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4thSEASON
血濡れた皇帝、涙の女帝
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(1)
「うぅ……」
朝から悩んでいた。
問題はどうやって冬夜君を起こすか?
最近の冬夜君は、甘えん坊さんだ。
私がちょっと耳を噛んだりするだけですぐに抱き着いてくる。
むしろそれを待ち望んでる傾向にある。
それは嬉しい事なんだけど時と場合を考えて欲しい。
私のせいで冬夜君の調整不足なんてことになったら大問題だ。
甘えたい自分を我慢して冬夜君を起こす方法を考える。
そうだ、神奈に聞いてみよう。
神奈に電話してみる
「どうした愛莉?」
「神奈はどうやって誠君起こしてる?」
「へ?」
「冬夜君最近ちゃんと起きてくれなくて」
神奈に説明すると神奈はため息を吐いた。
「そんなの『起きろこのボケ!!』って怒鳴りつけてやればいいだろ」
それはいやだな。冬夜君と朝から喧嘩なんて嫌だよ。
「他にないかな?」
「冬夜のことだからご飯とでもいえば起きるんじゃないのか?」
その手があった!
「ありがとう神奈」
「でもいよいよトーヤも誠に似てきてるな」
嬉しいんだけどね。私にしか興味を示さないから。
「じゃ、私もいい加減馬鹿亭主起こさないといけないから。頑張れよ愛莉」
「ありがとう、神奈。またね」
電話を切ると冬夜君の耳元で囁く。
「冬夜君、早く起きて日課こなさないとご飯食べる時間無くなっちゃうよ」
すると冬夜君はガバっと起きる。
「今何時!?」
「6時半だよ」
「急ごう愛莉!ご飯が待ってる!」
ぽかっ
「どうしたんだ愛莉!?」
「冬夜君は私とご飯どっちが大事なの?」
ちょっとした悪戯だった。
答えは分かりきってる。
私だよね
「そりゃ当然ごは……あ、愛莉に決まってるだろ?」
前半の部分は聞かなかったことにしてあげよう。
「そう思うんだったら素直に起きてよ」
冬夜君最近意地悪すぎるよ?
「10月になって冷えてくると布団が……愛莉が気持ちよくてついさ……」
冬夜君は笑って誤魔化している。
冬夜君はその間に着替えて、準備を済ませる。
そして日課を済ませると、冬夜君がシャワーを浴びてる間に私は朝食を準備する。
準備が済むころには冬夜君はダイニングに戻っていて、麻耶さん達も起きてくる。
朝食を済ませると私はシャワーを浴びて部屋に戻って着替える。
着替えると冬夜君の着替えと一緒に洗濯機に放り込んで麻耶さん達の洗濯物と一緒に洗濯機を回す。
その間に部屋に戻ると冬夜君と並んで座ってコーヒーを飲みながらテレビを見る。
洗濯が終ると私達の分と麻耶さん達の分を取りわけて部屋に持って行ってアイロンがけ。
その間に冬夜君は飲み終わったマグカップをキッチンに運んでくれる。
アイロンがけが終わり、ラックにしまう頃には出かける時間になってしまう。
「行ってきます」
そう言うと私たちは家を出て学校に向かう。
駐車場に車を止めると棟まで歩く。
その後、午前中の授業を受けると、学食に向かってお弁当を食べていれば、皆が集まってくる。
「今日の午後の予定なんだけど……いけそう?」
冬夜君が石原君達に聞いている。
「何時でも」
「バイトは休みました」
石原君と酒井君が言う。
「私達も何も問題ないわ」
恵美と晶も大丈夫だと言う。
「俺たちはどうする?冬夜」
渡辺君が聞いていた。
「そうだね、先に別荘に行って待っていようか」
冬夜君が答える。
「じゃあ、今日の集合場所も別府のファミレスで問題ないな」
渡辺君がそう言いながらスマホを操作してる。
「僕は問題ないけど。な?愛莉」
「うん」
「じゃ、頼んだぞ!酒井に石原君」
渡辺君が2人の肩を叩くと二人は力強くうなずいた。
別府に行く前に一度家に帰ろうと冬夜君が言うと私はうなずいた。
そして家に帰ると家の周りに黄色いテープが張られてる。
「KEEP OUT」と書かれてある。
私の家の駐車場に車を止めると冬夜君が警官に事情を聞いていた。
「君は?」
「この家の者ですけど何があったんですか?」
「名前聞いてもいいかな?」
「片桐冬夜です」
「遠坂愛莉です。同居してます」
私達は免許証を見せた。
「この家に銃弾が撃ち込まれてね。それで通報があたんだ」
「けが人は?」
「女性が一人キッチンにいただけでけが人はいない。今調書を取ってるところだ」
警官の奥に麻耶さんの姿が見えた。
「麻耶さん!!」
「愛莉ちゃん!」
私は麻耶さんのもとの駆け寄る。
「麻耶さん無事だった?」
「ええ?なんとか?」
「……愛莉、冬夜君は一緒かい?」
パパさんも駆け付けていた。
パパさんの言いそうなことは分かった。
「パパさん言っておくけど私は……」
「『このくらいの事で家を空ける気はない』といいたいんだろ?わかってるよ。……昔の梨衣にそっくりだ」
パパさんに気づいた冬夜君がこっちに来る。
「おじさん、これは一体?」
「恐らく君にたいする脅しだろう。やったのはアーバニティなのかそれともその母系団体なのか分からないが……」
冬夜君は何かを考えている。
「立場上君たちを肯定することは言えないが……出来れば無茶はしないで欲しい」
「大丈夫です。愛莉だけは守りますから」
「それではだめだ。君に何かあったら愛莉が悲しむ。娘を悲しませるような男に娘はやれんよ」
「……わかりました」
「うん、君たちは今日予定があるのだろ?」
「ええ。」
「麻耶さんの事はおじさんに任せて行ってきなさい」
私は冬夜君の車を見る。
車は無事なようだ。
「愛莉、今日は愛莉の車使おう?」
「うん」
私の車を使って別荘に向かう。
冬夜君の運転は車が変わっても変わらない。
どこまでものんびりしていてゆったりしていて、快適な運転。
「冬夜君大丈夫?」
「なにが?」
「麻耶さんまだ狙われてるんじゃ……?」
「かもしれないし父さんが狙われてるかもしれないし、愛莉の両親だって安心できない」
パパさんはともかくりえちゃんは心配だ。
「理不尽な話だけど、相手にユニティに手を出したら酷い目にあうと思い知らすしかないだろうね」
力でもって力をねじ伏せる世界。
正義を力でもって示すしかない世界。
冬夜君は突然。コンビニに寄った。
ぽかっ
「こんな時に食べてる場合じゃないでしょ!」
「ジュースならいいだろ?喉渇いたよ。愛莉もおいで」
「私はいいよ……」
「いいから」
冬夜君が珍しく強引に私を連れ出す。
冬夜君はジュースを買うと車に向かわずに電話を始めた。
私と手をつないだまま。
私にここから動くなという。
どうしたんだろう?
「あ、誠?地元ナンバーの……」
冬夜君が車のナンバーを誠君に教えている。
「今別府のコンビニにいる。……うん、わかった。じゃ、そのルートで」
冬夜君は電話を終えると車に戻ろうという。
何があったの?
「ねえ、何が起こってるの?いい加減教えてよ」
「大丈夫、いつも通りの愛莉でいて?あ、そうだCDでもかけると良いね」
うぅ……。そうやって話を逸らすって事は何かあるって事だね。
私が知ったらまずい事だって事くらいは理解できる。
冬夜君の話に合わせよう。
「何が聴きたい?」
「愛莉の好きなので良いよ」
「わかった~」
なるべく不安を出さないように明るく振舞う。
そんな時にはこれだよね。
洋楽をチョイスして。CDをかける。
軽快なポップスが車内に流れる。
冬夜君の進行ルートが普通よりちょっと遠回りなのも気にしない。
道が段々細くなっていく。
その時後ろにぴったりとついてる一台の車両に気がついた。
「振り返らないで!気づかれる!」
冬夜君が言うから言う事に従った。
舗装の無い砂利道を進むと行き止まりに突き当たる。
冬夜君は車を止める。
「愛莉は車から降りたら駄目だよ」
冬夜君がそう言って車から降りようとするのを私が止めた。
「私が出て危ないんだったら冬夜君もでちゃだめ!」
サイドミラー越しに移る後の車両。
何人かの黒服の男が近づいてくる。
「車から出て手を上げろ」
とても怖い声。
私が足を引っ張ったと直感した。
冬夜君ごめんなさい。
「愛莉言う通りに従って」
冬夜君が言うと私は車を降りて両手を挙げた。
男たちは拳銃を私達に向けている。
私は膝が震えていて立っているのもやっとだというのに冬夜君は余裕すら見せる。
それは男たちも、感づいていたと思う。
「女、お前からゆっくりこっちに向かってこい」
冬夜君を見る。
「言う通りにして」
冬夜君がそう言うからゆっくりと男たちに近づく。
「こういう言葉知ってる?」
突然冬夜君が話しだす。
「拳銃抜いたからには命かけろよ」
「なんだと?」
男が冬夜君に銃を向ける。
「そいつは脅しの道具なんかじゃない」
冬夜君が言ったと同時に冬夜君の銃を向けていた相手が後頭部に何かを食らったらしく倒れた。
私の方に向けていた相手もほぼ同時に倒れる。
慌てて後方を確認した二人は後方を確認した瞬間に誠君と渡辺君に殴り飛ばされれていた。
「危なかったな冬夜」
誠君が冬夜君に駆け寄る。
「予定通りだよ。問題ない」
「この人達殺しちゃったの?」
誠君は転がっていた弾丸を拾って私に見せる。
「ただの硬質ラバー弾だよ、殺しちゃいない」
誠君はそう言って後ろにアサルトライフルを構えていた男二人に合図すると。男は倒れている4人の身柄を拘束して。近くのガードレールに手首を括り付けた。
「お前らこんなことしてタダで済む思ってるのか?ガキが!!」
殴られた男はまだ意識があったらしく、こっちを睨みつけている。
アサルトラフルを持っていた二人は尾行していた車をどかす。
渡辺君は自分が殴り飛ばした男の胸ぐらを掴んで脅す。
「おっさん達こそ俺達に手を出してこんなもので済むと思ったら大間違いだからな!」
渡辺君はそう言うと私達に向かって言った。
「俺達もそろそろ行こう。あっちも成功したがちょっと問題があったらしい。西松医院に行こう。付いて来てくれ」
渡辺君の車について行く私達。
「ごめんね、愛莉。動揺すると思って黙ってたんだ。かといって対策してる事も気取られたくなくて黙ってた」
「ううん。気にしないで。そんな事だろうと思ったから」
「そう言ってもらえると助かる……」
「……とか言うと思ったら大間違いですからね!」
ぽかっ
「パパさんに言われたそばからまた無茶しようとして!パパさんに言いつけてやるんだから!」
「そ、それだけは……」
「じゃあ、私のお願い一つ聞いて」
「な、なんだい?」
「今度からはちゃんと前もって教えて。冬夜君直ぐなんでも隠し事するんだから」
私だって作戦だってわかってたら、ちゃんと心構えするから。
「いや、だから愛莉には素で驚いていて欲しくて……」
「さっきみたいに冬夜君の足引っ張っちゃうのやだ」
「わかったよ。愛莉には事前説明するから」
「うん!それと~」
「今夜……だろ?」
「うん、疲れたって言い訳は聞かないからね」
「わかった」
そして私たちは地元に戻った。。
(2)
「時間だ、始めましょう」
恵美が言うと僕達は住宅街の一軒家に足を踏み入れた。
呼び鈴を鳴らす。
誰も出ない。
もう一度鳴らす。
反応が無い。
酒井君を見る。
やれやれと酒井君は二本の針金を鍵穴に入れて弄る。
ガチャッ
鍵は開いた。
僕達は家内に侵入する。
一階をくまなく探すが誰もいない。
二階か……。
足音を立てないように慎重に進む。
外でパンパン鳴ってる。
多分兵隊が見張りを始末したんだろう。
二階の一室に鍵がかかっていた。
再び酒井君が解錠する。
酒井君と装備の確認をする。
「3,2,1、GO!」
酒井君がドアを開け僕ば前転して室内に中に転がり入ると周囲を確認する。
顔色の悪い、体格のいい男と細い女性が部屋にいた。
「君たちがエンペラーとエンプレス?」
「……そうだ」
男が答えた。
「僕達の事は言わなくてもわかりますよね?」
「ユニティの連中だな?」
「現状の説明いりますか?できれば要件を手短に話したいんですが?」
「説明はいい。要求だけ聞こう」
「僕達に付いて来て下さい。下手な抵抗は怪我するだけだと思ってください」
男と女性を連行する僕達。
ワゴン車に載せようとした時だった。
猛スピードで突進してくるセダン。
僕と酒井君咄嗟に身を隠す。
パンパン。
二発の銃声が聞こえた。
「夏凛!!」
男が女性の名前を呼んでいる。
酒井君が車のナンバーを晶さんに教えている間に僕はエンプレスの元へ寄った。
肩を撃たれたようだ。
「しっかりしろ!!夏凛!」
僕は打たれた傷口を見る。
弾は貫通したようだ。
傷口を押さえてワゴン車に男とエンプレスを押し込むと車を西松医院に向かうように指示する。
「夏凛、すまん!俺のせいだ!!俺が馬鹿な事に足を突っ込まなければ」
「良い夢見させてもらったんだ。文句は言わないよ」
最後の別れみたいなこと言わないでくださいよ。
「そんなに致命傷じゃない。気をしっかり持って」
「ここを押さえて!!」と男に言う。
「これで最後にしてもう足洗ってちょうだい。お願い……」
「分かってる!分かってるからしっかりしろ!!」
2人を乗せたワゴン車はすぐに西松医院に着くと深雪先生の手当てを受ける。
手術室から出てきた深雪先生は男を見る。
「先生!夏凛は……」
「……あれくらいの傷で動揺するほど肝っ玉が小さいならこの際綺麗さっぱり足を洗いなさい」
「先生それじゃあ……」
「命に別状はない。直ぐに退院してもいいくらい。ただアナタたちの場合下手に退院するよりこの病院にいた方がいいかもしれないけど」
「はい……」
深雪先生は次に僕を見る。
「渡辺君達にはあなたから伝えて、当分うちで預かるって」
「はい」
当然、この病院に護衛をつけないとな。
僕はユニティのグループメッセージを打つ。
自分の行動を過信していたようだ。
これが要人警護のミッションなら致命的なミスだ。
もっと気を引き締めて行かないと。
しかしエンペラーとエンプレスはこちらの手札になった。
ここからの采配は任せるよ。片桐君。
(3)
「風見!もっとスピード上げて」
「しっかり捕まっていてください」
昼間の国道でカーチェイスを繰り広げる僕達と発砲してきた相手。
石原君はエンペラーたちの警護についてる。
追跡している車両は途中で曲がり川沿いを走っている。ここなら……!
「晶ちゃん!相手車両には人質は乗っていない!」
「……いいわ!任せる」
僕は上半身を外に出して照準をタイヤに合わせる、
しかし相手ドライバーも僕を見たのだろう。
ジグザグにそうこうして狙いを定めさせない。相手の車から相手が飛び出してきた。
やばい!
咄嗟に車内に隠れる。
「揺れますよ!」
相手の射撃を上手くかわす風見さん。
「風見さん前に出られますか?」
「承知しました。」しっかり捕まっていてください。
風見さんはそう言うとアクセルを踏み込む。
相手の車の右側にでる。対向車は来てない。
「風見さん助手席の窓開けて!」
助手席の窓が開いたら僕と相手の前輪の間に出来る僅かな斜線に照準を合わせる。
「風見さん合図したら、フルブレーキ!!3,2,1……」
パン。
合図代わりに一発の銃声が鳴る。
僕が売った銃弾は相手の車の右前輪を捕らえバーストする。
挙動が乱れて路肩の田んぼに突っ込む相手の車。
車を止めると、晶ちゃんを車に残して車を降りる。
「手を挙げて車から出てきてくれませんかね?」
照準を前後どちらの席も狙えるようにして呼びかけると、中から4人の男が出て来る。
向こうの方が数的優位とみるや左右の二人が懐に手を伸ばす。
パンパン。
二発の銃弾がそれぞれの眉間を捕らえる。
硬質ラバー弾とはいえそれなりに威力はある。
相手は気絶する。
残りの二人も拳銃を持っていたが。二対二数は互角。後は両者の質の問題。
「脅しではないことは証明したんですけど、どうか収めてもらえませんかね?」
収める気はないらしい。
「しょうがないですね」
そう言うと同時に向こうが先に発砲してきた。
瞬時にサイドステップして弾を躱すと相手が二発目を打つ前に相手の手を狙う。
手に当った痛みで銃を落すの確認すると相手の頭部に照準を合わせる。
「銃をこちらに」
相手が銃をこちらに蹴飛ばすとそれを拾いながらも照準は外さない。
「風見さん4人を拘束してください」
そう言うと風見さんが一人ずつ後ろ手で手錠をかけていく。
「お伺いしますが、あなた方アーバニティの方々ですか?」
先にやった連中は失神している。
残った二人の口は堅い。
「正直に話した方が賢い選択だと思うんですけどね。どうです?」
ラバー弾とはいえこの距離で食らったら致命傷になる位置まで接近する。
「お前らの考えてる通りだ、俺達はアーバニティだ」
「ただの闇サークルがどうして拳銃なんて物騒なものを?」
まあ、こっちも人の事言えないんですけどね。
「お前らだって武装してるだろうが!結局行きつくところは皆同じなんだよ。金と暴力と女に塗れた世界に入り込む」
「その意見にはいささか反論したいところなんですが。要するにバックにそっち系の人がいるって事ですね」
「ああ、そうだ。他に聞くことはあるかい?坊ちゃん」
「なぜあの二人の命を狙ったの?」
晶ちゃんがいつの間にか車を降りてきてた。
「あの二人がお前らに捕まることを知った。だから俺達はあの二人の口封じを頼まれただけだ」
「そう、でも失敗に終わったからあなた達も『執行される』のね」
「そうだな、まもなく死神が来る」
すると四駆のトラックが迫ってくる。
後の荷台に乗っている者が構えているもの……それは!!。
「晶ちゃん危ない!!」
そう言うが早く晶ちゃんに抱き着いてその場に押し倒す。
「グッバイ!」
そんな言葉が聞こえてくると一発のロケットランチャーが車に打ち込まれる。
車は爆発して大炎上。
側に拘束していた男たちは……。
もう完全にアクション物と化してませんか?
恋愛物のれの字すら感じませんよ?
「早くこの場を離れましょう」
風見さんがそう言うと僕達はその場をあとにして西松病院に向かった。
(4)
「パスもっと早く!プレスももっと強気でかけてください!」
のんびりと見ている東山監督に代わって私が皆に指示を出す。
片桐先輩は練習に来ていない。
理由はユニティの行動を見ていたら把握できる。
この分だとしばらくはバスケの練習には参加できそうにない。
いや、ひょっとしたらバスケ部全員に迷惑をかけると思って出てこないのかもしれない。
とにかくアーバニティの件が片付くまでは片桐先輩は休暇か。
「何ぼんやり考えこんでるんだよ?冬夜がいないと寂しいってか?」
佐(たすく)が来る。
「そんな悪態つく暇あったらちゃんと練習見てた方がいいんじゃないですか?」
「俺も視野が広くなった方でな。可愛い恋人が寂しそうにしてるのがどうしても目に入ってしまうんだよ」
佐はそう言って私の肩に手を触れる。
いけない、今は練習中だ。佐の優しさに甘えて良い時間じゃない。
「時と場合を考えてください」
佐の手を払いのける。
遠坂先輩なら上手く甘えられるんだろうな、とか考えながら冷静に徹する私。
「冬夜達心配だな」
「他人の心配してる場合じゃないんじゃないですか?レギュラー勝ち取るなら今がチャンスですよ」
「俺だって人の子なんだよ。感情くらいある」
「まるで私が人の子じゃないみたいな言い方」
「お前だって心配してるんだろうが」
でも私達が心配したってどうなる問題でもない。
私達の手に終える問題じゃない。
「俺考えたんだけどさ。お前んちにしばらく泊まるわ」
何を言い出すかと思えば……。
「そんな場合じゃないと思いますけど」
「お前を一人にしておけねーよ。あいつら無差別に狙ってくるんだろ?だったら一緒に行動してた方が良い。俺じゃ役に立たねーかもしれねーけど」
「ダメです!佐の身に何かあったら私自分を許せない」
「俺だって同じだよ。お前に何かあってからじゃ遅いんだ」
「2人ともどうしたっすか?練習中に喧嘩っすか?」
藤間先輩がやってきた。
「な、なんでもありません。練習に戻ってください」
「そっすか、でも皆心配してるみたいですよ」
周りを見るとプレイが止まっていた。
「冬夜が来ない事と何か関係あるのか?」
赤井先輩が聞いてくる。
「そう言えば最近ユニティまた抗争始めたってニュースでやってたな」
吉良先輩が言う。
「本当に大丈夫だからみんな安心して……」
ボン!
どこかで爆発したような音が聞こえる。
コートにいた皆がざわめく。
リリリリリ……。
報知器の音が響き渡る。
「皆落ち着いて!非常口から体育館を出なさい」
「慌てることはありませんよ。落ち着いて行動してください」
私達は外に脱出する。
ほどなくして消防車がやってきて、消火活動にあたる。
出火場所は男子トイレ。
出火原因は何かが爆発炎上したこと。
警察もやってきて皆が事情聴取を受ける。
「俺達も攻撃対象になったみたいだな」
佐が言う。
私達から安息という日々は奪われた。
(5)
エンペラーを捕獲した。
その一報はすぐに私達にも伝わった。
これで、私達に平穏が戻る。
そう思っていた。
だけど悪魔は私達を決して逃さない。
節制のカードは私達には無い。
今日も学校が終わり私と公生は家に帰ろうとしていた時だった。
「皇帝も女皇帝も落ちた。あとは賢者と隠者だけだね」
公生が言う。だけど……。
「果たして本当にそれだけかしら?」
「どういう意味?」
「ドラゴンという者の正体すらわからないのよ」
「……正体ならとっくにわかってるさ」
え?
「すべてはIRISの中にある」
IRISか……彼らはついに到達した。
後は暴いていけばいい。
本当に?
私達はなにかまだ大きなものを見落としてないか?
運命の車輪はまだ止まっていない。
死神の行軍も止まらない。
悪魔のささやきは常に続く。
節制を望んでいてもそれを許されない。
審判が下され塔が崩れ落ちるその時まで。
常に自らの正義を振りかざし力を示さなければならない。
正義が実証されるか彼らが世界を手に入れるかまで審判の日々は続く。
私達に出来る事。
常に正義を証明すること。
そんな事が出来るのだろうか?
一度は悪魔のささやきに乗り闇に染めたこの手で正義を証明できるのか?
家に帰ると部屋に戻って着替える。
最初は気にしていた公生も最近はお構いなく着替えるようになった。
そして公生は私の事など気にも留めずにPCに向かい作業を始める。
公生は誠君と組んで大きな罠を張って待ち構えている。
その罠にかかってるかどうかを確かめる作業。
公生の集中力はすごい。
一度PCに向かうと2,3時間は持続して続ける。
私はそんな公生をただ見守るだけ。
椅子に腰かけスマホを操作する。
ユニティ発足以来初の犠牲者を出してしまった。
それはユニティの仲間ではなくアーバニティのメンバーだったが。
彼等は死神と名乗ったらしい。
ボン!
どこからか微かに聞こえてきた。
爆発音。
公生は気づいていない。
私はとっさに窓から外を見る。
正門の方から噴煙が上がっている。
何かが爆発したのは間違いなさそうだ。
その時公生の動きがぴたりとやんだ。
「奈留!危ない!!」
!?
公生は私を抱きしめると床に押し倒す。
チュン。
パリン。
同時に二つの音が鳴る。
公生がいなかったら私の胸は深紅に染まっていただろう。
銃弾が、床に命中する。
「公生!奈留!無事か!!」
恵美のお父さんが部屋に来た。
「大丈夫。おじさんも伏せて」
だが、恵美のお父さんは伏せない。
「狙撃手は倒したよ。心配いらない」
やはり敵は私達を狙っている。
「無事で何よりだ。むやみに窓に近づかない方が良い」
「わかってます」
公生が答えた。
「それじゃおじさんはいくよ。二人共ゆっくりしなさい」
恵美のお父さんはそう言って部屋を出ていった。
「窓の側に立たない。基本だろ?」
公生はそう言って私のおでこを軽く小突く。
「そうだったね、ごめん」
自分の命が狙われているという実感。それは恐怖。
「まったく……麗しの君から目を離せないな」
「じゃあ、離さないで」
「奈留?」
「そう思うんだったら目を離さないで」
「……わかったよ」
公生は私を抱きしめる。
つり橋効果。
そんな理論を誰か提唱していたっけ?
2人で死の危険を何度も乗り越えた二人だからこそ芽生える感情。
星と月が現れる頃。私達は安楽の時間を共にしていた。
夜が明けて太陽が現れる頃再び世界は動き出す。
(6)
「君がエンペラー?」
同い年くらいの男に問いかけていた。
「ああ、そうだ。俺がエンペラーだ」
その場にいたユニティの皆は良い感情を彼に持っていないだろう。
だけどそんな事に構ってる暇はない。
交渉する意志があるかないか?
まずはそれを確かめるべきだ。
「僕達と交渉する気はある?」
すると美嘉さんが怒鳴った
「交渉!?こいつを袋叩きにして警察に突き出せばいいだけの話だろ!?」
「落ち着け美嘉、それじゃ意味が無いのは今日分かったろ?」
皇帝と女帝を仕留めそこね、敵の手に堕ちようとした自分たちのメンバーを容赦なく葬った死神。
死神の手は公生や奈留だけでなく佐倉さんたちにも及んだらしい。
「こうなったら徹底的にやらないとダメだろうな。俺達に手を出しても割にあわないと思わせなきゃならない」
渡辺君が言う。
「抗争……ですか?」
石原君が言う。「僕は平気だけど皆は平気なの?」と言う。
「いやでも、もう後戻りできないのさ。舐められたら平穏な暮らしなんてできない」
渡辺君が言う。
皆静まり返る。
「で、話を戻したいんだけど良いかな?エンペラーは僕達と交渉する気はあるの?」
「……今となっては乗るしかないだろう。そっちの手札はなんだ?」
「君たちの保護。僕達が要求するのは僕達の保護下にいる事」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ。僕達の監視下に置いておく。君たちの好き勝手には行動させない」
「俺達を軟禁するって事か?」
「当分の間はね」
「その後は」
「ちょっと待って冬夜君!!」
愛莉が話に割って入った。
「私今全力で嫌な予感がしたんだけど、まさか冬夜君エンペラーさん達を……」
愛莉の頭を撫でてやる。
「よくわかったね、愛莉その通りだよ」
頭を撫でてやると愛莉は「えへへ~」と笑っていたがすぐに真顔になる。
「そんなのダメ!皆が絶対認めない」
「でも実際それが最善の手だと思うんだけど?」
「2人だけで話してないで私達にもちゃんと説明しろトーヤ!」
「そうだぞ!私達にはさっぱりわかんねーぞ!」
カンナと美嘉さんが抗議する。
薄々気づいたらしい渡辺君が言う。
「……本当にそれが最善の手なのか?」
「ユニティに手を出したら無事ではすまない。そう思わせたいんだろ?」
「正志!人の話を聞け」
「……冬夜。皆に説明してやれ」
渡辺君が言うと僕はここにいる皆に言った。
「皇帝と女帝をユニティに入れる」
皆は静まり返ったがすぐに反応が返ってきた。
「ふざけるな!こいつにどんな目に合わせられてきたのか分かってるのか!?」
「そーだぞとーや!少なくとも腕の一本や二本折ってやらねーと気がすまねえ!」
いきり立つカンナと美嘉さん。
「今回ばかりは片桐君の反対するよ。それじゃ私達の怒りが収まらない!」
亜依さんも反対する。
「皆さんのお怒りはごもっともです。俺達に得はあってもユニティに何の得にもならない」
エンペラーがそう言う。
「得ならあるさ。これ以上エンペラーを利用したサークルは現れないだろ?」
「そんなの警察にそいつ突き出せばいい話だろうが!」
カンナの怒りは収まらないようだ。
「それだと意味がない。また誰かが釈放して利用しないって保証はどこにもない」
「デメリットは考えたの?折角払拭できたユニティの汚名がまた元に戻るのよ?」
「それをする人間がいるとしたらアーバニティだけだ。アーバニティとはどのみち徹底抗戦なんだろ?だったら情報源はあるに越したことはない」
しばらく僕対多数の口論が続いたがそれも終わった。
「最終的にはリーダーの渡辺君が決める事だよ?僕はそれに従う。皆の言う通り警察に突き出した方が良いと言うなら突き出せばいい」
「最終的な面倒事は皆おれに押し付ける気か?」
渡辺君はそう言って笑う。
「俺は冬夜を支持する!冬夜が何を目論んでるのか知らないが冬夜に賭ける!」
渡辺君の賛同は得たようだ。
皆を見る。
「まあ、正志が言うなら……しょうがねえか」と美嘉さん
「まあこの馬鹿の言う通りになってきたしな……信じてやるか」とカンナ。
「渡辺君が言うならしょうがないわね。私も賛成するわ」と亜依さん。
他の皆も次々と賛成に回った。
咲さんと西松君も。
「……冬夜君がそう言うなら私は文句は言わない」
「……僕も片桐先輩が言うなら文句はありません」
「それじゃ、決まりだな」と渡辺君が言う。
「皆さんありがとうございます」とエンペラーこと亀梨君は頭を下げる。
「ついでだから教皇と女教皇も入れてあげたら?」と亜依さんが言う。
渡辺君が僕の顔を見る。
僕が頷くと渡辺君が頷く。
「じゃ、早速だけど女帝と皇帝と話がしたいんだけどいいかな?」
僕が言うと僕と渡辺君と亀梨君で病室に入った。
亀梨君が女帝……岸谷夏凛さんに事情を説明する。
静かに聞いていた岸谷さんは目に涙をためる。
「皆さん本当に感謝しています」
岸谷さんが頭を下げる。
「ここからは皆仲間だ。皆腹を割って話そうや」と渡辺君が言う。
「じゃ、冬夜聞きたい事ってなんなんだ?」
「悪魔と死神と賢者の隠者の正体」
僕が聞くと亀梨君の表情が一変して暗くなった。
「悪魔には一度だけあったことありますが、実名を名乗ることはありませんでした。他のメンバーにはあったことすらありません」
「そっか、ありがとう」
「ありがとうってそれだけか?冬夜」
渡辺君が驚く。
「だってそうでしょ?他の情報はIRISからいくらでも手に入る」
「IRIS!?」
亀梨君が反応する。
「もう知ってたんですね。IRISの存在」
「中身も拝見したよ」
そう言って僕は笑う。
「それでドラゴンの正体を聞かなかったわけか……何の役にも立てなかったですね」
「そうでもないさ。君たちの身柄を確保してる事が彼らを焦らせる理由になるんだから」
「それってあいつらの行動がエスカレートするだけじゃないのか?」
「そこで問題。アーバニティの頭を失ったはずなのにどうして実働部隊が動いているのか?」
「……アーバニティは所詮サークルです。皆さんがお話したようなことは俺の意思とは全く違う物が働いてる」
「それが悪魔であり死神なんだね?」
「だと、俺は思います」
その中身も多分IRISに記されているだろう。
誠か公生に聞けば教えてくれる。
「じゃ、岸谷さんお大事に。行こうか渡辺君」
「え?もういいんですか?」
岸谷さんがきょとんとしてる。
「また様子を見に来るよ。何かあったら連絡ちょうだい」
「ユニティは縁結びのサークル。無粋な真似はしないのさ」
渡辺君がそう言うと僕達は病室を出る。
「何か手掛かりはあった?」
恵美さんが聞いた。
「なにも?」
「何もって片桐君……」
ぽかっ
「冬夜君がこういうとぼけたこと言う時は絶対何か裏があるんだから。恵美も騙されちゃダメ!」
愛莉も勘が働くなあ。
「どういうことなの?片桐君」
恵美さんが聞いてくる。
「あの二人はやっぱり末端だよ。エゴイストのツテを利用されていただけの捨て駒に過ぎない」
「ってことは、まだ本体が……」
「あるんだろ?誠?」
誠に聞くと誠はにやりと笑った。
「ちゃんと突き止めてるぜアーバニティの裏組織」
やっぱりあったんだ。
「紅会って高橋グループと須藤グループが合同で作った裏組織があるんだ。立派な暴力団だ」
暴力団の言葉に皆の表情が強張る。
「その情報リークしたらスキャンダルだろうな」
渡辺君が言うけど……。
「残念だけどそうはならないよ」
誠が言った。
「どうしてだ」
「レアーレって芸能事務所知ってる?」
「ああ、有名ミュージシャンとかタレント抱えてる事務所か?」
「その親会社が須藤グループとつながりあるんだ」
「なるほど……圧力かかってるわけか」
「その証拠にここ数十年紅会の事については一切マスコミは触れていない」
「ダメか……」
皆が絶望する。どうしてだかわからない。
「皆悲観する事ないんじゃない?」
「片桐君どういうこと?」
恵美さんが言う。
「ありがたい事じゃないか?多少羽目を外してもそのレアーレってのがもみ消してくれるんだろ?」
「羽目を外しもって片桐君まさか……」
「やられたらやり返す。倍返しだ!」
「本気で暴力団とドンパチする気か!?」
カンナが驚いている。
「手を引くなら今のうちだよ?」とカンナに返す。
「そこまで言われてのこのこ手を引く奴がユニティにいるわけねーだろ!?」
「決まりだな。まずはどうする?」
「どうするも何ももう仕掛けられてるんだ。だったらやることは一つ」
「報復か?」
「派手にやりたいね」
「おあつらえな場所探しておくよ。小さな事務所潰してもしょうがないだろ?」
誠が言う。
「そうだな」
「じゃ、皆今夜は解散にしよう。気をつけて帰ってくれ」
そう言うと皆家に帰った。
僕と愛莉も家に帰る。
「冬夜君」
「どうした?」
「どうしてエンペラーさんと仲間に入れようと思ったの?」
「説明したろ?」
「でも内部に爆弾抱えるようなものじゃない?」
爆弾ね。
「心配ないと思うよ」
「会って話をしたからそう思ってるの?心読んだ?」
「女帝は素敵な人だったよ」
ぽかっ
「またそうやって意地悪言うんだから!麻耶さんに言いつけてやる!」
「愛莉より素敵な女性なんているわけないだろ」
「えへへ~」
家に帰るとお弁当屋さんで買ってきた弁当を食べて交代でシャワーを浴びて部屋で寛ぐ。
ニュース番組が始まると今日地元で起きた事件が取り上げられていた。
地元大体育館で謎の不審火。
川沿いの道でハンドル操作を誤った車が爆発炎上。
そんな感じで取り上げられていた。
どうしてハンドル操作を誤ったらタイヤがバーストするのか?
どうして田んぼに突っ込んで車が爆発するのか?
どうして遺体が手錠で手首を拘束されていたのか?
こっちにとって都合の悪い事もひっくるめて全て隠蔽されていた。
事務所の力って強いんだな。
政治的な圧力もかかってる?
その辺はIRISを調べればわかるだろう。
難しい事は後にしてこれからどうするかだ?
状況はこっちの方が優位だ。
愛莉パパの協力も必要かもしれないな。
「お~い」
愛莉が呼んでいる。
「どうした?」
「冬夜君が一人考えこんでるから呼んでみただけ~」
また、愛莉の前で入り込んでたか。
愛莉を抱き寄せる。
「ごめんね、いつも……」
「ううん、アーバニティの事考えてたんでしょ?」
「うん、ニュース見ながら入り込んでた」
「どんな事考えてたの?」
「ん、大したことじゃないよ……」
愛莉に考えてたことを説明した。
すると愛莉も悩み始める。
「難しい問題だね……」
愛莉の頭を両手でつかむとおでこをくっつけ合う。
「愛莉がいるなら大丈夫だよ。どこまでも行けるところまで行くさ」
行けるところまで。
そんなものはない。どこまでも行けるさきっと。
今は愛莉の事だけを考えて愛莉が望むことをかなえて行こう。
「深く考えてもしょうがないな。久しぶりに早く帰れたしゆっくり休むか」
そう言ってテレビを消してベッドに入る。
愛莉は寂しそうだ。
分かってるよ。
愛莉が望んでることくらい。
「おいで。ゆっくりするって言っただろ?」
愛莉は笑顔になるとベッドに入ってきた。
喜怒哀楽を余すことなくぶつけて行こう。
愛莉が言えないまま飲み込むことなんてことはよして。
全部受け止めてみせるから。
今夜は一つ問題が解決した。
これからも少しずつって言い聞かせて少しずつ問題を解いていこう。
「うぅ……」
朝から悩んでいた。
問題はどうやって冬夜君を起こすか?
最近の冬夜君は、甘えん坊さんだ。
私がちょっと耳を噛んだりするだけですぐに抱き着いてくる。
むしろそれを待ち望んでる傾向にある。
それは嬉しい事なんだけど時と場合を考えて欲しい。
私のせいで冬夜君の調整不足なんてことになったら大問題だ。
甘えたい自分を我慢して冬夜君を起こす方法を考える。
そうだ、神奈に聞いてみよう。
神奈に電話してみる
「どうした愛莉?」
「神奈はどうやって誠君起こしてる?」
「へ?」
「冬夜君最近ちゃんと起きてくれなくて」
神奈に説明すると神奈はため息を吐いた。
「そんなの『起きろこのボケ!!』って怒鳴りつけてやればいいだろ」
それはいやだな。冬夜君と朝から喧嘩なんて嫌だよ。
「他にないかな?」
「冬夜のことだからご飯とでもいえば起きるんじゃないのか?」
その手があった!
「ありがとう神奈」
「でもいよいよトーヤも誠に似てきてるな」
嬉しいんだけどね。私にしか興味を示さないから。
「じゃ、私もいい加減馬鹿亭主起こさないといけないから。頑張れよ愛莉」
「ありがとう、神奈。またね」
電話を切ると冬夜君の耳元で囁く。
「冬夜君、早く起きて日課こなさないとご飯食べる時間無くなっちゃうよ」
すると冬夜君はガバっと起きる。
「今何時!?」
「6時半だよ」
「急ごう愛莉!ご飯が待ってる!」
ぽかっ
「どうしたんだ愛莉!?」
「冬夜君は私とご飯どっちが大事なの?」
ちょっとした悪戯だった。
答えは分かりきってる。
私だよね
「そりゃ当然ごは……あ、愛莉に決まってるだろ?」
前半の部分は聞かなかったことにしてあげよう。
「そう思うんだったら素直に起きてよ」
冬夜君最近意地悪すぎるよ?
「10月になって冷えてくると布団が……愛莉が気持ちよくてついさ……」
冬夜君は笑って誤魔化している。
冬夜君はその間に着替えて、準備を済ませる。
そして日課を済ませると、冬夜君がシャワーを浴びてる間に私は朝食を準備する。
準備が済むころには冬夜君はダイニングに戻っていて、麻耶さん達も起きてくる。
朝食を済ませると私はシャワーを浴びて部屋に戻って着替える。
着替えると冬夜君の着替えと一緒に洗濯機に放り込んで麻耶さん達の洗濯物と一緒に洗濯機を回す。
その間に部屋に戻ると冬夜君と並んで座ってコーヒーを飲みながらテレビを見る。
洗濯が終ると私達の分と麻耶さん達の分を取りわけて部屋に持って行ってアイロンがけ。
その間に冬夜君は飲み終わったマグカップをキッチンに運んでくれる。
アイロンがけが終わり、ラックにしまう頃には出かける時間になってしまう。
「行ってきます」
そう言うと私たちは家を出て学校に向かう。
駐車場に車を止めると棟まで歩く。
その後、午前中の授業を受けると、学食に向かってお弁当を食べていれば、皆が集まってくる。
「今日の午後の予定なんだけど……いけそう?」
冬夜君が石原君達に聞いている。
「何時でも」
「バイトは休みました」
石原君と酒井君が言う。
「私達も何も問題ないわ」
恵美と晶も大丈夫だと言う。
「俺たちはどうする?冬夜」
渡辺君が聞いていた。
「そうだね、先に別荘に行って待っていようか」
冬夜君が答える。
「じゃあ、今日の集合場所も別府のファミレスで問題ないな」
渡辺君がそう言いながらスマホを操作してる。
「僕は問題ないけど。な?愛莉」
「うん」
「じゃ、頼んだぞ!酒井に石原君」
渡辺君が2人の肩を叩くと二人は力強くうなずいた。
別府に行く前に一度家に帰ろうと冬夜君が言うと私はうなずいた。
そして家に帰ると家の周りに黄色いテープが張られてる。
「KEEP OUT」と書かれてある。
私の家の駐車場に車を止めると冬夜君が警官に事情を聞いていた。
「君は?」
「この家の者ですけど何があったんですか?」
「名前聞いてもいいかな?」
「片桐冬夜です」
「遠坂愛莉です。同居してます」
私達は免許証を見せた。
「この家に銃弾が撃ち込まれてね。それで通報があたんだ」
「けが人は?」
「女性が一人キッチンにいただけでけが人はいない。今調書を取ってるところだ」
警官の奥に麻耶さんの姿が見えた。
「麻耶さん!!」
「愛莉ちゃん!」
私は麻耶さんのもとの駆け寄る。
「麻耶さん無事だった?」
「ええ?なんとか?」
「……愛莉、冬夜君は一緒かい?」
パパさんも駆け付けていた。
パパさんの言いそうなことは分かった。
「パパさん言っておくけど私は……」
「『このくらいの事で家を空ける気はない』といいたいんだろ?わかってるよ。……昔の梨衣にそっくりだ」
パパさんに気づいた冬夜君がこっちに来る。
「おじさん、これは一体?」
「恐らく君にたいする脅しだろう。やったのはアーバニティなのかそれともその母系団体なのか分からないが……」
冬夜君は何かを考えている。
「立場上君たちを肯定することは言えないが……出来れば無茶はしないで欲しい」
「大丈夫です。愛莉だけは守りますから」
「それではだめだ。君に何かあったら愛莉が悲しむ。娘を悲しませるような男に娘はやれんよ」
「……わかりました」
「うん、君たちは今日予定があるのだろ?」
「ええ。」
「麻耶さんの事はおじさんに任せて行ってきなさい」
私は冬夜君の車を見る。
車は無事なようだ。
「愛莉、今日は愛莉の車使おう?」
「うん」
私の車を使って別荘に向かう。
冬夜君の運転は車が変わっても変わらない。
どこまでものんびりしていてゆったりしていて、快適な運転。
「冬夜君大丈夫?」
「なにが?」
「麻耶さんまだ狙われてるんじゃ……?」
「かもしれないし父さんが狙われてるかもしれないし、愛莉の両親だって安心できない」
パパさんはともかくりえちゃんは心配だ。
「理不尽な話だけど、相手にユニティに手を出したら酷い目にあうと思い知らすしかないだろうね」
力でもって力をねじ伏せる世界。
正義を力でもって示すしかない世界。
冬夜君は突然。コンビニに寄った。
ぽかっ
「こんな時に食べてる場合じゃないでしょ!」
「ジュースならいいだろ?喉渇いたよ。愛莉もおいで」
「私はいいよ……」
「いいから」
冬夜君が珍しく強引に私を連れ出す。
冬夜君はジュースを買うと車に向かわずに電話を始めた。
私と手をつないだまま。
私にここから動くなという。
どうしたんだろう?
「あ、誠?地元ナンバーの……」
冬夜君が車のナンバーを誠君に教えている。
「今別府のコンビニにいる。……うん、わかった。じゃ、そのルートで」
冬夜君は電話を終えると車に戻ろうという。
何があったの?
「ねえ、何が起こってるの?いい加減教えてよ」
「大丈夫、いつも通りの愛莉でいて?あ、そうだCDでもかけると良いね」
うぅ……。そうやって話を逸らすって事は何かあるって事だね。
私が知ったらまずい事だって事くらいは理解できる。
冬夜君の話に合わせよう。
「何が聴きたい?」
「愛莉の好きなので良いよ」
「わかった~」
なるべく不安を出さないように明るく振舞う。
そんな時にはこれだよね。
洋楽をチョイスして。CDをかける。
軽快なポップスが車内に流れる。
冬夜君の進行ルートが普通よりちょっと遠回りなのも気にしない。
道が段々細くなっていく。
その時後ろにぴったりとついてる一台の車両に気がついた。
「振り返らないで!気づかれる!」
冬夜君が言うから言う事に従った。
舗装の無い砂利道を進むと行き止まりに突き当たる。
冬夜君は車を止める。
「愛莉は車から降りたら駄目だよ」
冬夜君がそう言って車から降りようとするのを私が止めた。
「私が出て危ないんだったら冬夜君もでちゃだめ!」
サイドミラー越しに移る後の車両。
何人かの黒服の男が近づいてくる。
「車から出て手を上げろ」
とても怖い声。
私が足を引っ張ったと直感した。
冬夜君ごめんなさい。
「愛莉言う通りに従って」
冬夜君が言うと私は車を降りて両手を挙げた。
男たちは拳銃を私達に向けている。
私は膝が震えていて立っているのもやっとだというのに冬夜君は余裕すら見せる。
それは男たちも、感づいていたと思う。
「女、お前からゆっくりこっちに向かってこい」
冬夜君を見る。
「言う通りにして」
冬夜君がそう言うからゆっくりと男たちに近づく。
「こういう言葉知ってる?」
突然冬夜君が話しだす。
「拳銃抜いたからには命かけろよ」
「なんだと?」
男が冬夜君に銃を向ける。
「そいつは脅しの道具なんかじゃない」
冬夜君が言ったと同時に冬夜君の銃を向けていた相手が後頭部に何かを食らったらしく倒れた。
私の方に向けていた相手もほぼ同時に倒れる。
慌てて後方を確認した二人は後方を確認した瞬間に誠君と渡辺君に殴り飛ばされれていた。
「危なかったな冬夜」
誠君が冬夜君に駆け寄る。
「予定通りだよ。問題ない」
「この人達殺しちゃったの?」
誠君は転がっていた弾丸を拾って私に見せる。
「ただの硬質ラバー弾だよ、殺しちゃいない」
誠君はそう言って後ろにアサルトライフルを構えていた男二人に合図すると。男は倒れている4人の身柄を拘束して。近くのガードレールに手首を括り付けた。
「お前らこんなことしてタダで済む思ってるのか?ガキが!!」
殴られた男はまだ意識があったらしく、こっちを睨みつけている。
アサルトラフルを持っていた二人は尾行していた車をどかす。
渡辺君は自分が殴り飛ばした男の胸ぐらを掴んで脅す。
「おっさん達こそ俺達に手を出してこんなもので済むと思ったら大間違いだからな!」
渡辺君はそう言うと私達に向かって言った。
「俺達もそろそろ行こう。あっちも成功したがちょっと問題があったらしい。西松医院に行こう。付いて来てくれ」
渡辺君の車について行く私達。
「ごめんね、愛莉。動揺すると思って黙ってたんだ。かといって対策してる事も気取られたくなくて黙ってた」
「ううん。気にしないで。そんな事だろうと思ったから」
「そう言ってもらえると助かる……」
「……とか言うと思ったら大間違いですからね!」
ぽかっ
「パパさんに言われたそばからまた無茶しようとして!パパさんに言いつけてやるんだから!」
「そ、それだけは……」
「じゃあ、私のお願い一つ聞いて」
「な、なんだい?」
「今度からはちゃんと前もって教えて。冬夜君直ぐなんでも隠し事するんだから」
私だって作戦だってわかってたら、ちゃんと心構えするから。
「いや、だから愛莉には素で驚いていて欲しくて……」
「さっきみたいに冬夜君の足引っ張っちゃうのやだ」
「わかったよ。愛莉には事前説明するから」
「うん!それと~」
「今夜……だろ?」
「うん、疲れたって言い訳は聞かないからね」
「わかった」
そして私たちは地元に戻った。。
(2)
「時間だ、始めましょう」
恵美が言うと僕達は住宅街の一軒家に足を踏み入れた。
呼び鈴を鳴らす。
誰も出ない。
もう一度鳴らす。
反応が無い。
酒井君を見る。
やれやれと酒井君は二本の針金を鍵穴に入れて弄る。
ガチャッ
鍵は開いた。
僕達は家内に侵入する。
一階をくまなく探すが誰もいない。
二階か……。
足音を立てないように慎重に進む。
外でパンパン鳴ってる。
多分兵隊が見張りを始末したんだろう。
二階の一室に鍵がかかっていた。
再び酒井君が解錠する。
酒井君と装備の確認をする。
「3,2,1、GO!」
酒井君がドアを開け僕ば前転して室内に中に転がり入ると周囲を確認する。
顔色の悪い、体格のいい男と細い女性が部屋にいた。
「君たちがエンペラーとエンプレス?」
「……そうだ」
男が答えた。
「僕達の事は言わなくてもわかりますよね?」
「ユニティの連中だな?」
「現状の説明いりますか?できれば要件を手短に話したいんですが?」
「説明はいい。要求だけ聞こう」
「僕達に付いて来て下さい。下手な抵抗は怪我するだけだと思ってください」
男と女性を連行する僕達。
ワゴン車に載せようとした時だった。
猛スピードで突進してくるセダン。
僕と酒井君咄嗟に身を隠す。
パンパン。
二発の銃声が聞こえた。
「夏凛!!」
男が女性の名前を呼んでいる。
酒井君が車のナンバーを晶さんに教えている間に僕はエンプレスの元へ寄った。
肩を撃たれたようだ。
「しっかりしろ!!夏凛!」
僕は打たれた傷口を見る。
弾は貫通したようだ。
傷口を押さえてワゴン車に男とエンプレスを押し込むと車を西松医院に向かうように指示する。
「夏凛、すまん!俺のせいだ!!俺が馬鹿な事に足を突っ込まなければ」
「良い夢見させてもらったんだ。文句は言わないよ」
最後の別れみたいなこと言わないでくださいよ。
「そんなに致命傷じゃない。気をしっかり持って」
「ここを押さえて!!」と男に言う。
「これで最後にしてもう足洗ってちょうだい。お願い……」
「分かってる!分かってるからしっかりしろ!!」
2人を乗せたワゴン車はすぐに西松医院に着くと深雪先生の手当てを受ける。
手術室から出てきた深雪先生は男を見る。
「先生!夏凛は……」
「……あれくらいの傷で動揺するほど肝っ玉が小さいならこの際綺麗さっぱり足を洗いなさい」
「先生それじゃあ……」
「命に別状はない。直ぐに退院してもいいくらい。ただアナタたちの場合下手に退院するよりこの病院にいた方がいいかもしれないけど」
「はい……」
深雪先生は次に僕を見る。
「渡辺君達にはあなたから伝えて、当分うちで預かるって」
「はい」
当然、この病院に護衛をつけないとな。
僕はユニティのグループメッセージを打つ。
自分の行動を過信していたようだ。
これが要人警護のミッションなら致命的なミスだ。
もっと気を引き締めて行かないと。
しかしエンペラーとエンプレスはこちらの手札になった。
ここからの采配は任せるよ。片桐君。
(3)
「風見!もっとスピード上げて」
「しっかり捕まっていてください」
昼間の国道でカーチェイスを繰り広げる僕達と発砲してきた相手。
石原君はエンペラーたちの警護についてる。
追跡している車両は途中で曲がり川沿いを走っている。ここなら……!
「晶ちゃん!相手車両には人質は乗っていない!」
「……いいわ!任せる」
僕は上半身を外に出して照準をタイヤに合わせる、
しかし相手ドライバーも僕を見たのだろう。
ジグザグにそうこうして狙いを定めさせない。相手の車から相手が飛び出してきた。
やばい!
咄嗟に車内に隠れる。
「揺れますよ!」
相手の射撃を上手くかわす風見さん。
「風見さん前に出られますか?」
「承知しました。」しっかり捕まっていてください。
風見さんはそう言うとアクセルを踏み込む。
相手の車の右側にでる。対向車は来てない。
「風見さん助手席の窓開けて!」
助手席の窓が開いたら僕と相手の前輪の間に出来る僅かな斜線に照準を合わせる。
「風見さん合図したら、フルブレーキ!!3,2,1……」
パン。
合図代わりに一発の銃声が鳴る。
僕が売った銃弾は相手の車の右前輪を捕らえバーストする。
挙動が乱れて路肩の田んぼに突っ込む相手の車。
車を止めると、晶ちゃんを車に残して車を降りる。
「手を挙げて車から出てきてくれませんかね?」
照準を前後どちらの席も狙えるようにして呼びかけると、中から4人の男が出て来る。
向こうの方が数的優位とみるや左右の二人が懐に手を伸ばす。
パンパン。
二発の銃弾がそれぞれの眉間を捕らえる。
硬質ラバー弾とはいえそれなりに威力はある。
相手は気絶する。
残りの二人も拳銃を持っていたが。二対二数は互角。後は両者の質の問題。
「脅しではないことは証明したんですけど、どうか収めてもらえませんかね?」
収める気はないらしい。
「しょうがないですね」
そう言うと同時に向こうが先に発砲してきた。
瞬時にサイドステップして弾を躱すと相手が二発目を打つ前に相手の手を狙う。
手に当った痛みで銃を落すの確認すると相手の頭部に照準を合わせる。
「銃をこちらに」
相手が銃をこちらに蹴飛ばすとそれを拾いながらも照準は外さない。
「風見さん4人を拘束してください」
そう言うと風見さんが一人ずつ後ろ手で手錠をかけていく。
「お伺いしますが、あなた方アーバニティの方々ですか?」
先にやった連中は失神している。
残った二人の口は堅い。
「正直に話した方が賢い選択だと思うんですけどね。どうです?」
ラバー弾とはいえこの距離で食らったら致命傷になる位置まで接近する。
「お前らの考えてる通りだ、俺達はアーバニティだ」
「ただの闇サークルがどうして拳銃なんて物騒なものを?」
まあ、こっちも人の事言えないんですけどね。
「お前らだって武装してるだろうが!結局行きつくところは皆同じなんだよ。金と暴力と女に塗れた世界に入り込む」
「その意見にはいささか反論したいところなんですが。要するにバックにそっち系の人がいるって事ですね」
「ああ、そうだ。他に聞くことはあるかい?坊ちゃん」
「なぜあの二人の命を狙ったの?」
晶ちゃんがいつの間にか車を降りてきてた。
「あの二人がお前らに捕まることを知った。だから俺達はあの二人の口封じを頼まれただけだ」
「そう、でも失敗に終わったからあなた達も『執行される』のね」
「そうだな、まもなく死神が来る」
すると四駆のトラックが迫ってくる。
後の荷台に乗っている者が構えているもの……それは!!。
「晶ちゃん危ない!!」
そう言うが早く晶ちゃんに抱き着いてその場に押し倒す。
「グッバイ!」
そんな言葉が聞こえてくると一発のロケットランチャーが車に打ち込まれる。
車は爆発して大炎上。
側に拘束していた男たちは……。
もう完全にアクション物と化してませんか?
恋愛物のれの字すら感じませんよ?
「早くこの場を離れましょう」
風見さんがそう言うと僕達はその場をあとにして西松病院に向かった。
(4)
「パスもっと早く!プレスももっと強気でかけてください!」
のんびりと見ている東山監督に代わって私が皆に指示を出す。
片桐先輩は練習に来ていない。
理由はユニティの行動を見ていたら把握できる。
この分だとしばらくはバスケの練習には参加できそうにない。
いや、ひょっとしたらバスケ部全員に迷惑をかけると思って出てこないのかもしれない。
とにかくアーバニティの件が片付くまでは片桐先輩は休暇か。
「何ぼんやり考えこんでるんだよ?冬夜がいないと寂しいってか?」
佐(たすく)が来る。
「そんな悪態つく暇あったらちゃんと練習見てた方がいいんじゃないですか?」
「俺も視野が広くなった方でな。可愛い恋人が寂しそうにしてるのがどうしても目に入ってしまうんだよ」
佐はそう言って私の肩に手を触れる。
いけない、今は練習中だ。佐の優しさに甘えて良い時間じゃない。
「時と場合を考えてください」
佐の手を払いのける。
遠坂先輩なら上手く甘えられるんだろうな、とか考えながら冷静に徹する私。
「冬夜達心配だな」
「他人の心配してる場合じゃないんじゃないですか?レギュラー勝ち取るなら今がチャンスですよ」
「俺だって人の子なんだよ。感情くらいある」
「まるで私が人の子じゃないみたいな言い方」
「お前だって心配してるんだろうが」
でも私達が心配したってどうなる問題でもない。
私達の手に終える問題じゃない。
「俺考えたんだけどさ。お前んちにしばらく泊まるわ」
何を言い出すかと思えば……。
「そんな場合じゃないと思いますけど」
「お前を一人にしておけねーよ。あいつら無差別に狙ってくるんだろ?だったら一緒に行動してた方が良い。俺じゃ役に立たねーかもしれねーけど」
「ダメです!佐の身に何かあったら私自分を許せない」
「俺だって同じだよ。お前に何かあってからじゃ遅いんだ」
「2人ともどうしたっすか?練習中に喧嘩っすか?」
藤間先輩がやってきた。
「な、なんでもありません。練習に戻ってください」
「そっすか、でも皆心配してるみたいですよ」
周りを見るとプレイが止まっていた。
「冬夜が来ない事と何か関係あるのか?」
赤井先輩が聞いてくる。
「そう言えば最近ユニティまた抗争始めたってニュースでやってたな」
吉良先輩が言う。
「本当に大丈夫だからみんな安心して……」
ボン!
どこかで爆発したような音が聞こえる。
コートにいた皆がざわめく。
リリリリリ……。
報知器の音が響き渡る。
「皆落ち着いて!非常口から体育館を出なさい」
「慌てることはありませんよ。落ち着いて行動してください」
私達は外に脱出する。
ほどなくして消防車がやってきて、消火活動にあたる。
出火場所は男子トイレ。
出火原因は何かが爆発炎上したこと。
警察もやってきて皆が事情聴取を受ける。
「俺達も攻撃対象になったみたいだな」
佐が言う。
私達から安息という日々は奪われた。
(5)
エンペラーを捕獲した。
その一報はすぐに私達にも伝わった。
これで、私達に平穏が戻る。
そう思っていた。
だけど悪魔は私達を決して逃さない。
節制のカードは私達には無い。
今日も学校が終わり私と公生は家に帰ろうとしていた時だった。
「皇帝も女皇帝も落ちた。あとは賢者と隠者だけだね」
公生が言う。だけど……。
「果たして本当にそれだけかしら?」
「どういう意味?」
「ドラゴンという者の正体すらわからないのよ」
「……正体ならとっくにわかってるさ」
え?
「すべてはIRISの中にある」
IRISか……彼らはついに到達した。
後は暴いていけばいい。
本当に?
私達はなにかまだ大きなものを見落としてないか?
運命の車輪はまだ止まっていない。
死神の行軍も止まらない。
悪魔のささやきは常に続く。
節制を望んでいてもそれを許されない。
審判が下され塔が崩れ落ちるその時まで。
常に自らの正義を振りかざし力を示さなければならない。
正義が実証されるか彼らが世界を手に入れるかまで審判の日々は続く。
私達に出来る事。
常に正義を証明すること。
そんな事が出来るのだろうか?
一度は悪魔のささやきに乗り闇に染めたこの手で正義を証明できるのか?
家に帰ると部屋に戻って着替える。
最初は気にしていた公生も最近はお構いなく着替えるようになった。
そして公生は私の事など気にも留めずにPCに向かい作業を始める。
公生は誠君と組んで大きな罠を張って待ち構えている。
その罠にかかってるかどうかを確かめる作業。
公生の集中力はすごい。
一度PCに向かうと2,3時間は持続して続ける。
私はそんな公生をただ見守るだけ。
椅子に腰かけスマホを操作する。
ユニティ発足以来初の犠牲者を出してしまった。
それはユニティの仲間ではなくアーバニティのメンバーだったが。
彼等は死神と名乗ったらしい。
ボン!
どこからか微かに聞こえてきた。
爆発音。
公生は気づいていない。
私はとっさに窓から外を見る。
正門の方から噴煙が上がっている。
何かが爆発したのは間違いなさそうだ。
その時公生の動きがぴたりとやんだ。
「奈留!危ない!!」
!?
公生は私を抱きしめると床に押し倒す。
チュン。
パリン。
同時に二つの音が鳴る。
公生がいなかったら私の胸は深紅に染まっていただろう。
銃弾が、床に命中する。
「公生!奈留!無事か!!」
恵美のお父さんが部屋に来た。
「大丈夫。おじさんも伏せて」
だが、恵美のお父さんは伏せない。
「狙撃手は倒したよ。心配いらない」
やはり敵は私達を狙っている。
「無事で何よりだ。むやみに窓に近づかない方が良い」
「わかってます」
公生が答えた。
「それじゃおじさんはいくよ。二人共ゆっくりしなさい」
恵美のお父さんはそう言って部屋を出ていった。
「窓の側に立たない。基本だろ?」
公生はそう言って私のおでこを軽く小突く。
「そうだったね、ごめん」
自分の命が狙われているという実感。それは恐怖。
「まったく……麗しの君から目を離せないな」
「じゃあ、離さないで」
「奈留?」
「そう思うんだったら目を離さないで」
「……わかったよ」
公生は私を抱きしめる。
つり橋効果。
そんな理論を誰か提唱していたっけ?
2人で死の危険を何度も乗り越えた二人だからこそ芽生える感情。
星と月が現れる頃。私達は安楽の時間を共にしていた。
夜が明けて太陽が現れる頃再び世界は動き出す。
(6)
「君がエンペラー?」
同い年くらいの男に問いかけていた。
「ああ、そうだ。俺がエンペラーだ」
その場にいたユニティの皆は良い感情を彼に持っていないだろう。
だけどそんな事に構ってる暇はない。
交渉する意志があるかないか?
まずはそれを確かめるべきだ。
「僕達と交渉する気はある?」
すると美嘉さんが怒鳴った
「交渉!?こいつを袋叩きにして警察に突き出せばいいだけの話だろ!?」
「落ち着け美嘉、それじゃ意味が無いのは今日分かったろ?」
皇帝と女帝を仕留めそこね、敵の手に堕ちようとした自分たちのメンバーを容赦なく葬った死神。
死神の手は公生や奈留だけでなく佐倉さんたちにも及んだらしい。
「こうなったら徹底的にやらないとダメだろうな。俺達に手を出しても割にあわないと思わせなきゃならない」
渡辺君が言う。
「抗争……ですか?」
石原君が言う。「僕は平気だけど皆は平気なの?」と言う。
「いやでも、もう後戻りできないのさ。舐められたら平穏な暮らしなんてできない」
渡辺君が言う。
皆静まり返る。
「で、話を戻したいんだけど良いかな?エンペラーは僕達と交渉する気はあるの?」
「……今となっては乗るしかないだろう。そっちの手札はなんだ?」
「君たちの保護。僕達が要求するのは僕達の保護下にいる事」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ。僕達の監視下に置いておく。君たちの好き勝手には行動させない」
「俺達を軟禁するって事か?」
「当分の間はね」
「その後は」
「ちょっと待って冬夜君!!」
愛莉が話に割って入った。
「私今全力で嫌な予感がしたんだけど、まさか冬夜君エンペラーさん達を……」
愛莉の頭を撫でてやる。
「よくわかったね、愛莉その通りだよ」
頭を撫でてやると愛莉は「えへへ~」と笑っていたがすぐに真顔になる。
「そんなのダメ!皆が絶対認めない」
「でも実際それが最善の手だと思うんだけど?」
「2人だけで話してないで私達にもちゃんと説明しろトーヤ!」
「そうだぞ!私達にはさっぱりわかんねーぞ!」
カンナと美嘉さんが抗議する。
薄々気づいたらしい渡辺君が言う。
「……本当にそれが最善の手なのか?」
「ユニティに手を出したら無事ではすまない。そう思わせたいんだろ?」
「正志!人の話を聞け」
「……冬夜。皆に説明してやれ」
渡辺君が言うと僕はここにいる皆に言った。
「皇帝と女帝をユニティに入れる」
皆は静まり返ったがすぐに反応が返ってきた。
「ふざけるな!こいつにどんな目に合わせられてきたのか分かってるのか!?」
「そーだぞとーや!少なくとも腕の一本や二本折ってやらねーと気がすまねえ!」
いきり立つカンナと美嘉さん。
「今回ばかりは片桐君の反対するよ。それじゃ私達の怒りが収まらない!」
亜依さんも反対する。
「皆さんのお怒りはごもっともです。俺達に得はあってもユニティに何の得にもならない」
エンペラーがそう言う。
「得ならあるさ。これ以上エンペラーを利用したサークルは現れないだろ?」
「そんなの警察にそいつ突き出せばいい話だろうが!」
カンナの怒りは収まらないようだ。
「それだと意味がない。また誰かが釈放して利用しないって保証はどこにもない」
「デメリットは考えたの?折角払拭できたユニティの汚名がまた元に戻るのよ?」
「それをする人間がいるとしたらアーバニティだけだ。アーバニティとはどのみち徹底抗戦なんだろ?だったら情報源はあるに越したことはない」
しばらく僕対多数の口論が続いたがそれも終わった。
「最終的にはリーダーの渡辺君が決める事だよ?僕はそれに従う。皆の言う通り警察に突き出した方が良いと言うなら突き出せばいい」
「最終的な面倒事は皆おれに押し付ける気か?」
渡辺君はそう言って笑う。
「俺は冬夜を支持する!冬夜が何を目論んでるのか知らないが冬夜に賭ける!」
渡辺君の賛同は得たようだ。
皆を見る。
「まあ、正志が言うなら……しょうがねえか」と美嘉さん
「まあこの馬鹿の言う通りになってきたしな……信じてやるか」とカンナ。
「渡辺君が言うならしょうがないわね。私も賛成するわ」と亜依さん。
他の皆も次々と賛成に回った。
咲さんと西松君も。
「……冬夜君がそう言うなら私は文句は言わない」
「……僕も片桐先輩が言うなら文句はありません」
「それじゃ、決まりだな」と渡辺君が言う。
「皆さんありがとうございます」とエンペラーこと亀梨君は頭を下げる。
「ついでだから教皇と女教皇も入れてあげたら?」と亜依さんが言う。
渡辺君が僕の顔を見る。
僕が頷くと渡辺君が頷く。
「じゃ、早速だけど女帝と皇帝と話がしたいんだけどいいかな?」
僕が言うと僕と渡辺君と亀梨君で病室に入った。
亀梨君が女帝……岸谷夏凛さんに事情を説明する。
静かに聞いていた岸谷さんは目に涙をためる。
「皆さん本当に感謝しています」
岸谷さんが頭を下げる。
「ここからは皆仲間だ。皆腹を割って話そうや」と渡辺君が言う。
「じゃ、冬夜聞きたい事ってなんなんだ?」
「悪魔と死神と賢者の隠者の正体」
僕が聞くと亀梨君の表情が一変して暗くなった。
「悪魔には一度だけあったことありますが、実名を名乗ることはありませんでした。他のメンバーにはあったことすらありません」
「そっか、ありがとう」
「ありがとうってそれだけか?冬夜」
渡辺君が驚く。
「だってそうでしょ?他の情報はIRISからいくらでも手に入る」
「IRIS!?」
亀梨君が反応する。
「もう知ってたんですね。IRISの存在」
「中身も拝見したよ」
そう言って僕は笑う。
「それでドラゴンの正体を聞かなかったわけか……何の役にも立てなかったですね」
「そうでもないさ。君たちの身柄を確保してる事が彼らを焦らせる理由になるんだから」
「それってあいつらの行動がエスカレートするだけじゃないのか?」
「そこで問題。アーバニティの頭を失ったはずなのにどうして実働部隊が動いているのか?」
「……アーバニティは所詮サークルです。皆さんがお話したようなことは俺の意思とは全く違う物が働いてる」
「それが悪魔であり死神なんだね?」
「だと、俺は思います」
その中身も多分IRISに記されているだろう。
誠か公生に聞けば教えてくれる。
「じゃ、岸谷さんお大事に。行こうか渡辺君」
「え?もういいんですか?」
岸谷さんがきょとんとしてる。
「また様子を見に来るよ。何かあったら連絡ちょうだい」
「ユニティは縁結びのサークル。無粋な真似はしないのさ」
渡辺君がそう言うと僕達は病室を出る。
「何か手掛かりはあった?」
恵美さんが聞いた。
「なにも?」
「何もって片桐君……」
ぽかっ
「冬夜君がこういうとぼけたこと言う時は絶対何か裏があるんだから。恵美も騙されちゃダメ!」
愛莉も勘が働くなあ。
「どういうことなの?片桐君」
恵美さんが聞いてくる。
「あの二人はやっぱり末端だよ。エゴイストのツテを利用されていただけの捨て駒に過ぎない」
「ってことは、まだ本体が……」
「あるんだろ?誠?」
誠に聞くと誠はにやりと笑った。
「ちゃんと突き止めてるぜアーバニティの裏組織」
やっぱりあったんだ。
「紅会って高橋グループと須藤グループが合同で作った裏組織があるんだ。立派な暴力団だ」
暴力団の言葉に皆の表情が強張る。
「その情報リークしたらスキャンダルだろうな」
渡辺君が言うけど……。
「残念だけどそうはならないよ」
誠が言った。
「どうしてだ」
「レアーレって芸能事務所知ってる?」
「ああ、有名ミュージシャンとかタレント抱えてる事務所か?」
「その親会社が須藤グループとつながりあるんだ」
「なるほど……圧力かかってるわけか」
「その証拠にここ数十年紅会の事については一切マスコミは触れていない」
「ダメか……」
皆が絶望する。どうしてだかわからない。
「皆悲観する事ないんじゃない?」
「片桐君どういうこと?」
恵美さんが言う。
「ありがたい事じゃないか?多少羽目を外してもそのレアーレってのがもみ消してくれるんだろ?」
「羽目を外しもって片桐君まさか……」
「やられたらやり返す。倍返しだ!」
「本気で暴力団とドンパチする気か!?」
カンナが驚いている。
「手を引くなら今のうちだよ?」とカンナに返す。
「そこまで言われてのこのこ手を引く奴がユニティにいるわけねーだろ!?」
「決まりだな。まずはどうする?」
「どうするも何ももう仕掛けられてるんだ。だったらやることは一つ」
「報復か?」
「派手にやりたいね」
「おあつらえな場所探しておくよ。小さな事務所潰してもしょうがないだろ?」
誠が言う。
「そうだな」
「じゃ、皆今夜は解散にしよう。気をつけて帰ってくれ」
そう言うと皆家に帰った。
僕と愛莉も家に帰る。
「冬夜君」
「どうした?」
「どうしてエンペラーさんと仲間に入れようと思ったの?」
「説明したろ?」
「でも内部に爆弾抱えるようなものじゃない?」
爆弾ね。
「心配ないと思うよ」
「会って話をしたからそう思ってるの?心読んだ?」
「女帝は素敵な人だったよ」
ぽかっ
「またそうやって意地悪言うんだから!麻耶さんに言いつけてやる!」
「愛莉より素敵な女性なんているわけないだろ」
「えへへ~」
家に帰るとお弁当屋さんで買ってきた弁当を食べて交代でシャワーを浴びて部屋で寛ぐ。
ニュース番組が始まると今日地元で起きた事件が取り上げられていた。
地元大体育館で謎の不審火。
川沿いの道でハンドル操作を誤った車が爆発炎上。
そんな感じで取り上げられていた。
どうしてハンドル操作を誤ったらタイヤがバーストするのか?
どうして田んぼに突っ込んで車が爆発するのか?
どうして遺体が手錠で手首を拘束されていたのか?
こっちにとって都合の悪い事もひっくるめて全て隠蔽されていた。
事務所の力って強いんだな。
政治的な圧力もかかってる?
その辺はIRISを調べればわかるだろう。
難しい事は後にしてこれからどうするかだ?
状況はこっちの方が優位だ。
愛莉パパの協力も必要かもしれないな。
「お~い」
愛莉が呼んでいる。
「どうした?」
「冬夜君が一人考えこんでるから呼んでみただけ~」
また、愛莉の前で入り込んでたか。
愛莉を抱き寄せる。
「ごめんね、いつも……」
「ううん、アーバニティの事考えてたんでしょ?」
「うん、ニュース見ながら入り込んでた」
「どんな事考えてたの?」
「ん、大したことじゃないよ……」
愛莉に考えてたことを説明した。
すると愛莉も悩み始める。
「難しい問題だね……」
愛莉の頭を両手でつかむとおでこをくっつけ合う。
「愛莉がいるなら大丈夫だよ。どこまでも行けるところまで行くさ」
行けるところまで。
そんなものはない。どこまでも行けるさきっと。
今は愛莉の事だけを考えて愛莉が望むことをかなえて行こう。
「深く考えてもしょうがないな。久しぶりに早く帰れたしゆっくり休むか」
そう言ってテレビを消してベッドに入る。
愛莉は寂しそうだ。
分かってるよ。
愛莉が望んでることくらい。
「おいで。ゆっくりするって言っただろ?」
愛莉は笑顔になるとベッドに入ってきた。
喜怒哀楽を余すことなくぶつけて行こう。
愛莉が言えないまま飲み込むことなんてことはよして。
全部受け止めてみせるから。
今夜は一つ問題が解決した。
これからも少しずつって言い聞かせて少しずつ問題を解いていこう。
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