優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

節制と悪魔

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(1)

「冬夜君朝だよ~」

愛莉が耳元で囁けば、僕の目は覚めるけど、まだ体は気だるい。

「今日は天気いいから、日課の時間だよ~」

無駄な抵抗だとしりつつ愛莉を無視して寝る。

「うぅ……、また始まったね」

愛莉は何か考えてるようだ。
しかし考えるまでもなかったらしい。

「私にも秘策くらいあるんだから」

そう言うと愛莉は僕の耳たぶをカプッと噛む
何かしら僕にしてくるだろうと思ってた僕は、それを待ち構えてたかのように愛莉に抱き着く。

「誘ったのは愛莉だからな!」
「ちょっと、話聞いてたんでしょ!今日は日課の時間だよ」

そんなの関係ない。
僕は愛莉の上に立つと愛莉のパジャマのボタンを外していく。

「ダメだったら~」

言葉とは裏腹に抵抗を全くしない愛莉。
こういう時は押しまくれば行ける!
そう思っていたのは間違いだったようだ。

「冬夜!また愛莉ちゃん困らせてるんでしょ!いい加減に素直に起きなさい!」

母さんが来たようだ。
母さんはすぐには部屋に入ってこない。コンコンとノックするだけだ。

「ほら麻耶さんも言ってるよ」

愛莉はそう言うと僕からすり抜けるように起き上がり僕を抱きしめる。

「言っておくけど、嫌がってるわけじゃないんだからね。でも、冬夜君制御しないと最近止まらないから」
「その割には朝から耳たぶカプって……」
「そのくらいしないと起きてくれない困った旦那様だから~」

そう言って愛莉はベッドから出ると着替えを始める。
仕方ないので、僕も着替えて日課の準備をする。
部屋を出ようとすると愛莉が後ろから抱き着いて耳元で囁く。

「今日は2限からだよ」と。

それは一つの暗号みたいなもので「今日は朝ゆっくりできるよ」という意味だった。
ゆっくりできるから構ってね。スマホとかネットとか見るの無しだよという意味だった。
愛莉の方を振り返って見て見れば、愛莉は恥ずかしそうに笑ってる。

「わかった」

そう言うと僕は家を出て日課を始める。
日課が終るとシャワーを浴びる。
シャワーを浴びた頃には朝食が出来上がっていて。着替えて朝食を食べる。

「母さん、この前の話なんだけどな」

父さんが突然言い出した。

「遠坂さんから聞いたんだが、リンゴの収穫時期が早まったらしい。今日の午後3時には収穫するらしんだ」
「あら、突然なのね」

言葉の真意は別にあることくらいすぐにわかった。
腐った果実の処分は今日の15時。

「片桐家ではアップルパイとか食べないんですか?」

愛莉が質問する。

「そうね、うちの人達は雑食だから何でも食べるわよ」
「そうなんですね、今度りんご買ってきて作ろうかな~」
「愛莉アップルパイなんて作れるのか?」

ぽかっ

「中1の時に作ってあげたよ~覚えてないの!」
「そんなこともあったわね~」
「そう言えば冬夜君、興味なさそうに食べてたね。やっぱり嫌いなの?」
「この子に好き嫌いは無いわよ。きっと愛莉ちゃんが作ってくれたの嬉しいけど照れくさくて表現するのが恥ずかしかったのよ。この子そういうところあったから」
「なるほどね~」
「ご、ごちそうさま。愛莉も急がないとゆっくりするんだろ?」
「あ、そうだった。麻耶さんあとお願いします」
「はいはい、ごゆっくり~」

気づかれないようにしていた時間も両親にはバレバレのようで、気まずいかなと思ったけど愛莉にはそういうのは無いみたいだった。
シャワーから戻った愛莉が横に座る。
僕はさっきの内容を渡辺班に送る。

「今日の昼に急いで打ち合わせしよう。時間がない」

渡辺君が言う。

「大丈夫、うちの兵隊が既に警察署に張っているわ」

恵美さんが言う。

「15時なら善君も間に合うわね。使ってやってちょうだい」

メッセージを確認していると愛莉が腕を引っ張った。

「ゆっくりする時間たっぷりあるって言ったよ」
「ああ、このメッセージだけちょっと確認しとかないと……」

愛莉にスマホを取りあげられた。

「ぶーです。こんなの後で打ち合わせの時に聞けばいいもん」
「愛莉に構いながらするから」
「そんなの無理だもん。冬夜君私とするときは気持ち入れてくれるって言ったもん!」
「気持ちも入れてるから」
「本当かな?」

愛莉は僕の腕を掴む。

「見て気づかない?」
「着替えてないね」

あと、髪もブラシを通した形跡はない。

「今だったら好きにしていいんだよ」

むしろ好きにしてって意図すら感じるな。
こういう時ごねると愛莉はすぐに機嫌が悪くなる。

「しょうがない困ったお嫁さんだな」
「朝期待させてくれたのは冬夜君……きゃっ!」

愛莉をお姫様抱っこするとベッドにそっと乗せる。

「やっと優しくなってくれた~」

そう言う愛莉の衣服をはぎ取りそして……



愛莉は服を着替え化粧をしている。
僕はスマホを弄っている。
だけどふと愛莉を見ると寂しそうにこっちを見ている愛莉と目が合った。
愛莉は慌てて目線を鏡に戻す。
本当に困ったお嫁さんだな。
愛莉の側に近づくと、愛莉を後ろから抱きしめる。

「あっ、だめだよ。お化粧の邪魔しちゃだめっ!」

愛莉に怒られた。
でも本気で怒ってるわけではなさそうだ。

「化粧の後ならいいんだな?」
「……うん。でももうそんな時間ないよ?」
「愛莉とスキンシップする時間くらいあるさ」
「わ~い」

愛莉の化粧を終えると冷えたコーヒーを飲みながら愛莉に甘えさせてやる。
時間になるとお互いにバッグを持って学校に行く。
授業を終えると昼休み。
学食で弁当を食べていれば皆が集まってくる。
それから午後の作戦を練る。
実行するのは酒井夫妻と石原夫妻
あまり大勢で行っても邪魔になるのでその4人に任せることにした。
元々やれる事もそんなにない。
大体の事は両夫妻の兵隊がやってしまうんだから。
教皇と女教皇、二人を攫ったら。いつもの晶さんの別荘に連れて行く予定だった。

「他の皆は襲撃に備えて不用心な行動は控えてくれ」

皆は頷く。

「2人を確保したら状況は好転するんでしょうか?」

石原君が聞いてくる。

「エンペラーに近い間柄みたいだからね。どれだけ喋ってくれるか?だろうけど……」

そればっかりは聞いてみないとわからないな。

「まずは確保してからだよ、石原君と酒井君に期待してるよ」
「善君も夏休みの間に鍛えたからね。大丈夫よ!」

晶さんは自信ありげに言う。
2人とももう就職先探さなくていいんじゃないか?

(2)

「公生、朝だよ」

目を覚ますと奈留が着替えている。
僕も時計を確認すると、着替えを始めた。
奈留はその間に鞄に教科書とかノートを詰め込んでいる。
仕度が済むと食堂に移動する。
朝食を済ませると送迎の車に乗って学校に移動する。
学校で車を降りると、ひそひそと聞こえてくる噂話。
僕も奈留ももう慣れていた。
心配なのは奈留がまだ虐められていないかどうか?
奈留は元々愛想のいい子じゃないけど、ただ一人教室で小説を読んでいた。
しかし奈留に手を出してくる者は誰一人いない。
良い意味でも悪い意味でも。
皆が奈留を無視している。
そんな事で奈留は挫けたりしない。
奈留と昼休み屋上で話をしていた。
まわりでは上級生や同級生がわいわい騒いでる。

「新しい『教皇』を今日確保するそうよ」
「ああ、スマホ見たよ」

ユニティの実働部隊なら間違いないだろう。

「……公生はいつまで隠しておくつもり?」

奈留が聞いてきた。

「何を?」
「『IRIS』……」

それは僕達の最後の切札。

「IRISにアクセスできるのは今は公生だけ」
「……」
「他の重要ファイルを囮にしてまで存在を隠してきたIRIS」
「コードは教えたよ。後は彼らがどうやって辿り着くかを知りたくてね」
「公生はユニティを信用してないの?私たちを命がけで助けてくれた」
「奈留の言う通りだね。だからこそ易々と渡したくないのさ」
「どういう意味?」

奈留が僕を見る。

「エンペラーを追いかけていたら必ずIRISに辿り着く。時が来たら教えるよ」
「その時って今じゃないの?あと少しでアーバニティを追い詰められる」
「まだだ、彼等には賢者が残っている。賢者にIRISの存在を知られたらすぐに防壁を突破するだろう。僕に出来るのは目をアーバニティとユニティの抗争に注目させてIRISの存在を隠す事」
「彼等がIRISの場所を知らないと確信もてるの?」
「所在が分からないから僕達を狙っているんだろ?」
「なおさら彼らに教えておくべきじゃないの?」
「……今日は晴れていて暑いね。もう10月なのに」
「?」

僕はその場に寝っ転がる。
奈留も無言でその場に座る。
僕は奈留の膝の上に頭を乗せる。

「ちょっと公生!?」
「こうしていた時間が懐かしいよ」
「……また戻れる?」
「取り戻すさ、麗しき君の為にも」

予鈴が鳴ると僕達は教室に戻る。
午後の授業がはじまろうとしてた。
奴らが拘るIRISの存在意義。
それは禁断の果実のように裏組織の奴らにとっては喉から手が出るほど欲しいものだろう。
それはまるで呪われたダイヤモンドのように手にもつ人を不幸にするもの。

神が残した最後の宝物。

それを欲しがるのはアーバニティだけじゃない。
慎重に扱わないと。
それを知るのが僕達だけだからこそ危険かもしれないけど僕達だけだからこそ身の安全が保障されている。
ユニティを危険視してるわけじゃない。
彼等に賭けてみたい。
いつか彼らはIRISの存在に辿り着くだろう。
その時彼らは真の勝利を得るだろう。
その時は僕から彼らに渡そうと思う。
彼等を信じていないわけじゃない。
辿り着けると信じているから、敢えて教えないんだ。
そうして午後の時間が過ぎる。

(3)

急遽バイトを休みにしてもらった。

「青い鳥はまかせて!私が酒井君の分も頑張ってはたきますから。父さんが入院した時迷惑かけたし」

一ノ瀬さんはそう言って送り出してくれた。
僕と晶ちゃん。そして石原夫妻はと数名の兵隊は警察署の前を張っている。

見張りは1時間おきに交代している。
一人で長時間待っていたら疑われてしまうから。
そして予定の3時になった。

「今目的が署をでます」

僕と晶ちゃんは玄関を注目する。
同じ年頃の男女が年配の男に付き添われて警察署を出ていた。
3人は黒いセダンに乗ると警察署を出る。
僕達は追跡を開始した。
目的地はわからない。
何せどのアジトに向かっているのかすら分からないのだから。
どこのアジトに向かっているのか分からないのなら行き先を指定してやればいい。
多田君の言葉だ。
多田君は言葉通り巧みに信号を操り行き先を人気のない団地へと誘導する。
そしてとある交差点に差し掛かった時前方をワゴン車が道を塞ぐ。
セダンから3人の男が出てきた。
運転手を含めて乗っているのは5人。
うち二人が教皇と女教皇だからちょうど数が合う。
3人男はワゴン車の運転手に文句を言っている。
ワゴン車に乗ってるのはもちろん晶ちゃんの兵隊だ。
石原君は車をお降りると男に近づいてく。

「善君も行かないと!」

晶ちゃんに言われて車を降りて男たちに近づく。
石原君はおもむろにセダンに乗り込むとゆっくりバックをする。

「何やってんだてめぇ!!」

おもむろに銃を懐からだし撃とうとする二人の銃を握った。
トカレフか。この筋の人って好きだね……。
僕も訓練中に何度も見てきたよ。
見てきたから分かるんだ。
構造も仕組みも……。
両手で二つの拳銃を握る。

「お前何者だ!?」
「何者と言われましてもただの学生でして。こういう物騒な物はしまって少しお話しませんか?」
「ふざけてんのかてめぇ!!」

男2人は引き金を引くが問題の銃が無かった。
なぜって?僕が分解しちゃったから。
ばらばらになった部品を呆然と見てる二人ににこりと笑う。

「考えられませんよね?一大学生がこんな事するなんて。悪い夢を見てるんだ。そう思ってください。これから前後の記憶飛ばしますから」

そう言って両拳で二人の顔面を綺麗に殴りつける。
車の窓に後頭部を打ちつけられ男二人は気を失った。

「綺麗に気絶すると記憶が飛ぶそうですよ」

聞いてないだろう二人にそう説明する。
問題はあと一人。
一人は距離を置いて、僕に向かって拳銃を構える。

「そういうことをすると。色々と問題あると思うんですけど……」
「てめぇら何者だ!?」
「だから一大学生だと先程説明したばかりでして……それより問題あるから拳銃しまいましょう?」
「ふざけるな、馬鹿にしてんのか!?」
「逆ですよ。それはあなたが思ってるような脅しの玩具じゃないんですよ?」
「わかってるなら両手をあげて……うっ」

男は突然気を失って倒れた。
きっと車の中の兵隊が麻酔銃を撃ったからだろう。
僕達は気を失った3人を残して車で走り去る。
途中土手で石原君と合流して、二人をワゴン車に移してセダンは放棄する。
遠回りをして別府の別荘に移動して二人に入るように促す。
晶ちゃんはスマホで片桐君たちに連絡している。
僕と石原君は玄関の前で見張っていた。

「どうでした?実戦は?」

石原君が聞いてくる。

「やっぱり僕は一般人で良いよ」
「同感ですね」

そう言って二人で笑っていた。

(3)

「エンペラー!教皇と女教皇の拉致に失敗したって!!」

そう言う夏凛の表情は青ざめている。

「これから賢者が来るそうよ」

夏凛は震えている。
まあ、失敗したら消されるのは俺達と脅した俺の責任でもあるがな。
だからユニティには関わりたくなかった。
そしてユニティに知られたくなかった。
ユニティは知っているのだろうか?IRISの存在を。
あれをそのままにしておくと厄介なことになる。
あれにアクセスできるのは俺の知る限りではウォーロックだけだ。
静かな車の音が聞こえる。
窓の外を見る。
白いスーツに黒いネクタイの男が呼び鈴を押している。

「エンプレス!出ろ」
「わ、わかった」

少しは落ち着いたのだろうか?夏凛は玄関へと向かう。

「きゃあ!」

夏凛の悲鳴が聞こえた。

ドタドタと2階の俺の部屋に足音が近づいてくる。
そしてドアが開くと両腕を拘束されこめかみに銃口を向けられた夏凛とさっきの白いスーツの男。それに黒いスーツの男が2人立っていた。

「何だお前らは!?」
「『悪魔』と言えばわかるか?」
「……その悪魔が何の用だ」
「そう臆するな、ただのビジネスだ」
「ビジネス?」
「そう、ただの取引にすぎないよ」
「内容は?」

白いスーツの男が合図すると黒いスーツの男が夏凛の髪を引っ張り上げる。

「痛い!離してよ!!」

悪魔と名乗った白いスーツの男は俺と夏凛に交互に銃口を向ける。

「もし、お前と女帝どっちのカードを捨てると言ったらどっちを捨てる?」
「やめろ!夏凛に手を出すな!」
「立場を弁えた方が良いんじゃないのか?皇帝」
「わ、悪かった。夏凛は何も悪くない。俺が責任を取る」
「興毅!!」

夏凛が叫ぶ。

白いスーツの男はにやりと笑う。

「13日間……解答を待とう」
「13日間?」
「その間に新たな交渉材料を手に入れることができたらそれを選択肢に入れてやる」
「俺と夏凛は助かるというのか?」
「ああ、助けてやるさ。で、交渉材料というのは『教皇』と『女教皇』」
「な……!?」
「どうする?この取引に乗るか?」
「……わかった。何とかする」

悪魔は夏凛を解放するように言うと黒いスーツの男が解放する。

「期限は13日間だ。忘れるなよ?」

そう言って男たちは帰っていった。
車が走り去るのを見届けると夏凛は俺に言う。

「まさか教皇たちを売るの?」
「……それしか俺達が生き残る手はねえ」

まずは二人を探し出さないと!

「だからこんなグループに入るの止めなよって言ったのに!興毅が取引に応じるから」
「俺に選択肢は無かった。従わなかったら今頃牢獄の中だ」
「それはあんたが悪いことしてきたからでしょ!」
「お前だって今の生活に満足してたじゃねーか!」

俺が怒鳴ると夏凛は体をびくつかせる。

「大丈夫、必ず助かる方法がある?」
「2人を犠牲にするってのは反対だよ?」
「アレさえ手に入ればいいんだ。アレさえ……」
「ウォーロックのもっている『切り札』さえ掴めば……」
「ねえ、二人で逃げよう?誰も人目につかないところに……」
「そんなところがこの日本のどこにある!?」

俺はカーテンの隙間から外を見る。
黒服の男が辺りを張っているのが分かる。
逃げ出せっこない。
何よりそんなところがあったとして惨めな生活を送るなんてごめんだ。

「警察は……?」
「サツは奴らの手がかかってるのは教皇たちの件でわかってるだろうが!」

震える夏凛に気がつく。
夏凛の肩を掴む、そしてはっきりという。

「心配するな、お前だけは何としても守る」
「興毅一人で行っちゃうなんていやだよ」
「わかってる、なんとかする……」

必死に、二人生き延びる方法を考えていた。
なんとかしないと……。
あいつはマジでやる気だ。
2人の行き先を考えるところから考える。ことにした。
それからの13日が俺達の終わりの始まりだった。

(4)

僕たちは別府の別荘にいた。
教皇と女教皇は拘束はしなかったもののやはり落ち着きがない。
僕達に処分されるんじゃないか?
そんな考えがあったのだろう。

「僕達は君達を保護しただけだ、心配しなくていい」

それだけではまだ信用してもらえないようだ。
すると公生は言った。

「君たちに僕達の誘拐を頼んだのはエンペラーだね?」

その名前にびくつかせる。

「エンペラー何か言ってなかった?」
「『探し出すのが困難ならまとめて始末してしまえばすべては闇の中だと』」
「最終段階に思考が入ってるんだね」

公生は笑う。

「俺達が消息をたったらエンペラーやエンプレスがやばい」
「どういう意味?」
「2人がへましたことになる。へましたら待っているのは……」
「死神の粛正?」

僕が言うと二人は凍り付いた。
基本的な組織の成り立ちはエゴイストと同じ様だ。
ただ、一つ気になることがある。

「一つお伺いしたい事が?」
「なんだ?」
「エンペラーやエンプレスを案じているように見受けられるけどどういう関係ですか?」
「?」
「いや、僕の悪い癖でしてね。細かい事が気になってしまう……」

ぽかっ

「だからドラマの引用は止めなさいって言ったでしょ!」

愛莉に怒られた。
だけど教皇たちは答えてくれた。

「エンペラーやエンプレスとは友達だ。友達の心配はするだろう?」
「たとえ自分の身に危険が起ころうと?」
「当たり前だ!お前たちだって仲間を想う気持ちくらいあるんだろ!?」
「確かに」
「後もう一つ。君達恋仲同士だね?エンペラーやエンプレスもそうなの?」
「ああ、そうだ。」

あっさり認めてくれた。
ならば今後の展開の予想も容易に想像つく。
僕は石原君に言って彼らにスマホを帰してやるように言う。
もちろん誠君特製ウィルスを巻くのを忘れずに。

「俺達が助けを呼ぶとは考えないのか?」

教皇が聞いてきた。

「無いね。そんな事をしたら刑務所にいた方がましなくらい危ない目にあう」
「なるほどな……」
「でも、彼等にスマホを渡すメリットなんてないわよ!」

恵美さんが言う。

「それを今から作るのさ」

僕は答えると、教皇と女教皇に要求した。

「それを使って交渉して欲しい、君たちの身柄の引き渡しを条件に公生たちに執着する理由を知りたい。と……」
「折角さらったのに返すの!?」

晶さんが抗議する。

「僕の予感があたっていたら、今皇帝や女帝は焦っているはずだ。悪魔の取引みたいなこともやっているかもしれない」

そして二人の意思を見て確信した。今皇帝たちはその要求に乗るはずがないと。その為のカードが公生な気がする。
2人は言われたように電話する。
居場所は二人には分からないように目隠しして連れてきた。
教皇は言われた通り電話をする。
だが、交渉は失敗に終わる。

「今は戻ってくるな。もどってきたら消されるからと」

教皇の一言に皆が凍り付く。
目の前の人が死ぬかもしれない。そんな不安が勝ってしまったのだろう。
でも僕は確信した。やはり4人の絆は確かなものだと。
こんなやりとりも傍受されていたら危ないだろう?
僕は教皇に聞いていた。

「2人の居場所は分かる?」
「いや、俺達にもわからないんだ」

誠の顔を見る。
誠は親指を立ててみせた。

「ありがとう、公生ちょっと別室で話がしたい」

公生はその一言を予想していたのだろう。僕の要求に応じた。

別室には僕と公生と奈留、誠君と渡辺君が来た。
別室に入ると公生に聞いた。

「もう隠し事話にしよう、君が持っている重要ファイルってなに?」

公生は意外にも簡単に話を始めた。

「君なら辿り着くと思っていたよ。IRISってシステムだよ」
「IRIS?」
「エゴイストの秘密ファイルが眠っている秘密のコードネーム。ゴッドたちが捕まってしまった今ではアクセスできるのは僕と奈留だけ」
「そこにはどんな情報が?」
「君は気づいてるんじゃないのかい?」

そう言って公生はにやりと笑った。

「そこに侵入するには?」
「誠君なら、すぐに侵入できるんじゃないのかい?エゴイストのサーバーの最下層に眠っている。誰も知らない秘密のコードネームだから。案外表に置いておくときづかれないもんでね。実際に僕が言うまであれも存在を気にも止めなかった」

誠はさっそくエゴイストのサーバーを探っている。

「パスワードはコトネアスター。すぐに開けるよ」

誠はシステムを見て驚いている。

「お、お前最初からこの事を知っていたのか?」
「うん、須藤グループと関係してると知ったあたりから感づいてはいた」

誠の反応と公生の回答からして内容は想像ついた。
問題はこれからどうするかだ?
こちらの手札は揃った。

「誠さっきの通話で皇帝の居場所は突き止められたか?」
「ああ、逆探は成功してる。地元大近くの住宅街だ」
「じゃあ渡辺君たちは先にもどっていて。公生と奈留と3人で話がしたい」
「わかった……」

そう言って二人は退室する。
すると僕はすぐに公生たちに話した。

「高橋グループと須藤グループは協力関係にある。そうだね?」

僕が尋ねると公生は黙ってうなずく。
IRISはそのことを裏付ける決定的な証拠。恐らく高橋蒼良が残した最後の贈り物だろう。

「これで、取引する材料はないね?どうするの二人共?」
「2人じゃなくて4人だよ」
「え?」

そう聞き返す公生に「そろそろ戻ろう」と言うと別室から戻った。

「これからどうするんだ?」

渡辺君が聞いてくる。

「4人の絆は固い。きっとそれぞれがお互いの身を案じている」
「そうだな」
「ならば4人纏めてかくまった方が良い」
「それってお前まさか……」

誠が言う。

「こっちから打って出よう。エンペラーとエンプレスの身柄を拘束する」
「そんな事可能なの!?」

恵美さんが言う。

「時間勝負だと思う」

僕はそう言うと、教皇たちを見て言った。

「君たちの身柄と皇帝たちの命を取引に使われている。そうだね?」
「……ああ」

教皇は答えた。

「この際だから君たちの関係全部話しちゃいなよ」

僕がそう言うと二人は喋りだした。
四人は大学時代からの親友だったという事。
エンペラーがエゴイストと言う怪しいグループに入った事。それはエンペラーの人柄の良さに目をつけられたという事。
エゴイストが検挙されたとき、エンペラーは親友の家をさまよっていたという事。
それでもアーバニティの幹部に見つけられて、アーバニティに入れられて。ついでだからと三人が巻き込まれてしまったという事。恐らくエンペラーに対する足かせだったんだろう?
ユニティに手を出すのは躊躇したが公生と奈留を放っておくのは危険だとエンペラーが判断したこと。
後は皆の知っての通り。
僕達は話を黙って聞いていた。

「こりゃ聞いちゃいけないことを聞いたのかもしれんな」

渡辺君が頭を掻く。

「でも、聞いた以上動くしかないですね」

石原君が言う。

「そういう事なら仕方ないわね」

恵美さんが言う。
皆の意思は固まったようだ。

「あんた達は俺達を助けてくれるというのか?」

教皇が言う。

「そういう話を放っておけないのがユニティでね」

渡辺君が言うと皆うなずいた。

「で、手段は考えているんだろうな?冬夜」

渡辺君が言うと僕は笑いながら答えた。

「手段って言うほど大したことは考えてないよ」
「と、言うと?」
「文字通り拉致してくるのさ。相手の家に押し入って」
「となるとまた石原君と酒井君の出番か?」

渡辺君がそう言って二人を見る。

「僕で役に立てるなら何でもやります」と石原君。
「まあ、成り行き上しょうがないですね」と酒井君。
「問題はいつ決行するかだな?」と渡辺君が言うと、「2人の都合に合わせるよ」と答える。
「僕は何時でも大丈夫ですよ」
「まあ、またバイト休みとればいいだけだから」

2人はいつでもいいと言った。
なら早い方が良い。

「じゃあ、早速明日夕方に決行しよう」

僕が言うと皆うなずいた。



帰りにファミレスで打ち合わせをする。

「あの二人の言う事信用してもいいのか?」

誠が聞く。

「嘘を吐ける状況じゃなかったと思うけど」

僕がそう答えると皆納得した。

「皇帝を拘束した後はどうするの?」
「芋づる式に炙り出すだけだよ」

恵美さんが言うと僕が答えた。
どこまで届くか分からないけどやれるだけの事はやる。
やっとエンペラーに手が届いた。
もう逃がさない。

「ところで誠、IRISとやらはどこまで踏み込めた?」
「触りだけんだけどな、結構ヤバいファイルだぜ?」

そうか、取引の材料には使えそうだな。

「誠……頼みたい事が」
「ファイルのコピーを最優先でやってるよ。大丈夫だ」
「いや、そうじゃなくて……」

誠に策の詳細を伝える。

「敵を炙り出すわけだな?」
「ああ、出来るか?」
「そのくらいわけないって、心配するな!」

誠はそう言っている。
その策は上手くいくと確信していた。自信家のハッカーほど引っかかりやすいトラップ。
それは以前同じ手を食らった誠が証明している。

「今月中には片付けたい案件ね。来月流行るんでしょ?あのイベント」

晶さんが言うと皆思い出したように声を出した。

「イベントって?」

公生が聞く。
公生と奈留は初めてだったな。

「素敵なイベントだよ~」

愛莉が言う。
粗方の打ち合わせをすると僕達は帰りに着いた。



「ねえ?冬夜君」
「どうした?」
「どうして四人の関係に気がついたの?」
「話してみたら直感したかな」

カマかけてみたけどね。と愛莉に説明する。

「でもエンペラーさんもすごいんだろうね?三人をまとめていたんだから」
「そうだな、会って話してみたい相手だね」

その時ふと後ろを見る。
ハッキリと分かった。
分からないようにしてるのかもしてるかもしれないけど。はっきりとわかる。
さっきから後ろをぴったりとくっついてる一台の車両に。
別府のファミレスを出た時はいなかった。
つけられていたとすれば市内に入ってから?
そのまま家に向かう。
駐車をしようとしているとすぐに立ち去っていった。
愛莉には黙っていた。
なにもしてこなかったのだから言う必要はないと思った。
愛莉を動揺させるのは得策じゃない。
多分相手が狙っているのは揺さぶりだろう。
住所を知られてる今尾行くらいで慌てる必要はない。

「今の車なんだったんだろうね?」

愛莉も気づいていたようだ。

「ただの揺さぶりだよ、気にする必要はないよ」

愛莉に言うと「うん」とだけ答えた。
メッセージを送ると皆も同じ目にあったみたいだ。

「慎重に行動した方が良いな?」渡辺君が言う
「逆だよ、今まで通りの行動でいい」と僕が言う。

今にその余裕を奪ってやるからな。
そう思いながら今夜は休んだ。
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