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4thSEASON
夢の続きは
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(1)
「冬夜君朝だよ~」
「……」
「?」
久しぶりだな。朝から僕を呼ぶ声。
愛莉の声で目を覚ますと、上身を起こし背伸びをする。
今日は休みだ、のんびりしよう。
「早く着替えてジョギング行くよ!」
愛莉は急かす。
急かされながら着替えてジョギングを始める。
1時間ほど走って戻ると。シャワーを浴びて朝食を食べると父さんがテレビを見てる。
緊急放送らしい。
ユニティの皆が高橋グループの闇を綴ったファイル「フリージア」をテレビ局に流したらしい。
それは全国に流れ、大スキャンダルとなった。
神部派の議員の名前が次々と出てきて、テレビは騒然となった。
地元テレビ局でもそれは報道されていた。
次々と報道される地元企業の名前。
それは地元の基盤を揺るがしかねないニュースとなった。
「隠者」も捕らえられ、高木清吾という人物が生きていたことも明かされた。
それを裏付ける証拠も「フリージア」の中にあった。
高橋グループは致命的な打撃を受けただろう。
高橋グループのスキャンダルの陰でエゴイストの解散も報道されていた。
ホープとウォーロックの存在は未成年という事もあって明かされなかったが、高木家の関係は報道されていた。
高橋蒼良の生存も木山元信の生存も報じられ二人はテレビの前に姿を明かした。
2人も重要参考人として捕らえられ、今は事情聴取を受けているという。
僕達の戦いは終わった。
「よくやった」
父さんがそう言うと僕の肩を叩く。
特番が終ると僕達は部屋に戻った。
「私達凄い事やったんだね」
「そうだな」
誰もそんな事を仕掛けた本人が朝からこうしていちゃついているなんて思っていないだろう。
愛莉の機嫌は朝からよかった。
僕とのスキンシップを十分に堪能していれば僕の性欲も湧き上がってくるという物。
愛莉に抱き着き、押し倒してブラのホックを外そうとするとぽかっと小突かれる。
「ここだとだめだよ~麻耶さん入って来たらどうするの?」
「じゃ、ここじゃなきゃいいんだね」
「……いいよ」
愛莉はそう言うと着替えを始める。
僕も急いで着替える。
今日は昼からファミレスで集まって夜まで騒ぐ予定だ。
どうして昼からなのかは聞いてない。
午前中に事を済ませる必要がある。
愛莉の準備が出来ると僕達は出かける。
ホテルに着いて体を洗うと愛莉に覆いかぶさる。
愛莉といたしてる間もテレビが気になる。
どうしてもテレビを見てしまう。
愛莉はリモコンでテレビを消すと僕に言った。
「今は私の中に入ってきて……」と。
久しぶりの愛莉の体を味わうと二人で横になってテレビを見る。
ワイドショー的なテレビ、そして国会中継は皆その話題で持ちきりになっていた。
神部首相も回答に苦しむほどの野党の追及。
多分今頃県議会も同じような状態にあるのだろう。
結果的には高橋憲伸のしっぽ切りという形で幕を閉じるのだが。
愛莉はまだ不満だったらしく僕のそれを一生懸命弄っている。
そんな愛莉にまだ僕は飽き足らず愛莉を抱きしめると全身を愛撫する。
愛莉は時々声をあげ、そして息遣いが荒い。
二度目を終えるとようやく愛莉は僕の隣で大人しくしている。
うっとりとして、僕に抱き着きもっと構ってと催促している。
そんな愛莉を抱きしめ、優しい言葉をかけてやれば愛莉は満足している。
ホテルの利用時間が終わりに近づくと二人でシャワーを浴びて服を着る。
ホテルを出ると待ち合わせのファミレスに着く。
そこには皆とウォーロックと知らない少女が座っていた。
「紹介するよ、森羅公生と香崎奈留。『ウォーロック』と『ポープ』だ」
渡辺君が言う。
渡辺君の言葉に愛莉は驚いていた。
そんな愛莉を隣に座らせると僕も席に着いた。
「で、二人がどうかしたの?」
渡辺君は僕がいない間の話をした。
「……で、この二人を今後どうしたらいいか考えようと思ってな」
「渡辺君はどう考えてるの?」
「2人を放っておくのは危険だと考えている。事件の渦中の人間だからな。放っておいたらまた狙われるかもしれん」
「そういう事なら良い提案があるわ」
恵美さんが言った。
「うちの実家で預かるわ。それなら誰も手出しできない」
「いいのか?」
「構わないわ。二人にはまだ証言してもらわないといけない事とかあるし、弁護士もうちの弁護士を雇うからちょうどいい」
「じゃあ、頼む」
恵美さんと渡辺君の間で話をまとまった。
「皆さんには本当にご迷惑をおかけしました」
「申し訳ありませんでした」
ウォーロックとポープは頭を深々と下げる。
「そんなにかしこまるなよ。戦いは終わったんだ。俺たちはもう仲間だ」
へ?
渡辺君の言葉に皆が言葉が詰まる……。
「渡辺君や、まさかと思うけどその二人ひょっとして……」
「ああ、ユニティに参加させようと思っている」
愛莉は驚いている。
僕はさほど驚きはしなかった。
だって、どうしたら良いか困ってると言ってる時から多分そう言う話なんだろうなと思ったから。
「と、思うんだが皆の意見を聞きたい。冬夜、お前はどう思う」
そんなの最初から答えは決まってる。
「このグループは渡辺君のグループだから渡辺君の決定に従うだけだよ」
僕がそう言うと皆は騒然としていた。
「仮にも敵だったんだ。裏切らないという保証がどこにもない!」という意見と「困ってる人を放っておけない」という意見。
互いの意見は平行線のままぶつかり合っていた。
とうの二人は……。
「皆さんに迷惑をかけていながらそんな図々しい真似できません」
「僕達は2人でなんとかするんで気にしないで下さい」
この2人ならきっとうまくやっていけるだろう。
でも……。
やっぱり僕が言わないと話がうまくいかないのかな?
「良いんじゃない?入れても」
「冬夜君!?」
愛莉は反対派のようだ。
「まだ何か企んでるかもしれないんだよ?危険だって」
愛莉は僕に耳打ちする。
「危険だから監視する必要あるだろ?手持ちにしておけばそう迂闊に行動できないでしょ?ましてや恵美さんの家においておくんだし」
僕が言うと皆考え込んでしまった。
もうひと押しかな?
「まだ彼等には聞きたい事がある?それを聞き出すためにも仲間に加えておく必要はあると思う。仲間だったら皆助けるんでしょ?」
もう反論する人はいなくなった。
「と、いうわけで渡辺君」
「あ、ああ……」
渡辺君は2人をユニティに招待した。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
2人はまた深々と頭を下げる。
そんな2人に気を止めることなく僕は話を続ける。
「で、聞きたい事なんだけど……」
「エンペラーの事ですね?」
ウォーロック……公生がそう言った。
そうエンペラーの消息が断っているのが気になる。
身元を割り出したにも関わらず捕まっていない。どういうことだ?
「エゴイストは解散したのよ、今更気にするひつようないわよ」と恵美さんが言う。
「いや、解散したのにエンペラー以下の末端が全く捕まらないのは不自然だわ」と晶さんが言う。
「公生君。そこのところはどうなってるの?」
「彼等の資金源は闇ビジネスでどうにかなっている。僕達から切り離れていても十分に機能します」
闇ビジネスのルートは「フリージア」と一緒に提出したはずだ。
多分潰されているだろう。
誠に確認させる。
「ああ、サイトごと消されてる。その線は無いな」
誠は断言する。
「ねえ?それってエンペラーたちがまだ何か企んでるかもしれないって事?」
亜依さんが言う。
「それを知る術は私達にはありません、高橋グループには追放された身ですから」
淡々と話す奈留さん。
「どうする冬夜?調べてみるか?」
誠が聞く。
僕は首を振った。
「いや、気になっただけ。そんなに大したことは出来ないはず。精々第2のエゴイストを作るくらいだろう」
「それ問題じゃないの?」
亜依さんが言う。
「前にも言ったと思うけど僕たちの存在の証明はすんだ。あとは入る人たちに自己責任だよ」
「冬夜の言う通りだと俺は思う。俺達の存在はアピールしたんだ。後は騙される方の問題だろ」
渡辺君が言う。
「俺は独自に検索ロボットをつくりだした。そいつをつかって監視を続けるよ」
誠が言う。
「じゃあその線で行こう、派手に動けば俺か亜依、晴斗の耳に届くだろうしな」
「そうだね」
「そうっすね」
渡辺君が言うと二人は頷いた。
そうだ、頭を失ったものはもがいて苦しんで、そして死を待つのみ。
何も心配することは無い。
だけど心の警鐘が鳴り続けているのは気のせいだろうか?
(2)
「興毅!大丈夫だってば!そんなにイライラすることないって。ここなら安心だって」
「うるせぇ、お前も殴られたいか!?」
俺は福岡の事件を聞いた後すぐに家を出て逃げた。
逃げ場所はいくらでもあった。
メッセージグルの女の家をいくつか把握しておいた。
そこに転がり込んだ。
ウォーロックとポープも逃げたらしい。
エゴイストは解散すると言い残して。
随分勝手な言い分だ!
俺たちはこれからどうしたらいい?
呼び鈴が鳴る。
女は玄関に出る。
「この家には私以外誰もいません!」
女が叫ぶ。
俺に知らせてくれているのだろう。
サツは徹底的に俺の事を調べつくしているらしい。
だがここは3階どうやって逃げる。
「ちょっと!土足で上がらないで!!」
どたどたと音が聞こえる。
白いスーツの男が3人現れた。
万事休すか?
「安心してください。我々は警察のものではない」
男は名刺を差し出した。
須藤グループ?
あの須藤グループか?
「安全な場所を確保してあります。我々と同行願いたい」
「信用していいのか?」
「ここも直に警察の手が回ります。さあ、急いで」
俺は男達を信用してはいなかったが、サツが来ることは間違いないだろう?
ついて行く以外に手段がなかった。
「スマホは我々が新しいのを用意します。置いて行ってください」
スマホのGPSを警戒しているのだろう。
俺は男たちに従った。
白いミニバンに乗って連れていかれた先は地元大近くにある住宅地の中にある普通の一件家。
中には誰もいない。
テーブルの上にスマホが置かれてあった。
連絡はそれでとる。身の回りの世話もこっちでする。
ただ俺には一歩も外に出るなと言って男たちは去っていった。
するとスマホが鳴る。
俺がでるとちょっとおっさんぽい渋い声が聞こえてきた。
「初めまして亀梨興毅君。エンペラーと呼んだ方がいいかね?」
「あんたは一体誰だ?」
「私の事は今後ドラゴンと呼んでくれたまえ」
神の次は竜か?
「ドラゴン、俺を呼んだ理由はなんだ?」
「君に新たなる舞台を用意しようと思ってね」
「なんだと?」
「このまま利用されっぱなしで捨てられるのはあまりにも惨めだろう?」
「あんたも俺を利用する気じゃないのか?」
「ビジネスだよ、取引をしたい。私が提供するのは君の活動する資金と場所。私が要求するのは君の作ったネットワーク」
「俺のネットワークは使い物にならない」
「知っている、君の部下は必要ない。欲しいのは君が持ってる顧客だ」
「またサークルを作れと?」
「察しが良いな」
俺は考えた、この話に乗っていいのか?
「乗る以外に選択肢はないと思うがね?」
男の言う通りだ。俺に選択肢はない。
「わかった」
「話が分かる男で助かる。必要な機材は君の部屋に置いてある、2階にある。他に必要なものがあるときは『死神』に頼むと良い」
「わかった」
「じゃあ、早速活動を行動を開始してくれ。『魔術師』にサイトの作成は依頼してある」
「腕は確かなんだろうな?」
「君が選んでいた『ウィザード』よりは確実に上だよ」
「わかった。信じよう。新しいサークルの名前は?」
「『urbanity(アーバニティ)』」
そう言って電話は切れた。
着信履歴には「竜」と書かれてある。
2階に上がって部屋を見るとPCがおかれてあった。
早速起動する。ネットにはつながっているようだ。メールを着信している。
メールを覗いた。URLとID・パスワードが書かれてある。差出人は魔術師。
サイトを覗いてみる。これは……なるほどそう言う事か?
なるほど「上品」なサークルね。
俺は女に電話していた。
「ああ、俺だエンペラーだ。良いサークルを紹介したいんだが……」
こうして俺の人生の第2幕が始まった。
(3)
「じゃあ、かんぱーい!」
皆で焼き肉屋で乾杯していた。
肉を前にしたら悩み事なんて吹き飛んでしまう。
ひたすら肉を焼いて食べる作業。
大丈夫、ちゃんと野菜も食べてるよ。
ぽかっ
「冬夜君は生で食べるから私が焼いてあげる」
「いいよ、自分で焼くって」
「焼いてあげる♪」
「……はい」
「お前にも弱点はあるんだな」
佐(たすく)もそのうち気づくよ絶対逆らえない存在ってのに……。
「今何を考えたのかな?」
愛莉最近本当に勘が鋭いな
「いや、可愛いお嫁さんには逆らうなって父さんにも言われたなって」
「そうだよ~」
「それにしても本当に世界一になるとは思ってなかったぜ」
佐が驚いている。
「まだまだ先は長いよ。この後まだアジア選手権あるんだし」
「分かってるなら暴飲暴食いい加減にやめてください!」
佐倉さんがいう。
「僕の事はおいておいて石原君もすごいじゃないか?世界の殺し屋相手に一人で戦ったんだって?」
「そ、そんな大したことじゃないです」
「あら?私にはすごいと思えたわよ。もう私にはボディガードいらないわね」
恵美さんが言う。
「恵美、負けないわよ。今善君を鍛えなおしてるから」
晶さんが言う。酒井君は食欲がない様だ。
「でも、こんなにおめでたい事が重なるっていいですよね」
竹本君が言う。
「竹本君はいつから旅行に」
「今月中には行ってこようかと」
「そういう気配りが出来る旦那さんで羨ましいな咲」
神奈が言う。
「神奈旅行行きたいのか?」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ。嫁さんを気遣う気持ちが羨ましいって言ったんだよ」
「俺だっていつも神奈の事考えてるぜ!」
「ほう?どういう風に?」
「いつだって神奈の事を受け止めようと努力してるじゃないか!」
「それが、メイド服を着せることにどうつながるのか説明してみろ」
「うっ、それは……」
誠、僕はさすがに庇えないぞ。
「多田君さいてー!まだそんなこと神奈にさせてたわけ!?」
亜依さんを筆頭に次々と攻撃を受ける誠。
男性陣は敢えて何も言わない。
僕は愛莉が焼いてくれた肉を黙って食べるだけ。
あ、この店もつ鍋もあるんだ。
「すいませんもつ鍋をひとつ……」
ぽかっ
「いい加減にしなさい!」
愛莉に怒られた。
「男どもが黙ってるのが気に入らねーなぁ!お前らも同じ事考えてるのか?」
美嘉さんが男性陣に言う。
「それは無いって前にも言ったろ?」
渡辺君が宥める。
僕もそうだなあ、愛莉は別にそんな恰好しなくても尽くしてくれるし……興味ないかな?
ぽかっ
「何で叩かれるんだよ」
「冬夜君は考えなくていいから食べてようね」
「だから愛莉は……」
「たべてようね♪」
「……はい」
しかしカンナが乗ってきた。
「気になるじゃねーかトーヤはどうなんだよ?ヤッパリ愛莉にさせたいと思うのか?」
「神奈余計な事気無くていい」
「隠す事でもないだろ、離せよトーヤ」
まあ、隠す事じゃないよな
「愛莉はそんな恰好しなくても僕に献身的に尽くしてくれるって思っただけだよ」
「それでお前はどうなんだよ?」
へ?
「お前は愛莉にどうしてんだよ?」
「ちゃんと愛莉の事考えてるよ。最近は愛莉といちゃついてる時間増えたよ。学校行く前とか」
「冬夜君!そんなことまで言わなくていいの!」
「そういやお前朝から遠坂さんとしてるって言ってたな!?」
誠が余計な事を言う。
「言っとくけど冬夜君は変な事はしないからね!ちょっと甘えさせてくれるだけだもん!」
どっちが甘えてるのか分からない時あるけどな。
「……晴斗も私にメイド服とか着せたいと思ったことあるの?」
「な、ないっすよ!!そんな真似させられないっす!」
「……私には似合わないって事?」
「そうじゃなくてまだ俺達には早いっす!」
晴斗が慌ててる。
白鳥さんも積極的になったな。
「早いって事はそのうちさせようって思ってるのか?」
神奈が追撃をかける。
「違うっす!俺そう言うの興味ないし」
「じゃあどういうのに興味あるんだよ?」
「普通でいいっす!」
皆僕は女体盛りさせたいと思ってるとか思ってるでしょ?
そんな料理に失礼な事絶対ゆるさないから!
料理は料理、愛莉は愛莉で楽しむのが一番!
「おい、公生。もっと食えよ!」
「僕はそんなに食べなくても平気だから」
「そんな事言ってるからちびのまんまなんだよ。食え!」
美嘉さんが公生に絡んでる。
渡辺君が間に入る。
「未成年に絡むなよ」
「酒勧めてるわけじゃねーんだし良いだろ!?」
「まだ、初めてなんだ、優しくしてやれ?」
「初めてって言えば公生と奈留はできてるのか!?」
「出来てるって何が?」
「だから二人共恋人同士なのか?ってことだよ!」
「そんなんじゃない、ただの友達」
「そう言ってる時が一番揺れてる時なんだよ!大丈夫お姉さんたちに任せておけば問題ない」
奈留さんにまで絡み始めたよ……。
「何何そう言う話なら私も混ぜてよ」
「私も興味あるわ!」
亜依さんと恵美さんが加わる。
「鍛え上げたいと言うなら夏休み中に合宿してあげても良いわよ」
「公生はもう十分素敵な人だから!」
「って事はそういう目で見てたのね?」
迂闊な事言うとすぐに言葉尻を捕らえるよこの人達。
しかし公生君はそうでもないみたいで。
「奈留がその気なら僕はいつでもいいんだけどね?」
と余裕を見せる公生。
奈留さんは顔を赤くして俯いたままになった。
「じゃあ、そろそろ時間だし1次会はお開きにしようか」
渡辺君が言う。
僕も十分食べたし良いや。
店を出ると公生と奈留さんは恵美さんの家の送迎が迎えに来てたのでお別れ。
「今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「気にするな、これがユニティの活動だ。また来いよ」
「はい」
2人は去っていった。
「さて、2次会はいつもの店でいいな?」
渡辺君が言うと皆ぞろぞろと歩いて店に向かった。
(4)
「楽しかったね」
「そうね」
私と公生は1次会で皆と別れて恵美さんの家に向かっていた。
こんなに笑ったのはいつ以来だろう?
母さんたちが無くなってから?
憲伸の孫になってから?
それまで私は普通に楽しく暮らしていた。
あの日の事故が起こるまでは。
事故で二人の死を知ると途方に暮れていた。
私には身寄りがいない。そう思っていた時亡くなったと思っていたお爺様が現れた。
そして憲伸に見初められ……。
私の将来はさび付いた青空に替わっていた。
そんな中照らしてくれたのは公生だった……。
公生だけが頼りだった。
公生は文字通り命がけで私を助けようとしてくれた。
あの日も敵のBluetoothを乗っ取り、襲撃地点をユニティに送りそしてユニティが阻止した。
バレていたら公生の命が危なかった。
私は公生に何をしてあげられただろう?
公生をエゴイストに誘ったことが間違いだったのか?
公生と今があるのは私のせい?
「ねえ、公生?」
「なに?」
「私があの時あなたを誘わなかったら幸せな生活を送れた?」
聞くだけ無駄な質問をしていた。
だけど彼の口から出たセリフは予想していたものとは違っていた。
「そうだね、幸せになれたかな?って言えば君は満足?」
「ごめんなさい」
何に対しているのか分からなかった。
「君と出会えてつまらないと思っていた人生に光が射した。色褪せた世界がカラフルになった。それは事実だよ」
光を与えてくれたのはあなたなのに……。
「本気で思っている。君が望むのなら君がまぶしく思える明日を何度でも探し出して見せる。星一つ見えない暗闇からも、終わりの来ない悲しみの底からも。たった一つの光を求めてる君に素晴らしい世界を見せたいと思ってる。今でもずっと」
「あなたは与えてくれたわ。もう十分なほどに。これからは私一人で探していかなくちゃ」
「一人だなんて寂しい事言うなよ。言ったろ?何度でも探してやるって」
「でも私はあなたに何もしてあげられない」
「今でもしてもらっているよ。君の隣に座っていられるって素晴らしい事だと思ってる」
私は無意識のうちに彼の手を握っていた。
そして慌てて手を離そうとすると彼の方から私の手を握る。
私は抵抗しなかった。
そんな私達を見て新條さんは言う。
「お部屋ご一緒の方が良いですか?」
新條さんは口元に笑みを浮かべていた。
「結構です!」
「ええ、折角のチャンスだったのにな」
どこまで本気なんだこの人は。
「じゃあ、ちゃんと言ったら一緒の部屋でもいい?」
何を言うの?
「君が好きだ。これからはウォーロックとポープじゃない、公生と奈留として付き合って欲しい」
それは告白?
「一つ条件があるわ」
「なんだい?」
彼は笑っている。
「一緒の部屋ってのはなしよ?」
「それは残念麗しき君と一緒に夜を過ごせると楽しみにしていたのにな」
「焦ることもないでしょ」
「そうなんだね?」
「そうよ」
縁結びのサークル、ユニティ。
そのご利益は敵だった私達にまで与えてくれたようだ。
彼等のサークルはそうやって幸せを運んでいくのだろう。
この世界の果てまでも。
(5)
二次会が終わった後三次会に行く人もいれば帰る人もいる。
私達は帰ることにした。
タクシーを拾って家路に着く。
「ねえ冬夜君」
「なんだい?」
「あの二人どうなるのかな?」
「一件が片付くまでは恵美さんちで保護だろうね」
「その後は?」
外の景色を見ていた冬夜君は私の方を見る?
「あの二人離れ離れになっちゃうの?」
「それはないでしょ」
冬夜君は笑って言う。
「今頃いい夢見てるんじゃないかな?」
「その夢の続きはどうなるの?終わっちゃうの?」
「あの二人が決めることだよ、周りがとやかく言う事じゃない」
そうじゃないんだよ、冬夜君はどう予想してるか知りたいの。
「あの二人上手くいくのかな?」
「いくでしょ?」
「どうしてそう言い切れるの?」
へ?というような顔をしている冬夜君。
「だってあの二人既に同じ未来を見てたよ」
それが分かるのは冬夜君だけだよ。
「同じ未来か~いいな~」
「愛莉は僕と同じ未来見てないの?」
「私のせいにするんだ?」
「違うの?」
ぽかっ
「冬夜君はあっち見たりこっち見たりしてよそ見ばっかりしてるじゃない」
「ああ、そういうことね」
すると冬夜君は優しい表情で言ってくれた。
「愛莉の見てる先は常に把握してるから見なくても先導できるよ」
今なら酔ってるって事で許してくれるよね。
私は冬夜君に抱き着く。
「ありがとう」
「心配いらないから」
「うん」
でもお願いだから今夜だけは。私と同じ未来を見て欲しい。
私のたった一つの希望守って欲しい。
素敵な世界へ連れて行って。
「冬夜君朝だよ~」
「……」
「?」
久しぶりだな。朝から僕を呼ぶ声。
愛莉の声で目を覚ますと、上身を起こし背伸びをする。
今日は休みだ、のんびりしよう。
「早く着替えてジョギング行くよ!」
愛莉は急かす。
急かされながら着替えてジョギングを始める。
1時間ほど走って戻ると。シャワーを浴びて朝食を食べると父さんがテレビを見てる。
緊急放送らしい。
ユニティの皆が高橋グループの闇を綴ったファイル「フリージア」をテレビ局に流したらしい。
それは全国に流れ、大スキャンダルとなった。
神部派の議員の名前が次々と出てきて、テレビは騒然となった。
地元テレビ局でもそれは報道されていた。
次々と報道される地元企業の名前。
それは地元の基盤を揺るがしかねないニュースとなった。
「隠者」も捕らえられ、高木清吾という人物が生きていたことも明かされた。
それを裏付ける証拠も「フリージア」の中にあった。
高橋グループは致命的な打撃を受けただろう。
高橋グループのスキャンダルの陰でエゴイストの解散も報道されていた。
ホープとウォーロックの存在は未成年という事もあって明かされなかったが、高木家の関係は報道されていた。
高橋蒼良の生存も木山元信の生存も報じられ二人はテレビの前に姿を明かした。
2人も重要参考人として捕らえられ、今は事情聴取を受けているという。
僕達の戦いは終わった。
「よくやった」
父さんがそう言うと僕の肩を叩く。
特番が終ると僕達は部屋に戻った。
「私達凄い事やったんだね」
「そうだな」
誰もそんな事を仕掛けた本人が朝からこうしていちゃついているなんて思っていないだろう。
愛莉の機嫌は朝からよかった。
僕とのスキンシップを十分に堪能していれば僕の性欲も湧き上がってくるという物。
愛莉に抱き着き、押し倒してブラのホックを外そうとするとぽかっと小突かれる。
「ここだとだめだよ~麻耶さん入って来たらどうするの?」
「じゃ、ここじゃなきゃいいんだね」
「……いいよ」
愛莉はそう言うと着替えを始める。
僕も急いで着替える。
今日は昼からファミレスで集まって夜まで騒ぐ予定だ。
どうして昼からなのかは聞いてない。
午前中に事を済ませる必要がある。
愛莉の準備が出来ると僕達は出かける。
ホテルに着いて体を洗うと愛莉に覆いかぶさる。
愛莉といたしてる間もテレビが気になる。
どうしてもテレビを見てしまう。
愛莉はリモコンでテレビを消すと僕に言った。
「今は私の中に入ってきて……」と。
久しぶりの愛莉の体を味わうと二人で横になってテレビを見る。
ワイドショー的なテレビ、そして国会中継は皆その話題で持ちきりになっていた。
神部首相も回答に苦しむほどの野党の追及。
多分今頃県議会も同じような状態にあるのだろう。
結果的には高橋憲伸のしっぽ切りという形で幕を閉じるのだが。
愛莉はまだ不満だったらしく僕のそれを一生懸命弄っている。
そんな愛莉にまだ僕は飽き足らず愛莉を抱きしめると全身を愛撫する。
愛莉は時々声をあげ、そして息遣いが荒い。
二度目を終えるとようやく愛莉は僕の隣で大人しくしている。
うっとりとして、僕に抱き着きもっと構ってと催促している。
そんな愛莉を抱きしめ、優しい言葉をかけてやれば愛莉は満足している。
ホテルの利用時間が終わりに近づくと二人でシャワーを浴びて服を着る。
ホテルを出ると待ち合わせのファミレスに着く。
そこには皆とウォーロックと知らない少女が座っていた。
「紹介するよ、森羅公生と香崎奈留。『ウォーロック』と『ポープ』だ」
渡辺君が言う。
渡辺君の言葉に愛莉は驚いていた。
そんな愛莉を隣に座らせると僕も席に着いた。
「で、二人がどうかしたの?」
渡辺君は僕がいない間の話をした。
「……で、この二人を今後どうしたらいいか考えようと思ってな」
「渡辺君はどう考えてるの?」
「2人を放っておくのは危険だと考えている。事件の渦中の人間だからな。放っておいたらまた狙われるかもしれん」
「そういう事なら良い提案があるわ」
恵美さんが言った。
「うちの実家で預かるわ。それなら誰も手出しできない」
「いいのか?」
「構わないわ。二人にはまだ証言してもらわないといけない事とかあるし、弁護士もうちの弁護士を雇うからちょうどいい」
「じゃあ、頼む」
恵美さんと渡辺君の間で話をまとまった。
「皆さんには本当にご迷惑をおかけしました」
「申し訳ありませんでした」
ウォーロックとポープは頭を深々と下げる。
「そんなにかしこまるなよ。戦いは終わったんだ。俺たちはもう仲間だ」
へ?
渡辺君の言葉に皆が言葉が詰まる……。
「渡辺君や、まさかと思うけどその二人ひょっとして……」
「ああ、ユニティに参加させようと思っている」
愛莉は驚いている。
僕はさほど驚きはしなかった。
だって、どうしたら良いか困ってると言ってる時から多分そう言う話なんだろうなと思ったから。
「と、思うんだが皆の意見を聞きたい。冬夜、お前はどう思う」
そんなの最初から答えは決まってる。
「このグループは渡辺君のグループだから渡辺君の決定に従うだけだよ」
僕がそう言うと皆は騒然としていた。
「仮にも敵だったんだ。裏切らないという保証がどこにもない!」という意見と「困ってる人を放っておけない」という意見。
互いの意見は平行線のままぶつかり合っていた。
とうの二人は……。
「皆さんに迷惑をかけていながらそんな図々しい真似できません」
「僕達は2人でなんとかするんで気にしないで下さい」
この2人ならきっとうまくやっていけるだろう。
でも……。
やっぱり僕が言わないと話がうまくいかないのかな?
「良いんじゃない?入れても」
「冬夜君!?」
愛莉は反対派のようだ。
「まだ何か企んでるかもしれないんだよ?危険だって」
愛莉は僕に耳打ちする。
「危険だから監視する必要あるだろ?手持ちにしておけばそう迂闊に行動できないでしょ?ましてや恵美さんの家においておくんだし」
僕が言うと皆考え込んでしまった。
もうひと押しかな?
「まだ彼等には聞きたい事がある?それを聞き出すためにも仲間に加えておく必要はあると思う。仲間だったら皆助けるんでしょ?」
もう反論する人はいなくなった。
「と、いうわけで渡辺君」
「あ、ああ……」
渡辺君は2人をユニティに招待した。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
2人はまた深々と頭を下げる。
そんな2人に気を止めることなく僕は話を続ける。
「で、聞きたい事なんだけど……」
「エンペラーの事ですね?」
ウォーロック……公生がそう言った。
そうエンペラーの消息が断っているのが気になる。
身元を割り出したにも関わらず捕まっていない。どういうことだ?
「エゴイストは解散したのよ、今更気にするひつようないわよ」と恵美さんが言う。
「いや、解散したのにエンペラー以下の末端が全く捕まらないのは不自然だわ」と晶さんが言う。
「公生君。そこのところはどうなってるの?」
「彼等の資金源は闇ビジネスでどうにかなっている。僕達から切り離れていても十分に機能します」
闇ビジネスのルートは「フリージア」と一緒に提出したはずだ。
多分潰されているだろう。
誠に確認させる。
「ああ、サイトごと消されてる。その線は無いな」
誠は断言する。
「ねえ?それってエンペラーたちがまだ何か企んでるかもしれないって事?」
亜依さんが言う。
「それを知る術は私達にはありません、高橋グループには追放された身ですから」
淡々と話す奈留さん。
「どうする冬夜?調べてみるか?」
誠が聞く。
僕は首を振った。
「いや、気になっただけ。そんなに大したことは出来ないはず。精々第2のエゴイストを作るくらいだろう」
「それ問題じゃないの?」
亜依さんが言う。
「前にも言ったと思うけど僕たちの存在の証明はすんだ。あとは入る人たちに自己責任だよ」
「冬夜の言う通りだと俺は思う。俺達の存在はアピールしたんだ。後は騙される方の問題だろ」
渡辺君が言う。
「俺は独自に検索ロボットをつくりだした。そいつをつかって監視を続けるよ」
誠が言う。
「じゃあその線で行こう、派手に動けば俺か亜依、晴斗の耳に届くだろうしな」
「そうだね」
「そうっすね」
渡辺君が言うと二人は頷いた。
そうだ、頭を失ったものはもがいて苦しんで、そして死を待つのみ。
何も心配することは無い。
だけど心の警鐘が鳴り続けているのは気のせいだろうか?
(2)
「興毅!大丈夫だってば!そんなにイライラすることないって。ここなら安心だって」
「うるせぇ、お前も殴られたいか!?」
俺は福岡の事件を聞いた後すぐに家を出て逃げた。
逃げ場所はいくらでもあった。
メッセージグルの女の家をいくつか把握しておいた。
そこに転がり込んだ。
ウォーロックとポープも逃げたらしい。
エゴイストは解散すると言い残して。
随分勝手な言い分だ!
俺たちはこれからどうしたらいい?
呼び鈴が鳴る。
女は玄関に出る。
「この家には私以外誰もいません!」
女が叫ぶ。
俺に知らせてくれているのだろう。
サツは徹底的に俺の事を調べつくしているらしい。
だがここは3階どうやって逃げる。
「ちょっと!土足で上がらないで!!」
どたどたと音が聞こえる。
白いスーツの男が3人現れた。
万事休すか?
「安心してください。我々は警察のものではない」
男は名刺を差し出した。
須藤グループ?
あの須藤グループか?
「安全な場所を確保してあります。我々と同行願いたい」
「信用していいのか?」
「ここも直に警察の手が回ります。さあ、急いで」
俺は男達を信用してはいなかったが、サツが来ることは間違いないだろう?
ついて行く以外に手段がなかった。
「スマホは我々が新しいのを用意します。置いて行ってください」
スマホのGPSを警戒しているのだろう。
俺は男たちに従った。
白いミニバンに乗って連れていかれた先は地元大近くにある住宅地の中にある普通の一件家。
中には誰もいない。
テーブルの上にスマホが置かれてあった。
連絡はそれでとる。身の回りの世話もこっちでする。
ただ俺には一歩も外に出るなと言って男たちは去っていった。
するとスマホが鳴る。
俺がでるとちょっとおっさんぽい渋い声が聞こえてきた。
「初めまして亀梨興毅君。エンペラーと呼んだ方がいいかね?」
「あんたは一体誰だ?」
「私の事は今後ドラゴンと呼んでくれたまえ」
神の次は竜か?
「ドラゴン、俺を呼んだ理由はなんだ?」
「君に新たなる舞台を用意しようと思ってね」
「なんだと?」
「このまま利用されっぱなしで捨てられるのはあまりにも惨めだろう?」
「あんたも俺を利用する気じゃないのか?」
「ビジネスだよ、取引をしたい。私が提供するのは君の活動する資金と場所。私が要求するのは君の作ったネットワーク」
「俺のネットワークは使い物にならない」
「知っている、君の部下は必要ない。欲しいのは君が持ってる顧客だ」
「またサークルを作れと?」
「察しが良いな」
俺は考えた、この話に乗っていいのか?
「乗る以外に選択肢はないと思うがね?」
男の言う通りだ。俺に選択肢はない。
「わかった」
「話が分かる男で助かる。必要な機材は君の部屋に置いてある、2階にある。他に必要なものがあるときは『死神』に頼むと良い」
「わかった」
「じゃあ、早速活動を行動を開始してくれ。『魔術師』にサイトの作成は依頼してある」
「腕は確かなんだろうな?」
「君が選んでいた『ウィザード』よりは確実に上だよ」
「わかった。信じよう。新しいサークルの名前は?」
「『urbanity(アーバニティ)』」
そう言って電話は切れた。
着信履歴には「竜」と書かれてある。
2階に上がって部屋を見るとPCがおかれてあった。
早速起動する。ネットにはつながっているようだ。メールを着信している。
メールを覗いた。URLとID・パスワードが書かれてある。差出人は魔術師。
サイトを覗いてみる。これは……なるほどそう言う事か?
なるほど「上品」なサークルね。
俺は女に電話していた。
「ああ、俺だエンペラーだ。良いサークルを紹介したいんだが……」
こうして俺の人生の第2幕が始まった。
(3)
「じゃあ、かんぱーい!」
皆で焼き肉屋で乾杯していた。
肉を前にしたら悩み事なんて吹き飛んでしまう。
ひたすら肉を焼いて食べる作業。
大丈夫、ちゃんと野菜も食べてるよ。
ぽかっ
「冬夜君は生で食べるから私が焼いてあげる」
「いいよ、自分で焼くって」
「焼いてあげる♪」
「……はい」
「お前にも弱点はあるんだな」
佐(たすく)もそのうち気づくよ絶対逆らえない存在ってのに……。
「今何を考えたのかな?」
愛莉最近本当に勘が鋭いな
「いや、可愛いお嫁さんには逆らうなって父さんにも言われたなって」
「そうだよ~」
「それにしても本当に世界一になるとは思ってなかったぜ」
佐が驚いている。
「まだまだ先は長いよ。この後まだアジア選手権あるんだし」
「分かってるなら暴飲暴食いい加減にやめてください!」
佐倉さんがいう。
「僕の事はおいておいて石原君もすごいじゃないか?世界の殺し屋相手に一人で戦ったんだって?」
「そ、そんな大したことじゃないです」
「あら?私にはすごいと思えたわよ。もう私にはボディガードいらないわね」
恵美さんが言う。
「恵美、負けないわよ。今善君を鍛えなおしてるから」
晶さんが言う。酒井君は食欲がない様だ。
「でも、こんなにおめでたい事が重なるっていいですよね」
竹本君が言う。
「竹本君はいつから旅行に」
「今月中には行ってこようかと」
「そういう気配りが出来る旦那さんで羨ましいな咲」
神奈が言う。
「神奈旅行行きたいのか?」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ。嫁さんを気遣う気持ちが羨ましいって言ったんだよ」
「俺だっていつも神奈の事考えてるぜ!」
「ほう?どういう風に?」
「いつだって神奈の事を受け止めようと努力してるじゃないか!」
「それが、メイド服を着せることにどうつながるのか説明してみろ」
「うっ、それは……」
誠、僕はさすがに庇えないぞ。
「多田君さいてー!まだそんなこと神奈にさせてたわけ!?」
亜依さんを筆頭に次々と攻撃を受ける誠。
男性陣は敢えて何も言わない。
僕は愛莉が焼いてくれた肉を黙って食べるだけ。
あ、この店もつ鍋もあるんだ。
「すいませんもつ鍋をひとつ……」
ぽかっ
「いい加減にしなさい!」
愛莉に怒られた。
「男どもが黙ってるのが気に入らねーなぁ!お前らも同じ事考えてるのか?」
美嘉さんが男性陣に言う。
「それは無いって前にも言ったろ?」
渡辺君が宥める。
僕もそうだなあ、愛莉は別にそんな恰好しなくても尽くしてくれるし……興味ないかな?
ぽかっ
「何で叩かれるんだよ」
「冬夜君は考えなくていいから食べてようね」
「だから愛莉は……」
「たべてようね♪」
「……はい」
しかしカンナが乗ってきた。
「気になるじゃねーかトーヤはどうなんだよ?ヤッパリ愛莉にさせたいと思うのか?」
「神奈余計な事気無くていい」
「隠す事でもないだろ、離せよトーヤ」
まあ、隠す事じゃないよな
「愛莉はそんな恰好しなくても僕に献身的に尽くしてくれるって思っただけだよ」
「それでお前はどうなんだよ?」
へ?
「お前は愛莉にどうしてんだよ?」
「ちゃんと愛莉の事考えてるよ。最近は愛莉といちゃついてる時間増えたよ。学校行く前とか」
「冬夜君!そんなことまで言わなくていいの!」
「そういやお前朝から遠坂さんとしてるって言ってたな!?」
誠が余計な事を言う。
「言っとくけど冬夜君は変な事はしないからね!ちょっと甘えさせてくれるだけだもん!」
どっちが甘えてるのか分からない時あるけどな。
「……晴斗も私にメイド服とか着せたいと思ったことあるの?」
「な、ないっすよ!!そんな真似させられないっす!」
「……私には似合わないって事?」
「そうじゃなくてまだ俺達には早いっす!」
晴斗が慌ててる。
白鳥さんも積極的になったな。
「早いって事はそのうちさせようって思ってるのか?」
神奈が追撃をかける。
「違うっす!俺そう言うの興味ないし」
「じゃあどういうのに興味あるんだよ?」
「普通でいいっす!」
皆僕は女体盛りさせたいと思ってるとか思ってるでしょ?
そんな料理に失礼な事絶対ゆるさないから!
料理は料理、愛莉は愛莉で楽しむのが一番!
「おい、公生。もっと食えよ!」
「僕はそんなに食べなくても平気だから」
「そんな事言ってるからちびのまんまなんだよ。食え!」
美嘉さんが公生に絡んでる。
渡辺君が間に入る。
「未成年に絡むなよ」
「酒勧めてるわけじゃねーんだし良いだろ!?」
「まだ、初めてなんだ、優しくしてやれ?」
「初めてって言えば公生と奈留はできてるのか!?」
「出来てるって何が?」
「だから二人共恋人同士なのか?ってことだよ!」
「そんなんじゃない、ただの友達」
「そう言ってる時が一番揺れてる時なんだよ!大丈夫お姉さんたちに任せておけば問題ない」
奈留さんにまで絡み始めたよ……。
「何何そう言う話なら私も混ぜてよ」
「私も興味あるわ!」
亜依さんと恵美さんが加わる。
「鍛え上げたいと言うなら夏休み中に合宿してあげても良いわよ」
「公生はもう十分素敵な人だから!」
「って事はそういう目で見てたのね?」
迂闊な事言うとすぐに言葉尻を捕らえるよこの人達。
しかし公生君はそうでもないみたいで。
「奈留がその気なら僕はいつでもいいんだけどね?」
と余裕を見せる公生。
奈留さんは顔を赤くして俯いたままになった。
「じゃあ、そろそろ時間だし1次会はお開きにしようか」
渡辺君が言う。
僕も十分食べたし良いや。
店を出ると公生と奈留さんは恵美さんの家の送迎が迎えに来てたのでお別れ。
「今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「気にするな、これがユニティの活動だ。また来いよ」
「はい」
2人は去っていった。
「さて、2次会はいつもの店でいいな?」
渡辺君が言うと皆ぞろぞろと歩いて店に向かった。
(4)
「楽しかったね」
「そうね」
私と公生は1次会で皆と別れて恵美さんの家に向かっていた。
こんなに笑ったのはいつ以来だろう?
母さんたちが無くなってから?
憲伸の孫になってから?
それまで私は普通に楽しく暮らしていた。
あの日の事故が起こるまでは。
事故で二人の死を知ると途方に暮れていた。
私には身寄りがいない。そう思っていた時亡くなったと思っていたお爺様が現れた。
そして憲伸に見初められ……。
私の将来はさび付いた青空に替わっていた。
そんな中照らしてくれたのは公生だった……。
公生だけが頼りだった。
公生は文字通り命がけで私を助けようとしてくれた。
あの日も敵のBluetoothを乗っ取り、襲撃地点をユニティに送りそしてユニティが阻止した。
バレていたら公生の命が危なかった。
私は公生に何をしてあげられただろう?
公生をエゴイストに誘ったことが間違いだったのか?
公生と今があるのは私のせい?
「ねえ、公生?」
「なに?」
「私があの時あなたを誘わなかったら幸せな生活を送れた?」
聞くだけ無駄な質問をしていた。
だけど彼の口から出たセリフは予想していたものとは違っていた。
「そうだね、幸せになれたかな?って言えば君は満足?」
「ごめんなさい」
何に対しているのか分からなかった。
「君と出会えてつまらないと思っていた人生に光が射した。色褪せた世界がカラフルになった。それは事実だよ」
光を与えてくれたのはあなたなのに……。
「本気で思っている。君が望むのなら君がまぶしく思える明日を何度でも探し出して見せる。星一つ見えない暗闇からも、終わりの来ない悲しみの底からも。たった一つの光を求めてる君に素晴らしい世界を見せたいと思ってる。今でもずっと」
「あなたは与えてくれたわ。もう十分なほどに。これからは私一人で探していかなくちゃ」
「一人だなんて寂しい事言うなよ。言ったろ?何度でも探してやるって」
「でも私はあなたに何もしてあげられない」
「今でもしてもらっているよ。君の隣に座っていられるって素晴らしい事だと思ってる」
私は無意識のうちに彼の手を握っていた。
そして慌てて手を離そうとすると彼の方から私の手を握る。
私は抵抗しなかった。
そんな私達を見て新條さんは言う。
「お部屋ご一緒の方が良いですか?」
新條さんは口元に笑みを浮かべていた。
「結構です!」
「ええ、折角のチャンスだったのにな」
どこまで本気なんだこの人は。
「じゃあ、ちゃんと言ったら一緒の部屋でもいい?」
何を言うの?
「君が好きだ。これからはウォーロックとポープじゃない、公生と奈留として付き合って欲しい」
それは告白?
「一つ条件があるわ」
「なんだい?」
彼は笑っている。
「一緒の部屋ってのはなしよ?」
「それは残念麗しき君と一緒に夜を過ごせると楽しみにしていたのにな」
「焦ることもないでしょ」
「そうなんだね?」
「そうよ」
縁結びのサークル、ユニティ。
そのご利益は敵だった私達にまで与えてくれたようだ。
彼等のサークルはそうやって幸せを運んでいくのだろう。
この世界の果てまでも。
(5)
二次会が終わった後三次会に行く人もいれば帰る人もいる。
私達は帰ることにした。
タクシーを拾って家路に着く。
「ねえ冬夜君」
「なんだい?」
「あの二人どうなるのかな?」
「一件が片付くまでは恵美さんちで保護だろうね」
「その後は?」
外の景色を見ていた冬夜君は私の方を見る?
「あの二人離れ離れになっちゃうの?」
「それはないでしょ」
冬夜君は笑って言う。
「今頃いい夢見てるんじゃないかな?」
「その夢の続きはどうなるの?終わっちゃうの?」
「あの二人が決めることだよ、周りがとやかく言う事じゃない」
そうじゃないんだよ、冬夜君はどう予想してるか知りたいの。
「あの二人上手くいくのかな?」
「いくでしょ?」
「どうしてそう言い切れるの?」
へ?というような顔をしている冬夜君。
「だってあの二人既に同じ未来を見てたよ」
それが分かるのは冬夜君だけだよ。
「同じ未来か~いいな~」
「愛莉は僕と同じ未来見てないの?」
「私のせいにするんだ?」
「違うの?」
ぽかっ
「冬夜君はあっち見たりこっち見たりしてよそ見ばっかりしてるじゃない」
「ああ、そういうことね」
すると冬夜君は優しい表情で言ってくれた。
「愛莉の見てる先は常に把握してるから見なくても先導できるよ」
今なら酔ってるって事で許してくれるよね。
私は冬夜君に抱き着く。
「ありがとう」
「心配いらないから」
「うん」
でもお願いだから今夜だけは。私と同じ未来を見て欲しい。
私のたった一つの希望守って欲しい。
素敵な世界へ連れて行って。
0
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