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4thSEASON
司祭は語る
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(1)
「冬夜君朝ごはんだよ~!」
愛莉がいつにもまして元気だ。
あんな事があったのに。無理して元気にしてる?
「ほら~早く日課いかないと!」
「あ、ああ。そうだな」
準備をして日課を済ませるとシャワーを浴びてる間に愛莉は朝食を作って父さんを起こす。
どんな起こし方をしたのか知らないけど父さんの叫び声が聞こえる。
今日は3人でご飯。
母さんがいない。
その分愛莉が働き場を盛り上げる。
無理してテンション上げてる。
そんな愛莉に応えないわけにはいかない。
僕も愛莉に合わせてテンションをあげた。
父さんもそれに気づいたらしく、それに合わせていた。
「誕生日はどうだったかい?」
父さんが聞く。
「冬夜君が凄く優しかったんです。夢のような時間でした」
これは素で言ってるんだろう。
「遠坂さんの意向もあるだろうが、おじさんはそろそろ孫を欲しいと思ってる」
まて、まだ学生だぞ。
「ま、まだ結婚もしてないし。私半人前だし!」
「そんなことないぞ!母さん居なくても家事をきっちりやっている」
母さんがいなくても……。
それは余計な一言だったらしい。
場が沈む。
「父さん今日中にケリはつける」
僕はそう言った。
「母さんの居場所分かったのか?」
父さんが聞いた。
どこまでも間抜けな奴だった。母さんのスマホを連絡手段に使ってる時点でやつらの居場所は誠に特定されてた。
場所は数ある彼らのパーティ会場の一つ。
地元の港の倉庫の一つだった。
今日みんなで集まって救出作戦を実行する予定だ。
父さんには「ユニティは解散させる。時間をくれ」と言うように言ってある。
どこまでも間抜けな奴だ。それを信じているらしい。
「明日までに証拠を出せ」
それが奴らの回答だった。
朝の片づけを始め家中の掃除を始める愛莉。
さすがに気が引けたので自分の部屋くらいは掃除した。
すると渡辺君からメッセージが。
「今から集合出来る奴は集まってくれ、今夜の作戦会議だ」
愛莉にその事を知らせると愛莉は急いで準備する。
「おじさん、お昼と夜は申し訳ないんですけど……」
本当に申し訳なさそうに言う愛莉。
「大丈夫だよ。出前でもとって食べるから。母さん居ないし寿司でも食うかな」
自分の奥さん攫われて置いて良く言えるな。でも寿司か、いいなぁ……。
ぽかっ
「じゃ、行ってきます」
そうして僕達は出かけた。
ファミレスに向かうとみんな揃っていた。
今日は日曜という事もあって混雑していた。
その方が好都合だと誠は言う。
「ここ若い学生が多いからさ、ノーパソ使ってる奴割と多いんだよね」
辺りを見回す。
確かに課題をこなしてる学生が多い。
「場所は特定できた。エンペラーの位置も特定した。けど気になることがある」
誠が言う。気になること?
「誠君、それはなんだい?」
「教皇と呼ばれる存在が2人いる。教皇だけじゃない皇帝も2人いる」
誠が言うと、僕と公生は笑う。
「そりゃそうだろうね。で、どっちが今回の主犯なんだい?」
「リーダー格は皇帝。今回の主犯は教皇」
「教皇が直接指揮を執ってる?」
「ああ、現場にもいる……そしてやはり影の支配者がいるみたいだコードは『ドラゴン』」
それは驚いた。
「しかし短時間で良く調べたな」
「冬夜のおばさんの命かかってるからな。誠君も本気出しましたよ。遠慮いらないって言ってたし」
「で、作戦はどうする?」
渡辺君が言う。
僕はにやりと笑う。
まずは下ごしらえだ。
スマホを取り出すと母さんのスマホに電話する。
スマホはスピーカーにしてある。
「もしもし……」
冷たい感じの女性の声が聞こえた。
「冬夜といえば分かるかな?」
「ああ、どうした?」
「解散しろって話だけどどうやって証明すればいい?」
「どういう意味だ?」
「サイトを削除したからって解散の証明にはならないだろ?」
「取引はもう一つあったはずだ」
「公生と奈留と引き渡しか?」
「そうだ」
「日時はこっちが指定させてもらう。今夜21時だ。場所はそっちが決めて良い」
「……地元港の倉庫に来い。3人でくるんだ」
「3人じゃ不足だろ?僕はユニティのリーダーじゃない」
「じゃあ4人で来い」
「わかった。じゃあ今夜21時に……」
「思ったより物分かりがいいんだな?自分の肉親の命がかかるとそう言う物か?」
女性は笑っている。
「まあ生みの親だしね」
「楽しい取引になりそうだ。ではまた夜に」
電話はそこで終わった。
「素人だね。位の高い割には素人すぎる」
「エンペラーが適当に見つけてきたんだろうね」
もしくはドラゴンと呼ばれる存在が。
「相手は多分女教皇だろうね」
「だろうね」
「待て待て、お前たち二人で何納得してるんだ?」
渡辺君が聞いてきた。
「そうだよ!公生と二人で何が分かったのか教えてよ!」
亜依さんが言う。
「私は分かったよ。『司祭は語る、皇帝は君臨する』ってやつだね」
愛莉は気づいていたんだっけ?
「どういう事?愛莉ちゃん」
恵美さんが愛莉に聞いている。
「誠君言ってたじゃない?皇帝も教皇も二人いるって。多分男女一人ずついるんだと思う」
「どうして、男女って特定できるの?」
「女教皇と教皇だから」
「……あっ!」
恵美さんと晶さんは気づいたみたいだ。
「ってことはまた隠者が裏にいるってことね」
恵美さんが言う、理解できたみたいだ。
「そういうことになるかな?ドラゴンてのがわからないけど」
多分ラスボスはこいつだろう?
となると自ずと正体は見えてくる。
「で、今夜の作戦どうするんだ?」
渡辺君が聞いてくる。
「交渉には僕と渡辺君、公生と奈留が行く」
「それは危険よ!」
恵美さんが聞いてくる。
「そこで、恵美さんの兵隊を借りたい」
「どういうこと?」
「時間前に倉庫に潜り込む。出来る?」
「私達の兵隊を侮ってもらっては困るわ。SOCOM経験者も多数いるのよ」
「私の兵隊も貸すわ。SATの経験者もいるから」
2人いたら日本を壊滅できる気がするよ……。
「晶さんの部隊は頃合いを見て入り口を封鎖して欲しい」
「わかったわ、ちょろい任務ね」
「他の皆は自宅で待機を……」
「待ってろなんて言わないでよね?私達も現場に行くよ!」
亜依さんが言う。
「兵隊さんがいるんでしょ?私達だけ見てるだけなんで絶対にいや!」
愛莉まで。
「……誠とカンナは自宅待機だぞ」
「何でだよ!?」
「誠たちには皆に指示を送って欲しい。ヘッドセット忍ばせていくから」
「なるほどな、中央管制ってところか?」
「ああ。同時にこなしたい作戦もあるしな」
「作戦?」
僕は茶封筒を出した。
「これってパパさんと取引した材料?」
愛莉が言うと頷いた。
「ここにあちらさんの兵隊の居場所が全部書いてる、そのうち一か所を襲撃する」
「それってカチコミってことっすか!?」
晴斗が言うと僕は頷いた。
「もちろん主導は晶さん・恵美さんの兵隊で」
「俺そっちに参加するっす!反撃開始って感じで楽しそうっす」
「私と恵美も分れたほうが良さそうね。効率的だわ」
「じゃ、晶がカチコミに参加してちょうだい」
「わかった、恵美が救出作戦ね。晶お互い派手にやりましょう?」
今までも十分派手だった気がするんだけど。
話し合いの結果救出作戦には僕、渡辺夫妻、石原夫妻、愛莉、檜山君、咲良さん、西松夫妻。公生、奈留。
カチコミには晴斗、白鳥さん、酒井夫妻、が参加。
残った皆には連絡等をお願いすることにした。皆で危険な目にあう必要もない。
「で、どういう交渉になると予想しているんだ?」
「相手は幹部と言えども下っ端だからね、出来るだけ情報を引き出すさ」
多分エゴイストより楽だよと僕は言う。
「公生たちも巻き込んで悪いけど……」
「アーバニティはエゴイストの亡霊。僕達も無関係とはいえない。あの晩奈留と誓った、逃げないって……」
公生が言う。二人の決意は固い様だ。
ん?あの晩って?
「なんか二人にあったの?」
ぽかっ
「冬夜君はハンバーグ食べてようね♪」
「え、いや。気にならない?」
「食べてようね♪」
愛莉が食べて良いって言うんだし食べてよう。あ、どうせなら。
「すいませんチキンステーキ追加で」
「片桐君て鋭い様で鈍いね。僕達だって中2だよ?部屋が一緒ならすることくらいするさ」
「公生の馬鹿!余計な事言わなくていい!」
あ、そういうことね
(2)
夜21:00。
地元港の某倉庫で。
倉庫の場所は割り出してあった。
事前に潜入は楽だった。
恵美の部隊と一緒に忍び込んで照準を合わせる。
後は恵美の指示待ち。
「私よ、状況を教えて頂戴」
「オールグリーン、スタンバイOK」
視界に映るのは片桐君と渡辺君、それに公生と奈留。相手は片桐君のお母さんに銃を突きつける兵隊数名と教皇二人。
片桐君の言う通り男女一人ずつだった。
「初めまして、片桐冬夜君」
男の方が話し出した。
交渉の始まりだ
「回りくどい挨拶は抜きにしよう。さっさと取引を済ませたい」
「……まずはポープとウォーロックをこちらに」
「母さんの引き渡しが先だ」
「では同時に。妙な真似は止めた方が賢明だよ。君たちの周りは兵隊が囲んでいる」
ちなみに裏方の部隊は粗方拘束した。
「公生、奈留」
片桐君が言うと公生と奈留は教皇の前に出る。
教皇が命じると片桐君のお母さんが解放される。
「冬夜!!」
片桐君のお母さんが片桐君に抱き着く。
「母さん大丈夫だよ。外で父さんが待ってる」
片桐君のお母さんに外に出てるように指示する片桐君。
「状況変更確認目標を変更する」
「こちら管制、目標変更了解」
照準を公生と奈留を捕まえた二人に合わせる。
ちなみに片桐君の声がはっきり聞こえるのは片桐君は骨伝導方式のマイクをひろってるから。
「さて、もう一つの取引だけど……」
片桐君が話しを始めた。
「僕達を解散させて何が目的なの?」
「君たちは我々の障害になる存在だ。解散させたいと思うのは当然だろ?」
「公生と奈留に拘るのは?」
「お前たちに教える必要はない」
「話にならないね」
片桐君から仕掛けた?
引き金に指をかける。
「だいたいこんな取引成り立つわけがない。僕達が解散しますよ~って言って信じるわけ?」
「そんな間抜けな事はしない。分かってるんだろ?お前たちの周りには常に見張りがついていることくらい」
「関係ない人まで巻き込んでおいてか?」
渡辺君が言う。
「先に仕掛けた方が悪い。違うかい?」
「俺たちは無差別な攻撃はしていない!」
「戦争は仕掛けた方が悪い。その後どう反撃しようと自由だ。やられたらやり返す。仕掛けても割にあわないと分からせる。それが抑止力になる」
「戦争を仕掛けた覚えは無いんだがな?」
「だが俺達に敵対する意志は見せた」
「確かに君の言う通りだね」
片桐君が言った。
「確かに手を出したら痛い目にあう。それが抑止力になることもあるだろう。だが更なる惨劇を生むことになる。その繰り返しが戦争だ」
「お前は物分かりがよさそうだな」
「冬夜、こいつらの言い分を認めるのか?」
「で、僕達は活動しなかったら君たちの要求は達成できるわけ?」
「ああ、手出しはしないよ」
「それこそ保証が無いよね?皆を見張ってるって自分で言ってるのに信用しろって言うの?」
「我々の活動を邪魔しないで快適なキャンパスライフを送ればいい。そう言っている」
「そうまでして僕達を封じて何を企んでいるの?」
「それを教える必要はない?」
「必要はない?本当に?」
片桐君が揺さぶりをかける。
「どういう意味だ?」
「君たちは皇帝の言われるがままに行動している。違うかい?」
教皇は何も言わない。
「まあ、いいよ。君たちの取引に応じよう。だが条件がある」
「条件?」
教皇の表情が険しくなった。
「君たちと僕達の差を埋めよう。君たちは1枚しか手札が無いのに僕達は2枚の手札を使わなきゃいけない。それは不公平だ」
「もう一枚の手札を出せと?」
女教皇が言う。
「君たちも物分かりがいいね。もう一枚の手札を出して欲しい」
「それはなんだ?」
「公生と奈留の返還」
「ふざけるな!!」
教皇が怒鳴る。
片桐君は動じない。
端から交渉する意志などなかった?
お母さんが戻ればそれで交渉はお終い?
「ステンバーイ」
指示が入る。僕は引き金にを引く指に力が入る。
「約束を違えてまで交渉をする必要はないと思いませんか?」
女教皇はあくまで冷淡だ。
「交渉決裂って事でいいのかな?」
片桐君が言う。
片桐君たちを取り巻く人間が一斉に片桐君たちに銃を向ける。
「忘れてない?ここは日本だよ?そんな物騒なものを構えてると……」
「警察だ、全員そこを動くな!!」
警察が倉庫に入ってきた。
予定通りだ。
慌てふためく相手の兵隊。
「貴様!警察にタレこんだのか?」
「見張るならちゃんと見張らないとダメだよ?思わぬところから手は出て来るよ」
銃口を向けられているのに余裕の表情の冬夜君の態度。
「見事な手腕だ。だが、褒められたものじゃないな。君の状況は変わらない」
女教皇は語る。
「君はここが日本だから安心だと言った。だが日本が平和だという保証はどこにもない。現に君は多数の銃口を向けられている」
「撃てるの?君に?丸腰の僕を」
「……やれ」
女教皇は冷淡に言い放った。
それが合図となった。
僕達は一斉に狙撃を開始する。
パスパスっと静かな倉庫に射撃音がなる。
男たちはみんな手を押さえて銃を落す。
「突入!」
遠坂さんのお父さんがそう命令すると一斉に警官が突入を開始した。
取り押さえられる教皇と女教皇。
僕達は手はず通り警察が撤収するの待って身を潜めていた。
「公生、奈留!」
恵美のお父さんが駆け込んでくる。
「おじさん!」
「心配したぞ!無事でよかった!」
2人を抱く恵美のお父さん。
「……あまり親に心配をかけるんじゃないよ」
遠坂さんのお父さんがそう言う。
「ごめんなさい」
2人は謝っていた。
「大丈夫だ、今日はもう帰ろう?」
「いや、まだやることが残ってるから。そうだよね。片桐君」
「ああ、そうだね。まだやることは残ってる。でも後日で良いよ。慌てることもないから」
そう言って片桐君は笑っていた。
僕達は警察が撤収したのを確認して撤収を開始した。
(3)
僕は信じられない光景を目にしていた。
大在にある、とある施設のゲートを装甲車が破壊して進む。
その後に僕達の車が中に入る。
「なんだ!?てめぇら!?」と建物の中から筋の者が入ってくる。
皆グラサンかけたり、もう寒いのに上半身裸で晒巻いて入れ墨入れた人とかが続々と押し寄せる。
「春奈は危険だから車に残るっす!」
「冗談言わないで」
「警官が来るまで時間はある、皆思う存分暴れなさい!」
無責任な指示を出す晶ちゃん。
そんなところ立っていたらいい的だよ。
装甲車に乗っていた兵隊が続々降りてくる。他にもバンに乗っていた兵隊が降りてくる。
それでも数的には劣勢だった。
しかし、木刀や本物の日本刀を持って襲い掛かってくる敵を次々と薙ぎ払う兵士たち。
晴斗や白鳥さんも同じだった。
木刀や日本刀はこけおどしじゃないちゃんと切りかかってくる。
それを躱して殴る蹴るの一方的暴行を加える面々。
闘い慣れはこちらの方がしているらしい。
拳銃を持ち出す人たちもいた。
それをサイドステップで躱しつつ距離を詰め拳銃を奪い取り顎を膝で粉砕する白鳥さん。
そんなすました顔で恐ろしい子。
晴斗も似たようなものだった。
装甲車の陰に隠れながら相手のが弾倉を変えてる間に距離を詰め殴り飛ばし武器を奪うと容赦なく発砲する。
此方の攻撃はエスカレートする一方。
まさか本当に生で聞くことは無いだろうと思う言葉が耳に入ってきた
「RPG!!」
言っとくけどロールプレイングゲームの略じゃないよ。
携帯対戦車グレネードランチャーの意味の方だよ。
建物に真っ直ぐ飛んでいって爆散する。
建物は火に包まれ慌てふためく敵さん達。
捜査4課は今頃片桐君たちの処理に追われてこっちには来ていないらしい。
思う存分暴れて。そして撤収する。
僕も撤収しようとしたとき、いやだね、訓練が身についていたんだね。
殺気を感じて晶ちゃんを突き飛ばす。
晶ちゃんが立っていたあたりに銃弾が撃ち込まれた。
「伏せてて晶ちゃん!」
発砲した主に突進する。
フェイントを入れて相手に照準を絞らせないようにしながら。
むやみに打ってもトカレフじゃ弾数が知れてるよ?
弾切れを起こしてマガジンを取り換える隙を縫って相手の手首を掴み捻る。
元・キーパーだからね。リーチには自信があるんだ。
殴りかかってくる男の拳打を躱して腕を掴み投げおろす。
アスファルトの硬い地面で受け身も取れず投げつけられた男はもんどりうつ。
キーパーの性でね。ちゃんと手袋はしてあるんだ。
奪い取った銃口を男の額に向けて引き金を打つ。
相手は泡を吹いて失神した。
余程慌ててたんだね。
自分が弾切れ起こしたことすら忘れてたんだから。
「善君急いで撤収!現場を押さえられたらさすがに隠しきれない!」
ここまでやってて隠しきれると思ってる事が凄いよ。
ちなみに暴力団同士の抗争。その際にガスボンベに引火して爆発したという事で片づけられた。
それでいいの?地元の警察。
僕達はついに暴力団指定されちゃったんだね……ただのプチサークルだったはずなのに。
とんでもない、世界に巻き込まれた気分だよ。
(4)
面会室で僕と愛莉は女教皇に会っていた。
理由は唯一つ。
エンペラーの素性について知ってる限りの情報が知りたい。
しかし女教皇は口が堅かった。
その理由はすぐにわかった。
どうして分かったかって?
そんなの顔見てればわかるよ?
「君の恋人はとんでもない事に巻き込まれてる。利用されてるだけだと気づいてるんでしょ?」
その一言に彼女は酷く動揺していた。
「私は彼女なんかじゃない!彼女は別にいるわ!」
ほら的中した。
「その彼女が『女帝』?」
「どうしてその事を?」
「……質問を変えるね。隠者は誰?」
「……あったこともない」
「世界は何を意味してる?」
「……地元そのものを意味している」
「随分と狭い世界だね」
「何事もまずは基盤から……違う?」
「確かに……。その世界を食らおうとしているのがドラゴン?」
「……そうよ」
なるほどね、知りたい事は大体わかった。後は誠や、愛莉パパが調べてくれる。
「君には黙秘権がある、そして君はすぐに釈放され、死神に処分される。そうだね」
「……そうね」
「君を守りたい」
「!?……どうして?」
驚いてるのは愛莉も同じだった。
「こちらの都合だよ。君をつかって死神を引きずり出す。一人ずつ芋づる式に引っ張って行きつく先は『塔』だ」
「あなた達一体何者なの?」
「ただの大学生だよ。皆で集まって遊んでるだけの?」
「私達とも遊びだってわけ?」
「予定してない活動だけどね」
「なるほどね」
「最後にもう一つだけよろしいですか?」
ぽかっ
「ゲーム、漫画の次はドラマですか?駄目って言ったでしょ?」
滅多に言えないセリフだから言ってみたかったんだけどな。
「ポープとウォーロックに固執する理由?知らないですか?」
「……知らない。エンペラーとエンプレスに言われて動いただけ」
「ありがとう、それじゃ、また」
「ねえ!」
女教皇が叫んでいた。
「どうしたの?」
「あの二人を助けてあげて!あの二人が利用されてるだけなら……!」
「最善の手は尽くすよ」
そう言って面会室を後にした。
「ねえ?冬夜君?」
「どうした?」
「あれだけで把握しきれたの?」
「足りない部分は誠や恵美さんが補ってくれる」
「そっか~」
僕達は家に帰ると母親と感動の対面を果たした。
「冬夜心配かけてごめんね」
「もとはと言えば僕の責任だからいいよ」
「麻耶、自分の子供を信じて正解だったろ?」
父さんが言う。
愛莉は感動の対面を邪魔したら悪いと思ったのか部屋にすぐに戻っていった。
感動の対面を終えると次は可愛いお嫁さんのご機嫌取りだ。
部屋に戻ると一生懸命FPSをしている愛莉を見た。
「うぅ……難しい」
「貸してごらん」
「え?」
愛莉の手からコントローラーを奪い取ると、淡々と操作をしていく。
「またベテランでやって……。もっと簡単なのからやって慣れて行かないと……」
「だってぇ~これから先。必要かもしれないでしょ?練習しないと」
愛莉は戦闘方法をゲームから学ぶらしい。
まあ、本を読んで護身術覚えるくらいだからそのくらい、楽勝なんだろうな。
て、事は待てよ。
誠にもらった本を愛莉に見せる。
愛莉の顔は赤くなる。
「冬夜君その気になったの?」
愛莉は嬉しそうに言う。
「いや、本を読んだだけで覚えられるならここに書かれてあることも……」
ぽかっ
「お嫁さんにそんな恥ずかしい真似させたいわけ!」
「いや、なんとなく思っただけ。想像するだけで十分だから……」
ぽかぽかっ
「冬夜君のえっち!!そんな想像してたの!?」
愛莉の気持ちは秋の空か……。
「で、どんなのがお望みなの?」
「へ?」
「冬夜君がそういうの望むなんて珍しいから叶えてあげる~。一昨日優しくしてもらえたし~」
なんとなく言ってみただけなんだけどな。
教皇は攻略した。
次はエンペラーか。
「冬夜君朝ごはんだよ~!」
愛莉がいつにもまして元気だ。
あんな事があったのに。無理して元気にしてる?
「ほら~早く日課いかないと!」
「あ、ああ。そうだな」
準備をして日課を済ませるとシャワーを浴びてる間に愛莉は朝食を作って父さんを起こす。
どんな起こし方をしたのか知らないけど父さんの叫び声が聞こえる。
今日は3人でご飯。
母さんがいない。
その分愛莉が働き場を盛り上げる。
無理してテンション上げてる。
そんな愛莉に応えないわけにはいかない。
僕も愛莉に合わせてテンションをあげた。
父さんもそれに気づいたらしく、それに合わせていた。
「誕生日はどうだったかい?」
父さんが聞く。
「冬夜君が凄く優しかったんです。夢のような時間でした」
これは素で言ってるんだろう。
「遠坂さんの意向もあるだろうが、おじさんはそろそろ孫を欲しいと思ってる」
まて、まだ学生だぞ。
「ま、まだ結婚もしてないし。私半人前だし!」
「そんなことないぞ!母さん居なくても家事をきっちりやっている」
母さんがいなくても……。
それは余計な一言だったらしい。
場が沈む。
「父さん今日中にケリはつける」
僕はそう言った。
「母さんの居場所分かったのか?」
父さんが聞いた。
どこまでも間抜けな奴だった。母さんのスマホを連絡手段に使ってる時点でやつらの居場所は誠に特定されてた。
場所は数ある彼らのパーティ会場の一つ。
地元の港の倉庫の一つだった。
今日みんなで集まって救出作戦を実行する予定だ。
父さんには「ユニティは解散させる。時間をくれ」と言うように言ってある。
どこまでも間抜けな奴だ。それを信じているらしい。
「明日までに証拠を出せ」
それが奴らの回答だった。
朝の片づけを始め家中の掃除を始める愛莉。
さすがに気が引けたので自分の部屋くらいは掃除した。
すると渡辺君からメッセージが。
「今から集合出来る奴は集まってくれ、今夜の作戦会議だ」
愛莉にその事を知らせると愛莉は急いで準備する。
「おじさん、お昼と夜は申し訳ないんですけど……」
本当に申し訳なさそうに言う愛莉。
「大丈夫だよ。出前でもとって食べるから。母さん居ないし寿司でも食うかな」
自分の奥さん攫われて置いて良く言えるな。でも寿司か、いいなぁ……。
ぽかっ
「じゃ、行ってきます」
そうして僕達は出かけた。
ファミレスに向かうとみんな揃っていた。
今日は日曜という事もあって混雑していた。
その方が好都合だと誠は言う。
「ここ若い学生が多いからさ、ノーパソ使ってる奴割と多いんだよね」
辺りを見回す。
確かに課題をこなしてる学生が多い。
「場所は特定できた。エンペラーの位置も特定した。けど気になることがある」
誠が言う。気になること?
「誠君、それはなんだい?」
「教皇と呼ばれる存在が2人いる。教皇だけじゃない皇帝も2人いる」
誠が言うと、僕と公生は笑う。
「そりゃそうだろうね。で、どっちが今回の主犯なんだい?」
「リーダー格は皇帝。今回の主犯は教皇」
「教皇が直接指揮を執ってる?」
「ああ、現場にもいる……そしてやはり影の支配者がいるみたいだコードは『ドラゴン』」
それは驚いた。
「しかし短時間で良く調べたな」
「冬夜のおばさんの命かかってるからな。誠君も本気出しましたよ。遠慮いらないって言ってたし」
「で、作戦はどうする?」
渡辺君が言う。
僕はにやりと笑う。
まずは下ごしらえだ。
スマホを取り出すと母さんのスマホに電話する。
スマホはスピーカーにしてある。
「もしもし……」
冷たい感じの女性の声が聞こえた。
「冬夜といえば分かるかな?」
「ああ、どうした?」
「解散しろって話だけどどうやって証明すればいい?」
「どういう意味だ?」
「サイトを削除したからって解散の証明にはならないだろ?」
「取引はもう一つあったはずだ」
「公生と奈留と引き渡しか?」
「そうだ」
「日時はこっちが指定させてもらう。今夜21時だ。場所はそっちが決めて良い」
「……地元港の倉庫に来い。3人でくるんだ」
「3人じゃ不足だろ?僕はユニティのリーダーじゃない」
「じゃあ4人で来い」
「わかった。じゃあ今夜21時に……」
「思ったより物分かりがいいんだな?自分の肉親の命がかかるとそう言う物か?」
女性は笑っている。
「まあ生みの親だしね」
「楽しい取引になりそうだ。ではまた夜に」
電話はそこで終わった。
「素人だね。位の高い割には素人すぎる」
「エンペラーが適当に見つけてきたんだろうね」
もしくはドラゴンと呼ばれる存在が。
「相手は多分女教皇だろうね」
「だろうね」
「待て待て、お前たち二人で何納得してるんだ?」
渡辺君が聞いてきた。
「そうだよ!公生と二人で何が分かったのか教えてよ!」
亜依さんが言う。
「私は分かったよ。『司祭は語る、皇帝は君臨する』ってやつだね」
愛莉は気づいていたんだっけ?
「どういう事?愛莉ちゃん」
恵美さんが愛莉に聞いている。
「誠君言ってたじゃない?皇帝も教皇も二人いるって。多分男女一人ずついるんだと思う」
「どうして、男女って特定できるの?」
「女教皇と教皇だから」
「……あっ!」
恵美さんと晶さんは気づいたみたいだ。
「ってことはまた隠者が裏にいるってことね」
恵美さんが言う、理解できたみたいだ。
「そういうことになるかな?ドラゴンてのがわからないけど」
多分ラスボスはこいつだろう?
となると自ずと正体は見えてくる。
「で、今夜の作戦どうするんだ?」
渡辺君が聞いてくる。
「交渉には僕と渡辺君、公生と奈留が行く」
「それは危険よ!」
恵美さんが聞いてくる。
「そこで、恵美さんの兵隊を借りたい」
「どういうこと?」
「時間前に倉庫に潜り込む。出来る?」
「私達の兵隊を侮ってもらっては困るわ。SOCOM経験者も多数いるのよ」
「私の兵隊も貸すわ。SATの経験者もいるから」
2人いたら日本を壊滅できる気がするよ……。
「晶さんの部隊は頃合いを見て入り口を封鎖して欲しい」
「わかったわ、ちょろい任務ね」
「他の皆は自宅で待機を……」
「待ってろなんて言わないでよね?私達も現場に行くよ!」
亜依さんが言う。
「兵隊さんがいるんでしょ?私達だけ見てるだけなんで絶対にいや!」
愛莉まで。
「……誠とカンナは自宅待機だぞ」
「何でだよ!?」
「誠たちには皆に指示を送って欲しい。ヘッドセット忍ばせていくから」
「なるほどな、中央管制ってところか?」
「ああ。同時にこなしたい作戦もあるしな」
「作戦?」
僕は茶封筒を出した。
「これってパパさんと取引した材料?」
愛莉が言うと頷いた。
「ここにあちらさんの兵隊の居場所が全部書いてる、そのうち一か所を襲撃する」
「それってカチコミってことっすか!?」
晴斗が言うと僕は頷いた。
「もちろん主導は晶さん・恵美さんの兵隊で」
「俺そっちに参加するっす!反撃開始って感じで楽しそうっす」
「私と恵美も分れたほうが良さそうね。効率的だわ」
「じゃ、晶がカチコミに参加してちょうだい」
「わかった、恵美が救出作戦ね。晶お互い派手にやりましょう?」
今までも十分派手だった気がするんだけど。
話し合いの結果救出作戦には僕、渡辺夫妻、石原夫妻、愛莉、檜山君、咲良さん、西松夫妻。公生、奈留。
カチコミには晴斗、白鳥さん、酒井夫妻、が参加。
残った皆には連絡等をお願いすることにした。皆で危険な目にあう必要もない。
「で、どういう交渉になると予想しているんだ?」
「相手は幹部と言えども下っ端だからね、出来るだけ情報を引き出すさ」
多分エゴイストより楽だよと僕は言う。
「公生たちも巻き込んで悪いけど……」
「アーバニティはエゴイストの亡霊。僕達も無関係とはいえない。あの晩奈留と誓った、逃げないって……」
公生が言う。二人の決意は固い様だ。
ん?あの晩って?
「なんか二人にあったの?」
ぽかっ
「冬夜君はハンバーグ食べてようね♪」
「え、いや。気にならない?」
「食べてようね♪」
愛莉が食べて良いって言うんだし食べてよう。あ、どうせなら。
「すいませんチキンステーキ追加で」
「片桐君て鋭い様で鈍いね。僕達だって中2だよ?部屋が一緒ならすることくらいするさ」
「公生の馬鹿!余計な事言わなくていい!」
あ、そういうことね
(2)
夜21:00。
地元港の某倉庫で。
倉庫の場所は割り出してあった。
事前に潜入は楽だった。
恵美の部隊と一緒に忍び込んで照準を合わせる。
後は恵美の指示待ち。
「私よ、状況を教えて頂戴」
「オールグリーン、スタンバイOK」
視界に映るのは片桐君と渡辺君、それに公生と奈留。相手は片桐君のお母さんに銃を突きつける兵隊数名と教皇二人。
片桐君の言う通り男女一人ずつだった。
「初めまして、片桐冬夜君」
男の方が話し出した。
交渉の始まりだ
「回りくどい挨拶は抜きにしよう。さっさと取引を済ませたい」
「……まずはポープとウォーロックをこちらに」
「母さんの引き渡しが先だ」
「では同時に。妙な真似は止めた方が賢明だよ。君たちの周りは兵隊が囲んでいる」
ちなみに裏方の部隊は粗方拘束した。
「公生、奈留」
片桐君が言うと公生と奈留は教皇の前に出る。
教皇が命じると片桐君のお母さんが解放される。
「冬夜!!」
片桐君のお母さんが片桐君に抱き着く。
「母さん大丈夫だよ。外で父さんが待ってる」
片桐君のお母さんに外に出てるように指示する片桐君。
「状況変更確認目標を変更する」
「こちら管制、目標変更了解」
照準を公生と奈留を捕まえた二人に合わせる。
ちなみに片桐君の声がはっきり聞こえるのは片桐君は骨伝導方式のマイクをひろってるから。
「さて、もう一つの取引だけど……」
片桐君が話しを始めた。
「僕達を解散させて何が目的なの?」
「君たちは我々の障害になる存在だ。解散させたいと思うのは当然だろ?」
「公生と奈留に拘るのは?」
「お前たちに教える必要はない」
「話にならないね」
片桐君から仕掛けた?
引き金に指をかける。
「だいたいこんな取引成り立つわけがない。僕達が解散しますよ~って言って信じるわけ?」
「そんな間抜けな事はしない。分かってるんだろ?お前たちの周りには常に見張りがついていることくらい」
「関係ない人まで巻き込んでおいてか?」
渡辺君が言う。
「先に仕掛けた方が悪い。違うかい?」
「俺たちは無差別な攻撃はしていない!」
「戦争は仕掛けた方が悪い。その後どう反撃しようと自由だ。やられたらやり返す。仕掛けても割にあわないと分からせる。それが抑止力になる」
「戦争を仕掛けた覚えは無いんだがな?」
「だが俺達に敵対する意志は見せた」
「確かに君の言う通りだね」
片桐君が言った。
「確かに手を出したら痛い目にあう。それが抑止力になることもあるだろう。だが更なる惨劇を生むことになる。その繰り返しが戦争だ」
「お前は物分かりがよさそうだな」
「冬夜、こいつらの言い分を認めるのか?」
「で、僕達は活動しなかったら君たちの要求は達成できるわけ?」
「ああ、手出しはしないよ」
「それこそ保証が無いよね?皆を見張ってるって自分で言ってるのに信用しろって言うの?」
「我々の活動を邪魔しないで快適なキャンパスライフを送ればいい。そう言っている」
「そうまでして僕達を封じて何を企んでいるの?」
「それを教える必要はない?」
「必要はない?本当に?」
片桐君が揺さぶりをかける。
「どういう意味だ?」
「君たちは皇帝の言われるがままに行動している。違うかい?」
教皇は何も言わない。
「まあ、いいよ。君たちの取引に応じよう。だが条件がある」
「条件?」
教皇の表情が険しくなった。
「君たちと僕達の差を埋めよう。君たちは1枚しか手札が無いのに僕達は2枚の手札を使わなきゃいけない。それは不公平だ」
「もう一枚の手札を出せと?」
女教皇が言う。
「君たちも物分かりがいいね。もう一枚の手札を出して欲しい」
「それはなんだ?」
「公生と奈留の返還」
「ふざけるな!!」
教皇が怒鳴る。
片桐君は動じない。
端から交渉する意志などなかった?
お母さんが戻ればそれで交渉はお終い?
「ステンバーイ」
指示が入る。僕は引き金にを引く指に力が入る。
「約束を違えてまで交渉をする必要はないと思いませんか?」
女教皇はあくまで冷淡だ。
「交渉決裂って事でいいのかな?」
片桐君が言う。
片桐君たちを取り巻く人間が一斉に片桐君たちに銃を向ける。
「忘れてない?ここは日本だよ?そんな物騒なものを構えてると……」
「警察だ、全員そこを動くな!!」
警察が倉庫に入ってきた。
予定通りだ。
慌てふためく相手の兵隊。
「貴様!警察にタレこんだのか?」
「見張るならちゃんと見張らないとダメだよ?思わぬところから手は出て来るよ」
銃口を向けられているのに余裕の表情の冬夜君の態度。
「見事な手腕だ。だが、褒められたものじゃないな。君の状況は変わらない」
女教皇は語る。
「君はここが日本だから安心だと言った。だが日本が平和だという保証はどこにもない。現に君は多数の銃口を向けられている」
「撃てるの?君に?丸腰の僕を」
「……やれ」
女教皇は冷淡に言い放った。
それが合図となった。
僕達は一斉に狙撃を開始する。
パスパスっと静かな倉庫に射撃音がなる。
男たちはみんな手を押さえて銃を落す。
「突入!」
遠坂さんのお父さんがそう命令すると一斉に警官が突入を開始した。
取り押さえられる教皇と女教皇。
僕達は手はず通り警察が撤収するの待って身を潜めていた。
「公生、奈留!」
恵美のお父さんが駆け込んでくる。
「おじさん!」
「心配したぞ!無事でよかった!」
2人を抱く恵美のお父さん。
「……あまり親に心配をかけるんじゃないよ」
遠坂さんのお父さんがそう言う。
「ごめんなさい」
2人は謝っていた。
「大丈夫だ、今日はもう帰ろう?」
「いや、まだやることが残ってるから。そうだよね。片桐君」
「ああ、そうだね。まだやることは残ってる。でも後日で良いよ。慌てることもないから」
そう言って片桐君は笑っていた。
僕達は警察が撤収したのを確認して撤収を開始した。
(3)
僕は信じられない光景を目にしていた。
大在にある、とある施設のゲートを装甲車が破壊して進む。
その後に僕達の車が中に入る。
「なんだ!?てめぇら!?」と建物の中から筋の者が入ってくる。
皆グラサンかけたり、もう寒いのに上半身裸で晒巻いて入れ墨入れた人とかが続々と押し寄せる。
「春奈は危険だから車に残るっす!」
「冗談言わないで」
「警官が来るまで時間はある、皆思う存分暴れなさい!」
無責任な指示を出す晶ちゃん。
そんなところ立っていたらいい的だよ。
装甲車に乗っていた兵隊が続々降りてくる。他にもバンに乗っていた兵隊が降りてくる。
それでも数的には劣勢だった。
しかし、木刀や本物の日本刀を持って襲い掛かってくる敵を次々と薙ぎ払う兵士たち。
晴斗や白鳥さんも同じだった。
木刀や日本刀はこけおどしじゃないちゃんと切りかかってくる。
それを躱して殴る蹴るの一方的暴行を加える面々。
闘い慣れはこちらの方がしているらしい。
拳銃を持ち出す人たちもいた。
それをサイドステップで躱しつつ距離を詰め拳銃を奪い取り顎を膝で粉砕する白鳥さん。
そんなすました顔で恐ろしい子。
晴斗も似たようなものだった。
装甲車の陰に隠れながら相手のが弾倉を変えてる間に距離を詰め殴り飛ばし武器を奪うと容赦なく発砲する。
此方の攻撃はエスカレートする一方。
まさか本当に生で聞くことは無いだろうと思う言葉が耳に入ってきた
「RPG!!」
言っとくけどロールプレイングゲームの略じゃないよ。
携帯対戦車グレネードランチャーの意味の方だよ。
建物に真っ直ぐ飛んでいって爆散する。
建物は火に包まれ慌てふためく敵さん達。
捜査4課は今頃片桐君たちの処理に追われてこっちには来ていないらしい。
思う存分暴れて。そして撤収する。
僕も撤収しようとしたとき、いやだね、訓練が身についていたんだね。
殺気を感じて晶ちゃんを突き飛ばす。
晶ちゃんが立っていたあたりに銃弾が撃ち込まれた。
「伏せてて晶ちゃん!」
発砲した主に突進する。
フェイントを入れて相手に照準を絞らせないようにしながら。
むやみに打ってもトカレフじゃ弾数が知れてるよ?
弾切れを起こしてマガジンを取り換える隙を縫って相手の手首を掴み捻る。
元・キーパーだからね。リーチには自信があるんだ。
殴りかかってくる男の拳打を躱して腕を掴み投げおろす。
アスファルトの硬い地面で受け身も取れず投げつけられた男はもんどりうつ。
キーパーの性でね。ちゃんと手袋はしてあるんだ。
奪い取った銃口を男の額に向けて引き金を打つ。
相手は泡を吹いて失神した。
余程慌ててたんだね。
自分が弾切れ起こしたことすら忘れてたんだから。
「善君急いで撤収!現場を押さえられたらさすがに隠しきれない!」
ここまでやってて隠しきれると思ってる事が凄いよ。
ちなみに暴力団同士の抗争。その際にガスボンベに引火して爆発したという事で片づけられた。
それでいいの?地元の警察。
僕達はついに暴力団指定されちゃったんだね……ただのプチサークルだったはずなのに。
とんでもない、世界に巻き込まれた気分だよ。
(4)
面会室で僕と愛莉は女教皇に会っていた。
理由は唯一つ。
エンペラーの素性について知ってる限りの情報が知りたい。
しかし女教皇は口が堅かった。
その理由はすぐにわかった。
どうして分かったかって?
そんなの顔見てればわかるよ?
「君の恋人はとんでもない事に巻き込まれてる。利用されてるだけだと気づいてるんでしょ?」
その一言に彼女は酷く動揺していた。
「私は彼女なんかじゃない!彼女は別にいるわ!」
ほら的中した。
「その彼女が『女帝』?」
「どうしてその事を?」
「……質問を変えるね。隠者は誰?」
「……あったこともない」
「世界は何を意味してる?」
「……地元そのものを意味している」
「随分と狭い世界だね」
「何事もまずは基盤から……違う?」
「確かに……。その世界を食らおうとしているのがドラゴン?」
「……そうよ」
なるほどね、知りたい事は大体わかった。後は誠や、愛莉パパが調べてくれる。
「君には黙秘権がある、そして君はすぐに釈放され、死神に処分される。そうだね」
「……そうね」
「君を守りたい」
「!?……どうして?」
驚いてるのは愛莉も同じだった。
「こちらの都合だよ。君をつかって死神を引きずり出す。一人ずつ芋づる式に引っ張って行きつく先は『塔』だ」
「あなた達一体何者なの?」
「ただの大学生だよ。皆で集まって遊んでるだけの?」
「私達とも遊びだってわけ?」
「予定してない活動だけどね」
「なるほどね」
「最後にもう一つだけよろしいですか?」
ぽかっ
「ゲーム、漫画の次はドラマですか?駄目って言ったでしょ?」
滅多に言えないセリフだから言ってみたかったんだけどな。
「ポープとウォーロックに固執する理由?知らないですか?」
「……知らない。エンペラーとエンプレスに言われて動いただけ」
「ありがとう、それじゃ、また」
「ねえ!」
女教皇が叫んでいた。
「どうしたの?」
「あの二人を助けてあげて!あの二人が利用されてるだけなら……!」
「最善の手は尽くすよ」
そう言って面会室を後にした。
「ねえ?冬夜君?」
「どうした?」
「あれだけで把握しきれたの?」
「足りない部分は誠や恵美さんが補ってくれる」
「そっか~」
僕達は家に帰ると母親と感動の対面を果たした。
「冬夜心配かけてごめんね」
「もとはと言えば僕の責任だからいいよ」
「麻耶、自分の子供を信じて正解だったろ?」
父さんが言う。
愛莉は感動の対面を邪魔したら悪いと思ったのか部屋にすぐに戻っていった。
感動の対面を終えると次は可愛いお嫁さんのご機嫌取りだ。
部屋に戻ると一生懸命FPSをしている愛莉を見た。
「うぅ……難しい」
「貸してごらん」
「え?」
愛莉の手からコントローラーを奪い取ると、淡々と操作をしていく。
「またベテランでやって……。もっと簡単なのからやって慣れて行かないと……」
「だってぇ~これから先。必要かもしれないでしょ?練習しないと」
愛莉は戦闘方法をゲームから学ぶらしい。
まあ、本を読んで護身術覚えるくらいだからそのくらい、楽勝なんだろうな。
て、事は待てよ。
誠にもらった本を愛莉に見せる。
愛莉の顔は赤くなる。
「冬夜君その気になったの?」
愛莉は嬉しそうに言う。
「いや、本を読んだだけで覚えられるならここに書かれてあることも……」
ぽかっ
「お嫁さんにそんな恥ずかしい真似させたいわけ!」
「いや、なんとなく思っただけ。想像するだけで十分だから……」
ぽかぽかっ
「冬夜君のえっち!!そんな想像してたの!?」
愛莉の気持ちは秋の空か……。
「で、どんなのがお望みなの?」
「へ?」
「冬夜君がそういうの望むなんて珍しいから叶えてあげる~。一昨日優しくしてもらえたし~」
なんとなく言ってみただけなんだけどな。
教皇は攻略した。
次はエンペラーか。
0
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