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4thSEASON
子午線の祀り
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(1)
「冬夜君おはよう、朝だよ~」
愛莉に体を揺すられ目を覚ます。
目を開けると愛莉が笑顔で僕の顔を覗き込むように見てる。
「おはよう愛莉」
僕は起きてベッドから出ると愛莉も着替えだす。
「ねえ冬夜君?」
「どうした?」
「日課してても大丈夫かな?」
朝から襲われるという事はないだろうか?と愛莉は言う。
「多分大丈夫だよ」
「どうして?」
「朝を狙うんだったらとうにしてるさ」
「そうかな~?」
「気にしてたら24時間眠れなくなっちゃうよ?」
「それもそうだね!」
愛莉は納得したらしい。
日課に出かける。
日課をこなすとシャワーを浴びて朝食を食べる。
朝のニュースは昨日の同時爆破テロと一斉園児誘拐事件でもちきりだった。
犯人はユニティ。
そう決めつけてかかっている報道陣。
また近いうちに取材あるかな?
そんな事を考えながらパンをかじっていた。
「お前達大丈夫か?」
父さんが聞いてくる。
「大丈夫だよ、いつもの手口だ。いつもよりだいぶ悪質だけど」
「なら良いんだが……、むきになるなよ」
「分かってる」
「ならいい」
朝食を食べ終え父さんと話をしてると愛莉がシャワーから戻ってくる。
すると僕はコーヒーを入れて部屋に戻る。
愛莉は髪を乾かしながらテレビを見てる。
番組名が変わるだけでやってる事は変わらない。
時々見てないけどたまに見る朝ドラを見る。
朝ドラが終ると朝のニュースに戻る。
言いたい放題のコメンテーター。
言わせたいように言わせておけばいい。
好きにさせておけばこちらの動きは読まれにくい。
そんな事を考えていると愛莉が着替えまですませると僕の隣でコーヒーを飲んでいる。
最近愛莉を見ていて誠の言う事が少しだけ分かるようになった。
袖から指だけだして両手でマグカップをもって飲む愛莉の姿はとてもかわいい。
冬服の厚着だからこそ愛莉の体形がわからないけどその体系を知り尽くしている僕には見えない部分が溜まらない。
そういや最近してないな。
不思議そうに僕を見る愛莉の腰に手を回すと抱き寄せる。
「あっ……駄目だよ冬夜君。重ね着してるから大変なんだよ~」
かといって手をあっさり離すと「うぅ……」と唸るよな声を出す。
本当に困ったお嫁さんだ。
一度そういう雰囲気になるとなかなか元に戻れないのが愛莉。
愛莉の方から抱き着いてくる。
「冬夜君もふかふかだね」
「そりゃ冬だしね」
「こうしてるだけで幸せだよ」
「もっと幸せになりたくないか?」
「え?」
愛莉は少し考えている。
「今夜でよければ……」
「今夜は難しいんじゃないかな?」
「どうして?」
「きっと忙しくなる」
「うぅ……じゃあ、事件が解決するまで我慢する」
僕が我慢できなくなることは考慮してくれないのだろうか?
「こうしてる間も子供さんも親御さんも悲しんでる人がいるんだよね……」
愛莉が落ち込んでいる。
今回ばかりはいつもみたいに持久戦ってわけには行かない。
手が無いなら無理にでも手を作り出すしかない。
その事は昨夜皆に言った。
その手段を聞いた皆は驚いていた。
まあ、無理もないだろう。
だが、気分を盛り上げる人間もいる。
「いっつもやられっぱなしでいらついてたからな!今回は派手に暴れてやろうぜ!」
美嘉さんはそう言っている。
「そうね。偶にはこちらから仕掛けてもいいかもしれない」
晶さんも言う。
「準備は出来たわよ」
恵美さんがメッセージを送ってきた。
僕達も準備は出来た。
「そろそろ行こっか?」
「うん」
愛莉と一緒に大学に向かった。
授業を受けて2限目が終わると学食に集まる。
カンナに誠の様子を聞いていた。
「今夜皆に話すってさ」
てことは誠の方も作業が済んだらしい。
「さて、指揮官様の采配を聞こうか?」
渡辺君が言う。
まず部隊を酒井君達と石原君達の部隊に分ける。
酒井君達には陽動をしかけてもらう。
その陽動もあくまで陽動。
本体は恵美さんが割り出した山の中にある施設に向かう。
そこには園児たちが監禁されている。
無事救出することを目的とする。
園児を全員救出する事が最優先。
部隊は送迎バスの運転手を含めて100名規模で行う。
園児の数を考えたら少ない方だ。
作戦開始のタイミングは僕が判断する。
僕達も少数精鋭で行く。
酒井君達の班には酒井夫妻、白鳥さん、晴斗、檜山先輩、咲良さん。
石原君達の班には僕、愛莉、カンナ、渡辺夫妻、石原夫妻、桐谷夫妻、公生、奈留。
その他晶さん、恵美さんの兵隊で何部隊か編成してもらう
誠は皆の情報伝達、指示に回ってもらう。
その他の人は晶さんの実家に避難してもらう。
その他変わったことがあれば逐次僕が判断して動いてもらう。
「全部で何か所襲うつもりなの?」
「23か所」
晶さんの質問に答えるとみんな驚いていた。
「その数には何か意味があるのか?」
渡辺君が言う。
「特にない、ただ同時多発テロの数に合わせただけ」
「なるほどな」
「一部隊何人くらいいればいいの?」
「単に突っ込んで暴れて爆破するだけだから。4,5人いればいいかな」
「晶用意できる?」
「軍単位まではいけるわよ……」
「じゃあ、もう少し数をかけても大丈夫だね」
私も軍単位までなら編成できると恵美さんは言う。
この二人いたら本当に日本壊滅できそうだな。
「多分九尾の狐がいるとしたら園児の居る拠点か……」
「か……?」
恵美さんが聞き変えす。
「誠の情報次第だから何とも言えない」
「冬夜君はまだ他に相手に狙いがあるといいたいの?」
愛莉が聞く。
「そうだね、この誘拐自体が罠かもしれない。そう考えてる」
それに謎が残っている。アレンて人の他に高橋蒼良を釈放した理由。
なぜ園児をさらったのか?
恵美さんに無理難題を吹っ掛けてみた。
「さすがに船一隻用意して欲しいなんて無理だよね」
「ごめんなさい私の部隊は佐世保に駐屯してるのよ。ちょっと時間がかかるわ」
あるんかい!
「なら私の方が早いわね。呉に駐屯してある。駆逐艦?巡洋艦?それとも航空母艦やイージス艦出す?ミサイル原潜でもいいわよ」
「駆逐艦準備出来る?」
「どこに向かえば良い?」
「豊後水道を封鎖してくれればいい」
「わかったわ、イワシ一匹逃さないわよ」
「じゃあ私は関門海峡を封鎖するわ。早速手配する」
結局晶さんはイージス艦と駆逐艦を一隻ずつ豊後水道に。恵美さんはさらに戦闘部隊を一個響灘に準備してもらった。
そんなもん用意して大丈夫なんだろうか?
「大丈夫よ、ちゃんと手は回してるから?」
敵より、味方の方がはるかに恐ろしいと思えるのは僕だけだろうか?
(2)
夜ファミレスに皆集まると誠の説明が始まった。
「結論から言う、九尾の狐は全員、恵美さんの言う施設にいる」
皆がざわめく。僕はほっとした。別動隊を予想していたから。
この誘拐事件自体が囮なんじゃないかって想定していたから。
「片桐君の言う通り船は配置したわ」
晶さんと恵美さんが言う。
「でもなんで海なの?」
二人が聞く。
「保険だよ」
「保険?」
「陸と空は封鎖出来てるも同然。なら後穴があるとしたら海だ」
「それで県央空港もターゲットに入れたんだね?」
愛莉が言うと頷いた。
「じゃあ、皆作戦を確認するよ!」
僕はそう言って作戦を説明する。
「分かった、俺が情報統制するばいいんだな」
誠が言う。
「誠にはもう一つお願いしたい事がある。恵美さん?」
恵美さんに言うと恵美さんはタブレットを誠に渡す。
「それでプレデターの爆撃位置を指定できるわ。コントロールも可能」
「マジかよ冬夜!俺に爆撃しろってのか?」
「タイミングと場所は僕が指示する。恵美さんは多分戦闘に混ざることになると思うから」
「わかった」
「じゃあ、皆時計合わせて3,2,1……」
時刻は20時ちょうどになった。
「今から1時間後に最初の行動に打って出る。その後の行動は僕が指示する。今回は子供の命かかってる。失敗は許されない」
「上等だ!」
「今夜は遠慮はいらない!派手に暴れよう!」
渡辺君が言うとおお!と叫ぶ。
こうして僕達の作戦は幕を上げた。
(3)
テレビドラマをやっている。
子供がいなくなって1日が経った。
ニュースは同じことを繰り返すだけで事態は全く進展しない。
主人の話だとやはり陣頭指揮に問題があるらしい。
現場主義の主人とは意見が食い違い第一線から外されたとか?
上司の遠坂警視正の助言もあって現場には残れているが勝手な行動は許さないと聞き込みすら許してもらえないらしい。
犯人の要求があるまで勝手に動くな。
その一言があったきり何も指示が無い。
主人も苛立ちを隠せないでいる。
私達にも同じ説明がされた。
「聞き込みもしないなんて犯人を捕まえる意思があるんですか!?」
私はそう訴えた。
しかし「お子さんの命が優先です」と一点張り。
夜は寒い。
下の子はまだ3歳
風邪を引かなければいいけど……。
テレビを見ても落ち着かないのでベランダから夜空を見る。
子供は宇宙に憧れていた。
「大きくなったら宇宙飛行士になる」
光莉の夢だった。
子供の事を思うと胸が張り裂けそうになる。
神様どうか二人命を助けてください、わたしはどうなってもかまいません。
するとジェット機の音が聞こえる。
こんな時間に飛行機?
下の子朱莉は飛行機のパイロットになりたいと言ってたっけ。
何を見ても子供たちの事が頭から離れない。
飛行機から何かが落下するのが見えた。
それは神様の落とし物?
落ちた先を見る。
パッと明るく光る。
そしてあとからどーんと音が聞こえる。
火かった先は赤く燃え上がっている。
何があったの?
ハッとしテレビを見る。
臨時ニュースのテロップが流れている。
「……の施設で爆発がありました。死傷者の数は不明で今必死に消火活動にあたっております」
その施設に子供たちがいませんように。
そう祈ることしかできなかった。
ドラマは終わりニュースの時間になる。
さっきの爆発事故ともう一つニュースが出ていた。
某施設を黒塗りのワゴン数台と装甲車が取り囲んでいるという。
警察の動きはないらしい。
テレビ中継で若い男性が寒空の中タンクトップでピースサインをしていた。
理由は分からないけど神様は子供たちを救って下さるおつもりだ。
私は無神論者だけどこの時ばかりは神様にお祈りをした。
どうかみんな無事でありますように。
「臨時ニュースが入りました。誘拐事件の犯人から要求がでました。24時間以内に県央空港に旅客機を用意しろとのことです」
旅客機?
犯人の目的は一体?
(4)
俺達は某施設を取り込んでいた。
取材に来たマスコミの対応は晴斗がやっている。
作戦開始から30分が経とうとしている。
最初の第一撃は決まった。
こっちの標的はいまだに出てこない。
ここまで来て外れだったか?
「敵さんでてこないですね~」
咲良が言う。
そもそも本当にここに敵がいるのか?
「敵が動いたわ!」
晶が叫んでる。
車に備えられたテレビを見る。
誘拐事件犯人が県央空港に旅客機を用意しろと要求。
同時にスマホがなる。
「突入部隊は突入して」
それを確認すると、車を降りる。
「……行くよ」
咲良が言うと同時に装甲車が正門をぶっ壊して突入した。
その後について行くワゴン車。
敵が出て来る。
皆本物の筋の者だ。
寒い中着流しを着て日本刀をかまえてる者から上半身の入れ墨を見せつけ銃を構えるやつらまで千差万別。
数はこっちの方が少ないが、装甲車の存在がでかい、
群がる敵に容赦なく撃ちこまれる機銃。
「一人残らず仕留めるのよ!!」
意気揚々としている晶。
装甲車の上に立ち果敢に指揮する。
しかし異様な雰囲気を漂わせた人物が一人いる。
機銃の集中砲火を浴びながらも意にも介せずゆっくりと近づいてくる大きな物体。
酒井が飛び出す。その物体は酒井を見ると襲い掛かる。
「先輩危ないっす!!」
その物体に見とれている間に頭上から襲い掛かる男。
体格は晴斗よりもいい。
俺は咄嗟に咲良をかばう。
「とりゃあ!」
襲い掛かる男の顎を蹴り上げ空中で一回転して着地する晴斗。
顎を蹴られた男も一回転して手で着地してバク転する、
「ほう、やるなお前。俺の名前はカムイ!お前の名前は!?」
「楠木晴斗!地元大学1年っす」
馬鹿正直に答える晴斗。
「お互い格闘が得意と見た!どうだ!?ここは素手での肉弾戦と行こうじゃねーか!?」
「上等だ!!」
体格は明らかに晴斗よりもでかいカムイが殴りかかる。
それに対して晴斗もパンチを躱してカウンターを合わせる。
体重の乗ったパンチは見事にカムイの頬に食い込む
カムイは倒れる。
血を吐きながら起き上がるのをじっと見てる晴斗
その背後に小さな黄色いシルエットが立つ。
それは晴斗の背中を襲う投げナイフを手の甲で弾く。
「卑怯者……でてきなさい」
春奈が言うと細身の男が現れた。
春奈と男は対峙する。
次の瞬間二人はその場から闇に紛れる。
二人の姿を見失うと再び晴斗に視線をもどす。
殴り殴られ、蹴飛ばし蹴られ、投げては投げられての5分の戦い。
「おもしれぇ、燃えて来たぜ!」
「こっちも盛り上がってきたっすよ!」
しかし一瞬カムイが膝を崩す。
その一瞬を逃さない晴斗
「おらぁ!」
叫び声と共に突進するとカムイの腰に組み付く。
カムイは膝蹴りを加えたり背中に打撃を与えたりするが意にも介さない晴斗。
そのまま晴斗はカムイを持ち上げバッグドロップをする。
脳天からまともにアスファルトの地面にぶつかりカムイは気を失った。
「もう終わりっすか!?立てよほら!!」
意識の無いカムイに向かって叫ぶ晴斗。
「もういい、終わりだ」
そう言って俺はカムイを捕縛する。
「春樹!上!!」
咲良が叫ぶ。
俺と晴斗は上を見る。空中に漂う何者かと落下してくる物体。
まじか!?
カムイを二人がかりで引きずり慌てて逃げる。この位置だと咲良も危ない。
逃げるのが間に合わないと悟った晴斗は無謀な行動に出る。
落下してきたダイナマイトに近づく導火線の火を足で踏みつけ消し止める。
その男……多分バードマンはダイナマイトを投下し爆破しながら吹き上がる爆風で空中に舞い上がる。
車両に投下されたらたまったものじゃない。
「しかなたいっす!初めてだけどやってみるっす!!」
リストバンドのスイッチをおすと全身をスーツで覆われ背中に無数の武器を装備した状態になる。こっちも変身ネタか!
晴斗は一飛びでワゴン車の上に乗っかる。
「トラーンザム!!」
晴斗が叫んでさらにスイッチを押すと晴斗は赤く発行する。
ワゴン車の屋根をへこませるくらいに蹴りつけ飛び上がると男の上空に到達する。男の背中にのしかかり落下する晴斗。
男は地面に墜落して気を失った。
二人を拘束してワゴン車に乗せる。
辺りを見回す。大体の戦闘が終わってこちらが鎮圧しようとしていた。
だが、晶はまだ一点を見つめている。
あの二人の戦いは終わってなかった。
「春奈は!?」
晴斗は春奈を探す。
春奈もまた戦っていた。
(5)
「つくづく縁があるようね、運命かもしれないわね!」
「生憎と僕既婚者なので」
そんなこと叫ばないでくださいよ、あなたよりももっと恐ろしい晶ちゃんの目線が僕を貫いてるじゃないですか。
「でもそれも今日で終わりよ」
彼女は叫ぶとチェーンソーを振り上げる。
本当に今日で終わりにしたいです。
チェーンソーの斬撃を躱すと手に持っていたナイフでむき出しになっている顔をを切る。
「乙女の顔に二度も傷を入れるとは。あなた本当に死神ね」
この際突っ込むのもめんどくさいけどナイフで切ったくらいじゃあなたは死なない事分かってるけど一縷の望みをかけた。
この女を戦闘不能にするのは不可能。殺すしかない。
これは人間じゃない人の皮を被った別の生命体だ。
そう思い込むことにした。
ナイフには象をも殺す致死量の毒を塗りこめてあった。
そんなのを持ってるなんて僕本当に死神になっちゃったね。
しかし僕は油断していた。
象をも殺すじゃない、象程度なら殺せると表現するべきだった。
彼女の様子に異変は感じられない、即効性のある毒なのに。
彼女は殺す事すらできない?
地面に穴掘って埋めてコンクリートか硬化ベークライトなんてものがあったらそれで固めて保存しとくくらいしか手が無いですね。
「善君伏せて!!」
晶ちゃんの声に反応して身をかがめると装甲車から容赦なく機銃が彼女の顔面に打ち込まれる。
頭部が弱点だとは誰もが気づくだろうけどちょっとやりすぎじゃないかい?
彼女の頭部は粉砕されデュラハンと化した彼女が思い浮かんだ。
「たかがメインカメラをやられただけだ!」と言わんばかりに動き回る彼女が想像されたが恐ろしいので振り払った。
火薬の煙が消えかかった頃無傷の彼女が、ただでさえ化け物に見える顔が鬼のような形相でこっちを見ている。
「二度ならず三度も乙女の顔に」
傷一つ履いてないじゃないですか?
貴方その装甲いらないんじゃないですか?
邪魔になってるだけのようにしかみえませんよ?
「善君避けて!!」
「RPG!!」
僕は慌てて回避行動をとる。
彼女は仁王立ちしている。
グレネードなんて甘い物じゃないですよ?
対戦車用ですよ?
昔見た映画でRPG撃ち込まれた人間がむごたらしい姿になっているのを思い出した。
しかもそれ不発だったんだよね。
けど今回はちゃんと爆発したよ。
顔無しどころか胴無しの悲惨な姿を想像しようとしたけどなぜか頭がそれを拒否する。
彼女は大丈夫。
そう、彼女は大丈夫だった。
衝撃で尻もちをつく程度で済んだ。
まあ、よく考えたら爆撃をまともに食らって元気に追いかけてくる彼女だもの。
でも晶ちゃん達には衝撃的だったみたいだ。
あんなに勇ましかった晶ちゃんが言葉を失っている。
彼女が起き上がる前に僕は叫んだ
「晶ちゃん気を確かに!!」
晶ちゃんが正気にもどると僕に下がっているように指示する。
装甲車で跳ね飛ばす気らしい。
もう完全にやる気になってるね
殺す気とかいて殺る気ってやつ?
しかし、装甲車の突進を一人で止めるという非常に不思議な現実を見てる。
そうか、僕は夢を見てるんだ。
って惚けてる場合じゃない。
彼女は片手で装甲車を止め片手でチェーンソーを振り上げるという離れ業をやってのける。
まずい!
咄嗟に転がっていたグレネード付きのアラルトライフルを拾いグレネードを構える。
狙うのは彼女の頭じゃない、チェーンソーだ。
チェーンソーは意外と普通だったみたいであっさりと折れる。
それでもやはりグレネードは普通の威力だったみたいでフロントガラスにひびが入るくらいはしたけど。
「し~に~が~み~」
幸か不幸か彼女の怒りは僕に向いた。
彼女は弾丸のような速さで突進してくる。
そう、弾丸のように直線で突っ込んでくる。
僕は躱して足を引っかける。
そんな勢いで突進してくる物体の足を引っかけて折れない僕の足もどうかしてると思うけど。
彼女の体はヘッドスライディングをして金属とアスファルトがこすれ合い火花を散らしながら壁に激突する。
激突した壁の瓦礫に埋もれて身動き取れないでいる彼女。
「い、今のうちに撤収するわわよ!時期にここを爆撃する!」
ここ日本だよね?と疑問を抱いたけど撤退する時期としては悪くない戦闘は粗方済んだようだ。
兵隊が車に乗り込む。
僕も車に乗り込むと、装甲車は走り出す。
「まて~私と決着をつけなさい」
決着なら着くと思うよあと数十秒後に。
僕達が施設の敷地から出て一分後にプレデターに寄る爆撃が始まる。
これで彼女とはおさらば。
そう考えたい。
爆炎が舞い上がる。
炎に包まれる施設。
その爆炎から出てきたのは身を拘束していた瓦礫が粉砕され自由になった彼女だった。
髪はバサバサ。顔は怒りで赤くなった般若。そんなのが弾丸のような速さで迫ってくる。
ドーンと追突する彼女。
装甲車の後部に穴が開く。穴に腕をかけてベリベリっと装甲を引きはがす。
退き剥がれた装甲と共に転がっていく彼女を見ながら全力で逃走する。
彼女は車にはねられながら遠ざかっていった。
装甲車に乗っていた兵は皆驚いていた。
あんなものはねて人身事故で訴えられたら逆に訴えたいくらいあるよね。
「なんなのあれ?」
晶ちゃんがそう呟く。
「なんなんでしょうね……」
僕がそう呟く。
また再戦することがあるんだろうか?
あるんだろうな?
もう重りでも括り付けて海に沈めるしか手が無い。
死なないだろうから殺人にはならないだろう。
僕達はどこへ向かっていくのだろう?
(6)
殺気
晴斗の背中は私が守る。
瞬時に変身して投げナイフを受け止める。
やせ細った男はにやりと笑うと横に跳ぶ。
私もそれに合わせて飛んだ。
先手必勝。
着地と同時に彼に向かって飛び掛かる。
彼はナイフを二本投げる。
だが、このスーツは刃物程度弾いてしまう。
彼の細い下腹部に思いっきり蹴りつけた。
彼の細い体は思いっきり吹き飛ぶ。
手ごたえはあった。
だが、彼はゆらりとおき上がると何事も無かったかのように両手にナイフを構える。
素手では倒せない。
彼が投げたナイフを素早く拾い再び突進する。
彼は6本のナイフを投げる。
それを腕で弾くと私は肩にナイフを突き刺す。
だが彼はそれを抜くと私の方に突き刺そうとする。
スーツが防いでくれる。
無痛
彼は痛みを感じないの?
狂気
彼は快楽を得てる。
コンクリートの塊を粉砕するほどの蹴りを急所に叩き込む。
全く効果が無い。
もはや普通のやり方では彼に勝てない。
そして時間もない。
彼が投げるナイフを全て受け止めると、彼にとびかかる。
顎を掴んで地面にたたきつける。
普通の人間なら顎を砕かれ脳震盪を起こし下手すれば死ぬレベルの打撃を加えた。
でも其れでは彼は死なない。
ならば……。
私は飛び上がり6本のナイフを投げつける。
倒れた男の両肩両手両足を貫き地面に突き刺さる。
非情。
この手の人間に情けをかけてはならない。
私は彼の側に着地すると頭を踏みつぶす。
この手の映画は見た。
頭部を粉砕すれば活動を停止する。
彼は人ではない。
だが予想外の事態が起きた。
再生。
彼の体は再生していく。
その時撤退命令が出る。
退くしかない。
私はすぐに晴斗のもとに行く。
晴斗は私を車に乗せて車を走らせる。
恐怖。
変身が解けた後私を襲う感情。
身を震わせていた。
だが晴斗がもたらせてくれたもの。
それは安堵。
くたびれた私は眠りについていた。
(7)
酒井班の方が撤収を開始したころ僕達は次の段階に移っていた。
AC-130による攻撃を県央空港にしていた。
全壊させる必要はない。滑走路に穴をあけてやるだけでいい。
それで飛行機は飛べない。
酒井班は海沿いで待機させる。
僕達が後を追えなかった時の保険だ。
僕達は施設よりも高い場所で機会をうかがっていた。
すると駐車場にヘリが到着する。
「あ、人が乗っていく……高橋蒼良も乗ってるよ!」
愛莉が双眼鏡で確認している。
「石原君?そのなかにアレンて人いる?」
「います。ヴァイパーも一緒だ」
やっぱりね。
彼等はVIP扱いらしい。
誠からメッセージが届く。
23か所すべて制圧したらしい。
あとは子供たちを助けるだけ。
「片桐君どうする?ヘリを落せと言うなら落とすけど」
恵美さんが聞いてくる。
「やめよう、まだ園児が人質にいる」
「でもアレン達を逃してしまう」
「目的を忘れたら駄目。園児の救出が優先」
バスに園児を乗せていく。
先頭車両の運転席にジャッカル。隣にエックスがいる。
園児がバスに乗る頃に僕は合図を送る。
行動開始。
潜んでいた兵隊たちが園児を保護していく。
僕達も行こうとしたとき。
「愛莉危ない!」
愛莉を突き飛ばすと同時にリストバンドのスイッチを押す。
その場にいたら愛莉の体が斬りつけられていたであろう。鋭利な刃物をぎらつかせてこっちを見ている。
どうやら僕の相手をご所望らしい。
「愛莉達は先に行って!」
愛莉たちに先に行くように言う。
「冬夜君気を付けて!」
そう言って愛莉たちは先を行く。
僕はこいつの足止めを、いや、足止めされてるのは僕か?
先頭のジャッカルを乗せたバスは発進した。
「その腰の得物は玩具じゃないよね?」
足場が悪いな。
条件は相手も一緒か?
実戦経験の差が悲しいくらいにあるだろうけど。
彼は飛び上がり切っ先を立てて突き刺しにかかる。
横に跳んで躱す。
突き立てた刃を薙ぎ切り上げてくる。
後に跳ぶ……木が邪魔だ。
横に転がるようにして躱す。
彼の刃は何で出来ているのだろう?
木を切り倒しながらもその切れ味を保っている。
「逃げてるだけか!?」
地の利を生かしながら斬撃を避けて自分の優位な場所に誘導する。
やがて周りの木がなくなった。
隠れる場所は無い。
正面から切りかかてくる。
目を閉じる。
感じろ、気配を、殺気を……今だ!
目を開くと鞘から素早く剣を抜く。
その速さはまさに神速。
男が剣を振り下ろすより先に刀が当たった。
剣を弾く。男は剣を落す。
僕は刀を男の喉元に突きつける。
「勝負あったよ?」
男は僕の刀を見て笑う。
「逆刃刀とはまた最近の大学生の玩具は立派なんだな」
「名前くらい名乗ったら?」
「……ジャック・ザ・リッパーとでも名乗っておこうか?」
切り裂きジャックか……笑えないね。
「で、どうするつもりだ?少年?」
「あんた次第だよ?」
「少年に人が斬れるのか?」
「何?」
男は突然足下を蹴り上げる。土や落ち葉が待って気を取られる。
その隙に男は剣を拾い僕を切りつける。
紙一重で躱す。
「仕留めるチャンスで仕留められない時点で貴様は『戦士』ではないただの『子供』だ」
男は逃走する。
「男を追いかける」
「丁度いい時間だ。今日は見逃してやる、次に会う時までにまともな刀を用意しておけ!」
男は煙幕を焚いて行方をくらます。
煙幕が薄れた頃男の気配は無かった。
僕は変身を解いて皆の後を追う。
追いながら考える。
人を斬る刀を用意しろ?
人を殺す覚悟を身につけてこい?
僕は人殺しなんかじゃない。
だけどそんな生半可な覚悟じゃとうていあいつは倒せない。
石原君達に会ったら聞いてみよう?
殺す覚悟でやっているのかどうかを。
今はとりあえず子供たちの救出を優先する。
僕が施設に辿り着いた頃戦闘は終了していた。
「片桐君追わないと!まだ何人か残ってる!」
「わかった。石原夫妻と愛莉は僕の車に乗って」
「わかりました」
「誠の方はどう?」
「Nシステムで行き先は割り出せてるそうです。それに彼衛星を乗っ取ったらしくてそれで追尾しています」
誠らしいな。
「じゃ、急い追いかけようか」
そう言って車に乗ると愛莉が言った。
「冬夜君あの人と何かあった?」
「え?」
「なんか思い詰めてる……」
愛莉の髪を撫でて言う。
「何にもないよ。気にしないで」
「……うん」
それから追跡を開始した。
彼等を追跡して追い詰めて、それからどうする?
僕達は今試されているのかもしれない。
「冬夜君おはよう、朝だよ~」
愛莉に体を揺すられ目を覚ます。
目を開けると愛莉が笑顔で僕の顔を覗き込むように見てる。
「おはよう愛莉」
僕は起きてベッドから出ると愛莉も着替えだす。
「ねえ冬夜君?」
「どうした?」
「日課してても大丈夫かな?」
朝から襲われるという事はないだろうか?と愛莉は言う。
「多分大丈夫だよ」
「どうして?」
「朝を狙うんだったらとうにしてるさ」
「そうかな~?」
「気にしてたら24時間眠れなくなっちゃうよ?」
「それもそうだね!」
愛莉は納得したらしい。
日課に出かける。
日課をこなすとシャワーを浴びて朝食を食べる。
朝のニュースは昨日の同時爆破テロと一斉園児誘拐事件でもちきりだった。
犯人はユニティ。
そう決めつけてかかっている報道陣。
また近いうちに取材あるかな?
そんな事を考えながらパンをかじっていた。
「お前達大丈夫か?」
父さんが聞いてくる。
「大丈夫だよ、いつもの手口だ。いつもよりだいぶ悪質だけど」
「なら良いんだが……、むきになるなよ」
「分かってる」
「ならいい」
朝食を食べ終え父さんと話をしてると愛莉がシャワーから戻ってくる。
すると僕はコーヒーを入れて部屋に戻る。
愛莉は髪を乾かしながらテレビを見てる。
番組名が変わるだけでやってる事は変わらない。
時々見てないけどたまに見る朝ドラを見る。
朝ドラが終ると朝のニュースに戻る。
言いたい放題のコメンテーター。
言わせたいように言わせておけばいい。
好きにさせておけばこちらの動きは読まれにくい。
そんな事を考えていると愛莉が着替えまですませると僕の隣でコーヒーを飲んでいる。
最近愛莉を見ていて誠の言う事が少しだけ分かるようになった。
袖から指だけだして両手でマグカップをもって飲む愛莉の姿はとてもかわいい。
冬服の厚着だからこそ愛莉の体形がわからないけどその体系を知り尽くしている僕には見えない部分が溜まらない。
そういや最近してないな。
不思議そうに僕を見る愛莉の腰に手を回すと抱き寄せる。
「あっ……駄目だよ冬夜君。重ね着してるから大変なんだよ~」
かといって手をあっさり離すと「うぅ……」と唸るよな声を出す。
本当に困ったお嫁さんだ。
一度そういう雰囲気になるとなかなか元に戻れないのが愛莉。
愛莉の方から抱き着いてくる。
「冬夜君もふかふかだね」
「そりゃ冬だしね」
「こうしてるだけで幸せだよ」
「もっと幸せになりたくないか?」
「え?」
愛莉は少し考えている。
「今夜でよければ……」
「今夜は難しいんじゃないかな?」
「どうして?」
「きっと忙しくなる」
「うぅ……じゃあ、事件が解決するまで我慢する」
僕が我慢できなくなることは考慮してくれないのだろうか?
「こうしてる間も子供さんも親御さんも悲しんでる人がいるんだよね……」
愛莉が落ち込んでいる。
今回ばかりはいつもみたいに持久戦ってわけには行かない。
手が無いなら無理にでも手を作り出すしかない。
その事は昨夜皆に言った。
その手段を聞いた皆は驚いていた。
まあ、無理もないだろう。
だが、気分を盛り上げる人間もいる。
「いっつもやられっぱなしでいらついてたからな!今回は派手に暴れてやろうぜ!」
美嘉さんはそう言っている。
「そうね。偶にはこちらから仕掛けてもいいかもしれない」
晶さんも言う。
「準備は出来たわよ」
恵美さんがメッセージを送ってきた。
僕達も準備は出来た。
「そろそろ行こっか?」
「うん」
愛莉と一緒に大学に向かった。
授業を受けて2限目が終わると学食に集まる。
カンナに誠の様子を聞いていた。
「今夜皆に話すってさ」
てことは誠の方も作業が済んだらしい。
「さて、指揮官様の采配を聞こうか?」
渡辺君が言う。
まず部隊を酒井君達と石原君達の部隊に分ける。
酒井君達には陽動をしかけてもらう。
その陽動もあくまで陽動。
本体は恵美さんが割り出した山の中にある施設に向かう。
そこには園児たちが監禁されている。
無事救出することを目的とする。
園児を全員救出する事が最優先。
部隊は送迎バスの運転手を含めて100名規模で行う。
園児の数を考えたら少ない方だ。
作戦開始のタイミングは僕が判断する。
僕達も少数精鋭で行く。
酒井君達の班には酒井夫妻、白鳥さん、晴斗、檜山先輩、咲良さん。
石原君達の班には僕、愛莉、カンナ、渡辺夫妻、石原夫妻、桐谷夫妻、公生、奈留。
その他晶さん、恵美さんの兵隊で何部隊か編成してもらう
誠は皆の情報伝達、指示に回ってもらう。
その他の人は晶さんの実家に避難してもらう。
その他変わったことがあれば逐次僕が判断して動いてもらう。
「全部で何か所襲うつもりなの?」
「23か所」
晶さんの質問に答えるとみんな驚いていた。
「その数には何か意味があるのか?」
渡辺君が言う。
「特にない、ただ同時多発テロの数に合わせただけ」
「なるほどな」
「一部隊何人くらいいればいいの?」
「単に突っ込んで暴れて爆破するだけだから。4,5人いればいいかな」
「晶用意できる?」
「軍単位まではいけるわよ……」
「じゃあ、もう少し数をかけても大丈夫だね」
私も軍単位までなら編成できると恵美さんは言う。
この二人いたら本当に日本壊滅できそうだな。
「多分九尾の狐がいるとしたら園児の居る拠点か……」
「か……?」
恵美さんが聞き変えす。
「誠の情報次第だから何とも言えない」
「冬夜君はまだ他に相手に狙いがあるといいたいの?」
愛莉が聞く。
「そうだね、この誘拐自体が罠かもしれない。そう考えてる」
それに謎が残っている。アレンて人の他に高橋蒼良を釈放した理由。
なぜ園児をさらったのか?
恵美さんに無理難題を吹っ掛けてみた。
「さすがに船一隻用意して欲しいなんて無理だよね」
「ごめんなさい私の部隊は佐世保に駐屯してるのよ。ちょっと時間がかかるわ」
あるんかい!
「なら私の方が早いわね。呉に駐屯してある。駆逐艦?巡洋艦?それとも航空母艦やイージス艦出す?ミサイル原潜でもいいわよ」
「駆逐艦準備出来る?」
「どこに向かえば良い?」
「豊後水道を封鎖してくれればいい」
「わかったわ、イワシ一匹逃さないわよ」
「じゃあ私は関門海峡を封鎖するわ。早速手配する」
結局晶さんはイージス艦と駆逐艦を一隻ずつ豊後水道に。恵美さんはさらに戦闘部隊を一個響灘に準備してもらった。
そんなもん用意して大丈夫なんだろうか?
「大丈夫よ、ちゃんと手は回してるから?」
敵より、味方の方がはるかに恐ろしいと思えるのは僕だけだろうか?
(2)
夜ファミレスに皆集まると誠の説明が始まった。
「結論から言う、九尾の狐は全員、恵美さんの言う施設にいる」
皆がざわめく。僕はほっとした。別動隊を予想していたから。
この誘拐事件自体が囮なんじゃないかって想定していたから。
「片桐君の言う通り船は配置したわ」
晶さんと恵美さんが言う。
「でもなんで海なの?」
二人が聞く。
「保険だよ」
「保険?」
「陸と空は封鎖出来てるも同然。なら後穴があるとしたら海だ」
「それで県央空港もターゲットに入れたんだね?」
愛莉が言うと頷いた。
「じゃあ、皆作戦を確認するよ!」
僕はそう言って作戦を説明する。
「分かった、俺が情報統制するばいいんだな」
誠が言う。
「誠にはもう一つお願いしたい事がある。恵美さん?」
恵美さんに言うと恵美さんはタブレットを誠に渡す。
「それでプレデターの爆撃位置を指定できるわ。コントロールも可能」
「マジかよ冬夜!俺に爆撃しろってのか?」
「タイミングと場所は僕が指示する。恵美さんは多分戦闘に混ざることになると思うから」
「わかった」
「じゃあ、皆時計合わせて3,2,1……」
時刻は20時ちょうどになった。
「今から1時間後に最初の行動に打って出る。その後の行動は僕が指示する。今回は子供の命かかってる。失敗は許されない」
「上等だ!」
「今夜は遠慮はいらない!派手に暴れよう!」
渡辺君が言うとおお!と叫ぶ。
こうして僕達の作戦は幕を上げた。
(3)
テレビドラマをやっている。
子供がいなくなって1日が経った。
ニュースは同じことを繰り返すだけで事態は全く進展しない。
主人の話だとやはり陣頭指揮に問題があるらしい。
現場主義の主人とは意見が食い違い第一線から外されたとか?
上司の遠坂警視正の助言もあって現場には残れているが勝手な行動は許さないと聞き込みすら許してもらえないらしい。
犯人の要求があるまで勝手に動くな。
その一言があったきり何も指示が無い。
主人も苛立ちを隠せないでいる。
私達にも同じ説明がされた。
「聞き込みもしないなんて犯人を捕まえる意思があるんですか!?」
私はそう訴えた。
しかし「お子さんの命が優先です」と一点張り。
夜は寒い。
下の子はまだ3歳
風邪を引かなければいいけど……。
テレビを見ても落ち着かないのでベランダから夜空を見る。
子供は宇宙に憧れていた。
「大きくなったら宇宙飛行士になる」
光莉の夢だった。
子供の事を思うと胸が張り裂けそうになる。
神様どうか二人命を助けてください、わたしはどうなってもかまいません。
するとジェット機の音が聞こえる。
こんな時間に飛行機?
下の子朱莉は飛行機のパイロットになりたいと言ってたっけ。
何を見ても子供たちの事が頭から離れない。
飛行機から何かが落下するのが見えた。
それは神様の落とし物?
落ちた先を見る。
パッと明るく光る。
そしてあとからどーんと音が聞こえる。
火かった先は赤く燃え上がっている。
何があったの?
ハッとしテレビを見る。
臨時ニュースのテロップが流れている。
「……の施設で爆発がありました。死傷者の数は不明で今必死に消火活動にあたっております」
その施設に子供たちがいませんように。
そう祈ることしかできなかった。
ドラマは終わりニュースの時間になる。
さっきの爆発事故ともう一つニュースが出ていた。
某施設を黒塗りのワゴン数台と装甲車が取り囲んでいるという。
警察の動きはないらしい。
テレビ中継で若い男性が寒空の中タンクトップでピースサインをしていた。
理由は分からないけど神様は子供たちを救って下さるおつもりだ。
私は無神論者だけどこの時ばかりは神様にお祈りをした。
どうかみんな無事でありますように。
「臨時ニュースが入りました。誘拐事件の犯人から要求がでました。24時間以内に県央空港に旅客機を用意しろとのことです」
旅客機?
犯人の目的は一体?
(4)
俺達は某施設を取り込んでいた。
取材に来たマスコミの対応は晴斗がやっている。
作戦開始から30分が経とうとしている。
最初の第一撃は決まった。
こっちの標的はいまだに出てこない。
ここまで来て外れだったか?
「敵さんでてこないですね~」
咲良が言う。
そもそも本当にここに敵がいるのか?
「敵が動いたわ!」
晶が叫んでる。
車に備えられたテレビを見る。
誘拐事件犯人が県央空港に旅客機を用意しろと要求。
同時にスマホがなる。
「突入部隊は突入して」
それを確認すると、車を降りる。
「……行くよ」
咲良が言うと同時に装甲車が正門をぶっ壊して突入した。
その後について行くワゴン車。
敵が出て来る。
皆本物の筋の者だ。
寒い中着流しを着て日本刀をかまえてる者から上半身の入れ墨を見せつけ銃を構えるやつらまで千差万別。
数はこっちの方が少ないが、装甲車の存在がでかい、
群がる敵に容赦なく撃ちこまれる機銃。
「一人残らず仕留めるのよ!!」
意気揚々としている晶。
装甲車の上に立ち果敢に指揮する。
しかし異様な雰囲気を漂わせた人物が一人いる。
機銃の集中砲火を浴びながらも意にも介せずゆっくりと近づいてくる大きな物体。
酒井が飛び出す。その物体は酒井を見ると襲い掛かる。
「先輩危ないっす!!」
その物体に見とれている間に頭上から襲い掛かる男。
体格は晴斗よりもいい。
俺は咄嗟に咲良をかばう。
「とりゃあ!」
襲い掛かる男の顎を蹴り上げ空中で一回転して着地する晴斗。
顎を蹴られた男も一回転して手で着地してバク転する、
「ほう、やるなお前。俺の名前はカムイ!お前の名前は!?」
「楠木晴斗!地元大学1年っす」
馬鹿正直に答える晴斗。
「お互い格闘が得意と見た!どうだ!?ここは素手での肉弾戦と行こうじゃねーか!?」
「上等だ!!」
体格は明らかに晴斗よりもでかいカムイが殴りかかる。
それに対して晴斗もパンチを躱してカウンターを合わせる。
体重の乗ったパンチは見事にカムイの頬に食い込む
カムイは倒れる。
血を吐きながら起き上がるのをじっと見てる晴斗
その背後に小さな黄色いシルエットが立つ。
それは晴斗の背中を襲う投げナイフを手の甲で弾く。
「卑怯者……でてきなさい」
春奈が言うと細身の男が現れた。
春奈と男は対峙する。
次の瞬間二人はその場から闇に紛れる。
二人の姿を見失うと再び晴斗に視線をもどす。
殴り殴られ、蹴飛ばし蹴られ、投げては投げられての5分の戦い。
「おもしれぇ、燃えて来たぜ!」
「こっちも盛り上がってきたっすよ!」
しかし一瞬カムイが膝を崩す。
その一瞬を逃さない晴斗
「おらぁ!」
叫び声と共に突進するとカムイの腰に組み付く。
カムイは膝蹴りを加えたり背中に打撃を与えたりするが意にも介さない晴斗。
そのまま晴斗はカムイを持ち上げバッグドロップをする。
脳天からまともにアスファルトの地面にぶつかりカムイは気を失った。
「もう終わりっすか!?立てよほら!!」
意識の無いカムイに向かって叫ぶ晴斗。
「もういい、終わりだ」
そう言って俺はカムイを捕縛する。
「春樹!上!!」
咲良が叫ぶ。
俺と晴斗は上を見る。空中に漂う何者かと落下してくる物体。
まじか!?
カムイを二人がかりで引きずり慌てて逃げる。この位置だと咲良も危ない。
逃げるのが間に合わないと悟った晴斗は無謀な行動に出る。
落下してきたダイナマイトに近づく導火線の火を足で踏みつけ消し止める。
その男……多分バードマンはダイナマイトを投下し爆破しながら吹き上がる爆風で空中に舞い上がる。
車両に投下されたらたまったものじゃない。
「しかなたいっす!初めてだけどやってみるっす!!」
リストバンドのスイッチをおすと全身をスーツで覆われ背中に無数の武器を装備した状態になる。こっちも変身ネタか!
晴斗は一飛びでワゴン車の上に乗っかる。
「トラーンザム!!」
晴斗が叫んでさらにスイッチを押すと晴斗は赤く発行する。
ワゴン車の屋根をへこませるくらいに蹴りつけ飛び上がると男の上空に到達する。男の背中にのしかかり落下する晴斗。
男は地面に墜落して気を失った。
二人を拘束してワゴン車に乗せる。
辺りを見回す。大体の戦闘が終わってこちらが鎮圧しようとしていた。
だが、晶はまだ一点を見つめている。
あの二人の戦いは終わってなかった。
「春奈は!?」
晴斗は春奈を探す。
春奈もまた戦っていた。
(5)
「つくづく縁があるようね、運命かもしれないわね!」
「生憎と僕既婚者なので」
そんなこと叫ばないでくださいよ、あなたよりももっと恐ろしい晶ちゃんの目線が僕を貫いてるじゃないですか。
「でもそれも今日で終わりよ」
彼女は叫ぶとチェーンソーを振り上げる。
本当に今日で終わりにしたいです。
チェーンソーの斬撃を躱すと手に持っていたナイフでむき出しになっている顔をを切る。
「乙女の顔に二度も傷を入れるとは。あなた本当に死神ね」
この際突っ込むのもめんどくさいけどナイフで切ったくらいじゃあなたは死なない事分かってるけど一縷の望みをかけた。
この女を戦闘不能にするのは不可能。殺すしかない。
これは人間じゃない人の皮を被った別の生命体だ。
そう思い込むことにした。
ナイフには象をも殺す致死量の毒を塗りこめてあった。
そんなのを持ってるなんて僕本当に死神になっちゃったね。
しかし僕は油断していた。
象をも殺すじゃない、象程度なら殺せると表現するべきだった。
彼女の様子に異変は感じられない、即効性のある毒なのに。
彼女は殺す事すらできない?
地面に穴掘って埋めてコンクリートか硬化ベークライトなんてものがあったらそれで固めて保存しとくくらいしか手が無いですね。
「善君伏せて!!」
晶ちゃんの声に反応して身をかがめると装甲車から容赦なく機銃が彼女の顔面に打ち込まれる。
頭部が弱点だとは誰もが気づくだろうけどちょっとやりすぎじゃないかい?
彼女の頭部は粉砕されデュラハンと化した彼女が思い浮かんだ。
「たかがメインカメラをやられただけだ!」と言わんばかりに動き回る彼女が想像されたが恐ろしいので振り払った。
火薬の煙が消えかかった頃無傷の彼女が、ただでさえ化け物に見える顔が鬼のような形相でこっちを見ている。
「二度ならず三度も乙女の顔に」
傷一つ履いてないじゃないですか?
貴方その装甲いらないんじゃないですか?
邪魔になってるだけのようにしかみえませんよ?
「善君避けて!!」
「RPG!!」
僕は慌てて回避行動をとる。
彼女は仁王立ちしている。
グレネードなんて甘い物じゃないですよ?
対戦車用ですよ?
昔見た映画でRPG撃ち込まれた人間がむごたらしい姿になっているのを思い出した。
しかもそれ不発だったんだよね。
けど今回はちゃんと爆発したよ。
顔無しどころか胴無しの悲惨な姿を想像しようとしたけどなぜか頭がそれを拒否する。
彼女は大丈夫。
そう、彼女は大丈夫だった。
衝撃で尻もちをつく程度で済んだ。
まあ、よく考えたら爆撃をまともに食らって元気に追いかけてくる彼女だもの。
でも晶ちゃん達には衝撃的だったみたいだ。
あんなに勇ましかった晶ちゃんが言葉を失っている。
彼女が起き上がる前に僕は叫んだ
「晶ちゃん気を確かに!!」
晶ちゃんが正気にもどると僕に下がっているように指示する。
装甲車で跳ね飛ばす気らしい。
もう完全にやる気になってるね
殺す気とかいて殺る気ってやつ?
しかし、装甲車の突進を一人で止めるという非常に不思議な現実を見てる。
そうか、僕は夢を見てるんだ。
って惚けてる場合じゃない。
彼女は片手で装甲車を止め片手でチェーンソーを振り上げるという離れ業をやってのける。
まずい!
咄嗟に転がっていたグレネード付きのアラルトライフルを拾いグレネードを構える。
狙うのは彼女の頭じゃない、チェーンソーだ。
チェーンソーは意外と普通だったみたいであっさりと折れる。
それでもやはりグレネードは普通の威力だったみたいでフロントガラスにひびが入るくらいはしたけど。
「し~に~が~み~」
幸か不幸か彼女の怒りは僕に向いた。
彼女は弾丸のような速さで突進してくる。
そう、弾丸のように直線で突っ込んでくる。
僕は躱して足を引っかける。
そんな勢いで突進してくる物体の足を引っかけて折れない僕の足もどうかしてると思うけど。
彼女の体はヘッドスライディングをして金属とアスファルトがこすれ合い火花を散らしながら壁に激突する。
激突した壁の瓦礫に埋もれて身動き取れないでいる彼女。
「い、今のうちに撤収するわわよ!時期にここを爆撃する!」
ここ日本だよね?と疑問を抱いたけど撤退する時期としては悪くない戦闘は粗方済んだようだ。
兵隊が車に乗り込む。
僕も車に乗り込むと、装甲車は走り出す。
「まて~私と決着をつけなさい」
決着なら着くと思うよあと数十秒後に。
僕達が施設の敷地から出て一分後にプレデターに寄る爆撃が始まる。
これで彼女とはおさらば。
そう考えたい。
爆炎が舞い上がる。
炎に包まれる施設。
その爆炎から出てきたのは身を拘束していた瓦礫が粉砕され自由になった彼女だった。
髪はバサバサ。顔は怒りで赤くなった般若。そんなのが弾丸のような速さで迫ってくる。
ドーンと追突する彼女。
装甲車の後部に穴が開く。穴に腕をかけてベリベリっと装甲を引きはがす。
退き剥がれた装甲と共に転がっていく彼女を見ながら全力で逃走する。
彼女は車にはねられながら遠ざかっていった。
装甲車に乗っていた兵は皆驚いていた。
あんなものはねて人身事故で訴えられたら逆に訴えたいくらいあるよね。
「なんなのあれ?」
晶ちゃんがそう呟く。
「なんなんでしょうね……」
僕がそう呟く。
また再戦することがあるんだろうか?
あるんだろうな?
もう重りでも括り付けて海に沈めるしか手が無い。
死なないだろうから殺人にはならないだろう。
僕達はどこへ向かっていくのだろう?
(6)
殺気
晴斗の背中は私が守る。
瞬時に変身して投げナイフを受け止める。
やせ細った男はにやりと笑うと横に跳ぶ。
私もそれに合わせて飛んだ。
先手必勝。
着地と同時に彼に向かって飛び掛かる。
彼はナイフを二本投げる。
だが、このスーツは刃物程度弾いてしまう。
彼の細い下腹部に思いっきり蹴りつけた。
彼の細い体は思いっきり吹き飛ぶ。
手ごたえはあった。
だが、彼はゆらりとおき上がると何事も無かったかのように両手にナイフを構える。
素手では倒せない。
彼が投げたナイフを素早く拾い再び突進する。
彼は6本のナイフを投げる。
それを腕で弾くと私は肩にナイフを突き刺す。
だが彼はそれを抜くと私の方に突き刺そうとする。
スーツが防いでくれる。
無痛
彼は痛みを感じないの?
狂気
彼は快楽を得てる。
コンクリートの塊を粉砕するほどの蹴りを急所に叩き込む。
全く効果が無い。
もはや普通のやり方では彼に勝てない。
そして時間もない。
彼が投げるナイフを全て受け止めると、彼にとびかかる。
顎を掴んで地面にたたきつける。
普通の人間なら顎を砕かれ脳震盪を起こし下手すれば死ぬレベルの打撃を加えた。
でも其れでは彼は死なない。
ならば……。
私は飛び上がり6本のナイフを投げつける。
倒れた男の両肩両手両足を貫き地面に突き刺さる。
非情。
この手の人間に情けをかけてはならない。
私は彼の側に着地すると頭を踏みつぶす。
この手の映画は見た。
頭部を粉砕すれば活動を停止する。
彼は人ではない。
だが予想外の事態が起きた。
再生。
彼の体は再生していく。
その時撤退命令が出る。
退くしかない。
私はすぐに晴斗のもとに行く。
晴斗は私を車に乗せて車を走らせる。
恐怖。
変身が解けた後私を襲う感情。
身を震わせていた。
だが晴斗がもたらせてくれたもの。
それは安堵。
くたびれた私は眠りについていた。
(7)
酒井班の方が撤収を開始したころ僕達は次の段階に移っていた。
AC-130による攻撃を県央空港にしていた。
全壊させる必要はない。滑走路に穴をあけてやるだけでいい。
それで飛行機は飛べない。
酒井班は海沿いで待機させる。
僕達が後を追えなかった時の保険だ。
僕達は施設よりも高い場所で機会をうかがっていた。
すると駐車場にヘリが到着する。
「あ、人が乗っていく……高橋蒼良も乗ってるよ!」
愛莉が双眼鏡で確認している。
「石原君?そのなかにアレンて人いる?」
「います。ヴァイパーも一緒だ」
やっぱりね。
彼等はVIP扱いらしい。
誠からメッセージが届く。
23か所すべて制圧したらしい。
あとは子供たちを助けるだけ。
「片桐君どうする?ヘリを落せと言うなら落とすけど」
恵美さんが聞いてくる。
「やめよう、まだ園児が人質にいる」
「でもアレン達を逃してしまう」
「目的を忘れたら駄目。園児の救出が優先」
バスに園児を乗せていく。
先頭車両の運転席にジャッカル。隣にエックスがいる。
園児がバスに乗る頃に僕は合図を送る。
行動開始。
潜んでいた兵隊たちが園児を保護していく。
僕達も行こうとしたとき。
「愛莉危ない!」
愛莉を突き飛ばすと同時にリストバンドのスイッチを押す。
その場にいたら愛莉の体が斬りつけられていたであろう。鋭利な刃物をぎらつかせてこっちを見ている。
どうやら僕の相手をご所望らしい。
「愛莉達は先に行って!」
愛莉たちに先に行くように言う。
「冬夜君気を付けて!」
そう言って愛莉たちは先を行く。
僕はこいつの足止めを、いや、足止めされてるのは僕か?
先頭のジャッカルを乗せたバスは発進した。
「その腰の得物は玩具じゃないよね?」
足場が悪いな。
条件は相手も一緒か?
実戦経験の差が悲しいくらいにあるだろうけど。
彼は飛び上がり切っ先を立てて突き刺しにかかる。
横に跳んで躱す。
突き立てた刃を薙ぎ切り上げてくる。
後に跳ぶ……木が邪魔だ。
横に転がるようにして躱す。
彼の刃は何で出来ているのだろう?
木を切り倒しながらもその切れ味を保っている。
「逃げてるだけか!?」
地の利を生かしながら斬撃を避けて自分の優位な場所に誘導する。
やがて周りの木がなくなった。
隠れる場所は無い。
正面から切りかかてくる。
目を閉じる。
感じろ、気配を、殺気を……今だ!
目を開くと鞘から素早く剣を抜く。
その速さはまさに神速。
男が剣を振り下ろすより先に刀が当たった。
剣を弾く。男は剣を落す。
僕は刀を男の喉元に突きつける。
「勝負あったよ?」
男は僕の刀を見て笑う。
「逆刃刀とはまた最近の大学生の玩具は立派なんだな」
「名前くらい名乗ったら?」
「……ジャック・ザ・リッパーとでも名乗っておこうか?」
切り裂きジャックか……笑えないね。
「で、どうするつもりだ?少年?」
「あんた次第だよ?」
「少年に人が斬れるのか?」
「何?」
男は突然足下を蹴り上げる。土や落ち葉が待って気を取られる。
その隙に男は剣を拾い僕を切りつける。
紙一重で躱す。
「仕留めるチャンスで仕留められない時点で貴様は『戦士』ではないただの『子供』だ」
男は逃走する。
「男を追いかける」
「丁度いい時間だ。今日は見逃してやる、次に会う時までにまともな刀を用意しておけ!」
男は煙幕を焚いて行方をくらます。
煙幕が薄れた頃男の気配は無かった。
僕は変身を解いて皆の後を追う。
追いながら考える。
人を斬る刀を用意しろ?
人を殺す覚悟を身につけてこい?
僕は人殺しなんかじゃない。
だけどそんな生半可な覚悟じゃとうていあいつは倒せない。
石原君達に会ったら聞いてみよう?
殺す覚悟でやっているのかどうかを。
今はとりあえず子供たちの救出を優先する。
僕が施設に辿り着いた頃戦闘は終了していた。
「片桐君追わないと!まだ何人か残ってる!」
「わかった。石原夫妻と愛莉は僕の車に乗って」
「わかりました」
「誠の方はどう?」
「Nシステムで行き先は割り出せてるそうです。それに彼衛星を乗っ取ったらしくてそれで追尾しています」
誠らしいな。
「じゃ、急い追いかけようか」
そう言って車に乗ると愛莉が言った。
「冬夜君あの人と何かあった?」
「え?」
「なんか思い詰めてる……」
愛莉の髪を撫でて言う。
「何にもないよ。気にしないで」
「……うん」
それから追跡を開始した。
彼等を追跡して追い詰めて、それからどうする?
僕達は今試されているのかもしれない。
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(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
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