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4thSEASON
今日の主役は……
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(1)
「冬夜君おはよう。朝だよ~」
今日も愛莉の声が元気に聞こえる。
「おはよう愛莉……」
「どうしたの?やだ!風邪でも引いちゃった……」
「いや……眠いだけ」
「なんかいつもより気だるそうだよ。……あ、そうだ!」
愛莉は何かを思いついたようだ。
またしょうもない事考えてるんだろうな。
……当った。
愛莉は自分のおでこを僕のおでこにくっ付けている。
「う~ん熱は無いね」
「だから風邪じゃないって言ったろ?」
それにそんなに顔が近いと、唇が近くにあると。したくなるよね。
朝から熱いキスを交わす。
「うん、いつもの冬夜君だ」
てかそれ目的でやったろ?
僕は重い体に力を込めて上身を起こし背伸びをする。
「はい、起きたら着替えてジョギングだよ」
「わかった……」
言われるがままに着替えて、ジョギングの準備をする。
そしていつものコースを1時間ほど走る。
家に帰ると、シャワーを浴びて朝食を食べる。
愛莉がシャワーを浴びてる間にコーヒーを入れて持って行く。
愛莉のにはミルクと砂糖を入れるのを忘れずに。
そしてネットで検索する。
今日はどこに遊びに行こうか?
いつもの如く青い鳥で時間を潰すか?
目的は愛莉を家から連れ出す事。
散々親から言われ続けている事だ。
愛莉は休みの日に家にいると家事を始める。
それでは休みの意味がない。
余り遠出も出来ない。来週にはもうアジア選手権を控えている。
近場で遊べる場所……うーん。
答えは愛莉がもたらしてくれた。
「冬夜君、今日ショッピングモールに連れて行って」
シャワーから戻ってきた愛莉がそう言った。
「今日何かあるの?」
愛莉から出かけたいと言い出すのも珍しい。
願ったりかなったりだけど。
「うん、今日神奈の誕生日だからプレゼント持っていてあげようと思って」
「プレゼント?」
「うん、誕生年製の赤ワイン。神奈だったら喜ぶかな~と思って。直接配送してもらうのもよかったんだけどどうせなら手渡ししたいなって」
ああ、そういう事ね。
ショッピングモールが開くまでまだ時間あるな。
「カンナには伝えてるのか?」
「今日神奈の家に行くからって伝えたよ」
「わかった。じゃあ今日の予定は決まりだな」
僕はPCをシャットダウンする。
愛莉とコーヒーを飲んで着替えたり愛莉の準備が整うのを待っていればちょうどいい時間になる。
「できたよ~。ところで今日の予定って?」
「ショッピングモールでワインを受け取ってカンナの家に行ってそれからカンナの家の近くのショッピングモール言ってランチ食べて、それから佐賀関でも行こうかな?って」
「佐賀関?」
「まだ、天文台行ったことなかったろ?」
「昼間に見れるの?」
「見れるらしいよ。それにドライブにもちょうどいいだろ?」
「わかった~」
予定を説明し終えると愛莉と家を出る。
まずは、ショッピングモールにワインを受け取りに行く。
値段を聞いてびっくりした。もっと高いワインもあるらしい。
それを持ってカンナの家に向かう。
呼び鈴を押すとカンナがめんどくさそうに出る。
「誠~また忘れものか~?」
愛莉は僕の目を塞いだ。
一瞬だけ見てしまった。
パジャマの上だけ来て下を履いてないカンナのあられもない姿を。
「神奈!私だよ!冬夜君いるから下何か穿いて!」
カンナは僕の姿に気づくと慌ててドアを閉める。
「ちょっと待ってろ!」
カンナは準備をしてるようだ。
大方部屋をささっと片付けたりしてるんだろう?
「冬夜君見たでしょう?」
愛莉が僕を睨む。
まあ、生の女性の下着姿を見るのは愛莉以外だと初めてだけどね。
カンナって本当に足とか細くて長いな。
誠はそれだけでは物足りないんだろうか?
あんなの毎日見てたら、十分だと思うんだけどな。
「また変な事考えてる!」
ぽかっ
「大丈夫だよ愛莉。僕にとってやっぱり愛莉のちょっとふっくらとした体形の方が……」
ぽかぽかっ
「人が気にしてる事を気安く言わないの!どうせ神奈の方がスタイル良いですよ!」
愛莉が拗ねてる。こんな時の対処法もちゃんと心得ていますよ。
「僕には愛莉だけいればいいから気にしないで」
愛莉を後ろから抱きしめて耳元で囁いてやれば愛莉の機嫌も直るというもの。
「……うぅ」
返す言葉がみつからなくて困っているのだろう。そういう時の声だ。
「……本当に?」
「もちろん」
「じゃあ、許す~♪」
愛莉とじゃれ合っていると、いつの間にかカンナが扉を開けてこっちを見てる。
「朝からやってきてイチャイチャしてるところを見せつけに来たのかお前ら……」
カンナそう言って呆れている。
「じゃーん!今日神奈の誕生日でしょ!お祝い買ってきたよ~」
そう言ってワインをカンナに渡す。
「ありがとな!まあちょっと上がれよ」
1LDKのリビングに案内されると「お茶くらい飲んでいけよ」と神奈が言う。
「誠君は?」
「ああ、部活に行ってるよ。人にはバイト休ませておいて何やってんだかな」
部屋を見回す。ここでカンナと二人暮らししてるのか~。ところどころに生活感のあるリビング。
部屋を見てる僕を見るとカンナは「あまり掃除してる暇なくてな。あまりじろじろ見るな」と言って笑う。
「神奈、誠君にはお祝いしてもらえないの?」
愛莉がカンナに訪ねる。
「いや、部活から帰ってきたらどこが飯食いに連れて行ってくれるらしい」
「そうなんだ~?ひょっとしてお泊り?」
「飯食って帰ってくるだけだよ」
カンナは照れくさそうに言っていた。
「お前らこの後用事あるのか?」
「ショッピングモールで飯食ってちょっとドライブ行く予定」
「神奈も一緒に行かない?」
愛莉が聞くと神奈は首を振った。
「誠が帰ってくる前にやっとくこといっぱいあるからな」
「2人の邪魔しちゃ悪いし」と付け足してカンナは答えた。
「そっか~」
少し残念そうな愛莉。
「今度また4人でどこか行くか?」
「いいよ~」
二人で盛り上がっている。
その後も新婚生活はどうとか、誠への愚痴とか僕への不満とか話題は尽きることは無かった。
その間テレビを見てる。
「そろそろ行かないとあそこ混むんじゃないのか?」
カンナが言う。
ああ、もうそんな時間か。
「じゃあ、いい誕生日を過ごしてね」
「ああ、ありがとうな」
そう言ってカンナの家を出る。
その後ショッピングモールで昼食を食べてちょっと店を見て回る。
今日は愛莉はお店を見て回るだけだった。
何も買わなくていいの?って聞くと
「うん、冬夜君とウィンドウショッピングしてるだけでも楽しいよ」と愛莉は答える。
その後佐賀関に向かって天文台を目指す。
天文台では太陽の黒点や太陽プロミネンス、金星や恒星などを見る事が出来る。
展望台で絶景を楽しむと半島をぐるりと一周し家に帰る。
「冬夜君この後どうするの?」
愛莉が聞いてくる。
まだ夕食までは時間あるな。
多分帰るっていったら「じゃあ、夕飯の材料買って帰る~」って言いだしかねない。
どこか行くところないかな?
ところが愛莉が珍しい事を言い出した。
「予定ないなら臼杵に行かない?」
「臼杵?」
煎餅でも食べたいのか?フグはさすがに高いぞ?
「変わった味のソフトクリーム売ってるってネットで見たから」
「愛莉がそう言うなら行くよ」
「わ~い」
信号を左折し臼杵へと向かった。
(2)
愛莉が買ってくれたプレゼントを開けてみる。
年代物のワインだ。
愛莉に「プレゼント見た。ありがとうな!」とメッセージを送る。
「それ飲んで今夜は誠君と楽しんでね」と返事が返ってきた。
適当に昼食を食べて洗濯、掃除整理整頓などを済ませていく。
いらないなと思った服や下着を処分する。
誠が集めてきたくだらない雑誌等をまとめてビニール紐でくくる。
ゴミの回収日をチェックしておく。
そろそろ誠が帰ってくる頃だ、着替えを済ませて支度をしているとガチャっと扉の開く音が聞こえた。
「ただいま~」
「ああ、おかえり~」
「なんだ、もう準備してたのか?」
「まあな、残念だったな」
「……今日はそういうの無しにしとくよ」
「え?」
いつもの誠のノリじゃない。
「あ、これプレゼント。誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう」
箱を開けるとハイソックスが入ってあった。
やっぱりいつものノリじゃねーか!
「寝てる時とか寛いでる時に履くと良いらしい。疲れが取れるらしいぞ」
誠はそう言って笑う。
どうしたんだ?誠?
「何かあったのか?いつもと違うぞ?」
「別に何もないよ。気にするな。あ、俺ちょっとシャワー浴びて良いか?」
「あ、ああ。ゆっくりしろよ。まだ時間あるんだろ……」
「そうだな」
そう言って浴室に入る誠。
脱ぎ捨てたズボンのポケットを見ていた。
まさかあいつ……。
そう言うわけでもないらしい。
何があったと言うんだ一体。
誠と電車で市街地へ向かう。
誠の予約していた店でディナーを楽しむ。
ディナーを楽しんでる間も誠の様子は相変わらずだ。
どことなくよそよそしい。
その後バーを何軒かハシゴした後終電で家に帰る。
家に帰ると、誠は部屋着に着替えて着ていた服を洗濯機に放り込む。
いつもならそこら辺にぽいなのに……。
いつもと違う態度をとられるとなぜか不安になる。
「神奈これは?」
愛莉の持ってきたワインを指差す。
「ああ、愛莉が持ってきた誕生日プレゼント」
「へえ、早速飲むか?」
「そ、そうだな」
考えすぎか?
試しに誠の前で部屋着に着替えてみた。
誠は反応すらしない。
まさか私飽きられた?
他の女の気配を感じられずにはいられなかった。
「誠……スマホ見せろ」
「どうしたんだ突然?」
「良いから見せろ!」
私は怒鳴ってた。
誠はスマホの認証を解除して私に渡す。
大体が渡辺班の連絡先だ。別段怪しい所は無い。
こうなったら本人に直接聞くのが早い。
「誠、何隠してる」
「へ?」
「私に何か隠し事してるだろ!」
「……信用されてないんだな俺」
誠はそう言って笑う。
そっち系じゃない?別の方?
「誠はどう思ってるかわからないが、私は誠の妻だ!お前が抱えてる悩みを和らげるくらいは出来る自信はある!言えよ!」
愛莉ほど器も胸も大きくないけど、それでも私は誠の妻だ。
「神奈……まず落ち着いて座ろう」
誠がそう言うので座った。
誠は私のワイングラスにワインを注ぐ。
私は誠のワイングラスにワインを注いだ。
「誕生日おめでとう。乾杯」
こんな乾杯嬉しくねーぞ。
そんな私の気持ちに気づくはずもなく誠は説明を始めた。
「まず神奈が思ったこと。浮気・風俗。そういうのは一切ないから!」
私は黙ってうなずいた。
「次に神奈が考えたこと、悩み、愚痴、不満も一切ないから」
「じゃあ何があるんだよ?」
「そうだな、感謝かな?」
「感謝?」
「ああ、こんな俺だけをずっと想い続けてくれてる。しかも結婚までしてくれた。そんな一人の女性を心から尊敬して感謝している」
「それは……」
私だって一緒だ。こんなに弱くて脆い私を懸命に支えてくれてる誠に感謝している。
「だからさ、今日一日くらいは休ませてやろうと思ったんだ。寛がせてやろうと思ったんだ。変な要求しないでゆっくり自然体の神奈を愛そうって思っただけだ。それが逆効果だったみたいだけどな」
そう言って誠は笑う。
でも違うんだ誠。
「余計な事考えてるんじゃねーよ!私はいつもの誠が好きなんだ!素の自分を曝け出す誠を愛してる。私の前でくらい飾るなよ。いつものお前でいいんだ」
いつもの誠が好きなんだ。
「そうか……」
誠は一言言うとワインを飲み干す。
私は次を注いでやった。
「結構おいしいぜこのワイン。神奈も飲めよ。さっきから一口も飲んでないじゃないか」
折角の誕生日プレゼントだろ?と誠は笑う。
私はワインを飲んだ。確かに美味しい。
「俺はダメだな。冬夜と違って上手く神奈に入ってやれない」
「トーヤと比較するのは止めろと言ったはずだ」
私だって愛莉みたいに可愛くない。
「じゃあ、神奈の誕生日だ、一つ希望を聞こうじゃないか!何して欲しい?」
「何でも良いのか?」
「ああ、なんでもいいぜ?」
「じゃあ、一つだけ」
「おう!」
「今夜朝まで付き合え!」
「そのつもりで明日も休みをとってきてあるよ」
「んじゃ、まずこのワイン飲んでしまおうか」
「ああ、そうだな」
ワインが尽きるまで二人で語り合う。
色々な事。
お互いに想ってる事感じてる事をありのままに話す。
話題が尽きることは無かった。
先にワインが底をついてしまった。
「まだビールあったよな」
そう言って立ち上がる誠の腕を掴んだ。
「その必要なない」
「え?」
「寝室に行こう」
そう言って二人で寝室に行くとベッドに横になる。
「神奈言っておくけど男ってのは酔ってしまうとイケなくなってしまうものなんだぜ……ってやばっ!今の無し」
私は笑っていた。
「やっぱり誠はそうでないとな」
誠に抱き着く。
「誠約束まだ有効だよな」
「朝までだしな」
「私より先に眠らないで」
「神奈?」
「私が誠に朝まで甘えてるから先に寝ないでくれ」
「……わかった」
誠は本当に私が眠るまで付き合ってくれた。
私は誠の腕の中で、温かい腕の中で、安らかな一時を過ごした。
(3)
「あれ?お前確か……」
「あ、水島先輩じゃないっすか?」
水族館で偶然晴斗と出会った。
「どうしたんすか?水島先輩?」
「俺はデートだよ。お前もか?」
「彼女と行きたい場所だったっすから!」
そう言って晴斗はにこりと笑う。
なるほどな……男はこうも同じ事考えてしまうものか。
「先輩もここに彼女と来たかったっすか?」
晴斗が聞く。
「そういうわけでもないんだけどな。約束したからな」
「じゃ、やっぱり来たかったんすね?」
晴斗の思考だとそうなんだろうな?
単にデートコースという物が思いつかなかっただけ。
そうは考えられないんだろうな。
「晴斗、折角のデート邪魔しちゃダメ」
春奈が、そう言うと「そっすね、じゃあまた~」と先に行ってしまった。
その間桜子は一言も話さなかった。
「もう行ったぜ?」
俺は桜子の肩を叩く。
「知り合いに会って気まずいとかそういう事考えないんですか!?2人とも信じられない!」
「別に相手もカップルだったんだし良いだろ?」
別に元カノに遭遇したとかじゃないんだし。
「すいません、私こういうのあまり慣れてなくて……。佐(たすく)は慣れてるんだろうけど。」
俺もそこまで慣れていないけどな。
大会終わったら、水族館でも行こう。
その約束を今さらになって果たしていた。
当たり前だけど桜子も女性だ。
やはり水族館等に来るとはしゃぎたくもなるもの。
その姿をあまり見られたくなかったんだろう。
彼氏とじゃれ合うその姿を。
ここの水族館は生きている動物にじかに触れるという特徴がある。
が、桜子のお気に召さなかったようだ。
「気持ち悪いからイヤ!」
イルカショーやセイウチ、アザラシのショーもある。
それらを見てからレストランで食事をする。
水族館の感想等を話していたのだがどうしても桜子からは冬夜の存在を消せないらしい。
「いよいよですね。来週からアジア選手権」
「そうだな」
「ユニバーシアード組がそのまま行くらしいからきっと勝てますよ。勝たないとオリンピックに行けない」
「ああ」
「佐はどこが強敵だと思いますか?私は中国だと思うんですけど」
「まあ、ホームだしな」
「……ごめんなさい、またバスケの話になっちゃいました」
「正確には冬夜の話だろ?」
俺はそう言って笑う。
「そ、そうですね。デート中に他の男の話して何やってんだろ私」
「勘弁してくれよ、一人で勝手に自己嫌悪に入った挙句泣かれたら折角のデートが台無しだ」
「す、すいません」
「あいつはすげーよな、着実に夢叶えてる」
「……そうですね」
だから寂しいんだろうな。アイツの夢が叶う事はバスケを辞めることにつながるんだから。
だとしてもあいつの夢をいまさら止めることは出来ない。
あいつなりにケジメつけて辞めるって言うんだから誰も止めることは出来ない。
「あいつ、就職希望も決めてるみたいだぜ」
「知ってます地元銀行ですよね」
「それって結局バスケを続けるってことじゃねーの?」
「そうですね」
「桜子は代表として活躍して欲しいのか?プロになって活躍して欲しいのか?それとも単にバスケを捨てないで欲しいのか?どれなんだ」
「それは……」
「サッカーの事はよくしらねーけど、あいつはサッカーを捨ててバスケを始めた。それが嬉しかったんじゃないのか?」
「佐の言う通りです」
とはいえ、やはり代表やプロになれるのにそこから逃げるのは許せないんだろうな。
でも俺からしてみたらカッコいいと思う。本当にそれを実現できたのなら。
「佐は将来考えてるんですか?」
「俺か?俺は……まあ企業バスケの道かなやっぱり」
プロになれる器じゃねーしなと付け加えた。
「佐も才能あると思います」
桜子はバッグからタブレットを取り出した。
「片桐先輩が目立って気づかない人も多いかもしれないけど佐のシュート成功率も凄く精度が高い。片桐先輩の次に脅威ですよ」
そう言って桜子の話をニヤニヤと聞いていた。
桜子はそんな俺を見て怪訝な顔をしていたが自分のやっていることに気づいたらしい。
慌ててタブレットを仕舞う。
「ごめんなさい、私慣れてなくて」
「謝ることはねーよ。こう見えて結構楽しませてもらってるんだぜ」
「こ、この後どうするんですか?」
「そうだな、まずお土産見て……。猿山でも見に行くか?ついでだしな」
「はい!」
お土産でイルカの大きなぬいぐるみを買う桜子。
桜子の好みってそういうのなんだな。
基本的には普通の女性なんだな。
猿山を見て回る。
文字通り猿がいるんだけど。時間帯によって群れが変わる。
凄いのはその然る一匹ずつ名前が付けられてあって飼育員が覚えているという事。
解説を聞きながら驚いていた。
一通り見て回ると、地元に帰る。
「この後どうする?」
「……私の家に来ませんか?」
「え?」
「どうせ夕食を食べる予定だったんでしょ。いつか言いましたよね?佐の食事の管理は私がするって」
手料理を作ってくれるらしい。
「その前に俺の家に寄ってくれないか?」
「どうして?」
「いるだろ?着替え」
桜子は意味を理解するのに時間がかかったようだ。
「佐!私はそんなつもりで呼んだわけじゃ」
「ないのか?それは残念だな」
「……佐の馬鹿!」
その後桜子の家で桜子の手料理を振舞ってもらい。深夜までバスケのDVDを見てから一夜を明かした。
(4)
「ねえ?冬夜君はどれが好きだった?」
「醤油」
「やっぱりそうなんだ」
「て、事は愛莉も?」
「うん」
愛莉と臼杵に来た僕達はソフトクリームを食べて臼杵煎餅を買ってその後臼杵城を見てから帰った。
帰りに適当な店に入って夕食を食べてから帰ろうと思っていた。
「愛莉何か食べたいものある?」
「う~ん……」
愛莉は悩んでいる。
そして決まったらしい。
「お寿司~」
「……回るのでいい?」
「うん」
デザートもあるしとはしゃいでる。
ここからだと近いのはあそこだろうな。
「でもいいの?冬夜君の食べたいの今日食べてないよ?」
「今日は愛莉の日だからいいの」
「ほえ?」
「愛莉のメンテ日だろ?」
「ああ」
愛莉は納得したようだ。
だが、何か考え込んでる。
俯いたまま元気がない。
何か言いたそうなのは分かるけど。
「どうしたの?」
「笑わない?」
笑うようなことなのか?
取りあえずうなずいた。
「冬夜君私のメンテ日って言ったよね?」
「言ったよ?」
「ちゃんと丁寧にメンテしてくれる?」
意味を理解するのに時間がかかった。
それで「笑わないでね」か。
「いいよ、じっくり見てあげる」
「うぅ、なんか言い方がやらしい」
「気のせいだろ?」
その後回転寿司を食べて家に帰ると僕がまず風呂に入る。
愛莉のメンテ日だから愛莉が先でいいのに。
僕が風呂から出ると愛莉が入れ替わりで入る。
テレビを見ていた。
丁度地元のニュースだ。
何か不審なニュースが入った。
「カラオケ店で婦女暴行。逮捕」
ああ、よくいるらしいね。そういうやつ。
マイクのケーブル使って縛りプレイとかするとかなんとか?
部屋にカメラ付いてるのによくやるよね。
その程度の認識だった。
でも何だろう、不思議と気になった。
原因はその手口だ。
ただの合コンかと思ったらやり目サークルだった。
やり目サークル。
その単語がどうしても気になる。
まさか……ね。
愛莉が戻ってくる。
慌ててチャンネルを変えた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう?あ、もってきたよ。じゃーん」
愛莉が持ってきたのは二缶の酎ハイ。
2人で飲んでいい気分になったところで。
「じゃ、早いけど始めようか」
「……うん」
僕が先にベッドに入るとあとから入って僕に抱き着く。
さっきまでの不穏な感じは掻き消えていた。
「いよいよだね。アジア選手権」
「ああ、愛莉のチケットも手配してあるよ」
「わ~い。一生懸命応援するね」
「じゃあ、頑張らないとな?」
「うん」
二番目の難関が待ち構えている。
「冬夜君おはよう。朝だよ~」
今日も愛莉の声が元気に聞こえる。
「おはよう愛莉……」
「どうしたの?やだ!風邪でも引いちゃった……」
「いや……眠いだけ」
「なんかいつもより気だるそうだよ。……あ、そうだ!」
愛莉は何かを思いついたようだ。
またしょうもない事考えてるんだろうな。
……当った。
愛莉は自分のおでこを僕のおでこにくっ付けている。
「う~ん熱は無いね」
「だから風邪じゃないって言ったろ?」
それにそんなに顔が近いと、唇が近くにあると。したくなるよね。
朝から熱いキスを交わす。
「うん、いつもの冬夜君だ」
てかそれ目的でやったろ?
僕は重い体に力を込めて上身を起こし背伸びをする。
「はい、起きたら着替えてジョギングだよ」
「わかった……」
言われるがままに着替えて、ジョギングの準備をする。
そしていつものコースを1時間ほど走る。
家に帰ると、シャワーを浴びて朝食を食べる。
愛莉がシャワーを浴びてる間にコーヒーを入れて持って行く。
愛莉のにはミルクと砂糖を入れるのを忘れずに。
そしてネットで検索する。
今日はどこに遊びに行こうか?
いつもの如く青い鳥で時間を潰すか?
目的は愛莉を家から連れ出す事。
散々親から言われ続けている事だ。
愛莉は休みの日に家にいると家事を始める。
それでは休みの意味がない。
余り遠出も出来ない。来週にはもうアジア選手権を控えている。
近場で遊べる場所……うーん。
答えは愛莉がもたらしてくれた。
「冬夜君、今日ショッピングモールに連れて行って」
シャワーから戻ってきた愛莉がそう言った。
「今日何かあるの?」
愛莉から出かけたいと言い出すのも珍しい。
願ったりかなったりだけど。
「うん、今日神奈の誕生日だからプレゼント持っていてあげようと思って」
「プレゼント?」
「うん、誕生年製の赤ワイン。神奈だったら喜ぶかな~と思って。直接配送してもらうのもよかったんだけどどうせなら手渡ししたいなって」
ああ、そういう事ね。
ショッピングモールが開くまでまだ時間あるな。
「カンナには伝えてるのか?」
「今日神奈の家に行くからって伝えたよ」
「わかった。じゃあ今日の予定は決まりだな」
僕はPCをシャットダウンする。
愛莉とコーヒーを飲んで着替えたり愛莉の準備が整うのを待っていればちょうどいい時間になる。
「できたよ~。ところで今日の予定って?」
「ショッピングモールでワインを受け取ってカンナの家に行ってそれからカンナの家の近くのショッピングモール言ってランチ食べて、それから佐賀関でも行こうかな?って」
「佐賀関?」
「まだ、天文台行ったことなかったろ?」
「昼間に見れるの?」
「見れるらしいよ。それにドライブにもちょうどいいだろ?」
「わかった~」
予定を説明し終えると愛莉と家を出る。
まずは、ショッピングモールにワインを受け取りに行く。
値段を聞いてびっくりした。もっと高いワインもあるらしい。
それを持ってカンナの家に向かう。
呼び鈴を押すとカンナがめんどくさそうに出る。
「誠~また忘れものか~?」
愛莉は僕の目を塞いだ。
一瞬だけ見てしまった。
パジャマの上だけ来て下を履いてないカンナのあられもない姿を。
「神奈!私だよ!冬夜君いるから下何か穿いて!」
カンナは僕の姿に気づくと慌ててドアを閉める。
「ちょっと待ってろ!」
カンナは準備をしてるようだ。
大方部屋をささっと片付けたりしてるんだろう?
「冬夜君見たでしょう?」
愛莉が僕を睨む。
まあ、生の女性の下着姿を見るのは愛莉以外だと初めてだけどね。
カンナって本当に足とか細くて長いな。
誠はそれだけでは物足りないんだろうか?
あんなの毎日見てたら、十分だと思うんだけどな。
「また変な事考えてる!」
ぽかっ
「大丈夫だよ愛莉。僕にとってやっぱり愛莉のちょっとふっくらとした体形の方が……」
ぽかぽかっ
「人が気にしてる事を気安く言わないの!どうせ神奈の方がスタイル良いですよ!」
愛莉が拗ねてる。こんな時の対処法もちゃんと心得ていますよ。
「僕には愛莉だけいればいいから気にしないで」
愛莉を後ろから抱きしめて耳元で囁いてやれば愛莉の機嫌も直るというもの。
「……うぅ」
返す言葉がみつからなくて困っているのだろう。そういう時の声だ。
「……本当に?」
「もちろん」
「じゃあ、許す~♪」
愛莉とじゃれ合っていると、いつの間にかカンナが扉を開けてこっちを見てる。
「朝からやってきてイチャイチャしてるところを見せつけに来たのかお前ら……」
カンナそう言って呆れている。
「じゃーん!今日神奈の誕生日でしょ!お祝い買ってきたよ~」
そう言ってワインをカンナに渡す。
「ありがとな!まあちょっと上がれよ」
1LDKのリビングに案内されると「お茶くらい飲んでいけよ」と神奈が言う。
「誠君は?」
「ああ、部活に行ってるよ。人にはバイト休ませておいて何やってんだかな」
部屋を見回す。ここでカンナと二人暮らししてるのか~。ところどころに生活感のあるリビング。
部屋を見てる僕を見るとカンナは「あまり掃除してる暇なくてな。あまりじろじろ見るな」と言って笑う。
「神奈、誠君にはお祝いしてもらえないの?」
愛莉がカンナに訪ねる。
「いや、部活から帰ってきたらどこが飯食いに連れて行ってくれるらしい」
「そうなんだ~?ひょっとしてお泊り?」
「飯食って帰ってくるだけだよ」
カンナは照れくさそうに言っていた。
「お前らこの後用事あるのか?」
「ショッピングモールで飯食ってちょっとドライブ行く予定」
「神奈も一緒に行かない?」
愛莉が聞くと神奈は首を振った。
「誠が帰ってくる前にやっとくこといっぱいあるからな」
「2人の邪魔しちゃ悪いし」と付け足してカンナは答えた。
「そっか~」
少し残念そうな愛莉。
「今度また4人でどこか行くか?」
「いいよ~」
二人で盛り上がっている。
その後も新婚生活はどうとか、誠への愚痴とか僕への不満とか話題は尽きることは無かった。
その間テレビを見てる。
「そろそろ行かないとあそこ混むんじゃないのか?」
カンナが言う。
ああ、もうそんな時間か。
「じゃあ、いい誕生日を過ごしてね」
「ああ、ありがとうな」
そう言ってカンナの家を出る。
その後ショッピングモールで昼食を食べてちょっと店を見て回る。
今日は愛莉はお店を見て回るだけだった。
何も買わなくていいの?って聞くと
「うん、冬夜君とウィンドウショッピングしてるだけでも楽しいよ」と愛莉は答える。
その後佐賀関に向かって天文台を目指す。
天文台では太陽の黒点や太陽プロミネンス、金星や恒星などを見る事が出来る。
展望台で絶景を楽しむと半島をぐるりと一周し家に帰る。
「冬夜君この後どうするの?」
愛莉が聞いてくる。
まだ夕食までは時間あるな。
多分帰るっていったら「じゃあ、夕飯の材料買って帰る~」って言いだしかねない。
どこか行くところないかな?
ところが愛莉が珍しい事を言い出した。
「予定ないなら臼杵に行かない?」
「臼杵?」
煎餅でも食べたいのか?フグはさすがに高いぞ?
「変わった味のソフトクリーム売ってるってネットで見たから」
「愛莉がそう言うなら行くよ」
「わ~い」
信号を左折し臼杵へと向かった。
(2)
愛莉が買ってくれたプレゼントを開けてみる。
年代物のワインだ。
愛莉に「プレゼント見た。ありがとうな!」とメッセージを送る。
「それ飲んで今夜は誠君と楽しんでね」と返事が返ってきた。
適当に昼食を食べて洗濯、掃除整理整頓などを済ませていく。
いらないなと思った服や下着を処分する。
誠が集めてきたくだらない雑誌等をまとめてビニール紐でくくる。
ゴミの回収日をチェックしておく。
そろそろ誠が帰ってくる頃だ、着替えを済ませて支度をしているとガチャっと扉の開く音が聞こえた。
「ただいま~」
「ああ、おかえり~」
「なんだ、もう準備してたのか?」
「まあな、残念だったな」
「……今日はそういうの無しにしとくよ」
「え?」
いつもの誠のノリじゃない。
「あ、これプレゼント。誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう」
箱を開けるとハイソックスが入ってあった。
やっぱりいつものノリじゃねーか!
「寝てる時とか寛いでる時に履くと良いらしい。疲れが取れるらしいぞ」
誠はそう言って笑う。
どうしたんだ?誠?
「何かあったのか?いつもと違うぞ?」
「別に何もないよ。気にするな。あ、俺ちょっとシャワー浴びて良いか?」
「あ、ああ。ゆっくりしろよ。まだ時間あるんだろ……」
「そうだな」
そう言って浴室に入る誠。
脱ぎ捨てたズボンのポケットを見ていた。
まさかあいつ……。
そう言うわけでもないらしい。
何があったと言うんだ一体。
誠と電車で市街地へ向かう。
誠の予約していた店でディナーを楽しむ。
ディナーを楽しんでる間も誠の様子は相変わらずだ。
どことなくよそよそしい。
その後バーを何軒かハシゴした後終電で家に帰る。
家に帰ると、誠は部屋着に着替えて着ていた服を洗濯機に放り込む。
いつもならそこら辺にぽいなのに……。
いつもと違う態度をとられるとなぜか不安になる。
「神奈これは?」
愛莉の持ってきたワインを指差す。
「ああ、愛莉が持ってきた誕生日プレゼント」
「へえ、早速飲むか?」
「そ、そうだな」
考えすぎか?
試しに誠の前で部屋着に着替えてみた。
誠は反応すらしない。
まさか私飽きられた?
他の女の気配を感じられずにはいられなかった。
「誠……スマホ見せろ」
「どうしたんだ突然?」
「良いから見せろ!」
私は怒鳴ってた。
誠はスマホの認証を解除して私に渡す。
大体が渡辺班の連絡先だ。別段怪しい所は無い。
こうなったら本人に直接聞くのが早い。
「誠、何隠してる」
「へ?」
「私に何か隠し事してるだろ!」
「……信用されてないんだな俺」
誠はそう言って笑う。
そっち系じゃない?別の方?
「誠はどう思ってるかわからないが、私は誠の妻だ!お前が抱えてる悩みを和らげるくらいは出来る自信はある!言えよ!」
愛莉ほど器も胸も大きくないけど、それでも私は誠の妻だ。
「神奈……まず落ち着いて座ろう」
誠がそう言うので座った。
誠は私のワイングラスにワインを注ぐ。
私は誠のワイングラスにワインを注いだ。
「誕生日おめでとう。乾杯」
こんな乾杯嬉しくねーぞ。
そんな私の気持ちに気づくはずもなく誠は説明を始めた。
「まず神奈が思ったこと。浮気・風俗。そういうのは一切ないから!」
私は黙ってうなずいた。
「次に神奈が考えたこと、悩み、愚痴、不満も一切ないから」
「じゃあ何があるんだよ?」
「そうだな、感謝かな?」
「感謝?」
「ああ、こんな俺だけをずっと想い続けてくれてる。しかも結婚までしてくれた。そんな一人の女性を心から尊敬して感謝している」
「それは……」
私だって一緒だ。こんなに弱くて脆い私を懸命に支えてくれてる誠に感謝している。
「だからさ、今日一日くらいは休ませてやろうと思ったんだ。寛がせてやろうと思ったんだ。変な要求しないでゆっくり自然体の神奈を愛そうって思っただけだ。それが逆効果だったみたいだけどな」
そう言って誠は笑う。
でも違うんだ誠。
「余計な事考えてるんじゃねーよ!私はいつもの誠が好きなんだ!素の自分を曝け出す誠を愛してる。私の前でくらい飾るなよ。いつものお前でいいんだ」
いつもの誠が好きなんだ。
「そうか……」
誠は一言言うとワインを飲み干す。
私は次を注いでやった。
「結構おいしいぜこのワイン。神奈も飲めよ。さっきから一口も飲んでないじゃないか」
折角の誕生日プレゼントだろ?と誠は笑う。
私はワインを飲んだ。確かに美味しい。
「俺はダメだな。冬夜と違って上手く神奈に入ってやれない」
「トーヤと比較するのは止めろと言ったはずだ」
私だって愛莉みたいに可愛くない。
「じゃあ、神奈の誕生日だ、一つ希望を聞こうじゃないか!何して欲しい?」
「何でも良いのか?」
「ああ、なんでもいいぜ?」
「じゃあ、一つだけ」
「おう!」
「今夜朝まで付き合え!」
「そのつもりで明日も休みをとってきてあるよ」
「んじゃ、まずこのワイン飲んでしまおうか」
「ああ、そうだな」
ワインが尽きるまで二人で語り合う。
色々な事。
お互いに想ってる事感じてる事をありのままに話す。
話題が尽きることは無かった。
先にワインが底をついてしまった。
「まだビールあったよな」
そう言って立ち上がる誠の腕を掴んだ。
「その必要なない」
「え?」
「寝室に行こう」
そう言って二人で寝室に行くとベッドに横になる。
「神奈言っておくけど男ってのは酔ってしまうとイケなくなってしまうものなんだぜ……ってやばっ!今の無し」
私は笑っていた。
「やっぱり誠はそうでないとな」
誠に抱き着く。
「誠約束まだ有効だよな」
「朝までだしな」
「私より先に眠らないで」
「神奈?」
「私が誠に朝まで甘えてるから先に寝ないでくれ」
「……わかった」
誠は本当に私が眠るまで付き合ってくれた。
私は誠の腕の中で、温かい腕の中で、安らかな一時を過ごした。
(3)
「あれ?お前確か……」
「あ、水島先輩じゃないっすか?」
水族館で偶然晴斗と出会った。
「どうしたんすか?水島先輩?」
「俺はデートだよ。お前もか?」
「彼女と行きたい場所だったっすから!」
そう言って晴斗はにこりと笑う。
なるほどな……男はこうも同じ事考えてしまうものか。
「先輩もここに彼女と来たかったっすか?」
晴斗が聞く。
「そういうわけでもないんだけどな。約束したからな」
「じゃ、やっぱり来たかったんすね?」
晴斗の思考だとそうなんだろうな?
単にデートコースという物が思いつかなかっただけ。
そうは考えられないんだろうな。
「晴斗、折角のデート邪魔しちゃダメ」
春奈が、そう言うと「そっすね、じゃあまた~」と先に行ってしまった。
その間桜子は一言も話さなかった。
「もう行ったぜ?」
俺は桜子の肩を叩く。
「知り合いに会って気まずいとかそういう事考えないんですか!?2人とも信じられない!」
「別に相手もカップルだったんだし良いだろ?」
別に元カノに遭遇したとかじゃないんだし。
「すいません、私こういうのあまり慣れてなくて……。佐(たすく)は慣れてるんだろうけど。」
俺もそこまで慣れていないけどな。
大会終わったら、水族館でも行こう。
その約束を今さらになって果たしていた。
当たり前だけど桜子も女性だ。
やはり水族館等に来るとはしゃぎたくもなるもの。
その姿をあまり見られたくなかったんだろう。
彼氏とじゃれ合うその姿を。
ここの水族館は生きている動物にじかに触れるという特徴がある。
が、桜子のお気に召さなかったようだ。
「気持ち悪いからイヤ!」
イルカショーやセイウチ、アザラシのショーもある。
それらを見てからレストランで食事をする。
水族館の感想等を話していたのだがどうしても桜子からは冬夜の存在を消せないらしい。
「いよいよですね。来週からアジア選手権」
「そうだな」
「ユニバーシアード組がそのまま行くらしいからきっと勝てますよ。勝たないとオリンピックに行けない」
「ああ」
「佐はどこが強敵だと思いますか?私は中国だと思うんですけど」
「まあ、ホームだしな」
「……ごめんなさい、またバスケの話になっちゃいました」
「正確には冬夜の話だろ?」
俺はそう言って笑う。
「そ、そうですね。デート中に他の男の話して何やってんだろ私」
「勘弁してくれよ、一人で勝手に自己嫌悪に入った挙句泣かれたら折角のデートが台無しだ」
「す、すいません」
「あいつはすげーよな、着実に夢叶えてる」
「……そうですね」
だから寂しいんだろうな。アイツの夢が叶う事はバスケを辞めることにつながるんだから。
だとしてもあいつの夢をいまさら止めることは出来ない。
あいつなりにケジメつけて辞めるって言うんだから誰も止めることは出来ない。
「あいつ、就職希望も決めてるみたいだぜ」
「知ってます地元銀行ですよね」
「それって結局バスケを続けるってことじゃねーの?」
「そうですね」
「桜子は代表として活躍して欲しいのか?プロになって活躍して欲しいのか?それとも単にバスケを捨てないで欲しいのか?どれなんだ」
「それは……」
「サッカーの事はよくしらねーけど、あいつはサッカーを捨ててバスケを始めた。それが嬉しかったんじゃないのか?」
「佐の言う通りです」
とはいえ、やはり代表やプロになれるのにそこから逃げるのは許せないんだろうな。
でも俺からしてみたらカッコいいと思う。本当にそれを実現できたのなら。
「佐は将来考えてるんですか?」
「俺か?俺は……まあ企業バスケの道かなやっぱり」
プロになれる器じゃねーしなと付け加えた。
「佐も才能あると思います」
桜子はバッグからタブレットを取り出した。
「片桐先輩が目立って気づかない人も多いかもしれないけど佐のシュート成功率も凄く精度が高い。片桐先輩の次に脅威ですよ」
そう言って桜子の話をニヤニヤと聞いていた。
桜子はそんな俺を見て怪訝な顔をしていたが自分のやっていることに気づいたらしい。
慌ててタブレットを仕舞う。
「ごめんなさい、私慣れてなくて」
「謝ることはねーよ。こう見えて結構楽しませてもらってるんだぜ」
「こ、この後どうするんですか?」
「そうだな、まずお土産見て……。猿山でも見に行くか?ついでだしな」
「はい!」
お土産でイルカの大きなぬいぐるみを買う桜子。
桜子の好みってそういうのなんだな。
基本的には普通の女性なんだな。
猿山を見て回る。
文字通り猿がいるんだけど。時間帯によって群れが変わる。
凄いのはその然る一匹ずつ名前が付けられてあって飼育員が覚えているという事。
解説を聞きながら驚いていた。
一通り見て回ると、地元に帰る。
「この後どうする?」
「……私の家に来ませんか?」
「え?」
「どうせ夕食を食べる予定だったんでしょ。いつか言いましたよね?佐の食事の管理は私がするって」
手料理を作ってくれるらしい。
「その前に俺の家に寄ってくれないか?」
「どうして?」
「いるだろ?着替え」
桜子は意味を理解するのに時間がかかったようだ。
「佐!私はそんなつもりで呼んだわけじゃ」
「ないのか?それは残念だな」
「……佐の馬鹿!」
その後桜子の家で桜子の手料理を振舞ってもらい。深夜までバスケのDVDを見てから一夜を明かした。
(4)
「ねえ?冬夜君はどれが好きだった?」
「醤油」
「やっぱりそうなんだ」
「て、事は愛莉も?」
「うん」
愛莉と臼杵に来た僕達はソフトクリームを食べて臼杵煎餅を買ってその後臼杵城を見てから帰った。
帰りに適当な店に入って夕食を食べてから帰ろうと思っていた。
「愛莉何か食べたいものある?」
「う~ん……」
愛莉は悩んでいる。
そして決まったらしい。
「お寿司~」
「……回るのでいい?」
「うん」
デザートもあるしとはしゃいでる。
ここからだと近いのはあそこだろうな。
「でもいいの?冬夜君の食べたいの今日食べてないよ?」
「今日は愛莉の日だからいいの」
「ほえ?」
「愛莉のメンテ日だろ?」
「ああ」
愛莉は納得したようだ。
だが、何か考え込んでる。
俯いたまま元気がない。
何か言いたそうなのは分かるけど。
「どうしたの?」
「笑わない?」
笑うようなことなのか?
取りあえずうなずいた。
「冬夜君私のメンテ日って言ったよね?」
「言ったよ?」
「ちゃんと丁寧にメンテしてくれる?」
意味を理解するのに時間がかかった。
それで「笑わないでね」か。
「いいよ、じっくり見てあげる」
「うぅ、なんか言い方がやらしい」
「気のせいだろ?」
その後回転寿司を食べて家に帰ると僕がまず風呂に入る。
愛莉のメンテ日だから愛莉が先でいいのに。
僕が風呂から出ると愛莉が入れ替わりで入る。
テレビを見ていた。
丁度地元のニュースだ。
何か不審なニュースが入った。
「カラオケ店で婦女暴行。逮捕」
ああ、よくいるらしいね。そういうやつ。
マイクのケーブル使って縛りプレイとかするとかなんとか?
部屋にカメラ付いてるのによくやるよね。
その程度の認識だった。
でも何だろう、不思議と気になった。
原因はその手口だ。
ただの合コンかと思ったらやり目サークルだった。
やり目サークル。
その単語がどうしても気になる。
まさか……ね。
愛莉が戻ってくる。
慌ててチャンネルを変えた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう?あ、もってきたよ。じゃーん」
愛莉が持ってきたのは二缶の酎ハイ。
2人で飲んでいい気分になったところで。
「じゃ、早いけど始めようか」
「……うん」
僕が先にベッドに入るとあとから入って僕に抱き着く。
さっきまでの不穏な感じは掻き消えていた。
「いよいよだね。アジア選手権」
「ああ、愛莉のチケットも手配してあるよ」
「わ~い。一生懸命応援するね」
「じゃあ、頑張らないとな?」
「うん」
二番目の難関が待ち構えている。
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