。
(3)
「なるほどね、昨日ちゃんとしてくれたんだ」
亜依さんが言うと私は頷いた。
晴斗は戸惑っている。
「よかったね、白鳥さん」
遠坂さんがそう言ってくれる。
「まあ、二人も最後までやったことだし、これでこの問題は解決だな」
美嘉さんが言う。
問題だったのだろうか?
「いや、まあ終わりじゃねーだろ!」
神奈さんが言う。
恋の終着点はここじゃないの?
「春奈!大きな間違いをしてるぞ。恋愛に終わりなんてない。あるとしたら破局したときだ」
さすがにそれは見たくない。
「どこまでも続くんだよ。一生続いていく。二人で歩き続ける限りどこまでも。ゴールなんてものは無い」
遠坂さんが言う。
「愛莉の言う通りだね。結婚してもまだ問題だらけの日々は続くんだから」
亜依さんが言う。
結婚の先もあるのね。
羨望。
その先を見て見たい。
晴斗に視線を送る。
晴斗は私の視線に気がついたのか「任せておくっす!その先もきっちり春奈を守るっす」と言ってのける。
皆の冷やかしの声が聞こえる。
少し恥ずかしい。
え、他の男性陣はどうしてるかって?
何か話しこんでいるようだった。
その後は女性陣だけで盛り上がっていた。
私の話題で。
その話は男性陣には難しい話だったのだろうか?
誰も混ざってこなかった。
どんな話をしていたのかって?
皆の初めての経験談とかどんなシチュエーションが一番いい?とか。して欲しいときのタイミングとか。
男性陣にはそういうのがないんだろうか?
突然始まった女子会は深夜まで続いた。
終わる頃には男性は皆寝ていた。
「私達もそろそろ寝よっか?」
遠坂さんがそう言うと皆自分のテントに入る。
私もテントに入ると晴斗は起きていた。
「ごめんなさい。起こした?」
「いや、起きてたっすよ」
晴斗はそう返した。
「なにしてたの?」
「メッセージ見てたっす?」
「どんな?」
「男だけの秘密っす」
「そう」
あまりいろいろ詮索しても悪いよね。
「じゃあ、そろそろ寝ましょうか?」
「そうっすね」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
寝袋に包まれて眠りにはいる。
初めての経験。
密室の中にいるのに何もできないもどかしさ。
でもそれは未来への希望。
また彼と泊まる時にお願いしてみよう。
決して忘れることのできない心地よさを思い出しながら私は眠りについた。
(4)
「あっけない最期だったね」
映画を見た後彼と昼食を食べていた。
笑い事ではない、ニーズヘッグを潰した後次の標的は我々だ。
次の手札はあるのか?持ち札はあるのか?有効打を打てるのか?
私は考えていた。ニーズヘッグを潰すほどの戦力。
正攻法でやっていたのでは通用しない。
とはいえ彼等の弱点もみつからない。
彼等はまだ奥の手を隠し持ってる。
その事は確認済み。
「発想を変えなよ麗しき君」
彼は突然言った。
「その名で呼ぶなと言ったはずだが?」
お前が言っても揶揄ってるようにしか聞こえない。
「君の事は最重要人物だと思っている。御前よりもね」
「どういう意味?」
「僕の考えはこうだ。頭を潰されても奥の手を残した方が勝ちだと思っている」
「言ってる意味がわからない」
彼は私に顔を寄せて言った。
「……」
「そんな事を考えていたのか!?」
彼はにこりと笑う。
「だって彼等には切札がある。切札を押さえられている以上足かせにしかならない」
「何を企んでいる?我々の目的は」
「御前の後継」
「分かっているなら……」
「だけどそれが使い物にならないなら継承してもしょうがないだろ?」
「お前の目的はなんだ?」
「力の継承」
それでか。
「バレたら粛正されるのは私達だぞ?」
「だからユニティに活躍してもらうのさ」
「漁夫の利を得ようというのね?」
彼はにこりと笑って頷いた。
「大丈夫、表向きは本体の末端に過ぎない事はアピールするさ。目立たない程度にね」
彼の考えていることは分からない。だが彼の言っていることは現状を冷静に把握している。それが可能なのかはわからないけど、彼の中では筋書きはできているのだろう。
「大丈夫僕にとって最優先は御前じゃない。麗しき君だよ」
「誰が聞いているか分からない、思っていても二度と言うな」
「そうだね、僕達の情報はユニティにも漏れてる。どこで何をしゃべっても筒抜けと思ってもおかしくないだろう」
ユニティにわざと情報を与えてる?
「そう思わせた方が彼らも迂闊に手を出せないよ」
「……早速ユニティは私達のサーバーを突き止めた」
「そうだね、このまま黙っていても彼らのやりたいようにやらせるだけだね」
どうやって止める?
「もうしばらく待とう。勢いはユニティにある。彼等の持ち札全部使い切らせないと」
「こちらの手札を見られていたらどうしようもない」
「さすが、わかっているじゃないか!」
彼は笑う。
その余裕どこからくる?
根拠は何?
「……一つヒントをあげよう」
「なに?」
「隠者が倒れた」
「それは知っている」
「その事の大々的に流すことで本体は難を逃れた」
それは結果論に過ぎない。
「御前もその事を知っている。問題は隠者の入院先だ」
「……まさか?」
「運命の悪戯って怖いよね」
「放っておくつもりか?」
「こちらから手札を開く真似はしたくない」
「隠者も切って捨てるという意味か?」
「そんな物騒な真似はしないよ。言ったろ?流れは今ユニティにあると。だから流れが変わるまでひたすら待つ。それだけさ」
「こっちがなにもしてこなかったらユニティは手が出せない」
そう言いたいのか?
「分かってるじゃないか。現に彼らは僕達に直接攻撃をしかけてこない」
確かにそうだ。調べはするけど手は出してこない。手が出せない?
「ようやく理解できた?」
私はだまってうなずいた。
いくら、webサイトで暴露されようと真相は勝手に本体が闇に葬ってくれる。
新聞社や出版社にリークしたところでもみ消されるのが関の山だ。
「ユニティは君が思ってるよりでかいよ。でも限度がある。その限度を確かめるまでは何もしない」
「分かった」
「大丈夫、麗しき君を傷つけるような真似はぜったいさせない」
「ああ、今日はこのくらいで良いか?」
「そうだね、デートをダラダラ続けていても仕方ない。去り際をわきまえないとね」
「毎週デートというのも少々退屈だな」
「場所を変えるかい?」
「良い場所があるのか?」
「そうだね、遊園地でもいいし。君のうちでホームシアターも悪くない」
冗談で言ってるのか本気で言ってるのか本当にわからない。
「また前日に連絡する」
「わかった、こっちも進捗があったら連絡するよ」
そう言って私達は別れた。
私は電話をする。
「この後の予定を変更する。行き先は……」
運命の悪戯というのは本当にあるんだな。
(5)
「具合はどうだ?」
目の前に現れたその「お方」は儂に向かってそう言った。
「良いとはいえませんな」
脳腫瘍。開頭術を必要とする。執刀する医師は不明。受け入れ先の病院はここしかない。死刑宣告に近い内容だった。
「そうか……儂は死んだことになるわけだな」
「私の希望を聞いてもらえませんか?」
「聞くだけなら聞いてやろう」
「最後は自分として死にたい」
「……だめだ」
やはりな。
「お前は儂として死んでいけ」
惨めな死に方だ。
自分として死ぬことすら許されない。
それが隠者の務め。
私は未来に絶望した。
コンコン。
誰かがノックする。
「誰だ?」
儂が尋ねると聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。
「奈留です。入ってもよろしいでしょうか?」
「入りなさい」
ドアが開くとまだ中学生くらいの可愛らしい女の子が入ってきた。
黒髪を肩まで伸ばし目は凛としていて鼻筋が通っていて色白の好き通った肌をしている。
水色のワンピースを着て少女は花束を持ってやってきた。
「お加減は如何ですか?」
透き通るような少女の声は老いぼれた儂を癒してくれる。
「お前のお蔭で少し楽になったよ。可愛い孫娘よ」
「そう言って頂けると来た甲斐があります」
「奈留ちゃん久しぶりだね」
あのお方が奈留に挨拶すると奈留はあのお方にむかって一礼した。
「じゃ、私はここら辺で失礼するかね?二人でゆっくりしているといい」
そう言ってあのお方は退室した。
奈留は儂のベッドのそばにある椅子に座る。
「お父様は元気ですか?」
「ああ、あいつも元気にやっとるよ。忙しいようだがの」
「……ニュースは存じてます」
「……お前は手を出すなよ」
「わかりました」
さっきまでの和やかなムードは一変し張り詰めた空気になる。
「ウォーロックとさっきまで会っていました。やはり静観する意志のようです」
「正しい判断だな。下手に藪をつつくこともあるまい」
「私もそう判断しました。が、このまま看過していて本当によろしいのでしょうか?」
「流れは向こうにある。下手に逆らうより柳に風と受け流した方が良い」
「本当に彼と同じ判断をするんですね」
「お前とウォーロックの関係はどうなんだ?」
「単なるパートナーに過ぎません」
「御前はそうは考えておらんぞ?」
「ご意向に従います」
「神はまだ相手の手札にある。慎重に行け」
「わかりました」
「もういきなさい、尾行はついているのじゃろう?」
「はい」
奈留は一礼すると退室した。
高橋グループの存亡、儂の後継、そしてエゴイストの未来。
全てをあの子は背負っている。
当然息子は面白くないだろう。
何か企んでいるに違いない。
それまでこの身が持つかどうか?
あの子を残して逝くのは自然の理。
だが、もう幾許か時間が欲しい。
そう願っていた。
(6)
翌日目を覚ますとご飯の準備を女性陣がする。
準備が出来るとそれぞれのパートナーを起こす。
ご飯を食べ終えると女性陣は片付け、男性陣はテントの片づけを始める。
片づけを終え車に荷物を積むと、渡辺君が言う。
「お疲れ様でした。皆気をつけて帰ってくれ」
私と冬夜君は別府の銭湯にむかった。
皆同じ考えだったらしくて、皆で銭湯を楽しんだ。
銭湯を出ると男性陣は先に出ていた。
「じゃ、みんなまたね~」
そう言うと各々車に乗って帰りだした。
当然の様に冬夜君が一番最後になった。
でも冬夜君のそのマイペース私は好きだよ。
別府湾を眺めながらゆっくりと進む。
途中ビーチがあるんだけど冬夜君は信号待ちの間じっとビーチの方を見ている。
「どうかしたの?」
「いや、地元のビーチって県外のビーチと違って水着のお姉さんていないよね?」
ぽかっ
「私じゃ駄目なの?」
「いや、なんとなく思いついてさ」
思いつかなくていいから!
「ねえ、冬夜君?」
「どうした?」
「もうキャンプ終わりだよね?」
「家に帰りつくまでが遠足ってノリは要らないだろ?」
「じゃあ、聞くね。どう思う?高橋憲伸の突然の病」
「……ただの偶然だろ?」
私の前ではそう言ってるだけじゃないの?
「まあ、タイミング良すぎたね。こっちの反撃の機を逸してしまった」
「やっぱりそう考えてるんだ?」
「でも良かったのかもしれない」
へ?
「まだ高橋グループには隠されてる秘密がたくさんある気がするんだ。それを解明してからでも遅くは無いよ。焦るとエゴイストの二の舞になる」
「そうだね……」
なにか話題変えた方がいいかな?
「いよいよだね」
「何が?」
「ユニバーシアード」
「ああ、そうだね」
そうだねって他人事みたいに言わないでよ。
「冬夜君の未来を決める戦いだよ」
「その前に期末試験って難関があるよ。ニーズヘッグの件で全然勉強してないだろ?」
「冬夜君の勉強のスケジュールは私がちゃんと管理してるから大丈夫だもん」
「ありがとう」
「がんばってね、バスケ」
「愛莉がそう言ってくれたら負ける気がしないな」
えへへ~。
「あ、思い出した。帰ったら渡すものがある」
「な~に?」
「帰ってからのお楽しみ」
なんだろう?
家に帰るとキャンプ道具は倉庫に片づけて荷物を持って家に帰る。
「おかえり。何もなかった」
「うん、なかったけど」
「そうかいよかった……」
「何かあったの?」
冬夜君が麻耶さんに聞くと一枚の封書を渡された。あて名はない。
冬夜君は中身を見る。
ようやく尻尾を掴んだ。
冬夜君はそれを見ると、分かったと言って麻耶さんに返す。
冬夜君は部屋に帰るとメッセージを打っている。
それが手紙の内容だと私のスマホを見て分かった。
恵美から返事が来る。
「ごめんなさい、私の部下がミスったわ!今テレビ観れる?」
冬夜君はテレビをつける。
「こちらの河原で複数人に殴られ倒れているという情報が警察に通報されかけつけたところ……」
私は声を失った。
「なお倒れている男の身元は不明で……」
冬夜君はテレビを消す。
「高橋グループ探ってた?」
「ええ……」
「わかった、恵美さんの失態じゃない。気にしなくていいよ」
「そうだ、恵美汚名返上とか言って無茶はやめろよ」
「大丈夫、これからどう動けばいい?」
恵美が聞いている。
「晶さんはこっちの手札の警備。恵美さんはエゴイストの身元を洗って。多分高橋グループにつながってるはずだから」
「わかったわ。警備は任せて」
「わかった。サーバーの警備も強化するわ」
「サーバーは誠に任せておけばいいよ」
「おう!任せておけ」
「皆無理しちゃいけないよ。大丈夫切札はとってあるんだ。無理に高橋グループに手を出さなくていい。誠流に言うと捕獲済みなんだから」
「安心しちゃいけないよ?」
知らない人が入ってきた。
「誰だお前!?」
誠君が言っている。誠君の知らない人なんだ。
「名前くらい見てよ。分かるでしょ?」
名前はwarlockと書かれてあった。……ウォーロック!?
「どうやって入ってきたんだ!?」
「君が多田誠君?凄腕のハッカーだって聞いたけど、僕だってハッカーの端くれだよ。このくらい造作もないさ」
「馬鹿な!?ちゃんとグループ自体に壁は作ってあったはずだ!?」
「バックドアくらい作っとくよ。どうやって作ったのかは言わなくてもわかるよね?」
「……穂乃果さんのアカウントから侵入した?」
「君が片桐冬夜君?君の活躍は聞いてるよ。うちのグループが翻弄されっぱなしだとか」
「用件は何?」
「直接会って交渉したい」
冬夜君は考えている……。
「取引の材料は?」
「高橋グループの秘密なんてどうかな?知りたいことあるんでしょ?」
「君の要求は?」
「特にないよ?」
「それ交渉する必要あるの?」
「君たちに有利な条件だ試す価値はあると思うけど」
「僕達が欲しいのはエゴイストの情報だ。ごめんね」
冬夜君は交渉に応じないつもりらしい。
「君やっぱり優秀だね。うちに欲しいくらいだよ」
「犯罪に加担する気はないね」
「誠君のやってる事は犯罪じゃないのかい?」
「脅し?」
「どうとってもらっても構わない」
冬夜君は再び考えている。
「……わかった。交渉する場所は?」
「この前の青い鳥って店で。明日空いてる?」
「昼からでいいなら」
「よかった、僕も学校行ってる身だからね。君たちならとっくに分かってるんだろうけど」
「じゃ、そういうことで。言っとくけどこのアカウント追跡しても無駄だよ。捨て垢だから。バックホールくらいは直しておきなよ」
warlockは退室しました。と表示された。
冬夜君大丈夫なの?
同じことを皆考えてたみたいで。
「冬夜、勝算はあるのか。そもそもこの交渉に意味があるのか?」
「誠を警察に引き渡すわけにもいかないだろ?」
「それはそうだが……」
渡辺君は悩んでいるようだ。
「いつの間にこんなところにバックドアを!?俺としたことが……!」
「誠この際だからサーバー一度見直した方が良い」
「分かってる!今やってる!!」
「ところで冬夜」
渡辺君が聞いていた。
「お前、向こうの取引材料心当たりあるんじゃないのか?」
え?
「まあね……見当はついてる。多分『隠者』の正体だ」
「そんな交渉乗る価値あるのか?」
「もやもやが取れてすっきりするだけかな?」
「冬夜、面目ない。俺を交渉材料にされるとは……」
「人間ミスはあるさ。気にするな」
冬夜君は誠君を責めない。
私は冬夜君の顔を見る。
あれ?
全然ショックを受けた様子が無い。寧ろ余裕すら感じる。どうしてだろう?
私の視線に気づいた冬夜君は私を抱きしめる。
「昼間っからはダメ?」
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私の思考がフリーズした。再起動に時間がかかる。そして意味を理解する
ぽかっ
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「どうする?」
「……前に約束したもんね」
「え?」
「好きな時にしてもいいんだよって」
「ああ……」
「でもお家だと昼間からだと気使っちゃうしホテル行こ?」
丁度出かけた格好のままだし。
「そうだね」
そうして私達はまた出かける。
冬夜君は大丈夫だって言ってた。
心配する事なんかない。
だけど、何か引っかかることがあった。
隠者の正体って冬夜君知ってるんじゃないの?なのに今さら聞くの?
その答えを聞いてみたけど冬夜君は「さあね?」と笑っていた。
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